Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ストリゴラクトンによる胚軸伸長の制御

2014-03-31 22:52:28 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone-Regulated Hypocotyl Elongation Is Dependent on Cryptochrome and Phytochrome Signaling Pathways in Arabidopsis
Jia et al.  Molecular Plant (2014) 7:528-540.
doi: 10.1093/mp/sst093

ストリゴラクトン(SL)は芽生え胚軸の伸長に関与していることが報告されており、シロイヌナズナ芽生えに合成ストリゴラクトンのGR24を与えると胚軸の伸長が阻害される。中国 上海交通大学のYang らは、ストリゴラクトンによる胚軸伸長制御について詳細な解析を行なった。明所で発芽させたシロイヌナズナ芽生えは、培地に添加したGR24の濃度に応じて胚軸の伸長が阻害されたが、暗所で発芽させた芽生えでは胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。SL非感受性のmax2 変異体では明所育成芽生えのGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。したがって、GR24による胚軸伸長阻害は、光とMAX2 の両方に依存していることが示唆される。光は胚軸伸長を阻害し、これには青色光受容体クリプトクロムと赤/遠赤色光受容体のフィトクロムによるシグナル伝達が関与している。芽生えに照射する青色光の強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、cry1 cry2 二重変異体では照射する青色光の強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。また、光シグナル伝達に関与するbZIP型転写因子HY5の機能喪失変異体hy5 も青色光照射量を高めてもGR24による胚軸伸長阻害がわずかしか起こらなかった。よって、青色光下でのSLによる胚軸伸長阻害はクリプトクロムが関与していることが死される。赤色光においても光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyB 変異体では赤色光強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は見られなかった。同様に遠赤色光の光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyA 変異体はGR24非感受性であった。さらに、hy5 変異体も赤色光や遠赤色光照射によってGR24応答性が低下した。したがって、SLによる胚軸伸長阻害は赤色光下ではphyBに、遠赤色光下ではphyAに依存していることが示唆される。CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)はクリプトクロムやフィトクロムと直接相互作用をして光シグナル伝達を負に制御している。また、フィトクロム相互作用因子(PIF)は光形態形成の負の制御因子であることが知られている。cop1 変異体やpif1 pif3 pif4 pif5 四重(pifq )変異体の暗所育成芽生えはGR24による胚軸伸長阻害を起こすことから、COP1とPIFはSLによる胚軸伸長阻害を負に制御していると考えられる。COP1は、胚軸伸長を負に制御しているHY5をユビキチン化して26Sプロテアソーム経路による分解へ導く。cop1 変異体が暗所においてGR24に対する感受性が高くなることと、HY5との関係を明らかにするために、cop1 hy5 二重変異体のGR24応答性を調査したところ、この変異体はcop1 単独変異体と比較するとGR24応答性が大きく低下していることがわかった。また、cop1 max2 二重変異体もGR24応答性が低下していた。これらのことから、SLによる胚軸伸長阻害の暗所でのCOP1による抑制はHY5やMAX2を介してなされていることが示唆される。pifq hy5 五重変異体暗所育成芽生えは、pifq 変異体と比較すると程度は幾分劣るがGR24によって胚軸伸長が阻害された。よって、SLによる暗所での胚軸伸長阻害のPIFによる抑制はHY5を介してなされているのではなく、別の経路が存在するものと思われる。GR24は、明所においても暗所においてもHY5 の発現を促進しており、max2 変異体ではHY5 の発現はGR24による影響を受けなかった。暗所育成cop1 変異体はGR24処理によってHY5 発現が誘導されたが、cop1 max2 二重変異体ではHY5 の発現誘導は起こらなかった。よって、MAX2 を介したSLシグナルは光条件に関係なくHY5 の発現を正に制御していると考えられる。GR24処理は、明所でのHY5タンパク質の蓄積を促進したが、暗所では蓄積が見られなかった。また、max2 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質の蓄積は見られなかった。cop1 変異体やpifq 変異体は暗所においてGR24に対する感受性が高くなることから、これら変異体のHY5タンパク質の蓄積を見たところ、HY5タンパク質の蓄積はcop1 変異体ではGR24処理によって高まるが、cop1 max2 二重変異体ではそのような蓄積は起こらないこと、pifq 変異体ではGR24処理に関係なくHY5タンパク質の蓄積が起こらないことがわかった。このことからも、暗所におけるpifq 変異体のGR24応答性の増加にHY5は関与していないと思われる。GR24によるHY5タンパク質の蓄積は、青色、赤色、遠赤色の何れの光条件においても見られるが、青色光下でのcry1 cry2 変異体、赤色光下でのphyB 変異体ではGR24によるHY5タンパク質の蓄積が見られず、phyA 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質が殆ど検出されなかった。したがって、MAX2を介したSLシグナルによるHY5タンパク質の蓄積促進は、光およびクリプトクロム、フィトクロムといった光受容体に依存したものであることが示唆される。以上の結果から、ストリゴラクトンによる胚軸伸長の阻害には、クリプトクロム、フィトクロム、COP1、HY5、PIFといった光シグナル伝達の因子が関与していると考えられる。

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論文)温度上昇による花成促進機構

2014-03-25 05:50:13 | 読んだ論文備忘録

The time of day effects of warm temperature on flowering time involve PIF4 and PIF5
Thines et al.  Journal of Experimental Botany (2014) 65:1141-1151.
doi:10.1093/jxb/ert487

多くの植物種は気温が高くなると花成する。この応答には様々な花成シグナル伝達経路が関与していると考えられるが、詳細な機構は明らかとなっていない。米国 カリフォルニア大学バークレー校Harmon らは、シロイヌナズナを12時間日長で育成し、通常の22℃の育成温度に対して、日中のみ28℃の高温(WD)、夜間のみ高温(WN)、常に高温(CW)の条件にして花成までの期間を調査した。その結果、いずれの高温処理も対照よりも早く花成したが、WN条件はWD条件よりも早く花成し、CW条件はWN条件と同等か幾分花成が早まることがわかった。また、育成の際の光強度を強めてもWN条件とWD条件との花成時期の差は維持された。よって、夜間に高温であることは日中に高温であることよりも強く花成を誘導することが示唆される。そこで、高温処理によって花成誘導因子の発現量や概日リズムに変化が見られるかを調査した。通常条件においてFLOWERING LOCUS TFT )は夕方(ZT12)に発現量が最大となるが、WD条件ではFT 発現のピークが見られなくなった。よって、WD条件での花成促進はFT の発現とは別の要因によって引き起こされていると考えられる。一方、WN条件ではFT 転写産物量が他の条件よりも高く、ZT12の発現量のピークは維持されていたが、夜明け(ZT4)には転写産物量が増加し始めた。CW条件も対照よりFT 転写産物量が増加していたが、転写産物量の増加開始時刻の早期化は見られず、ZT12のFT 発現量はWN条件より低かった。FT の発現を直接制御しているCONSTANSCO )の発現は、対照では明期のZT8-ZT12に発現量が増加し始め、暗期のZT16-ZT20に発現のピークが見られた。WN条件ではCO 発現量の増加時期が対照よりも早くZT4-ZT8には始まり、ZT8-ZT12には発現量がピークに達し、その後発現量は減少していった。WD条件ではCO の発現はZT12以降の暗期に増加し、その後は対照と同じ挙動を示した。CW条件ではCO の発現は対照や他の条件よりも低くなっていた。したがって、高温条件でのFT の発現パターンの変化を説明しうるCO の発現パターン変化はNW条件の高温処理のみで起こっていた。高温処理による花成促進にCOが関与しているかを明らかにするためにco-9 T-DNA挿入機能喪失変異体を用いて解析したところ、高温処理による花成促進およびZT12の時点での各処理によるFT 発現量の差異は野生型と同じように起こった。よって、WN条件でのFT 発現量増加は、CO以外の因子も関与していると考えられる。花成の制御に関与しているとされる他の遺伝子について調査したところ、FVEFCAFLOWERING LOCUS MFLM )、FLOWERING LOCUS CFLC )については、対照と高温処理条件との間で発現に顕著な違いは見られなかった。FT をターゲット遺伝子としているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4PIF4 )の発現のピークはZT8近辺で見られるが、WN条件ではZT24に発現がピークに達しており、他の条件に比べて8時間周期が早くなっていた。WN条件ではPIF5 の発現のピークも他の条件よりも4時間早く生じていた。よって、WN条件でのPIF4PIF5 の発現周期のずれが花成促進と関連していることが示唆される。PIF4とPIF5が高温条件での花成促進に関与しているかを調査するために、変異体を用いて調査したところ、通常の育成温度においてpif4 およびpif5 単独変異体の花成は野生型と同等であったが、pif4 pif5 二重変異体は花成に遅れが見られた。よって、通常条件ではPIF4PIF5 が冗長的に花成に関与していることが示唆される。WN条件およびWD条件では、pif4 およびpif5 単独変異体の花成は野生型よりもやや遅れ、CW条件ではさらに遅れた。したがって、高温による花成促進にはPIF4PIF5 の両方が高温に曝す時間帯に関係なく必要であると考えられる。pif4 pif5 二重変異体では全ての高温条件で花成遅延が通常条件よりも強く起こった。pif4 pif5 二重変異体でのCO の発現は何れの条件でも野生型と類似しており、pif4 pif5 二重変異体での花成遅延にCO の発現は強くは影響していないと考えられる。FT の発現パターンは、WD条件、CW条件では野生型とpif4 pif5 二重変異体で類似していたが、WN条件ではpif4 pif5 二重変異体の発現量が野生型よりも低くなり、ピーク時の発現量は野生型の20%程度になっていた。しかしながら、このFT 発現量の減少はCO の発現とは対応していなかった。よって、PIF4とPIF5はWN条件でのFT の発現にとって重要であり、この発現制御はCO とは独立してなされていると考えられる。PIFタンパク質は転写後制御を受けており、光照射下でフィトクロムBと相互作用をして分解されるが、WN条件でのPIF4とPIF5の転写後制御に通常条件との違いは見られなかった。以上の結果から、高温条件での花成促進にはPIF4とPIF5が関与しており、夜間の高温ではこれらの因子がFT の発現を誘導することで、日中の高温ではFT 以外の未知の機構を介して花成促進が起こると考えられる。

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論文)ジャスモン酸とエチレンの拮抗的作用の分子機構

2014-03-21 08:47:30 | 読んだ論文備忘録

Interaction between MYC2 and ETHYLENE INSENSITIVE3 Modulates Antagonism between Jasmonate and Ethylene Signaling in Arabidopsis
Song et al.  The Plant Cell (2014) 26:263-279.

doi:10.1105/tpc.113.120394

ジャスモン酸(JA)とエチレンは植物の成長や防御応答を制御しており、両者は根毛の発達や死体栄養性の病原菌に対する抵抗性に対して協働的に作用するが、芽生えのフック形成や虫害に対する防御応答に関しては拮抗的に作用する。中国 清華大学Xie らは、JAとエチレンの拮抗的な作用の分子機構について解析を行なった。エチレンはフックの屈曲を誘導し、エチレンを過剰生産するethylene overproducer1eto1 )変異体や恒常的にエチレン応答を示すconstitutive triple response1ctr1 )変異体ではフックの屈曲が誇張され、エチレンシグナル伝達変異体のethylene insensitive2ein2 )、ein3ein3-like1eil1 )ではフックの屈曲が弱まる。eto1 変異体やctr1 変異体のフックの屈曲はJA処理によって阻害されることから、JAはETO1CTR1 の下流においてエチレンによるフックの屈曲を抑制していることが示唆される。HOOKLESS1(HLS1)はフック形成を正に制御する因子であり、eto1 変異体やctr1 変異体ではHLS1 の発現量が高い。JAはエチレン(ACC)処理によるHLS1 の発現誘導を抑制することから、JAはHLS1 の上流において作用することでフックの屈曲を抑制していると考えられる。JA非感受性coronatine insensitive1coi1 )変異体はフックの屈曲が誇張されるが、coi1 hls1 二重変異体やcoi1 ein3 eil1 三重変異体ではフックの屈曲が見られなくなる。よって、COI1はフック形成におけるEIN3/EIL1-HLS1のシグナル伝達系の上流において作用していることが示唆される。JAシグナル伝達に関与する因子のフック形成の関与を調査したところ、JAシグナル伝達の抑制因子であるJAZタンパク質の蓄積量が増加するJAZ1Δ3A 発現形質転換体ではフックの屈曲が誇張された。また、myc2 変異体は野生型よりもフック屈曲が誇張され、myc2 myc3 二重変異体やmyc2 myc4 二重変異体ではさらに屈曲が誇張された。myc2 myc3 myc4 三重変異体は屈曲の誇張がさらに強くなり、coi1 変異体と同程度になった。単独変異体や二重変異体のフックの屈曲はJA処理によって阻害されたが、三重変異体ではJAに対して完全に非感受性となった。また、三重変異体のACC処理による屈曲の誇張はJA処理による抑制を受けなかった。myc2myc2 myc3myc2 myc4myc2 myc3 myc4 の各変異体はHLS1 の発現量が増加しており、myc2 myc3 myc4 三重変異体をACC処理した際のHLS1 の発現量増加はJA処理をしても抑制されなかった。これらの結果から、MYC2、MYC3、MYC4は冗長的にJAによるフック屈曲の阻害に関与していることが示唆される。MYC2、MYC3、MYC4はEIN3、EIL1と相互作用をすることがBiFCアッセイ、プルダウンアッセイ、共免疫沈降アッセイから確認された。EIN3はHLS1 遺伝子のプロモーター領域に結合してHLS1 の発現を活性化し、フックの屈曲を誘導することが知られている。MYC2はEIN3やEIL1と相互作用をすることでEIN3やEIL1によるHLS1 の転写活性化を抑制することがわかった。EIN3とEIL1は、死体栄養性病原菌に対する抵抗性を誘導する転写因子をコードするETHYLENE RESPONSE FACTOR1ERF1 )もターゲット遺伝子としているが、MYC2とEIN3、EIL1との相互作用はEIN3やEIL1によるERF1 の転写活性化も抑制していた。実際に、myc2 変異体ではERF1 の他にERF1 のホモログのOCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS AP2/ERF59ORA59 )やこれらの転写因子のターゲット遺伝子であるPLANT DEFENSIN1.2PDF1.2 )といった防御応答遺伝子類の発現量が高く、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea )に対する抵抗性が高くなっていた。よって、MYC2の変異によって遊離状態となったEIN3やEIL1は、フックの屈曲や防御応答を誘導するHLS1ERF1 の発現を活性化していることが示唆される。myc2 ein3 eil1 三重変異体やmyc2 myc3 myc4 ein3 eil1 五重変異体では、myc2 類の変異体において観察されるフックの屈曲の誇張やHLS1 の発現量増加が抑制されており、myc2 myc3 myc4 ein3 eil1 五重変異体でのHLS1 の発現はJA処理やACC処理の影響を受けなくなった。また、ein3 eil1 変異はmyc2 変異による灰色カビ病菌抵抗性の増加を抑制した。myc2 myc3 myc4 三重変異体を用いた解析から、MYC2は傷害応答遺伝子のVEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )、VSP2TYROSINE AMINOTRANSFERASE3TAT3 )や虫害によって誘導される遺伝子のCYP79B3BRANCHED-CHAIN AMINOTRANSFERASE4BCAT4 )、BILE ACID TRANSFERASE5BAT5 )のJAによる発現誘導を促進していることが確認され、ein3 eil1 二重変異体ではこれらの遺伝子のJAによる発現誘導が野生型よりも高くなっていることがわかった。myc2 myc3 myc4 三重変異体はグルコシノレートがほぼ完全に含まれておらず、ハスモンヨトウ(Spodoptera littoralis )やシロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua )といったゼネラリストの食害を受けやすい。一方、ein3 eil1 二重変異体はゼネラリストに対する防御が高い。したがって、EIN3とEIL1はMYC2、MYC3、MYC4と相互作用をすることでこれらの因子の機能を抑制していると考えられる。以上の結果から、MYC2、MYC3、MYC4とEIN3、EIL1との間の相互作用によってエチレンとジャスモン酸の拮抗的な関係が形成されていると考えられる。

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論文)葉の老化におけるジャスモン酸とオーキシンのクロストーク

2014-03-14 08:32:57 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WRKY57 Functions as a Node of Convergence for Jasmonic Acid- and Auxin-Mediated Signaling in Jasmonic Acid-Induced Leaf Senescence
Jiang et al.  The Plant Cell (2014) 26:230-245.

doi:10.1105/tpc.113.117838

WRKY転写因子ファミリーはシロイヌナズナに74存在し、その多くが生物/非生物ストレス応答にに関与している。また、WRKY 遺伝子は老化時に転写産物量が増加する転写因子遺伝子として2番目に大きなグループとなっている。中国科学院 西双版納熱帯植物園Yu らは、老化葉で発現量が増加するWRKY57に着目して詳細な解析を行なった。葉の老化を誘導することが知られているアブシジン酸(ABA)、ジャスモン酸(JA)、サリチル酸(SA)、エチレンの処理によるWRKY57 の発現量変化を調査したところ、JA処理によってWRKY57 の発現量が増加することがわかった。よって、WRKY57はJAによる老化誘導において機能していることが推測される。T-DNA挿入機能喪失wrky57 変異体の葉は、メチルジャスモン酸(MeJA)処理による黄化、クロロフィル量の減少、細胞死が野生型やWRKY57 過剰発現形質転換体よりも強く表れることから、WRKY57はJAの誘導する葉の老化を負に制御していると考えれられる。wrky57 変異体は、老化に関連しているSENESCENCE4SEN4 )、SENESCENCE-ASSOCIATED GENE12SAG12 )、SAG18SAG20 のMeJA処理後の発現量が野生型やWRKY57 過剰発現個体よりも高く、WRKY57 はこれらの老化関連遺伝子の転写産物量を負に制御していることが示唆される。WRKY転写因子はターゲット遺伝子のプロモーター領域のW-boxに結合して機能することが知られており、発現調査した4つの老化関連遺伝子のプロモーター領域は幾つかのW-boxを含んでいた。クロマチン免疫沈降試験から、WRKY57はSEN4 遺伝子やSAG12 遺伝子のプロモーター領域にW-boxを介して結合することが確認され、SAG12 遺伝子プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを用いた一過的発現解析から、WRKY57は遺伝子発現を抑制する因子として機能することがわかった。WRKYタンパク質は他の因子と複合体を形成することで機能することが知られていることから、酵母two-hybrid系を用いてWRKY57と相互作用をするタンパク質の探索を行なった。得られた候補の中にはJAZ4、JAZ8、IAA29が含まれており、プルダウンアッセイやBiFCアッセイから、WRKY57はこれらのタンパク質とと強い相互作用を示し、複合体は核に局在することが確認された。老化葉のJAZ4JAZ8 の転写産物量は通常の葉よりも多く、T-DNA挿入jaz4 変異体やjaz8 変異体の葉はMeJA処理による老化誘導が野生型よりも強く表れた。一方、JAZ4JAZ8 を過剰発現させた形質転換体の葉は、MeJA処理による老化が野生型よりも遅く、クロロフィル含量の減少や細胞死についても表現型と一致していた。jaz4 変異体やjaz8 変異体でのSEN4SAG12 の転写産物量は野生型よりも高く、JAZ4JAZ8 を過剰発現させた形質転換体では低くなっていた。これらの結果から、JAZ4JAZ8 はJAによる葉の老化を抑制していることが示唆される。老化葉のIAA29 転写産物量は通常の葉よりも高く、T-DNA挿入iaa29 変異体のMeJA処理による老化誘導は野生型と同等であったが、IAA29 過剰発現形質転換体は野生型よりも早く老化を示し、クロロフィル含量の減少や細胞死、SEN4SAG12 の発現からも老化が促進されていることが示された。よって、IAA29はJAによる葉の老化に促進的に作用していると考えられる。これまでの知見から、オーキシンは老化を抑制することが知られている。しかしながら、その機構やJAによる老化誘導との関係については明らかとなっていない。野生型植物の切り葉を水、MeJA、インドール-3-酢酸(IAA)、MeJA+IAAの各処理を行なったところ、水とIAA処理では老化は観察されなかったが、MeJA処理では老化症状が表れた。MeJA+IAA処理した葉ではわずかに老化の兆候が見られ、MeJA処理と比較してクロロフィル含量の減少や細胞死、SEN4SAG12 の発現が抑制されていた。よって、オーキシンはJAによる老化誘導を部分的に抑制することが示唆される。オーキシン処理によってWRKY57 の発現が強く誘導されることから、WRKY57 はオーキシンシグナル伝達に関与していると思われる。wrky57 変異体をMeJAもしくはMeJA+IAA処理した際の老化誘導に差が見られないことから、オーキシンはWRKY57 を介してJAによる老化誘導に対して拮抗的作用していると考えられる。IAA29タンパク質はドメインⅡを介して、JAZタンパク質はZIMドメインを介してWRKY57タンパク質と相互作用をしており、WRKY57タンパク質はジンクフィンガードメインを介してこれらのタンパク質と相互作用をしていることが確認された。また、JAZ4とIAA29は競合的にWRKY57と相互作用をすることがわかった。オーキシン処理はWRKY57の転写産物量とタンパク質量の両方を増加させ、MeJA処理はWRKY57 転写産物量を増加させるが26Sプロテアソーム系によるWRKY57タンパク質の分解を誘導すること、この分解には一部COI1が関与していることがわかった。よって、WAKY57はタンパク質レベルにおいてJAとオーキシンによる拮抗的な制御を受けていることが示唆される。以上の結果から、WRKY57はJAの誘導する葉の老化においてJAとオーキシンの間のクロストークの鍵となる因子であると考えられる。

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論文)サイトカイニントランスポーター

2014-03-07 20:44:52 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis ABCG14 protein controls the acropetal translocation of root-synthesized cytokinins
Zhang et al.  Nature Communications (2014) 5:3274
doi:10.1038/ncomms4274

ATP結合カセット(ABC)トランスポーターは、ATPのエネルギーによって物質を輸送する膜輸送体で、全ての生物に存在している。シロイヌナズナゲノムにはABCトランスポーターをコードする遺伝子が120以上含まれており、配列の特徴から幾つかのサブファミリーに分類されている。米国 ブルックヘブン国立研究所Liu らは、ABCトランスポーターサブファミリーG(ABCG)のうちの機能未知なトランスポーターの遺伝子発現解析結果から、根の維管束において強い発現の見られるAtABCG14 に着目して解析を行なった。AtABCG14 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失変異体の芽生えは、一次根の伸長が著しく抑制される表現型を示した。atabcg14 変異体の根分裂組織の細胞分裂活性をCYCB1;1::uidA を導入して調査したところ、野生型よりも大きく低下していることがわかった。したがって、AtABCG14 の機能喪失は根分裂組織の活性に影響していると考えられる。atabcg14 変異体の根の伸長に対する各種ホルモンおよびホルモン前駆体の効果を見たところ、オーキシンやACCの添加による伸長阻害に対しては野生型との差は見られなかったが、サイトカイニン添加による伸長阻害に対しては感受性が低下していた。また、atabcg14 変異体の花序茎は野生型よりも細く、維管束の数が少なくなっていた。さらに、維管束の師部と木部の細胞数が減少し、リグニンの合成や沈着の遅れ、維管束間繊維や木部維管束での木化した細胞の減少が観察された。このような二次成長の遅延は、サイトカイニン合成に関与するATP/ADPイソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)が機能喪失したatipt1;3;5;7 四重変異体においてサイトカイニン量が減少して形成層の活性が低下した際に類似の現象が見られる。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が減少していることが推測される。他にもatabcg14 変異体芽生えは葉柄が短く、葉面積が小さく、クロロフィル含量が少ないといった表現型を示し、atabcg14 変異体では地上部組織のサイトカイニン量が減少していることが想像される。これらの形態学的および生理学的データから、AtABCG14 の機能喪失は根とシュートにおいてサイトカイニンの分布もしくは蓄積を妨げていると思われる。AtABCG14 がサイトカイニン分布に影響しているかを確認するために、タイプ-A サイトカイニンレスポンスレギュレーターをコードするARR5 のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトをatabcg14 変異体に導入してGUS活性を見たところ、野生型と比較して子葉のGUS活性は大きく減少していたが、一次根のGUS活性は組織全体で強くなっていた。成熟個体においても、atabcg14 変異体の花序のGUS活性は野生型よりも低くなっていた。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が低く、根のサイトカイニン量が高くなっており、根とシュートの間でのサイトカイニンの分配に異常があることが示唆される。atabcg14 変異体の内生サイトカイニン量を測定したところ、根で合成されて木部を介してシュートへ輸送されるtrans-ゼアチン(tZ)-タイプやジヒドロゼアチン(DHZ)-タイプのサイトカイニンはシュートでの含量が低下し根での含量が増加していた。一方、シュートで合成され師部を介して輸送されるイソペンテニルアデニン(iP)-タイプのサイトカイニンは、シュートと根の両方で野生型よりも含量が高くなっていた。したがって、AtABCG14は根で合成されるtZ-タイプやDHZ-タイプのサイトカイニンの分布において重要な役割を演じていることが示唆される。AtABCG14 プロモーター制御下でGUS もしくはAtABCG14とGFPの融合タンパク質を発現させた解析から、AtABCG14 はシュートよりも根において強く発現しており、根の移行領域から伸長/分化領域にかけての内鞘と中心柱で主に発現し、分裂領域では殆ど発現していないことがわかった。他にも、抽だいした植物の若い葉の中ろくや葉脈、成熟した葯、長角果においても発現が見られた。また、AtABCG14タンパク質は細胞膜に局在していた。標識したtZを根に与えると、野生型ではシュートに輸送されていたが、atabcg14 変異体では殆ど輸送されていなかった。35S プロモーター制御下でAtABCG14 を過剰発現させた形質転換体の葉に標識したtZを与えると、表皮細胞への標識の取込が野生型よりも少なく、ABCトランスポーターの阻害剤であるオルトバナジウム酸塩で予め処理した葉では野生型との間の標識取込量の差が緩和された。このことから、AtABCG14は排出輸送体として機能しているものと考えられる。以上の結果から、AtABCG14は根で合成されたサイトカイニンの地上部への輸送に関与するトランスポーターであると考えられる。

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論文)アブシジン酸の異化を抑制することで乾燥耐性をもたらす転写因子

2014-02-28 05:35:05 | 読んだ論文備忘録

bHLH122 is important for drought and osmotic stress resistance in Arabidopsis and in the repression of ABA catabolism
Liu et al.  New Phytologist (2014) 201:1192-1204.
DOI: 10.1111/nph.12607

塩基性へリックスループへリックス(bHLH)ファミリーは真核生物に共通して見られる転写因子で、シロイヌナズナにはbHLH因子をコードする遺伝子が160以上存在する。しかしながら、機能が知られているものはその中のおよそ30%程度である。中国農業科学院 作物科学研究所のLi らは、シロイヌナズナbHLH 遺伝子の発現パターンを公的データベースを用いて調査し、ストレス応答に関すると思われるbHLH122 (At1g51140)に着目して詳細な解析を行なった。マイクロアレイデータから、bHLH122 転写産物量は浸透圧ストレスや塩ストレスによって大きく増加するが、乾燥ストレスでは変化が見られないことがわかっている。しかしながら、RT-PCRを行なうと乾燥ストレスによってもbHLH122 の転写産物量が増加することが確認された。これはマイクロアレイとRT-PCRでは乾燥処理条件が異なることに起因していると考えられる。乾燥ストレスによって転写産物量が増加する遺伝子の中にはアブシジン酸(ABA)の蓄積が関与しているものがあるが、bHLH122 の発現量はABA処理による変化は見られず、ABA欠損変異体(aba2-1 )やABA非感受性変異体(abi4-1 )においても乾燥処理によってbHLH122 の転写産物量は増加した。したがって、bHLH122 の発現にABAシグナルは関与していないと考えられる。bHLH122 の転写産物は、根、葉、茎、花を含むシロイヌナズナの様々な組織で検出され、bHLH122 プロモーター制御下でGUS を発現させて組織学的に発現部位を観察すると、芽生えでは子葉、根の維管束や根端、葉では維管束系や孔辺細胞、そして花や長角果において発現が見られた。また、bHLH122タンパク質は核に局在することがわかった。35S プロモーター制御下でbHLH122 を恒常的に過剰発現させた形質転換体は乾燥耐性を示し、乾燥処理後の再潅水による回復が野生型よりも高くなっていた。そこで、bHLH122 過剰発現個体の気孔開度を野生型と比較したところ、通常条件では両者の気孔開度に差は見られなかったが、乾燥条件での気孔開度はbHLH122 過剰発現個体は野生型よりも40-63%低くなっていた。また、bHLH122 過剰発現個体の切り葉は野生型よりも水分の減少が遅くなっていた。シロイヌナズナはストレスに応答して葉にアントシアニンを蓄積するが、bHLH122 過剰発現個体は乾燥ストレス後のアントシアニン蓄積量が野生型よりも75%少なくなっていた。以上の結果から、bHLH122 過剰発現個体は野生型よりも乾燥ストレスに対する耐性が高く、bHLH122 は乾燥耐性に関与していることが示唆される。bHLH122 過剰発現個体は塩ストレスや浸透圧ストレスに対しても耐性を示した。bHLH122 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失bhlh122 変異体は、野生型と比較して乾燥耐性に差は見られなかったが、塩ストレスと浸透圧ストレスに対する感受性は高くなっており、bHLH122はこれらのストレスの耐性に関与していると考えられる。bHLH122 を介したシグナル伝達を明らかにするために、bHLH122 過剰発現個体と野生型との間でマイクロアレイ解析を行なったところ、非ストレス条件下で214の遺伝子の発現量に差が見られた。このうち87遺伝子は発現量が増加しており、127遺伝子は発現量が減少していた。そして、発現量が増加している遺伝子の92.0%、発現量が減少している遺伝子の94.5%はプロモーター領域にbHLH転写因子の結合部位とされているG-box(CACGTG)またはE-box(CANNTG)を含んでいることがわかった。bHLH122タンパク質がこれらのシスエレメントと相互作用をするかを、ゲルシフトアッセイとクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを行なって調査したところ、bHLH122タンパク質はG-boxとE-boxの両方のシスエレメントと相互作用を示すことがわかった。野生型とbHLH122 過剰発現個体で発現量の異なる214遺伝子の中にはABAの異化に関与しているABA 8'-ヒドロキシラーゼをコードするCYP707A3 が含まれていた。CYP707A3 遺伝子のプロモーター領域にはG-boxが2つ、E-boxが6つ含まれていたことから、この領域からクローニングしたG-boxを1つ含むDNA断片を用いてゲルシフトアッセイを行なったところ、bHLH122タンパク質はこの断片と結合することがわかった。また、ChIPアッセイからもCYP707A3 はbHLH122のターゲットであることが確認された。マイクロアレイのデータではCYP707A3 はbHLH122によって発現抑制される遺伝子であることが示されている。CYP707A3 の発現はbHLH122 過剰発現個体では野生型よりも約60%低く、bhlh122 変異体では約3倍高くなっていた。cyc707a3 機能喪失変異体は野生型よりもABA含量が高いことが報告されていることから、bHLH122 過剰発現個体のABA含量を調べたところ、野生型よりも高いことがわかった。以上の結果から、bHLH122はCYP707A3 の発現を抑制することでABA含量の増加をもたらしており、このことによってbHLH122は乾燥、塩、浸透圧ストレスに対する正の制御因子として機能していると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによる非生物ストレス応答の制御

2014-02-14 05:43:01 | 読んだ論文備忘録

Positive regulatory role of strigolactone in plant responses to drought and salt stress
Ha et al.  PNAS (2014) 111:851-856.
doi:10.1073/pnas.1322135111

植物ホルモンは様々な環境ストレスの応答に関与している。理化学研究所 環境資源科学研究センターTran らは、ストリゴラクトン(SL)と環境ストレス応答との関係を調査し、シロイヌナズナのSL生合成およびSL応答の機能喪失max 変異体は野生型と比べて乾燥ストレスを受けた際の生存率が低いことを見出した。また、これらのmax 変異体は発芽時および栄養成長期の塩ストレスに対しても感受性が高くなっていた。したがって、SLは非生物ストレスに対する応答の制御において重要な役割を演じていると考えられる。SL欠損変異体のmax3max4 にSLを噴霧して与えると、乾燥感受性の表現型が野生型と同等にまで回復したが、SL応答変異体max2 ではそのような効果は見られなかった。また、野生型植物にSLを与えると乾燥耐性が強まった。したがって、SLは乾燥ストレスに対する応答を正に制御していると考えられる。野生型植物はアブシジン酸(ABA)処理によって発芽や芽生えの成長が阻害されるが、max 変異体はABA処理による阻害の程度が野生型よりも弱く、ABA感受性が野生型よりも低くなっていた。よって、ストレス応答に関してSLとABAのシグナル伝達の間にクロストークが存在することが示唆される。塩やマンニトールによって芽生えに浸透圧ストレスを与えると根の成長が阻害されるが、野生型とmax 変異体の阻害の程度は同じであった。よって、max 変異体のストレス感受性表現型は根の成長、発達過程には関連していないと考えられる。max 変異体は野生型植物よりも水分の喪失速度が速く、蒸散速度の変化が水分欠損ストレスに対する耐性低下を引き起こしていると思われる。max 変異体の孔辺細胞はアブシジン酸(ABA)に応答した閉口が野生型よりも遅く、気孔密度が野生型よりも高くなっていた。これらことがmax 変異体の水分損失や乾燥感受性が野生型よりも高いことに関連していると考えられる。野生型植物とmax2-3 変異体の葉のトランスクリプトーム解析において、ストレスのない条件でmax2-3 変異体では231遺伝子の転写産物量が野生型よりも多く、262遺伝子の転写産物量が少なくなっていた。転写産物量が減少していた262遺伝子のうち、50遺伝子は乾燥によって発現誘導される遺伝子であり、その中の9遺伝子は他のトランスクリプトームデータにおいてABAによって発現誘導されることが示されている遺伝子であった。葉を乾燥処理すると、2時間後には1022遺伝子、4時間後には2767遺伝子の転写産物量がmax2-3 変異体において野生型よりも減少しており、そのうちの491遺伝子および955遺伝子は脱水によって発現誘導される遺伝子であり、それらの多くはABAによっても誘導される遺伝子であった。したがって、max 変異体ではABAシグナルを介した脱水応答遺伝子の発現に変化が起こっていることが示唆される。乾燥やABAによって誘導される遺伝子の多くがmax 変異体において転写産物量が低下していることは、乾燥感受性の表現型と関連していると思われる。max2 変異体で転写産物量が減少している遺伝子の中にはフラボノイド生合成に関与するものが含まれていた。フラボノイド類は環境ストレスから植物を保護することが知られており、今回の試験で見出されたフラボノイド生合成関連遺伝子の多くはABAとは独立して乾燥によって発現誘導される遺伝子であった。よって、SLはABAとは独立してストレス応答を調節していることが示唆される。また、max2 変異体では通常条件、脱水条件のどちらにおいてもサイトカイニンの分解に関与する遺伝子の転写産物量が減少しており、これらの遺伝子はストレスやABAに対する応答に関与しているとされている。以上のように、max2 変異体ではストレス、ABA、サイトカイニンのそれぞれのシグナル伝達に関連しているとされている遺伝子の転写産物量が減少しており、乾燥や塩ストレスに対する耐性の低下と一致が見られる。よって、SLはストレス応答と関連していることが示唆される。光合成関連遺伝子は脱水処理によってABAとは独立して転写産物量が減少することが知られているが、max2 変異体では転写産物量が増加しており、このことはmax 変異体の乾燥耐性の低下と関連していると考えられる。SL生合成遺伝子のうちMAX3MAX4 は脱水処理した葉において発現が誘導されることから、SL合成はストレス応答において重要であると考えられる。以上の結果から、ストリゴラクトンは非生物ストレスに対する応答において正の制御因子として機能するものと考えられる。

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論文)MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)と非生物ストレス応答

2014-02-05 21:30:49 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Drought Tolerance by the F-Box Protein MAX2 in Arabidopsis
Bu et al.  Plant Physiology (2014) 164:424-439.
doi:10.1104/pp.113.226837

シロイヌナズナのF-boxタンパク質MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)は、分枝、光形態形成、老化といった様々な過程の制御に関与している。テキサス大学オースティン校Haq らは、以前に、max2 変異体は種子発芽においてアブシジン酸(ABA)に対する感受性が高くなっていることを見出し、そのことについて詳細な解析を行なった。発芽10日目の野生型シロイヌナズナおよびmax2 変異体芽生えを7日間潅水を止めた後に再び潅水したところ、ほぼ100%のmax2 変異体で成長回復が見られず、乾燥ストレスに対して高い感受性を示した。また、max2 変異体の切り葉は野生型よりも蒸散速度が早く、このことからも、max2 変異体が乾燥に対する感受性が高いことが示唆される。max2 変異体の葉の気孔の開度や気孔の密度は野生型と比較して有意差は見られないことから、max2 変異体の乾燥条件に対する感受性の高さは気孔の構造によるものではないと考えられる。剥離した葉の表皮をABA処理するとmax2 変異体の気孔は野生型よりも開いており、max2 変異体はABAに対する感受性が低下し蒸散量が多くなっていると考えられる。切り葉を乾燥条件に曝すと、max2 変異体の切り葉の気孔は野生型よりも開いていることから、max2 変異体の蒸散量が多いことと気孔が開いていることには強い相関があると考えられる。乾燥に対する応答性はクチクラ層の厚さと関連があるが、max2 変異体の葉や茎のクチクラ層の厚さは野生型よりも薄く、MAX2はクチクラ層の厚さの制御にも関与していることが示唆される。実際に、クロロフィル滲出試験を行なうとmax2 変異体は野生型よりも早くクロロフィルが滲出した。よって、max2 変異体のクチクラ層が薄いことも乾燥感受性に関与していると考えられる。芽生えを人工乾燥処理をした際のABA応答遺伝子の発現誘導を見ると、max2 変異体は野生型よりも誘導量が減少しており、このことも乾燥感受性の表現型に関与していると思われる。また、max2 変異体はABAの生合成、異化、輸送、シグナル伝達に関与する遺伝子の乾燥処理による発現誘導量が野生型よりも低くなっていた。乾燥処理をすると内生ABA量が増加するが、野生型とmax2 変異体でABA量に差が見られないことから、max2 変異体の乾燥感受性の増加はABA含量の差によるものではないと考えられる。MAX2 を過剰発現させた形質転換体を乾燥処理した際の表現型は野生型と同等であることから、MAX2は乾燥ストレス応答における制限因子とはなっておらず、この応答には他の因子も関与していると思われる。max2 変異体種子は、ABA存在下で発芽させた際の子葉の緑化阻害が野生型よりも強く表れ、ABAに対する感受性が高い。したがって、MAX2は発芽初期の芽生えにおいてABAシグナルの負の制御因子として機能していることが示唆される。また、max2 変異体芽生えは野生型よりも強くABAによる根の成長阻害を受けた。よって、max2 変異体は種子発芽および芽生えの初期成長過程においてABAに対する感受性が高いと考えられる。ABAに応答した種子発芽や芽生えの成長の制御に関与している転写因子のABI3やABI5の機能喪失変異体にmax2 変異を導入した二重変異体を観察したところ、max2 abi3 二重変異体、max2 abi5 二重変異体ともに、max2 単独変異体において観察される芽生えの胚軸伸長量増加、成熟個体での分枝の増加が起こった。一方、芽生えをABA処理した際の胚軸伸長阻害や子葉緑化阻害に関しては、abi3 単独変異体やabi5 単独変異体と同様にABA非感受性を示した。したがって、MAX2はABA応答に関してABI3やABI5よりも上流で機能しているものと思われる。乾燥種子でのABI3ABI5 の転写産物量、およびこれらの下流に位置するターゲット遺伝子のArabidopsis Thaliana Late Embryogenesis Abundant1AtEM1 )の転写産物量は野生型とmax2 変異体で差が見られないが、種子を浸漬した後のこれらの転写産物量はABA処理に関係なく野生型よりもmax2 変異体で高くなっていた。MAX2 転写産物量は乾燥種子では多いが、種子を浸漬すると減少し、その際にABA処理をしてもMAX2 転写産物量の変化に違いは見られなかったが、芽生えのMAX2 転写産物量はABA処理によって減少した。abi3 変異体やabi5 変異体のMAX2 転写産物量は野生型よりも低くなっていた。したがって、ABAはMAX2 の発現を制御しており、この制御はMAX2によるABAシグナル伝達に関与していることが示唆される。max2 変異体種子は、NaCl、マンニトール、グルコースの添加によって浸透圧ストレスを与えた条件で発芽させた際の子葉緑化の阻害の程度が野生型よりも強く、MAX2は浸透圧ストレス応答を負に制御していると考えられる。MAX2はストリゴラクトンのシグナル伝達に関与していることから、ストリゴラクトン生合成経路の変異体max1max3max4 の芽生えのABAや浸透圧ストレスに対する感受性を調査したが、これらの変異体はmax2 変異体のような高い感受性は示さなかった。したがって、ABAや浸透圧ストレスに対する高感受性表現型はmax2 変異体でのみ現れ、MAX1、MAX3、MAX4によるストリゴラクトン生合成はこれらの応答には直接には関与していないと思われる。以上の結果から、MAX2は非生物ストレスに対する応答に関与していることが示唆される。

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論文)TIME FOR COFFEEによる根の分裂組織の制御

2014-01-30 19:49:55 | 読んだ論文備忘録

TIME FOR COFFEE controls root meristem size by changes in auxin accumulation in Arabidopsis
Hong et al.  Journal of Experimental Botany (2014) 65:275-286.
doi:10.1093/jxb/ert374

TIME FOR COFFEE(TIC)は概日時計の調節因子として機能しているが、MYC2タンパク質の蓄積を抑制してジャスモン酸(JA)シグナルを負に制御することが報告されており、シロイヌナズナtic 変異体芽生えはJAによる根の伸長阻害に対して高感受性を示す。しかしながら、JAを添加していない条件で発芽10日目のtic-2 変異体の根の長さは野生型と同等であり、TIC が根の成長に対してどのように関与しているかは明らかではない。中国 武漢大学のLu らは、シロイヌナズナtic-2 変異体芽生えの1次根の成長を野生型と比較し、発芽から3、4日目ではtic-2 変異体の1次根は野生型よりも短いが、その後は伸長阻害が見られないことを見出した。したがって、TIC は根の初期成長に関与していると考えられる。tic-2 変異体の根は分裂領域の長さと細胞数が野生型よりも減少しており、TIC は分裂領域の細胞数を制御することで根の伸長に影響していることが示唆される。興味深いことに、tic-2 変異体の根の伸長領域の長さは野生型と同等であり、成熟領域の細胞は野生型よりも大きいことがわかった。TIC は概日時計の調節因子なので、日長を変えることで分裂領域の長さや細胞数に変化が見られるかを調査したが、明確な違いは見られなかった。根の伸長量は日変動するが、tic-2 変異体の根の伸長の日変動は野生型と同じであった。また、tic-2 変異体の分裂領域の長さと細胞数は明方においても夕方においても野生型よりも少なくなっていた。tic-2 変異体は分裂組織の細胞分裂能が明方も夕方も野生型よりも低下していた。tic-2 変異体の中には、静止中心細胞やコルメラ細胞の数が増えたり、新たな幹細胞列の見られる個体もあり、TIC は幹細胞周辺のポテンシャルにも関与していると考えられる。TIC は調査した全ての組織で恒常的に発現しており、特に花での発現量が高くなっていた。根においてTIC は分裂組織で高い発現が見られ、TIC が根の分裂組織に作用していることと一致している。オーキシンは根の分裂組織の維持にとって重要であり、オーキシン量の低下した変異体は分裂組織が小さくなる。tic-2 変異体でオーキシン応答DR5::GFP マーカーを発現させたところ、明方も夕方も蛍光強度が野生型よりも低いことがわかった。また、tic-2 変異体の根の内生IAA量は明方も夕方も野生型よりも低くなっていた。よって、オーキシン量の減少がtic-2 変異体の分裂組織の大きさを変化させていることが示唆される。そこで、tic-2 変異体にIAAを与えてみたところ、分裂組織の大きさや細胞数が増加した。野生型植物において、オーキシン添加によるTIC 発現量の変化は見られなかった。標識したIAAを用いた試験から、tic-2 変異体では明方も夕方も根へのオーキシン極性移動量が減少していることがわかった。したがって、tic-2 変異体の根のオーキシン量の低下は求頂的なオーキシン輸送量の低下によるものと考えられる。地上部の茎頂や若い葉で合成されたオーキシンは根の成長にとって重要であることから、芽生えの地上部を切除して根の成長を見たところ、野生型植物では分裂組織の長さや細胞数が減少してtic-2 変異体の根のようになったが、tic-2 変異体では大きな変化は見られなかった。また、tic-2 変異体はオーキシン生合成遺伝子の根での発現量が野生型よりも低く、オーキシン生合成能力もtic-2 変異体の表現型に影響していると考えられる。根の分裂組織の大きさは、PIN1PIN2PIN3PIN7 によって制御されており、tic-2 変異体ではこれらの遺伝子の転写産物量が野生型よりも大きく減少していた。したがって、PIN 遺伝子の発現量の低下がtic-2 変異体のオーキシン輸送の低下の原因となっていると考えられる。根の幹細胞の維持・制御にはSCARECROWSCR )/SHORT-ROOTSHR )とPLETHORAPLT )の2種類の経路が関与している。tic-2 変異体ではSCR /SHR の発現量に変化は見られなかったが、PLT1PLT2 の発現量が低下していた。よって、オーキシン量の低下によるPLT1 /2 の発現量の低下がtic-2 変異体の分裂組織の大きさに影響を及ぼしていると考えられる。JAはMYC2を介して根の成長を阻害するので、tic-2 変異体では根分裂組織でのMYC2蓄積量が増加しているために根の成長が抑制されているとも考えられる。しかし、tic-2 myc2-1 二重変異体の根分裂組織はtic-2 変異体と同様に長さが短く、myc2-1 変異体の分裂組織の長さは野生型と同等であった。よって、tic-2 変異体の根分裂組織が短いことにMYC2 は関与していないと考えられる。これらの変異体にJA処理をして分裂組織の長さを比較すると、myc2-1 変異体は野生型よりも長く、過去知見が示すように、JAを介した分裂組織の長さの制御にはMYC2 が関与していることが示された。tic-2 myc2-1 二重変異体もJAの根に対する感受性が低下していたが、tic-2 変異体はJAに対する感受性が高くなっていた。これは、tic-2 変異体ではMYC2タンパク質が蓄積していることによると考えられる。以上の結果から、tic-2 変異体の根の分裂組織の長さや細胞数の減少は、PIN の発現量低下によるオーキシン蓄積量の減少によってPLT1 /2 発現量が低下して幹細胞の活性が低下していることが原因であり、MYC2 を介したジャスモン酸シグナルはおそらく関与していないと考えられる。

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論文)ストレスによる花成誘導機構

2014-01-24 20:24:23 | 読んだ論文備忘録

Stress-induced early flowering is mediated by miR169 in Arabidopsis thaliana
Xu et al.  J. Exp. Bot. (2014) 65:89-101.
doi: 10.1093/jxb/ert353

マイクロRNA(miRNA)のmiR169ファミリーはシロイヌナズナに14遺伝子存在しており、乾燥、低温、高塩濃度、窒素欠乏、UB-B照射といった非生物ストレスによって発現量が増加する。miR169のターゲットは、NF-Y転写因子のサブユニットの1つであるAtNF-YA 遺伝子ファミリーであることが知られている。NF-YはNF-YA、NF-YB、NF-YCからなるヘテロ三量体のCCAAT-結合転写因子で、様々な遺伝子の転写を制御している。シロイヌナズナにはNF-YAサブユニットをコードする遺伝子が10遺伝子存在している。中国農業科学院のWang らは、miR169d の前駆体転写産物を35Sプロモーター制御下で過剰発現する形質転換シロイヌナズナを作出し、miR169のストレス応答における機能の解析を行なった。miR169d 発現個体と野生型植物の花成時期を比較したところ、長日条件下で野生型植物は平均11枚のロゼット葉をつけたところで花成したのに対して、miR169d 発現個体は平均7枚のロゼット葉で花成した。短日条件下では、野生型植物の花成は長日条件よりも遅れ、開花までに平均22枚のロゼット葉をつけたが、miR169d 発現個体は長日条件と同じ平均7枚のロゼット葉で花成した。したがって、miR169d の過剰発現は花成を促進し、この促進効果は日長に影響されない。miR169d 過剰発現個体では、miR169dのターゲットとなりうるAtNF-YA 遺伝子の転写産物量が減少しており、特にAtNF-YA2AtNF-YA8AtNF-YA10 の転写産物が大きく減少していた。そこで、AtNF-YA2 もしくはmiR169dのターゲット配列を改変して分解を受けなくなったAtNF-YA2m を35Sプロモーター制御下で過剰発現する形質転換シロイヌナズナを作出して花成を観察した。長日条件下でAtNF-YA2 発現個体は平均12枚のロゼット葉をつけて花成し、野生型よりも花成がわずかに遅れたが、AtNF-YA2m 発現個体は平均14枚のロゼット葉をつけて花成し、野生型植物やAtNF-YA2 発現個体よりも花成が遅れた。短日条件下では、AtNF-YA2 発現個体は平均27枚、AtNF-YA2m 発現個体は平均33枚のロゼット葉で花成し、野生型よりも花成が遅れた。AtNF-YA2 発現個体でmiR169d を過剰発現させると、花成時期はmiR169d 発現個体と同程度になった。したがって、AtN-YA2 の発現量増加は花成遅延を起こし、miR169dを介したAtNF-YA ファミリー遺伝子の制御は花成時期の制御に関与していることが示唆される。miR169d 発現個体ではAtNF-YA2 の転写産物量が減少しており、miR169dは直接AtNF-YA2 をサイレンシングさせていると考えられる。miR169d 発現個体では、花成を抑制するFLOWERING LOCUS CFLC )の転写産物量が減少しており、FLCによって発現が抑制されるFLOWERING LOCUS TFT )やLEAFYLFY )の転写産物量が増加していた。一方、AtNF-YA2 発現個体やAtNF-YA2m 発現個体ではFLC の発現量が増加しており、AtNF-YA2m 発現個体ではFTLFY の発現量の減少も観察された。以上の結果から、miR169dはAtNF-YA2 をターゲットとして花成を制御し、この制御によってFLC の発現が抑制されて花成を促進するFTLFY の発現が起こるものと考えられる。NF-YAタンパク質はCCAAT boxに結合し、FLC 遺伝子のプロモーター領域や第1イントロンには複数のCCAATモチーフが存在する。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイやゲルシフトアッセイの結果、NF-YA2タンパク質はFCL 遺伝子のCCAATモチーフに結合することが確認された。よって、NF-YA2はFLC のプロモーターや第1イントロンと物理的相互作用をすることでFLC の発現を制御していると考えられる。NF-YA2タンパク質はFLC のパラログであるMADS AFFECTING FLOWERING 1MAF1 )-MAF5 遺伝子とは相互作用を示さなかった。環境ストレスとして低温処理をしたmiR169d 発現個体では花成時期に変化が見られなかった。これは、低温処理によってFLC の発現量が十分に低下していたためであると考えられる。野生型植物とAtNF-YA2 発現個体は日長条件に関係なく低温処理によって花成が促進されたが、AtNF-YA2m 発現個体は短日条件での低温処理で花成促進が起こらなかった。これは、AtNF-YA2m 転写産物がmiR169のターゲットとならないために低温処理に関係なく十分量蓄積していたことによると考えられる。花成に対して促進的に作用するCONSTANSCO )、抑制的に作用するSHORT VEGETATIVE PHASESVP )やマイクロRNA miR156 は、野生型と形質転換体で発現量に差が見られないことから、miR169を介した花成促進にこれらの因子は関与していないと考えられる。AtNF-YA2 発現個体やAtNF-YA2m 発現個体は、野生型植物と同様に、ジベレリン処理によって花成が促進された。よって、miR169はジベレリンを介した花成促進経路には関与していないと考えられる。以上の結果から、miR169/AtNF-YAは、花成抑制因子FLC の発現を制御することで、ストレスに応答した花成促進を引き起こしており、この経路は他の花成制御経路とは独立して機能していると考えられる。

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