Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)糖による頂芽優勢の制御

2014-05-28 23:05:55 | 読んだ論文備忘録

Sugar demand, not auxin, is the initial regulator of apical dominance
Mason et al.  PNAS (2014) 111:6092-6097.
doi: 10.1073/pnas.1322045111

オーキシンは頂芽優勢を引き起こすホルモンであるとされており、古典的なモデルでは、茎頂で生産されたオーキシンが下へと輸送され腋芽の成長を阻害していると考えられている。茎頂を切除すると下位の腋芽が成長して新たな茎頂となること、茎頂切断面からオーキシンを供給すると腋芽の成長が抑制されることが実験的に示されている。しかしながら、詳細に観察すると、1)茎頂切断面からのオーキシン供給は腋芽成長の初期段階は抑制していない、2)摘芯、環状剥皮、オーキシン輸送阻害剤処理による茎のオーキシン欠乏は常に腋芽の成長を促進するわけではない、3)シロイヌナズナ等のある種の植物において、また高温等の成育条件下において、茎頂切除後のオーキシン供給は腋芽の成長を阻害しない、4)茎頂から離れたところにある腋芽では、茎頂切除後、茎のオーキシン量の変化が起こる前に腋芽の成長が観察される、といった茎頂からのオーキシン供給と腋芽の成長との間の不一致が見られる。オーストラリア クイーンズランド大学Beveridge らは、エンドウを実験材料に用いて、茎頂切除による腋芽の成長について解析を行なった。茎頂から40cm下にある腋芽は、茎頂切除後2.5時間以内に成長を開始した。よって、茎頂切除によって発せられたシグナルは時速16cm以上の速さで伝達されたことになり、これはIAAが茎頂から輸送される速度よりも10倍速い。このような速い速度で長距離を移動する腋芽成長誘導シグナルは、茎頂部の展開途中の若い葉を切除しても見られた。この現象を説明する解釈として、IAAよりも速く移動する腋芽成長阻害物質を茎頂部が生産していることが考えられる。そこで、茎に環状剥皮処理をして処理部分より上から下への物質輸送を物理的に遮断し、剥皮部分より下にある腋芽の成長を見た。その結果、大部分の展開中の葉含む位置よりも下で剥皮を行った場合、その下の腋芽は成長を起こさなかった。このことは、オーキシンを含め茎頂部から供給される阻害物質だけでは腋芽の成長促進が起こらないことを示している。さらに、剥皮部分の下にある腋芽は茎頂切除をしても成長が誘導されなかった。したがって、剥皮よりも上のシュートは腋芽の成長を促進するシグナルを生産していると考えられる。同化産物等の栄養物が腋芽成長のシグナルである可能性を検証するために、成熟葉を全て除去したところ、茎頂切除による腋芽成長は完全に抑制された。よって、頂芽優勢を起こすためには成熟葉が必要であることが示唆される。そこで、上位の成熟葉を含むように茎の低い位置で切除して腋芽の成長を見たところ、高い位置で切除した場合よりも腋芽の成長速度が遅くなることがわかった。この腋芽成長遅延は、葉もしくは同化産物が腋芽の成長にとって重要であることを示していると考えられる。同位体二酸化炭素を上位葉に与えて同化産物の移動速度を見たところ、無傷の植物も茎頂を除去した植物も時速150cmで輸送されており、IAAの輸送速度よりも2桁速く、腋芽の成長を誘導するシグナルの伝達速度よりも速いことがわかった。また、茎頂を切除した植物は無傷の植物よりも下位節間に輸送される同化産物量が多いことがわかった。腋芽の内生糖含量を見たところ、ショ糖は茎頂切除4時間後に44%増加していたが、グルコース含量は変化していなかった。また、腋芽へのショ糖供給は茎頂切除によって2倍速くなった。よって、腋芽での糖の増加は局所的なデンプン代謝によるものではなく、輸送されてきたショ糖によるものと考えられ、茎頂切除後に植物は腋芽の成長誘導に十分な時間の中で腋芽の糖含量を増加させていることが示唆される。無傷の植物にショ糖を与えると、茎頂切除した植物と同様に腋芽の成長誘導が起こり、茎の低い位置で切除した場合もショ糖は腋芽を成長誘導させた。添加するショ糖濃度を変えても腋芽の成長誘導は起こったが、ショ糖濃度が高くなると腋芽の成長量が増加した。転写因子をコードするBRANCHED1BRC1 )は、腋芽においてストリゴラクトンやサイトカイニンによって転写制御を受け、腋芽の成長を阻害していると考えられている。無傷植物へのショ糖の添加は、茎頂を切除した場合と同様に、腋芽でのBRC1 の発現量を減少させた。以上の結果から、頂芽優勢や茎頂切除後の腋芽の成長誘導は、糖の供給が制御していると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによるDWARF14タンパク質の分解

2014-05-21 21:23:26 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone Promotes Degradation of DWARF14, an α/β Hydrolase Essential for Strigolactone Signaling in Arabidopsis
Chevalier et al.  Plant Cell (2014) 26:1134-1150.
doi:10.1105/tpc.114.122903

スペイン国立バイオテクノロジーセンターCubas らは、シロイヌナズナの変異体集団を密植して育成し、そのような条件でもシュートが分枝する1因子劣性のseto5 (「seto」はスペイン語で「茂み(bush)」)変異体を得た。seto5 変異体は、野生型植物が平均2つの分枝をロゼットから形成するところを6つ以上形成し、やや草丈が低い表現型を示した。野生型植物は、長日条件で育成し花成や抽だいが始まる段階では茎頂に近い腋芽ほど良く発達する。seto5 変異体においても腋芽の成長勾配は見られるが、腋芽の成長は野生型よりも良くなっていた。seto5 変異体は側生花序の開花が野生型よりも早く、この表現型は分枝の成長を抑制しているBRANCHED1BRC1 )の変異体と類似していた。seto5 brc1-2 二重変異体の側生花序の開花はbrc1-2 変異体と同等であることから、brc1-2 変異はseto5 変異よりも上位にあると考えられる。これらの結果から、野生型SETO5 は腋芽の成長・発達や側生花序の開花に対して抑制的に作用していると考えられる。seto5 変異の原因遺伝子の探索を行なったところ、At3g03990遺伝子の翻訳開始点から506番目の塩基がCからTに置換しており、これによってコードするタンパク質の169番目のアミノ酸がProからLeuに置換することがわかった。At3g03990はイネのDWARF14D14 )、ペチュニアのDECREASED APICAL DOMINANCE2DAD2 )のオーソログであるAt-D14 であり、これらの遺伝子座はストリゴラクトンによるシュート分枝の阻害に関与している。seto5 の表現型はD14 の点変異によって引き起こされており、この変異をd14-seto と命名することにした。d14-seto 変異体の表現から、D14タンパク質のPro-169は重要な役割を持っていることが示唆される。PyMOLを用いてPro169残基のタンパク質3次元構造上の位置を調査したところ、cap helix αD3 のN末端に位置し、側鎖は溶媒側を向いていることがわかった。D14関連タンパク質の配列を比較すると、Pro-169はD14関連タンパク質では保存されていたが、KAI2関連タンパク質ではこの位置がSerとなっていた。長日条件で育成した植物において、D14 の転写産物量はロゼット葉や茎生葉で高く、腋芽、花序、茎、根での発現量は低かった。D14 プロモーター制御下でGUS を発現させ、D14 の発現する組織を可視化したところ、発芽5日目の芽生えでは根と発達中の子葉維管束組織で発現が見られ、根での発現は徐々に維管束環に限定されていった。10日目の芽生えでは胚軸の維管束組織でも発現が見られた。根での発現は分裂組織領域では見られないが、分化領域では強い発現が見られ、伸長領域でも発現が検出され、発現部位は師部に限定されていた。地上部では、葉原基や若い葉で発現が見られ、成熟するにつれて発現部位は師部に限定されるようになり、成熟葉では発現は見られなくなった。花では、花柱や小花柄、花序の先端部で強い発現が見られた。また、腋芽においても発現が見られた。D14 がシュート分枝において細胞非自立的に作用するかを調査するために接木試験を行なったところ、野生型の台木に接いだd14-seto 変異体のシュートで分枝の抑制は見られなかった。よって、D14 mRNAもしくはD14タンパク質は根からシュートへと移動することはなく、D14がシュート分枝を抑制するためには地上部で発現する必要があると考えられる。D14 の発現量はmax2 変異体やmax4 変異体と野生型との間で有意差は見られず、合成ストリゴラクトンGR24や合成オーキシンNAAを処理しても変化は見られなかった。しかし、オーキシン輸送阻害剤NPA処理を行なったところ、転写産物量の減少が見られた。また、腋芽成長を誘導する主茎の摘芯処理や腋芽休眠を誘導する遠赤色光照射を行なってもD14 転写産物量の変化は起こらなかった。そこでD14タンパク質の安定性について調査したところ、D14タンパク質はGR24処理によって減少すること、この減少はmax2 変異体では起こらないことがわかった。よって、ストリゴラクトンはD14タンパク質の速やかな分解を誘導し、この分解にはMAX2 遺伝子の機能が必要であることが示唆される。以前の報告にあるようにD14がストリゴラクトンの受容体であるならば、このような負のフィードバックループはストリゴラクトンシグナルの持続や強度の制御に関与しているものと思われる。

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論文)トライコーム形成におけるジベレリンとジャスモン酸の相乗作用

2014-05-16 22:45:45 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis DELLA and JAZ Proteins Bind the WD-Repeat/bHLH/MYB Complex to Modulate Gibberellin and Jasmonate Signaling Synergy
Qi et al.  Plant Cell (2014) 26:1118-1133.
doi:10.1105/tpc.113.121731

ジベレリン(GA)はトライコームの形成に対して促進的に作用しており、シロイヌナズナのGA生合成変異体ga1-3 はほとんどトライコームが形成されない表現型となる。中国 清華大学Xie らは、ga1-3 変異体にDELLAタンパク質の変異を導入した五重変異体(ga1-3 gai-t6 rga-t2 rgl1-1 rgl2-1RGL3 は野生型)ではトライコームの形成されない表現型が相補されること、della 変異体(gai-t6 rga-t2 rgl1-1 rgl2-1 rgl3-1 )はトライコームの密度が増加することを見出した。これらの結果から、DELLAタンパク質はトライコームの形成を抑制していることが示唆される。また、ga1-3 変異体およびga1-3 変異に幾つかのDELLAタンパク質の変異を導入した変異体をGA処理すると、トライコーム形成密度が野生型にGA処理をした場合と同等にまで増加した。DELLAタンパク質変異の組み合わせとトライコーム密度の関係を定量的に解析した結果、5つのDELLAタンパク質のうち、RGAとGAIがトライコーム形成抑制に対して重要であり、RGL1とRGL2は中程度の作用、RGL3は作用が小さいことがわかった。トライコーム形成にはWD-repeat(TRANSPARENT TESTA GLABRA1 [TTG1])/bHLH (GLABRA3 [GL3] もしくはENHANCER OF GLABRA3 [EGL3])/MYB (GLABRA1 [GL1]もしくはMYB23)複合体が関与していることが知られている。WD-repeat/bHLH/MYB複合体の変異体であるgl3 egl3gl1ttg1 ではトライコームが形成されず、GA添加によるトライコーム形成誘導が起こらなかった。よって、GAによるDELLAタンパク質の分解によって引き起こされるトライコーム形成の活性化はWD-repeat/bHLH/MYB複合体を介してなされていることが示唆される。DELLAタンパク質とWD-repeat/bHLH/MYB複合体との相互作用について酵母two-hybridアッセイによって調査したところ、RGAおよびRGL2のC末端領域(RGA-R、RGL2-R)はGL1、EGL3、GL3と相互作用を示すがTTG1とは相互作用をしないことがわかった。また、この相互作用はプルダウンアッセイや蛍光タンパク質再構成(BiFC)アッセイによっても確認された。よって、DELLAタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体のbHLHとMYBと物理的相を作用を示すと考えられる。シロイヌナズナプロトプラストを用いた一過的発現解析から、GL1、EGL3、GL1の転写活性化因子としての機能はRGAやRGL2によって阻害されることがわかった。実際に、WD-repeat/bHLH/MYB複合体のターゲット遺伝子であるGL2MYB23 の発現は、DELLAタンパク質が蓄積するga1-3 変異体において減少しており、五重変異体では野生型と同等にまで回復していた。五重変異体ではトライコームが高密度で形成されるが、gl3 egl3 変異が加わることでトライコームが形成されなくなった。また、この七重変異体ではGL2 やMYB23 の発現量も減少していた。したがって、GAを介したトライコーム形成においてDELLAタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体よりも上流で機能していることがことが示唆される。ga1-3 変異体でEGL3 を過剰発現させるとトライコームが高密度で形成され、MYB23GL2GL3 の発現量も野生型と同等にまで回復した。よって、GAを介したトライコーム形成においてWD-repeat/bHLH/MYB複合体はDELLAタンパク質の下流で機能している。ジャスモン酸(JA)はトライコーム形成に対して促進的に作用し、JAシグナル伝達を抑制するJasmonate ZIM-domain(JAZ)タンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体と相互作用をして転写活性を抑制することが知られている。一過的発現解析において、RGAとJAZ1を同時に発現させるとそれぞれを単独で発現させた場合よりも強くEGL3やGL1の転写活性を抑制することが示された。したがって、DELLAタンパク質とJAZタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体の転写活性抑制に対して相乗的作用していることが示唆される。GAとJAを同時に処理した野生型植物のトライコーム形成数は、それぞれを単独で処理した場合よりも多くなり、GL2MYB23 の発現量も多くなった。よって、トライコーム形成においてもGAとJAは相乗的に作用している。GA生合成阻害剤のパクロブトラゾールを処理することによって生体内のDELLAタンパク質を蓄積させた植物ではJAによるトライコーム形成やGL2MYB23 の発現誘導が抑制された。ga1-3 変異体においてもJAによるトライコーム形成やGL2MYB23 の発現誘導が抑制され、JAとGAを同時に処理するとトライコーム形成が誘導された。したがって、JAによるトライコーム形成誘導にはGAシグナルが必要であることが示唆される。同じように、GAによるトライコーム形成やGL2 、MYB23 の発現誘導はJAシグナル伝達変異体coi1-1 では抑制されており、GAによるトライコーム形成もJAシグナルを必要とする。以上の結果から、GAとJAはWD-repeat/bHLH/MYB複合体と相互作用をするDELLAタンパク質およびJAZタンパク質の分解を引き起こすことでトライコーム形成に対して相乗的に作用しており、両者のシグナルは相互に従属してトライコーム形成を制御していると考えられる。

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論文)フック形成におけるジャスモン酸とエチレンの拮抗作用

2014-05-14 21:25:37 | 読んだ論文備忘録

Jasmonate-Activated MYC2 Represses ETHYLENE INSENSITIVE3 Activity to Antagonize Ethylene-Promoted Apical Hook Formation in Arabidopsis
Zhang et l.  Plant Cell (2014) 26:1105-1117.
doi:10.1105/tpc.113.122002

多くの地上植物は、発芽の際に茎頂組織や子葉を保護するためにフックを形成する。フックの形成は植物ホルモンや光によって制御されており、エチレンとジベレリンはフック形成の正の制御因子として、光、ブラシノステロイド、ジャスモン酸(JA)は負の制御因子として作用する。エチレンによるフック形成の促進はJAによって抑制されるが、その分子機構は明らかとなっていない。中国 北京大学Guo らは、フック形成の制御におけるエチレンとJAの相互作用について解析した。暗所で発芽させたシロイヌナズナ芽生えは、エチレン生合成の前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)を添加した培地で育成するとフック形成が誇張され、JAを添加した培地で育成するとフック形成が阻害される。ACCとJAを同時に添加すると、エチレンによるフック形成の誇張がJAによって部分的に抑制される。JA受容体に欠損のあるcoronatine insensitive1-2coi1-2 )変異体はACC添加によってフックの誇張を起こすが、JA添加に対しては応答せず、JAとACCの同時添加でフックの誇張を起こした。よって、JAによるフック形成の抑制はCOI1に依存していることが示唆される。恒常的にエチレンシグナルが活性化しているconstitutive triple response1-1ctr1-1 )変異体やETHYLENE INSENSITIVE3EIN3 )過剰発現形質転換体はACC処理をしなくてもフック形成が誇張されるが、JA添加はこれらの個体のフック形成も部分的に抑制した。したがって、COI1を介したJAシグナルはEIN3を介したエチレンシグナルによるフックの屈曲に対して拮抗的に作用することが示唆される。N -アセチルトランスフェラーゼとの類似性を示すHOOKLESS1(HLS1)タンパク質は、シロイヌナズナ芽生えのフック形成に必須な調節因子として機能しており、hls1-1 変異体はフックが形成されない。hls1-1 変異体はエチレンにもJAにも応答しないことから、フック形成におけるエチレンとJAの拮抗作用においてHLS1は共通の調節因子として作用していると考えられる。芽生えをエチレン処理するとHLS1 の発現が1時間以内に誘導され、2時間後には最大となり、6時間後に僅かに減少した。一方、JAはHLS1 の発現量を低下させ、エチレンによるHLS1 発現誘導も抑制した。HLS1 遺伝子はEIN3およびEIN3-Like1(EIL1)の直接のターゲットとなっている。ein3 eil1 二重変異体でのJAによるHLS1 の発現抑制の程度は野生型と比べて非常に低いことから、EIN3/EIL1はJAによるHLS1 の発現抑制に関与していることが示唆される。EIN3/EIL1はF-boxタンパク質のEIN3 BINDING F-BOX PROTEIN1(EBF1)およびEBF2を介してプロテアソーム系によって分解されることが知られており、エチレン処理によってEIN3/EIL1タンパク質量は増加するが、JA処理をするとこれらのタンパク質量は減少した。FBF1とEBF2が機能喪失した変異体ではJA処理によるEIN3タンパク質量の減少が見られないことから、JAはプロテアソーム系を介したEIN3/EIL1の分解を促進していると考えられる。JAはEBF1 の発現を誘導し、この誘導はmyc2 変異体では低下していた。EBF1 遺伝子プロモーター領域には2つのMYC2結合すると推測される部位(MBS1およびMBS2;CACATG)が存在しており、ゲルシフトアッセイやクロマチン免疫沈降-PCR解析(ChIP-PCR)からEBF1 はMYC2の直接のターゲットであることが確認された。ebf1 変異体やmyc2 変異体ではJA処理をしてもEIN3タンパク質量の減少が起こらなかった。これらの結果から、JAはMYC2を活性化しEBF1 の発現を誘導することでEIN3/EIL1の分解を促進していると考えられる。ebf1 変異体とmyc2 変異体のJAによるフック形成抑制を見たところ、myc2 変異体ではJAに対する応答性が喪失していたが、ebf1 変異体ではJAに対する応答性が見られた。よって、プロテアソーム系にるEIN3の分解を迂回してJAによるフック形成抑制を引き起こす経路がMYC2の下流に存在していると思われる。MYC2とEIN3は他の転写因子と相互作用をすることが知られているので、MYC2とEIN3との間で相互作用が見られるかを幾つかの試験で調査したところ、両者は物理的に相互作用を示すことが確認された。myc2 変異体のフック形成はJAに対して感受性を示さないがエチレンには応答した。ein3 eil1 二重変異体はエチレンに対する感受性は喪失しているが、JAに対しては応答した。よって、JAはein3 eil1 変異体においてもHLS1 の発現を阻害しており、EIN3/EIL1の機能が失われていてもフック形成おいてJAに応答する経路が存在していることが示唆される。myc2 ein3 eil1 三重変異体はエチレンやJA処理をしてもフック形成に殆ど変化が見られなかった。このことから、MYC2とEIN3/EIL1はJAとエチレンによるフック形成制御において必須の因子であると考えられる。EIN3のHLS1 プロモーターへの結合に対するMYC2の効果をゲルシフトアッセイによって調査したところ、少量のMYC2はEIN3のHLS1 プロモーターへの結合を高めたが、MYC2添加量を高めるとEIN3のDNA結合能力が低下した。MYC2自身はHLS1 プロモーターには結合しないことから、MYC2はEIN3と相互作用をすることでEIN3のDNA結合を阻害していると考えられる。ベンサミアナタバコを用いた一過的発現実験系から、生体内においてもMYC2がEIN3と相互作用をすることでEIN3の転写活性を抑制することが確認された。以上の結果から、JAによって活性化されたMYC2は、EBF1 の発現を誘導してEIN3/EIL1の分解を促進することと、EIN3と相互作用をしてEIN3の転写活性を抑制することで、フック形成を抑制していると考えられる。

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論文)FLOWERING LOCUS T とリン脂質との結合

2014-05-09 13:51:28 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis florigen FT binds to diurnally oscillating phospholipids that accelerate flowering
Nakamura et al.  Nature Communications (2014) 5:3553.
doi:10.1038/ncomms4553

花成誘導因子であるFLOWERING LOCUS T(FT)は、構造が哺乳類のホスファチジルエタノールアミン(PE)結合タンパク質(PEBP)と構造が類似していることが知られている。PEBPはRafキナーゼ阻害タンパク質(RKIP)として機能し、Rafキナーゼシグナル伝達を阻害するとされている。台湾 中央研究院 植物および微生物学研究所中村らは、FTタンパク質の脂質結合特性を調査し、FTはホスファチジルコリン(PC)と結合すること、他のグリセロ脂質やPEとは結合しないことを見出した。PE生合成の律速酵素であるCTP:ホスフォリルエタノールアミンシチジルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子を人工マイクロRNA(amiPECT1)によって発現抑制し、生体内のPC量を相対的に高めた形質転換シロイヌナズナは、花成が促進された。また、amiPECT1FD プロモーター制御下で茎頂特異的に発現させるコンストラクト(pFD:amiPECT1 )を導入した形質転換体は花成が促進されたが、SUCROSE TRANSPORTER2SUC2 )プロモーター制御下でコンパニオン細胞特異的に発現させた場合には花成促進は起こらなかった。PECT1 を茎頂特異的に過剰発現させた形質転換体は野生型よりも花成が遅延した。これらのことから、茎頂でのPC量は、その濃度に応じて花成時期を制御していると考えられる。pFD:amiPECT1 導入個体は、FTのエフェクターであるAPETALA1AP1 )とSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )の発現量が野生型よりも高くなっていた。pFD:amiPECT1ft-10 tsf-1 二重変異体に導入した形質転換体ではpFD:amiPECT1 導入による花成促進効果が弱まったが、FT を過剰発現させて花成促進した個体にpFD:amiPECT1 を導入した場合にはさらに花成が促進された。よって、茎頂でのPC量の増加による花成時期の制御はFTを介してなされていると考えられる。PCは光、温度、大気成分といった環境要因によって脂肪酸の構成を変化させることが知られている。PCの分子種は概日変化を示し、日中には不飽和脂肪酸の少ないPCが多く、夜間はリノレン酸を含んだPCが増加していた。このような変化はPEでは見られなかった。FTタンパク質と脂肪酸組成の異なるPCとの結合を見たところ、夜間に多い分子種であるdi18:3-PCとFTとの結合は他のより飽和した脂肪酸で構成されたPCよりも弱いことがわかった。したがって、FTと結合するPC分子種は夜間に不足し、夜間はPCと結合したFTが少なくなっていると考えられる。PCの18:2脂肪酸を18:3に不飽和化するFATTY ACID DESATURASE3FAD3 )を過剰発現させた形質転換体は、長日条件での花成が野生型よりも遅くなった。よって、18:3-PCの増加は花成遅延を起こす。以上の結果から、FTタンパク質は、明期に多くなるPC分子種と相互作用を示し、このことは開花時期の促進に関与していると考えられる。

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論文)未知カロテノイド誘導体による側根形成制御

2014-05-06 13:44:42 | 読んだ論文備忘録

Periodic root branching in Arabidopsis requires synthesis of an uncharacterized carotenoid derivative
Van Norman et al.  PNAS (2014) 111:E1300-E1309.
doi:10.1073/pnas.1403016111

米国 デューク大学Benfey らは、シロイヌナズナ芽生えをカロテノイド生合成経路の阻害剤であるノルフラゾン(NF)もしくは2-(4-クロロフェニルチオ)-トリエチルアミン塩酸塩(CPTA)で処理すると、主根がが短くなり、側根数が減少することを見出した。しかしながら、この処理をするとシュートが白化するので、カロテノイド生合成阻害による側根数の減少は二次的な結果とも考えられる。そこで、イソプレノイドやカロテノイドの生合成に直接関与している酵素をコードする遺伝子の1-hydroxy-2-methyl-2-(E)-butenyl 4-diphosphate reductase /CHLOROPLAST BIOGENESIS 6HDR /IspH /CLB6 )やPHYTOENE SYNTHASEPSY )の変異体を観察したところ、阻害剤処理した芽生えと同じように側根数の減少が見られた。また、カロテノイド含量に間接的に影響を及ぼすプラスチド指向性RNAポリメラーゼ SCABRA 3 (SCA3 )の変異体においても側根数が減少していた。したがって、化学物質処理や遺伝的欠損によってカロテノイド生合成が抑制されると側根の減少した表現型となることが示唆される。CPTA処理をした芽生えの根は成長速度が低下し、細胞の大きさも小さくなっていた。しかし、根端部の大きさや形態には変化は見られず、重力に対する応答性も正常であった。CPTAを含む培地から通常の培地へ移植すると側根形成パターンは正常に戻った。よって、カロテノイド生合成は側根形成の初期過程に必要であると考えられる。オーキシン応答プロモーターDR5 制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いて将来側根が形成される部位を視覚化したところ、CPTA処理によってそのような部位の数は大きく減少することがわかった。しかし、部位が形成されれば側根原基は形成された。よって、カロテノイド欠乏条件は将来側根が形成される部位の確立に関与していると考えられる。側根形成は根端部で6時間周期に起こる遺伝子発現の振幅(側根時計)が関与しているが、CPTA処理した根では遺伝子発現周期に異常が見られた。カロテノイドの代謝や生合成に関与する遺伝子の発現に振幅は見られなかったが、側根の形成や発達に関与している細胞列においてカロテノイド生合成の主要な遺伝子の高い発現が見られた。カロテノイド生合成経路の重要なステップを触媒するPSYの発現パターンをPSY プロモーター制御下でLUC を発現するコンストラクトを導入して調査したところ、側根分化の起こる領域や側根で高く、遺伝子発現の振幅が起こる根端部では殆ど発現していないことがわかった。また、側根原基、主根と側根の接合部、根の先端部でLUC の発現が見られた。PSY をユビキチン10プロモーター制御下でpsy 変異体で発現させると表現型の回復が見られたが、PSY を野生型植物で過剰発現させても側根形成に変化は見られなかった。したがって、カロテノイド生合成量を高めても側根時計に変化は起こらないと考えられる。カロテノイド生合成経路はリコペンの環化の段階でα-カロテンとβ-カロテンの2つの経路に分枝し、CPTAはこの環化過程を阻害している。そこで、側根形成に関与しているカロテノイド類を特定するために、α-カロテンやβ-カロテンの生合成経路の酵素遺伝子の変異体での側根形成を野生型と比較した。その結果、α-カロテン類は側根形成に関与していないことが示唆された。次にβ-カロテン類およびこの経路から生成されるアブシジン酸(ABA)やストリゴラクトンといった植物ホルモンの効果について調査した。ABAやストリゴラクトンに関して欠損変異体や添加試験を行なって解析したが、カロテノイド生合成阻害によるこれらの植物ホルモンの含量低下では側根形成の低下を説明できず、β-カロテン経路で合成される未知のカロテノイドが側根形成に関与しているものと思われる。カロテノイド酸化開裂酵素(CCD)1を阻害するD15を芽生えに与えると、地上部の緑化が維持され、一次根の伸長がやや低下し、側根形成が低下した。したがって、D15添加によるカロテノイド分解活性の阻害によって生じた未知のカロテノイドの量的な変化が側根形成に影響しているものと思われる。以上の結果から、側根形成の初期過程に未知のカロテノイド誘導体が関与ていると考えられる。

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論文)STENOFOLIA転写抑制因子による葉身拡大機構

2014-04-21 22:48:00 | 読んだ論文備忘録

STENOFOLIA Recruits TOPLESS to Repress ASYMMETRIC LEAVES2 at the Leaf Margin and Promote Leaf Blade Outgrowth in Medicago truncatula
Zhang et al.  The Plant Cell (2014) 26:650-664.
doi:10.1105/tpc.113.121947

タルウマゴヤシ(Medicago truncatula )のWUSCHEL関連ホメオボックス(WOX)転写抑制因子のSTENOFOLIA(STF)は、細胞分裂を促進することで葉身の拡大において重要な役割を演じているが、詳細な分子機構は明らかとなっていない。米国 オクラホマ州立大学Tadege らは、野生タバコ(Nicotiana sylvestris )のWOXファミリー遺伝子が機能喪失して葉身が細くなったlaminaless1lam1 )変異体を用いてSTFによる葉身拡大の分子機構を解析した。STFタンパク質のアミノ酸配列を他植物と比較して、N-末端ドメイン(NTD)、ホメオドメイン(HD)、中間ドメイン(MD)、WUS boxとSTF boxの2つの保存されたモチーフを有するC-末端ドメイン(CTD)の4つに区分し、何れかのドメインが欠失したタンパク質をlam1 変異体で発現させて、表現型が相補されるかを調査した。その結果、NTDもしくはMDが欠失したSTF を発現させたlam1 変異体は完全なSTF を発現させた個体と比べてやや葉身が細くなり波打つがlam1 変異を相補し、NTDとMDの両方を欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では相補の程度が弱くなった。一方、HDもしくはCTDを欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では表現型の相補は見られなかった。したがって、HDを介したDNAとの結合およびCTDを介した相互作用はSTF の機能にとって必須であると考えられる。CTDのWUS boxとSTF boxのSTF活性に対する貢献度を一過的転写抑制実験系を用いて調査したところ、WUS boxのみの変異およびSTF boxのみの変異は部分的な転写抑制活性を示し、WUS boxとSTF boxの両方に変異がある場合にはSTFの転写抑制活性が失われた。よって、STFが転写抑制活性を示すためにはWUS boxとSTF boxの両方が必要であると考えられる。CTDドメインを欠いたSTF(STFdel)がlam1 変異を相補しなかったのは転写抑制活性が失われたためと考えられる。そこで、STF-delにEARモチーフリプレッションドメインSRDXを付加した融合タンパク質(SRDX-STFdel)をlam1 変異体で発現させたところ、表現型が相補された。したがって、転写抑制活性がSTFの機能にとって重要であることが示唆される。STFdelにWUS boxもしくはSTF boxを付加した融合タンパク質によるlam1 変異体の表現型相補を見たところ、STFdel-STF-boxはSTFdel-WUS-boxよりも相補の程度が高かった。よって、葉身拡大においてSTF boxはWUS boxよりも重要であると思われる。BLAST検索の結果、STF boxの保存された10アミノ酸(QFIEFLPLKN)は双子葉植物においてのみ見られ、単子葉植物、裸子植物、非維管束植物では見られなかった。葉身の拡大におけるSTFを介した転写抑制の分子機構を解析するために、STFと相互作用をするタンパク質を酵母two-hybridスクリーニングによって探索したところ、シロイヌナズナのTOPLESS(TPL)タンパク質と83%相同性のあるタルウマゴヤシタンパク質が見出され、これをMt-TPLと命名した。STFとMt-TPLとの相互作用はBiFCアッセイやプルダウンアッセイによっても確認された。また、Mt-TPLはCTDを欠失したSTFとは相互作用を示さなかった。よって、Mt-TPLとの相互作用はSTFの転写抑制活性にとって重要であると考えられる。Mt-TPLは単独のCTDとは相互作用を示さなかったが、MDもしくはHDと融合したCTDとは相互作用を示した。したがって、STFのCTDはMt-TPLとの相互作用に必須であり、HDもしくはMDは相互作用の安定化に必要であることが示唆される。また、STFとMt-TPLとの相互作用にはSTF boxとWUS boxの両方が必要であることがわかった。STFとの相互作用に必要なMt-TPLのドメインを調査したところ、LiSHドメイン、CTLHドメイン、Pro-リッチドメインを含んでいるN-末端領域が相互作用に関与し、特にPro-リッチドメインが重要であることがわかった。STFdelとMt-TPLとのキメラ融合タンパク質をlam1 変異体で発現させたところ表現型が相補された。このことから、STFによる葉身拡大にはコリプレッサーのTPLが必要であり、STFのWUS boxとSTF boxはTPLとの相互作用に関与している考えられる。過去の調査において、stf 変異体ではLOBドメインタンパク質をコードする遺伝子の発現量が高いことが知られている。シロイヌナズナASYMMETRIC LEAVES2AS2 )遺伝子は葉身発達に関与するLOBドメインを含んだ向軸側の因子をコードしている。そこで、タルウマゴヤシのAS2 ホモログ(Mt-AS2 )の発現量を見たところ、stf 変異体では野生型の2倍の発現量があり、STF 過剰発現個体では発現量が1/5になっていることがわかった。よって、STFAS2 の発現を抑制している可能性がある。葉原基において、AS2 は向軸側で発現しており、STF の発現している葉縁や葉肉では発現していない。しかし、stf 変異体ではAS2 は葉縁部においても発現していた。よって、STFは葉縁部でのMt-AS2 の発現を抑制していることが示唆される。STFがMt-AS2 遺伝子のプロモーター領域に直接結合して転写活性を抑制しているのかをクロマチン免疫沈降やゲルシフトアッセイによって調査したところ、STFはAS2 プロモーターの複数の領域に結合しうることがわかった。さらに、一過的発現抑制実験により、STFのHDとCTDがMt-AS2 の発現抑制に必要であることがわかった。また、シロイヌナズナtpl1 変異体プロトプラストを用いた一過的発現抑制実験から、STFによるMt-AS2 プロモーター活性の抑制にはTPLが必要であることがわかった。野生型タルウマゴヤシでRNAiによってMt-AS2 を発現抑制すると葉身が広くなり、stf 変異体で発現抑制するとstf 変異体の葉身が細く鋸歯の無い葉縁となる表現型が部分的に回復した。よって、AS2 の異所的な発現がstf 変異体の細い葉身となる表現型に関与していることが示唆される。Mt-AS2 を野生タバコで過剰発現させると、葉身は様々な形態を示し、極度に湾曲したものから針状葉になるものまで見られた。また、lam1 変異体でMt-AS2 を過剰発現させると表現型がさらに極端になり、短く且つ直立した葉となった。以上の結果から、タルウマゴヤシSTFは、WUS boxとSTF boxを介してコリプレッサーのTOPLESSと物理的相互作用をし、葉縁部でのAS2 の発現を抑制することで葉の拡大を促進していると考えられる。

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論文)DELLAタンパク質による葉の老化制御

2014-04-14 22:17:47 | 読んだ論文備忘録

Removal of DELLA repression promotes leaf senescence in Arabidopsis
Chen et al.  Plant Science (2014) 219-220:26-34.
doi: 10.1016/j.plantsci.2013.11.016

葉の老化は、葉の発達過程の最終段階であり、細胞構造の崩壊、代謝、老化関連遺伝子(SAG)の発現にその特徴が見られる。植物ホルモンのうち、アブシジン酸、ジャスモン酸、エチレン、サリチル酸は葉の老化に対して促進的に作用し、オーキシンとサイトカイニンは老化を遅延させる。しかしながら、葉の老化におけるジベレリン(GA)の役割については明らかとなっていない。中国 浙江大学Jiang らは、シロイヌナズナの葉の老化におけるGAの役割を解明するために、GAシグナル伝達の抑制因子であるDELLAのうちGA INSENSITIVE(GAI)、REPRESSOR OF GA1-3(RGA)、RGA-LIKE1(RGL1)、RGA-LIKE2(RGL2)が機能喪失した変異体(Q-DELLA )およびGA生合成能が欠失したga1-3 変異体を用いて解析を行なった。Q-DELLA /ga1-3 変異体は野生型よりも草丈が高く、ga1-3 変異体は非常に草丈が低くなる。葉の老化の視覚的な指標として黄変を見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体のロゼット葉は移植33日後に周縁部に黄変が現れ、55日後には葉全体に広がった。一方、野生型では葉の緑は維持されており、ga1-3 変異体は野生型よりも緑色が維持された。野生型植物の葉をGA処理すると、無処理葉よりも有意に早く老化が起こった。老化特異的遺伝子であるSAG12 およびSAG29 の発現パターンを見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉でのSAG 遺伝子転写産物量は老化過程において野生型よりも高くなっており、ga1-3 変異体では野生型よりも低くなっていた。葉の老化過程において、クロロフィル含量は移植33日後、乾燥重量は移植40日後に最大となり、その後減少していく。Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉のクロロフィル含量および乾燥重量は常に野生型よりも低く、ga1-3 変異体では常に高くなっていた。葉の老化が進むにつれて可溶性糖類の含量が増加するが、野生型の糖含量はga1-3 変異体よりも高く、Q-DELLA /ga1-3 変異体の糖含量は野生型よりも高くなっていた。葉の脂肪酸含量は野生型とQ-DELLA /ga1-3 変異体では移植33日後に最大となり、ga1-3 変異体では40日後に最大となり、その後は何れの遺伝子型においても減少していったが、野生型の脂肪酸含量は常にQ-DELLA /ga1-3 変異体よりも高く、ga1-3 変異体よりも低くなっていた。脂肪酸組成を比較したところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体では不飽和度の高いリノレン酸(C18:3)の含量が野生型やga1-3 変異体よりも少なく、飽和脂肪酸のパルミチン酸(C16:0)はQ-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも多く、ga1-3 変異体では少なくなっていた。そこで、脂肪酸β-酸化に関与する酵素遺伝子の発現を見たところ、ga1-3 変異体では野生型よりも低く、Q-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも高くなっていた。DELLAの機能喪失によって葉の老化を制御しているホルモンのシグナル伝達に関与している遺伝子発現に変化が見られるかを調査したところ、EDS1EDS16OPR3RNS1EAT1EIN3NIT2OSM34 の転写産物量はQ-DELLA /ga1-3 変異体において野生型やga1-3 変異体よりも高く、COS1ga1-3 変異体において高くなっていた。以上の結果から、DELLAタンパク質によるGAシグナルの抑制は、葉の老化を遅延させていると考えられる。

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論文)ヨーロッパに侵入したブタクサの特性

2014-04-05 17:19:45 | 読んだ論文備忘録

Germination and seedling frost tolerance differ between the native and invasive range in common ragweed
Leiblein-Wild et al.  Oecologia (2014) 174:739-750.
DOI 10.1007/s00442-013-2813-6

侵略的外来種は全世界において生物多様性に対する大きな脅威とみなされている。また、その脅威は気候変動によって拡大している。ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia L.)は北アメリカ原産の一年草で、ヨーロッパには19世紀に小麦や農産物に混入して進入した。現在では鳥の餌が最も大きな進入経路となっている。ブタクサは、多くのヨーロッパ諸国において、農耕地、道端や建設現場のような荒地で生育しており、南東ヨーロッパ、ポー川流域、南フランスを中心に分布している。ブタクサは他の一年生植物に比べてライフサイクルが長く、早くに発芽し、痩果は10月まで成熟しない。よって早春に発芽した芽生えは霜に当たることがある。このことから、異なる地域のブタクサ集団は成長や開花のフェノロジーのような生活史に違いがあり、遺伝的に高度に多様化していることが推測され、発芽特性や霜耐性にある程度の変動があると思われる。ドイツ 生物多様性と気象研究センター(BiK-F)Leiblein-Wild らは、ヨーロッパに進入したブタクサ集団と自生地である北アメリカの集団の発芽特性と霜耐性について調査した。ヨーロッパの17地域と北アメリカの10地域の集団の種子を5℃から25℃まで5℃間隔の温度条件で発芽させたところ、ヨーロッパ進入集団も北アメリカ自生集団も15℃で発芽率が最も高く、それ以上およびそれ以下の温度条件では発芽率が低下した。また、全ての温度条件において進入集団は自生集団よりも高い発芽率を示した。また、種子が50%発芽するまでの日数(T50)は全ての温度条件で進入集団よりも自生集団のほうが長く、低温(5℃)条件では5.9日、発芽至適温度(15℃)で24.0日、高温(25℃)条件では17.8日長かった。各集団の発芽至適温度を見ると、13.8℃から21.8℃の間にあり、両集団で有意な差は見られなかった。発芽最高温度は23.6℃から40.3℃の間にあり、進入集団のほうが高く、発芽最低温度は平均3.1℃で進入集団のほうが低かった。したがって、進入集団は発芽温度の幅が自生集団よりも広い。最終的な発芽率は、全集団の平均で70.1%であり、進入集団のほうが高かった。次に、11の進入集団と12の自生集団の芽生えに、春の夜に霜が降りる状態を模倣して2℃ 9時間、-5℃ 6時間、2℃ 9時間の順に処理をして霜耐性を評価したところ、進入集団(37.0±12.8%)は自生集団(23.3±7.8%)よりも耐性が高く、自生集団の耐性の変動の幅(12.9から36.8%)は進入集団の変動幅(7.9から56.8%)よりも狭くなっていた。試験に使用した両集団の種子重量と最終的な発芽率、霜耐性の間には正の相関が見られたが、最低発芽温度とT50については種子重量との相関は見られなかった。両集団の採種地の環境要因(緯度、経度、平均気温、春期霜害リスク)と発芽特性との相関を見たところ、自生集団では最終的な発芽率と経度との間に負の相関があり、東部の大洋に近い集団は発芽率が低かった。しかし、進入集団の発芽特性は環境要因との相関は見られなかった。霜耐性に関しては、自生集団においては春期霜害リスクと強い正の相関が見られたが、進入集団では環境要因との相関は見られなかった。以上の結果から、ブタクサヨーロッパ進入集団は北アメリカ自生集団よりも発芽率、芽生えの成長速度、霜耐性、発芽温度領域において優れており、これらの特性はブタクサと他植物との競争に有利に作用し、ヨーロッパへの侵入に成功をもたらしていると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによる胚軸伸長の制御

2014-03-31 22:52:28 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone-Regulated Hypocotyl Elongation Is Dependent on Cryptochrome and Phytochrome Signaling Pathways in Arabidopsis
Jia et al.  Molecular Plant (2014) 7:528-540.
doi: 10.1093/mp/sst093

ストリゴラクトン(SL)は芽生え胚軸の伸長に関与していることが報告されており、シロイヌナズナ芽生えに合成ストリゴラクトンのGR24を与えると胚軸の伸長が阻害される。中国 上海交通大学のYang らは、ストリゴラクトンによる胚軸伸長制御について詳細な解析を行なった。明所で発芽させたシロイヌナズナ芽生えは、培地に添加したGR24の濃度に応じて胚軸の伸長が阻害されたが、暗所で発芽させた芽生えでは胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。SL非感受性のmax2 変異体では明所育成芽生えのGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。したがって、GR24による胚軸伸長阻害は、光とMAX2 の両方に依存していることが示唆される。光は胚軸伸長を阻害し、これには青色光受容体クリプトクロムと赤/遠赤色光受容体のフィトクロムによるシグナル伝達が関与している。芽生えに照射する青色光の強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、cry1 cry2 二重変異体では照射する青色光の強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。また、光シグナル伝達に関与するbZIP型転写因子HY5の機能喪失変異体hy5 も青色光照射量を高めてもGR24による胚軸伸長阻害がわずかしか起こらなかった。よって、青色光下でのSLによる胚軸伸長阻害はクリプトクロムが関与していることが死される。赤色光においても光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyB 変異体では赤色光強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は見られなかった。同様に遠赤色光の光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyA 変異体はGR24非感受性であった。さらに、hy5 変異体も赤色光や遠赤色光照射によってGR24応答性が低下した。したがって、SLによる胚軸伸長阻害は赤色光下ではphyBに、遠赤色光下ではphyAに依存していることが示唆される。CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)はクリプトクロムやフィトクロムと直接相互作用をして光シグナル伝達を負に制御している。また、フィトクロム相互作用因子(PIF)は光形態形成の負の制御因子であることが知られている。cop1 変異体やpif1 pif3 pif4 pif5 四重(pifq )変異体の暗所育成芽生えはGR24による胚軸伸長阻害を起こすことから、COP1とPIFはSLによる胚軸伸長阻害を負に制御していると考えられる。COP1は、胚軸伸長を負に制御しているHY5をユビキチン化して26Sプロテアソーム経路による分解へ導く。cop1 変異体が暗所においてGR24に対する感受性が高くなることと、HY5との関係を明らかにするために、cop1 hy5 二重変異体のGR24応答性を調査したところ、この変異体はcop1 単独変異体と比較するとGR24応答性が大きく低下していることがわかった。また、cop1 max2 二重変異体もGR24応答性が低下していた。これらのことから、SLによる胚軸伸長阻害の暗所でのCOP1による抑制はHY5やMAX2を介してなされていることが示唆される。pifq hy5 五重変異体暗所育成芽生えは、pifq 変異体と比較すると程度は幾分劣るがGR24によって胚軸伸長が阻害された。よって、SLによる暗所での胚軸伸長阻害のPIFによる抑制はHY5を介してなされているのではなく、別の経路が存在するものと思われる。GR24は、明所においても暗所においてもHY5 の発現を促進しており、max2 変異体ではHY5 の発現はGR24による影響を受けなかった。暗所育成cop1 変異体はGR24処理によってHY5 発現が誘導されたが、cop1 max2 二重変異体ではHY5 の発現誘導は起こらなかった。よって、MAX2 を介したSLシグナルは光条件に関係なくHY5 の発現を正に制御していると考えられる。GR24処理は、明所でのHY5タンパク質の蓄積を促進したが、暗所では蓄積が見られなかった。また、max2 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質の蓄積は見られなかった。cop1 変異体やpifq 変異体は暗所においてGR24に対する感受性が高くなることから、これら変異体のHY5タンパク質の蓄積を見たところ、HY5タンパク質の蓄積はcop1 変異体ではGR24処理によって高まるが、cop1 max2 二重変異体ではそのような蓄積は起こらないこと、pifq 変異体ではGR24処理に関係なくHY5タンパク質の蓄積が起こらないことがわかった。このことからも、暗所におけるpifq 変異体のGR24応答性の増加にHY5は関与していないと思われる。GR24によるHY5タンパク質の蓄積は、青色、赤色、遠赤色の何れの光条件においても見られるが、青色光下でのcry1 cry2 変異体、赤色光下でのphyB 変異体ではGR24によるHY5タンパク質の蓄積が見られず、phyA 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質が殆ど検出されなかった。したがって、MAX2を介したSLシグナルによるHY5タンパク質の蓄積促進は、光およびクリプトクロム、フィトクロムといった光受容体に依存したものであることが示唆される。以上の結果から、ストリゴラクトンによる胚軸伸長の阻害には、クリプトクロム、フィトクロム、COP1、HY5、PIFといった光シグナル伝達の因子が関与していると考えられる。

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