Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)プロアントシアニジンによる種子発芽阻害

2012-10-02 05:13:19 | 読んだ論文備忘録

Proanthocyanidins Inhibit Seed Germination by Maintaining a High Level of Abscisic Acid in Arabidopsis thaliana
Jia et al.  Journal of Integrative Plant Biology (2012) 54:663-673.
doi: 10.1111/j.1744-7909.2012.01142.x

プロアントシアニジン(PA)は種子のフラボノイド生合成経路での主要産物である。PAの生物学的作用については様々な調査がなされており、シロイヌナズナ変異体の解析から種子休眠との関連が示されているが、詳細は明らかとなっていない。中国 香港中文大学Zhang らは、シロイヌナズナ種子をPAを含む培地で発芽させると、培地のPA含量が増加するにつれて発芽率が低下することを見出した。種皮を剥いだアブラナ種子を用いた実験においても、培地に含まれるPA量が増加すると幼根の伸長が抑制された。よって、PAの種子発芽阻害効果は幼根伸長の抑制が一部関与していると考えられる。種子を浸漬するとアブシジン酸(ABA)が徐々に減少していくが、PAを含んだ液に浸漬するとABA含量が増加した。よって、PA処理はABAの新規合成を誘導していることが示唆される。ABA含量は生合成と分解のバランスによって制御されている。そこで、発芽種子でのABA生合成酵素遺伝子NCED6NCED9 およびABA異化酵素遺伝子CYP707A2 の発現量を見たところ、PA処理した発現種子では水に浸漬した種子よりもABA生合成酵素遺伝子の発現量が高く、ABA異化酵素遺伝子の発現量には差が見られなかった。よって、PA処理によるABA蓄積量の増加はABA生合成の上昇によるものであると考えられる。ABA含量はPA処理12時間後においても高い状態を維持しているが、この時にはABA生合成酵素遺伝子の転写産物量は大きく減少していた。しかし、ABA異化遺伝子の転写産物量も減少していることから、PA処理12時間後において見られる高いABA蓄積量はABAの異化の低下によるものであると思われる。ABA生合成の阻害剤であるノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)もしくはABA異化の阻害剤であるジニコナゾールを用いてPAとABAとの関係を見たところ、NDGAはPAによる種子発芽阻害を打ち消し、ジニコナゾールとPAの同時処理は発芽阻害をさらに強めることがわかった。PA欠損変異体成熟種子のABA含量は野生型よりも少なく、PAは種子の成熟過程でのABA蓄積にも影響していることがわかった。以上の結果から、PAはABA生合成を促進することで種子発芽を阻害していると考えられる。

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論文)MEDIATOR25によるジャスモン酸応答遺伝子の発現制御機構

2012-09-30 18:53:27 | 読んだ論文備忘録

MEDIATOR25 Acts as an Integrative Hub for the Regulation of Jasmonate-Responsive Gene Expression in Arabidopsis
Cevik et al.  Plant Physiology (2012) 160:541-555.
doi:10.1104/pp.112.202697

シロイヌナズナPHYTOCHROME AND FLOWERING TIME1 遺伝子はメディエーター複合体のMEDIATOR25(MED25)サブユニットをコードしている。変異体の解析からMED25はジャスモン酸(JA)シグナル伝達に関与していることが示されており、JA関連の転写因子と相互作用をすると考えられる。英国 ウォーリック大学Çevik (現 セインズベリー研究所)らは、MED25とJAシグナル伝達関連転写因子との相互作用について解析を行なった。MED25タンパク質をN末端側のメディエーター結合に関与いているフォンヴィルブランド因子A(vWF-A)ドメインを含む領域とC末端側のアクティベーター相互作用ドメイン(ACID)を含む領域に分けて酵母two-hybrid法によってJA関連転写因子との相互作用を調査したところ、ACIDドメインが転写因子と相互作用をすることがわかった。ACIDドメインと相互作用をする転写因子には、APETALA2(AP2)/ETHYLENE RESPONSE FACTOR(ERF)転写因子グループIXのERF1、OCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS AP2/ERF59(ORA59)、TRANSCRIPTIONAL REGULATOR OF DEFENSE RESPONSE1(TDR1)/ERF98、EFR15、bHLH転写因子のMYC2、MYC3、MYC4といったJA関連および防御応答関連転写因子や、AP2/ERF転写因子グループIVに属し、乾燥や低温の応答するDEHYDRATION-RESPONSIVE ELEMENT BINDING PROTEIN2(DREB2A)が含まれており、他にはWRKY10、MYB104、B-box zinc-finger転写因子(At4g39070)、bZIP転写因子(At2g31370)があった。ヒトMED25タンパク質のACIDドメインはVP16ヘルペス単純ウイルスタンパク質の転写活性化ドメイン(TAD)と相互作用をすることが知られている。AP2/ERF転写因子ERF1、ERF15、TDR1/ERF98、ORA59のC末端にはTADとして機能するConserved Motif IX-1(CMIX-1)/EDLLモチーフがあり、このモチーフがMED25との相互作用にも関与していることがわかった。MED25と相互作用をするERF1とORA59はJAに応答してPLANT DEFENSIN1.2PDF1.2 )遺伝子の転写を活性化し、MYC2はVEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )遺伝子の転写を活性化する。これらの転写因子の転写活性化能力はmed25 変異体では低下しており、MED25はこれらの転写因子の転写活性化に必要であることが示唆される。JA処理によるPDF1.2HEVEIN-LIKEHEL )、塩基性キチナーゼ(CHI-B )の発現誘導はmed25 変異体では野生型よりも減少しており、myc2 変異体では増加していた。med25 myc2 二重変異体ではこれらの遺伝子の発現誘導量は減少し、med25 変異体と同程度になっていた。よって、MED25はPDF1.2HELCHI-B の発現活性化に必要であり、MYC2によるこれらの遺伝子発現抑制にもMED25が関与していると考えられる。myc2 変異体ではJA処理によるORA59 およびERF1 の発現誘導量が野生型よりも高くなるが、med25 myc2 二重変異体ではmyc2 変異による発現誘導量増加が消失し、野生型と同程度になっていた。よって、MYC2はJA処理によるPDF1.2HELCHI-B の発現誘導をERF1ORA59 の発現抑制を介して抑制しており、この機構にMED25が関与していると考えられる。半生物栄養性植物病原菌Fusarium oxysporum の感染はJAに応答した防御遺伝子の発現を誘導する。F. oxysporum の感染はORA59 の発現を誘導するが、med25 変異体では発現誘導が見られなかった。一方、ERF1 の発現はF. oxysporum の感染に応答せず、野生型とmed25 変異体で差が見られなかった。よって、med25 変異体でのJA応答防御遺伝子の発現低下はORA59 の発現低下よって引き起こされていると考えられる。MYC2 とそのホモログのMYC3MYC4 の発現は野生型とmed25 変異体で差が見られないことから、med25 変異体でのMYC2ターゲット遺伝子の発現低下は、med25 変異体においてMYC2の転写活性化能力が低下しているためであると考えられる。med25 変異体でORA59 発現量が低下していることから、MED25はORA59 の上流に位置する転写因子の発現にも関与していると考えられる。酵母one-hybrid法によりORA59 遺伝子プロモーター領域に結合する転写因子の探索を行なったところ、13のAP2/ERF転写因子およびORA59自身がORA59 遺伝子プロモーター領域に結合することがわかった。よって、ORA59 の発現は正のフィードバック制御を受けていると考えられる。以上の結果から、MED25はJA応答遺伝子の発現制御の統合中心として機能していると考えられる。

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論文)光シグナルによる根の成長制御

2012-09-26 20:03:11 | 読んだ論文備忘録

COP1 mediates the coordination of root and shoot growth by light through modulation of PIN1- and PIN2-dependent auxin transport in Arabidopsis
Sassi et al.  Development (2012) 139:3402-3412.
doi:10.1242/dev.078212

オーキシンは胚軸伸長、フック形成、光形態形成、避陰反応といった光に応答した形態形成や成長において重要な役割を演じている。オーキシンはキャリアタンパク質によって細胞から細胞へと極性的に輸送され、植物体内での分布が制御されている。明所で育成した芽生えでは、若い葉原基で合成されたオーキシンが根へと輸送され、側根原基の形成が促進されるが、暗所で育成した場合には胚軸伸長が促進され根の成長や側根形成は抑制される。このことから、光はシュートから根へのオーキシンの極性輸送に影響をおよぼして根の形態形成を制御していると考えられている。最近の研究では、光によって根端分裂組織でのオーキシン排出キャリアPIN-FORMEDの細胞内分布に変化が生じ、このことによって局所的なオーキシン輸送や根の成長が変化することが示されているが、その詳細な機構は明らかとなっていない。シンガポール国立大学Xu らのグループは、シロイヌナズナの芽生えを用いて、光による根の成長制御機構について解析を行なった。黄化芽生えの根は明所で育成した芽生えの根よりも短く、どちらの根の表皮細胞も長さに違いは見られないが、黄化芽生えは根端部裂組織(RAM)が小さい。よって、暗所では細胞分裂が阻害されていると考えられる。この阻害は可逆的であり、黄化芽生えに光照射をすると根の成長は回復した。土耕栽培したシロイヌナズナにおいて、シュートが光照射されている条件での根のPINタンパク質の細胞内局在を見ると、PIN1は液胞と細胞膜に局在し、PIN2は細胞膜に局在していた。しかし、シュートを暗黒下におくと、PIN1は完全に細胞膜から消失して液胞にのみ局在し、PIN2も細胞膜の局在量が減少して液胞に移っていった。よって、光によるPINタンパク質の局在変化は、根で自律的に起こるのではなく、シュートからのシグナルによって制御されているいることが示唆される。黄化芽生えの根の表現型は、茎頂の切除や胚軸へのオーキシン極性輸送阻害剤NPA処理といったことで茎頂からのオーキシン供給が絶たれた芽生えの根と類似している。よって、暗黒処理はシュートから根へのオーキシン極性輸送が阻害されているとこが考えられる。オーキシンによって分解されるDII-VENUSオーキシンセンサーを用いてオーキシンの分布を観察すると、明所で育成した芽生えの胚軸ではDII-VENUSの蛍光は観察されないが、黄化芽生え胚軸ではDII-VENUS蛍光の勾配が見られ、胚軸基部での蛍光が強くなっていた。また、黄化芽生えのRAMのDII-VENUS蛍光は明所で育成したものよりも強くなっていた。オーキシン誘導プロモーターDR5 制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した個体を用いた観察においても、黄化芽生えの地上組織では強いGUS活性が見られ、RAMでのGUS の発現も黄化芽生えでは明所育成芽生えよりも弱くなっていた。以上の結果から、黄化芽生え胚軸ではシュートから根へのオーキシン極性輸送が減少して、RAMのオーキシン量が減少していることが示唆される。胚軸で発現しているPIN 遺伝子はPIN1PIN3PIN7 の3種類あるが、PIN1 の発現は黄化芽生え胚軸で大きく減少していることがわかった。したがって、光によるシュートから根へのオーキシン極性輸送は胚軸でのPIN1 遺伝子の発現量によって制御されていることが示唆される。明所で育成した野生型およびpin1 変異体芽生えの胚軸をNPA処理すると、野生型では根長が短くなりRAMが小さくなるが、pin1 変異体での根長やRAMの変化は僅かであった。また、pin1 変異体のRAMの大きさはNPA処理した野生型植物のものと同程度であった。よって、PIN1 を介したシュートから根へのオーキシン極性輸送がRAMのサイズを制御していることが示唆される。RAMではPIN1PIN2PIN3PIN4PIN7 が発現し、明所での根の成長に対して冗長的に作用していることが知られているが、変異体を用いた実験から、PIN1PIN2 が光条件に応答した根の成長制御にとって重要であることがわかった。暗黒処理した根ではPIN1とPIN2の細胞膜局在と絶対量が変化するが、PIN1PIN2 の転写に変化は見らなかった。よって、この変化は転写制御によるものではないと考えられる。オーキシンはPINタンパク質の細胞内局在と安定性を制御することが知られていることから、明所育成芽生えの胚軸をNPA処理したところ、RAMにおいてPIN2の細胞膜局在が大きく減少し、PIN1も減少が見られた。したがって、暗黒処理によって胚軸でのPIN1 活性の低下が根のオーキシン量の低下を招き、これが細胞膜のPIN1、PIN2量の減少、根の成長抑制をもたらしていると考えられる。RING E3 ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は光形態形成の抑制に関与しており、cop1 変異体芽生えの根は、明所で育成した場合は野生型よりも短いが、暗黒下で育成した場合は野生型よりも長くなる。cop1 変異体のRAMは光条件に関係なく野生型よりも大きい。したがって、COP1は光に応答した根の成長制御にとって重要であることが示唆される。cop1 pin1 二重変異体の根は光条件に関係なくcop1 単独変異体よりも短く、RAMも小さいが、暗黒下で育成したpin1 単独変異体の根よりも長く、RAMも大きい。よって、cop1 変異とpin1 変異の組合せは光条件による根の成長制御が部分的に回復していることが示唆される。同様の傾向はcop1 変異とpin2 変異との間にも見られ、COP1、PIN1、PIN2は互いに光による根の成長制御に関与していると考えられる。黄化芽生え胚軸でのPIN1 の発現は明所で育成した芽生えよりも大きく減少するが、cop1 変異体ではPIN1 発現は維持され、明所で育成した芽生えと同等であった。よって、COP1は黄化芽生え胚軸でのPIN1 の転写を抑制し、シュートから根へのオーキシン極性輸送と根の成長の阻害に関与していると思われる。暗黒下で育成してPIN1 の発現量が低下した個体にNPA処理をしても無処理個体と比べて根長やRAMの大きさに違いは見られない。一方、暗黒下で育成したcop1 変異体芽生えをNPA処理すると、無処理個体と比べて根の成長は強く阻害されるが、RAMの大きさに違いは見られなかった。よって、NPAはcop1 変異体胚軸でのシュートから根へのオーキシン極性輸送を阻害していると考えられる。また、COP1はRAMの大きさの制御にも関与していると考えられる。cop1 変異体では暗黒処理によるRAMでのPIN1の細胞内局在変化が見られず、PIN1の細胞膜局在量も減少しなかった。また、cop1 変異体では暗黒処理によるPIN2の液胞局在が抑制された。よって、COP1は暗黒処理によるRAMでのPIN1およびPIN2の局在変化を制御していると考えられる。暗黒下でPIN2はユビキチン化され液胞で分解されるが、cop1 変異体ではPIN2の分解が抑制されており、COP1はPIN2の安定性に関与していることが示唆される。以上の結果から、COP1はシュートでのPIN1 転写の制御と根でのPIN1、PIN2の細胞内局在を制御することで根へのオーキシン輸送を制御し、光シグナルによる根の成長制御を行なっていると考えられる。

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論文)アブシジン酸シグナルを負に制御するレセプターキナーゼ

2012-09-20 22:19:47 | 読んだ論文備忘録

FERONIA receptor kinase pathway suppresses abscisic acid signaling in Arabidopsis by activating ABI2 phosphatase
Yu et al.  PNAS (2012) 109:14693-14698.
doi:10.1073/pnas.1212547109

レセプター様タンパク質キナーゼ(RLK)は細胞外レセプタードメインと細胞質Ser/Theキナーゼドメインで構成されており、植物ホルモンや環境因子に応答してシグナル伝達を行なう。米国 カリフォルニア大学バークレー校Luan らは、シロイヌナズナ芽生えにおいてRLKの1種をコードするFERONIAFER )の発現がオーキシン処理によって増加し、アブシジン酸(ABA)処理によって減少することを見出し、このRLKについて詳細な解析を行なった。fer 変異体種子は通常の条件下では正常に発芽成長し、野生型との差異は認められないが、野生型では正常に芽生えが成長する濃度のABA存在下で発芽させると、著しい成長遅延を示して芽生えが茶色に変色し、ABAによる成長阻害が非常に強くなった。また、切り取ったロゼット葉を用いて気孔の開閉試験を行なったところ、fer 変異体の気孔開口は野生型よりもABA感受性が高いことがわかった。過去の報告でFERが活性酸素種(ROS)の蓄積に関与していることが示されており、ROSはABAシグナル伝達において第二メッセンジャーとして機能することが知られている。fer 変異体の孔辺細胞はROS量が野生型よりも高く、ABA処理によってROS量が著しく増加した。よって、fer 変異体のABA高感受性は、野生型よりもROS生成量が多いことによると考えられる。FERはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)と直接相互作用をしてオーキシンに応答したGTPase(ROP/ARAC)の活性化に関与すること、ROP10やROP6といった幾つかのROPはABA応答を負に制御することが知られている。よって、FERはROP/ARACの活性化を介してABA応答性を制御していることが推測される。酵母two-hybrid アッセイによる調査を行なったところ、ROP11/ARAC10はFERと相互作用をするGEFのGEF1、GEF4、GEF10と相互作用をするだけでなく、ABAシグナル伝達経路の因子の1つであるA-タイプPP2CのABI2とも相互作用をすることを見出した。また、ABI2はGTP-結合型の活性型ROP11/ARAC10と相互作用することがわかった。したがって、ROP11/ARAC10はFER-GEFによって活性化された後にABI2と相互作用し、FER経路とABAシグナル伝達の間のクロストーク機構として機能していることが示唆される。ROP10とROP11/ARAC10はアミノ酸配列が類似しており、どちらもABA応答に関与しているが、ROP10はABI2と相互作用を示さなかった。よって、ROP10は別のパートナータンパク質やシグナル伝達経路を介してABA応答の制御していると思われる。実際、ROP10およびROP11に変異の生じた植物はどちらもABA感受性が高くなるが、両者は機能重複はしていない。ROP11/ARAC10 は孔辺細胞やその他の組織において強く発現しており、この発現パターンはFERGEF1 の発現パターンと一致していた。ROP11/ARAC10はABI2のフォスファターゼ活性を活性化することが確認されたことから、ROP11/ARAC11はABAシグナル伝達の負の制御因子であるABI2を活性化することでABAシグナル伝達を阻害していると考えられる。rop11/arac10 変異体は、fer 変異体と同様に、種子発芽、芽生えの成長、気孔の開口においてABAに対する感受性が高くなっていた。また、gef1 gef4 二重変異体やger1 gef4 gef10 三重変異体もABAに対する感受性が高くなっていた。したがって、これらのGEFはFERやROP11/ARAC10と相互作用をしてFERシグナルをABAに対する応答へ伝達していると考えられる。以上の結果から、FER-RopGEF-ROP/ARACモジュールはABA応答を負に制御し、オーキシンシグナルとABA応答との間の拮抗的な作用におけるクロスートークの接点として機能していると考えられる。

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論文)メディエーターサブユニットMED25によるジャスモン酸シグナルとアブシジン酸シグナルの制御

2012-09-13 20:40:44 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis Mediator Subunit MED25 Differentially Regulates Jasmonate and Abscisic Acid Signaling through Interacting with the MYC2 and ABI5 Transcription Factors
Chen et al.  Plant Cell (2012) 24:2898-2916.
doi:10.1105/tpc.112.098277

シロイヌナズナbestatin-resistant6bes6 )変異体はジャスモン酸(JA)による根の成長阻害が弱まったJA非感受性を示す。中国科学院遺伝学発生生物学研究所Li らは、bes6 変異体のJA応答性について、JAシグナル伝達に関与するbHLH型転写因子MYC2による制御が異なる2つの遺伝子VEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )とPDF1.2 の発現を指標に調査したところ、bes6 変異体では両遺伝子ともJAによる発現誘導がかなり損なわれていることを見出した。また、bes6 変異体は トマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomatoPst )DC3000の感染に対する応答性において、JA受容体をコードするCOI1 の変異体coi1-2 と同様に 、抵抗性を示した。よって、bes6 変異体はJAシグナル伝達経路の変異体であり、JAの誘導する防御応答遺伝子の発現に欠損が見られる。bes6 変異の原因遺伝子をマップベースクローニングにより探索したところ、bes6 変異体はメディエーターのサブユニットMED25をコードするAt1g25540遺伝子の第5エクソンと第5イントロンの接合部に生じたGからAへの塩基置換によってmRNAのスプライシング変異によるフレームシフトが起こり、MED25がメディエーター複合体を形成するのに必要なvon Willebrand Factor A(vWF-A)ドメインが破壊されていることがわかった。このため、bes6 変異体ではMED25タンパク質の蓄積が検出されなかった。これまでに幾つかのMED25 遺伝子座の変異が報告されているが、これらの変異体もすべてJAによる根の成長阻害が弱くなっていた。myc2 変異体はPDF1.2ETHYLENE RESPONSE FACTOR1ERF1 )のJAによる発現誘導が野生型よりも強くなっており、med25 変異体では弱くなっていたが、med25 myc2 二重変異体でのこれらの遺伝子のJAによる発現誘導はmed25 単独変異体と同程度であった。よって、MED25はMYC2の下流でこれらの遺伝子発現を制御しており、JA応答においてMYC2が病害応答遺伝子の発現を抑制するためにはMED25が必要であることが示唆される。VSP1LIPOXYGENASE2LOX2 )、JAZ6JAZ8 のJAによる発現誘導はmyc2 変異体では野生型よりも低下しており、med25 変異体においても低下していた。med25 myc2 二重変異体でのこれらの遺伝子のJAによる発現誘導はmed25 変異体と同程度であり、MED25はこれらの傷害応答遺伝子のMYC2による発現誘導にとっても重要であることが示唆される。以上の結果から、JA応答遺伝子のMYC2による発現制御に対してMED25は正の効果を示すと考えられる。MYC2はJAに応答してJAZ ファミリー遺伝子のプロモーター領域のG-boxモチーフに結合して遺伝子発現を活性化する。クロマチン免疫沈降アッセイの結果、MED25もMYC2と同様にJAZ6JAZ8 遺伝子のプロモーター領域のG-boxモチーフと親和性が高く、MYC2、MED25ともにJA処理によってこの親和性がさらに強くなることがわかった。よって、MED25はMYC2のターゲット遺伝子のクロマチン領域においてMYC2と結合していると考えられる。通常の状態ではMYC2のJAZ6 プロモーターへの結合は少ないが、JA処理をすると15分後には結合量が増加し、その後も高い状態が維持される。通常状態でのMED25のJAZ6 プロモーターへの結合は僅かだが、JA処理15分後に結合量が最大となり、その後は徐々に減少していった。JA処理後のJAZ6 のmRNA量は15分後には増加が観察され、60分後に最大となり、その後減少していった。med25 変異体でも同様の変化が見られたが、発現量は野生型よりも低くなっていた。よって、MED25のJAZ6 プロモーターへの結合量のピークはJAZ6 発現量のピークよりも早く起こる。このことは、メディエーターと他のコアクティベーターのプロモーターへのターゲッティングは遺伝子発現の活性化よりも前に起こるという過去の観察結果と一致している。MED25とMYC2の相互作用はJA非存在下でも起こり、JA処理による相互作用の変化は起こらなかった。MED25タンパク質は、N末端側からvWF-A、MD、ACID、GDの4つのドメインで構成されているが、ACIDとMDがMYC2との相互作用にとって重要であることがわかった。また、MYC2はN末端側の転写活性化ドメイン(TAD)を含む領域でMED25と相互作用をしていた。メディエーター複合体はDNA結合転写因子とRNAポリメラーゼIIに物理的に相互作用をして転写制御の統合中枢として機能している。med25 変異体ではJAの誘導するDNA依存RNAポリメラーゼIIサブユニットRPB2(NRPB2)のJAZ6 プロモーターへの結合量が野生型よりも少なくなっていたことから、MED25はJAによる遺伝子発現制御において転写装置の一部として作用しているものと思われる。MED25はアブシジン酸(ABA)が関与している非生物ストレスに対する応答を制御しているとされており、med25 変異体はABAによる種子発芽と芽生えの成長に対する阻害効果が野生型よりも強く現れた。また、ABA応答マーカー遺伝子であるEm1Em6RAB-RELATED GENE18RAB18 )のABAによる発現誘導量が野生型よりも増加していた。よって、MED25は種子発芽や芽生え成長の間のABA応答に対して負の制御を行なっていると考えられる。種子発芽や芽生え成長初期におけるABA応答ではbZIP型転写因子のABI5が重要な役割を演じていることが知られている。med25 abi5 二重変異体はabi5 単独変異体と同程度のABA非感受性を示すことから、abi5 変異はmed25 変異体のABA感受性が強まった表現型を抑制していることが示唆され、MED25によるABAシグナル伝達に対する負の効果にはABI5の機能が必要であると考えられる。med25 変異体芽生えではABA処理によるABI5 の転写産物量増加が野生型よりも低く、MED25はABA処理によるABI5 の発現量増加を正に制御していると考えられる。ABA処理はABI5タンパク質量の増加を引き起こすが、med25 変異体ではABA処理をしない状態でもABI5タンパク質量が野生型よりも多く、ABA処理をしてもABI5タンパク質量に変化は見られなかった。よって、MED25はABI5タンパク質量を負に制御していると考えられ、med25 変異体でのABA感受性増加はABI5タンパク質量の増加によるものであると考えられる。ABI5タンパク質は26Sプロテアソームによって分解されることが知られており、med25 変異体を26Sプロテアソーム阻害剤処理をしてもABI5タンパク質量の増加がわずかであることから、MED25によるABI5タンパク質量の制御には26Sプロテアソームを介したタンパク質分解が関与していると考えられる。ABA応答マーカー遺伝子Em6 のプロモーター領域にはABI5のターゲットとなるG-boxタイプABA応答エレメント(ABRE)が含まれている。Em6 プロモーター領域へのABI5の結合はABA処理によって増加するが、MED25のEm6 プロモーター領域への結合はABA無処理の段階において高く、ABA処理によって徐々に減少していった。MED25とABI5は生体内で相互作用をしていることが確認され、ABAはこの相互作用を弱めることがわかった。また、ABA処理はEm6 プロモーター領域へのMED25の結合を弱めた。MED25のACIDドメインがABI5との結合に関与しており、MED25とMYC2の相互作用にはACIDドメインだけでは不十分だが、ABI5との相互作用ではACIDドメインだけで十分であった。したがって、MED25によるJAシグナル伝達およびABAシグナル伝達は作用機作が異なることが示唆される。ABI5はTADを含んでいるN末端側ではなく、C末端側でMED25と相互作用をしていた。以上の結果から、シロイヌナズナメディエーター複合体の多機能サブユニットMED25は、JAおよびABAのシグナル伝達をそれぞれのホルモンの転写因子と異なる機構で相互作用をすることで制御していることが示唆される。また、MED25はJAシグナル伝達を正に制御し、ABAシグナル伝達を負に制御することで、種子発芽制御における両ホルモン間の拮抗作用を強調させていると考えられる。

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論文) DELAY OF GERMINATION1(DOG1)タンパク質とアブシジン酸による種子休眠の制御

2012-09-11 18:19:45 | 読んだ論文備忘録

The Time Required for Dormancy Release in Arabidopsis Is Determined by DELAY OF GERMINATION1 Protein Levels in Freshly Harvested Seeds
Nakabayashi et al. Plant Cell (2012) 24:2826-2838.
doi:10.1105/tpc.112.100214

収穫したての種子は通常強い休眠状態にあり、低温での湿潤(層積処理)や乾燥(後熟)によって徐々に休眠が打破される。この間、アブシジン酸(ABA)やジベレリン(GA)の内生量や感受性が変化することが知られているが、その詳細な機構は明らかとなっていない。シロイヌナズナのDELAY OF GERMINATIN1DOG1 )遺伝子は、休眠の浅いLandsberg erecta (Ler )と休眠の深いCape Verde Island(Cvi)との間の組換え自殖系統(RIL)集団において種子休眠の主要な量的形質遺伝子座として同定された。DOG1は種子休眠の鍵となる調節因子で、dog1 変異体は全く休眠をせず、種子が短くなること以外には表現型に異常は見られない。DOG1 は種子の成熟開始時期から発現が見られ、成熟の中ごろに発現ピークを示し、その後成熟の終わりにかけて発現量は低下していく。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Soppe らは、シロイヌナズナ種子成熟過程のDOG1タンパク質量を調査し、DOG1 転写産物量がピークを過ぎて減少していく間にもDOG1タンパク質量は減少せず、同じ量を維持していることを見出した。したがって、DOG1は非常に安定したタンパク質であり、収穫した種子のDOG1 転写産物量は少ないが、DOG1タンパク質量は多く含まれている。種子の乾燥中にDOG1タンパク質は僅かに減少するが、種子を後熟させて休眠打破された後でもDOG1タンパク質は含まれていた。種子を浸漬するとDOG1 転写産物はすぐに消失するが、DOG1タンパク質量には殆ど影響は見られなかった。よって、発芽能力とDOG1タンパク質量との間に相関は見られない。DOG1 発現量の異なる系統の解析から、収穫したての種子でのDOG1 転写産物やDOG1タンパク質量と休眠の程度の間には強い相関があり、収穫したての種子におけるDOG1タンパク質量が種子休眠を決定していることが示唆される。種子が成熟する間の温度を下げたところ、通常の温度で成熟させた場合よりもDOG1 発現量やタンパク質量が増加し、休眠の程度が強くなった。収穫したての種子に含まれるDOG1タンパク質量と休眠の程度に強い相関があるのにもかかわらず、後熟種子ではそのような関連が見られないことから、後熟中にDOG1活性が失われることが推測される。DOG1タンパク質を二次元電気泳動で解析したところ、後熟後にDOG1タンパク質の等電点が酸性側にシフトすることがわかり、おそらく、後熟過程でDOG1タンパク質に変化が生じ、機能喪失が起こっているものと思われる。DOG1 の発現は種子特異的であるが、発現の組織特異性を詳細に解析したところ、胚の子葉、胚軸、幼根といった組織の維管束において主に発現していることがわかった。dog1-1 変異体においてDOG1 を通常とは異なる組織で発現させても種子休眠が見られることから、DOG1は発現部位とは独立して機能すると考えられる。また、DOG1タンパク質は主に核に局在していた。種子休眠や種子発芽に関与しているABAやGAの代謝とDOG1との関係を調査したところ、DOG1はABAの新規合成に部分的に関与していること、浸漬の間のGA生合成を負に制御していることがわかった。DOG1 の発現量と収穫したての種子中に含まれるABA量は正の相関があり、GA量はdog1-1 変異体で高く、GA生合成遺伝子の発現パターンと一致していた。dog1 変異体の休眠が起こらないという表現型はABAの生合成もしくはシグナル伝達の変異体と類似しているが、dog1ga1 の二重変異体は発芽せず、dog1-1 変異体種子はGA生合成阻害剤パクロブトラゾールによる発芽抑制の程度が強いことから、dog1 変異体が発芽するためにはGAが必要である。また、dog1 変異体はABAによる発芽阻害感受性が野生型と同等であることから、dog1 変異体の休眠が起こらない表現型はABAシグナル伝達の異常によるものではない。しかしながら、強い休眠を示すDOG1-CviにABA欠損変異のaba1 を導入すると休眠が誘導されなくなる。aba1 変異体の休眠が起こらない表現型とDOG1との関係を調査したところ、意外なことにaba1 変異体ではDOG1 の発現量とタンパク質量が増加していることがわかった。よって、DOG1が機能するためにはABAが必要であり、DOG1とABAの間にはフィードバック制御が存在すると考えられる。cyp707a2 変異体種子はABA含量が増加し強い休眠を示すが、dog1 cyp707a2 二重変異体種子はcyp707a2 変異体種子に比べると休眠が弱くなる。両変異体のABA含量は同程度であることから、ABAの高濃度蓄積はDOG1の機能喪失を相補せず、種子の休眠誘導にはDOG1とABAの両方が必要であることが示唆される。

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論文)成長制御におけるブラシノステロイド、ジベレリン、光シグナルの統合

2012-09-07 22:54:04 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroid, gibberellin and phytochrome impinge on a common transcription module in Arabidopsis
Bai et al.  Nature Cell Biology (2012) 14:810-816.
DOI: 10.1038/ncb2546

ブラシノステロイド(BR)とジベレリン(GA)は多くの成長過程について類似した促進作用を示すが、両者のシグナル伝達経路の関連については不明な点が残されている。米国 カーネギー研究所Wang らは、シロイヌナズナBR欠損変異体det2-1 やBR非感受性変異体bri1-5bri1-119 はGA処理による胚軸伸長が起こらないことを見出した。det2-1 にBRを与えるとGAに対する応答性が回復したが、BR非感受性変異体ではBR添加によるGA応答性の回復は起こらなかった。よって、GAによって誘導される胚軸伸長にはBRシグナルが必要であると考えられる。BRシグナル伝達に関与するBZR1が恒常的に活性型となっている優性の機能獲得変異のbzr1-1D は、GA欠損変異体ga1-3 やGA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)処理した野生型植物の胚軸が短くなる表現型に対して部分的な抑制作用を示した。同様の作用はBZR1のホモログBZR2(BES1)の機能獲得変異bes1-D においても見られた。よって、BRもしくはBRによって活性化されたBZR1/BZR2はGAによる胚軸伸長促進に必要であることが示唆される。一方、GA欠損変異体ga1-3 、GA非感受性変異体shy1-10 、PAC処理した野生型植物はBR処理に応答して胚軸伸長を起こした。GAとPACはdet2-1 変異体やbri5-1 変異体の胚軸伸長に対して影響を及ぼさなかったが、det2-1 変異体のBR処理による胚軸伸長促進に対しては、それぞれ促進的、抑制的に作用した。したがって、GAはBRに対する応答性を強めることで細胞伸長を促進していると考えられる。GAはDELLAタンパク質の分解を介して成長を促進しているが、della 五重変異体はBRに対する応答性が非常高く、DELLAタンパク質の1つであるGAIの蓄積量が増加するGA非感受性gai-1 変異体はBR応答性が僅かに低下していた。det2-1bri1-116 といったBR変異体やBR処理した野生型植物ではGA処理によるDELLAタンパク質(RGA)の分解が正常に起こることから、BRはGAによるDELLAタンパク質の分解には関与しておらず、BR非存在下での胚軸伸長促進はDELLAタンパク質の分解だけでは不十分であると考えられる。以上の結果から、DELLAタンパク質はBRによって活性化されるBZR1もしくはそれよりも下流に位置する因子を抑制し、GAが誘導するDELLAタンパク質の分解はこの抑制を解除すると思われる。DELLAはタンパク質-タンパク質相互作用によって転写因子の活性を阻害することが知られている。酵母two-hybrid アッセイにより、BZR1およびbzr1-1Dタンパク質はRGAと相互作用をすることがわかった。N末端側にあるDELLAドメインを欠いたRGAはBZR1と相互作用をすることから、C末端側のGRASドメインがBZR1と相互作用をしている。GRASドメインはさらに5つのモチーフに分かれており、LHR1モチーフもしくはSAWモチーフの欠損によってBZR1との相互作用が失われた。LHR1はRGAの二量体形成に関与しており、LHR1とSAWはDELLAタンパク質の成長抑制機能に関与していることが知られている。よって、BZR1との相互作用と機能抑制にはDELLAタンパク質の二量体形成とSAWモチーフが必要であると思われる。RGAはBZR1のDNA結合ドメインを含んでいるN末端側と高い親和性を示し、リン酸化されていない活性型BZR1とのみ相互作用を示すことがわかった。DELLAタンパク質がBZR1活性を阻害し、GAがその阻害を解除するのであれば、GAはBZR1のターゲット遺伝子の発現に影響を及ぼすはずである。GA非感受性ga1-3 変異体と野生型植物の間で発現量が異なる1194の遺伝子のうち、419遺伝子(35%)はbri1-116 変異体においても発現量が変化し、そのうちの296遺伝子は光によっても発現制御を受けた。bri1-116 変異体とga1-3 変異体の両方によって発現制御を受ける遺伝子のうち、387遺伝子(92.3%)は同じ方向の制御を受けていた。光もbir1ga1 と同様の効果を示し、BRとGAが光応答を抑制するという知見と一致している。したがって、GAとBRは共通の発現制御を受ける遺伝子に対してDELLAとBZR1活性を介して同じような効果を示すことが示唆される。GAによって発現制御を受ける3570遺伝子のうち、BRが欠損した状態でも発現する遺伝子は1187(33%)のみであり、GAに応答する遺伝子の多くはBRを必要とすることが示唆される。BRに依存せずにGAによる発現制御を受ける遺伝子の約半分(549遺伝子)はbzr1-1D 変異体において発現の変化が見られないことから、これらの遺伝子はJAZ1やEIN3といったDELLAと相互作用を示すBZR1以外の因子よって発現制御を受けていると思われる。BZR1に依存してGAによる発現制御を受ける遺伝子のオントロジーを見ると、細胞壁合成のような細胞伸長に関連する遺伝子の発現が誘導され、光合成や葉緑体関連の遺伝子は発現が抑制されていた。DELLAとBZR1はPIF4とも相互作用を示し、PIF4とBZR1はともに共通のターゲット遺伝子のプロモーター領域に結合する。GAによる発現制御を受ける遺伝子は、高い比率でPIF4やBZR1による制御を受ける遺伝子を含んでおり、BZR1とPIF4の両方による発現制御受ける遺伝子は高い比率でGAによる制御を受ける遺伝子を含んでいた。よって、BZR1とPIF4の共通のターゲット遺伝子はGAによる制御も受けるものが多く含まれている。暗所で育成した芽生えのGA処理による胚軸伸長促進はBR生合成阻害剤のプロピコナゾール(PPZ)を同時添加することによって抑制されるが、bzr1-1D 変異が入ることで抑制が解除された。また、ここへさらにPIFの四重変異pifq が加わると抑制解除が喪失した。したがって、BZR1を介したGA応答にはPIFタンパク質が必要であることが示唆される。PIFタンパク質が分解される明所で育成した芽生えの場合、bzr1-1D 変異とPIF4 の過剰発現によってPPZ存在下でのGAによる胚軸伸長が起こった。よって、GAによる胚軸伸長促進にはBZR1とPIF4のヘテロダイマーが関与しているものと思われる。GA、GR、オーキシンはPREファミリーHLHタンパク質の発現を誘導し、PREタンパク質は細胞伸長を促進することが知られている。PRE1PRE2PRE5PRE6 はGAによって発現誘導されるが、bri1-119 変異体ではGAによる誘導が抑制され、bri1-119 bzr1-1D 二重変異体ではGAによる誘導が回復した。よって、GAによるこれらの遺伝子の発現誘導にはBZR1が必要である。同様に、BRによるPRE1PRE5PRE6 の発現誘導はgai-1 変異体では低下しており、BRによる発現誘導はGAIの蓄積によって打ち消されると考えられる。よって、PRE はGAによる胚軸伸長の正の制御因子であり、DELLA-BZR1-PIF4の下流において作用していることが示唆される。以上の結果から、DELLA、BZR1、PIF4はGA、BR、光シグナルによる成長制御を調節する重要な転写調節因子であると考えられる。

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論文)ブラシノステロイドシグナルと環境応答との統合

2012-09-05 22:23:15 | 読んだ論文備忘録

Interaction between BZR1 and PIF4 integrates brassinosteroid and environmental responses
Oh et al.  Nature Cell Biology (2012) 14:802-809.
DOI: 10.1038/ncb2545

ブラシノステロイド(BR)は植物の光による成長制御に関与しているが、その詳細な機構は明らかとなっていない。光条件はBRシグナル伝達に関与している転写因子のBRASSINAZOLE-RESISTANT 1(BZR1)タンパク質量や内生BR量に変化をもたらさないことから、光シグナルとBRとのクロストークはBZR1以降の部分で起こっていると考えられている。また、光によって発現調節を受ける遺伝子のプロモーター領域にBZR1が結合することから、BRと光シグナルは共通のターゲット遺伝子のプロモーター領域内でBZR1と光シグナル伝達に関与す転写因子が直接相互作用をすることで1つに収束していることが推測されている。米国 カーネギー研究所Wang らは、BZR1と光シグナル伝達に関与する転写因子との相互作用をBiFCアッセイ、共免疫沈降アッセイによって調査し、BZR1はフィトクロム相互作用因子4(PIF4)と相互作用をすることを見出した。PIFファミリー転写因子は暗所形態形成や細胞伸長に関与することが知られている。4つのPIF(PIF1、PIF3、PIF4、PIF5)が欠損したシロイヌナズナpifq 四重変異体はBR処理による胚軸伸長に対する感受性が低下しており、BR生合成阻害剤ブラシナゾール(BRZ)処理による胚軸伸長阻害に対する感受性が増加していた。よって、PIFの欠損はBR応答性を低下させていると考えられる。しかしながら、pif4 単独変異体はBRZに対する応答性が野生型と同等であり、PIFはBR応答性に対して冗長的に作用していることが示唆される。bzr1-1D 機能獲得変異体はBZR1が恒常的にPP2Aによって脱リン酸化された状態にあり、BRZ耐性を示す。暗所で育成したpifq bzr1-1D 五重変異体は、BRZの有無に関係なく、pifq 変異体と同様に胚軸が短く、BZR1による胚軸伸長にはPIFが必要であることが示唆される。一方、明所で育成したbzr1-1D 変異体は弱いわい化を示し、野生型よりも胚軸や葉柄が短くなる。しかし、bzr1-1D 変異体でPIF4 を過剰発現させると胚軸伸長が促進された。このことからもBZR1による胚軸伸長にはPIF4が必要であることが示唆される。bri1-116 変異体はBZR1がリン酸化され不活性化状態にあり、暗所において脱黄化の表現型を示す。bri1-116 bzr1-1D 二重変異体は、暗所で育成するとbri1-116 変異による脱黄化が抑制され、明所で育成した場合はbri1-116 変異体と同様に細胞伸長が抑制されて胚軸が短くなる。明所育成bri1-116 bzr1-1D 二重変異体でPIF4 を過剰発現させると胚軸伸長が起こるが、bri1-116 変異体でPIF4 を過剰発現させても胚軸伸長は起こらない。したがって、胚軸の伸長にはPIF4とBZR1の両方が必要である。pifq 変異体では、BR処理の前後においてBZR1のタンパク質量やリン酸化状態に変化がないことから、PIF4はBRZ1の上流のBRシグナル伝達には関与していないと考えられる。以上の結果から、BZR1-PIF複合体は細胞伸長や暗所形態形成に関与し、光シグナルによるPIFの分解とBRシグナルの低下によるBZR1不活性化がBZR1-PIF複合体形成を低下させ、光形態形成が促進されると考えられる。PIF4タンパク質が結合するDNA領域をクロマチン免疫沈降-シークエンシング(ChIP-Seq)によって解析したところ、3186のピークが同定され、その周囲には4363のPIF4がターゲットとしていると推測される遺伝子が存在し、このうち1537はPIFによって発現制御を受けている遺伝子であった。PIF4ターゲット遺伝子には、ChIPマイクロアレイによってBZR1のターゲットであることが同定されいる遺伝子が半分含まれていた。PIF4とBZR1の両方のターゲットとなる遺伝子はそれぞれの単独のターゲット遺伝子よりも高い割合で光によって発現制御される遺伝子を含んでいた。BZR1およびPIF4の結合するDNA領域を解析した結果、両者は共通のターゲット遺伝子のプロモーター領域に結合していることが示唆され、BZR1とPIF4はヘテロダイマーを形成して共通のターゲット遺伝子のプロモーター領域に結合していると考えられる。BZR1によって制御される2879の遺伝子のうち、857はPIF4によっても制御され、そのうちの80%(682遺伝子)は光によっても制御されるものであった。BZR1とPIF4によって制御される遺伝子の殆どが同じ方向の制御を受けており、その効果は光の効果とは逆となり、BZR1とPIF4が光形態形成の負の制御因子として機能するということと一致していた。これまでに知られているPIF4を介した応答とPIF4ターゲット遺伝子のオントロジーの解析から、PIF4は直接これらの応答を制御していることが示唆される。特に、細胞の大きさの制御やオーキシンやジベレリンの応答はBZR1とPIF4によって直接制御されていると考えられる。RNAシークエンシングによる解析を行なったところ、BZR1によって制御されている遺伝子の59%(1279遺伝子)はPIFによっても同じ方向に制御されていた。また、BZR1とPIFは多くの遺伝子を互いに相互依存して制御していることがわかった。BZR1とPIF4の共通のターゲット遺伝子の発現量を定量PCRで調査したところ、BZR1による転写活性化を最大とするためにはPIFが必要であり、両者は協働して共通のターゲット遺伝子の発現を制御していることが示唆される。BZR1とPIF4のターゲットのなかにHLHタンパク質のPREファミリーが含まれており、このタンパク質は細胞伸長の正の制御因子であることが知られている。人工マイクロRNAによってPRE 遺伝子をノックダウンした系統はわい化し、胚軸身長においてBRに対する感受性が低下し、光に対する感受性が増加していた。また、PRE1 の過剰発現はpifq 変異体のわい性表現型を抑制した。よって、PREはBZR1とPIF4の下流で細胞伸長を促進している主要な因子であると考えられる。シロイヌナズナの芽生え胚軸は高温によって伸長を起こすが、これは高温によるPIF4 発現の増加とBZR1との協働に引き起こされていることがわかった。

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論文)花蜜に含まれる毒の効果

2012-09-03 22:25:20 | 読んだ論文備忘録

Unpredictability of nectar nicotine promotes outcrossing by hummingbirds in Nicotiana attenuata
Kessler et al.  The Plant Journal (2012) 71:529-538.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.05008.x

花蜜はしばしば毒性物質を含むことがあり、これは盗蜜者(花冠に穴を開けて盗蜜するnectar robberと花冠を傷つけず送受粉せずに盗蜜するnectar thieve)を退けたり、抗菌性によって花蜜の保存性を高める機能があると考えられている。しかし、最近の研究から、花蜜の毒性物質は送粉者の適合度を高め、送粉を増加させるといった利点があることが示唆されている。野生タバコNicitiana attenuata は根で合成されたニコチンを花に蓄積し、草食昆虫の食害を防いでいる。花蜜もニコチンを含み、花を盗蜜や花食から防ぎ、重要なポリネーターであるノドグロハチドリ(Archilochus alexandri )の行動を変化させる。ハチドリは何故花蜜に忌避物質を含んでいても訪花するのか、忌避物質を含む花蜜は植物の他殖を高めることに対して有利であるのかについては不明な点が残されている。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Baldwin らは、温室栽培した10の異なる自然集団由来のN. attenuata 49個体の322の花の花蜜に含まれるニコチン量を測定し、それが非常に可変的であることを見出した。花蜜のニコチン量には花序内での位置による分布様式といったものがなく、夜に開花した花と朝に開花した花での違いもなく、ニコチン量と花蜜量、花蜜の糖含量、花の主要な香気成分であるベンジルアセトンの放出量との間に相関は見られなかった。ニコチン含量は、1つの花序の中の個々の花、同一自然集団の個々の植物、自然集団間でも非常に可変的であった。様々なニコチン含量の花蜜を含んだ人工の花を用いてハチドリの行動を調査したところ、ハチドリは通常の花に含まれる範囲内のニコチン量を含んだ花とニコチンを含まない花を区別することはなかったが、ある一定量以上のニコチンを含んでいる場合には忌避行動を示し、吸蜜後に吐き出したり鳴き声を発したりした。人工花の花蜜のニコチン量を徐々に上げてハチドリを馴化させると高濃度のニコチンを含んだ花蜜を与えても吐き出すことがなくなったが、ニコチンを含まない花があった場合にはそちらを好んで訪花するようになった。よって、ハチドリはニコチンに対する依存性を起こしたのではなく、他に選択肢がない条件下で耐性を示したものと思われる。ハチドリの訪花回数の増加と他殖率の増加に花蜜のニコチンが関与しているかを、ニコチン生合成酵素(PMT)がサイレンシングを起こしたタバコ(PMT植物)を用いて調査したところ、それぞれ69の花のうち、対照では16のさく果が成熟したのに対して、PMT植物で成熟したさく果は7つのみであった。また、対照の種子は平均して5.1の花粉親の遺伝子型が見られたのに対してPMT植物では3.6であった。よって、花蜜のニコチンはさく果の稔実と他殖に対して有利に作用していると考えられる。N. attenuata の3種のDicer様(DCL)タンパク質(NaDCL2、NaDCL3、NaDCL4)がサイレンシングを起こした系統は、対照個体よりも花序内の花蜜ニコチン量の多様性が低く、低分子RNAが花の花蜜のニコチン量の多様性をもたらしていることが示唆される。同一花序内での花蜜ニコチン量の多様性は、おそらくハチドリに低ニコチンの花を探す行動をさせ、これが花間の移動回数の増加をもたらしていると考えられる。さらに、もしポリネーターが花蜜の残存量を感知でき、花蜜のない花を訪花しないのであれば、高ニコチンの花に残っている花蜜は訪花回数と他殖率の増加をもたらすと考えられる。よって、植物は毒性物質を有効利用して訪花者の行動を自らの生殖を最大となるように操作していると言える。

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論文)イネDELLAタンパク質SLR1の成長抑制作用機作

2012-08-30 20:40:03 | 読んだ論文備忘録

The suppressive function of the rice DELLA protein SLR1 is dependent on its transcriptional activation activity
Hirano et al.  The Plant Journal (2012) 71:443-453.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.05000.x

イネのジベレリン(GA)受容体GIBBERELLIN INSENSITIVE DWARF 1(GID1)はGAと結合するとDELLAタンパク質相互作用をし、DELLAタンパク質のGAシグナル伝達抑制機能を阻害してGA応答を活性化させる。しかしながら、DELLAタンパク質はどのようにしてGAシグナル伝達を抑制しているのか、また、GID1はどのようにしてDELLAタンパク質の機能を阻害しているのかは明らかとなっていない。DELLAタンパク質はDNA結合ドメインを持たないが、フィトクロム相互作用因子(PIF)に結合してPIFの転写活性を抑制したり、JAZタンパク質と結合してJAZの転写抑制活性を阻害するといったトランスアクティベーション機能を有している。名古屋大学生物機能開発利用研究センター松岡らは、イネのDELLAタンパク質であるSLR1のトランスアクティベーション活性について解析した。SLR1に強い転写活性を示す単純ヘルペスウイルスタンパク質VP16を付加したもの、もしくは転写抑制機能を有するEARモチーフ抑制ドメイン(SRDX)を付加したものを過剰発現させた形質転換イネを観察したところ、SLR1-VP16を過剰発現させたイネはSLR1を過剰発現させたものよりも強くわい化し、SLR1-SRDXを過剰発現させた形質転換イネはベクターのみを導入した対照よりも細長くなった。これらの結果から、SLR1のトランスアクティベーション活性は植物の成長抑制にとって重要であることが示唆される。次に、酵母one-hybrid システムを利用してSLR1のトランスアクティベーション活性に関与する領域の探索を行なった。GAL4-DNA結合ドメイン(GAL4 BD)はGAL プロモーターの上流に位置するエンハンサーエレメントに結合するが、トランスアクティベーション活性が無いためにGAL プロモーターによって駆動するβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(β-Gal )の転写を促進できない。よって、GAL4 BDはトランスアクティベーション活性を有したタンパク質との融合タンパク質とした場合にのみβ-Gal活性を示す。GAL4 BDとSLR1との融合タンパク質は強いβ-Gal活性を示し、GRASドメインを含むC末端側を欠いたSLR1とGAL4 BDとの融合タンパク質も同程度のβ-Gal活性を示した。しかしながら、C末端側GRASドメインとGAL4 BDとの融合タンパク質のβ-Gal活性は非常に低かった。したがって、SLR1のN末端領域がトランスアクティベーション活性を有していると考えられる。SLR1のN末端にはにはDELLAタンパク質において保存されているDELLAモチーフとTVHYNPモチーフの2つの領域が存在している。この2つのモチーフを欠いたSLR1 N末端領域はβ-Gal活性が大きく低下し、TVHYNPモチーフのみを欠いたN末端領域はDELLAモチーフのみを欠いたN末端領域よりもβ-Gal活性の低下の程度が大きかった。したがって、DELLAとTVHYNPの両者がトランスアクティベーション活性に関与しており、TVHYNPモチーフのほうが貢献度が高いと考えられる。SLR1のトランスアクティベーション活性をイネカルスにおいてルシフェラーゼを発現させる系を用いて解析したところ、この場合もDELLA/TVHYNPモチーフを含んだSLR1 N末端領域が効果を示すことが示された。実際のイネの成長抑制においてSLR1のトランスアクティベーション活性が関与しているかをgid1 slr1 二重変異体で変異SLR1を発現させて解析したところ、通常のSLR1を発現させた二重変異体は極度のわい性を示すが、各ドメインを欠いたSLR1を発現させた二重変異体はわい化が緩和され、それは酵母one-hybrid システムでのβ-Gal活性と逆の結果、すなわち、DELLAモチーフ欠損SLR1、TVHYNPモチーフ欠損SLR1、両モチーフが欠損したSLR1、C末端側GRASドメインのみのSLR1の順にわい化の程度が弱くなった。したがって、N末端DELLA/TVHYNPモチーフのトランスアクティベーション活性はSLR1による植物体の成長抑制にとって重要である。また、GRASドメインにも弱いトランスアクティベーション活性があり、これもSLR1の成長抑制活性にある程度貢献していると考えられる。SLR1活性の抑制にSLR1タンパク質の分解は必須ではなく、SLR1とGID1との相互作用が起これば十分であることが知られている。BD-SLR1とGID1を酵母で同時に発現させるとBD-SLR1を単独で発現させた場合と同程度に強いβ-Gal活性を示すが、ここにGAを添加するとβ-Gal活性は消失し、GAを介したGID1-SLR1相互作用はSLR1のトランスアクティベーション活性を阻害することが示唆される。この効果は植物体でも起こり、イネカルスでのルシフェラーゼ発現の実験系においても、GID1の過剰発現とGAの添加によってSLR1によるルシフェラーゼ活性が減少した。また、アミノ酸置換によってGID1との相互作用能力が低下した変異SLR1はGID1を同時発現させGAを添加してもβ-Gal活性低下の程度が低かった。よって、SLR1のトランスアクティベーション活性の阻害はGID1-SLR1の相互作用の強度に依存していると考えられる。GID1との相互作用能力が低下した変異SLR1を発現させたgid2 変異体(GID1は機能するがSLR1の分解は起こらない)は野生型SLR1を発現させたものよりも強いわい化を示し、植物体においてもGID1-SLR1の相互作用がSLR1のトランスアクティベーション活性の阻害にとって重要であることが示された。以上の結果から、SLR1のN末端DELLA/TVHYNPモチーフはトランスアクティベーション活性に関与し、SLR1の成長抑制機能にとって重要であることが示されたが、これまでに同定されているslr1 機能喪失変異体はGRASドメインの変異ものであり、N末端側の変異のものは得られていない。よって、GRASドメインも抑制活性にとって重要であることが示唆される。そこで、DELLAモチーフを欠き、VP16を付加した変異SLR1(ΔDELLA-SLR1-VP16)をslr1-1 ヌル変異体に導入して表現型を観察した。ΔDELLA-SLR1-VP16はVP16により強いトランスアクティベーション活性を示し、DELLAモチーフを欠いているためにGID1との相互作用を示さない。slr1-1 変異体は細長い表現型となるが、ΔDELLA-SLR1-VP16を発現させることによって強くわい化した。そこで、GRASドメインに様々な変異を導入したΔDELLA-SLR1-VP16を発現させ表現型を解析した。その結果、SLR1のもつ抑制機能に関与する領域はGRASドメイン内に広く分布していることがわかった。しかしながら、植物の成長抑制におけるGRASドメインの役割は、トランスアクティベーション活性によるものではなく、他の未知のトランス因子かDNAとの相互作用によるものではないかと思われる。以上の結果から、SLR1のN末端領域はGID1との相互作用とトランスアクティベーション活性の2つの役割があると考えられる。

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