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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)種子発芽に関与するユビキチンE3リガーゼ

2010-11-25 06:19:08 | 読んだ論文備忘録

BRIZ1 and BRIZ2 Proteins Form a Heteromeric E3 Ligase Complex Required for Seed Germination and Post-germination Growth in Arabidopsis thaliana
Hsia & Callis  JBC (2010) 285:37070-37081.
DOI:10.1074/jbc.M110.168021

シロイヌナズナには1300程度のユビキチンE3リガーゼが存在し、このうち480程はRING型のE3リガーゼである。RING型E3リガーゼは、細胞周期、光受容、ホルモンシグナル伝達、胚発生、病害応答、DNA修復に関与するものが報告されているが、大部分は機能未知である。米国 カリフォルニア大学バークレー校のCallis らは、RINGドメインを含んでいるタンパク質をコードする遺伝子にT-DNAが挿入された系統のうち、ホモ接合体が成熟個体ににまで成長しない系統を見出し、この系統について詳細な解析を行なった。この系統は、機能未知のRINGタンパク質をコードする遺伝子(At2g42160)にT-DNAが挿入されており、この遺伝子をBRIZ1 (BRAP2-RING-ZnUBP)と命名、T-DNA挿入アレルをbriz1-1 とした。BRIZ1 /briz1-1 ヘテロ接合体後代種子の1/4は、発芽時の種皮からの胚の出現が遅く、出現した胚は緑化せず子葉が展開しないといった形態異常を示し、このような個体はbriz1-1 ホモ接合体であった。BRIZ1 にコードされるタンパク質は、RINGドメインの他に、C末端側にコイルドコイル領域、N末端側にBRAP2ドメイン、RINGドメインのC末端側にZnF-UBPドメインが見られた。BLAST検索の結果、シロイヌナズナには同様の4つのドメインを持つタンパク質がもう1つ(At2g26000)存在することがわかり、これをBRIZ2と命名した。BRIZ2 のT-DNA挿入系統もヘテロ接合体後代の1/4でbriz1-1 ヘテロ接合体後代と同じような表現型を示した。よって、BRIZ1とBRIZ2は機能重複しておらず、どちらかの機能喪失によって発芽と芽生え成長の遅延という同じ形態変化を示す、同一経路上で機能するタンパク質であると考えられる。BRIZ1、BRIZ2ともに、in vitro でE3リガーゼ活性を示したが、BRIZ2のみがユビキチンとの結合能を有していることがわかった。また、BRIZ1とBRIZ2はヘテロオリゴマーを形成し、この相互作用にはコイルドコイル領域が必要であることがわかった。コイルドコイル領域を欠いたBRIZ1はE3リガーゼ活性は示すが、BRIZ2との相互作用は示さず、植物体で発現させてもBRIZ1 /briz1-1 ヘテロ接合体後代で出現する形態異常の比率に変化は見られなかった。よって、BRIZ2と結合できないBRIZ1は機能相補することができない。また、BRIZ1、BRIZ2ともにそれぞれのT-DNA挿入系統を機能相補するためにはRINGドメインが必要であることがわかった。以上の結果から、BRIZ1とBRIZ2はヘテロオリゴマーを形成してユビキチンE3リガーゼとして機能し、種子発芽とその後の芽生えの成長に関与していることが示唆される。

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