Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)アブシジン酸による根の成長阻害機構

2014-07-25 20:45:17 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid inhibits root growth in Arabidopsis through ethylene biosynthesis
Luo et al.  The Plant Journal (2014) 79:44-55.

DOI: 10.1111/tpj.12534

高濃度のアブシジン酸(ABA)はシロイヌナズナの根の成長を阻害することが知られている。中国農業大学Gong らは、根の成長においてABA抵抗性を示す変異体を単離したところ、得られた5つの変異体はいずれもエチレンシグナル伝達に関与する因子をコードしているETHYLENE INSENSITIVE2EIN2 )の変異体であった。過去の研究では、エチレン生合成阻害剤のAVGはABAによる根の伸長阻害を抑制しないが、エチレン受容阻害剤の銀イオンは根の成長に対するABA感受性を低下させることが報告されていた。また、ABA処理はエチレン生産やエチレン応答遺伝子の発現を増加させないとされてきた。そのため、ABAによる根の成長阻害にはエチレンシグナル伝達が関与しており、エチレン生合成は関与していないと考えられてきた。そこで、改めてABAによる根の成長阻害に対するAVGや銀イオンの効果を検証したところ、銀イオンの効果は過去知見が再現されたが、AVG処理もABAによる根の成長阻害を抑制することがわかった。今回の試験では過去の試験よりも10倍低い濃度でAVG処理をしており、過去の試験はAVGが高濃度であったために根の成長に対して毒性を示したものと思われる。通常の条件下において培地にAVGや銀イオンを添加すると根の成長が促進されることから、基底レベルのエチレンも根の成長を阻害していると考えられる。以上の結果から、ABAはエチレン生合成を促進することで根の成長を阻害していると考えられる。次に、ABAやエチレンのシグナル伝達経路の変異体のABA存在下での根の成長に対する銀イオンやAVGの効果を調査した。通常条件で育成した芽生えの根の成長に対する銀イオンとAVGの効果を見たところ、ein2-5 変異体を銀イオン処理した場合には根の伸長に変化は見られなかったが、野生型および他の変異体では銀イオンやAVG処理によって根の成長が促進された。したがって、エチレン生産およびエチレンシグナルは通常条件下での根の成長を抑制していることが示唆される。ABAシグナルの負の制御因子であるタンパク質フォスファターゼ2CのABA-INSENSITIVE 1(ABI1)、ABI2、HYPERSENSITIVE TO ABA 1(HAB1)が機能喪失したabi1 abi2 hab1 三重変異体は野生型よりもABA感受性が高くABA処理によって根の成長が強く阻害されるが、AVGもしくは銀イオンを同時処理することによってABAによる成長阻害が打ち消された。ein2-5 変異体およびetr1-1 変異体のABAによる根の成長阻害はAVG処理によって軽減されたが、銀イオンは効果がなかった。エチレン生産量が高いeto1 変異体は、通常条件において根の長さが野生型の半分程度であり、ABA処理によって根の成長が強く阻害されたが、AVGもしくは銀イオンの添加によってこの阻害から回復した。以上の結果から、根の成長においてエチレンシグナルはABAシグナルの下流で作用していると考えられる。野生型芽生えをABA処理するとエチレン生産量が増加した。ABA高感受性abi1 abi2 hab1 三重変異体はABA処理に関係なく野生型よりもエチレン生産量が増加していた。abi1-1 機能獲得変異体はABA処理をしてもエチレン生産量は増加しなかった。したがって、ABAシグナルはエチレン生産を促進しているといえる。エチレン生合成ではACC合成酵素(ACS)が律速酵素となっていることから、エチレン生合成がABAによる根の成長阻害の主要因であるならば、ACS の機能喪失変異体の根の成長はABAに対して野生型よりも抵抗性となると考えられる。シロイヌナズナは9つのACS 遺伝子をコードしており、機能重複していることから、ACS 遺伝子の単独変異体の表現型は野生型と同等であったが、ACS の六重変異体や七重変異体は根の成長においてABAに対する感受性が大きく低下していた。このことからも、ABAはエチレン生合成を促進することで根の成長を阻害していることが示唆される。ABA処理によるACS 遺伝子の転写産物量の変化について、8つのACS 遺伝子を調査したところ、3遺伝子(ACS2ACS7ACS8 )は発現量が増加し、4遺伝子(ACS4ACS5ACS9ACS11 )は発現量が減少、ASC6 は発現量変化が見られなかった。よって、ABAによるエチレン生合成の促進は転写レベルでなされていることが示唆される。ACSの安定性はタンパク質のリン酸化によって制御されており、タイプ1 ACSはMAPKとCDPKによるリン酸化、タイプ2 ACSはCDPKによるリン酸化を受けるとされている。シロイヌナズナは4つのサブグループに分かれた34のCDPKが存在し、このうちサブグループ1に属するCPK4とCPK11はABAによって活性化される。cpk4-1 変異体、cpk11-2 変異体およびcpk4-1 cpk11-2 二重変異体はABAによる根の成長阻害に対して抵抗性を示し、通常条件でのエチレン生産は野生型と同等だが、ABA処理後のエチレン生産量は野生型よりも低かった。したがって、CPK4とCPK11はエチレン生産に関与していると考えられる。CPK4とCPK11はACS6をリン酸化し、このリン酸化はABA処理によって促進された。CDPKによるACS6のリン酸化部位を特定するために、C末端側のSer残基をAla残基に置換したACS6を用いてCPK4およびCPK11によるリン酸化の程度を見たところ、S437、S462、S467、S469がリン酸化されうることがわかった。また、CDPKによるリン酸化はACS6の酵素活性には影響しないことがわかった。ACS6のリン酸化されうる4つのSer残基をAsp残基に置換してリン酸化状態を模倣したACS6を導入した形質転換体は野生型植物、正常なACS6もしくはSer残基をAla残基に置換したACS6を発現させた形質転換体よりもエチレン生産量が増加し、根の成長が抑制されていた。以上の結果から、ABAはエチレン生産を促進することで根の成長を阻害していると考えられる。

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論文)根の成長には根で生産されるオーキシンが必要

2014-07-21 13:08:53 | 読んだ論文備忘録

Auxin Overproduction in Shoots Cannot Rescue Auxin Deficiencies in Arabidopsis Roots
Chen et al.  Plant Cell Physiol. (2014) 55:1072-1079.

doi:10.1093/pcp/pcu039

根の成長はシュートから供給されるオーキシンを必要とするとされているが、オーキシンは根においても生産されている。米国 カリフォルニア大学サンディエゴ校Zhao らは、シロイヌナズナのマイクロアレイデータから、オーキシン生合成に関与するYUCCA 遺伝子の根での発現を調査し、11のYUC 遺伝子のうち4つ(YUC3YUC5YUC8YUC9 )は根の細胞で強い発現を示し、YUC7 も根において発現しているが、他のYUC 遺伝子は根での発現量が非常に低いか発現していないことを見出した。そして、根で発現している5つのYUC 遺伝子は系統樹上で同じクラスターに属していることがわかった。また、これらのYUC 遺伝子のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクト導入した形質転換シロイヌナズナでは、根でのGUS 発現が確認された。根で発現している5つのYUC 遺伝子を35S プロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナの芽生えは、胚軸が伸長して子葉が上向きとなるといったオーキシン過剰生産の表現型を示すことから、これらのYUC 遺伝子はオーキシン生合成に関与していると考えられる。個々のYUC 遺伝子の変異体は目立った生育異常は見られなかったが、5つのYUC 遺伝子(YUC3YUC5YUC7YUC8YUC9 )の変異体yucQ は一次根が非常に短くなり、重力屈性が見られなくなった。また、一次根の分裂組織のサイズが小さく、分裂組織細胞は肥大し、部分的に分化していた。したがって、これらのYUC 遺伝子は根分裂組織の維持と正常な細胞分裂・分化にとって重要であると考えられる。yucQ 変異体の根の遊離オーキシン含量は野生型の55%程度であった。yucQ 変異体にオーキシンを与えると根の成長が回復した。よって、yucQ 変異体の根の生育異常は局所的なオーキシンの欠乏によるものであると考えられる。野生型植物でYUC3 をシュート特異的に発現させると、胚軸や子葉はオーキシン過剰生産の表現型を示し、オーキシンレポーターDR5-GUSのシュートでの発現が見られたが、根端部ではDR5-GFPの発現量の変化は見られなかった。yucQ 変異体でYUC3 をシュート特異的発現させたところ、地上部ではオーキシン過剰生産の表現型を示したが、根の形態異常や重力屈性異常に変化は見られず、根端部でのDR5-GFPの発現は野生型と同レベルにはならなかった。YUC3 のシュートでの特異的発現は、野生型植物においてもyucQ 変異体においても根の伸長に影響を及ぼさなかった。また、YUC3 のシュートでの特異的発現はシュートのオーキシン含量を増加させたが、根のオーキシン含量に変化は見られなかった。yucQ 変異体でYUC3 を根特異的に発現させたところ、根の成長が野生型と同等にまで回復した。以上の結果から、シュートで生産され根へ輸送されたオーキシンは根の伸長や重量屈性には十分ではなく、根の正常な発達には根で生産されたオーキシンが必要であることが示唆される。

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論文)アブシジン酸による側根成長制御

2014-07-18 23:45:03 | 読んだ論文備忘録

The ABA Receptor PYL8 Promotes Lateral Root Growth by Enhancing MYB77-Dependent Transcription of Auxin-Responsive Genes
Zhao et al.  Sci. Signal. (2014) Vol. 7 Issue 328 ra53

DOI: 10.1126/scisignal.2005051

アブシジン酸(ABA)は根の成長を制御していることが知られている。米国 パデュー大学Zhu らは、シロイヌナズナABA受容体ファミリー pyrabactin resistance 1-like protein をコードするPYL8 のT-DNA挿入変異体pyl8 の芽生えはABAによる側根成長阻害が野生型よりも強く表れることを見出した。よって、PYL8はABAに応答した側根の成長を促進していると考えられる。以前の研究から、主根から出芽した側根は塩ストレスによって成長が抑制されるが、ストレスが持続すると成長が回復することが知られている。pyl8 変異体はABA処理による側根成長抑制から成長を回復するまでの期間が野生型よりも長いことがわかった。よって、PYL8はABA存在下での側根成長抑制からの回復に関与していると思われる。pyl8 変異体芽生えの側根の表現型がABAに対する応答性の低下によるものかを調査するために、ABAシグナル伝達に関与する主要な因子の変異体(abi1-1pyr1pyl1/2/4snrk2.2/3/6 )での側根成長を観察したところ、これらの変異体はABAによる側根成長阻害の程度が野生型よりも弱く、ABA処理から成長回復するまでの期間が野生型よりも短くなっていた。よって、ABAシグナルの中核経路は、ABAによる成長停止を促進していると考えられる。pyl8 変異体は、abi1-1 変異体やsnrk2.2/3/6 変異体と同様に、ABAによる一次根の伸長阻害や側根数の減少の程度が野生型よりも低くなっていた。また、pyl8 変異体の根でのABA応答遺伝子の発現は野生型と同等であり、ABA応答遺伝子の発現に関してPYL8は他のPYLと機能が冗長していると考えられる。したがって、PYL8は一次根の成長や側根誘導において他のPYLと同様の作用があると思われる。浸透圧ストレスによる側根成長の抑制はオーキシン添加によって回復することが知られている。ABA処理による側根成長抑制もオーキシン(IAA)添加によって回復するが、pyl8 変異体は野生型よりも成長抑制からの回復の程度が高かった。また、IAAとABAの同時添加によりpyl8 変異体の側根成長回復期間が野生型と同等になった。よって、pyl8 変異体での成長回復の遅延はオーキシンの欠乏もしくはオーキシン応答性の低下によるものと考えられる。オーキシンは側成長を促進する際に転写因子のMYB77を活性化することが知られている。酵母two-hybridアッセイから、PYL8はMYB77とABA非依存的に相互作用をし、他のPYLはMYB77と相互作用をしないことがわかった。またルシフェラーゼ相補アッセイからPYL8とMYB77の相互作用はABAとIAAを同時添加すると強まることがわかった。MYB77はオーキシン応答遺伝子のプロモーター領域に含まれるDNAモチーフ(MBSI、MBSII)に結合するが、PYL8はMYB77のMBSIへの結合を亢進した。myb77 変異体はABA処理による側根成長阻害が野生型よりも強く起こり、IAAの添加はABAによる側根成長阻害を回復させた。したがって、MYB77はPYL8と同様にABA処理した芽生えの側根成長を促進していると考えられる。PYL8はMYB77のパラログであるMYB44やMYB73とも相互作用を示し、IAA存在下でのMYB44やMYB73の転写促進を強めることがわかった。以上の結果から、ABAは2つの異なる経路で側根成長を制御しており、中核のシグナル伝達経路では側根成長を抑制しているが、ABA受容体の1つであるPYL8はMYB77およびそのパラログと相互作用をしてオーキシンに依存した転写を高めて側根成長を回復させていると考えられる。

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論文)葉の展開を制御するMYB‐様転写因子

2014-07-13 14:35:08 | 読んだ論文備忘録

Transcriptional control of ROS homeostasis by KUODA1 regulates cell expansion during leaf development
Lu et al.  Nature Communications (2014) 5:3767.

DOI: 10.1038/ncomms4767

ドイツ マックス・プランク分子植物生理学研究所のMuller-Roeber とSchippers らは、シロイヌナズナのトランスクリプトームデータから得られた葉が展開する際に誘導される転写因子をコードする遺伝子群について逆遺伝学的な選抜を行ない、MYB-様転写因子をコードするAt5g47390のT-DNA挿入変異体は葉の大きさが野生型よりも小さくなることを見出した。このMYB-様遺伝子をCaMV 35Sプロモーターで恒常的に発現させると葉が大きくなることから、本遺伝子をKUODA1KUA1 、中国語で「拡大」を意味する)と命名した。kua1 変異体の葉は細胞が野生型よりも小さく、このことによって葉のサイズが小さくなっていた。一方、KUA1 を過剰発現させた形質転換体の葉は、細胞数に変化は見られないが、細胞が野生型よりも大きくなっていた。双子葉植物の葉の成長は概日時計による制御を受けており、朝に最も展開率が高くなることが知られている。KUA1 の発現も概日変化を示し、朝に最も転写産物量が多くなることがわかった。朝に発現量が増加する遺伝子はCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1(CCA1)とLATE-ELONGATED HYPOCOTYL(LHY)の2つのMYB転写因子によって発現が調節されている。CCA1 過剰発現個体やcca1 /lhy 二重変異体ではKUA1 の朝の転写産物量増加が見られなくなることから、KUA1 転写産物量の日変化は概日時計によって制御されていると考えられる。KUA1 遺伝子のプロモーター領域はCCA1結合部位モチーフを含んでおり、この結合部位モチーフは他植物(ダイズ、イネ)のKUA1 オーソログにも見られた。CCA1LHY の発現ピークはKUA1 のそれよりも数時間早く起こった。KUA1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクト(pKUA1::GUS )を導入した形質転換体を用いて葉の展開過程でのKUA1 の発現を見たところ、12日目よりも前にはGUS活性は見られず、その後は葉の先端部からGUS活性が現れはじめた。14日目には葉身全体でGUS活性が見られたが、その後は先端部から基部へ向かってGUS活性が低下していった。したがって、KUA1 は葉の展開時特異的に発現していることが示唆される。KUA1タンパク質は中央にMYB-様DNA結合ドメイン、N末端側にCCHC zinc fingerドメインを含んでおり、他にも核局在配列と転写抑制ドメインが見られた。KUA1-GFP融合タンパク質の発現から、KUA1タンパク質は核に局在することが確認された。KUA1のターゲットとなる遺伝子を探索するために、エストラジオール誘導過剰発現(IOX)系を用いてKUA1 を発現誘導することによって発現量の変化する遺伝子を網羅的に解析したところ、KUA1 誘導4時間後で198遺伝子に発現量の変化が見られ、107遺伝子は発現量の増加、91遺伝子は発現量の減少を起こした。KUA1タンパク質は転写抑制ドメインを含むことから、発現量が減少する遺伝子に着目してそれらの遺伝子オントロジー(GO)を見たところ、パーオキシダーゼ活性に分類される遺伝子最も多く、次いで抗酸化活性、酸化ストレス応答に分類されるもの多くなっていた。KUA1によって正に制御される遺伝子のGOはグルタチオントランスフェラーゼ活性が最も多く、KUA1は活性酸素種(ROS)の恒常性に影響していることが示唆される。また、細胞壁や内膜系のGOに分類される遺伝子も発現量の増加が見られることから、KUA1は細胞壁再構築に関与していると考えられる。KUA1 を発現誘導すると10以上のパーオキシダーゼ遺伝子(Prx )の転写産物量が減少し、kua1 変異体ではPrx7Prx10Prx23Prx57 の発現量が増加していた。Prx7 プロモーター制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトと35Sプロモーター制御下でKUA1 を発現するコンストラクトをシロイヌナズナプロトプラストに同時に導入するとルシフェラーゼ活性が低下すること、ゲルシフトアッセイやクロマチン免疫沈降アッセイからKUA1はPrx 遺伝子プロモーター領域と相互作用をすることが確認された。したがって、KUA1はPrx 遺伝子と直接相互作用をし、Prx の発現を抑制していると考えられる。KUA1がPrx 遺伝子の発現を抑制していることから、パーオキシダーゼ活性の増加がkua1 変異体の表現型をもたらしていることが推測される。そこで、kua1 変異体にパーオキシダーゼ阻害剤サリチルヒドロキサム酸(SHAM)処理をしたところ、濃度に応じて植物体の大きさが回復した。クラスIII パーオキシダーゼはアポプラスにおいて過酸化水素を生産しているので、3,3′‐ジアミノベンジジンで染色したところ、kua1 変異体のアポプラストは野生型よりも強く染色された。また、野生型と比較してkua1 変異体の葉は過酸化水素濃度が高く、KUA1 過剰発現個体は低くなっていた。一方、スーパーオキサイド量に差は見られなかった。さらに、kua1 変異体を過酸化水素のスカベンジャーであるヨウ化カリウム(KI)で処理したところ、表現型の回復が見られた。これらの結果から、パーオキシダーゼ活性とアポプラストでの過酸化水素生産量の増加がkua1 変異体の成長抑制をもたらしていると考えられる。野生型植物の細胞壁パーオキシダーゼ活性の日変化を見たところ、ZT4の活性はZT9よりも低く、kua1 変異体では両時刻ともパーオキシダーゼ活性が野生型よりも高くなっていた。また、KUA1 過剰発現個体ではZT9のパーオキシダーゼ活性が野生型よりも低くなっていた。パーオキシダーゼが葉の展開を制御しているかを確認するために、Prx57 を過剰発現させることでパーオキシダーゼ活性をを高めた個体を観察したところ、この個体の葉および細胞の大きさは野生型よりも小さいことがわかった。よって、KUA1は細胞壁局在パーオキシダーゼの作用を介して細胞の大きさを調節していると考えられる。以上の結果から、KUA1は葉でのパーオキシダーゼの発現を抑制して過酸化水素量を低下させることによって細胞壁の架橋を減少させ、このことが細胞の拡張や葉の展開をもたらしていると考えられる。

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論文)イネの器官サイズを制御するAP2型転写因子

2014-07-03 20:36:09 | 読んだ論文備忘録

A Novel AP2-Type Transcription Factor, SMALL ORGAN SIZE1, Controls Organ Size Downstream of an Auxin Signaling Pathway
Aya et al.  Plant Cell Physiol. (2014) 55:897-912.

doi:10.1093/pcp/pcu023

名古屋大学の安益らは、器官サイズを制御する新規因子を同定するために、イネ品種「台中65号」をN-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)処理して作製した変異体ライブラリーの中から、形態が正常で器官サイズが小さくなったsmall organ sizesmos )変異体を複数単離し、その中のsmos1 変異体について詳細な解析を行なった。smos1 変異体は、形態は正常だが、栄養器官や生殖器官の長さが短く、植物全体が野生型よりも小さく、細胞が小型化していた。ただ、葉身、根、籾、稈の水平方向の細胞数が増加しているために幅が野生型よりも長くなっていた。また、smos1 変異体の稈、葉鞘、根では細胞の配列に異常が見られた。smos1 変異体の節間の柔組織細胞では微小管の配向に乱れが生じており、このことが細胞の小型化に関連していると思われる。smos1 変異はOs05g0389000に生じた変異によって引き起こされていた。この遺伝子は9つのエクソンで構成されており、AP2 DNA結合ドメインを有した425アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。smos1 変異体にOs05g0389000ゲノム断片を導入すると表現型が相補されることから、smos1 変異体はOs05g0389000の機能喪失変異体であると考えられる。SMOS1タンパク質は核に局在しており、器官形成や細胞の発達を制御する転写因子として機能していると考えられる。SMOS1 mRNAは調査した全ての器官で検出され、葉鞘と節での発現量が高くなっていた。SMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入してSMOS1 の発現部位を可視化したところ、葉身の先端部や若い葉鞘でGUS活性が検出された。茎頂分裂組織(SAM)ではGUS活性が認められなかったが、SAMの下の領域や初生葉の先端部ではGUS活性が見られた。根では、種子根および発達初期の側根の先端部でGUS活性が見られた。出穂期の稈では、節および節間の基部で強いGUS活性が見られた。花では、外頴、内頴、葯で弱いGUS活性が見られたが、柱頭では発現が見られなかった。よって、SMOS1 は活発に細胞増殖、細胞拡張を行なっている領域で発現していると考えられる。SMOS1 プロモーター制御によってGUS を発現している組織は、オーキシン応答プロモーターDR5 が発現誘導する組織と類似している。このことからSMOS1 の発現はオーキシンによって制御されているのではないかと考え、SMOS1 遺伝子プロモーター領域を調査したところ、オーキシン応答因子(ARF)のターゲットとなりうる配列が2箇所(AuxRE1、AuxRE2)見出された。また、イネ実生をオーキシン処理したところSMOS1 の発現量が増加した。OsARF1タンパク質のSMOS1 遺伝子プロモーター領域への結合をゲルシフトアッセイで調査したところ、OsARF1タンパク質はAuxRE1を含む断片と相互作用をすることが確認された。よって、AuxRE1はオーキシンによるSMOS1 発現のシスエレメントとして機能していると考えられる。SMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入したイネをオーキシン処理するとGUS の発現が誘導されるが、AuxRE1に変異の入ったSMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトではオーキシン処理によるGUS の発現誘導は見られなかった。これらの結果から、オーキシンはAux/IAA-ARF系を介してSMOS1 の発現を制御していると考えられる。smos1 変異体と野生型との間での遺伝子発現をマイクロアレイ解析で比較したところ、両者で3187遺伝子に発現量の差が見られた。このうち2226遺伝子はsmos1 変異体で発現量が低下し、961遺伝子は発現量が増加していた。発現量の低下した遺伝子は、微小管による運動、翻訳、DNA複製のカテゴリーに分類されるものが多く含まれていた。発現量低下遺伝子の中には細胞の拡張/伸長/分裂に関与する遺伝子も含まれており、その中からタバコphosphate-induced protein 1PHI-1 )およびシロイヌナズナEXORDIUMEXO )と相同性の見られるOs02g0757100(OsPHI-1 )について詳細に解析した。この遺伝子はATP-結合ドメインを有した細胞外タンパク質をコードしており、EXO は細胞拡張の正の制御因子として機能し、機能喪失変異体は細胞が小さくなり細胞数が増加するといったsmos1 変異体と類似した表現型を示すことが知られている。smos1 変異体ではOsPHI-1 の発現量が減少しており、恒常的にSMOS1 を発現させたイネではOsPHI-1 の発現量が増加していた。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイやゲルシフトアッセイからSMOS1タンパク質はOsPHI-1 遺伝子プロモーター領域と相互作用をすることが確認された。RNAiによってOsPHI-1 をノックダウンしたイネはわい化し、smos1 変異体と類似した表現型を示した。OsPHI-1 ノックダウン個体の稈では細胞配列の異常性は見られなかったが、柔組織細胞が小型化し、細胞数が増加していた。また、小型化した柔組織細胞では微小管の配向に異常が見られた。以上の結果から、SMOS1は器官サイズ関して細胞拡張をオーキシンに依存して制御する因子として機能していると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによる根表皮細胞のPIN2タンパク質の局在変化

2014-06-27 21:53:31 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone analog GR24 triggers changes in PIN2 polarity, vesicle trafficking and actin filament architecture
Pandya-Kumar et al.  New Phytologist (2014) 202:1184-1196.
doi: 10.1111/nph.12744

ストリゴラクトン(SL)はシロイヌナズナの根毛伸長を促進することが知られている。根毛伸長の制御にはオーキシン排出キャリアのPIN2が関与していることから、イスラエル 農業研究機関(ARO)ボルカニセンターKoltai らは、SLとPIN2との関係を調査した。PIN2 プロモーター制御下でPIN2-GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ芽生えを合成SLのGR24で処理すると、一次根伸長領域表皮細胞の細胞膜の上側のPIN2-GFPシグナルが増加し、細胞膜上のPIN2の極性(細胞膜上側と横側との比)も増加した。このような変化は、オーキシン取込キャリアであるAUX1では同様の試験を行なっても見られなかった。よって、SLは根伸長領域の表皮細胞細胞膜上のPIN2タンパク質の極性に影響していると考えられる。SL非感受性変異体max2 の根伸長領域表皮細胞でのPIN2-GFPシグナルの強度と極性は野生型と同等であったが、GR24処理によるPIN2-GFPシグナルの表皮細胞膜上の増加や極性変化は起こらなかった。よって、SLによるPIN2タンパク質の増加や分布の変化はMAX2に依存した作用であることが示唆される。max2 変異体でのPIN2 発現量は野生型よりも僅かに低く、野生型ではGR24処理によってPIN2 発現量が増加したが、max2 変異体ではPIN2 発現量に変化は見られなかった。よって、SLシグナルはMAX2に依存してPIN2 の発現を誘導していることが示唆される。PINタンパク質は細胞膜とエンドソームの間を恒常的に循環しており、この小胞輸送がPINタンパク質の細胞膜上の局在を決定している。小胞輸送の特異的阻害剤であるブレフェルジンA(BFA)処理をすると、野生型ではGR24処理によってPIN2タンパク質を含んだBAFボディが増加したが、max2 変異体ではそのような変化見られなかった。このことから、GR24処理はMAX2に依存してPIN2タンパク質のエンドサイトーシスを誘導していることが示唆される。エンドソームマーカーのARA7とGFPとの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナを用いて、一次根伸長領域表皮細胞でのエンドソームの運動速度を見たところ、GR24処理はエンドソームの運動速度を速めることがわかった。max2 変異体のエンドソームの運動速度は野生型と同等であったが、GR24を添加しても運動速度の変化は見られなかった。したがって、GR24はMAX2に依存して一次根伸長領域の表皮細胞でのエンドソームの運動を誘導していることが示唆される。細胞の小胞輸送にはF-アクチンが関与していることから、TALIN-GFPを導入してアクチン繊維を標識し、根端伸長領域表皮細胞のアクチン構造を観察したところ、GR24処理により細い繊維の割合の増加と太い繊維の減少、繊維の偏在性の低下が見られた。しかしながら、max2 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、GR24はMAX2に依存してアクチン繊維の束化を低下させていることが示唆される。アクチン重合阻害剤LatBによるアクチン繊維の脱重合はGR24処理によって促進されることから、GR24はF-アクチンの束化を低下させることで、アクチンを不安定化し、LatBによるアクチン脱重合を促進していると考えられる。アクチン繊維の束化の低下はアクチン繊維の動態を増加させることが知られている。GR24処理は一次根伸長領域表皮細胞のアクチン繊維の動態を増加させ、この増加はMAX2に依存していることがわかった。GR24処理によるアクチン構造や動態の変化は、オーキシン処理によっても引き起こされた。SLのPIN2、小胞輸送、アクチンの動態に対する効果が根毛伸長促進と関連しているかを見るために、ACTIN2ACT2 )の変異体der1PIN2 の変異体eir1 、PIN輸送関連タンパク質TRANSPORT INHIBITOR RESISTANT3の変異体tir3 およびmax2 変異体にGR24処理をして根毛の伸長を見た。その結果、eir1 変異体はGR24に対する感受性が野生型よりも高くなっていたが、tir3 変異体、der1 変異体、max2 変異体は野生型よりもGR24に対する感受性が低下していた。一方、これらの変異体の根毛伸長はオーキシン処理によって根毛伸長が促進された。以上の結果から、GR24による根毛伸長促進はアクチン繊維の束化の低下による小胞輸送の制御が関連しているが、単純にPIN2に依存したものではないと思われる。

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論文)グルコースによる根の伸長阻害機構

2014-06-20 20:35:57 | 読んだ論文備忘録

Glucose inhibits root meristem growth via ABA INSENSITIVE 5, which represses PIN1 accumulation and auxin activity in Arabidopsis
Yuan et al.  Plant, Cell & Environment (2014) 37:1338-1350.
DOI: 10.1111/pce.12233

グルコースは植物の成長において炭素源としてだけでなく、ホルモン様のシグナル物質としても機能しており、3-5%の高濃度グルコースはシロイヌナズナ芽生えの一次根の伸長を阻害する。中国 武漢大学のLu らは、グルコースによる根の伸長阻害機構を解析した。シロイヌナズナ芽生えの一次根はグルコース添加により分裂領域の長さが短くなり、これは細胞数の減少によるものであることがわかった。また、高濃度グルコースは根の伸長領域と分裂領域の大きさと細胞長を減少させた。しかし、芽生えにショ糖を添加した際には、根の長さ、分裂領域の長さや細胞数に変化は見られなかった。また、代謝されない3-オルソ-メチル-グルコース(3-OMG)を添加すると、根の長さが短くなり、分裂領域の長さと細胞数の減少が起こった。これらの結果から、グルコースは根の分裂組織の成長を阻害するシグナル分子として作用していると考えられる。根の分裂領域が短くなる原因としては、分裂組織細胞の分裂能の低下か分裂組織細胞の伸長・分化過程への早期移行が考えられる。そこで、マーカーとしてCYCB1;1::GUS コンストラクトを導入した形質転換体で根分裂組織の分裂活性を見たが、グルコース添加による変化は見られなかった。また、QC25::GUS もしくはQC46::GUS を導入した形質転換体で分裂組織の幹細胞の活性を見たが、こちらもグルコース添加による変化は見られなかった。したがって、根の分裂領域の伸長・分化への移行がグルコース添加によって早まったことで分裂領域が短くなったと考えられる。植物の成長を調節しているオーキシンの分布について、オーキシンセンサーであるDII-VENUSを用いて調査したところ、グルコース処理は根のオーキシン活性を低下させることがわかった。また、グルコース処理は根端部のオーキシン量を低下させていた。オーキシンの分布は極性輸送よって調節されている。芽生えをオーキシン輸送阻害剤ナフチルフタラミン酸(NPA)で処理すると、グルコース処理をした場合と同様に根分裂組織の細胞数や長さの減少が起こるが、NPAとグルコースを同時に処理しても根分裂組織の異常が相加的に悪化することはなかった。よって、グルコースはオーキシン極性輸送に影響を及ぼすことで根分裂組織の細胞数や長さの制御に関与していると思われる。シュートから根へのオーキシン極性輸送に関与しているオーキシン排出キャリアの変異体pin1 の根は、グルコース処理に対する感受性が低下していた。野生型植物の根のPIN1 発現量はグルコース処理による変化は見られなかったが、PIN1タンパク質量は減少することがわかった。よって、グルコースはPIN1タンパク質の蓄積を制御していると思われる。グルコースによる成長制御はアブシジン酸(ABA)シグナルが関与していることが報告されており、ABA非感受性abi5 変異体はグルコース処理に対して非感受性、ABI5 過剰発現個体は高感受性となった。また、グルコース処理をした芽生えの根ではABI5 の発現が増加していた。以上の結果から、グルコースはABI5 の発現を誘導することでPIN1タンパク質の蓄積を低下させ、このことによって根のオーキシン活性が低下して根分裂組織領域が短くなると考えられる。

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論文)根からシュートへのサイトカイニン輸送に関与するABCトランスポーター

2014-06-14 20:35:04 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis ABCG14 is essential for the root-to-shoot translocation of cytokinin
Ko et al.  PNAS 2014 111 (19) 7150-7155.
doi: 10.1073/pnas.1321519111

トランス-ゼアチン(tZ)型サイトカイニンは根の維管束で合成され、木部から地上部へと輸送されてシュートの発達を調節している。一方、イソペンテニルアデニン(iP)型サイトカイニンはシュートから根へと輸送され、根分裂組織の維管束パターン形成に関与している。しかしながら、サイトカイニンの輸送機構については明らかとなっていない。韓国 浦項工科大学校(POSTECH)のLee らは、サイトカイニンの輸送を担うトランスポーターの探索を目的に、その候補として、1)サイトカイニン生合成酵素をコードするISOPENTENYLTRANSFERASEIPT )の発現している根師部コンパニオン細胞で発現している、2)サイトカイニン生合成遺伝子として重要なIPT3 と発現の挙動が一致している、3)サイトカイニン処理によって発現が誘導される、の3条件に一致する遺伝子のATP-結合カセット(ABC)トランスポーターサブファミリーG14(AtABCG14 )に着目して解析を行なった。シロイヌナズナatabcg14 変異体の芽生えは、葉が野生型よりも小さいが、根は野生型よりも長い。成熟個体は、ロゼット葉が小さく、茎が短く細い。花序茎の木部および師部の細胞数が少なく、細胞の大きさも小さい。植物体あたりの長角果数および種子数が少ないが、種子のは野生型よりも大きかった。このようなatabcg14 変異体のわい化した表現型は、サイトカイニン生合成の変異体やサイトカイニン受容体の変異体において見られる表現型と類似している。そこで、atabcg14 変異体に毎日tZを噴霧したところ、小さい葉と短い茎の表現型が回復した。しかしながら、iPの噴霧ではわい化した表現型は回復しなかった。AtABC14G は根とシュートの両方で発現しているが、根の発現量が高く、根では根端以外の中心柱全域で発現していた。そしてこの発現部位はサイトカイニン合成遺伝子のIPT3CYP735A2 の発現部位と重複していた。また、AtABCG14タンパク質は細胞膜に局在していた。atabcg14 変異体のtZ型サイトカイニン量はシュートでは野生型よりも低く、根では高くなっていた。一方、atabcg14 変異体のiP型サイトカイニン量は根もシュートも野生型よりも高くなっていた。サイトカイニン応答のマーカー遺伝子であるタイプA シロイヌナズナレスポンスレギュレーター(ARR)遺伝子のARR7ARR15 の発現量は、atabcg14 変異体のシュートでは野生型よりも低く、根では高くなっていた。放射性同位元素で標識したtZを芽生えの根に与えてシュートの放射活性を見たところ、atabcg14 変異体は野生型よりも低かった。atabcg14 変異体のシュートのARR5 の発現量は野生型よりも低いが、芽生え全体をサイトカイニンを含む培地に浸漬するとARR5 の発現量は野生型と同等になった。atabcg14 変異体の木部浸出液に含まれるtZ型サイトカイニン量は野生型よりも90%以上少ないが、iP型サイトカイニン量は差が見られなかった。よって、AtABCG14はtZ型サイトカイニンの根からシュートへの木部を介した輸送に必要であることが示唆される。atabcg14 変異体のシュートの表現型がサイトカイニン輸送の低下によるものであることを確認するために、野生型の根にatabcg14 変異体のシュートを接いだところ、シュートの成長が野生型と同等にまで回復した。よって、野生型の根はatabcg14 変異体のシュートを正常に成長させるのに十分な量のサイトカイニンを供給していることが示唆される。一方、atabcg14 変異体の根に接いだ野生型のシュートは、atabcg14 変異体のシュートと同様にわい化した。したがって、atabcg14 変異体の根はシュートの正常な成長に必要な量のサイトカイニンを輸送できていないことが示唆される。以上の結果から、AtABCG14はサイトカイニンをアポプラストに輸送するトランスポーターとして機能しており、AtABCG14を介した根からシュートへのサイトカイニン輸送は、シュートの成長に必要であると考えられる。


共同研究を行なった理化学研究所のプレスリリース

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論文)APETALA1によるサイトカイニン量の制御と花器官形成

2014-06-11 23:08:50 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin pathway mediates APETALA1 function in the establishment of determinate floral meristems in Arabidopsis
Han et al.  PNAS 2014 111 (18) 6840-6845.
doi: 10.1073/pnas.1318532111

MADS-ドメイン転写因子をコードするAPETALA1AP1 )は花分裂組織の外側のwhorl の器官(がく片と花弁)の形成に関与しており、がく片の腋からの二次花形成の抑制にも関与している。しかしながら、AP1による幹細胞の分裂制御機構に関しては明らかとなっていない。中国科学院 遺伝学発生生物学研究所Jiao らは、AP1による分裂組織活性の制御はサイトカイニンシグナルが関与しているのではないかと考え、解析を行なった。シロイヌナズナap1-1 変異体の花ではサイトカイニンによって発現が誘導されるARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR 5ARR5 )の転写産物量が野生型よりも多くなっていた。また、サイトカイニンシグナルによって活性化される合成レポーターpTCS::GFP -ER の発現量やGFP蛍光強度も増加していた。ap1-1 変異体の花序の内生サイトカイニン含量は野生型よりも高く、特に、ゼアチンリボシドとイソペンテニルアデニンが増加していた。よって、AP1はサイトカイニン量とサイトカイニン応答を抑制していることが示唆される。花序をサイトカイニンアナログのベンジルアミノプリンで処理したところ、がく片の腋から二次花が形成されるap1 変異体の表現型と類似した形態変化を示し、花分裂組織が大型化した。サイトカイニン生合成を律速している酵素をコードするISOPENTENYLTRANSFERASE 8IPT8 )をAP1 プロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナも、ap1 変異体と類似した花の形態異常を示した。ap1 変異体にサイトカイニン受容体ARABIDOPSIS HISTIDINE KINASEAHK )の変異を導入したところ、二次花を形成する表現型が緩和された。ap1-1 変異体の花ではサイトカイニン生合成酵素遺伝子のLONELY GUY1LOG1 )の発現量が野生型よりも高く、サイトカイニン分解酵素遺伝子CYTOKININ OXIDASE/DEHYDROGENASE3CKX3 )の発現量が低くなっていた。AP1にグルココルチコイド受容体(GR)を付加した融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したap1-1 cal1-1 二重変異体をデキサメタゾン(Dex)処理してAP1を活性化すると、2時間以内にLOG1 mRNAの減少とCKX3 mRNAの増加が起こり、この転写産物量変化はタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)存在下でも起こった。よって、LOG1CKX3 はAP1の直接のターゲットであると思われる。LOG1 遺伝子およびCKX3 遺伝子のプロモーター領域にはMADS-ドメインタンパク質が結合するとされるCArGモチーフが含まれており、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイから、AP1はこのモチーフを含む断片と相互作用をすることがわかった。また、LOG1 プロモーターまたはCKX3 プロモーターの制御下でルシフェラーゼ(LUC )を発現するコンストラクトを用いたプロトプラスト一過的形質移入アッセイから、AP1はLOG1 プロモーター制御下のLUC 発現を抑制し、CKX3 プロモーター制御下のLUC 発現を活性化することがわかった。したがって、AP1はLOG1 およびCKX3 の発現をCArGモチーフに結合することで制御していると考えられる。LOG1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入したap1-1 変異体では、野生型では発現の見られないようなステージにおいて強いGUS活性が見られた。また、CKX3 は花器官の発達初期に発現が見られるが、ap1-1 変異体発現量が低下し、特に二次花が形成させるがく片の腋での発現が低下していた。AP1 プロモーター制御下でLOG1 mRNAをターゲットとする人工マイクロRNAを発現させるコンストラクト(pAP1::amiR-LOG1 )やCKX3 を発現させるコンストラクト(pAP1::CKX3 )を導入したap1-4 変異体は、二次花形成をする表現型が抑制された。また、LOG1 の残存発現量と二次花形成の頻度との間に相関が見られた。AP1は花成時期を制御しているMADS-ドメイン遺伝子のSHORT VEGETATIVE PHASESVP )、SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS 1SOC1 )、AGAMOUS-LIKE 24AGL24 )の発現を抑制しており、これらの遺伝子を過剰発現させると二次花が形成される。AGL24 を過剰発現させた形質転換体の花序ではARR5 の転写産物量が増加しており、AP1 プロモーター制御下でIPT8 を発現させた形質転換体の花序ではSVPSOC1AGL24 の発現量が増加していた。したがって、サイトカイニンシグナルとこれらの花成時期制御遺伝子はお互いを相互に活性化していると考えられる。以上の結果から、AP1はサイトカイニン生合成の抑制とサイトカイニン分解の活性化を介して花分裂組織での正常な器官形成に貢献していると考えられる。

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論文)糖による頂芽優勢の制御

2014-05-28 23:05:55 | 読んだ論文備忘録

Sugar demand, not auxin, is the initial regulator of apical dominance
Mason et al.  PNAS (2014) 111:6092-6097.
doi: 10.1073/pnas.1322045111

オーキシンは頂芽優勢を引き起こすホルモンであるとされており、古典的なモデルでは、茎頂で生産されたオーキシンが下へと輸送され腋芽の成長を阻害していると考えられている。茎頂を切除すると下位の腋芽が成長して新たな茎頂となること、茎頂切断面からオーキシンを供給すると腋芽の成長が抑制されることが実験的に示されている。しかしながら、詳細に観察すると、1)茎頂切断面からのオーキシン供給は腋芽成長の初期段階は抑制していない、2)摘芯、環状剥皮、オーキシン輸送阻害剤処理による茎のオーキシン欠乏は常に腋芽の成長を促進するわけではない、3)シロイヌナズナ等のある種の植物において、また高温等の成育条件下において、茎頂切除後のオーキシン供給は腋芽の成長を阻害しない、4)茎頂から離れたところにある腋芽では、茎頂切除後、茎のオーキシン量の変化が起こる前に腋芽の成長が観察される、といった茎頂からのオーキシン供給と腋芽の成長との間の不一致が見られる。オーストラリア クイーンズランド大学Beveridge らは、エンドウを実験材料に用いて、茎頂切除による腋芽の成長について解析を行なった。茎頂から40cm下にある腋芽は、茎頂切除後2.5時間以内に成長を開始した。よって、茎頂切除によって発せられたシグナルは時速16cm以上の速さで伝達されたことになり、これはIAAが茎頂から輸送される速度よりも10倍速い。このような速い速度で長距離を移動する腋芽成長誘導シグナルは、茎頂部の展開途中の若い葉を切除しても見られた。この現象を説明する解釈として、IAAよりも速く移動する腋芽成長阻害物質を茎頂部が生産していることが考えられる。そこで、茎に環状剥皮処理をして処理部分より上から下への物質輸送を物理的に遮断し、剥皮部分より下にある腋芽の成長を見た。その結果、大部分の展開中の葉含む位置よりも下で剥皮を行った場合、その下の腋芽は成長を起こさなかった。このことは、オーキシンを含め茎頂部から供給される阻害物質だけでは腋芽の成長促進が起こらないことを示している。さらに、剥皮部分の下にある腋芽は茎頂切除をしても成長が誘導されなかった。したがって、剥皮よりも上のシュートは腋芽の成長を促進するシグナルを生産していると考えられる。同化産物等の栄養物が腋芽成長のシグナルである可能性を検証するために、成熟葉を全て除去したところ、茎頂切除による腋芽成長は完全に抑制された。よって、頂芽優勢を起こすためには成熟葉が必要であることが示唆される。そこで、上位の成熟葉を含むように茎の低い位置で切除して腋芽の成長を見たところ、高い位置で切除した場合よりも腋芽の成長速度が遅くなることがわかった。この腋芽成長遅延は、葉もしくは同化産物が腋芽の成長にとって重要であることを示していると考えられる。同位体二酸化炭素を上位葉に与えて同化産物の移動速度を見たところ、無傷の植物も茎頂を除去した植物も時速150cmで輸送されており、IAAの輸送速度よりも2桁速く、腋芽の成長を誘導するシグナルの伝達速度よりも速いことがわかった。また、茎頂を切除した植物は無傷の植物よりも下位節間に輸送される同化産物量が多いことがわかった。腋芽の内生糖含量を見たところ、ショ糖は茎頂切除4時間後に44%増加していたが、グルコース含量は変化していなかった。また、腋芽へのショ糖供給は茎頂切除によって2倍速くなった。よって、腋芽での糖の増加は局所的なデンプン代謝によるものではなく、輸送されてきたショ糖によるものと考えられ、茎頂切除後に植物は腋芽の成長誘導に十分な時間の中で腋芽の糖含量を増加させていることが示唆される。無傷の植物にショ糖を与えると、茎頂切除した植物と同様に腋芽の成長誘導が起こり、茎の低い位置で切除した場合もショ糖は腋芽を成長誘導させた。添加するショ糖濃度を変えても腋芽の成長誘導は起こったが、ショ糖濃度が高くなると腋芽の成長量が増加した。転写因子をコードするBRANCHED1BRC1 )は、腋芽においてストリゴラクトンやサイトカイニンによって転写制御を受け、腋芽の成長を阻害していると考えられている。無傷植物へのショ糖の添加は、茎頂を切除した場合と同様に、腋芽でのBRC1 の発現量を減少させた。以上の結果から、頂芽優勢や茎頂切除後の腋芽の成長誘導は、糖の供給が制御していると考えられる。

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