Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)オーキシン処理とエチレン処理のプロテオーム解析比較

2012-12-08 17:34:48 | 読んだ論文備忘録

Effects of exogenous auxin and ethylene on the Arabidopsis root proteome
Slade et al.  Phytochemistry (2012) 84:18-23.
doi:10.1016/j.phytochem.2012.08.007

オーキシンとエチレンは共に様々な生理的、発生的な過程の制御をしており、両者の応答やシグナル伝達は多くの場面で相互依存していることが知られている。米国 バージニア工科大学Helm らは、この2つのホルモンの効果をシロイヌナズナの根のプロテオーム解析によって比較した。シロイヌナズナ芽生えをオーキシン(IAA)もしくはエチレン(ACC)処理をし、24時間後に根からタンパク質可溶化液を調製して二次元電気泳動で分画した。スポットの強度を無処理区と比較したところ、IAA処理では24のスポットに変化が見られ、13は強度が増加、11は減少していた。ACC処理では7つのスポットが変化し、4つは強度が増加、3つは減少していた。しかし、IAA処理とACC処理の間で変化の見られたスポットには重複しているものがなく、2つの植物ホルモンは共にシロイヌナズナの根に生理学的変化をもたらすにもかかわらず、量的変化を起こすタンパク質は異なっていた。強度の変化したスポットをMALDI TOF/TOF MSで同定したところ、IAA、ACC共に転写、翻訳、タンパク質ホールディングに関与するタンパク質の蓄積に影響しており、IAA処理によってのみ変化するタンパク質として、細胞骨格、細胞壁形成、炭素代謝に関与するタンパク質、ACC処理では硫黄代謝に関与するタンパク質が見られた。オーキシンとエチレンはターゲットとしている細胞過程が類似しており、分子機構に重複があるように思われるが、タンパク質量変化に対する効果は異なっていることがこの結果から示唆される。

コメント

論文)ストリゴラクトン受容体?

2012-12-05 23:31:47 | 読んだ論文備忘録

DAD2 Is an α/β Hydrolase Likely to Be Involved in the Perception of the Plant Branching Hormone, Strigolactone
Hamiaux et al.  Current Biology (2012) 22:2032-2036.
doi: 10.1016/j.cub.2012.08.007

ストリゴラクトン(SL)は、分枝、葉の老化、根の発達、微生物との相互作用に関与しているカロテノイド誘導体である。SLは主に根で合成され、生合成酵素が各種植物から見出されているが、SL受容体については明らかとなっていない。ニュージーランド 植物・食品研究所のSnowden らは、ペチュニアを実験材料に用いてSL受容体の探索を行なった。ペチュニアdecreased apical dominance 2dad2 )変異体は分枝した表現型を示し、合成ストリゴラクトンGR24に対して非感受性である。DAD2 遺伝子はイネD14 遺伝子やシロイヌナズナAtD14 遺伝子のオーソログであり、野生型ペチュニアのほとんどの器官で発現し、特に葉と腋芽での発現が高い。成長中の腋芽よりも休眠中の腋芽で発現が高いことから、DAD2は芽の休眠維持に関与していると考えられる。DAD2タンパク質をX線結晶構造解析したところ、7つのαへリックスが並列した7つのβシートからなるコアドメインで構成されたα/β加水分解酵素構造に、4つのαへリックスで構成された蓋のついた形状をしていることがわかった。S96、H246、D217が触媒三残基を構成し、S96の上にコア構造と蓋によって大きなL字型の空洞が形成されていた。この空洞は、ストリゴラクトンを収容する十分な大きさがあり、7つのPhe残基によって強い疎水性となっていた。DAD2タンパク質はGR24存在下で熱安定性が低下し、おそらく、GR24の結合によって蓋が動き、構造変化を起こすものと考えられる。DAD2タンパク質とSLシグナル伝達に関与しているF-boxタンパク質のPhMAX2AおよびPhMAX2Bとの相互作用を見たところ、GR24存在下でその濃度に依存してDAD2とPhMAX2Aが相互作用を示すことがわかった。DAD2タンパク質はGR24を2箇所加水分解し、2種類の物質が生成された。この2種類の生成物はGR24のような芽の成長抑制作用を有していなかった。DAD2タンパク質の触媒残基をAlaに置換したDAD2S96AとDAD2H246Aは、GR24加水分解活性を示さず、構造変化も起こさなかった。また、dad2 変異体でDAD2S96A を発現させても変異体の表現型を相補しなかった。DAD2S96AはGR24存在下でPhMAX2Aと相互作用を示さないことから、両者の相互作用には活性部位の存在が必要であることが示唆される。DAD2とPhMAX2AはGR24分解産物存在下では相互作用を示さず、DAD2S96AとPhMAX2は野生型DAD2存在下ではGR24を添加しても相互作用を示さなかった。したがって、DAD2によって生成されたGR24分解産物は生物活性に必要なDAD2とPhMAX2Aとの相互作用を誘導しないと考えられ、DAD2は単に酵素として作用しているのではなく、SLを活性シグナルへと加工しているものと思われる。以上の結果から、SLシグナル伝達にはDAD2の酵素活性が必要であるが、生成産物はおそらく必要ではなく、反応過程の中間体の形成がDAD2タンパク質の構造変化を起こし、このことによってPhMAX2Aとの相互作用およびSLシグナル伝達がもたらされるものと思われる。

コメント

論文)フック形成におけるジベレリンとオーキシンのクロストーク

2012-11-29 19:57:46 | 読んだ論文備忘録

WAG2 represses apical hook opening downstream from gibberellin and PHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 5
Development (2012) 139:4020-4028.

doi: 10.1242/dev.081240

ドイツ ミュンヘン工科大学Schwechheimer らは、シロイヌナズナのジベレリン(GA)の生合成やシグナル伝達の変異体ではオーキシンの極性輸送に異常が見られることに着目し、オーキシン輸送の制御に関与しているセリン/スレオニンキナーゼのサブファミリーAGCVIIIキナーゼファミリーをコードする遺伝子のGA処理による発現量変化を調査した。その結果、GA生合成欠損ga1 変異体をGA処理することによってWAG2 遺伝子の転写産物量が増加すること、野生型植物をGA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)処理することによってWAG2 転写産物量が減少することを見出した。GA処理によるWAG2 転写産物量の変化は、タンパク質生合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)の添加によっても起こることから、この機構は、GAによるDELLAタンパク質の分解誘導のように、タンパク質の新規生合成を介さずに起こると考えられる。WAG2 転写産物量は、gid1a gid1c 二重変異体、gai-1 変異体、sly1-10 変異体のようなDELLAタンパク質の蓄積を起こす変異体では減少し、DELLA機能喪失変異体のrga-24 gai-t6 では増加していた。暗黒下で育成した芽生えを明所に移すとWAG2 転写産物量が減少することから、WAG2 の転写はフィトクロム相互作用因子(PIF)のような光照射によって不安定化する転写因子によって制御されていることが示唆される。したがって、WAG2 の発現はDELLAによって制御され、おそらくPIFの下流に位置しているものと思われる。WAG2 の発現が暗所育成芽生えにおいて増加することから、wag2 変異体芽生えの暗所での形態変化を観察したところ、この変異体ではフックの屈曲の度合いが野生型よりも開いていることがわかった。しかも、このフックの開きは発芽3〜4日目のフックが開く際の芽生えでのみ観察され、発芽2日目のフック形成過程では野生型との差は見られなかった。よって、WAG2 はフックが開く際に抑制的に作用していると考えられる。WAG2 のパラログとされているWAG1 の変異体wag1 では正常にフック形成が起こることから、WAG1はこの過程には関与していないと考えられる。ga1 変異体ではフックが形成されないが、GA処理をすることで形成される。wag2 ga1 二重変異体ではGA処理をしてもフックは開いたままであり、WAG2 はGAよりも下流において暗所育成芽生えのフックの開きを抑制していることが示唆される。WAG2 プロモーター制御下でGUSを発現させてWAG2 の発現部位を調査したところ、フックの凹面でGUS活性が見られた。WAG2 の発現は、pif5 変異体では減少し、pif4 変異体では増加していた。pif1 変異体、pif3 変異体では変化が見られなかったが、pif1 pif3 二重変異体では減少していた。また、PIF5 過剰発現個体ではWAG2 の発現量が増加していた。よって、WAG2 の発現において、PIF5は活性化因子、PIF4は抑制因子、PIF1とPIF3は冗長的に活性化因子として機能していると考えられる。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、PIF5はWAG2 遺伝子プロモーター領域にあるG-boxに結合することが確認されたことから、PIF5は直接WAG2 の発現を制御していると考えられる。オーキシン排出キャリアのPINタンパク質はフックの維持にとって重要であり、変異体の解析から、PIN3が特に重要であることが示唆されている。wag2 pin3 二重変異体はそれぞれの単独変異体よりもフックが開くことから、WAG2PIN3 は共にフックの開きに対して抑制的に作用していることが示唆される。WAG2はPIN2をリン酸化して根の皮層細胞におけるPIN2の極性を制御していることが知られている。今回、in vitro でのリン酸化試験を行なったところ、WAG2はPIN2以外にもPIN1、PIN3、PIN4、PIN7もリン酸化することがわかった。そこで、野生型植物とwag2 変異体でPIN1、PIN3の細胞内局在を比較したが、両者においてPINタンパク質の分布や量に違いは見られなかった。オーキシン応答レポーターDR5を用いて暗所育成芽生えフック部分のオーキシン分布を見たところ、wag2 変異体のフックでは、野生型植物において観察されるフック凹面側でのレポーターの発現が抑制されており、GA処理をしてもレポーターの発現に変化は見られなかった。よって、WAG2はフック部分での側面方向のオーキシン極大形成を正に制御していると考えられる。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。GAによるDELLAタンパク質の分解誘導によってPIF5の活性抑制が解除され、WAG2 の発現が誘導される。WAG2はPINタンパク質をリン酸化し、このことによってオーキシンの極性輸送の変化、フック凹面でのオーキシン極大形成が起こり、フックの開きが抑制される。

コメント

論文)FLOWERING LOCUS T と拮抗的に作用する花成阻害因子

2012-11-22 14:19:43 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis thaliana CENTRORADIALIS homologue (ATC) acts systemically to inhibit floral initiation in Arabidopsis
Huang et al.  The Plant Journal (2012) 72:175-184.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.05076.x

シロイヌナズナの花成誘導因子をコードするFLOWERING LOCUS TFT )は、TWIN SISTER OF FTTSF )、TERMINAL FLOWER 1TFL1 )、BROTHER OF FT AND TFL1BFT )、MOTHER OF FT AND TFL1MFT )、Arabidopsis thaliana CENTRORADIALIS homologueATC )からなる遺伝子ファミリーを構成している。このうち、FTTSFMFT は花成活性化因子として、TFL1BFTACT は花成阻害因子として機能する。ATC を恒常的に発現させた形質転換シロイヌナズナは花成遅延を起こすが、atc-1 変異体は長日条件下で正常に花成を起こす。ATC は長日条件下でも発現しているが、短日条件の暗期に転写産物量が最も多くなる。台湾 植物および微生物學研究所Yu らは、ATC は短日条件での花成阻害に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。ATC 遺伝子の第1エクソンにT-DNAが挿入されたatc-2 変異体は、長日条件では野生型と同じように花成誘導を起こすが、短日条件では花成が促進された。atc-2 変異体にATC ゲノム遺伝子を導入すると短日条件での花成時期が野生型と同等となることから、ATC は短日条件下で花成阻害因子として機能していると考えられる。ft-10 変異体は長日条件で花成遅延を起こすが、atc-2 ft-10 二重変異体はft-10 変異体よりもやや花成時期が早くなった。よって、ATC はFT量が低下した際に花成阻害因子として機能し、ATCFT の発現量のバランスが花成誘導を決定しているものと思われる。ATC の完全長cDNAを35Sプロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナは花成遅延を起こし、コンパニオン細胞特異的に発現するAtSUC2 プロモーターやシュートや根の分裂組織の表皮組織特異的に発現するMERISTEM LAYER1ML1 )プロモーターでATC を発現させた場合にも花成遅延が起こった。これらの形質転換体でのFT の発現量は野生型と同等であったことから、ATC による花成阻害はFT を発現抑制しているために起こっているのではなく、ATC はコンパニオン細胞や茎頂で発現させることによっても花成阻害を起こす。ATC プロモーター制御下でGUS 遺伝子を発現させたところ、GUS活性は主に葉柄、胚軸、根の維管束組織で見られ、茎頂では活性が検出されなかった。胚軸の横断切片を見ると、GUS活性は師部において見られた。また、日長条件によるGUS活性のパターン変化は見られなかった。atc-2 変異体と野生型植物との接木試験から、ATC RNAは野生型植物の台木からatc-2 変異体の接ぎ穂へと1〜5%程度が移動することがわかった。また、ATC を35Sプロモーターで発現させた台木にatc-2 変異体の花序を接いだ際、atc-2 変異体の接ぎ穂でATCタンパク質が検出され、野生型植物やatc-2 変異体を台木とした場合よりも花成時期が遅れた。よって、ATC による花成阻害は接木によって移動することが示唆される。シロイヌナズナの花成誘導はbZIP型転写因子のFDとFTが相互作用をしてAPETALA1AP1 )の発現を促進することで引き起こされる。BiFCアッセイにより、ATCもFDと相互作用をし、複合体は核に局在すること、FTもATCもC末端側を欠いたFD(FDΔC)とは相互作用を示さないことがわかった。したがって、FTとATCは共におそらくFDのC末端側ドメインを介してFDと物理的相互作用をすると考えられる。ATC を35Sプロモーターで発現させた形質転換体では、LEAFYLFY )の発現量に変化は見られなかったが、AP1 の発現量は減少していた。よって、ATC はAP1 の発現を抑制していると考えられる。以上の結果から、ATCとFTは拮抗的にFDと相互作用をして同一の花芽生成遺伝遺伝子の発現を制御していると考えられる。そして、日長条件の変化に応じたFTATC の発現量のバランスによって花芽形成の微調整がなされていると考えられる。

コメント

論文)ETHYLENE INSENSITIVE2によるエチレンシグナル伝達機構

2012-11-20 20:02:25 | 読んだ論文備忘録

Processing and Subcellular Trafficking of ER-Tethered EIN2 Control Response to Ethylene Gas
Qiao et al.  Science (2012) 338:390-393.
DOI: 10.1126/science.1225974

エチレンのシグナル伝達において、小胞体膜に局在するNRAMP-様タンパク質のETHYLENE INSENSITIVE2(EIN2)が重要な役割を果たしているが、その機構は明らかとなっていない。米国 ソーク研究所Ecker らは、EIN2タンパク質において保存されているC末端側の核局在シグナル(NLS)配列に変異を加えてYFPを融合させたタンパク質(EIN2Fm-YFP)をシロイヌナズナein2-1 変異体で発現させたところ、このタンパク質は小胞体に局在していたが、エチレン処理による核への移行が起こらず、ein2 変異の相補も起こさないことを見出した。したがって、EIN2がエチレンに応答して機能するためにはNLSが必要であることが示唆される。エチレン未処理の条件ではEIN2は核には局在していないが、エチレン処理10分以内には核での局在が観察され、30分後まで局在量が増加していった。したがって、小胞体から核へのEIN2タンパク質の移行はエチレン応答にとって重要であることが示唆される。エチレン受容体ETHYLENE RESPONSE1(ETR1)の変異体etr1 ではEIN2タンパク質の核蓄積が起こらず、ETR1と直接相互作用を示すエチレン応答の負の制御因子CONSTITUTIVE TRIPLE RESPONSE1(CTR1)の変異体ctr1-1 ではEIN2タンパク質はエチレン処理をしなくても恒常的に核に局在していた。エチレンシグナル伝達においてEIN2の下流に位置している転写因子のEIN3、ETHYLENE INSENSITIVE LIKE1(EIL1)の二重変異体ein3 eil1-1 ではEIN2タンパク質の核移行に変化は見られなかった。よって、EIN2タンパク質の小胞体から核への移行にはETR1とCTR1が関与しており、EIN3/EIL1はこの過程に関与していないことが示唆される。EIN2タンパク質をウエスタン分析によって解析したところ、エチレン処理0時間、4時間のサンプルでは完全長のEIN2タンパク質が検出されず、約75 kDaのEIN2タンパク質C末端側断片(EIN2-C')が検出された。しかし、ctr1-1 変異体や長時間エチレン処理をした個体では完全長のEIN2タンパク質が検出された。エチレン無処理条件では完全長EIN2タンパク質が膜タンパク質画分において検出され、エチレン処理によってEIN2-C' 断片が核タンパク質画分で検出されるようになった。EIN2-C' 断片にYFPを付加した融合タンパク質を発現させたところ、融合タンパク質は核に局在し、融合タンパク質を発現させた形質転換体はctr1-1 変異体のように恒常的にエチレン応答をしている表現型を示した。マススペクトル分析の結果、エチレン処理によるEIN2タンパク質の切断は645−646番目のアミノ酸の間で起こることがわかった。シロイヌナズナEIN2タンパク質にはエチレン無処理条件下でリン酸化されるアミノ酸残基が3箇所あり、そのうち、645番目のSer残基(S645)は他植物のEIN2タンパク質においても保存されており、EIN2タンパク質の切断部位と一致している。野生型植物では、エチレン無処理条件ではEIN2のS645はリン酸化されているが、エチレン処理するとリン酸化されたEIN2タンパク質が検出されなくなった。ctr1-1 変異体ではエチレン処理の有無に関係なくS645がリン酸化されたEIN2タンパク質は検出されなかった。よって、CTR1はEIN2タンパク質のS645のリン酸化に必要であることが示唆される。S645をAlaに置換したEIN2をein2-5 変異体で発現させた形質転換体は、黄化芽生えも成熟個体もエチレン処理なしで恒常的にエチレン応答した表現型を示し、EIN2-C' 断片の核局在が見られた。この形質転換体で発現量が変化している遺伝子の60%以上はエチレン処理をした野生型植物や無処理のctr1-1 変異体で発現量が変化している遺伝子と一致していた。よって、EIN2 S645A変異はエチレン応答遺伝子に対して転写レベルで影響を及ぼしていることが示唆される。S645をGluに置換したEIN2を発現させた形質転換体では、エチレン処理をしてもEIN2-C' 断片への分解と核局在が見られなかった。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。エチレンのない状態では、EIN2は小胞体内に局在し、CTR1に依存したリン酸化を起こしてエチレン応答を抑制する。エチレンが小胞体膜上のETR1に受容されると、EIN2は脱リン酸化され、このことによってEIN2が分解され、生じたC末端側の断片(EIN2-C')が核へと移行してEIN3/EIL1によるターゲット遺伝子の転写を活性化する。

コメント

論文)トライコームによる草食昆虫に対する防御機構

2012-11-17 06:35:47 | 読んだ論文備忘録

Role of trichomes in defense against herbivores: comparison of herbivore response to woolly and hairless trichome mutants in tomato (Solanum lycopersicum)
Tian et al.  Planta (2012) 236:1053-1066.
DOI 10.1007/s00425-012-1651-9

トライコームは物理的、化学的に草食昆虫に対する抵抗性を植物にもたらしている。米国 ペンシルベニア州立大学Felton らは、トマトを実験材料に用いて、トライコームによる植物の防御機構について解析した。トマトの葉のトライコームはタイプI〜VIIに分類されており、I、IV、VI、VIIは分泌細胞のついたトライコーム(腺毛)で、II、III、V には分泌細胞がない。腺毛には、粘着性のある有毒な様々な化学物質含んだ頭部があり、この化学物質が草食昆虫を退けると考えられている。無腺のトライコームは頭部がなく、草食昆虫の摂食や移動を物理的に妨げていると考えられている。トマトwooly 変異体は葉の無腺トライコームが親品種よりも多く、hairlesshl )変異体は葉や茎のトライコームが親品種よりも少なく、タイプIVトライコームの形態に異常が見られる。両変異体ともメチルジャスモン酸(MeJA)処理によってトライコーム数が増加するが、トライコームのタイプには変化が見られなかった。トライコームはモノテルペン類やセスキテルペン類を生産しているが、hl 変異体の葉のトライコームのモノテルペン量は野生型よりも多くなっていた。また、wooly 変異体のトライコームのモノテルペン量は野生型よりも少なかった。葉のトライコームのモノテルペン量は茎トライコームよりも多く、モノテルペンは主に腺毛において生産されていた。hl 変異体の腺毛は野生型よりもセスキテルペン量が多く、wooly 変異体の無腺トライコームは野生型よりもセスキテルペン量が少なかった。葉を溶媒に浸漬することによって抽出したモノテルペン、セスキテルペン量は、hl 変異体、wooly 変異体ともにそれぞれの親品種よりも少なく、hl 変異体は野生型よりもトライコーム密度が低いこと、wooly 変異体は腺毛が少ないことが原因であると考えられる。したがって、腺毛がモノテルペンやセスキテルペンの生産の場であり、無腺トライコームではこれらの物質の蓄積は少ないことが示唆される。トライコームでのモノテルペンシンターゼ遺伝子(MTS1 )やセスキテルペンシンターゼ遺伝子(SST1 )の発現を見たところ、wooly 変異体では野生型よりも発現量が低く、hl 変異体では高くなっていた。トマトの虫害防御応答に関与しているプロテアーゼインヒビターをコードするPIN2 遺伝子の発現量は、hl 変異体のトライコームではwooly 変異体の無腺トライコームよりも高くなっていた。他にも防御応答に関与しているポリフェノールオキシダーゼ(PPO )遺伝子、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL )遺伝子の発現量が腺毛で高く、無腺トライコームで低くなっていた。一方、トライコーム形成に関与しているB-タイプサイクリン(SlCycB2 )遺伝子の発現量はwooly 変異体で高く、hl 変異体で低くなっていた。これらの変異体の表現型が草食昆虫の成長や産卵にどのように影響するかを、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea )の幼虫の成長量を指標としてみたところ、hl 変異体、wooly 変異体は野生型よりも幼虫の成長が良くなっていた。野生型植物、両変異体ともにMeJA処理をすることで腺毛が増加するが、そのような葉では幼虫の成長が抑制された。このことから腺毛はアメリカタバコガに対する抵抗性にとって重要であることが示唆される。一方、コロラドハムシ(Leptinnotarsa decemlineata )の幼虫の成長はhl 変異体と野生型との間で差が見られず、MeJA処理をした葉でも幼虫の成長に変化は見られなかった。しかし、wooly 変異体は野生型よりも幼虫の成長が悪くなった。よって、高密度の無腺トライコームはコロラドハムシ幼虫の成長に強く影響していると考えられる。この成長抑制は無腺トライコームの密度が高いことによって幼虫の摂食時間が短くなっているとことが関与していると思われる。アメリカタバコガ幼虫は葉肉よりも無腺トライコームを好んで摂食していたが、コロラドハムシではそのようなことはなく、トライコームはコロラドハムシによる葉の摂食を妨げているように思われる。成虫の産卵に対しては、野生型と変異体で差は見られなかった。野生型、変異体ともにアメリカタバコガ幼虫の摂食によってPIN2 の発現が誘導されるが、発現誘導量に差は見られなかった。よって、変異体での幼虫の成長量の差は、ジャスモン酸シグナル伝達が影響を受けて生じているのではないと考えられる。

コメント

論文)側根形成とオーキシンによるアクアポリン遺伝子の発現制御

2012-11-13 20:11:01 | 読んだ論文備忘録

Auxin regulates aquaporin function to facilitate lateral root emergence
Péret et al.  Nature Cell Biology (2012) 14:991-998.
DOI: 10.1038/ncb2573

内鞘細胞の分裂によって形成された側根原基は、成長して表皮細胞の間から外へ突き出て側根となる。側根原基は主根の維管束とは独立しているので、分裂・拡張している細胞に水を効率的に透過して供給する必要がある。英国 ノッティンガム大学Bennett らは、水の輸送に関与するアクアポリンに着目して、側根形成との関係を解析した。シロイヌナズナの芽生えを横にすることで重力刺激を変化させ、屈曲した根の凸面に側根が形成される実験系を用いて、側根形成過程におけるアクアポリン遺伝子の発現量変化を見た。原形質膜型アクアポリン(PIP)13遺伝子と液胞膜型アクアポリン(TIP)4遺伝子について発現プロファイルを見たところ、17遺伝子中、14遺伝子の発現が側根発達において抑制されており、PIP1;4PIP2;5 は殆ど変化が見られず、PIP2;8 の発現量は増加していた。アクアポリン遺伝子の発現抑制は側根形成の初期に起こっており、この時期は内鞘始原細胞でのオーキシン蓄積時期と一致していた。しかし、発現量の高い4つのPIP 遺伝子の発現抑制は、他に比べてやや遅れて起こってた。根をオーキシン処理するとPIP1;3PIP2,4 の発現量は2倍に増加したが、他の遺伝子の発現は抑制された。ただし、PIP2;5PIP2;8 は抑制がしばらくして解除され、発現量が処理前の量を超えた。したがって、オーキシンは側根形成過程において多くのアクアポリン遺伝子の発現を抑制していると考えられる。オーキシン応答遺伝子の発現を制御しているオーキシン応答因子(ARF)のうち、ARF7が側根形成に関与していることが知られている。arf7 機能喪失変異体におけるPIPTIP の発現を見たところ、PIP1;1PIP1;4PIP2;1PIP2;2PIP2;7 はオーキシンによる発現抑制の程度が縮小していた。また、PIP1;3PIP2;5 のオーキシンによる誘導はARF7に依存したものであった。オーキシン処理による根での水の透過性の変化を調査したところ、短時間のオーキシン処理では変化は見られなかったが、長時間の処理によって透過性の低下が起こった。また、arf7 変異体ではオーキシン処理による水の透過性の低下が見られなかった。よって、ARF7はオーキシンによるアクアポリンの制御において重要であることが示唆される。長時間のオーキシン処理は根の皮層細胞の膨圧を低下させたが、arf7 変異体ではそのような変化は見られなかった。根で強く発現しているPIP2;1 の発現パターンを見たところ、中心柱での発現が強く、外側の細胞層での発現は弱くなっていた。また、側根原基の形成過程の極初期にはPIP2;1 の発現が見られるが、原基が発達すると発現は消えた。この発現パターンは、オーキシン応答レポーターDR5の発現パターンと逆になっており、オーキシンによりPIP2;1 の発現が抑制されることと一致している。側根発達の後期や長時間のオーキシン処理によって発現量が増加するPIP2;8 は、主に中心柱で発現しており、側根原型形成過程の中期以降に原基の基部や原基が接している中心柱部分で発現が誘導された。またこの発現はオーキシンやオーキシン応答阻害剤の添加によって変化することはなかった。したがって、側根発達の際には、中心柱、側根原基と原基を覆う根表層の細胞層との間での空間的、時間的な水交換の厳密な制御がなされていると考えられる。これらの知見から、以下のモデルが考えられる。側根の出現は、分裂過程にある原基細胞内での浸透圧の増加によって引き起こされ、側根原基への水の流入と膨圧の増加をもたらす。そしてこの圧力は側根原基を覆う細胞層から突き出させる。このモデルでは、オーキシンによるアクアポリンの空間的、時間的発現制御が側根形成にとって重要であることを示唆している。

コメント

論文)ジャスモン酸シグナル伝達に関与するユビキチンリガーゼ

2012-11-07 21:37:36 | 読んだ論文備忘録

Two Novel RING-Type Ubiquitin Ligases, RGLG3 and RGLG4, Are Essential for Jasmonate-Mediated Responses in Arabidopsis
Zhang et al.  Plant Phyiology (2012) 160:808-822.
doi:10.1104/pp.112.203422

リングドメインリガーゼ(RGLG)はN末端側のフォンビルブランドA(VVA)ドメインとC末端側のリングドメインで構成されており、シロイヌナズナには5つ存在する。RGLG1とRGLG2はユビキチンリガーゼ活性を有していることが確認されており、オーキシンによる頂芽優勢や乾燥ストレス応答に関与していることが知られている。中国 北京大学An らは、機能の明らかとなっていないRGLG3、RGLG4について解析を行なった。系統樹解析からRGLG3とRGLG4は他のRGLGと比べて類似性が高く、どちらもユビキチンリガーゼ活性を有していることが確認された。RGLGファミリーのRGLG2はユビキチン結合酵素(E2)のUBC35と相互作用をするが、RGLG3、RGLG4はUBC35と相互作用をしないことから、RGLG2とは異なる活性を示すことが示唆される。RGLG3RGLG4 は様々な組織で発現しており、芽生えの根や成熟個体の葉において発現量が高くなっていた。また、メチルジャスモン酸(MeJA)処理によって、RGLG3 の発現が誘導され、RGLG4 の発現は抑制されることがわかった。そこで、RGLG3RGLG4 のJA応答性についてT-DNA挿入変異体を用いて解析を行なった。通常の成育条件で、rglg3 変異体、rglg4 変異体、rglr3 rglg4 二重変異体の芽生えの根の成長に差異は認められないが、MeJAを添加すると、rglg3 変異体、rglg4 変異体は野生型と同様に根の伸長が阻害されたが、rglr3 rglg4 二重変異体では阻害の程度が、JA非感受性のcoi1-2 変異体ほどではないが、弱くなっていた。よって、RGLG3とRGLG4はMeJAによる根伸長阻害効果に対して促進的に機能重複して作用することが示唆される。rglr3 rglg4 二重変異体ではcoi1-2 変異体と同様にJA応答遺伝子の発現誘導も抑制されており、RGLG3とRGLG4はJAシグナル伝達において重要な機能を担っていることが示唆される。RGLG3 もしくはRGLG4 を過剰発現させた個体ではMeJAによる根の伸長阻害がより強く起こり、rglr3 rglg4 二重変異体でRGLG3 もしくはRGLG4 を過剰発現させると野生型と同程度に根の伸長阻害が起こった。rglg3 rglg4 coi1-2 三重変異体およびrglg3 rglg4 myc2-2 三重変異体芽生えをMeJA処理すると、根はrglg3 rglg4 二重変異体よりも長くなり、それぞれcoi1-2 変異体、myc2-2 変異体と同程度になった。よって、rglg3 rglg4 変異によるJA非感受性はcoi1-2myc2-2 変異によってさらに強まる。coi1-2myc2-2 変異はRGLG3RGLG4 の過剰発現によるJA高感受性を完全に抑制し、根の伸長はcoi1-2 変異体、myc2-2 変異体と同程度になった。よって、RGLG3、RGLG4はJAによる根の伸長阻害にCOI1、MYC2を必要とする。PLANT DEFENSINE1.2PDF1.2 )とVEGETATIVE STORAGE PROTEIN2VSP2 )はJAによって発現誘導される遺伝子で、rglg3 rglg4 二重変異体やcoi1-2 変異体では発現誘導が抑制される。myc2-2 変異体ではJAによるPDF1.2 の発現誘導が高まり、VSP2 の発現誘導は抑制され、MYC2 はこれらの遺伝子の発現において異なる制御をしている。rglg3 rglg4 coi1-2 三重変異体でのPDF1.2 の発現誘導は抑制されたが、rglg3 rglg4 myc2-2 三重変異体ではmyc2-2 変異体のように発現誘導が促進された。rglg3 rglg4 myc2-2 三重変異体でのVSP2 の発現誘導は他の変異体と同様に抑制された。RGLG3RGLG4 の過剰発現個体ではPDF1.2VSP2 の発現誘導が促進されるが、coi1-2 変異やmyc2-2 変異によって発現促進効果が打ち消された。したがって、RGLG3やRGLG4によるJA応答性の制御にははCOI1やMYC2といったJAシグナル伝達に関与する因子が必要であることが示唆される。RGLG3とRGLG4はJA-Ileの模倣物であるコロナチン(COR)に対する応答性にも影響しており、CORを生産するPeudomonas syringae pv tomatoPst )DC3000の感染に対してrglg3 rglg4 二重変異体は抵抗性を示した。RGLG3、RGLG4の変異体や過剰発現個体は、雄ずいの発達や稔性といったJAの関連する成長発達過程には変化が見られず、RGLG3、RGLG4はJAを介したストレス応答に主に関与していると考えられる。植物体に機械的な傷害を与えると成長が抑制されるが、myc2-2 変異体では成長抑制の程度が弱く、rglg3 rglg4 二重変異体もmyc2-2 変異体と同程度に傷害による成長抑制が弱くなった。よって、RGLG3、RGLG4の機能喪失は傷害による成長遅延を抑制する。傷害によってJAZ7OXOPHYTODIENOATE-REDUCTASE3OPR3 )、JASMONIC ACID RESPONSIVE2JR2 )といったJA応答遺伝子の急速な発現誘導が起こるが、rglg3 rglg4 二重変異体ではこれらの遺伝子の発現誘導が抑制され、RGLG3RGLG4 の過剰発現個体では促進された。この促進作用はcoi1-2 変異やmyc2-2 変異によって抑制されることから、傷害応答におけるRGLG3RGLG4 の作用もJAシグナル伝達系が関与していると考えられる。coi1-1 変異体ではMeJA処理によるRGLG3 の発現誘導とRGLG4 の発現抑制が妨げられ、myc2-2 変異体ではあまり影響を受けなかった。よって、RGLG3RGLG4 のJAに対する応答はCOI1を介してなされていると考えられる。傷害によるRGLG3RGLG4 の発現誘導は、coi1-1 変異体では抑制され、myc2-2 変異体ではRGLG4 の発現誘導は抑制されたが、RGLG3 の発現誘導は影響を受けなかった。よって、RGLG3RGLG4 は傷害応答において異なる因子によって制御されていると考えられる。以上の結果から、ユビキチンリガーゼRGLG3、RGLG4は様々な刺激に応答してJAシグナル伝達の初期過程を制御していると考えられる。

コメント

論文)ブラシノステロイドフィードバックシグナルによる細胞壁の安定性維持

2012-11-01 19:38:57 | 読んだ論文備忘録

Plant Cell Wall Homeostasis Is Mediated by Brassinosteroid Feedback Signaling
Wolf et al.  Current Biology (2012) 22:1732-1737.
doi:10.1016/j.cub.2012.07.036

細胞壁に囲まれている植物細胞の成長は、膨圧によって引き起こされ、細胞壁の拡張にはペクチンが関与していることが知られている。ペクチンを構成するホモガラクツロナン(HG)はペクチンメチルエステラーゼ(PME)によって脱メチルエステル化され、構造負荷に耐えうるカルシウムイオンの架橋を形成する。フランス国立農業研究所(INRA)のHöfte らは、シロイヌナズナ芽生えをPME活性阻害剤の没食子酸エピガロカテキン(EGCG)処理をすると根の伸長が抑制され根が波うつことを見出した。よって、PME活性は成長にとって重要であることが示唆される。また、PME阻害タンパク質であるPMEI5(At2g31430)を過剰発現させた個体の細胞壁はエステル結合の絶対量が僅かに増加し、根の伸長には変化が見られなかったが、不均一な波うちが誇張されていた。さらに葉の湾曲やシュートのねじれが観察された。これらの表現型が細胞壁力学におけるペクチンのメチルエステル化パターンの変化によるものなのか、未知のペクチンの関与するシグナル伝達による二次的な効果なのかを検証するために、PMEI5 過剰発現個体の表現型を抑制する変異体の単離を行ない、comfortably numb1cnu1 )変異体を得た。この変異体の原因遺伝子の探索を行なったところ、ブラシノステロイド(BR)受容体タンパク質BRASSINOSTEROID INSENSITIVE 1(BRI1)のキナーゼドメインのアミノ酸置換(G944D)が起こっていることがわかった。また、PMEI5 過剰発現個体の表現型の抑制は他のBR関連変異体においても観察されることがわかった。野生型植物芽生えを24-epi-ブラシノライド(BL)処理をするとPMEI5 過剰発現個体のような根の波うちが起こるが、cnu1 変異体ではBLの効果は殆ど見られなかった。BRシグナルをBRI1の下流において活性化するビキニンを処理すると根の波うちは野生型だけでなくcnu1 変異体でも起こった。暗所で育成した野生型芽生えをBL処理すると、PMEI5 過剰発現個体のように胚軸が屈曲し重力屈性が失われた。PMEI5 過剰発現個体をBL処理すると胚軸伸長が抑制されるが、BR受容体の変異であるcnu1 変異体ではBL応答性が失われていた。しかし、cnu1 変異体をビキニン処理するとPMEI5 過剰発現個体に類似した表現型を示した。野生型植物芽生えをBL処理すると細胞壁のエステル量が増加してPMEI5 過剰発現個体と類似した表現型となった。PMEI5 過剰発現個体は野生型植物やcnu1 変異体と比較するとBR生合成阻害剤ブラシナゾール(BRZ)処理に対して抵抗性があった。BRZの直接のターゲットであるステロイド22-α-ヒドロキシラーゼDWF4はBRシグナルによる転写レベルでの負の制御を受けており、PMEI5 過剰発現個体ではDWF4 の発現量が減少していた。PMEI5 過剰発現個体でBRI1 を過剰発現させるとPMEI5 過剰発現個体の表現型がさらに強調され、強いわい化と器官のねじれが起こった。以上の結果から、BRシグナルがPMEI5 過剰発現個体の表現型をもたらしていることが示唆される。EGCG処理は、BRI1に結合してBRI1を不活性化するBRI1 KINASE INHIBITOR 1(BKI1)のBRI1からの解離を引き起こしてBRシグナル伝達が起こり、PME 遺伝子の発現を増加させることがわかった。したがって、PME活性の阻害はBRI1を介したフィードバックループによってPME 発現を増加させている。また、EGCG処理したbri1 変異体やBR生合成変異体は野生型よりも根の波うちが弱くなっていた。以上の結果から、EGCG処理やPMEI5 過剰発現といったPME活性の抑制は未知の機構によるBR受容体BRI1の活性化を起こし、このことによって生じたBRシグナルの増加は成長過程にある細胞においてPME 等の細胞壁修飾に関与する遺伝子の発現を高めると考えられる。このBRを介したフィードバック制御機構は細胞壁の硬化と弛緩のバランスの制御に関与していると思われる。

コメント

論文)サリチル酸受容体

2012-10-30 20:24:32 | 読んだ論文備忘録

NPR3 and NPR4 are receptors for the immune signal salicylic acid in plants
Fu et al.  Nature (2012) 486:228-232.
doi:10.1038/nature11162

植物に病原菌が感染すると、感染した細胞は過敏感反応(HR)と呼ばれるプログラム細胞死(PCD)を起こす。この局所的なPCDは、サリチル酸(SA)の生産を介して全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する。シロイヌナズナにおいて、転写コファクターのnonexpressor of PR genes 1(NPR1)がSARに関与していることが知られている。NPR1タンパク質は通常の条件下ではオリゴマーを形成して細胞質に局在しているが、病原菌が感染するとモノマーとなって核へ移行し、転写因子のコファクターとして機能して防御応答遺伝子の発現を誘導する。よって、NPR1はSA受容体ではないかと考えられていたが、NPR1自体にはSA結合活性はない。NPR1はタンパク質相互作用に関与するBTBドメインを有しており、このドメインを持つタンパク質はクリン3(CUL3)E3リガーゼと相互作用をしてタンパク質分解に関与することが知られている。しかしながら、NPR1はプロテアソーム系によって分解される。分解されない変異NPR1を生成する個体もしくはCUL3 遺伝子の変異体は防御応答遺伝子の発現量は増加するが、SARの誘導は低下する。したがって、NPR1の核蓄積は防御応答遺伝子の発現に必要であるが、SARを起こすためにはその後のNPR1の分解が必要となる。米国 デューク大学Dong らは、NPR1のパラログのNPR3とNPR4がNPR1の分解に関与しCUL3のアダプターとして機能するのではないかと考えて解析を行なった。npr4 変異体、npr3 npr4 二重変異体はSA非存在下でNPR1タンパク質が野生型よりも多く含まれており、npr3npr4npr3 npr4 の各変異体はSA処理によるNPR1タンパク質の蓄積が野生型よりも早く起こった。変異体においてNPR1 転写産物量には変化が見られないことから、npr3npr4 変異によるNPR1タンパク質量の増加は転写後の制御によってなされていると思われる。野生型植物の粗抽出液にNPR1タンパク質を添加するとNPR1の分解が観察されたが、npr3 npr4 変異体の粗抽出液ではNPR1タンパク質の分解は見られなかった。また、プロテアソーム阻害剤MG115を添加することによって野生型粗抽出液でのNPR1タンパク質の分解が抑制された。in vitro プルダウン試験からNPR3とNPR4はCUL3と相互作用をすることが確認され、NPR4はNPR3よりも強くCUL3と結合した。形質転換体を用いた共免疫沈降試験から、NPR1とCUL3の相互作用にはNPR3、NPR4が必要であることがわかった。よって、NPR4、NPR3はNPR1の分解においてCUL3のアダプターとして機能していると考えられる。酵母two-hybrid(Y2H)法によってNPR1、NPR3、NPR4の相互作用を見たところ、NPR1とNPR4は相互作用示し、NPR1とNPR3の相互作用は弱かった。しかしながら、培地にSAやSAの機能的アナログの2,6-ジクロロイソニコチン酸(INA)を添加すると、NPR1とNPR4の相互作用が抑制され、NPR1とNPR3の相互作用が強まった。さらに、NPR3とNPR4はSAやINA存在下でヘテロ/ホモ二量体を形成した。よって、NPR3とNPR4はNPR1の安定性を制御するだけでなく、自己の制御も行なっていると考えられる。Y2Hの試験結果はin vitro プルダウンアッセイによっても確認された。以上の結果から、SAはNPR3やNPR4に直接結合してNPR1との相互作用を制御していることが推測される。そこで、NPR3とNPR4のSAとの親和性を測定したところ、どちらもSAと結合し、NPR3のSAとの親和性はNPR4よりも弱いことがわかった。また、NPR4には複数のSA結合部位があると考えられ、最初の結合によって他の部位への結合親和性が弱まる負の協同性があることがわかった。ゲルろ過解析から、NPR4は四量体を形成し、四量体にSA結合能があることが確認された。SARの正の制御因子であるNPR1のNPR3/4による分解の生物学的意義についてnpr3npr4npr3 npr4 変異体に病原菌を感染させて調査したところ、npr3npr3 npr4 変異体でのNPR1の安定化はSAR誘導性の低下をもたらし、これはcul3 acul3b 二重変異体の表現型と類似していることが明らかとなった。よって、NPR3、NPR4はCUL3を介したNPR1の分解とSARの誘導において重要であることが示唆される。また、npr3 npr4 二重変異体では菌感染によるPCDが起こらず、病原菌の生産するエフェクターに応答した抵抗性が弱くなっていた。この表現型はnpr1 npr3 npr4 三重変異体では抑制されていることから、npr3 npr4 二重変異体での抵抗性低下はNPR1の蓄積増加によって引き起こされていると考えられる。恒常的に核に局在するNPR1(C82A)とGFPとの融合タンパク質を発現させた個体に病原菌を感染させたところ、菌感染した細胞でのGFP蛍光は減少し、その周囲の細胞でのGFP蛍光は増加していた。よって、NPR1は抵抗性反応として引き起こされるPCDの阻害因子として機能していることが示唆される。以上の結果から、NPR3とNPR4はSAの受容体であると考えられる。菌感染していない状態では、CUL3-NPR4よってNPR1が分解されることで無用な抵抗性の活性化が抑制されるが、基底レベルのSAによってNPR1とNPR4の相互作用が妨げられことで、一定量のNPR1が維持される。病原菌が感染するとSA量は局所的および全身で増加し、感染部位から周辺部位へとSAの濃度勾配が形成される。そしてSA濃度の高い部位ではCUL3-NPR3によってNPR1が分解されてPDCが起こり、SA濃度の低い領域ではCUL3-NPR3相互作用が制限されることでNPR1が蓄積してSARが起こる。NPR3とNPR4によるSAの受容は、病原菌感染応答による細胞の生と死を決定する機構として機能していると言える。

コメント