Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)TERMINAL FLOWER2による光形態形成の制御

2012-08-08 21:10:16 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis thaliana TERMINAL FLOWER2 is involved in light-controlled signalling during seedling photomorphogenesis
Valdes et al.  Plant Cell Environ (2012) 35:1013-1025.
doi: 10.1111/j.1365-3040.2011.02468.x

シロイヌナズナterminal flower2tfl2 )変異体は、早期花成、日長感応性の低下、花序分裂組織の有限化、わい化といった多面的な表現型を示す。TFL2 遺伝子は、動物や酵母において見られるHETEROCHROMATIN PROTEIN1(HP1)様タンパク質に属するタンパク質をコードしている。HP1タンパク質は核に局在して遺伝子サイレンシングに関与し、ヘテロクロマチンの構成要素であることが知られている。TFL2タンパク質もシロイヌナズナの核に局在するが、真性クロマチンにおいて見出される。スウェーデン農業科学大学Landberg らは、tfl2 変異体の表現型から、TFL2は光シグナル伝達に関与しているのではないかと考え、芽生えの光形態形成過程を対象にして解析を行なった。tfl2 変異体芽生えを様々な光条件下で育成して胚軸伸長を見たところ、青色光下では野生型との差は見られなかったが、赤色光や遠赤色光下ではtfl2 変異体の胚軸は野生型よりも短くなった。phyB tfl2 二重変異体芽生えはphyB 変異体と同様に赤色光に対して非感受性となり、胚軸が野生型よりも長くなった。また、phyA tfl2 二重変異体は遠赤色光下においてphyA 変異体と同様に胚軸が野生型よりも長くなった。よって、両フィトクロムは光応答による胚軸伸長に関してtfl2 変異よりも上位に位置していると考えられる。tfl2 変異体でのPHYB の発現量は野生型と同等であったが、PHYA の発現量は暗所で育成したtfl2 変異体において野生型よりも高くなっており、脱黄化させるとPHYA の発現量は野生型と同等になった。しかしながら、TFL2タンパク質は、光条件に関係なく、PHYA 遺伝子プロモーター領域には局在していなかった。よって、TFL2タンパク質はPHYA プロモーター領域を直接のターゲットはしていないと考えられる。野生型芽生えは白色光に遠赤色光を加えて照射すると避陰反応を起こして胚軸が伸長するが、tfl2 変異体芽生えではそのような伸長は見られなかった。tfl2 変異体はオーキシン生合成能が低下していることが知られていることから、オーキシン(NAA)処理をしたが、避陰条件での胚軸伸長の回復は見られなかった。tfl2 変異体での避陰反応初期応答遺伝子の発現を見たところ、ARABIDOPSIS THALIANA HOMEOBOX PROTEIN 2ATHB2 )の避陰条件での発現量が野生型よりも高くなっており、逆にXYLOGLUCAN ENDOTRANSGLYCOSYLASE-RELATED PROTEIN 7XTR7 )の発現量は減少していた。避陰反応初期応答遺伝子の発現量はオーキシン処理によって変化することはなかったが、tfl2 変異体のオーキシン初期応答遺伝子IAA5IAA19 の発現量は避陰条件でオーキシン処理をすると野生型よりも高くなった。TFL2と相互作用をするタンパク質の探索を酵母two-hybrid法によって行なったところ、IAAタンパク質のIAA5、IAA6、IAA9が同定され、BiFCアッセイによってこれらのタンパク質は生体内においてもTFL2と相互作用をすることが確認された。暗所で育成したtfl2 変異体芽生えに光照射下に移した際の緑化の速度は野生型よりも遅く、暗所育成tfl2 変異体芽生えではクロロフィル生合成経路の酵素をコードするNAD-PH:Pchlide oxidoreductase APORA )の発現量が野生型よりも低下していることがわかった。しかし、光照射下に移すとPORA の発現量は野生型と同等になった。したがって、tfl2 変異体は暗所でのPORA 発現量が低いことが明所移行後の緑化が野生型よりも遅れる原因であると考えられる。以上の結果から、TFL2 はシロイヌナズナ芽生えの光形態形成の際のPHYAやPHYBによるシグナル伝達に関与し、さらに黄化芽生えでのPHYA の発現を間接的に制御していることが示唆される。

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論文)MAPキナーゼカスケードによるエチレン生成誘導

2012-08-01 20:33:24 | 読んだ論文備忘録

Dual-Level Regulation of ACC Synthase Activity by MPK3/MPK6 Cascade and Its Downstream WRKY Transcription Factor during Ethylene Induction in Arabidopsis
Li et al.  PLoS Genet 8(6): e1002767.
doi:10.1371/journal.pgen.1002767

植物は病原菌による攻撃を受けるとエチレンを発生させ、免疫系を機能させる。エチレン生合成はACCシンターゼ(ACS)が鍵酵素となっており、シロイヌナズナに9つ存在するのACSアイソフォームのうち、C末端側にMAP(mitogen-activated protein)キナーゼ(MAPK)によってリン酸化される部位とカルシウム依存性プロテインキナーゼ(CDPK)によってリン酸化される部位を含んタイプI ACSのASC2とACS6は、病原応答性MAPKのMPK3やMPK6によってリン酸化されて安定化することが報告されている。また、病原菌の攻撃によりACS 遺伝子の転写が活性化されることが古くから知られている。米国 ミズーリ大学Zhang らは、シロイヌナズナに灰色カビ病菌(Botrytis cinerea )を感染させた際のACS 遺伝子の発現を調査し、菌の感染によるエチレン生成に最も貢献しているACSACS2ACS6 であり、ACS7ACS8ACS11 も少ないながらも貢献していることを明らかにした。タバコのMAPKキナーゼ(MAPKK)NtMEK2の恒常的活性型をデキサメタゾン(DEX)誘導プロモーター制御下で発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ(DD )は、DEX処理することによってACS2ACS6 の発現が強く誘導された。しかしながら、灰色カビ病菌による誘導と異なり、ACS7ACS8ACS11 の発現は誘導されなかった。また、mpk3 変異やmpk6 変異が導入されたDD 植物ではDEX処理によるACS2ACS6 の誘導が殆ど見られなかった。よって、DD 植物をDEX処理した際のACS2ACS6 の発現誘導はMPK3/MPK6の活性化によって引き起こされていると考えられる。灰色カビ病菌の感染はMPK3/MPK6を活性化させるので、MPK3/MPK6のカスケードは灰色カビ病菌感染によるACS2 /ACS6 の発現誘導に関与していることが推測される。また、ACS7ACS8ACS11 の発現誘導はMPK3/MPK6カスケード以外の経路によって制御されているものと思われる。転写促進因子WRKY33はMPK3/MPK6の基質であり、病原菌感染によるファイトアレキシン合成の誘導に関与していることが知られている。wrky33 変異を導入したDD 植物はDEX処理によるACS2 /ACS6 の発現誘導が起こらず、エチレン生合成も誘導されなかった。よって、WRKY33はMPK3/MPK6の下流でACS2 /ACS6 の発現促進を行なっていることが示唆される。しかし、wrky33 変異体に灰色カビ防菌を感染させるとACS2 /ACS6 は野生型の1/3程度発現し、エチレン生成量の減少も20%程度であることから、wrky33 変異体ではMPK3/MPK6カスケードによるACS2 /ACS6 の発現誘導が、WRKY33とは異なる、おそらくWRKY33ホモログのような転写因子によって制御されていることが推測される。ASC2 遺伝子やACS6 遺伝子のプロモーター領域にはWRKYタンパク質が結合するとされるW-boxが複数存在しており、クロマチン免疫沈降-定量PCR(ChIP-qPCR)解析からWRKY33がACS2 遺伝子やACS6 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。よって、WRKY33はMPK3/MPK6カスケードの下流においてACS2 /ACS6 の発現を促進する転写因子として機能していることが示唆される。DEX誘導プロモーター制御下でACS6 を発現するコンストラクトを導入したacs2-1 acs6-2 acs7-1 三重変異体は、DEX処理をしてもエチレン生成量は僅かであるが、灰色カビ病菌を感染させるとエチレン生成量が大きく増加した。これは、DEX処理によるACS6 の高発現と灰色カビ病菌感染によって活性化されたMPK3/MPK6によってリン酸化されたACS6タンパク質の安定化の組み合わせによって大量のエチレンが生成されたものと考えられる。以上の結果から、MPK3/MPK6は、ACS2/ACS6タンパク質をリン酸化して安定化することに加えて、リン酸化したWRKY33を介してACS2 /ACS6 遺伝子の活性化も行ない、エチレン生成を誘導していると考えられる。

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論文)エチレン受容体ETR1のN末端が発するシグナル

2012-07-27 21:03:35 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis RTE1 Is Essential to Ethylene Receptor ETR1 Amino-Terminal Signaling Independent of CTR1
Qiu et al.  Plant Physiology (2012) 159:1263-1276.
doi:10.1104/pp.112.193979

シロイヌナズナにはエチレン受容体が5種類存在し、それらは原核生物の2コンポーネントヒスチジンキナーゼ(HK)タンパク質と類似した構造をしている。サブファミリー I エチレン受容体であるEthylene Response 1(ETR1)タンパク質の場合、N末端から順に、エチレンが結合する膜貫通ドメイン、GAF(cGMP-specific phosphodiesterases, adenylyl cyclases, and FhlA)ドメイン、HKドメイン、レシーバードメインから構成されている。複数のエチレン受容体が機能喪失した変異体は恒常的にエチレンに応答した状態の表現型を示し、エチレン受容体はエチレン応答の負の制御因子として機能している。Ser/Thrキナーゼ活性を有したMEKキナーゼのConstitutive Triple Response 1(CTR1)は、エチレン受容体の下流で作用する因子であり、N末端がエチレン受容体のHKドメインと物理的に相互作用をする。この相互作用はエチレンシグナルの出力にとって重要であるが、HK活性やHKドメインとは独立したETR1エチレン受容シグナルの出力も存在することが示されている。ゴルジ体/小胞体タンパク質のReversion To Ethylene Sensitivity 1(RTE1)は、エチレン非感受性優性変異体etr1-2 のサプレッサースクリーニングによって単離されたエチレン応答の負の制御因子で、ETR1のN末端側と相互作用をする。しかしながら、RTE1とETR1のN末端側のエチレンシグナル出力との関係は明らかではない。中国科学院上海生命科学研究院Wen らは、HKドメイン以降を欠いたN末端側のETR1のエチレンシグナル出力とCTR1やRTE1との関係を調査した。暗所で育成したctr1-1 変異体芽生えは恒常的なエチレン応答表現型を示し、エチレン非存在下でも胚軸や根が短く、茎頂フックが誇張される。ctr1-1 変異体においてETR1のN末端もしくは膜貫通ドメインにアミノ酸置換(C65Y)が起こりエチレン非感受性を示すetr1-1のN末端を発現させると、ctr1-1 変異の表現型が部分的に緩和されて胚軸が長くなった。これらの芽生えをエチレン処理するとETR1 N末端を発現させた個体では胚軸伸長が抑制されるが、etr1-1 N末端を発現させた個体では胚軸伸長阻害が起こらなかった。etr1-1 ctr1-1 二重変異体芽生えはctr1-1 変異体と類似した表現型を示すが、エチレンの有無に関係なく胚軸が僅かにctr1-1 変異体よりも長くなり、成熟個体ではctr1-1 変異による成長障害が僅かに緩和された。明所で育成した芽生えでは、etr1-1 N末端を発現させた個体はETR1 N末端を発現させた個体よりもctr1-1 変異による成長障害を強く抑制した。よって、CTR1の欠損による恒常的なエチレン応答性は、ETR1 N末端からのシグナルによって抑制されることが示唆される。また、etr1-1 N末端のシグナルは、CTR1とは独立していることに加えて、エチレンの影響も受けない。Ethylene Response Factor 1ERF1 )はエチレン処理によって発現が誘導され、その発現量はエチレン応答性を示す指標となるが、ctr1-1 変異体でetr1-1 N末端やETR1 N末端を発現させると、ERF1 発現量はctr1-1 変異体での発現量よりも低くなった。よって、ETR1のN末端から発せられるシグナルはCTR1とは独立したものであることが示唆される。ctr1-1 変異はSer/Thrキナーゼ活性が低下したことによって生じたものであり、ctr1-1タンパク質は発現している。キナーゼドメインを欠いたCTR1をコードしているctr1-2 変異体でETR1 N末端やetr1-1 N末端を発現させた場合も、ctr1-2 変異による成長障害や恒常的エチレン応答が部分的に抑制された。以上の結果から、ETR1 N末端からのシグナルはCTR1とは独立してエチレン応答を抑制し、エチレンはETR1 N末端のシグナルを妨げることが示唆される。ctr1-1 変異体にETR1 遺伝子にナンセンス変異(W74stop)が入ったetr1-7 変異を導入した黄化芽生えはctr1-1 変異体よりも強い恒常的エチレン応答表現型を示し、成長障害を越すが、ETR N末端もしくはetr1-1 N末端をetr1-7 ctr1-1 二重変異体やetr1-7 ctr1-2 変異体で発現させた黄化芽生えは成長障害が抑制された。また、ETR1 N末端を発現させたetr1-7 ctr1-1 二重変異体やetr1-7 ctr1-2 変異体黄化芽生えをエチレン処理すると胚軸伸長が阻害されるが、etr1-1 N末端を発現させた黄化芽生えでは阻害は起こらなかった。etr1-7 ctr1-1 二重変異体やetr1-7 ctr1-2 変異体の明所育成芽生えや成熟個体での成長障害もETR N末端もしくはetr1-1 N末端を発現させることによって抑制された。ETR N末端もしくはetr1-1 N末端の発現によるctr1 変異体の表現型抑制に対して野生型ETR1の欠損の及ぼす効果は僅かであり、ETR1 N末端を発現させたctr1-1 変異体やctr1-2 変異体はETR1 N末端を発現させたctr1 etr1-7 変異体よりも僅かに大きくなった。よって、ctr1-1 変異体やctr1-2 変異体での恒常的エチレン応答性のETR1 N末端による抑制は野生型ETR1がなくても起こる。RTE1 の過剰発現はエチレン非感受性となる。etr1-7 変異体でRTE1 を過剰発現させた場合はエチレン非感受性とならないが、ETR1 N末端を発現させることでエチレン非感受性が回復する。RTE1 を過剰発現させたctr1-1 変異体黄化芽生えは恒常的エチレン応答性の低減を起こさなかったが、同時にETR1 N末端を発現させることで低減が起こった。このctr1-1 変異体でのRTE1 過剰発現によるETR1 N末端シグナルの促進効果は、明所育成芽生えや成熟個体においても観察された。また、ETR1 N末端によるctr1-1 変異体の表現型抑制効果はrte1-2 変異が導入されることで打ち消された。よって、CTR1と独立したETR1 N末端からのシグナルによる恒常的エチレン応答の抑制にはRTE1が必須であり、RTE1はETR1シグナルを促進していることが示唆される。キナーゼドメインを欠いたCTR1 N末端はエチレン受容体と相互作用をするが、過剰発現させるとエチレンシグナル伝達が妨げられることによって恒常的エチレン応答性を示す。CTR1 N末端過剰発現個体でETR1 N末端を発現させると恒常的エチレン応答の表現型が抑制されることから、ETR1 N末端からのシグナル出力は完全長エチレン受容体を介して発せられるのではなく、完全長エチレン受容体はETR1 N末端と協働してCTR1とは独立したシグナルを発していると考えられる。

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論文)活性酸素種を介したアブシジン酸とオーキシンのクロストーク

2012-07-23 19:52:35 | 読んだ論文備忘録

DEXH Box RNA Helicase-Mediated Mitochondrial Reactive Oxygen Species Production in Arabidopsis Mediates Crosstalk between Abscisic Acid and Auxin Signaling
He et al.  Plant Cell (2012) 24:1815-1833.
doi:10.1105/tpc.112.098707

中国農業大学Gong らは、シロイヌナズナのEMS処理変異体集団からアブシジン酸(ABA)処理によって芽生えの一次根の成長が阻害されるABA-overly sensitive abo )変異体を複数単離しており、今回、abo6 について詳細な解析を行なった。abo6 変異体芽生えの一次根はABA無処理でも野生型より短いが、一次根成長に対するABA感受性が野生型よりも強い。また、芽生え子葉の緑化において、abo6 変異体はABA、NaCl、マンニトールに対する感受性が高い。鉢で栽培したabo6 変異体は野生型よりも乾燥ストレス耐性があり、切り葉の水分損失も野生型よりも遅かった。水を十分与えたabo6 変異体芽生えの気孔開度は野生型よりも小さく、水分条件に関係なくabo6 変異体芽生えは野生型よりも多くのProや可溶性糖類を含んでいた。これらの結果から、abo6 変異体は恒常的にストレスを受けた状態にあり、乾燥耐性の表現型を示しているものと思われる。abo6 変異体の原因遺伝子を探索したところ、At5g04895遺伝子のATGから1575番目のGがAに置換しており、翻訳産物において334番目のGlyがGluに置換することがわかった。ABO6 はDEAD box RNA ヘリカーゼとアノテートされていた。シロイヌナズナには58のDEAD boxタンパク質があり、その多くはsf2ファミリーに属し、ファミリーはさらにDEAD、DEAH、DExD/Hのサブファミリーに分かれている。abo6 変異体でのGly334からGlu334への置換はDEXH領域内で発生しており、Gly334は他植物のABO6ホモログにおいて保存されていた。ABO6 遺伝子へのT-DNA挿入系統はホモ接合体が得られないことから、ABO6 は植物の生存にとって必須であると考えられる。ABO6はミトコンドリアに局在し、ABO6 の発現は根や花において葉や茎よりも強く、興味深いことにABA処理によって発現量が減少した。ABO6 はミトコンドリアがコードしているNADHデヒドロゲナーゼ(複合体I)のサブユニットnad 遺伝子の幾つかのシスおよびトランススプライシングに関与しており、ABA処理はNAD1NAD2NAD5 の発現量を減少させることがわかった。ミトコンドリア複合体Iの障害は呼吸障害をもたらし、活性酸素種(ROS)の過剰生産を引き起こす。abo6 変異体は野生型よりも葉や根のROS蓄積量が多くなっていた。また、ABA処理や乾燥処理はabo6 変異体において野生型よりも多くのROSが誘導された。ミトコンドリアの生産するROSは逆向性のシグナルとして作用し、幾つかの核コード遺伝子の発現を誘導する。abo6 変異体ではオルタナティブオキシダーゼ1a (AOX1a )やBクラスNADHデヒドロゲナーゼ遺伝子ファミリー(NDB2NDB3NDB4 )の転写産物量が野生型よりも多く、これら4遺伝子の発現はABA処理によって増加した。ミトコンドリアの生産するROSが二次メッセンジャーとして機能して一次根の成長を阻害しているを調査するために、培地にROSスカベンジャーの還元型グルタチオン(GSH)を添加したところ、ABAによるabo6 変異体の種子発芽阻害や芽生え一次根成長阻害が低減した。別のROSスカベンジャーとしてジチオスレイトール(DTT)を添加した場合も同様の結果となった。よって、ABAによる種子発芽や芽生え一次根成長の阻害には酸化状態が重要な役割を演じていることが示唆される。GSH生合成経路の律速酵素であるγ -グルタミルシステイン合成酵素を阻害するブチオニンスルフォキシミン(BSO)による根の伸長抑制に対してabo6 変異体は野生型よりも耐性を示した。そしてBSO耐性に呼応してBSO処理したabo6 変異体は野生型よりもGSH含量が高くなっていた。BSOとABAはabo6 変異体と野生型の根の伸長阻害に対して相加的に作用することから、BSOによる酸化ストレスの強化はABAによる根の伸長阻害を強めることが示唆される。ABAシグナル伝達に関与しているタンパク質フォスファターゼ2CをコードしているABI1 およびABI2 のドミナントネガティブ変異体abi1-1 およびabi2-1 はROS生産量が減少しており、abo6 との二重変異体はABAによる根の伸長阻害や種子発芽阻害に対して抵抗性を示した。よって、ABI1、ABI2はミトコンドリアのROS生産制御に関与していることが示唆される。シロイヌナズナゲノムには10種のNADPHオキシダーゼ触媒サブユニット遺伝子が存在し、ABAは細胞膜NADPHオキシダーゼのRBOHDとRBOHFを制御することでROS生産に関与していることが知られている。abo6 rbohF 二重変異体は種子発芽におけるABA感受性がabo6 単独変異体と同等であり、abo6 変異が優位にあった。abo6 rbohF 二重変異体の一次根の成長は、通常の条件でabo6 変異体よりも早く野生型よりも遅かった。ABAによる阻害の程度はabo6 変異体よりも弱いことから、rbohF 変異はabo6 変異のABAによる一次根成長阻害を和らげていることが示唆される。rbohF 変異体のミトコンドリアでの過酸化物の蓄積量はABA処理の有無に関係なく野生型と同等であり、通常条件のabo6 rbohF 二重変異体ミトコンドリア過酸化物蓄積量はabo6 変異体と同程度で、ABA処理条件ではabo6 変異体よりも少なくなった。よって、RBOFHはABA処理によるミトコンドリアでの過酸化物蓄積に関与していることが示唆される。よって、細胞内のROS量は細胞膜とミトコンドリアの両者が生産するROSによって維持されていると考えられる。abo6 変異体はPIN1、PIN2、AUX1といったオーキシンキャリアの量が野生型よりも少なく、ABA処理によってabo6 変異体においても野生型においてもオーキシンキャリアの量が減少し、その減少量はabo6 変異体のほうが多くなっていた。GSHを添加することでオーキシンキャリア量は増加し、その増加の程度は野生型よりもabo6 変異体で高くなっていた。また、BSOの添加はabo6 変異体においても野生型においてもオーキシンキャリア量を減少させた。GSHとABAの同時添加はABA添加によるオーキシンキャリア量の減少を低減させ、BSOとABAの同時添加はオーキシンキャリア量を大きく減少させた。よって、abo6 変異体でのROS生産はオーキシンキャリア量の減少をもたらし、これがオーキシン輸送能力やオーキシン量の低下を引き起こしていると考えられる。以上の結果から、ABAとオーキシンはミトコンドリアでのROS生産を通して相互作用し、一次根の成長や種子発芽を制御していることが示唆される。

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論文)LAX PANICLE1(LAX1)のシロイヌナズナオーソログ

2012-07-18 22:06:29 | 読んだ論文備忘録

The bHLH protein ROX acts in concert with RAX1 and LAS to modulate axillary meristem formation in Arabidopsis
Yang et al.  Plant J (2012) 71:61-70.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.04970.x

イネlax panicle1lax1 )変異体は枝梗や頴花の数が減少し、栄養成長期の分けつ分裂組織の形成も減少する。また、トウモロコシbarren stalk1ba1 )変異体は生活環の全体にわたって側生分裂組織の誘導が抑制される。LAX1ba1 の転写産物は発達中の側生分裂組織の向軸側の境界領域に蓄積し、bHLH型転写因子のオーソログをコードしている。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Theres らは、LAX1と類似性の高いシロイヌナズナタンパク質をBLAST探索し、bHLH140がLAX1とBA1にもっとも配列が類似していることを見出した。bHLH140のbHLHドメインは、LAX1やBA1と81%の類似性があり、グルタミン(Q)、アラニン(A)、アルギニン(R)のアミノ酸残基を含んだQARモチーフが存在する。シロイヌナズナにはQARモチーフを含んだbHLH140 関連遺伝子が14個存在し、5つのサブグループに分かれ、bHLH140LAX1ba1 は同一サブグループに属している。よって、bHLH140 はシュートの分枝に関してLAX1ba1 と同一の機能があると考え、REGULATOR OF AXILLARY MERISTEM FORMATION (ROX )と命名した。T-DNAの挿入により機能喪失したrox 変異体は、一見、野生型と同一の分枝パターンを示すが、短日条件で育成した4週目の植物体を長日条件に移して花成誘導させると、11枚目までの葉腋に形成される腋芽の割合が野生型よりも低くなっていることがわかった。長日条件下でのrox 変異体の腋芽形成は野生型と同等であることから、ROXは短日条件下での栄養成長初期の腋芽形成に関与していると考えられる。ROXにSRDXを付加したキメラリプレッサーを35S プロモーター制御下で発現させた形質転換体はわい化し、花成遅延を起こした。花は正常な形態をしていたが、稔実率は低くなった。野生型では5枚目までのロゼット葉の葉腋には腋芽はできないが、ROXSRDX 個体では15枚目までの葉腋において腋芽形成が抑制された。ROX のORFを35S プロモーター制御下で発現させた形質転換体は、約半数がわい化し、葉が下向きの湾曲して小型化して葉色が濃くなり、花序が縮まるといった形態変化を示した。このような個体は花成が早くなり、花が小型化し、野生型の花粉で交雑しても稔実率が低下した。また、全てのROX 過剰発現個体において、成長後期に形成されたロゼット葉および茎出葉の葉腋に副芽が形成された。副芽は一次芽もしくは分枝が形成された後に出現し、しばしば茎出葉の葉腋から2つの副芽/分枝が発達した。この副芽形成は分枝の葉腋においても観察された。同一栽培条件で野生型では副芽は殆ど形成されなかった。以上の結果から、ROXは栄養成長期と生殖成長期の両方において葉腋で複数の腋芽を形成させる能力を高めていると考えられる。ROX の発現パターンをin situ ハイブリダイゼーションで見たところ、栄養成長期においては、葉原基の向軸側の境界領域のL3層およびそれよりも下層の細胞において、そしてしばしば茎頂のL1層もしくはL1層とL2層の細胞で発現が見られた。横断切片での観察では、ROX 転写産物は茎頂分裂組織と若い葉原基との境界の中心部で円形に蓄積していた。栄養成長期の腋芽分裂組織形成はSHOOT MERISTEMLESSSTM )の発現に基づいてP16期からP21期にかけての葉腋において見られるとされてきたが、ROX mRNAはP0期からP10/P13期の腋芽分裂組織が誘導される前に一過的に検出された。生殖成長期の茎頂では、花原基の向軸側の境界のL1およびL2層でROX 転写産物の蓄積が見られ、花序分裂組織ではステージ0から4の花原基の腋で発現が見られた。トマトBlind 遺伝子のオーソログのR2R3 MYB型転写因子をコードするREGULATOR OF AXILLARY MERISTEMS 1RAX1 )のノックアウト変異体rax1-3 は成長初期のロゼット葉の葉腋からの腋芽形成が強く抑制されるが、rox-1 rax1-3 二重変異体ではそれぞれの単独変異体よりもさらに強く腋芽の形成が抑制された。しかしながら、生殖成長期の茎出葉の葉腋からの分枝形成はrax1-3 変異体や野生型植物と同等だった。また、二重変異体では二次シュートの葉腋からの三次芽形成が強く抑制された。よって、ROXRAX1 は部分的に機能重複していると考えられる。LATERAL SUPPRESSORLAS )遺伝子は腋芽分裂組織形成において重要な役割を果たしており、las-4 変異体は短日条件下で成熟させると上位3葉のロゼット葉のみに腋芽を形成するが、las-4 rox-1 二重変異体ではロゼット葉の葉腋での腋芽形成は見られず、las-4 rax1-3 二重変異体と類似した分枝形成欠損を示した。また、rox-1 rax1-3 las-4 三重変異体では全てのロゼット葉と茎出葉において腋芽形成が抑制された。よって、ROXRAX1LAS は腋芽分裂組織形成の制御において冗長的に作用していると考えられる。栄養成長期のlas-4 変異体茎頂においてROX の発現は減少していたが、生殖成長期のlas-4 変異体茎頂でのROX の発現は野生型と同等であった。栄養成長期のrox-1 茎頂でのLAS の発現パターンは野生型と類似いていた。栄養成長期のrax1 変異体ではROX の発現量が大きく減少していた。しかし、花成期ではrax 変異体でのROX の発現パターンは野生型と類似していた。よって、LASRAX1 は少なくとも栄養成長期においてはROX 転写産物の蓄積を正に制御していると考えられる。

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論文)フィトクロムBとクリプトクロム1との相互作用

2012-07-13 22:20:02 | 読んだ論文備忘録

Light-dependent, Dark-promoted Interaction between Arabidopsis Cryptochrome 1 and Phytochrome B Proteins
Hughes et al.  JBC (2012) 287:22165-22172.
DOI:10.1074/jbc.M112.360545

フィトクロムB(phyB)とクリプトクロム1(CRY1)は様々な光形態形成の制御をしており、クロストークをしていることが示唆されているが、両タンパク質の直接の相互作用については不明な点が多い。米国 コロラド大学デンバー校Tucker らは、phyBのN末端側(1-621残基、phyBNT)をベイトに用いて、ビリンクロモフォアとしてフィコシアノビリン(PCB)を培地に添加して酵母two-hybrid法によるシロイヌナズナcDNAライブラリーのスクリーニングを行なった。そして、PCBを添加し暗所で培養した培地において、完全長CRY1がphyBと相互作用をすることを見出した。また、共免疫沈降アッセイ試験から、完全長phyBはCRY1のN末端側(1-551残基、CRY1(551))と相互作用をすることが確認された。この相互作用は青色光下では暗黒下よりも低下することから、相互作用はCRY1の光活性化状態に依存していることが示唆される。phyBは暗黒下もしくは遠赤色光下でPr型に赤色光下ではPfr型に構造変化する。そしてPfr型phyBはPIFファミリー転写因子と相互作用することが知られている。CRY1がどちらの型のphyBと相互作用をするかをphyBNTを用いて調査したところ、CRY1はPr型phyBNTと特異的に結合することがわかった。また、phyBは青色光刺激を受けたCRY1とは相互作用をしないことが確認された。phyBの276番目のチロシン残基をヒスチジン残基に置換(Y276H)するとPfr型を維持したままとなる。このphyBNT(Y276H)はPIF3と相互作用をするが、CRY1とは相互作用をしなかった。このことからも、CRY1はPfr型phyBとは相互作用をしないことが示唆される。phyBのN末端100残基に含まれるP1ドメインはPIFタンパク質との相互作用に関与しており、この領域を欠いたphyB(101-621) はPIF3と相互作用をしないが、CRY1との相互作用は維持されていた。よって、CRY1とPIF3はphyBと相互作用をする部位が異なっていると考えられる。また、この相互作用はphyBNTの場合と同様に光依存性を示した。クロモフォアのFDAが結合できなくなったCRY1(CRY1 D390A)はphyBとの相互作用を示さず、phyBとの相互作用にはCRY1がクロモフォアと結合していることが必要であると考えられる。クリプトクロムはN末端側にDNA フォトリアーゼに類似した領域(PHR)を含んでいる。この領域のみを含むCRY1(1-506残基、CRY1(506))はphyBとの相互作用をすることから、このPHRドメインが存在すればphyBとの相互作用が可能であると考えられる。興味深いことに、CRY1(551)とphyBの相互作用はPCBの存在に強く依存しているが、CRY1(506)とphyBの相互作用はPCB非存在下でも確認された。CRY1(506)とCRY1(551)は赤色光下でのphyBとの相互作用が低下したが、CRY1(506)はCRY1(551)よりも赤色光下でのphyBとの相互作用能が高くなっていた。よって、CRY1のC末端側507-551残基はPfr型phyBとの相互作用を妨げる役割があると考えられる。また、CRY1(506)はphyBNT(Y276H)とPCB非存在下においても相互作用を示した。青色光照射によって活性型となったCRY1(506)はphyBと相互作用をしないことから、光刺激を受けたCRY1 PHRはC末端側が存在しなくてもphyBとの相互作用ができないと考えられる。CRY1のホモログであるCRY2はphyBと相互作用をすることが報告されているが、CRY1との相同性が高いCRY2のPHRを含んだN末端側(CRY2 PHR)は、phyBNTと相互作用を示さなかった。よって、CRY1とCRY2はphyBと相互作用をする部位が異なっていると考えられる。CRY1のL409F変異はクロモフォア結合部位近傍のPHRドメインの変異で光刺激を受けた型と類似した状態を示し、この変異体ではphyBシグナル経路の感受性が高まっている。CRY1 L409FはphyBと相互作用を示さないことから、phyBは光刺激を受けていないCRY1とのみ相互作用をしていると考えられ、CRY1 L409F変異はphyB/CRY1相互作用が変化したことによってphyBシグナルが高まったと思われる。phyBとCRY1との相互作用の光照射による変化は、青色光および赤色/遠赤色光のシグナル伝達のクロストークに関与しているものと思われる。

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論文)アブシジン酸トランスポーター

2012-07-10 05:25:18 | 読んだ論文備忘録

Identification of an abscisic acid transporter by functional screening using the receptor complex as a sensor
Kanno et al.  PNAS (2012) 109:9653-9658.
doi:10.1073/pnas.1203567109

シロイヌナズナでの観察から、アブシジン酸(ABA)は水ストレスに応答して維管束の柔細胞で生合成されることが明らかとなっている。よって、維管束で合成されたABAは孔辺細胞まで輸送され、気孔の閉鎖が起こるはずである。しかしながら、ABA輸送の分子機構については明らかとなっていない。理化学研究所植物科学研究センター瀬尾らは、ABA受容体のPYR1にGAL4 DNA結合ドメインを付加し、ABA存在下でABA受容体と相互作用をするPP2C型タンパク質フォスファターゼ(ABI1、HAB1)にGAL4 アクティベーションドメインを付加した酵母two-hybrid系を用いてシロイヌナズナcDNAライブラリーのスクリーニングを行ない、低濃度ABA存在下で両者の相互作用を引き起こす遺伝子としてAt1g69850とAt1g27040を同定した。この2つの遺伝子は硝酸トランスポーター1/ペプチドトランスポーター(NRT1/PRT)ファミリーに属するトランスポーターをコードしており、At1g69850は以前に低親和性硝酸トランスポーターNTR1.2として報告されていた。今回同定された2つの遺伝子と同じグループに属するNTR1/PRTをコードする11のcDNAについて酵母two-hybrid系による調査を行なったところ、4つのcDNA(At1g69850、At1g27040、At3g25260、At3g25280)がABAを細胞内に取り込んでABI1とPYR1との相互作用をもたらすことが判った。そこでこれらの遺伝子をそれぞれABA-IMPORTING TRANSPORTERAIT1 2 3 4 と命名した。これら4種類のAITのうち、AIT1とAIT3はAIT2、AIT4よりもABAに対する親和性が高く、AIT1は生体内で合成される(S )エナンチオマーの(+)-ABAに対する親和性が化学合成された(R )エナンチオマーABA[(-)-ABA]よりも高くなっていた。一方、AIT3はABAの立体異性体で親和性に差がなく、ジベレリンの取り込み能力も有していた。AIT 遺伝子にT-DNAが挿入された変異体の(±)-ABAに対する応答性を見たところ、ait1 変異体は野生型と比べて種子発芽および発芽後の成長において低濃度ABAに対する感受性が低下していることがわかった。AIT1はABAアゴニストのピラバクチンを輸送基質とはしないが、ピラバクチンによる発芽阻害はait1 変異体と野生型で同等に起こった。AIT1 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ種子はABAに対する感受性が高くなっていた。維管束で合成されたABAが孔辺細胞へ輸送される過程にAITが関与しているかを解析するために、気孔の開口を赤外線サーマルカメラで植物体の表面温度を測定することで間接的に調査した。その結果、ait1ait2ait3 の各変異体ともに葉の表面温度は野生型と同等であったが、ait1 変異体の花序茎の表面温度は野生型よりも低くなっていた。そこで、花序茎の気孔開度を測定したところ、ait1 変異体では野生型よりも気孔が開いていることがわかった。よって、AIT1によるABA輸送は花序茎の気孔閉鎖に関与していると考えられる。しかし、AIT1 過剰発現形質転換体では花序茎と葉の表面温度が野生型よりも低くなっていた。これは、維管束で合成されたABAが過剰発現させたAIT1によって細胞に取り込まれてしまうために合成の場から外へ輸送されず、気孔まで到達できないために起こっているのではないかと思われる。AIT1 過剰発現個体の花序茎はABAの移動が阻害されていたことからも、この仮説は支持される。AIT1タンパク質は細胞膜に局在し、AIT1 の発現は浸漬種子において検出され、発芽後は子葉、本葉、胚軸、根、花序茎等の維管束において発現が確認された。AIT1はかつて硝酸トランスポーターNRT1.2とされていたが、硝酸に対する親和性が低いことから、ABAを主な基質とするトランスポーターであると考えられる。また、AIT3は、輸送する基質が多様であることから、AIT1とは生化学的特性が異なるトランスポーターであると考えられる。


理化学研究所のプレスリリース

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論文)SMALL AUXIN UP RNA(SAUR)の機能

2012-07-08 16:07:58 | 読んだ論文備忘録

The SAUR19 subfamily of SMALL AUXIN UP RNA genes promote cell expansion
Spartz et al.  The Plant Journal (2012) 70:978-990.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.04946.x

SMALL AUXIN UP RNASAUR )はオーキシンに素早く応答する遺伝子群として大きな遺伝子ファミリーを構成している。これらの遺伝子は86-189アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、植物に特異的で、機能を有するようなモチーフ等は見出されていない。米国 ミネソタ大学Gray らは、シロイヌナズナの第5染色体上にタンデムに存在し相同性の高いSAUR19-24 について機能解析を行なった。SAUR19-24 ファミリーは88-91アミノ酸の低分子量のタンパク質をコードしており、オーキシンによる発現誘導は他のオーキシン誘導遺伝子と比べるとあまり大きくはない。SAUR の機能を解析するために、SAUR19のN末端側にGFPを付加した融合タンパク質を35S プロモーター制御下で発現する形質転換シロイヌナズナを作成した。明所において、GFP-SAUR19芽生えは野生型よりも細胞が拡張しているために胚軸が長くなった。暗所育成GFP-SAUR19芽生えの胚軸の長さは野生型と同等であったが、GFP-SAUR19芽生えでは茎頂のフックが形成されなかった。これらの傾向は、SAUR21、23、24とGFPの融合タンパク質を発現させた際にも観察されることことから、SAUR19-24ファミリーに共通した形質であると考えられる。しかしながら、GFPタグを付加していないSAUR19SAUR2435S プロモーター制御下で発現させ形質転換体ではそのような表現型は現れす、野生型と同等となった。そこで、SAUR19とSAUR24のN末端にGFPよりも小さいStrepIIタグを付加した融合タンパク質を発現させたところ、GFPを付加した場合と同様に胚軸伸長が観察された。このGFPもしくはStrepIIタグを付加したSAUR19やSAUR24を発現させた芽生えは直立させた寒天培地上での根のうねりが増加し、側根形成数もやや増加した。根のうねり形成のもととなる差異を伴なった細胞増殖にはオーキシン輸送が関与しており、pin2 機能喪失変異体では根のうねりが起こらない。pin2 変異はGFP-SAUR19芽生えの根のうねりを減少させることから、GFP-SAUR19による根のうねり形成にはPIN2 が関与していると考えられる。また、GFP-SAUR19芽生えの胚軸は光屈曲に対する応答性が低下していた。以上の結果から、GFP-SAUR19 の発現は正常な屈曲成長を妨げる作用があると考えられる。GFP-SAUR19 発現個体は栄養成長期のバイオマスが野生型よりも大きく、全て着位のロゼット葉の葉面積が増加していた。しかしながら、葉の細胞数は野生型と同等であり、GFP-SAUR19 の過剰発現は葉の細胞を拡張させることでバイオマスの増加をもたらしていることが示唆される。SAUR19-24 プロモーター制御下でGUS を発現さえるコンストラクトを導入した形質転換体を用いてSAUR の発現パターンを解析したところ、全てのSAUR プロモーターにおいて黄化芽生えの伸長中の胚軸で強い発現が観察され、赤色光/遠赤色光比の低い光を照射して日陰を模した条件においても胚軸での強い発現が見られた。N末端にタグを付けたSAUR を発現させた場合と、タグを付けていないSAUR を発現させた場合で両者の転写産物量は同程度であったが、タグを付けた融合タンパク質はタグを付けていないものに比べて蓄積量が大きく増加しており、タグを付けたSAURタンパク質はユビキチン/26Sプロテアソーム系による分解におけるN末端ルールが乱されたことにより安定性が増していると考えられる。SAURタンパク質は細胞膜に局在することが確認されたが、SAURタンパク質には膜貫通ドメインが見られないことから、膜に表在していると考えられる。タグを付けたSAUR19を発現させた芽生えは、オーキシン(2,4-D)による根の伸長阻害に対して弱い抵抗性を示し、オーキシン応答性が僅かに低下していると考えられる。また、GFP-SAUR19芽生えはオーキシン輸送阻害剤 1-ナフチルフタラミン酸(NPA)に対する感受性が高く、NPA処理によって根の重量屈性が大きし喪失した。GFP-SAUR19芽生えは胚軸での求基的なオーキシン輸送量が野生型よりも多く、SAURはオーキシン輸送に影響を及ぼしていると考えられる。SAURを人工マイクロRNAコンストラクト(amiSAUR19/23/24 )を導入して機能喪失させた系統では胚軸長と葉の大きさが野生型よりも僅かに小さくなり、胚軸の表皮細胞も長さも短くなった。また、amiSAUR芽生えではオーキシン極性輸送量が減少していた。以上の結果から、シロイヌナズナSAURのSAUR19-24サブファミリーは細胞拡張に関連した成長過程において重要な役割を演じていると考えられる。

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論文)MAX2による光形態形成制御

2012-07-04 21:49:32 | 読んだ論文備忘録

MAX2 Affects Multiple Hormones to Promote Photomorphogenesis
Shen et al.  Molecular Plant (2012) 5:750-762.
doi: 10.1093/mp/sss029

シロイヌナズナのF-boxタンパク質MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)は、分枝、老化、光形態形成を制御する因子であり、ストリゴラクトンやカリキンのシグナル伝達に関与していることが知られている。米国 テキサス大学オースティン校Huq らは、MAX2による光形態形成制御機構について解析を行なった。max2 機能喪失変異体(ppsmax2-1max2-2 )種子は赤色および遠赤色光照射下においても発芽が抑制されるが、max2 変異体種子をGA処理した際の発芽を見たところ、発芽率の向上が野生型よりも鈍く、GA感受性が低下していた。また、max2 変異体種子はアブシジン酸(ABA)処理による発芽率低下が野生型よりも強く現れ、ABAに対する感受性が高くなっていた。そこで、max2 変異体でのGAやABAの生合成、異化、シグナル伝達に関与する遺伝子の発現量を調査したところ、max2 変異体ではGA生合成遺伝子(GA3ox1 )の発現量が低下し、GA異化遺伝子(GA2ox2 )の発現量が増加していることがわかった。よって、max2 変異体では内生GA量が野生型よりも少ないことが推測される。また、max2 変異体ではABA生合成遺伝子(ABA1NCED6NCED9 )とABA異化遺伝子(CYP707A2 )の発現量が野生型よりも高くなっていた。この結果からmax2 変異体の内生ABA量に変化が生じているかを推測することは困難だが、ABAの生合成遺伝子と異化遺伝子の両方の発現が増加した場合には内生GA量の減少やABAシグナルの強化が起こることが報告されているので、これら一連の遺伝子発現の変化はmax2 変異体種子の発芽表現型と一致しているといえる。max2 変異体芽生えは脱黄化の際の光感受性が低下しており、胚軸伸長の抑制程度が野生型よりも低下している。したがって、MAX2は光形態形成を負制御する因子の光に依存した分解に関与している可能性があり、そのような因子としてフィトクロム相互作用因子(PIF)が考えられる。しかしながら、pif1 pps 二重変異体の解析から、pps 変異はpif1 変異の上位にあり、MAX2はPIF1のユビキチン化と分解には関与していないことを示唆する結果が得られた。E3リガーゼとして機能するCOP1タンパク質は、赤色、遠赤色、青色光シグナル経路に関与しており、暗所での光形態形成を抑制する。そのためcop1 変異体は光条件に関係なく光形態形成を示す。そこで、cop1 max2 二重変異体芽生えの各色光下での胚軸伸長を見たところ、max2 変異はcop1 変異による脱黄化を抑制する作用を示し、cop1 変異は暗所および光条件下でのmax2 変異体の表現型を抑制することがわかった。よって、MAX2は光形態形成制御においてCOP1と並列してもしくは下流に位置して機能していると考えられる。max2 変異体の示す表現型とオーキシンとの関係をオーキシン応答プロモーターDR5 制御下でGFP を発現するコンストラクトをmax2 変異体に導入して解析したところ、max2 変異体は光照射によって脱黄化させた際の維管束でのGFP蛍光が野生型よりも強く、オーキシン輸送もしくはオーキシンシグナルが強まっていることが示唆される。max2 変異体芽生えはオーキシン輸送阻害剤のNPA処理をすると野生型よりも胚軸伸長の抑制程度が強まったが、胚軸の長さは野生型よりも長い状態を維持していた。よって、max2 変異体芽生えの胚軸が伸長する表現型はオーキシン輸送が関与していると考えられるが、max2 変異体では光シグナルを感受・応答する他の因子を欠質していると思われる。MAX2はストリゴラクトンのシグナル伝達に関与していることから、ストリゴラクトンの生合成経路の変異体(max1max3max4 )種子の赤色光照射による発芽率の変化、芽生えの赤色光や遠赤色光下での胚軸伸長を見たが、野生型と同等であった。したがって、ストリゴラクトンは光形態形成に関与しておらず、MAX2 は未知の機構を介して赤色、遠赤色、青色光下での光形態形成を制御していると考えられる。

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論文)光シグナルとブラシノステロイドシグナルの下流に位置する光形態形成制御因子

2012-06-30 06:00:38 | 読んだ論文備忘録

BZS1, a B-box Protein, Promotes Photomorphogenesis Downstream of Both Brassinosteroid and Light Signaling Pathways
Fan et al.  Molecular Plant (2012) 5:591-600.
doi: 10.1093/mp/sss041

光形態形成は様々なシグナルによって制御されており、光照射とブラシノステロイド(BR)は拮抗的に作用するが、その分子機構の詳細は明らかとなっていない。光によって発現が誘導される遺伝子の多くは、BR欠損変異体やBR非感受性変異体では暗所においても発現することから、光とBRは共通の転写因子を制御していると考えられる。米国 カーネギー研究所Wang らは、BRシグナル伝達に関与する転写因子BRASSINAZOLE-RESISTANT 1(BZR1)が恒常的に活性化型となり暗所での光形態形成が抑制されたシロイヌナズナbzr1-1D 変異体のアクティベーションタグラインからbzr1-1D 変異体の表現型が部分的に抑制された変異体を単離し、bzr1-1D suppressor1-Dominantbzs1-D )と命名した。bzr1-1D;bzs1-D 変異体は強いBR欠損変異を示し、bzr1-1D 変異体よりもわい化しライフサイクルが長い。また、bzr1-1D 変異体において特徴的に見られる茎のねじれがなく、長角果のねじれの程度も低い。bzr1-1D 変異体はBR生合成阻害剤のブラシナゾール(BRZ)に対して感受性を示さず、黄化芽生えをBRZ処理をしても胚軸伸長が抑制されないが、bzr1-1D;bzs1-D 変異体黄化芽生えはBRZ処理によりbzr1-1D 変異体よりも胚軸が短くなる。よって、bzs1-D 変異はbzr1-1D 変異によるBRZ非感受性を部分的に抑制していると考えられる。bzr1-1D 変異体ではBR応答遺伝子のSAUR-AC1XTR6 の発現量が増加しているが、bzr1-1D;bzs1-D 変異体ではこれらの遺伝子の発現量がbzr1-1D 変異体よりも低く、bzs1-D 変異はbzr1-1D 変異による分子レベルの表現型に対しても抑制的作用を示すことが示唆される。BR欠損変異体det2 やBR非感受性変異体bin2-1bzs1-D 変異を導入すると、黄化芽生えはdet2 変異体やbin2-1 変異体よりも胚軸が短くなり、明所育成個体はさらにわい化する表現型を示した。bzr1-1D;bzs1-D 変異体ではAt4g39070 遺伝子の翻訳開始コドンの1084 bp上流にT-DNAが挿入されており、At4g39070 遺伝子の過剰発現が本変異体の表現型をもたらしていることが確認された。このことから、この遺伝子をBZS1 と命名した。BZS1 遺伝子は242アミノ酸からなるB-boxファミリー転写因子をコードしており、本転写因子はBBXファミリーに属することからBBX20と命名されていた。BZS1 は野生型植物で恒常的に発現しており、BR処理によって発現量が減少した。また、BZS1タンパク質は核と細胞質の両方に局在していた。BZS135S プロモーターで発現させた形質転換シロイヌナズナを作出したところ、BZS1 を過剰発現する系統(BZS1-OX )とコサプレッションにより発現量が低下した系統(BZS1-CS )が得られた。BZS1-OX 系統の芽生え胚軸は野生型よりも短く、BZS1-CS 系統は長くなった。BZS1-OX 系統芽生えの根は野生型よりも短くなり、BR処理による根の成長阻害が起こらず、BR非感受性を示した。BZS1-CS 系統芽生えの根は野生型よりも僅かに長く、BR感受性も僅かに高くなっていたが、野生型との有意差は見られなかった。BZS1-OX 系統ではBRによって発現誘導されるDREPPAt5g44670SAUR-AC1 の発現量が野生型よりも低くなっていた。BZS1-CS 系統にdet2 変異やbin2-1 変異を導入すると暗所での胚軸伸長がさらに促進された。以上の結果から、BZS1はBR応答の負の制御因子として機能していると考えられる。BZS1-OX 系統を暗所で育成すると脱黄化した表現型を示し、胚軸が短くなり、子葉が展開した。よって、BZS1は光形態形成を促進し、光シグナル伝達に関与していると考えられる。BZS1-OX 系統は青色光や赤色光を照射した条件下でも胚軸が野生型よりも短く、BZS1-CS 系統では野生型よりも僅かに長くなった。よって、BZS1は複数の光受容体からのシグナルの下流に位置する共通の因子として光形態形成を促進していると考えられる。BZS1に最も類似したホモログであるSALT TOLERANCE HOMOLOG2(STH2)は光シグナル伝達の正の制御因子として機能することが知られており、sth2-1 機能喪失変異体は青色、赤色、遠赤色光に対する感受性が低下する。sth2-1 変異体でBZS1 のコサプレッションを起こすと、様々な強度の青色、赤色光下でsth2-1 変異体よりも胚軸が長くなり、BZS1STH2 は光応答の正の制御因子として機能重複していることが示唆される。明所で育成したBZS1-OX 系統芽生えと野生型との間でマイクロアレイ解析を行なったところ、145遺伝子がBZS1-OX 系統で転写産物量が増加し、140遺伝子の転写産物量が減少していた。これらのうち約66%(189遺伝子)は光に応答する遺伝子に分類され、このうち約89%(168遺伝子)はBZS1-OX 系統と光処理で同じ挙動を示していた。よって、BZS1は光シグナル伝達経路において正の制御因子として機能していると考えられる。BZS1-OX 系統で転写産物量の変化する遺伝子のうち65遺伝子(23%)はBR受容体キナーゼの機能喪失変異体bri1-116 においても発現量変化を示しており、そのうち83%は光シグナルによっても発現制御を受けるものであった。BZS1-OX 系統とbri1-116 変異によって発現制御を受ける遺伝子のうち、約77%は同じ挙動を示した。よって、BZS1はBRと光照射における遺伝子発現の拮抗作用において何らかの役割を果たしていると考えられる。BZS1 の転写産物量は光照射によって減少し、暗黒処理によって増加した。また、BZS1 の発現はcop1 変異体において減少していた。したがって、光照射はBZS1 の転写を阻害することになるが、BZS1の光形態形成促進機能とは逆の挙動となる。興味深いことに、BZS1タンパク質量は光照射によって増加し、cop1 変異体は野生型よりもBZS1タンパク質量が多くなっていた。COP1はE3ユビキチンリガーゼであり、HY5やSTH3といった光シグナル伝達の正の制御因子のユビキチン化・分解に関与している。In vitro プルダウンアッセイによってBZS1とCOP1が物理的相互作用をすることが確認されたことから、BZS1はCOP1によって直接の制御を受ける光形態形成の正の制御をする新たな転写因子であると考えられる。そして、光照射によるCOP1の不活性化がBZS1タンパク質の蓄積をもたらし、光形態形成の誘導を引き起こすと考えられる。一方、BRによるBZS1 の転写阻害がBRによる光形態形成抑制効果をもたらしていると考えられる。

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