Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)オーキシン結合タンパク質1(ABP1)によるオーキシンシグナルの制御

2013-11-15 22:46:12 | 読んだ論文備忘録

Auxin-Binding Protein 1 is a negative regulator of the  SCFTIR1/AFB pathway
Tromas et al.  Nature Communications (2013) 4:2496
DOI:10.1038/ncomms3496

オーキシンは2種類の異なる受容体、transport inhibitor response 1(TIR1)/auxin-related F-box proteins(AFB)およびオーキシン結合タンパク質 1(ABP1)によって受容される。TIR1/AFBはSCF型ユビキチンリガーゼのサブユニットであり、転写抑制因子auxin/indole-3-acetic acid(AUX/IAA)のユビキチンに依存する分解を促進してオーキシンシグナル伝達を調節している。ABP1は様々な成長過程を制御しており、オーキシン応答遺伝子の発現にも関与しているが、その作用機作やTIR1/ABF-AUX/IAAによるオーキシンシグナル伝達との関係は明らかとなっていない。フランス国立科学研究センター(CNRS)植物科学研究所(ISV)Perrot-Rechenmann らは、ABP1に対するモノクローナル抗体を発現することによってABP1がノックダウンされたシロイヌナズナ(SS12K9)にTIR1 /ABF の機能喪失変異を導入して両者の関係を解析した。SS12K9系統の芽生えは根の成長が抑制される表現型を示す。この系統にTIR1 /ABF の単独変異(tir1 )を導入してもSS12K9の表現型が維持されるが、tir1 afb3afb2 afb3 といった二重変異を導入するとSS12K9の表現型が弱まり、tir1 afb2 二重変異やtir1 abf2 abf3 三重変異を導入するとABP1のノックダウンによる表現型が打ち消され、tir1 afb2 二重変異体やtir1 abf2 abf3 三重変異体において見られる伸長した主根が波打つ表現型が現れた。したがって、TIR1 /AFBABP1 よりも上位にであると考えられる。ABP1のノックダウンはTIR1ABF1 の転写産物量やTIR1タンパク質量に変化を起こさないことから、TIR1 /AFB の発現はABP1に依存していないと考えられる。AUX/IAAタンパク質のAXR3(IAA17)にGUSを付加した融合タンパク質を用いた実験から、SS13K9系統はAXR3-GUSの分解が促進され、この分解はプロテアソーム阻害剤MG132の添加によって抑制されることがわかった。よって、ABP1はAUX/IAAの分解に対して負の制御因子として機能していると考えられる。tir1 abf2 abf3 三重変異体でABP1をノックダウンした場合はAXR3-GUSが蓄積することから、SS12K9の根の表現型がtir /abf 変異によって回復する現象はAUX/IAAの安定性と関連していることが示唆される。よって、ABP1はAUX/IAAの安定性を高めることでオーキシン応答を抑制し、ABP1を介した経路は、AUX/IAAの安定性に対してTIR1/ABF-AUX/IAA経路と拮抗的に作用して植物の成長を制御していると考えられる。ABP1がSCF型ユビキチンリガーゼに影響することでAUX/IAAの安定化をもたらしているかを、SCFの骨格タンパク質であるCULLIN1(CUL1)へのRELATED TO UBIQUITIN(RUB)の付加を指標として調査したが、ABP1のノックダウンはCUL1へのRUB付加に変化をもたらさなかった。また、TIR1/ABF-AUX/IAA経路と同様に、ユビキチン-プロテアソーム系によってシグナル伝達を行なっているジャスモン酸受容体COI1によるJAZタンパク質の分解に対してABP1は影響を及ぼさなかった。よって、ABP1のノックダウンはAUX/IAAの分解にのみ影響していると思われる。しかしながら、ジベレリンによるDELLAタンパク質(RGA)分解誘導はABP1のノックダウンによって遅延した。このことは、ジベレリンによって誘導されるRGAの分解がオーキシンの減少によって遅延するという過去知見と関連があるように思われる。ABP1をノックダウンした植物の根は、細胞が伸長し、根毛や側根が減少しており、オーキシン含量が低下したような表現型を示すが、内生遊離IAA含量に変化は見られなかった。また、ABP1ノックダウン植物の根にオーキシン処理をしても細胞伸長や根毛伸長が起こらず、オーキシン耐性を示した。ABP1のノックダウンはエンドサイトーシスの阻害を引き起こすが、オーキシン排出タンパク質PINの細胞内での極性局在やオーキシン輸送に変化は見られなかった。したがって、ABP1のノックダウンによるAUX/IAAの分解促進はオーキシン含量が増加したことによって引き起こされたのではないと考えられる。イカルガマイシンやチルホスチンA23といったエンドサイトーシスの阻害剤を処理するとAXR3-GUSの分解が抑制され、これはPINタンパク質のリサイクルが阻害されたために細胞内のオーキシン含量が低下したことによると考えられる。よって、ABP1のノックダウンによるAUX/IAAの分解促進はエンドサイトーシスの阻害によって起こったのではなく、根の形態変化はエンドサイトーシスやPINタンパク質のリサイクリングとは関連していない。以上の結果から、ABP1は何らかの形でTIR1/AFBとAUX/IAAとの相互作用に関係してAUX/IAAを安定化させ、オーキシンシグナル伝達を制御していると考えられる。

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論文)光条件よる分枝成長制御におけるアブシジン酸の関与

2013-11-12 05:59:02 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Regulates Axillary Bud Outgrowth Responses to the Ratio of Red to Far-Red Light
Reddy et al.  Plant Physiology (2013) 163:1047-1058.
doi:10.1104/pp.113.221895

分枝は様々な環境要因によって制御されている。光条件もその1つに含まれ、光合成光量子束密度(PPFD)や赤色/遠赤色光比(R:FR)は分枝に対して強い影響を及ぼす。R:FRが低下すると、植物は避陰反応(SAS)を示して分枝を抑制して主茎を伸長させる。米国 テキサスA&M大学Finlayson らは、シロイヌナズナを用いてR:FRによる分枝制御機構を解析した。植物体を低R:FR条件で育成した後に高R:FR条件に移すと、主茎の伸長と主茎から発生した分枝の成長が抑制される。ロゼットから形成された分枝は着位によって異なる成長変化を示し、一番上のロゼット芽(「芽 n」)はやや成長が鈍くなるが、低R:FR条件で成長が抑制されていた上から3番目のロゼット芽(「芽 n-2」)は伸長を始める。「芽 n-2」での遺伝子発現をマイクロアレイによって解析したところ、R:FRの上昇によって1402遺伝子の発現量が低下し、1255遺伝子の発現量が増加することがわかった。ロゼット芽の着位やR:FRの違いによって、アブシジン酸(ABA)の生合成、シグナル伝達、転写調節に関連する遺伝子の発現パターンに違いが見られ、ABA生合成の鍵酵素をコードするNINE-CIS-EPOXYCAROTENOID DIOXYGENASE3NCED3 )は、低R:FR条件で「芽 n-2」での発現量が高く、R:FRが高くなると発現量が低下していた。よって、高R:FR条件では「芽 n-2」のABA含量は低下しているものと思われる。ABAシグナル伝達に関与する遺伝子やABA応答に関与する転写因子遺伝子もNCED3 遺伝子と同様の発現量変化を示しており、「芽 n-2」では低R:FR条件ではABAシグナルが強く、高R:FR条件に移行すると低下すると考えられる。「芽 n」では、ABAによって正の制御を受ける遺伝子の多くは発現量自体が低く、光条件の変化による発現量変化も見られなかった。よって、この変化は「芽 n-2」に特異的なものであると考えられる。「芽 n-2」のABA含量は高R:FR条件に移行後に減少した。「芽 n」のABA含量は「芽 n-2」よりも低く、高R:FR条件移行後の減少は見られたが、減少量は少なかった。「芽 n」は高R:FR条件に移行するとインドール-3-酢酸(IAA)含量が低下したが、「芽 n-2」のIAA含量は「芽 n」よりも少なく、光条件の変化による含量の変化は起こらなかった。ABA生合成の変異体nced3-2aba deficient2-1aba2-1 )は、高R:FR条件による草丈の変化は野生型と同じように起こったが、「芽 n-2」の低R:FR条件での成長抑制が弱まっており、野生型よりも成長量が高く、高R:FR条件へ移行後の成長量の増加は見られなかった。よって、ABAは「芽 n-2」の成長を抑制していると考えられる。以上の結果から、アブシジン酸はR:FRに応答した分枝の成長制御において重要な役割を果たしており、芽の着位による成長パターンの違いにも関与していることが示唆される。

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論文)ストリゴラクトンによる節間伸長の制御

2013-11-10 10:22:53 | 読んだ論文備忘録

Strigolactones Stimulate Internode Elongation Independently of Gibberellins
de Saint Germain et al.  Plant Physiology (2013) 163:1012-1025.
doi:10.1104/pp.113.220541

エンドウのストリゴラクトン(SL)欠損変異体rms1 やSL非感受性変異体rms4 は、分枝が多くなる表現型を示すが、それに加えてわい化した表現型も示す。フランス Jean-Pierre Bourgin 研究所Rameau らは、rms1 変異体やrms4 変異体の腋芽を切除して節間長に変化が起こるかを調査したが、節間長に変化は見られないことを見出した。また、rms1 変異体の腋芽に合成SLのGR24処理をすると、腋芽の成長は阻害されるが、草丈の伸長は起こらなかった。したがって、SL関連変異体は単純に分枝が成長したことによってわい化したのではないと考えられ、SLは腋芽の成長阻害とは別に節間の伸長にも関与していることが示唆される。rms1 変異体、rms4 変異体を水耕栽培し、根からGR24を供給すると、rms1 変異体の節間はは伸長したが、rms4 変異体では節間伸長は見られなかった。また、野生型植物ではGR24添加水耕栽培による節間の更なる伸長は起こらなかった。rms1 変異体の茎頂部にジベレリン(GA)処理をすると節間の伸長が促進されたが、腋芽の成長が阻害される濃度の10倍量のGR24を茎頂に処理しても節間の伸長は起こらなかった。よって、GAとは異なり、GR24を茎頂に処理しても節間の伸長には効果を示さない。GA 3-オキシダーゼをコードするLEPsGA3ox )遺伝子の機能喪失変異体le-1 は、節間が野生型よりも71%短くなり、le-1 rms1 二重変異体の節間はrms1 変異体よりも69%短くなった。また、rms1 変異体の節間は野生型よりも23%短く、le-1 rms1 二重変異体の節間はle-1 変異体よりも17%短くなった。したがって、節間伸長におけるSLの効果はGAほどは強くないが、両者はお互いとは関係なく節間伸長を制御していると考えられる。le-1 rms1 二重変異体の節間はそれぞれも単独変異体よりも短いことから、SLとGAは節間伸長に対して独立して相加的に作用することが示唆される。le-1 rms1 二重変異体は、それそれの単独変異体よりも分枝数や分枝の成長量が増加していた。よって、SLとGAは独立して分枝制御を行なっていると考えられる。rms1 変異体の節間は、細胞数が減少しており、細胞の長さに関しては変化が見られなかった。したがって、SLは細胞分裂に影響を及ぼすことで節間伸長を促進していると考えられる。rms1 変異体の内生GA量は野生型と同等であり、GR24処理した野生型植物においてGA生合成酵素遺伝(PsGA20ox1PsGA3ox1LE ])やGA異化酵素遺伝子(PsGA2ox1PsGA2ox2 )の発現量に変化は見られなかった。したがって、rms 変異体でのわい化した表現型は、GA量の低下によるものではなく、SL処理による節間伸長はGA生合成とは関連していない。エンドウのDELLAタンパク質をコードしている遺伝子が機能喪失したla cry-s 二重変異体は、節間が非常に長くなる表現型を示すが、rms1 変異が加わると節間が短くなった。よって、SLによる節間伸長制御にはDELLAタンパク質は関与していないと考えられる。シロイヌナズナを用いた実験から、DELLAタンパク質はGR24処理をしても分解されないことが確認されたことから、SLはDELLAを介したGAシグナル伝達に関与していないと考えられる。野生型植物、rms1 変異体、rms4 変異体の托葉にGA処理をすると、その添加量に応じて節間が伸長するが、野生型植物と変異体との節間長の差は縮まることはなかった。以上の結果から、ストリゴラクトンはジベレリンとは独立して節間伸長を制御していると考えられる。

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論文)コシヒカリの日長応答性が低い理由

2013-11-04 14:16:23 | 読んだ論文備忘録

Hd16, a gene for casein kinase I, is involved in the control of rice flowering time by modulating the day-length response
Hori et al.  The Plant Journal (2013) 76:36-46.
doi: 10.1111/tpj.12268

ジャポニカイネ品種の日本晴とコシヒカリは、出穂時期や日長に対する花成誘導の応答性が異なっており、長日条件において日本晴はコシヒカリよりも出穂時期が遅い。よって、日本晴はコシヒカリよりも日長感応性が高いといえる。QTL解析や準同質遺伝子系統(NIL)を用いた解析によって、日本晴とコシヒカリの出穂時期の違いはHd16 遺伝子が関与してることが明らかとなっている。(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センターの矢野らは、日本晴とコシヒカリのHd16 ゲノム遺伝子配列を比較し、カゼインキナーゼI(CKI)をコードするOs03g0793500の第10エクソンに非同義一塩基多型(SNP)があることを見出した。日本晴ではグアニンであるところがコシヒカリではアデニンとなっており、このことによって日本晴でAlaであるアミノ酸がコシヒカリではThrとなっていた。このアミノ酸置換は、CKIの触媒活性ドメインの近傍にあり、他生物のCKIの同じ位置のアミノ酸残基は全てAlaで、コシヒカリのみがThrとなっていた。よって、日本晴Hd16 が先祖型で、コシヒカリHd16 は変異型であると考えられる。Os03g0793500は、Early flowering 1EL1 )として報告されており、ジベレリンを介した花成誘導経路に関連しているとされている。CKIをコードする日本晴のゲノム断片を導入したコシヒカリは、対照に比べて、短日条件での出穂が早くなり、長日条件での出穂が遅くなった。Hd16 の発現をRNAiで抑制した日本晴は、短日条件での出穂が遅くなり、長日条件での出穂が早くなった。よって、Hd16 遺伝子およびこの遺伝子がコードするCKIタンパク質は、日長による花成誘導に関与していることが示唆される。Hd16 の転写産物は、全ての組織において全ての成長ステージで観察され、成長後期の葉身で発現量が増加する傾向が見られた。Hd16 プロモーターでGUSを発現させると、葉の維管束やシュートや根の先端部が染色された。コシヒカリHd16 遺伝子に見られるSNPはジャポニカ品種にのみ見出され、恐らく、古い日本稲品種である「森多早生」がSNPの起源であると思われる。イネにおいて花成時期を制御する他の遺伝子(Hd1Ghd7DHT8Hd2 )とHd16 を組合わせたNILについて出穂時期を調査したところ、Hd16 による長日条件での出穂遅延には、これらの遺伝子の機能が必要であることがわかった。Hd16 による花成制御遺伝子の発現制御を定量PCRによって調査したところ、Hd16 は長日条件においてEhd1Hd3aRFT1 の転写を負に制御していることがわかった。CKIは哺乳類において概日時計の調節に関与していることが知られているが、Hd16 は時計機能には関与していなかった。日本晴型Hd16は一般的なCKIの基質であるホスビチンをリン酸化したが、コシヒカリ型Hd16はリン酸化活性が弱く、自己リン酸化機能も低下していた。Ghd7Hd1Hd16 による転写制御の変化が明確に見られなかったが、Ghd7タンパク質は日本晴型Hd16によってリン酸化され、Hd1タンパク質はリン酸化されないことがわかった。したがって、Hd16はGhd7をリン酸化し、リン酸化されたGhd7が下流遺伝子の転写を低下させることで出穂遅延を起こしていると考えられる。酵母two-hybridアッセイから、日本晴型Hd16はGhd7と相互作用をし、コシヒカリ型Hd16もGhd7と相互作用をしたが、日本晴型Hd16よりも弱かった。以上の結果から、Hd16は長日条件下で花成抑制因子として機能するGhd7を直接リン酸化してイネの出穂を制御していると考えられる。


農業生物資源研究所のプレスリリース

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論文)植食性昆虫の共生者による植物防御応答の制御

2013-10-31 05:23:16 | 読んだ論文備忘録

Herbivore exploits orally secreted bacteria to suppress plant defenses
Chung et al.  PNAS (2013) 110:15728-15733.
doi:10.1073/pnas.1308867110

植食性昆虫の多くは微生物の共生者を宿しており、このことによって栄養物やビタミン類を得たり、捕食者や寄生者に対する防御の役割を担わせたりしている。さらに、この共生は植物と昆虫の間の相互作用にも関係している。米国 ペンシルバニア州立大学Felton らは、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata )の幼虫が摂食したトマトの葉の食害部には、予め抗生物質の入った人工飼料を与えて育成したコトラドハムシ幼虫による食害部よりも多くの微生物が付着していることを見出した。したがって、コロラドハムシ幼虫は口腔分泌物(OS)に共生している微生物を植物に付着させていることが示唆される。予め幼虫の食害を受けた葉を摂食した一齢幼虫は、抗生物質処理をした幼虫による食害を受けた葉を摂食させた一齢幼虫よりも体重が増加した。無処理幼虫の食害を受けた葉のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性は、抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも低くなっていた。無処理幼虫の食害を受けた葉は、ジャスモン酸(JA)よって誘導されるシステインプロテアーゼインヒビター(CysPI )やポリフェノールオキシダーゼF/B(PPOF/B )の発現量が抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも低く、逆に、サリチル酸(SA)処理によって誘導されるpathogenesis-related 1(PR-1P4 ))の発現量が高くなっていた。機械的に傷害を与えたところに無処理幼虫のOSを処理した葉のPPO活性は、傷害部に水処理もしくは抗生物質処理幼虫のOSを処理した葉よりも低く、抗生物質処理幼虫のOS処理と水処理でPPO活性に差は見られなかった。また、傷害部を抗生物質処理しても遺伝子発現やPPO活性に変化は見られなかった。これらの結果から、コロラドハムシ幼虫のOSに含まれる微生物は植物の虫害防御を抑制していることが示唆される。無処理幼虫の食害を受けた葉は、抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも、cis-JA含量が低く、SA含量が高くなっていた。SA欠損NahG 変異体は、無処理幼虫の食害を受けても防御遺伝子の発現抑制やPPO活性の低下が起こらなかった。したがって、JAシグナルとSAシグナルとの間の負のクロストークが防御応答の抑制に関与していると考えられる。コロラドハムシのOSに含まれる真菌類(カビ)と細菌類(バクテリア)のどちらが植物の防御応答を抑制しているかを確かめるために、抗バクテリア剤や抗カビ剤をを与えた幼虫の食害を受けた葉のPPO活性を見たところ、無処理幼虫や抗カビ剤を与えた幼虫の食害を受けた葉は、抗バクテリア剤を与えた幼虫や抗カビ剤と抗バクテリア剤を同時に与えた幼虫の食害を受けた葉よりもPPO活性が低下していた。したがって、JAに応答した防御応答の抑制には、OSに含まれる細菌が関与していると考えられる。無処理幼虫のOSからは22種類の細菌が検出され、このうち3種類はPPO活性を抑制させた。この3種類の細菌は、ステノトロホモナス属、シュードモナス属、 エンテロバクター属の菌であり、PPO活性の抑制を起こさない菌は、ラオウルテラ属の一種、シュードモナス属の一種、腸内細菌科の菌であった。PPO活性を抑制する細菌による防御応答抑制は、一定の閾値を越えると菌量に応じて抑制効果を示したが、抑制効果を示さない細菌は葉へ処理する菌量を高めてもPPO活性の低下を起こさなかった。PPO活性を抑制するシュードモナス属菌を処理した傷害葉は、CysPIPPOF の発現量が無処理傷害葉よりも低く、PR-1P4 )の発現量は高くなっていた。PPO活性を抑制する細菌を混合して処理しても、相助作用、拮抗作用、相加作用は見られず、全ての組合せでPPO活性の低下が起こった。したがって、これらの細菌のうち1種類でもOSに含まれていれば防御応答の抑制が起こると考えられる。防御応答を抑制する細菌は抗生物質処理によって増殖が抑制され、無処理幼虫内のシュードモナス属の菌量は抗生物質処理幼虫よりも多くなっていた。また、抗生物質処理した幼虫にPPO活性を抑制する細菌を再感染させて摂食させると、防御応答の抑制が起こった。よって、PPO活性を抑制する細菌は、OSを介して葉の傷害部に供給されると考えられる。PPO活性を抑制するシュードモナス菌より精製したフラジェリンを傷害部に処理するとPPO活性の低下が起こることから、防御応答の抑制にはフラジェリンが関与していると考えられる。以上の結果から、コロラドハムシ幼虫の口腔分泌部内に共生している微生物は、摂食の際に植物組織に分泌され、JAシグナルとSAシグナルの負のクロストークを引き起こして防御応答の誘導を抑制していることが示唆され、コロラドハムシ幼虫は植物のシグナル伝達経路を操作して自らの成長にとって有利な状況を作り出していると考えられる。

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論文)MYC2/MYC3/MYC4によるグルコシノレート生合成の制御

2013-10-28 21:23:13 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis Basic Helix-Loop-Helix Transcription Factors MYC2,MYC3, andMYC4 Regulate Glucosinolate Biosynthesis, Insect Performance, and Feeding Behavior
Schweizer et al.  Plant Cell (2013) 25:3117-3132.
doi:10.1105/tpc.113.115139

bHLH型転写因子のMYC2/MYC3/MYC4は、ジャスモン酸(JA)シグナル伝達の正の制御因子として相加的に作用している。JAは植食性昆虫に対する防御応答に関与しており、シロイヌナズナのmyc234 三重変異体やcoi1-1 変異体といったJAシグナル伝達が欠損した変異体は、ゼネラリストであるコットンリーフワーム(Spodoptera littoralis )による食害を野生型植物よりも強く受ける。スイス ローザンヌ大学Reymond らは、トランスクリプトーム解析から、myc234 変異体では84遺伝子の発現量が野生型よりも低いことを見出し、両者で発現量の差が大きい50遺伝子のうち、27遺伝子は昆虫に対する防御物質であるグルコシノレート(GS)の生合成経路に関与するものであった。これらの遺伝子の多くは、myc234 変異体、coi1-1 変異体では植食性昆虫の食害による発現誘導が起こらないが、定常状態での発現量はcoi1-1 変異体ではmyc234 変異体よりも高くなっていた。したがって、JAは植食性昆虫に応答してGS遺伝子の発現を誘導しているが、MYC2/3/4はGS遺伝子の定常状態での発現制御する役割も担っていることが示唆される。GS生合成酵素をコードするBCTA4CYP79B3SUR1 の発現量は、myc 単独変異体では野生型と同等であったが、myc234 変異体では減少していた。また、MYC2 過剰発現個体ではこれらの遺伝子の発現が高くなっていた。myc234 変異体では、cyp79B2 cyp79B3 myb28 myb29 四重変異体(quadGS )と同様にGSが殆ど検出されず、両者は植食性昆虫の食害を受けてもGSの増加は起こらなかった。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS蓄積における重要な因子であると考えられる。coi1-1 変異体のGS含量は野生型の83%あったが、植食性昆虫に応答したGS量の変化やGS生合成酵素遺伝子の誘導は見られなかった。したがって、JAシグナルは植食性昆虫によって誘導されるGS蓄積に必要であるが、恒常的なGS蓄積はCOI1とは独立し、MYC2/MYC3/MYC4に依存していることが示唆される。myc234 変異体やquadGS 変異体を摂食したコットンリーフワーム幼虫は野生型植物を摂食した場合よりも体重が増加した。coi1-1 変異体はGSを含有しているが、摂食したコットンリーフワーム幼虫はmyc234 変異体やquadGS 変異体を摂食した場合と同程度に体重が増加した。一方、スペシャリストのオオモンシロチョウ(Pieris brassicae )の幼虫は、野生型、myc234 変異体、coi1-1 変異体では同じように成長したが、quadGS 変異体では成長量が低下した。GSはゼネラリストに対しては防虫効果を示すが、スペシャリストに対しては摂食や産卵を誘引する効果があることが知られている。二者選択実験から、ゼネラリストのコットンリーフワームはmyc234 変異体、quadGS 変異体、coi1-1 変異体を野生型植物よりも好むが、スペシャリストのオオモンシロチョウは逆のパターンを示し、myc234 変異体やquadGS 変異体よりも野生型植物を好んだ。また、オオモンシロチョウはmyc234 変異体とquadGS 変異体の間で好みの区別はなく、野生型植物とcoi1-1 変異体の間での差も見られなかった。さらに、オオモンシロチョウ成虫は野生型植物を選択して産卵し、myc234 変異体やquadGS 変異体には産卵しなかった。コットンリーフワーム幼虫は、野生型やcoi1-1 変異体のようにGSを含有する葉では葉身の内側を摂食し、myc234 変異体やquadGS 変異体の葉では周縁部の葉身を好んで摂食した。オオモンシロチョウ幼虫は、植物の遺伝子型に関係なく、葉の周縁部を摂食した。GS含量は中央脈や周縁部で高いことから、ゼネラリストはGS含量の高い組織を避けて摂食するが、GSが含まれていなければ周縁部を好むこと、スペシャリストはGSに適応し、GSによって摂食が誘引されるが、GS欠損個体であっても葉の周縁部を摂食し、葉の周縁部は昆虫が好む特別な特性を有していることが示唆される。myc234 変異体ではGS生合成酵素遺伝子の発現量が低下しているが、これらの遺伝子の発現を制御しているR2R3-MYB転写因子の発現量に変化は見られなかった。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS生合成をMYB 遺伝子の転写活性化を介して行っているのではないと考えられる。GS生合成を制御しているMYBタンパク質はJAシグナルを抑制するJAZタンパク質と相互作用を示さなかったが、MYC2/MYC3/MYC4タンパク質とは、MYCタンパク質がJAZタンパク質と相互作用をするJAZ相互作用ドメイン(JID)を介して相互作用をした。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS生合成を制御するMYBタンパク質と複合体を形成してGS生合成を制御いていることが推測される。GS生合成酵素をコードする遺伝子のプロモーター領域にはG-boxモチーフが含まれており、野生型とmyc234 変異体で発現量の異なる27のGS生合成酵素遺伝子のうち、14遺伝子のプロモーター領域にMYC2が結合することが確認された。よって、多くのGS生合成酵素遺伝子は、プロモーター領域のG-boxモチーフを介して、MYC2の直接のターゲットとなっている。以上の結果から、MYC2/MYC3/MYC4は恒常的および虫害に応答したグルコシノレート生合成において重要であることが示唆される。

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論文)オーキシンによる種子休眠・発芽の制御機構

2013-10-24 05:45:27 | 読んだ論文備忘録

Auxin controls seed dormancy through stimulation of abscisic acid signaling by inducing ARF-mediated ABI3 activation in Arabidopsis
Liu et al.  PNAS (2013) 110:15485-15490.
doi:10.1073/pnas.1304651110

種子の休眠と発芽は植物ホルモンによって制御されている。ジベレリンは休眠打破と発芽促進に関与しており、他にもブラシノステロイド、エチレン、サイトカイニンが発芽を促進する。アブシジン酸(ABA)は種子休眠の誘導、維持に関与しており、ABAシグナル伝達の主要な因子であるABSCISIC ACID INSENSITIVE 3(ABI3)が種子休眠と発芽阻害の主要な調節因子として機能している。最近の研究から、オーキシンも種子休眠に関与していることが示唆されているが、オーキシンが種子休眠に直接関与しているのか、どのような機構で関与しているのかは明らかとなっていない。中国科学院 上海生命科学研究院 植物生理生態研究所He らは、オーキシンのシグナル伝達に関与しているARF10ARF16ARF17 の発現を抑制するMIR160 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナの裂開前の長角果の新鮮含水種子は、野生型のものと比べて種子休眠が弱いことを見出した。よって、オーキシンシグナルは種子休眠において重要な役割を演じていることが推測される。また、オーキシンを過剰生産する形質転換体iaaM-OX では野生型よりも種子休眠が強くなっていた。さらに、野生型の新鮮含水種子にオーキシンを与えると、その濃度に応じて種子休眠が強くなった。しかし、4℃で4日間の層積処理を行なうと、オーキシン添加による種子休眠効果が見られなくなった。オーキシン生合成経路の鍵酵素であるYUCCA(YUC)ファミリーフラビンモノオキシゲナーゼのうち、種子発達過程ではYUC1YUC2YUC6 が発現しており、yuc1 yuc6 二重変異体の新鮮含水種子は野生型よりも休眠が弱くなっていた。オーキシン受容体TIR1/AFBの変異体tir1 afb2tir1 afb3 、TIR1/AFBの下流に位置してオーキシンシグナルの抑制因子として機能するIAA7/AXR2やIAA17/AXR3の変異体axr2-1axr3-1 は、野生型よりも種子休眠が弱くなっていた。MIR160 過剰発現個体において発現が抑制されているARF10ARF16 の変異体arf10 arf16 も種子休眠が弱くなっており、MIR160 耐性型のARF10ARF16mARF10mARF16 )を発現させた形質転換体は種子休眠が強くなっていた。したがって、TIR1/AFBを介したオーキシンシグナル伝達とその下流に位置するARF10、ARF16は種子休眠に関与していることが示唆される。ABAシグナル伝達に関与しているABI4やABI5の機能喪失変異体のabi4abi5-1 はABAによる種子発芽阻害に対して非感受性となるが、種子休眠には変化が見られない。よって、ABAによる種子休眠と発芽阻害はシグナル伝達経路が異なっていると考えられる。そこで、ABAによる種子発芽阻害におけるオーキシンの役割を調査した。ABAによる種子発芽阻害は、オーキシンを同時に添加することによって強まり、両者は相助的に作用していた。また、ABA存在下で発芽阻害を起こす濃度のIAAを、IAA単独で与えても発芽は阻害されなかった。よって、オーキシンによる発芽阻害はABAに依存していることが示唆される。yuc1 yuc6 二重変異体種子は、ABA存在下で野生型よりも僅かに早く発芽し、tir1 afb1 afb2 afb3 四重変異体は発芽におけるABA感受性が低下していた。したがって、オーキシンシグナルの欠損とABAに対する感受性の低下は正の相関がある。さらに、axr2-1 変異体、axr3-1 変異体、arf10 変異体、arf16 変異体の種子もABAに対する感受性が野生型よりも低く、arf10 arf16 二重変異体種子はABA感受性が著しく低下していた。これらの結果から、種子発芽におけるABAの作用は、TIR1/AFB-AUX/IAA-ARFによるオーキシンシグナル伝達が大きく関与していることが示唆される。ABAの作用に対するオーキシンの関与としては、ABA生合成の促進とABA応答の活性化が考えられる。iaaM-OXtir1 afb1 afb2 afb3 変異体、arf10 arf16 変異体の葉の蒸散速度は野生型と同等であることから、IAAには葉のABA量を高める作用は無いと考えられる。種子の休眠や発芽に対するIAAの効果は、ABA生合成欠損変異体aba2-1 においても見られることから、オーキシンはABA応答に作用することで種子の休眠・発芽の阻害を行なっていると考えられる。ABI3、ABI4、ABI5は種子特異的なABAシグナル伝達因子として機能しているが、ABI3のみがABAによる種子休眠と発芽阻害の両方に作用している。ABI3 転写産物量は発芽前の種子で高く、発芽後は急速に減少するが、iaaM-OXmARF10 の種子では、浸漬後も高いABI3 転写産物量が維持され、arf10 arf16 変異体では野生型よりも早くABI3 転写産物が減少した。また、浸漬中にIAAを添加すると、ABI3タンパク質の安定性に変化は見られなかったが、ABI3 転写産物量は増加した。したがって、オーキシンとARF10/16は、浸漬後のABI3 発現の維持に関与していると考えられる。abi3-1 変異体ではIAAとABAによる相助的発芽阻害が見られなくなり、iaaM-OXmARF10 種子の強い種子休眠やABA高感受性はabi3 変異が付与されることによって弱まった。よって、オーキシンによる種子休眠の強化やABAによる発芽阻害は、ABI3によって制御されていると考えられる。ABI3 遺伝子のプロモーター領域にはオーキシン応答エレメント(AuxRE)があるが、この領域に変異の入ったプロモーターでABI3 を発現するコンストラクト(mABI3:ABI3 )を導入したabi3-1 変異体は、正常なABI3 プロモーター制御下でABI3 を発現するコンストラクトを導入した場合と同様に、abi3-1 変異によるABA非感受性を相補した。したがって、ABI3 遺伝子プロモーター領域のAuxREは、種子発芽の際のABI3 の発現制御には関与していないと考えられる。また、酵母one-hybridアッセイ、ABI3:LUC を用いた発現試験、クロマチン免疫沈降試験から、ARF10、ARF16はABI3 プロモーター領域に直接結合しないことがわかった。以上の結果から、オーキシンはABI3 の発現状態を維持してABAの作用を強めることで種子休眠や種子発芽阻害を引き起こしていると考えられる。

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論文)根のジャスモン酸シグナル伝達におけるNINJAの役割

2013-10-21 22:35:02 | 読んだ論文備忘録

Role of NINJA in root jasmonate signaling
Acosta et al.  PNAS (2013) 110:15473-15478.
doi:10.1073/pnas.1307910110

植物に機械的な傷害を与えるとJASMONATE ZIM DOMAIN 10JAZ10 )のようなジャスモン酸(JA)応答遺伝子が迅速に強く発現誘導される。スイス ローザンヌ大学Farmer らは、JAZ10 プロモーター制御下で分泌性GUS(GUSPlus)を発現させるコンストラクト(JGP )を導入したシロイヌナズナを用いて、JAを介した傷害シグナル伝達機構の解析を行なった。芽生えの子葉の一方に穴を開け、2時間後にGUS染色を行なうと、強いJGP の活性化が傷害を与えた子葉だけでなく、シュート、胚軸、根においても観察される。しかし、JA欠損変異体aosJGP を導入した場合にはJGP 活性は見られなかった。そこで、JGP を導入した植物体をEMS処理して得られた集団からJGP 活性が変化している変異体の選抜を行なった。子葉に傷害を与えた後のJGP 活性が低下している変異体には、JA受容体をコードするCOI1 の変異体やJA生合成酵素をコードするOXOPHYTODIENOATE-REDUCTASE 3OPR3 )の変異体が含まれていた。変異体61E系統は、地上部の器官では比較的正常なJGP 活性を示すが、根では活性が殆ど現れなかった。61Eは、JA-Ile生成を触媒するGH3ファミリータンパク質をコードするJASMONATE RESISTANT 1JAR1 )の変異体であった。jar1 変異体の子葉に傷害を与えると、JAZ10 の発現は誘導されるが、野生型よりも低く、根では殆ど発現が見られなかった。これは傷害処理からGUS染色までの時間を延長(8時間)しても変わりはなく、jar1 変異体芽生えをメチルジャスモン酸(MeJA)処理をしても根のJGP 活性化は起こらなかった。したがって、jar1 変異体では胚軸と根を境に感受性組織と非感受性組織の明確な区切りが存在していると考えられる。一方、子葉に傷害を与えたときのJGP 活性は正常だが、根と胚軸では子葉に傷害を与えなくても恒常的にJGP 活性を示す変異体が3系統得られた。これらの変異体は、JAシグナルを負に制御するリプレッサー複合体の因子をコードするNovel Interactor of JAZNINJA )の異常によるものであり、これらの変異体をninja-1ninja-2ninja-3 と命名した。ninja 変異体では、傷害処理1時間後のJAZ10 転写産物量が野生型よりも多く、根は地上部よりも転写産物量が多くなっていた。ninja-1 aos 二重変異体は、ninja-1 単独変異体と同様に、根と胚軸での恒常的なJGP 活性が見られた。よって、このJGP 活性化にJAは関与していない。しかし、ninja-1 aos 二重変異体は、子葉に傷害を与えても地上部でのJGP 活性化が起こらなかった。3つのninja 変異体はNINJAタンパク質のC末端側にあるJAZタンパク質との相互作用部位が欠けており、JAZタンパク質によるJAシグナルの抑制機能が作用していないと考えられる。野生型植物でJAZ10.3JAZ10.4 を過剰発現させるとMeJA処理による根の伸長阻害が起こらなく、JA非感受性を示すが、JAZ10.3JAZ10.4 を発現させたninja 変異体はMeJAに対して感受性を示した。したがって、ninja 変異はJAZ10.3やJAZ10.4によるJAシグナル抑制効果を減じさせていると考えられる。JAシグナル伝達において、bHLH型転写因子のMYC2が活性化因子として機能しているが、ninja 変異体にmyc2 変異(jin1-7 )を付与しても胚軸や根での恒常的なJAZ10 の発現は見られた。ninja 変異体芽生えは野生型芽生えよりも根が短く、JAによる根の伸長阻害と類似した表現型を示し、この表現型は、ninja aos 変異体やninja jin1-7 変異体でも見られた。したがって、NINJAの機能喪失は、根の成長抑制をJAのない状態でも引き押し、この過程にMYC2は関与していないことが示唆される。ninja 変異体での根の伸長抑制は、細胞伸長の抑制によるところが大きいことがわかった。以上の結果から、NINJAは根においてJAシグナルを抑制して正常な細胞伸長を引き起こしていることが示唆される。また、根と地上部組織では、JA生合成から転写活性まで、全てのレベルでJA経路の制御が異なっていると考えられる。

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論文)カリキン/ストリゴラクトンのシグナル伝達においてMAX2の下流で機能する因子

2013-10-17 05:55:16 | 読んだ論文備忘録

SUPPRESSOR OF MORE AXILLARY GROWTH2 1 Controls Seed Germination and Seedling Development in Arabidopsis
Stanga et al.  Plant Physiology (2013) 163:318-330.
doi:10.1104/pp.113.221259

煙から発見された非生物化学シグナル物質のカリキン(KAR)と内生の植物ホルモンのストリゴラクトン(SL)は、共にMORE AXILLARY GROWTH2 (MAX2 )を介してシグナル伝達を行なっている。しかしながら、MAX2よりも下流のシグナル伝達については明らかとなっていない。米国 ジョージア大学Nelson らは、MAX2 遺伝子がフレームシフトを起こしたmax2-8 変異体をEMS処理して得られた種子をKAR存在下で発芽させ、max2 変異が抑制されて種子休眠が浅くなった劣性の復帰突然変異体suppressor of max2 1smax1max2 を単離した。smax1 変異は、At5g57710遺伝子の第1エクソン内の塩基置換(C→T)により、Arg-292が未成熟終止コドンとなったものであることがわかった。max2 変異体は発芽率が低く、KAR処理やGR24処理に対して非感受性で発芽率の向上は見られないが、smax1 max2 変異体は野生型よりも発芽率が高くなっていた。また、smax1 変異は二次休眠を引き起こす高温条件下においてもmax2 変異による発芽率低下を回復させた。max2 変異体の芽生えは、光に対する応答正が低下し、胚軸が長くなり、子葉が小さくなる。smax1 max2 変異体の芽生えの胚軸は野生型よりも短く、KAR処理をした野生型芽生えと同程度の長さとなった。smax1 max2 変異体は子葉も拡張して野生型芽生えと同等の表現型となった。max2 変異体の子葉は葉柄が伸長して上向き(下偏生長)となるが、smax1 max2 変異体ではこれらの形質も回復した。以上の結果から、smax1 変異はmax2 変異体の成長初期過程において見られる一連の表現型を抑制していると考えられる。KARやSL処理によって、D14-LIKE2DLK2 )、KAR-UP F-BOX1KUF1 )は発現誘導され、INDOLE-3-ACETIC ACID INDUCIBLE1IAA1 )は発現抑制されることが知られており、max2 変異体ではDLK2KUF1 の発現が野生型よりも低く、IAA1 の発現は高くなっている。smax1 max2 変異体ではDLK2IAA1 の転写産物量が野生型と同等になり、KUF1 の転写産物量は野生型よりも高くなっていた。よって、smax1 変異はmax2 変異によるマーカー遺伝子の発現に対する効果をも抑制しており、SMAX1はKAR/SLシグナル伝達においてMAX2の下流において作用していると考えられる。max2 変異体は側根数の増加、分枝数の増加、一次花序茎の伸長抑制といった表現型を示すが、smax1 max2 変異体のこれらの表現型はmax2 変異体と同等であった。また、smax1 単独変異体の表現型は野生型に類似していた。max2 変異体は葉の老化が遅延するが、smax1 max2 変異体においても同様の遅延が見られた。したがって、SMAX1はMAX2の関与している種子発芽や芽生えの成長過程に関しては影響しているが、MAX2による全ての成長制御に関与している訳ではないことが示唆される。SMAX1 は機能未知の8つの遺伝子からなるファミリーに属しており、他のファミリー遺伝子をSMAX1-LIKE2SMXL2 )~SMXL8 と命名した。これらのファミリーと最も類似性の高い遺伝子は細胞質ヒートショックタンパク質100/カゼイン分解ペプチダーゼB(Hsp100/ClpB)をコードするHEAT SHOCK PROTEIN 101AtHSP101 /HOT1 )であるが、SMAX1にClpB様のシャペロン活性があるかは不明である。SMAX1 転写産物は乾燥種子に多く、他のSMXL 転写産物よりも多くなっていた。SMAX1 は、芽生えとロゼット葉では他のSMXL よりも発現量が高いが、老化葉ではSMAX1SMXL7 の発現量が高く、根ではSMXL3 、腋芽ではSMXL7 の発現が高くなっていた。SMXL 遺伝子がSMAX1 と同じような機能を持っているのであれば、このような組織特異的な発現パターンはMAX2による成長制御と関連を反映している可能性がある。KAR/SLによるSMAX1 ファミリー遺伝子の発現量変化を見たところ、GR24処理によってSMXL2SMXL3SMXL6SMXL7SMXL8 の発現量が増加し、KAR処理ではSMXL2SMXL8 の発現量が増加した。また、max2 変異体ではSMAX1SMXL2 の発現量が減少していた。よって、SMAX1 ファミリー遺伝子の一部はMAX2を介した負のフィードック制御を受けているものと思われる。smax1 変異体の芽生えはKAR/SL処理した野生型植物と類似した表現型を示すが、KAR/SLに対する応答性は見られることから、SMAX1 ファミリー遺伝子は芽生えにおいて部分的な機能重複があるものと思われる。以上の結果から、SMAX1は、種子発芽や芽生えの成長において、MAX2の下流でKAR/SL応答の負の制御因子として機能していると考えられる。

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論文)ジャスモン酸応答を負に制御するbHLH型転写因子

2013-10-14 21:44:43 | 読んだ論文備忘録

Basic Helix-Loop-Helix Transcription Factors JASMONATE-ASSOCIATED MYC2-LIKE1 (JAM1), JAM2, and JAM3 Are Negative Regulators of Jasmonate Responses in Arabidopsis
Sasaki-Sekimoto et al.  Plant Physiology (2013) 163:291-304.
doi:10.1104/pp.113.220129

理化学研究所 植物科学研究センター白須らは、ジャスモン酸(JA)シグナル伝達に関与する新規転写因子を見出すために、シロイヌナズナの2220のJA応答遺伝子について共発現ネットワークを構築し、233遺伝子を発現パターンの特徴から11のグループにクラスター化した。このうち、JAや傷害に対して早くかつ強く応答する128の遺伝子が含まれるクラスター7にはMYC2 が含まれており、このクラスター内でMYC2タンパク質とアミノ酸レベルで30%の相同性があるbHLH型転写因子をコードするJASMONATE-ASSOCIATED MYC2-LIKE1JAM1 、At2g46510)について詳細な解析を行なった。シロイヌナズナの133のbHLH型転写因子のうち、MYC2とJAM1はグループIIIに含まれ、JAM1と小さなクレイドを形成する2つのホモログをJAM2(At1g01260)、JAM3(At4g16430)と命名した。芽生えをメチルジャスモン酸(MJ)処理するとJAM1JAM2 の発現量は増加したが、JAM3 の発現量は変化が見られなかった。JAM1JAM2JAM3 の発現量は、myc2 変異体やcoi1 変異体で減少していることから、JAM の発現はCOI1MYC2 によって制御されていると考えられる。JAM 遺伝子のノックアウト変異体について、MJ添加培地での芽生えの根の伸長を調査したところ、野生型と大きな差は見られなかった。そこで、交雑によって変異を集積したところ、jam1 jam2 jam3jam x3)三重変異体はMJ存在下で野生型よりも根が短くなり、jam1 jam2jam1 jam3jam2 jam3 の各二重変異体は野生型とjam x3変異体との中間の表現型を示した。この実験系においてmyc2 変異体芽生えの根は野生型よりも長くなるが、myc2 jam x3四重変異体ではmyc2 変異体の表現型が打ち消され、myc2 jam1 jam2 三重変異体やmyc2 jam1 jam3 三重変異体ではmyc2 変異体と同じ表現型を示した。これらの結果から、JAM1JAM2JAM3 は冗長的に作用し、JA応答においてMYC2 と拮抗していることが示唆される。jam 変異によるJA応答遺伝子の発現パターンの変化を見たところ、VSP2 遺伝子の発現がMJ処理したjam x3変異体において増加しており、この発現量増加はmyc2 変異が加わることによって打ち消された。PDF1.2 遺伝子の発現は、MJ処理したjam x3変異体と野生型で同程度であった。よって、JAMVSP2 の発現を負に制御し、PDF1.2 の発現には関与していないと考えられる。他のJAシグナルの下流に位置する遺伝子についてGeneChipを用いて網羅的に解析したところ、82プローブがMJ処理したjam x3変異体において野生型よりも発現量が増加しており、8プローブが発現量を減少させていた。したがって、90プローブに対応する97遺伝子がJAM の下流に位置するターゲット候補遺伝子であると考えられる。これらの候補遺伝子には、アレンオキシドシンターゼ(AOS )、Ja-Ile-12-ヒドロキシラーゼ(CYP94B3 )、JA カルボキシルメチルトランスフェラーゼ(JMT )、ヒドロキシルジャスモン酸スルフォトランスフェラーゼ(ST2A )をコードする遺伝子が含まれており、定量PCRを行なったところ、AOSCYP94B3JMTST2A の発現量がjam1 jam2 変異体やjam x3変異体において増加していた。したがって、JAM はMJ処理時にJA代謝に関与する遺伝子の発現を抑制していると考えられる。JA代謝に関与する遺伝子は葉に傷害を与えることによって発現量が増加するが、jam x3変異体は野生型よりも発現量が高く、myc2 変異体では低くなっていた。jam x3変異体にmyc2 変異が加わると、一部の遺伝子は発現量の増加が抑制された。したがって、JAM は、MYC2 とは逆に、JA代謝経路に関与する遺伝子の傷害による発現誘導を負に制御していると考えられる。全ての遺伝子型で傷害によりジャスモン酸類の蓄積が増加したが、jam x3変異体ではOPDA、JA、12-OH-JAの量が野生型よりも高くなっていた。myc2 変異体でのOPDAとJAの蓄積は野生型と同等であったが、myc2 jam x3変異体のOPDA、JA含量はmyc2 変異体よりも高くなっていた。したがって、JAM は傷害葉でのOPDA、JA、12-OH-JAの蓄積を負に制御している。MYC2は下流の遺伝子の発現をANAC019ERF1ORA59 といった転写因子をコードする遺伝子の発現を介して制御している。JAM によって発現が制御されている遺伝子の中には転写因子をコードしていると考えられるものが14個あり、その中にはANAC019ERF1 が含まれていた。MJ処理によるANAC019 の発現誘導は、jam1 jam2 変異体、jam x3変異体で高くなっており、myc2 jam1 jam2 変異体、myc2 jam x3変異体ではmyc2 変異体と同程度であった。したがって、JAMANAC019 の発現を負に制御していると考えられる。ERF1 のMJ処理による発現誘導は、jam1 jam2 変異体、jam x3変異体で野生型よりも高く、myc2 jam1 jam2 変異体、myc2 jam x3変異体でmyc2 変異体よりも高くなっていた。よって、JAMERF1 の発現を野生型においてもmyc2 変異体においても負に制御している。これらの結果から、JAM による下流遺伝子の発現制御にANAC019ERF1 が関与していると考えられる。この他にも、PAP1MYB47RAP2.6 、bHLH型転写因子をコードするAt1g10585がJAMによる下流遺伝子の発現制御に関与していると考えられる。このうち、PAP1 はアントシアニン生合成酵素遺伝子のDFR /TT3 を制御していることが知られており、jam x3変異体のアントシアニン含量は野生型よりも高くなっていた。アントシアニンの蓄積はショ糖処理によっても促進されるが、jam1 jam2 変異体やjam x3変異体をショ糖処理するとアントシアニン量がさらに高まることから、JAM はJAによるアントシアニン蓄積だけでなく、ショ糖による蓄積についても負に制御していると考えられる。以上の結果から、JAM はJAに応答する遺伝子の多くに対してMYC2 と拮抗的に作用して発現を負に制御していると考えられる。

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