Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)根の伸長領域内皮細胞でのジベレリン蓄積

2013-04-26 13:26:13 | 読んだ論文備忘録

Gibberellins accumulate in the elongating endodermal cells of Arabidopsis root
Shan et al.  PNAS (2013) 110:4834-4839.
doi:10.1073/pnas.1300436110

ジベレリン(GA)は植物の様々な成長過程を制御しており、代謝やシグナル伝達について多くの研究がなされているが、GAの輸送や分布に関しては不明な点が残されている。米国 カリフォルニア大学サンディエゴ校Estelle らは、蛍光色素で標識したGA(GA-Fl )をシロイヌナズナ芽生えに与えて、根におけるGAの分布を調査した。その結果、GA-Flは伸長領域の内皮細胞に多く蓄積し、分裂領域や分化領域では非常に少ないことがわかった。伸長領域内皮細胞内でのGA-Fl の分布を見ると、主に液胞に蓄積が見られ、核にも僅かに蓄積していた。GA-Fl の分布が実際の内生GAの分布と一致しているかを確認するために、GA存在下で分解が促進されるDELLAタンパク質のRGAにGFPを付加した融合タンパク質を発現させ、根での分布を見たところ、伸長領域内皮細胞ではシグナルが弱くなっており、このことから実際に内生GA量は伸長領域内皮細胞において高いことが示唆される。GA-Fl の伸長領域内皮細胞に蓄積は、低温(4℃)条件で減少することから、GAの輸送はエネルギーに依存した機構によってなされていると考えられ、GA-Fl の蓄積は芽生えをATP生合成阻害剤処理をすることによって減少した。SCARECROW(SCR)とSHORT-ROOT(SHR)は内皮と皮層の細胞層形成に関与しており、scr-3 変異体では内皮と皮層の両方の性質を持った細胞層が1層のみ形成され、shr-2 変異体では皮層の性質を持った細胞層が1層形成される。scr-3 変異体では、GA-Fl は変異によって1層となった細胞層において強い蛍光を示していたが、shr-2 変異体では蛍光の蓄積が観察されなかった。したがって、伸長中の内皮細胞はGAを蓄積する性質を有していると考えられる。エチレンは芽生えの根の伸長を抑制すること、またエチレンはDELLAタンパク質を安定化させることから、芽生えをエチレン前駆体のACCで処理した際のGA-Fl の分布を見たところ、伸長領域内皮細胞のGA-Fl の蓄積が阻害されることがわかった。そこで、エチレンシグナル伝達の負の制御因子CONSTITUTIVE TRIPLE RESPONSE1 の変異体ctr1-1 と、正の制御因子ETHYLENE INSENSITIVE2 の変異体ein2-5 でのGA-Fl の蓄積を見たところ、ctr1-1 変異体の根の伸長領域内皮細胞ではGA-Fl の蓄積が見られず、ein2-5 変異体の内皮細胞ではACCの添加に関係なくGA-Fl の蓄積が起こった。したがって、エチレンシグナルはGAの分布に影響を及ぼしており、シロイヌナズナの根におけるGAシグナルのエチレンによる制御は、GA輸送の変化が関与していると考えられる。

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論文)内生ブラシノステロイド量を調節するアシルトランスフェラーゼ

2013-04-24 21:05:10 | 読んだ論文備忘録

Homeostasis of Brassinosteroids Regulated by DRL1, a Putative Acyltransferase in Arabidopsis
Zhu et al.  Molecular Plant (2013) 6:546-558.
doi:10.1093/mp/sss144

中国 復旦大学Wang らは、シロイヌナズナのアクティベーションタギング集団の中から、葉柄が短く、葉が丸みを帯び、弱いbrassinosteroid-insensitive1bri1 )変異体のような表現型を示す変異体を単離し、dwarf and round leaf-1drl1-D )と命名した。drl1-D 変異体は、野生型と比較すると、根がやや短く、ロゼット葉が小さいといった特徴が見られた。また、drl1-D 変異体暗所育成芽生えは野生型よりも胚軸が短くなっていた。drl1-D 変異体のブラシノステロイド(BR)応答性は、芽生えを24-エピブラシノライド(eBL)処理した際の胚軸伸長や根の伸長阻害において野生がたと同等であった。よって、drl1-D はBRシグナル伝達に関与してはいないと考えられる。BR処理によって発現抑制されるCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC DWARFCPD )やDWARF4DWF4 )、BR処理によって発現誘導されるSaur_AC1 の発現量を見たところ、CDPDWF4 の発現量は野生型よりも高く、Saur_AC1 の発現量は低くなっていた。したがって、drl1-D 変異体ではBRシグナルに対する応答性が弱まっていると考えられる。BRI1-EMS-SUPPRESSOR 1(BES1)のタンパク質量とリン酸化状態を野生型とdrl1-D 変異体で比較したところ、通常の状態でdrl1-D 変異体はリン酸化型BES1の比率が野生型よりも僅かに高く、eBL処理によってBES1の脱リン酸化が起こるが、drl1-D 変異体では幾らかリン酸化型BES1が残っていた。これらの結果から、drl1-D 変異体のわい化した表現型は内生BR量の減少によって引き起こされているのではないかと推測した。そこで、drl1-D 変異体芽生えのBR含量を見たところ、6-デオキソテアステロン、テアステロン、3-デヒドロ-6-デオキソテアステロンといった前駆体の含量に変化は見られなかったが、6-デオキソティファステロール、ティファステロール、6-デオキソカスタステロンといった一部のBR前駆体が減少していた。よって、これらの前駆体含量の減少がdrl1-D 変異体のわい化した表現型の主な原因となっていると考えられる。drl1-D 変異体では35SエンハンサーエレメントがAt4g3190の開始コドンの2541 bp上流に挿入されており、At4g3190 の発現量が野生型よりも78倍高くなっていた。At4g3190を35Sプロモーターで過剰発現させた形質転換体はdrl1-D 変異体と類似した表現型を示すことから、At4g3190 の過剰発現がdrl1-D 変異体の表現型を引き起こしていると判断した。DRL1 はCoA依存アシルトランスフェラーゼををコードしていた。DRL1 は芽生え、花、長角果で発現が見られ、特に若い葉、一次根、花弁、がく片、長角果で強い発現が見られた。植物体をeBL処理するとDRL1 の発現量は増加することから、DRL1 は生体内のBRシグナルを適正な状態に維持するためのフィードバック制御に関与していると考えられる。アブシジン酸(ABA)はBRシグナル伝達を阻害し、両者は植物の成長過程において拮抗的に作用するが、植物体をABA処理するとDRL1 の発現量は減少した。よって、ABA処理はDRL1 の発現抑制によるBR代謝の低下をもたらしていると考えられる。DRL1 にT-DNAが挿入された変異体の表現型は野生型と同等であることから、シロイヌナズナゲノムにはエステル化によるBR代謝を行なう類似遺伝子が存在すると考えられる。シロイヌナズナゲノムのCoA依存アシルトランスフェラーゼ遺伝子ファミリーを調査したところ、DRL1 の属するサブファミリーには15の遺伝子が含まれていた。これらのうち13遺伝子を過剰発現させたところ、At2g40230とAt5g17540がDRL1 と類似した機能を有していることがわかった。At5g17540At2g40230 が発現抑制された二重変異体は、単独変異体や野生型よりも大型化し、芽生え胚軸が長くなり、CDPDWF4 の発現量が減少し、リン酸化型BES1の比率が僅かに減少していた。したがって、二重変異体はBRシグナル応答が高まっていることが示唆される。DRL1At5g17540At2g40230 が発現抑制された三重変異体は作出することができず、三重変異は致死となると思われる。At5g17540At2g40230 の発現も、DRL1 と同様に、eBL処理によって誘導され、ABA処理によって阻害された。大腸菌に合成させたDRL1タンパク質を用いた試験から、DRL1はCoA依存的に内生BR量を減少させる作用があると推測される。

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論文)サリチル酸によるジャスモン酸シグナル伝達の抑制

2013-04-21 14:26:24 | 読んだ論文備忘録

Salicylic Acid Suppresses Jasmonic Acid Signaling Downstream of SCFCOI1-JAZ by Targeting GCC Promoter Motifs via Transcription Factor ORA59
Van der Does et al.  The Plant Cell (2013) 25:744-761.
doi:10.1105/tpc.112.108548

サリチル酸(SA)とジャスモン酸(JA)は植物の病害や虫害に対する防御応答シグナルを調節するホルモンとして重要な役割を演じており、両者は拮抗的に作用するが、その詳細な機構は明らかとなっていない。オランダ ユトレヒト大学Pieterse らは、SAによるJAシグナル伝達の抑制の分子機構について解析を行なった。JAZタンパク質はJAシグナル伝達の抑制因子として機能していることから、SAによるJA応答の抑制にJAZが関与しているかを調査した。JAZ10にはスプライス変異型(JAZ10.1/2/3/4)があり、JAZ10.4はJasドメインを欠いているためにJAによって誘導される分解に対して高い抵抗性を示すことが知られている。シロイヌナズナをSAとメチルジャスモン酸(MeJA)で同時に処理すると、SAに応答するPATHOGENESIS RELATED-1 PR-1 )の発現量は増加するが、PLANT DEFENSIN 1.2PDF1.2 )やVEGETATIVE STORAGE PROTEIN2VSP2 )といったJAシグナルに応答する遺伝子の転写産物量の蓄積が見られない。この時、JAZ10.1/2/3/4 の発現量はMeJAを単独処理した場合と同等であることから、SAによるJAシグナル伝達の抑制はJAZ10.4 の転写産物量の変化によるものではないと考えられる。また、培養細胞を用いた実験から、SA処理はJAによるJAZ1、JAZ9タンパク質の分解に対して影響を及ぼさないことが示された。よって、SAのJAシグナル伝達に対する拮抗作用はJAZタンパク質の代謝制御を介してなされているのではないと考えられる。JA受容体の機能喪失coi1 変異体ではJA応答遺伝子の発現誘導が抑制されているが、JAシグナル伝達に関与しているAP2/ERF型転写因子のETHYLENE RESPONSE FACTOR1ERF1 )を恒常的に発現させたcoi1 変異体ではPDF1.2 の発現量が増加する。ERF1 を恒常的に発現させた野生型植物やcoi1 変異体をSA処理するとPDF1.2 の発現が抑制された。よって、SAによるJAシグナル伝達の抑制は、JA受容体COI1よりも下流において作用していることが示唆される。SA/JAのクロストークについてトランスクリプトーム解析を行なったところ、MeJAによって発現誘導される遺伝子のうち59遺伝子はSAによって発現が抑制され、MeJAによって発現抑制される遺伝子のうち15遺伝子はSAによって発現が増加していた。このことは、MeJA応答遺伝子の34%はSA/JAクロストークによる影響を受けていることを示唆している。MeJAにより発現誘導されSAによって抑制される59遺伝子の5'非翻訳領域の塩基配列を調査したところ、幾つかのプロモーターモチーフが検出され、G-box(CACGTG)、I-box(GATAA)、イブニングエレメント(AAAATATCT)が多く見られた。一方、MeJAによって発現誘導されSAによる抑制を受けない115の遺伝子ではG-boxとI-boxの出現頻度は低くなっていた。PDF1.2 遺伝子プロモーターのI-boxへの点変異はSA、JAに対する応答性に変化をもたらさないことから、GCC-boxのSA/JAクロストークにおける役割について詳細な解析を行なった。PDF1.2 プロモーターおよび35SミニマムプロモーターにGCC-boxを4コピー連結させたプロモーターの制御下でGUSレポーター遺伝子を接続したコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナは、MeJA処理によってGUS活性が誘導されたが、同時にSA処理をするとGUS活性が見られなくなった。このことから、GCC-boxがMeJAによる転写活性化とSAによる転写抑制に関与していることが示唆される。GCC-boxにはERF1やORA59といったAP2/ERF型転写因子が結合することが知られている。そこで、ERF1 を恒常的に発現させたcoi1 変異体でのORA59 の発現を見たところ、PDF1.2 と同様に発現量が増加していた。しかしながら、PDF1.2 の発現とは異なり、ERF1 によって誘導されるORA59 の発現はSAによる抑制を受けなかった。したがって、SAによるPDF1.2 の発現抑制はERF1ORA59 の転写産物の蓄積量変化によるものではないと考えられる。次に、ERF1タンパク質やORA59タンパク質の生成や安定性に対するSAの効果を見たところ、SAはORA59タンパク質の蓄積に対して負に作用することがわかった。したがって、SAはORA59タンパク質の蓄積に対して負に作用することでJAに応答した遺伝子発現に対して拮抗的に作用していると考えられる。

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論文)CORONATINE INSENSITIVE1タンパク質の安定性

2013-04-17 22:08:15 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis F-Box Protein CORONATINE INSENSITIVE1 Is Stabilized by SCFCOI1 and Degraded via the 26S Proteasome Pathway
Yan et al.  The Plant Cell (2013) 25:486-498.
doi:10.1105/tpc.112.105486

F-boxタンパク質のCORONATINE INSENSITIVE1(COI1)はジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile)受容体として機能し、Cullin1(CUL1)とArabidopsis Skp1-like1(ASK1)と共にユビキチンE3リガーゼSCFCOI1複合体を形成する。COI1がJA-Ileを受容すると、SCFCOI1はjasomonate ZIM-domain(JAZ)タンパク質をユビキチン化し、ユビキチン化されたJAZタンパク質は26Sプロテアソームによって分解される。JAZタンパク質の分解は、JAシグナル伝達に関与している転写因子を活性化させ、JA応答を引き起こす。したがって、COI1はJAZタンパク質量を制御することでJAシグナル伝達を調節している。しかしながら、COI1タンパク質自身の制御については明らかとなっていない。中国 精華大学-北京大学 生命科学連合中心Xie らは、シロイヌナズナのCOI1タンパク質量が各種植物ホルモン処理によって変化するかを調査し、そのような処理によってCOI1タンパク質量は減少することはなく安定していることを見出した。COI1タンパク質と相互作用をするタンパク質がCOI1の安定性に関与しているかを調査したところ、ASK1とCUL1は共にCOI1の安定性にとって重要であることがわかった。axr6-1 変異体やaxr6-2 変異体ではCUL1タンパク質の111番目のPhe残基が他のアミノ酸に置換してASK1と相互作用ができなくなり、SCFCOI1複合体が形成されなくなるが、これらの変異体ではCOI1タンパク質量が減少していた。よって、SCFCOI1複合体の形成がCOI1タンパク質の安定性にとって重要であることが示唆される。COI1 を過剰発現させた形質転換体のCOI1タンパク質量は野生型と同等であり、COI1タンパク質量は転写後の制御を受けていると考えられる。COI1 を過剰発現させたask1 変異体やarx6 変異体でのCOI1タンパク質量は大きく減少していた。このことからも、COI1は転写後制御を受けており、SCFCOI1コアサブユニットであるASK1とCUL1がCOI1を安定化させていることが示唆される。COI1 過剰発現個体粗抽出液でのCOI1タンパク質の安定性はプロテアソーム阻害剤のMG132やPS341を添加することで高まり、非特異的なプロテアーゼ阻害剤は安定性に変化をもたらさなかった。ユビキチン/プロテアソーム系によるタンパク質の分解はATPを必要とする過程であるので、粗抽出液にATPを添加したところ、COI1の分解がより高まった。また、26Sプロテアソームの重要なコンポーネントの1つであるRPT5aの機能喪失変異体ではCOI1タンパク質量が増加していた。以上の結果から、COI1は26Sプロテアソーム系によって分解されると考えられる。F-boxモチーフを欠いたCOI1タンパク質は野生型植物由来の粗抽出液、coi1 変異体の粗抽出液のどちらにおいても速やかに分解されることから、COI1の分解はSCFCOI1とは別の経路を経て26Sプロテアソーム系によって分解されると考えられる。MG132処理したCOI1 過剰発現個体から単離したCOI1タンパク質を分解し、LC-MS/MS解析を行なってユビキチン化されるアミノ酸残基の探索を行なったところ、297番目のLys残基が同定された。そこで、このアミノ酸残基をAlaに置換したCOI1タンパク質の安定性を見たところ、通常のCOI1タンパク質よりも安定性が増していることがわかった。したがって、297番目のLys残基がプロテアソーム系による分解に関与しているユビキチン化部位であると考えられる。

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論文)葉の発達を制御するEARモチーフタンパク質

2013-04-15 21:20:20 | 読んだ論文備忘録

The TIE1 Transcriptional Repressor Links TCP Transcription Factors with TOPLESS/TOPLESS-RELATED Corepressors and Modulates Leaf Development in Arabidopsis
Tao et al.  The Plant Cell (2013) 25:421-437.
doi:10.1105/tpc.113.109223

中国 北京大学Qin らは、シロイヌナズナアクティベーションタギング集団の中から葉が湾曲するtie1-D 変異体(後に明らかとなるが、TIE1は「TCP Ineractor containing EAR motif protein1」の略)を単離した。tie1-D 変異体の葉は、上向きに湾曲し、野生型の葉よりも小さく、細く、葉縁が波打ち、鋸歯が増えていた。tie1-D 変異体成熟葉の表皮細胞は野生型よりも小さく、多角形をしていた。以上の結果から、TIE1 は葉の細胞分化に関与していると考えられる。tie1-D 変異体はAt4g28840の発現量が増加した機能獲得変異体で、この遺伝子はN末端側に核局在シグナル(KRGK)、塩基性領域、へリックス領域、C末端側にEARモチーフ(DLELRL)を含んだ193アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。このタンパク質は転写抑制因子として機能すると考えられる。シロイヌナズナゲノムにはTIE1と類似性の高いタンパク質をコードする遺伝子が3つ(At2g20080、At2g29010、At2g34010)あり、それぞれをTIE2TIE3TIE4 と命名した。EARモチーフを含むタンパク質は、転写コリプレッサーのTOPLESS(TPL)/TOPLESS-RELATED(TPR)と相互作用をして転写を抑制することが知られている。TIE1タンパク質はEARモチーフを介してTPLファミリータンパク質と相互作用をすることが確認され、+/tie1-D +/tpl-1 二重変異体は+/tie1-D 変異体の表現型を回復させた。よって、TIE1はTPL/TPRと相互作用をすることで葉の発達過程において転写リプレッサーとして機能することが示唆される。TIE1 は茎頂分裂組織、子葉、葉において発現しており、若い葉では、葉縁部と基部において強い発現を示した。TIE1 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失変異体は表現型に変化が見られなかったことから、TIE2、TIE3、TIE4が冗長的に作用していると考えられる。また、TIE2TIE3TIE4 を過剰発現させた形質転換体はtie1-D 変異体と類似し表現型を示した。TIE3TIE4 は葉で発現していることから、両者も葉の発達に関与していると考えられる。TIE3TIE4 をノックダウンさせるRNAiコンストラクトをtie1-D 変異体で恒常的に発現させたところ、葉が下向きに湾曲してtie1-D 変異体とは逆の表現型を示し、より強い表現型を示す個体では葉が奇形し、子葉が1枚になったりカップ状となるtpl-1 変異体と類似した表現型を示した。したがって、TIE は葉の発達において重要であることが示唆される。TIE1のEARモチーフのLeu残基をSer残基に置換することでTPL/TPRとの相互作用能力を失ったTIEmEARを発現させた形質転換体も、tie1-D 変異体とは逆の表現型を示した。また、TIE1mEARやTIE1のEARモチーフを欠損させたTIE1ΔEARに転写活性化ドメインVP16を付加したキメラタンパク質発現させた形質転換体はTIE1mEARを発現させた場合よりも強い形態変化を示した。TIE1タンパク質にはDNA結合ドメインがないことから、TIE1は他の転写因子に結合して遺伝子発現を制御していると考えられる。TIE1タンパク質のN末端側断片をベイトに用いて酵母two-hybridスクリーニングを行なったところ、CINCINNATA(CIN)-like TEOSINTE BRANCHED1/CYCLOIDEA/PCF(TCP)転写因子が同定された。そこで、シロイヌナズナの全てのCIN-like TCP(TCP2、TCP3、TCP4、TCP5、TCP10、TCP13、TCP17、TCP24)について酵母two-hybridアッセイを行ったところ、調査した全てTCPがTIE1と相互作用をすることがわかった。また、BiFCアッセイから、TIE1とTCP10は生体内において相互作用をすることが確認された。TIE1は、N末端側がTCP転写因子と、C末端側のEARモチーフがTPL/TRPコリプレッサーと相互作用をしていることから、TCPとTPL/TRPとの間の架橋として機能していることが推測される。TCP10およびTCP17にTIE1のEARモチーフを含んだC末端側を融合したキメラタンパク質を野生型植物で発現させたところ、tie1-D 変異体と類似した表現型を示した。よって、TIE1はTCP転写因子と相互作用をすることで葉の発達を制御していることが示唆される。tie1-D 変異体の葉では、茎頂分裂組織において細胞の未分化状態を維持しTCP3が発現に関与していることが知られているクラスI KNOTTED-like homeoboxKNOX )遺伝子のKNOTTED-LIKE FROM ARABIDOPSIS THALIANAKNAT1KNAT2SHOOT MERISTEMLESSSTM )、KNAT6 の発現量が増加していた。これらの遺伝子の発現量増加は、tie1-D 変異体の葉での表現型と一致していると考えられる。またTCPの直接のターゲット遺伝子であるLIPOXYGENASE2LOX2 )、ASYMMETRIC LEAVES 1AS1 )、Indoleacetic acid-induced protein 3IAA3 )、SMALL AUXIN UP RNA 遺伝子のAt1g29460の葉での発現量はtie1-D 変異体において抑制されていた。tie1-D 変異体でのLOX2 の発現抑制は+/tie1-D +/tpl-1 二重変異体では回復していた。以上の結果から、TIE1はTCP転写因子およびTPL/TRPコリプレッサーと相互作用をすることで葉の発達において重要な役割を演じていることが示唆される。若い葉ではTIE1 が強く発現してTCPのターゲット遺伝子の発現を抑制して葉の分化を抑え、成熟葉ではTIE1 の発現量が減少することでTCPが活性化され、TCPの下流に位置する細胞分化を促進する遺伝子の発現が活性化すると考えられる。

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論文)根の成長を促進するCDK阻害タンパク質

2013-04-13 17:35:39 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis CDK inhibitor ICK3/KRP5 is rate limiting for primary root growth and promotes growth through cell elongation and endoreduplication
Wen et al.  Journal of Experimental Botany (2013) 64:1135-1144.
doi:10.1093/jxb/ert009

サイクリン依存キナーゼ(CDK)はサイクリンをリン酸化することで細胞周期促進因子として機能する。INHIBITOR OF CDK/KIP-RELATED PROTEIN(ICK/KRP)はCDKと結合することでCDKを阻害し、活性の調節を行なっている。シロイヌナズナには7つのICK/KRPファミリーが存在しており、いずれもCDK活性阻害能力を有している。英国 カーディフ大学Murray らは、シロイヌナズナのそれぞれのICK/KRP が機能喪失した変異体の芽生えの根の成長を比較し、ick3/kpr5 変異体は一次根の成長が野生型や他の変異体よりも低下していることを見出した。KRP5 の発現部位を調査したところ、根端分裂組織(RAM)では表皮と皮層において強い発現が見られた。移行領域では表皮や皮層の発現が弱まって中心柱での発現が強くなっていき、成熟した根では中心柱のみで発現が見られた。根の成長はRAMでの細胞分裂と移行領域での細胞伸長によって引き起こされることから、KRP5 の発現パターンは根の成長部位と対応していると言える。野生型とkrp5 変異体との間でRAMの先端部と基部の皮層細胞の長さに違いは見られず、両者の分裂組織の大きさは同等であった。しかしながら、伸長領域ではkrp5 変異体の細胞拡張が野生型よりも早い時期に低下していた。krp5 変異体の根の成熟領域の表皮、皮層、内皮の各細胞の大きさは野生型よりも小さく、特に無根毛表皮細胞の大きさが小さくなっていた。以上の結果から、KRP5 はRAMから離れた細胞の伸長を促進しており、krp5 変異体は細胞伸長が抑制されるために細胞が小さくなり、根の成長が低下していると考えられる。細胞伸長は核内倍加と関連しており、KRPは核内倍加の促進因子として機能することが知られている。krp5 変異体の根のDNA量を調査したところ、4Cの核の割合は野生がと同等であったが、16Cの核の割合が減少して8Cの核の割合が増加していた。また、krp5 変異体の根の表皮細胞の核の大きさは野生型よりも小さくなっていた。したがって、KRP5 は根において核内倍加を促進し、このことが細胞や核の拡張に関連していると考えられる。種子発芽は細胞拡張によって引き起こされるが、krp5 変異体の発芽率は野生型よりも低く、幼根の皮層細胞の大きさが野生型よりも小さかった。成熟種子の全ての細胞は倍数性が2Cであるから、krp5 変異体の皮層細胞の大きさは核内倍加とは別の理由によって小さくなっていると考えられる。以上の結果から、ICK3/KRP5は細胞伸長と核内倍加を促進することで根の成長を促進していると考えられる。

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論文)避陰反応による分枝と胚軸伸長を制御する因子

2013-04-10 22:05:51 | 読んだ論文備忘録

CONSTANS-LIKE 7 regulates branching and shade avoidance response in Arabidopsis
Wang et al.  Journal of Experimental Botany (2013) 64:1017-1024.
doi:10.1093/jxb/ers376

シロイヌナズナゲノムにはCONSTANS-LIKE(COL)タンパク質をコードする遺伝子が17個存在している。COLタンパク質はB-boxドメインとCCT(CO、COL、TOC1)ドメインを有したB-boxファミリー転写因子で、シロイヌナズナで最初に同定されたCOLタンパク質のCONSTANS(CO)は日長に感応した花成の制御において重要な役割を演じている。系統樹解析からCOL 遺伝子は3つのクレイドに分けられ、クレイドI、クレイドIIに属するCOL 遺伝子のいくつかについては機能解析がなされているが、クレイドIIIに属するCOL 遺伝子については解析がなされていない。中国 湖南大学のLiu らと中国農業科学院のLiu らは、シロイヌナズナのクレイドIII COL 遺伝子のCOL7 について解析を行なった。35S プロモーターによりCOL7 を恒常的に発現する個体(35:COL7 )とT-DNA挿入col7 変異体表現型を野生型と比較したところ、1鉢に1株の栽植密度で長日条件で栽培した個体では、35S:COL7 系統は野生型やcol7 変異体よりもロゼットからの分枝数が多くなっていた。しかし、1鉢で20個体を栽培する高栽植密度条件で育成すると35S:COL7 系統の分枝増加は抑制された。分枝は栄養条件や光条件(避陰反応)による制御を受けていることから、低栽植密度育成個体を低赤色:遠赤色光比の条件で育成したところ、35S:COL7 系統の分枝が抑制された。したがって、高栽植密度による赤色:遠赤色光比の低下が35S:COL7 系統の分枝数の減少を引き起こしていると考えられる。高赤色:遠赤色光比条件と低赤色:遠赤色光比条件で分枝数を比較すると、35S:COL7 系統では4倍以上の差があるのに対して、野生型とcol7 変異体での差は2倍以下であった。よって、COL7 は日陰条件での分枝形成の抑制に関与していると考えられる。避陰反応(SAS)として、シロイヌナズナは低赤色:遠赤色光比条件に応答して胚軸伸長を促進させる。35S:COL7 系統、col7 変異体、野生型植物を赤色光下で育成すると胚軸伸長に差は見られないが、遠赤色光下で育成すると35S:COL7 系統の胚軸は野生型よりも長くなり、col7 変異体は短くなった。低赤色:遠赤色光比条件下でcol7 変異体の胚軸伸長は抑制されるが、高赤色:遠赤色光比条件下では胚軸伸長の抑制が見られなかった。よって、COL7 は日陰条件に応答して胚軸伸長を促進する典型的なSASに関与していると考えられる。低赤色:遠赤色光比条件下で育成した芽生えを高赤色:遠赤色光比条件下に移すとCOL7 転写産物量は急速に減少した。逆に、高赤色:遠赤色光比条件下から低赤色:遠赤色光比条件下に移すと一過的に転写産物量が増加し、その後基底レベルに戻った。COL7タンパク質量の光条件による変化を見たところ、芽生えを暗所から赤色光もしくは遠赤色光条件に移すとタンパク質蓄積量が一過的に増加し、その後徐々に低下していった。よって、赤色光、遠赤色光はCOL7タンパク質の安定性を増加させていると考えられる。また、高赤色:遠赤色光比条件ではCOL7タンパク質の安定性が低下し、低赤色:遠赤色光比条件では安定性が増していた。したがって、COL7 の発現は日陰条件によって転写レベル、転写後レベルで増加しており、COL7 の発現はSASの制御に関与していることが示唆される。bHLHタンパク質のPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 3−LIKE1(PIL1)はSASに関与しており、低赤色:遠赤色光比条件でPIL1 転写産物量が増加することからSASのマーカーとして利用されている。35S:COL7 系統での低赤色:遠赤色光比条件によるPIL1 発現誘導量は野生型よりも高く、col7 変異体では低くなっていた。高赤色:遠赤色光比条件で育成した芽生えでのPIL1 転写産物量は、col7 変異体では野生型よりも僅かに高く、35S:COL7 系統では低くなっていた。逆に、低赤色:遠赤色光比条件でのPIL1 転写産物量は、col7 変異体では野生型よりも僅かに低く、35S:COL7 系統では高くなっていた。したがって、COL7は低赤色:遠赤色光比条件ではPIL1 転写産物量を増加させ、高赤色:遠赤色光比条件では減少させていることが示唆される。以上の結果から、COL7はSASに応答した分枝と胚軸伸長を制御する因子として機能していると考えられる。

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論文)根分裂組織の大きさを制御する因子

2013-04-08 21:19:40 | 読んだ論文備忘録

Control of Root Meristem Size by DA1-RELATED PROTEIN2 in Arabidopsis
Peng et al.  Plant Physiology (2013) 161:1542-1556.
doi:10.1104/pp.112.210237

中国科学院遺伝学発生生物学研究所Li らは、シロイヌナズナの種子や器官が大型化するda1-1 変異体(DAは中国語で「大きい」を意味する)を単離した。DA1タンパク質は2つのユビキチン結合モチーフ(UIM)と1つの亜鉛結合LIMドメインを含んでおり、細胞増殖を制限することによって器官サイズを制御していると考えられている。今回、1つのLIMドメインのみを有しているDA1-RELATED PROTEIN2(DAR2)について解析を行なった。T-DNA挿入dar2 変異体は、芽生えの一次根の成長が遅く、野生型よりも一次根が短くなった。DAR2 を過剰発現させた形質転換体の一次根の長さは野生型と同等であることから、DAR2は他の因子と共に根の分裂組織の成長に対して冗長的に作用していると思われる。dar2 変異体の根分裂組織は野生型よりも小さく、分裂組織の細胞数が減少し、細胞分裂している細胞数も少なくなっていた。dar2 変異体は一次根分裂組織の細胞分裂が減少している代わりに、細胞が野生型よりも長くなっており、DAR2 は根分裂組織の細胞伸長/分化に影響していることが示唆される。DAR2 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体を用いてDAR2 遺伝子の発現パターンを調査したところ、胚発達過程ではDAR2 の発現は見られず、発芽1日目で一次根の維管束で発現が見られるようになり、5日目では根の移行領域と伸長領域の境界で発現のピークが見られた。移行領域の横断切片を見ると、DAR2 は内鞘と師部で発現していたが、木部では発現していなかった。根の細胞分裂を制御しているオーキシンはDAR2 の発現を抑制し、移行領域での細胞分化に作用しているサイトカイニンはDAR2 の発現には関与していなかった。野生型植物では、低濃度のオーキシン処理によって根分裂組織の細胞数が増加するが、dar2 変異体ではその効果が見られなかった。サイトカイニン処理をした根分裂組織は細胞数が減少するが、dar2 変異体ではサイトカイニンに対する感受性が低下していた。したがって、オーキシンやサイトカイニンによる根分裂組織の大きさの制御にDAR2 が関与していることが示唆される。オーキシンとサイトカイニンは、オーキシンシグナル伝達の抑制因子であるSHORT HYPOCOTYL2(SHY2)の量を制御することで根分裂組織の大きさを拮抗的に制御している。shy2-2 機能獲得変異体の根は分裂組織が小さくなり短くなるが、dar2 shy2-2 二重変異体の根長と分裂組織の大きさはdar2 単独変異体と同程度であった。shy2-31 機能喪失変異体の根分裂組織の細胞数は増加するが、dar2 shy2-31 二重変異体の根分裂組織の大きさはdar2 単独変異体と同程度であった。したがって、根分裂組織の大きさに関して、dar2 変異はshy2 よりも上位にあり、shy2 変異体での根分裂組織の大きさに関する表現型はDAR2 の機能に依存していると考えられる。shy2-2 変異体、shy2-31 変異体共にDAR2 の発現に変化は見られなかったが、shy2-2 機能獲得変異体はサイトカイニン処理をすることで伸長領域および移行領域でのDAR2 の発現量が減少した。この結果は、shy2-2 変異体はサイトカイニンに対して感受性が高いという過去知見と一致している。酵母two-hybridアッセイでSHY2とDAR2は相互作用を示さなかった。よって、DAR2は根分裂組織の大きさの制御においてSHY2の下流において作用していると考えられる。SHY2 プロモーターに直接結合することが知られているARR1転写因子の変異体arr1-4 は根分裂組織の細胞数が増加するが、arr1-4 dar2 二重変異体の根分裂組織はdar2 変異体に類似していた。よって、dar2 変異はarr1 変異の上位にあると考えられる。サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異体はSHY2 発現が抑制されるために根分裂組織が大きくなるが、これらの変異体ではDAR2 の発現量が増加し、これらの変異体にdar2 変異を導入した二重変異体ではdar2 単独変異体と類似した表現型となった。よって、サイトカイニンやSHY2 による根分裂組織の大きさの制御はDAR2 を介してなされていると考えられる。サイトカイニンは根分裂組織のオーキシンの輸送や分布に影響を及ぼして分裂組織の大きさを制御している。dar2 変異体ではオーキシン応答レポーターDR5:GUS/GFP の発現部位が縮小していることから、DAR2 は根分裂組織での正常なオーキシン分布に影響を及ぼしていると考えられる。アイソトープラベルしたオーキシンを用いた試験から、dar2 変異体ではオーキシンの移動量が減少していることがわかった。そこで、根の移行領域の維管束で発現し、分裂組織の大きさの制御に関与しているオーキシン排出キャリアPIN1PIN3PIN7 の発現を調査したところ、dar2 変異体ではPIN3PIN7 の発現量が低下していることがわかった。野生型植物では、PIN1PIN3PIN7 の発現はサイトカイニン処理によって抑制されるが、dar2 変異体ではPIN3PIN7 の発現に対するサイトカイニンによる抑制効果が低下していた。したがって、DAR2はサイトカイニンによるPIN3PIN7 の発現制御に関与していることが示唆される。根分裂組織の大きさは幹細胞の活性によって制御されていることから、DAR2 が根端分裂組織幹細胞の活性を制御しているかを見たところ、dar2 変異体は静止中心(QC)細胞の分裂活性が野生型よりも高いことがわかった。また、dar2 変異体のコルメラ幹細胞(CSC)に相当する細胞には、通常は存在しないデンプン粒が見られ、CSCで特異的に発現するJ2341 の発現量が低下していることがわかった。したがって、DAR2 は根端分裂組織幹細胞の活性に対して影響を及ぼしていることが示唆される。根分裂組織の幹細胞の活性は、SHORT ROOTSHR )/SCARECROWSCR )とPLETHORA1PLT1 )/PLT2 の2種類の転写因子の関与した経路によって維持されている。DAR2 とそれぞれの転写因子との二重変異体の表現型の解析から、DAR2SCR /SHR 経路とは独立して根分裂組織の大きさを制御しているが、PLT1 /PLT2 経路とは同じ経路で機能していることが示唆される結果を得た。PLT1 /PLT2 の発現はサイトカイニンによって抑制されることが知られており、サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異体ではPLT1 /PLT2 の発現量が増加する。サイトカイニンの生合成や受容体の機能喪失変異にdar2 変異が加わった二重変異体では、PLT1 /PLT2 の発現量増加が抑制されることから、サイトカイニン変異体でのPLT1 /PLT2 の発現量増加にはDAR2 の機能が必要であり、DAR2 はサイトカイニンによるPLT1 /PLT2 の発現制御はDAR2 を介してなされていることが示唆される。以上の結果から、DAR2はオーキシンの求頂的な輸送と分布に影響を及ぼし、サイトカイニンやSHY2の下流、PLT1/PLT2の上流において根分裂組織の成長を制御していると考えられる。

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論文)クロマチンリモデリング因子PICKLEによる胚軸伸長制御

2013-04-03 21:16:08 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis Chromatin Remodeling Factor PICKLE Interacts with Transcription Factor HY5 to Regulate Hypocotyl Cell Elongation
Jing et al.  The Plant Cell (2013) 25:242-256.
doi:10.1105/tpc.112.105742

中国科学院植物研究所Lin らは、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体集団の中から、赤色光下で育成した芽生えの胚軸が短く、子葉が大きいenhanced photomorphogenic1epp1 )変異体を単離した。この表現型は遠赤色光や青色光で育成した芽生えでも観察され、暗所で育成した芽生えは胚軸が僅かに短くなり、子葉が開き、茎頂フックが展開していた。また、epp1 変異体は野生型に比べてクロロフィルやアントシアニンの蓄積量が多く、カルコンシンターゼをコードするCHS 遺伝子やクロロフィルa/b結合タンパク質をコードするCAB2 遺伝子といった光によって発現誘導される遺伝子の転写産物量が光条件に関係なく増加していた。これらの結果から、epp1 変異体は弱い光形態形成様変異を示していると考えられる。epp1 変異体に光受容体の変異を導入したepp1 phyAepp1 phyBepp1 cry1 二重変異体をそれぞれ遠赤色光、赤色光、青色光条件で育成したところ、いずれの二重変異体も光受容体単独変異体よりも胚軸が僅かに短くなった。したがって、EPP1は胚軸伸長の正の制御因子として光受容体の下流において作用していることが示唆される。epp1 cop1 二重変異体はそれぞれの単独変異体よりも胚軸がさらに短くなり、子葉が開き、アントシアニンが蓄積したことから、EPP1はCOP1と並行して作用していると考えられる。epp1-1 変異体は、ATP依存性クロマチンリモデリング因子であるPICKEL(PKL)をコードしているAt2g25170の最後のエクソンにT-DNAが挿入されており、pkl-1 変異体もepp1 変異体と同じ表現型を示した。明所育成芽生えのPKL 発現量は暗所育成芽生えよりも低く、芽生えを暗所から明所に移すと12時間後には発現量の低下が観察された。また、赤色光下で育成したphyB 変異体、遠赤色光下で育成したphyA 変異体、青色光下で育成したcry1 変異体でのPKL 転写産物量は野生型よりも増加していた。したがって、光を介したPKL の発現抑制はフィトクロムやクリプトクロムによって引き起こされていると考えられる。PKL は成熟個体において様々な組織において恒常的に発現していることが報告されている。PKL プロモーター制御下でレポーターとしてGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体では、光条件に関係なく子葉と根でGUS活性が見られ、暗所育成芽生えでは胚軸の上部において強いGUS活性を示した。明所育成芽生えのGUS活性は弱いが、光強度を弱めると胚軸のGUS活性は増加した。したがって、PKL の発現は胚軸伸長の程度と正の相関があることが示唆される。また、光受容体の変異体ではGUS活性が強くなっていることから、光はフィトクロムやクリプトクロムを介して胚軸でのPKL の発現を抑制しており、PKLは胚軸の伸長促進に関連していると考えられる。明所育成芽生えは暗所育成芽生えよりもPKLタンパク質量も少ないことから、光照射はタンパク質レベルにおいてもPKLを抑制していることが示唆される。epp1 変異体の胚軸は野生型と比較して細胞数に変わりはないが細胞の長さが短く、PKLは胚軸の伸長において細胞伸長を制御していることが示唆される。PKLによる胚軸細胞伸長制御の分子機構を解明するために、細胞伸長に関与するとされるEXTENSIN3EXT3 )、EXPANSIN2EXP2 )、XYLOGLUCAN ENDOTRANSGLUCOSYLASE/HYDROLASE17XTH17 )、XYLOGLUCAN ENDOTRANSGLYCOSYLASE6XTR6 )、DWARF4DWF4 )、INDOLE-3-ACETIC ACID INDUCIBLE19IAA19 )の発現量を見たところ、これらの遺伝子の転写産物量はepp1 変異体では大きく低下していることがわかった。よって、PKLはこれらの遺伝子の活性化に関与していると考えられる。抗PKL抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、PKLはDWF4EXT3XTH17XTR6 遺伝子と直接相互作用をすることが確認された。PKLによる転写制御はヒストンH3のLys27のトリメチル化(H3K27me3)が関与しており、epp1 変異体では細胞伸長に関与している遺伝子のH3K27me3量が増加していた。よって、PKLは、おそらく細胞伸長に関与する遺伝子のクロマチンのH3K27のトリメチル化を阻害することで細胞伸長を促進していると考えられる。PKLは転写因子と相互作用をして遺伝子発現調節を行なっていると考えられ、全ての光条件での光形態形成を抑制することから、相互作用をしている転写因子としてはELONGATED HYPOCOTYL5(HY5)が最も有力な候補として考えられる。そこで、酵母two-hybrid解析を行なったところ、PKLのATPアーゼドメインがHY5と相互作用をすることがわかった。また、BiFCアッセイや共免疫沈降試験から、PKLとHY5は光条件に関係なく細胞核で相互作用をすることが確認された。epp1 hy5 二重変異体芽生えは、全ての光条件でそれぞれの単独変異体の中間の胚軸長となり、赤色光下では野生型と胚軸長が同等となった。よって、PKLとHY5は胚軸伸長を互いに拮抗して制御していると考えられる。HY5はターゲット遺伝子のプロモーター領域のACGTを含んだエレメントもしくはG-box(CACGTG)モチーフに結合することが知られており、EXT3EXP2XTH17XTR6DWF4IAA19 遺伝子の調節領域や転写開始点近傍のコード領域にはこれらのエレメントが含まれている。酵母one-hybridアッセイ試験により、HY5はG-boxモチーフを介してIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子の調節領域に結合することが確認された。また、ChIP試験から、HY5もPKLもIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子のG-boxモチーフを含む調節領域と結合することが確認され、HY5は暗所育成芽生えよりも明所育成芽生えの方が結合量が僅かに増加するのに対して、PKLは明所育成芽生えでの結合量が減少することがわかった。PKLの調節領域への結合は、hy5 hyh 二重変異体では減少していることから、PKLとHY5(およびHYH)は細胞伸長関連遺伝子に同時に結合し、HY5とHYHはPKLをリクルートしていると考えられる。EXP2IAA19 の発現量は芽生えを暗所から明所に移すと減少するが、hy5 変異体では野生型よりも発現量が高く、epp1 変異体では低くなっていた。また、epp1 変異体でHY5活性が失われるとEXP2IAA19 の発現量は高い状態が維持された。したがって、PKLとHY5はターゲット遺伝子の発現制御に対して拮抗的に作用していると考えられる。epp1 変異体ではIAA19 遺伝子やEXP2 遺伝子の調節領域のクロマチンのH3K27me3が増加し、hy5 変異体では減少していた。よって、PKLは細胞伸長関連遺伝子のH3K27me3量の制御においてHY5と拮抗しており、HY5はH3K27のトリメチル化を促進していると考えられる。

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論文)JAZタンパク質による花の脱離制御

2013-03-29 13:13:42 | 読んだ論文備忘録

A Jasmonate ZIM-Domain Protein NaJAZd Regulates Floral Jasmonic Acid Levels and Counteracts Flower Abscission in Nicotiana attenuata Plants
Oh et al.  PLoS ONE (2013) 8:e57868.
doi:10.1371/journal.pone.0057868

ジャスモン酸(JA)は植物の成長や防御応答に関与している植物ホルモンで、Jasmonate ZIM-Domain(JAZ)タンパク質はJAシグナル伝達の負の制御因子として機能している。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Galis(現 岡山大学資源植物科学研究所)らは、野生タバコNicotiama attenuata に12個存在するJAZ 遺伝子のうちのNaJAZd について詳細な機能解析を行なった。N. attenuata のロゼット葉に傷害を与えるとNaJAZd の発現量が一過的に増加し、傷害葉にタバコスズメガ(Manduca sexta )の口腔分泌液(OS)を処理すると発現量がさらに増加した。RNAiによってNaJAZd を発現抑制したタバコ(irJAZd)でのタバコスズメガ幼虫の成長は、野生型植物を摂食させた場合と差は見られなかった。また、irJAZd系統のロゼット葉に傷害を与えてOS処理した後のJA-Ile、JA、サリチル酸、アブシジン酸といった防御応答ホルモン類の変化は、野生型植物と大きな違いは見られなかった。しかし、ニコチアナ属植物の虫害応答二次代謝産物であるニコチンの含量は有意に増加した。したがって、NaJAZdはニコチンの生合成もしくは根から葉への輸送を負に制御していることが示唆される。irJAZd系統を本来の生育地である米国ユタ州の砂漠で育成し、生物・非生物ストレスに対する応答性を野生型植物と比較したが、大きな違いは見られなかった。irJAZd系統は栄養成長に関して野生型植物との違いは見られなかったが、種子生産量が少なく、これは櫺未慮詐によるものであった。しかしながら、花芽の数、花弁の開き具合、花粉の成熟、柱頭の長さはirJAZd系統と野生型植物で違いは見られなかった。irJAZd系統の蕾数は野生型植物と同等もしくはやや多く、花冠長も長めであったが、脱離してしまう花が多いために開花した花の数が減少していた。花の脱離は花弁が完全に開いた花において見られ、未熟な花や蕾では起こらなかった。したがって、NaJAZdは花の発達後期の脱離を抑制する機能があると考えられる。野生型植物の花の発達過程でのNaJAZd の発現量を見ると、蕾から花冠の伸長過程までの期間で高く、花弁が開く時期には発現量は減少していた。花の脱離を制御するシグナルの1つであるエチレンは、花が発達すると共に発生量が増加したが、野生型植物とirJAZd系統でエチレン発生量の差は見られなかった。花の発達過程でのJAおよびJA-Ileの含量は、irJAZd系統では野生型植物よりも少なくなっていた。花の発達過程のうちの、雄ずいの成熟、花弁の展開、花蜜の生産の制御に関与しているR2R3-MYB転写因子NaMYB305 の発現を見たところ、野生型植物もirJAZd系統も花の発達に伴なって同じように転写産物量が増加していったが、開花した花でのNaMYB305 転写産物量はirJAZd系統では野生型植物よりも少なくなっていた。野生型植物とirJAZd系統の傷害+OS処理ロゼット葉での遺伝子発現を網羅的に解析したところ、一次代謝に関与している遺伝子の幾つかの発現量がirJAZd系統において減少していた。したがって、irJAZd系統では、葉から花へ供給される栄養源が少ないために花が脱離することも考えられる。

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