Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)葉の発達を制御するEARモチーフタンパク質

2013-04-15 21:20:20 | 読んだ論文備忘録

The TIE1 Transcriptional Repressor Links TCP Transcription Factors with TOPLESS/TOPLESS-RELATED Corepressors and Modulates Leaf Development in Arabidopsis
Tao et al.  The Plant Cell (2013) 25:421-437.
doi:10.1105/tpc.113.109223

中国 北京大学Qin らは、シロイヌナズナアクティベーションタギング集団の中から葉が湾曲するtie1-D 変異体(後に明らかとなるが、TIE1は「TCP Ineractor containing EAR motif protein1」の略)を単離した。tie1-D 変異体の葉は、上向きに湾曲し、野生型の葉よりも小さく、細く、葉縁が波打ち、鋸歯が増えていた。tie1-D 変異体成熟葉の表皮細胞は野生型よりも小さく、多角形をしていた。以上の結果から、TIE1 は葉の細胞分化に関与していると考えられる。tie1-D 変異体はAt4g28840の発現量が増加した機能獲得変異体で、この遺伝子はN末端側に核局在シグナル(KRGK)、塩基性領域、へリックス領域、C末端側にEARモチーフ(DLELRL)を含んだ193アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。このタンパク質は転写抑制因子として機能すると考えられる。シロイヌナズナゲノムにはTIE1と類似性の高いタンパク質をコードする遺伝子が3つ(At2g20080、At2g29010、At2g34010)あり、それぞれをTIE2TIE3TIE4 と命名した。EARモチーフを含むタンパク質は、転写コリプレッサーのTOPLESS(TPL)/TOPLESS-RELATED(TPR)と相互作用をして転写を抑制することが知られている。TIE1タンパク質はEARモチーフを介してTPLファミリータンパク質と相互作用をすることが確認され、+/tie1-D +/tpl-1 二重変異体は+/tie1-D 変異体の表現型を回復させた。よって、TIE1はTPL/TPRと相互作用をすることで葉の発達過程において転写リプレッサーとして機能することが示唆される。TIE1 は茎頂分裂組織、子葉、葉において発現しており、若い葉では、葉縁部と基部において強い発現を示した。TIE1 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失変異体は表現型に変化が見られなかったことから、TIE2、TIE3、TIE4が冗長的に作用していると考えられる。また、TIE2TIE3TIE4 を過剰発現させた形質転換体はtie1-D 変異体と類似し表現型を示した。TIE3TIE4 は葉で発現していることから、両者も葉の発達に関与していると考えられる。TIE3TIE4 をノックダウンさせるRNAiコンストラクトをtie1-D 変異体で恒常的に発現させたところ、葉が下向きに湾曲してtie1-D 変異体とは逆の表現型を示し、より強い表現型を示す個体では葉が奇形し、子葉が1枚になったりカップ状となるtpl-1 変異体と類似した表現型を示した。したがって、TIE は葉の発達において重要であることが示唆される。TIE1のEARモチーフのLeu残基をSer残基に置換することでTPL/TPRとの相互作用能力を失ったTIEmEARを発現させた形質転換体も、tie1-D 変異体とは逆の表現型を示した。また、TIE1mEARやTIE1のEARモチーフを欠損させたTIE1ΔEARに転写活性化ドメインVP16を付加したキメラタンパク質発現させた形質転換体はTIE1mEARを発現させた場合よりも強い形態変化を示した。TIE1タンパク質にはDNA結合ドメインがないことから、TIE1は他の転写因子に結合して遺伝子発現を制御していると考えられる。TIE1タンパク質のN末端側断片をベイトに用いて酵母two-hybridスクリーニングを行なったところ、CINCINNATA(CIN)-like TEOSINTE BRANCHED1/CYCLOIDEA/PCF(TCP)転写因子が同定された。そこで、シロイヌナズナの全てのCIN-like TCP(TCP2、TCP3、TCP4、TCP5、TCP10、TCP13、TCP17、TCP24)について酵母two-hybridアッセイを行ったところ、調査した全てTCPがTIE1と相互作用をすることがわかった。また、BiFCアッセイから、TIE1とTCP10は生体内において相互作用をすることが確認された。TIE1は、N末端側がTCP転写因子と、C末端側のEARモチーフがTPL/TRPコリプレッサーと相互作用をしていることから、TCPとTPL/TRPとの間の架橋として機能していることが推測される。TCP10およびTCP17にTIE1のEARモチーフを含んだC末端側を融合したキメラタンパク質を野生型植物で発現させたところ、tie1-D 変異体と類似した表現型を示した。よって、TIE1はTCP転写因子と相互作用をすることで葉の発達を制御していることが示唆される。tie1-D 変異体の葉では、茎頂分裂組織において細胞の未分化状態を維持しTCP3が発現に関与していることが知られているクラスI KNOTTED-like homeoboxKNOX )遺伝子のKNOTTED-LIKE FROM ARABIDOPSIS THALIANAKNAT1KNAT2SHOOT MERISTEMLESSSTM )、KNAT6 の発現量が増加していた。これらの遺伝子の発現量増加は、tie1-D 変異体の葉での表現型と一致していると考えられる。またTCPの直接のターゲット遺伝子であるLIPOXYGENASE2LOX2 )、ASYMMETRIC LEAVES 1AS1 )、Indoleacetic acid-induced protein 3IAA3 )、SMALL AUXIN UP RNA 遺伝子のAt1g29460の葉での発現量はtie1-D 変異体において抑制されていた。tie1-D 変異体でのLOX2 の発現抑制は+/tie1-D +/tpl-1 二重変異体では回復していた。以上の結果から、TIE1はTCP転写因子およびTPL/TRPコリプレッサーと相互作用をすることで葉の発達において重要な役割を演じていることが示唆される。若い葉ではTIE1 が強く発現してTCPのターゲット遺伝子の発現を抑制して葉の分化を抑え、成熟葉ではTIE1 の発現量が減少することでTCPが活性化され、TCPの下流に位置する細胞分化を促進する遺伝子の発現が活性化すると考えられる。

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論文)根の成長を促進するCDK阻害タンパク質

2013-04-13 17:35:39 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis CDK inhibitor ICK3/KRP5 is rate limiting for primary root growth and promotes growth through cell elongation and endoreduplication
Wen et al.  Journal of Experimental Botany (2013) 64:1135-1144.
doi:10.1093/jxb/ert009

サイクリン依存キナーゼ(CDK)はサイクリンをリン酸化することで細胞周期促進因子として機能する。INHIBITOR OF CDK/KIP-RELATED PROTEIN(ICK/KRP)はCDKと結合することでCDKを阻害し、活性の調節を行なっている。シロイヌナズナには7つのICK/KRPファミリーが存在しており、いずれもCDK活性阻害能力を有している。英国 カーディフ大学Murray らは、シロイヌナズナのそれぞれのICK/KRP が機能喪失した変異体の芽生えの根の成長を比較し、ick3/kpr5 変異体は一次根の成長が野生型や他の変異体よりも低下していることを見出した。KRP5 の発現部位を調査したところ、根端分裂組織(RAM)では表皮と皮層において強い発現が見られた。移行領域では表皮や皮層の発現が弱まって中心柱での発現が強くなっていき、成熟した根では中心柱のみで発現が見られた。根の成長はRAMでの細胞分裂と移行領域での細胞伸長によって引き起こされることから、KRP5 の発現パターンは根の成長部位と対応していると言える。野生型とkrp5 変異体との間でRAMの先端部と基部の皮層細胞の長さに違いは見られず、両者の分裂組織の大きさは同等であった。しかしながら、伸長領域ではkrp5 変異体の細胞拡張が野生型よりも早い時期に低下していた。krp5 変異体の根の成熟領域の表皮、皮層、内皮の各細胞の大きさは野生型よりも小さく、特に無根毛表皮細胞の大きさが小さくなっていた。以上の結果から、KRP5 はRAMから離れた細胞の伸長を促進しており、krp5 変異体は細胞伸長が抑制されるために細胞が小さくなり、根の成長が低下していると考えられる。細胞伸長は核内倍加と関連しており、KRPは核内倍加の促進因子として機能することが知られている。krp5 変異体の根のDNA量を調査したところ、4Cの核の割合は野生がと同等であったが、16Cの核の割合が減少して8Cの核の割合が増加していた。また、krp5 変異体の根の表皮細胞の核の大きさは野生型よりも小さくなっていた。したがって、KRP5 は根において核内倍加を促進し、このことが細胞や核の拡張に関連していると考えられる。種子発芽は細胞拡張によって引き起こされるが、krp5 変異体の発芽率は野生型よりも低く、幼根の皮層細胞の大きさが野生型よりも小さかった。成熟種子の全ての細胞は倍数性が2Cであるから、krp5 変異体の皮層細胞の大きさは核内倍加とは別の理由によって小さくなっていると考えられる。以上の結果から、ICK3/KRP5は細胞伸長と核内倍加を促進することで根の成長を促進していると考えられる。

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論文)避陰反応による分枝と胚軸伸長を制御する因子

2013-04-10 22:05:51 | 読んだ論文備忘録

CONSTANS-LIKE 7 regulates branching and shade avoidance response in Arabidopsis
Wang et al.  Journal of Experimental Botany (2013) 64:1017-1024.
doi:10.1093/jxb/ers376

シロイヌナズナゲノムにはCONSTANS-LIKE(COL)タンパク質をコードする遺伝子が17個存在している。COLタンパク質はB-boxドメインとCCT(CO、COL、TOC1)ドメインを有したB-boxファミリー転写因子で、シロイヌナズナで最初に同定されたCOLタンパク質のCONSTANS(CO)は日長に感応した花成の制御において重要な役割を演じている。系統樹解析からCOL 遺伝子は3つのクレイドに分けられ、クレイドI、クレイドIIに属するCOL 遺伝子のいくつかについては機能解析がなされているが、クレイドIIIに属するCOL 遺伝子については解析がなされていない。中国 湖南大学のLiu らと中国農業科学院のLiu らは、シロイヌナズナのクレイドIII COL 遺伝子のCOL7 について解析を行なった。35S プロモーターによりCOL7 を恒常的に発現する個体(35:COL7 )とT-DNA挿入col7 変異体表現型を野生型と比較したところ、1鉢に1株の栽植密度で長日条件で栽培した個体では、35S:COL7 系統は野生型やcol7 変異体よりもロゼットからの分枝数が多くなっていた。しかし、1鉢で20個体を栽培する高栽植密度条件で育成すると35S:COL7 系統の分枝増加は抑制された。分枝は栄養条件や光条件(避陰反応)による制御を受けていることから、低栽植密度育成個体を低赤色:遠赤色光比の条件で育成したところ、35S:COL7 系統の分枝が抑制された。したがって、高栽植密度による赤色:遠赤色光比の低下が35S:COL7 系統の分枝数の減少を引き起こしていると考えられる。高赤色:遠赤色光比条件と低赤色:遠赤色光比条件で分枝数を比較すると、35S:COL7 系統では4倍以上の差があるのに対して、野生型とcol7 変異体での差は2倍以下であった。よって、COL7 は日陰条件での分枝形成の抑制に関与していると考えられる。避陰反応(SAS)として、シロイヌナズナは低赤色:遠赤色光比条件に応答して胚軸伸長を促進させる。35S:COL7 系統、col7 変異体、野生型植物を赤色光下で育成すると胚軸伸長に差は見られないが、遠赤色光下で育成すると35S:COL7 系統の胚軸は野生型よりも長くなり、col7 変異体は短くなった。低赤色:遠赤色光比条件下でcol7 変異体の胚軸伸長は抑制されるが、高赤色:遠赤色光比条件下では胚軸伸長の抑制が見られなかった。よって、COL7 は日陰条件に応答して胚軸伸長を促進する典型的なSASに関与していると考えられる。低赤色:遠赤色光比条件下で育成した芽生えを高赤色:遠赤色光比条件下に移すとCOL7 転写産物量は急速に減少した。逆に、高赤色:遠赤色光比条件下から低赤色:遠赤色光比条件下に移すと一過的に転写産物量が増加し、その後基底レベルに戻った。COL7タンパク質量の光条件による変化を見たところ、芽生えを暗所から赤色光もしくは遠赤色光条件に移すとタンパク質蓄積量が一過的に増加し、その後徐々に低下していった。よって、赤色光、遠赤色光はCOL7タンパク質の安定性を増加させていると考えられる。また、高赤色:遠赤色光比条件ではCOL7タンパク質の安定性が低下し、低赤色:遠赤色光比条件では安定性が増していた。したがって、COL7 の発現は日陰条件によって転写レベル、転写後レベルで増加しており、COL7 の発現はSASの制御に関与していることが示唆される。bHLHタンパク質のPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 3−LIKE1(PIL1)はSASに関与しており、低赤色:遠赤色光比条件でPIL1 転写産物量が増加することからSASのマーカーとして利用されている。35S:COL7 系統での低赤色:遠赤色光比条件によるPIL1 発現誘導量は野生型よりも高く、col7 変異体では低くなっていた。高赤色:遠赤色光比条件で育成した芽生えでのPIL1 転写産物量は、col7 変異体では野生型よりも僅かに高く、35S:COL7 系統では低くなっていた。逆に、低赤色:遠赤色光比条件でのPIL1 転写産物量は、col7 変異体では野生型よりも僅かに低く、35S:COL7 系統では高くなっていた。したがって、COL7は低赤色:遠赤色光比条件ではPIL1 転写産物量を増加させ、高赤色:遠赤色光比条件では減少させていることが示唆される。以上の結果から、COL7はSASに応答した分枝と胚軸伸長を制御する因子として機能していると考えられる。

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論文)根分裂組織の大きさを制御する因子

2013-04-08 21:19:40 | 読んだ論文備忘録

Control of Root Meristem Size by DA1-RELATED PROTEIN2 in Arabidopsis
Peng et al.  Plant Physiology (2013) 161:1542-1556.
doi:10.1104/pp.112.210237

中国科学院遺伝学発生生物学研究所Li らは、シロイヌナズナの種子や器官が大型化するda1-1 変異体(DAは中国語で「大きい」を意味する)を単離した。DA1タンパク質は2つのユビキチン結合モチーフ(UIM)と1つの亜鉛結合LIMドメインを含んでおり、細胞増殖を制限することによって器官サイズを制御していると考えられている。今回、1つのLIMドメインのみを有しているDA1-RELATED PROTEIN2(DAR2)について解析を行なった。T-DNA挿入dar2 変異体は、芽生えの一次根の成長が遅く、野生型よりも一次根が短くなった。DAR2 を過剰発現させた形質転換体の一次根の長さは野生型と同等であることから、DAR2は他の因子と共に根の分裂組織の成長に対して冗長的に作用していると思われる。dar2 変異体の根分裂組織は野生型よりも小さく、分裂組織の細胞数が減少し、細胞分裂している細胞数も少なくなっていた。dar2 変異体は一次根分裂組織の細胞分裂が減少している代わりに、細胞が野生型よりも長くなっており、DAR2 は根分裂組織の細胞伸長/分化に影響していることが示唆される。DAR2 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体を用いてDAR2 遺伝子の発現パターンを調査したところ、胚発達過程ではDAR2 の発現は見られず、発芽1日目で一次根の維管束で発現が見られるようになり、5日目では根の移行領域と伸長領域の境界で発現のピークが見られた。移行領域の横断切片を見ると、DAR2 は内鞘と師部で発現していたが、木部では発現していなかった。根の細胞分裂を制御しているオーキシンはDAR2 の発現を抑制し、移行領域での細胞分化に作用しているサイトカイニンはDAR2 の発現には関与していなかった。野生型植物では、低濃度のオーキシン処理によって根分裂組織の細胞数が増加するが、dar2 変異体ではその効果が見られなかった。サイトカイニン処理をした根分裂組織は細胞数が減少するが、dar2 変異体ではサイトカイニンに対する感受性が低下していた。したがって、オーキシンやサイトカイニンによる根分裂組織の大きさの制御にDAR2 が関与していることが示唆される。オーキシンとサイトカイニンは、オーキシンシグナル伝達の抑制因子であるSHORT HYPOCOTYL2(SHY2)の量を制御することで根分裂組織の大きさを拮抗的に制御している。shy2-2 機能獲得変異体の根は分裂組織が小さくなり短くなるが、dar2 shy2-2 二重変異体の根長と分裂組織の大きさはdar2 単独変異体と同程度であった。shy2-31 機能喪失変異体の根分裂組織の細胞数は増加するが、dar2 shy2-31 二重変異体の根分裂組織の大きさはdar2 単独変異体と同程度であった。したがって、根分裂組織の大きさに関して、dar2 変異はshy2 よりも上位にあり、shy2 変異体での根分裂組織の大きさに関する表現型はDAR2 の機能に依存していると考えられる。shy2-2 変異体、shy2-31 変異体共にDAR2 の発現に変化は見られなかったが、shy2-2 機能獲得変異体はサイトカイニン処理をすることで伸長領域および移行領域でのDAR2 の発現量が減少した。この結果は、shy2-2 変異体はサイトカイニンに対して感受性が高いという過去知見と一致している。酵母two-hybridアッセイでSHY2とDAR2は相互作用を示さなかった。よって、DAR2は根分裂組織の大きさの制御においてSHY2の下流において作用していると考えられる。SHY2 プロモーターに直接結合することが知られているARR1転写因子の変異体arr1-4 は根分裂組織の細胞数が増加するが、arr1-4 dar2 二重変異体の根分裂組織はdar2 変異体に類似していた。よって、dar2 変異はarr1 変異の上位にあると考えられる。サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異体はSHY2 発現が抑制されるために根分裂組織が大きくなるが、これらの変異体ではDAR2 の発現量が増加し、これらの変異体にdar2 変異を導入した二重変異体ではdar2 単独変異体と類似した表現型となった。よって、サイトカイニンやSHY2 による根分裂組織の大きさの制御はDAR2 を介してなされていると考えられる。サイトカイニンは根分裂組織のオーキシンの輸送や分布に影響を及ぼして分裂組織の大きさを制御している。dar2 変異体ではオーキシン応答レポーターDR5:GUS/GFP の発現部位が縮小していることから、DAR2 は根分裂組織での正常なオーキシン分布に影響を及ぼしていると考えられる。アイソトープラベルしたオーキシンを用いた試験から、dar2 変異体ではオーキシンの移動量が減少していることがわかった。そこで、根の移行領域の維管束で発現し、分裂組織の大きさの制御に関与しているオーキシン排出キャリアPIN1PIN3PIN7 の発現を調査したところ、dar2 変異体ではPIN3PIN7 の発現量が低下していることがわかった。野生型植物では、PIN1PIN3PIN7 の発現はサイトカイニン処理によって抑制されるが、dar2 変異体ではPIN3PIN7 の発現に対するサイトカイニンによる抑制効果が低下していた。したがって、DAR2はサイトカイニンによるPIN3PIN7 の発現制御に関与していることが示唆される。根分裂組織の大きさは幹細胞の活性によって制御されていることから、DAR2 が根端分裂組織幹細胞の活性を制御しているかを見たところ、dar2 変異体は静止中心(QC)細胞の分裂活性が野生型よりも高いことがわかった。また、dar2 変異体のコルメラ幹細胞(CSC)に相当する細胞には、通常は存在しないデンプン粒が見られ、CSCで特異的に発現するJ2341 の発現量が低下していることがわかった。したがって、DAR2 は根端分裂組織幹細胞の活性に対して影響を及ぼしていることが示唆される。根分裂組織の幹細胞の活性は、SHORT ROOTSHR )/SCARECROWSCR )とPLETHORA1PLT1 )/PLT2 の2種類の転写因子の関与した経路によって維持されている。DAR2 とそれぞれの転写因子との二重変異体の表現型の解析から、DAR2SCR /SHR 経路とは独立して根分裂組織の大きさを制御しているが、PLT1 /PLT2 経路とは同じ経路で機能していることが示唆される結果を得た。PLT1 /PLT2 の発現はサイトカイニンによって抑制されることが知られており、サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異体ではPLT1 /PLT2 の発現量が増加する。サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異にdar2 変異が加わった二重変異体では、PLT1 /PLT2 の発現量増加が抑制されることから、サイトカイニン変異体でのPLT1 /PLT2 の発現量増加にはDAR2 の機能が必要であり、DAR2 はサイトカイニンによるPLT1 /PLT2 の発現制御はDAR2 を介してなされていることが示唆される。以上の結果から、DAR2はオーキシンの求頂的な輸送と分布に影響を及ぼし、サイトカイニンやSHY2の下流、PLT1/PLT2の上流において根分裂組織の成長を制御していると考えられる。

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論文)クロマチンリモデリング因子PICKLEによる胚軸伸長制御

2013-04-03 21:16:08 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis Chromatin Remodeling Factor PICKLE Interacts with Transcription Factor HY5 to Regulate Hypocotyl Cell Elongation
Jing et al.  The Plant Cell (2013) 25:242-256.
doi:10.1105/tpc.112.105742

中国科学院植物研究所Lin らは、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体集団の中から、赤色光下で育成した芽生えの胚軸が短く、子葉が大きいenhanced photomorphogenic1epp1 )変異体を単離した。この表現型は遠赤色光や青色光で育成した芽生えでも観察され、暗所で育成した芽生えは胚軸が僅かに短くなり、子葉が開き、茎頂フックが展開していた。また、epp1 変異体は野生型に比べてクロロフィルやアントシアニンの蓄積量が多く、カルコンシンターゼをコードするCHS 遺伝子やクロロフィルa/b結合タンパク質をコードするCAB2 遺伝子といった光によって発現誘導される遺伝子の転写産物量が光条件に関係なく増加していた。これらの結果から、epp1 変異体は弱い光形態形成様変異を示していると考えられる。epp1 変異体に光受容体の変異を導入したepp1 phyAepp1 phyBepp1 cry1 二重変異体をそれぞれ遠赤色光、赤色光、青色光条件で育成したところ、いずれの二重変異体も光受容体単独変異体よりも胚軸が僅かに短くなった。したがって、EPP1は胚軸伸長の正の制御因子として光受容体の下流において作用していることが示唆される。epp1 cop1 二重変異体はそれぞれの単独変異体よりも胚軸がさらに短くなり、子葉が開き、アントシアニンが蓄積したことから、EPP1はCOP1と並行して作用していると考えられる。epp1-1 変異体は、ATP依存性クロマチンリモデリング因子であるPICKEL(PKL)をコードしているAt2g25170の最後のエクソンにT-DNAが挿入されており、pkl-1 変異体もepp1 変異体と同じ表現型を示した。明所育成芽生えのPKL 発現量は暗所育成芽生えよりも低く、芽生えを暗所から明所に移すと12時間後には発現量の低下が観察された。また、赤色光下で育成したphyB 変異体、遠赤色光下で育成したphyA 変異体、青色光下で育成したcry1 変異体でのPKL 転写産物量は野生型よりも増加していた。したがって、光を介したPKL の発現抑制はフィトクロムやクリプトクロムによって引き起こされていると考えられる。PKL は成熟個体において様々な組織において恒常的に発現していることが報告されている。PKL プロモーター制御下でレポーターとしてGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体では、光条件に関係なく子葉と根でGUS活性が見られ、暗所育成芽生えでは胚軸の上部において強いGUS活性を示した。明所育成芽生えのGUS活性は弱いが、光強度を弱めると胚軸のGUS活性は増加した。したがって、PKL の発現は胚軸伸長の程度と正の相関があることが示唆される。また、光受容体の変異体ではGUS活性が強くなっていることから、光はフィトクロムやクリプトクロムを介して胚軸でのPKL の発現を抑制しており、PKLは胚軸の伸長促進に関連していると考えられる。明所育成芽生えは暗所育成芽生えよりもPKLタンパク質量も少ないことから、光照射はタンパク質レベルにおいてもPKLを抑制していることが示唆される。epp1 変異体の胚軸は野生型と比較して細胞数に変わりはないが細胞の長さが短く、PKLは胚軸の伸長において細胞伸長を制御していることが示唆される。PKLによる胚軸細胞伸長制御の分子機構を解明するために、細胞伸長に関与するとされるEXTENSIN3EXT3 )、EXPANSIN2EXP2 )、XYLOGLUCAN ENDOTRANSGLUCOSYLASE/HYDROLASE17XTH17 )、XYLOGLUCAN ENDOTRANSGLYCOSYLASE6XTR6 )、DWARF4DWF4 )、INDOLE-3-ACETIC ACID INDUCIBLE19IAA19 )の発現量を見たところ、これらの遺伝子の転写産物量はepp1 変異体では大きく低下していることがわかった。よって、PKLはこれらの遺伝子の活性化に関与していると考えられる。抗PKL抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、PKLはDWF4EXT3XTH17XTR6 遺伝子と直接相互作用をすることが確認された。PKLによる転写制御はヒストンH3のLys27のトリメチル化(H3K27me3)が関与しており、epp1 変異体では細胞伸長に関与している遺伝子のH3K27me3量が増加していた。よって、PKLは、おそらく細胞伸長に関与する遺伝子のクロマチンのH3K27のトリメチル化を阻害することで細胞伸長を促進していると考えられる。PKLは転写因子と相互作用をして遺伝子発現調節を行なっていると考えられ、全ての光条件での光形態形成を抑制することから、相互作用をしている転写因子としてはELONGATED HYPOCOTYL5(HY5)が最も有力な候補として考えられる。そこで、酵母two-hybrid解析を行なったところ、PKLのATPアーゼドメインがHY5と相互作用をすることがわかった。また、BiFCアッセイや共免疫沈降試験から、PKLとHY5は光条件に関係なく細胞核で相互作用をすることが確認された。epp1 hy5 二重変異体芽生えは、全ての光条件でそれぞれの単独変異体の中間の胚軸長となり、赤色光下では野生型と胚軸長が同等となった。よって、PKLとHY5は胚軸伸長を互いに拮抗して制御していると考えられる。HY5はターゲット遺伝子のプロモーター領域のACGTを含んだエレメントもしくはG-box(CACGTG)モチーフに結合することが知られており、EXT3EXP2XTH17XTR6DWF4IAA19 遺伝子の調節領域や転写開始点近傍のコード領域にはこれらのエレメントが含まれている。酵母one-hybridアッセイ試験により、HY5はG-boxモチーフを介してIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子の調節領域に結合することが確認された。また、ChIP試験から、HY5もPKLもIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子のG-boxモチーフを含む調節領域と結合することが確認され、HY5は暗所育成芽生えよりも明所育成芽生えの方が結合量が僅かに増加するのに対して、PKLは明所育成芽生えでの結合量が減少することがわかった。PKLの調節領域への結合は、hy5 hyh 二重変異体では減少していることから、PKLとHY5(およびHYH)は細胞伸長関連遺伝子に同時に結合し、HY5とHYHはPKLをリクルートしていると考えられる。EXP2IAA19 の発現量は芽生えを暗所から明所に移すと減少するが、hy5 変異体では野生型よりも発現量が高く、epp1 変異体では低くなっていた。また、epp1 変異体でHY5活性が失われるとEXP2IAA19 の発現量は高い状態が維持された。したがって、PKLとHY5はターゲット遺伝子の発現制御に対して拮抗的に作用していると考えられる。epp1 変異体ではIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子の調節領域のクロマチンのH3K27me3が増加し、hy5 変異体では減少していた。よって、PKLは細胞伸長関連遺伝子のH3K27me3量の制御においてHY5と拮抗しており、HY5はH3K27のトリメチル化を促進していると考えられる。

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論文)JAZタンパク質による花の脱離制御

2013-03-29 13:13:42 | 読んだ論文備忘録

A Jasmonate ZIM-Domain Protein NaJAZd Regulates Floral Jasmonic Acid Levels and Counteracts Flower Abscission in Nicotiana attenuata Plants
Oh et al.  PLoS ONE (2013) 8:e57868.
doi:10.1371/journal.pone.0057868

ジャスモン酸(JA)は植物の成長や防御応答に関与している植物ホルモンで、Jasmonate ZIM-Domain(JAZ)タンパク質はJAシグナル伝達の負の制御因子として機能している。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Galis(現 岡山大学資源植物科学研究所)らは、野生タバコNicotiama attenuata に12個存在するJAZ 遺伝子のうちのNaJAZd について詳細な機能解析を行なった。N. attenuata のロゼット葉に傷害を与えるとNaJAZd の発現量が一過的に増加し、傷害葉にタバコスズメガ(Manduca sexta )の口腔分泌液(OS)を処理すると発現量がさらに増加した。RNAiによってNaJAZd を発現抑制したタバコ(irJAZd)でのタバコスズメガ幼虫の成長は、野生型植物を摂食させた場合と差は見られなかった。また、irJAZd系統のロゼット葉に傷害を与えてOS処理した後のJA-Ile、JA、サリチル酸、アブシジン酸といった防御応答ホルモン類の変化は、野生型植物と大きな違いは見られなかった。しかし、ニコチアナ属植物の虫害応答二次代謝産物であるニコチンの含量は有意に増加した。したがって、NaJAZdはニコチンの生合成もしくは根から葉への輸送を負に制御していることが示唆される。irJAZd系統を本来の生育地である米国ユタ州の砂漠で育成し、生物・非生物ストレスに対する応答性を野生型植物と比較したが、大きな違いは見られなかった。irJAZd系統は栄養成長に関して野生型植物との違いは見られなかったが、種子生産量が少なく、これは櫺未慮詐によるものであった。しかしながら、花芽の数、花弁の開き具合、花粉の成熟、柱頭の長さはirJAZd系統と野生型植物で違いは見られなかった。irJAZd系統の蕾数は野生型植物と同等もしくはやや多く、花冠長も長めであったが、脱離してしまう花が多いために開花した花の数が減少していた。花の脱離は花弁が完全に開いた花において見られ、未熟な花や蕾では起こらなかった。したがって、NaJAZdは花の発達後期の脱離を抑制する機能があると考えられる。野生型植物の花の発達過程でのNaJAZd の発現量を見ると、蕾から花冠の伸長過程までの期間で高く、花弁が開く時期には発現量は減少していた。花の脱離を制御するシグナルの1つであるエチレンは、花が発達すると共に発生量が増加したが、野生型植物とirJAZd系統でエチレン発生量の差は見られなかった。花の発達過程でのJAおよびJA-Ileの含量は、irJAZd系統では野生型植物よりも少なくなっていた。花の発達過程のうちの、雄ずいの成熟、花弁の展開、花蜜の生産の制御に関与しているR2R3-MYB転写因子NaMYB305 の発現を見たところ、野生型植物もirJAZd系統も花の発達に伴なって同じように転写産物量が増加していったが、開花した花でのNaMYB305 転写産物量はirJAZd系統では野生型植物よりも少なくなっていた。野生型植物とirJAZd系統の傷害+OS処理ロゼット葉での遺伝子発現を網羅的に解析したところ、一次代謝に関与している遺伝子の幾つかの発現量がirJAZd系統において減少していた。したがって、irJAZd系統では、葉から花へ供給される栄養源が少ないために花が脱離することも考えられる。

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論文)根の重力刺激応答におけるジベレリンの役割

2013-03-27 05:51:10 | 読んだ論文備忘録

Asymmetric gibberellin signaling regulates vacuolar trafficking of PIN auxin transporters during root gravitropism
Löfke et al.  PNAS (2013) 110:3627-3632.
doi:10.1073/pnas.1300107110

植物器官の重力屈性は、上側と下側のオーキシンの不均等分布によってもたらされ、茎では下側の組織のオーキシン蓄積が細胞伸長を促進して上側へと屈曲し、根では下側の組織のオーキシン蓄積が細胞伸長を阻害して下側へと屈曲する。また、イネ、トウモロコシ、オオムギといった単子葉植物においては、オーキシンに加えてジベレリン(GA)の不均等分布も重力屈性に関与していることが報告されている。ドイツ ゲッティンゲン大学植物科学研究所Teichmann らとベルギー ゲント大学Montagu らは、シロイヌナズナを用いて根の重力屈性におけるGAの役割を解析した。抗GA抗体を用いてシロイヌナズナの根のGA分布を見たところ、根端部細胞分裂領域と伸長領域の表皮細胞に抗GAシグナルが検出された。重量刺激を与えると、均等であったGAシグナルが不均等分布を示し、下側のシグナルが強くなり、上側のシグナルが弱くなった。この時のGA応答の下流の変化を見るために、DELLAタンパク質REPRESSOR OF GA1-3(RGA)にGFPを付加した融合タンパク質を発現させたところ、重力刺激を受けることによって根端の下側のGFP-RGAシグナルが減少することがわかった。これらの結果から、重力刺激を受けた根では、オーキシンだけでなく、GAも下側の含量が高くなる不均等分布を示すことが明らかとなった。重力刺激を受けた際の両植物ホルモンの変化速度を比較したところ、GAの不均等分布はオーキシンの不均等分布が確立された後に形成されることがわかった。GA生合成阻害剤ウニコナゾール処理をした野生型植物、GA生合成変異体ga1-3 、GAシグナル伝達の優性阻害変異体gaiΔ17 のようにGA量やGAシグナルが低下した個体や、GA処理をした野生型植物や5つのDELLAタンパク質遺伝子全てが破壊された五重変異体のようにGAシグナルが常に過剰となっている個体は、根の重力に対する応答性が低下していた。GA処理をしたりウニコナゾール処理をしてGA量を操作した根は、重力刺激を与えた後の不均等なオーキシン応答が形成されなくなっていた。したがって、重力刺激によるオーキシン応答の不均等性にはGA量の変化が重要であることが示唆される。重力刺激によるオーキシン分布の変化には、オーキシン排出キャリアのPINタンパク質が関与しており、pin2 変異体のようにPINタンパク質の機能が喪失した個体や、PIN1 を恒常的に発現させた個体(35S::PIN1 )は重力応答性が失われる。ウニコナゾール処理によってGA生合成を阻害すると、pin2 変異体は表現型が強まり、35S::PIN1 個体では重力応答性が回復した。同様に、GAシグナル伝達の優性阻害変異gaiΔ1735S::PIN1 個体の重力応答性を回復させた。したがって、GAはPINタンパク質を介して根の重力屈性を制御していることが示唆される。35S::PIN1 個体の重力応答性の低下は根の表皮細胞での異所的なPIN1 の発現によるものであるが、35S::PIN1 ×gaiΔ17 個体ではPIN1タンパク質の異所的な分布が抑制されていた。このことから、根の重力屈性におけるGAの効果は、PINタンパク質の存在量の制御に関連していると考えられ、GAはPINタンパク質の代謝回転を阻害していることが示唆される。細胞膜上に局在する各種オーキシントランスポーターについて調査したところ、PINタンパク質のみがGAによって安定性が増加していることがわかった。これは、GAがエンドサイトーシスによるPINタンパク質の液胞への輸送を阻害していることによるものであった。GFPを付加したPIN2タンパク質を発現させた個体を小胞輸送阻害であるブレフェルジンA(BFA)で処理するとPIN2-GFPのシグナルを発する小胞が可視化されるが、予めGA処理をすることでシグナルが強くなり、ウニコナゾール処理をしたりga1-3 変異体ではシグナルが弱くなっていた。したがって、GAはBFA感受性のエンドソームの下流のどこかでPINタンパク質の細胞膜への輸送を促進ていると考えられる。以上の結果から、重力刺激による根でのオーキシンの不均等分布形成において、GAは不均等分布することによって根の下側の組織のPINタンパク質の液胞輸送を阻害し、オーキシン輸送を安定化させていると考えられる。

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論文)ジャスモン酸によるジベレリン生合成の抑制

2013-03-19 20:48:02 | 読んだ論文備忘録

High levels of jasmonic acid antagonize the biosynthesis of gibberellins and inhibit the growth of Nicotiana attenuata stems
Heinrich et al.  The Plant Journal (2013) 73:591-606.
doi: 10.1111/tpj.12058

ジャスモン酸(JA)を過剰に生産するシロイヌナズナ変異体や繰り返し傷害を受けることでJA蓄積量が増加したシロイヌナズナは矮小化する。また、野生タバコ(N. attenuata )の2種類のカルシウム依存タンパク質キナーゼCDPK4CDPK5 を発現抑制(irCDPK4/5)すると虫害や傷害によるJA蓄積量が増加し、茎の伸長が抑制される。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Wu らは、N. attenuata を用いて、JAによる茎伸長抑制機構を解析した。irCDPK4/5系統の髄細胞は野生型と比べると小さく、このことが茎の伸長萎縮と関連していると考えられる。JAは、植物体に二次代謝産物の蓄積をもたらすことから、成長に必要な炭素源が二次代謝産物の生産に利用されることによって茎の伸長が抑制されることが推測される。そこで、フェニルプロパノイド等の生合成を制御しているMYB8転写因子をirCDPK4/5系統で発現抑制したところ、二次代謝産物量は減少したが、茎の伸長に関してはirCDPK4/5系統と同程度であった。したがって、irCDPK4/5系統での茎の伸長抑制は炭素の不適正配分によって生じているのでないと思われる。irCDPK4/5系統のわい化は、ジベレリン(GA)の欠損もしくは感受性低下した個体の表現型と類似していることから、irCDPK4/5系統をGA処理したところ、茎の成長に回復が見られた。この時、二次代謝産物含量には大きな影響が見られなかった。したがって、二次代謝産物の生産への炭素の過剰配分が茎の成長に影響しているとしても、JAによる茎の伸長抑制に対する影響はわずかであると考えられる。irCDPK4/5系統の内生GA量は、GA前駆体も生物活性を有するGAも野生型よりも少ないことがわかった。また、irCDPK4/5系統でJA生合成酵素アレンオキシドシクラーゼ(AOC)を発現抑制したところ、GA量が野生型と同等になった。irCDPK4/5系統の茎でのGA生合成初期過程に関与している酵素遺伝子の発現量を見たところ、ent-コパリル二リン酸シンターゼ(CPS )の発現量に変化はなく、ent-カウレンシンターゼ(KS )、ent-カウレンオキシダーゼ(KO )の発現量は僅かに減少し、ent-カウレン酸オキシダーゼ(KAO )の発現量は2倍以上増加していた。GA生合成の最終段階を触媒しているGA 20-オキシダーゼ(GA20ox )の発現量は野生型の2 %しかなかったが、GA 3-オキシダーゼ(GA3ox )の発現量は野生型の1.7倍あった。また、GAの異化を触媒するGA 2-オキシダーゼ(GA2ox )の発現量は野生型の2.7倍あった。さらに、GA受容体の発現量を見たところ、GID1ac の発現量に変化は見られなかったが、GID1b の発現量は11倍に増加していた。irCDPK4/5系統でAOC を発現抑制して内生JA量を低下させると、これらのGA関連酵素遺伝子の発現量変化が回復した。以上の結果から、JAはGA生合成酵素遺伝子GA20ox の転写産物蓄積を阻害することでGA生合成を抑制していると考えられる。JAシグナルがGA20ox 転写産物量を抑制する機能については明らかではない。

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論文)トレハロース-6-リン酸による花成制御

2013-03-17 18:29:04 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Flowering by Trehalose-6-Phosphate Signaling in Arabidopsis thaliana
Wahl et al.  Science (2013) 339:704-707.
DOI: 10.1126/science.1230406

花成は様々な環境シグナルや内生シグナルによって制御されており、炭水化物も花成制御において重要な役割を演じていると考えられている。特にトレハロース-6-リン酸合成酵素1(TPS1)によって合成されるトレハロース-6-リン酸(T6P)は炭素シグナル分子として重要である。ドイツ マックス・プランク 分子植物生理学研究所のWahl ら、および発生細胞生物学研究所のSchmid らは、TPS1 の発現を人工マイクロRNAによってノックダウンすることで内生T6P量が減少したシロイヌナズナ(35S:amiR-TPS1 )は、花成遅延を起こすことを見出した。T6Pのシグナルが花成における日長シグナルと関連しているかを調査するために、内生T6P量の概日変化を見たところ、T6P量は明期の終わりに最大となり、これはCONSTANS(CO)によるFLOWERING LOCUS TFT )の発現誘導と一致していた。tps1-2 変異体(tps1-2 変異体は胚性致死となるので化学誘導GVG:TPS1 コンストラクトを導入してある)では、CO およびCO の上流に位置する調節因子のGIGANTEAGI )の発現パターンに変化は見られなかったが、FT およびTWIN SISTER OF FTTSF )の発現誘導が見られなくなっていた。よって、T6PのシグナルはFT およびTSF の発現に関与していると考えられる。ft-10 35S:amiR-TPS1 二重変異体の長日条件での花成は、ft-10 変異体よりもわずかに遅れが見られる程度であることから、2つの遺伝子は同じ経路で作用していると考えられる。 35S:amiR-TPS1 系統でFT を過剰発現させると花成遅延が抑制されることから、T6Pの経路はFT の上流で作用していることが示唆される。ft-10 変異体の花成遅延は花成が誘導される長日条件下でのみ起こるが、tps1-2 GVG:TPS1 変異体の花成遅延は日長条件に関係なく起こった。したがって、T6P経路は日長以外の花成誘導シグナルも抑制しており、日長変化を感応している葉とは別の組織において機能していると考えられる。そのような組織は茎頂分裂組織(SAM)である可能性が高いことから、in situ ハイブリダイゼーションでSAMでのTPS1 の発現を見たところ、SAMの中心部を取り巻くように分裂組織側面での発現が見られた。また、SAMのT6P含量も花成誘導の間に増加し、T6P含量とショ糖含量の間に正の相関があることがわかった。TPS1 を幹細胞周辺で特異的に発現するCLV3 プロモーター制御下で発現させたシロイヌナズナ(CLV3:TPS1 )は長日条件でも短日条件でも花成が促進され、大腸菌由来のT6P分解酵素トレハロース-6-リン酸フォスファターゼotsBCLV3 プロモーター制御下で発現させたシロイヌナズナ(CLV3:otsB )は逆に花成遅延を起こした。また、ft-10 変異体でCLV3:TPS1 を発現させると、花成遅延が抑制された。したがって、T6P経路は、FT とは独立して、分裂組織において花成を誘導していることが示唆される。SAMにおけるT6P経路のターゲットを同定するためにマイクロアレイ解析を行なったところ、tps1-2 GVG:TPS1 変異体では植物の齢に応じて花成を誘導するSQUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKE 3SPL3 )の発現量が低下していた。SPL 遺伝子(SPL3SPL4SPL5 )の転写産物量はmiR156によって制御されており、tps1-2 GVG:TPS1 変異体では成熟miR156量が野生型よりも多くなっていた。植物の齢が進むにつれてtps1-2 GVG:TPS1 変異体でも野生型植物でもmiR156量は減少し、SPL 転写産物量が増加していったが、tps1-2 GVG:TPS1 変異体でのSPL 転写産物の増加は緩やかであった。したがって、T6P経路はSAMでのSPL 遺伝子の発現を一部はmiR156を介して制御していることが示唆される。miR156を恒常的に発現させると花成遅延を起こすが、そこでさらにTPS1 の発現を抑制(35S:amiR-TPS1 )すると相加的に花成が遅延した。また、MIM156 を恒常的に発現させてmiR156量を減少させると、tps1-2 GVG:TPS1 変異体の花成遅延が抑制された。したがって、miR156の経路は部分的にはT6Pの経路とは独立して作用していると考えられる。SPLタンパク質は、MADS-box転写因子をコードするSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS 1SOC1 )とFRUITIFULFUL )の発現を制御することでFT の発現を促進している。35S:amiR-TPS1 系統、tps1-2 GVG:TPS1 変異体ともにSOC1FUL の発現量に変化が見られないことから、T6P経路はmiR156-SPL経路とは主に独立してFT の発現を制御していると考えられる。

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論文)トマトの複葉形成と分枝を制御するMYB転写因子

2013-03-15 20:25:19 | 読んだ論文備忘録

Trifoliate encodes an MYB transcription factor that modulates leaf and shoot architecture in tomato
Ahmad Naz et al.  PNAS (2013) 110:2401-2406.
doi:10.1073/pnas.1214300110

トマトの葉は、末端の小葉と3、4対の横向きの小葉で構成されており、求基的に発達する。小葉は通常、浅裂もしくは鋸歯があり、これらの切れ込みは小葉原基から求頂的に発達する。しかしながら、幼植物体の複葉の構造は成熟個体よりも単純であり、異型葉性(heteroblasty)を示す。トマトtrifoliatetf )変異体の葉は、葉身が細長く、末端と1対の側面からの3枚の小葉で構成され、葉柄が長く、切れ込みが少ない。また、tf 変異体は腋芽形成が抑制され、多くの葉腋で分枝が見られない。しかしながら、花序の下の2つの葉腋では腋芽形成が起こることから、仮軸成長の性質は維持されている。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Theres らは、tf 変異体での葉の形成過程を詳細に観察し、tf 変異体の側面の小葉が形成される葉軸分裂組織は野生型よりも細く、細胞数が少なく、細胞間隙が広いことを見出した。このことから、tf 変異体の葉軸の分裂組織は細胞分裂が低下しているが細胞分化は速いことが示唆される。走査型電子顕微鏡で観察すると、tf 変異体の末端小葉の表皮細胞は野生型よりも大きく、若い葉原基でのトライコームの発達が早く、密度も高いことがわかった。これらの観察結果から、tf 変異体の葉原基は成長が速く、早い段階で分化が起こっていると考えられる。tf 変異体の表現型はR2R3 MYB転写因子の機能喪失によるもので、Tfタンパク質はシロイヌナズナLATERAL ORGAN FUSION1(LOF1)およびLOF2と高い類似性を示す。LOF1、LOF2は側生器官の分離や副芽形成に関与している。Tf mRNAは栄養成長期の茎頂、茎、花で検出され、若い葉では非常に量が少なく、根では検出されない。Tf 転写産物は栄養成長期の茎頂分裂組織に広く分布し、特に新しく葉原基が形成される部位での発現が高い。若い葉原基では、Tf の発現は向軸側に限定されており、成熟した葉原基では葉軸分裂組織、小葉、小葉と葉軸の境界領域で発現が見られる。Tf を35Sプロモーターで恒常的発現させた形質転換トマトの葉は、浅裂や鋸歯が深くなり、小葉の数が増加した。また、一次小葉の数に変化は見られなかったが、二次、三次小葉数は野生型よりも多くなった。さらに、古い葉の葉腋部から腋芽が形成されたが、仮軸分枝に変化は見られなかった。トマトの複葉は幼植物体から成熟個体になるにつれて小葉数は増加していく。幼苗の最初の本葉は3枚の小葉で構成されているが、これは成熟したtf 変異体の複葉と類似している。幼植物体から成熟個体へ移行するにつれて、葉原基で発現するTf 量が増加しており、これは小葉数の増加と一致していた。トマトの葉の構築は、KNOTTED1-LIKEKNOX1 )遺伝子の発現に依存しており、葉の発達過程においてKNOX1LeT6 /TKn2 )の発現パターンや発現量に異常が見られることで切れ込みの多い葉を形成するclau 変異、bip 変異、Me 変異にtf 変異が加わると、tf 変異体と同様の3枚の小葉からなる葉となった。したがって、tf 変異はclaubipMe の各変異よりも上位に位置している。しかしながら、個々の小葉の切れ込みはclaubipMe の各変異体のように増加していた。したがって、claubipMe の各変異によるKNOX1 遺伝子の発現異常はtf 変異体の葉の基部での小葉形成に対しては十分な効果を示さないが、末端部の葉の構造変化を引き起こしていることが示唆される。野生型トマトとtf 変異体でKNOX1 遺伝子の発現量は同等であり、TfKNOX1 の発現制御はしていないことが示唆される。オーキシンは、葉原基、維管束、鋸歯の位置決定において重要であり、トマト葉原基をオーキシン処理すると異所的な小葉形成や葉身成長が起こる。tf 変異体の葉原基を部分的もしくは全体的にIAA処理をして形態を観察したところ、どちらの処理も異所的な小葉形成は起こさずに、小葉基部の葉身が拡大成長して1つの葉になってしまった。さらに、AUX/IAA因子がノックアウトされたことによって葉身が拡大成長するe 変異にtf 変異を導入した二重変異体は、tf 変異体の葉と同様の形態を示し、葉縁鋸歯のない3枚の小葉の葉となった。よって、e 変異体で観察される葉身の拡張にはTf 活性が必要であることが示唆される。以上の結果から、Tf は複葉形成とシュート分枝の両方を制御していることが示唆される。

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