Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ストリゴラクトンによる根表皮細胞のPIN2タンパク質の局在変化

2014-06-27 21:53:31 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone analog GR24 triggers changes in PIN2 polarity, vesicle trafficking and actin filament architecture
Pandya-Kumar et al.  New Phytologist (2014) 202:1184-1196.
doi: 10.1111/nph.12744

ストリゴラクトン(SL)はシロイヌナズナの根毛伸長を促進することが知られている。根毛伸長の制御にはオーキシン排出キャリアのPIN2が関与していることから、イスラエル 農業研究機関(ARO)ボルカニセンターKoltai らは、SLとPIN2との関係を調査した。PIN2 プロモーター制御下でPIN2-GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ芽生えを合成SLのGR24で処理すると、一次根伸長領域表皮細胞の細胞膜の上側のPIN2-GFPシグナルが増加し、細胞膜上のPIN2の極性(細胞膜上側と横側との比)も増加した。このような変化は、オーキシン取込キャリアであるAUX1では同様の試験を行なっても見られなかった。よって、SLは根伸長領域の表皮細胞細胞膜上のPIN2タンパク質の極性に影響していると考えられる。SL非感受性変異体max2 の根伸長領域表皮細胞でのPIN2-GFPシグナルの強度と極性は野生型と同等であったが、GR24処理によるPIN2-GFPシグナルの表皮細胞膜上の増加や極性変化は起こらなかった。よって、SLによるPIN2タンパク質の増加や分布の変化はMAX2に依存した作用であることが示唆される。max2 変異体でのPIN2 発現量は野生型よりも僅かに低く、野生型ではGR24処理によってPIN2 発現量が増加したが、max2 変異体ではPIN2 発現量に変化は見られなかった。よって、SLシグナルはMAX2に依存してPIN2 の発現を誘導していることが示唆される。PINタンパク質は細胞膜とエンドソームの間を恒常的に循環しており、この小胞輸送がPINタンパク質の細胞膜上の局在を決定している。小胞輸送の特異的阻害剤であるブレフェルジンA(BFA)処理をすると、野生型ではGR24処理によってPIN2タンパク質を含んだBAFボディが増加したが、max2 変異体ではそのような変化見られなかった。このことから、GR24処理はMAX2に依存してPIN2タンパク質のエンドサイトーシスを誘導していることが示唆される。エンドソームマーカーのARA7とGFPとの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナを用いて、一次根伸長領域表皮細胞でのエンドソームの運動速度を見たところ、GR24処理はエンドソームの運動速度を速めることがわかった。max2 変異体のエンドソームの運動速度は野生型と同等であったが、GR24を添加しても運動速度の変化は見られなかった。したがって、GR24はMAX2に依存して一次根伸長領域の表皮細胞でのエンドソームの運動を誘導していることが示唆される。細胞の小胞輸送にはF-アクチンが関与していることから、TALIN-GFPを導入してアクチン繊維を標識し、根端伸長領域表皮細胞のアクチン構造を観察したところ、GR24処理により細い繊維の割合の増加と太い繊維の減少、繊維の偏在性の低下が見られた。しかしながら、max2 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、GR24はMAX2に依存してアクチン繊維の束化を低下させていることが示唆される。アクチン重合阻害剤LatBによるアクチン繊維の脱重合はGR24処理によって促進されることから、GR24はF-アクチンの束化を低下させることで、アクチンを不安定化し、LatBによるアクチン脱重合を促進していると考えられる。アクチン繊維の束化の低下はアクチン繊維の動態を増加させることが知られている。GR24処理は一次根伸長領域表皮細胞のアクチン繊維の動態を増加させ、この増加はMAX2に依存していることがわかった。GR24処理によるアクチン構造や動態の変化は、オーキシン処理によっても引き起こされた。SLのPIN2、小胞輸送、アクチンの動態に対する効果が根毛伸長促進と関連しているかを見るために、ACTIN2ACT2 )の変異体der1PIN2 の変異体eir1 、PIN輸送関連タンパク質TRANSPORT INHIBITOR RESISTANT3の変異体tir3 およびmax2 変異体にGR24処理をして根毛の伸長を見た。その結果、eir1 変異体はGR24に対する感受性が野生型よりも高くなっていたが、tir3 変異体、der1 変異体、max2 変異体は野生型よりもGR24に対する感受性が低下していた。一方、これらの変異体の根毛伸長はオーキシン処理によって根毛伸長が促進された。以上の結果から、GR24による根毛伸長促進はアクチン繊維の束化の低下による小胞輸送の制御が関連しているが、単純にPIN2に依存したものではないと思われる。

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論文)グルコースによる根の伸長阻害機構

2014-06-20 20:35:57 | 読んだ論文備忘録

Glucose inhibits root meristem growth via ABA INSENSITIVE 5, which represses PIN1 accumulation and auxin activity in Arabidopsis
Yuan et al.  Plant, Cell & Environment (2014) 37:1338-1350.
DOI: 10.1111/pce.12233

グルコースは植物の成長において炭素源としてだけでなく、ホルモン様のシグナル物質としても機能しており、3-5%の高濃度グルコースはシロイヌナズナ芽生えの一次根の伸長を阻害する。中国 武漢大学のLu らは、グルコースによる根の伸長阻害機構を解析した。シロイヌナズナ芽生えの一次根はグルコース添加により分裂領域の長さが短くなり、これは細胞数の減少によるものであることがわかった。また、高濃度グルコースは根の伸長領域と分裂領域の大きさと細胞長を減少させた。しかし、芽生えにショ糖を添加した際には、根の長さ、分裂領域の長さや細胞数に変化は見られなかった。また、代謝されない3-オルソ-メチル-グルコース(3-OMG)を添加すると、根の長さが短くなり、分裂領域の長さと細胞数の減少が起こった。これらの結果から、グルコースは根の分裂組織の成長を阻害するシグナル分子として作用していると考えられる。根の分裂領域が短くなる原因としては、分裂組織細胞の分裂能の低下か分裂組織細胞の伸長・分化過程への早期移行が考えられる。そこで、マーカーとしてCYCB1;1::GUS コンストラクトを導入した形質転換体で根分裂組織の分裂活性を見たが、グルコース添加による変化は見られなかった。また、QC25::GUS もしくはQC46::GUS を導入した形質転換体で分裂組織の幹細胞の活性を見たが、こちらもグルコース添加による変化は見られなかった。したがって、根の分裂領域の伸長・分化への移行がグルコース添加によって早まったことで分裂領域が短くなったと考えられる。植物の成長を調節しているオーキシンの分布について、オーキシンセンサーであるDII-VENUSを用いて調査したところ、グルコース処理は根のオーキシン活性を低下させることがわかった。また、グルコース処理は根端部のオーキシン量を低下させていた。オーキシンの分布は極性輸送よって調節されている。芽生えをオーキシン輸送阻害剤ナフチルフタラミン酸(NPA)で処理すると、グルコース処理をした場合と同様に根分裂組織の細胞数や長さの減少が起こるが、NPAとグルコースを同時に処理しても根分裂組織の異常が相加的に悪化することはなかった。よって、グルコースはオーキシン極性輸送に影響を及ぼすことで根分裂組織の細胞数や長さの制御に関与していると思われる。シュートから根へのオーキシン極性輸送に関与しているオーキシン排出キャリアの変異体pin1 の根は、グルコース処理に対する感受性が低下していた。野生型植物の根のPIN1 発現量はグルコース処理による変化は見られなかったが、PIN1タンパク質量は減少することがわかった。よって、グルコースはPIN1タンパク質の蓄積を制御していると思われる。グルコースによる成長制御はアブシジン酸(ABA)シグナルが関与していることが報告されており、ABA非感受性abi5 変異体はグルコース処理に対して非感受性、ABI5 過剰発現個体は高感受性となった。また、グルコース処理をした芽生えの根ではABI5 の発現が増加していた。以上の結果から、グルコースはABI5 の発現を誘導することでPIN1タンパク質の蓄積を低下させ、このことによって根のオーキシン活性が低下して根分裂組織領域が短くなると考えられる。

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論文)根からシュートへのサイトカイニン輸送に関与するABCトランスポーター

2014-06-14 20:35:04 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis ABCG14 is essential for the root-to-shoot translocation of cytokinin
Ko et al.  PNAS 2014 111 (19) 7150-7155.
doi: 10.1073/pnas.1321519111

トランス-ゼアチン(tZ)型サイトカイニンは根の維管束で合成され、木部から地上部へと輸送されてシュートの発達を調節している。一方、イソペンテニルアデニン(iP)型サイトカイニンはシュートから根へと輸送され、根分裂組織の維管束パターン形成に関与している。しかしながら、サイトカイニンの輸送機構については明らかとなっていない。韓国 浦項工科大学校(POSTECH)のLee らは、サイトカイニンの輸送を担うトランスポーターの探索を目的に、その候補として、1)サイトカイニン生合成酵素をコードするISOPENTENYLTRANSFERASEIPT )の発現している根師部コンパニオン細胞で発現している、2)サイトカイニン生合成遺伝子として重要なIPT3 と発現の挙動が一致している、3)サイトカイニン処理によって発現が誘導される、の3条件に一致する遺伝子のATP-結合カセット(ABC)トランスポーターサブファミリーG14(AtABCG14 )に着目して解析を行なった。シロイヌナズナatabcg14 変異体の芽生えは、葉が野生型よりも小さいが、根は野生型よりも長い。成熟個体は、ロゼット葉が小さく、茎が短く細い。花序茎の木部および師部の細胞数が少なく、細胞の大きさも小さい。植物体あたりの長角果数および種子数が少ないが、種子のは野生型よりも大きかった。このようなatabcg14 変異体のわい化した表現型は、サイトカイニン生合成の変異体やサイトカイニン受容体の変異体において見られる表現型と類似している。そこで、atabcg14 変異体に毎日tZを噴霧したところ、小さい葉と短い茎の表現型が回復した。しかしながら、iPの噴霧ではわい化した表現型は回復しなかった。AtABC14G は根とシュートの両方で発現しているが、根の発現量が高く、根では根端以外の中心柱全域で発現していた。そしてこの発現部位はサイトカイニン合成遺伝子のIPT3CYP735A2 の発現部位と重複していた。また、AtABCG14タンパク質は細胞膜に局在していた。atabcg14 変異体のtZ型サイトカイニン量はシュートでは野生型よりも低く、根では高くなっていた。一方、atabcg14 変異体のiP型サイトカイニン量は根もシュートも野生型よりも高くなっていた。サイトカイニン応答のマーカー遺伝子であるタイプA シロイヌナズナレスポンスレギュレーター(ARR)遺伝子のARR7ARR15 の発現量は、atabcg14 変異体のシュートでは野生型よりも低く、根では高くなっていた。放射性同位元素で標識したtZを芽生えの根に与えてシュートの放射活性を見たところ、atabcg14 変異体は野生型よりも低かった。atabcg14 変異体のシュートのARR5 の発現量は野生型よりも低いが、芽生え全体をサイトカイニンを含む培地に浸漬するとARR5 の発現量は野生型と同等になった。atabcg14 変異体の木部浸出液に含まれるtZ型サイトカイニン量は野生型よりも90%以上少ないが、iP型サイトカイニン量は差が見られなかった。よって、AtABCG14はtZ型サイトカイニンの根からシュートへの木部を介した輸送に必要であることが示唆される。atabcg14 変異体のシュートの表現型がサイトカイニン輸送の低下によるものであることを確認するために、野生型の根にatabcg14 変異体のシュートを接いだところ、シュートの成長が野生型と同等にまで回復した。よって、野生型の根はatabcg14 変異体のシュートを正常に成長させるのに十分な量のサイトカイニンを供給していることが示唆される。一方、atabcg14 変異体の根に接いだ野生型のシュートは、atabcg14 変異体のシュートと同様にわい化した。したがって、atabcg14 変異体の根はシュートの正常な成長に必要な量のサイトカイニンを輸送できていないことが示唆される。以上の結果から、AtABCG14はサイトカイニンをアポプラストに輸送するトランスポーターとして機能しており、AtABCG14を介した根からシュートへのサイトカイニン輸送は、シュートの成長に必要であると考えられる。


共同研究を行なった理化学研究所のプレスリリース

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論文)APETALA1によるサイトカイニン量の制御と花器官形成

2014-06-11 23:08:50 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin pathway mediates APETALA1 function in the establishment of determinate floral meristems in Arabidopsis
Han et al.  PNAS 2014 111 (18) 6840-6845.
doi: 10.1073/pnas.1318532111

MADS-ドメイン転写因子をコードするAPETALA1AP1 )は花分裂組織の外側のwhorl の器官(がく片と花弁)の形成に関与しており、がく片の腋からの二次花形成の抑制にも関与している。しかしながら、AP1による幹細胞の分裂制御機構に関しては明らかとなっていない。中国科学院 遺伝学発生生物学研究所Jiao らは、AP1による分裂組織活性の制御はサイトカイニンシグナルが関与しているのではないかと考え、解析を行なった。シロイヌナズナap1-1 変異体の花ではサイトカイニンによって発現が誘導されるARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR 5ARR5 )の転写産物量が野生型よりも多くなっていた。また、サイトカイニンシグナルによって活性化される合成レポーターpTCS::GFP -ER の発現量やGFP蛍光強度も増加していた。ap1-1 変異体の花序の内生サイトカイニン含量は野生型よりも高く、特に、ゼアチンリボシドとイソペンテニルアデニンが増加していた。よって、AP1はサイトカイニン量とサイトカイニン応答を抑制していることが示唆される。花序をサイトカイニンアナログのベンジルアミノプリンで処理したところ、がく片の腋から二次花が形成されるap1 変異体の表現型と類似した形態変化を示し、花分裂組織が大型化した。サイトカイニン生合成を律速している酵素をコードするISOPENTENYLTRANSFERASE 8IPT8 )をAP1 プロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナも、ap1 変異体と類似した花の形態異常を示した。ap1 変異体にサイトカイニン受容体ARABIDOPSIS HISTIDINE KINASEAHK )の変異を導入したところ、二次花を形成する表現型が緩和された。ap1-1 変異体の花ではサイトカイニン生合成酵素遺伝子のLONELY GUY1LOG1 )の発現量が野生型よりも高く、サイトカイニン分解酵素遺伝子CYTOKININ OXIDASE/DEHYDROGENASE3CKX3 )の発現量が低くなっていた。AP1にグルココルチコイド受容体(GR)を付加した融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したap1-1 cal1-1 二重変異体をデキサメタゾン(Dex)処理してAP1を活性化すると、2時間以内にLOG1 mRNAの減少とCKX3 mRNAの増加が起こり、この転写産物量変化はタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)存在下でも起こった。よって、LOG1CKX3 はAP1の直接のターゲットであると思われる。LOG1 遺伝子およびCKX3 遺伝子のプロモーター領域にはMADS-ドメインタンパク質が結合するとされるCArGモチーフが含まれており、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイから、AP1はこのモチーフを含む断片と相互作用をすることがわかった。また、LOG1 プロモーターまたはCKX3 プロモーターの制御下でルシフェラーゼ(LUC )を発現するコンストラクトを用いたプロトプラスト一過的形質移入アッセイから、AP1はLOG1 プロモーター制御下のLUC 発現を抑制し、CKX3 プロモーター制御下のLUC 発現を活性化することがわかった。したがって、AP1はLOG1 およびCKX3 の発現をCArGモチーフに結合することで制御していると考えられる。LOG1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入したap1-1 変異体では、野生型では発現の見られないようなステージにおいて強いGUS活性が見られた。また、CKX3 は花器官の発達初期に発現が見られるが、ap1-1 変異体発現量が低下し、特に二次花が形成させるがく片の腋での発現が低下していた。AP1 プロモーター制御下でLOG1 mRNAをターゲットとする人工マイクロRNAを発現させるコンストラクト(pAP1::amiR-LOG1 )やCKX3 を発現させるコンストラクト(pAP1::CKX3 )を導入したap1-4 変異体は、二次花形成をする表現型が抑制された。また、LOG1 の残存発現量と二次花形成の頻度との間に相関が見られた。AP1は花成時期を制御しているMADS-ドメイン遺伝子のSHORT VEGETATIVE PHASESVP )、SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS 1SOC1 )、AGAMOUS-LIKE 24AGL24 )の発現を抑制しており、これらの遺伝子を過剰発現させると二次花が形成される。AGL24 を過剰発現させた形質転換体の花序ではARR5 の転写産物量が増加しており、AP1 プロモーター制御下でIPT8 を発現させた形質転換体の花序ではSVPSOC1AGL24 の発現量が増加していた。したがって、サイトカイニンシグナルとこれらの花成時期制御遺伝子はお互いを相互に活性化していると考えられる。以上の結果から、AP1はサイトカイニン生合成の抑制とサイトカイニン分解の活性化を介して花分裂組織での正常な器官形成に貢献していると考えられる。

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論文)糖による頂芽優勢の制御

2014-05-28 23:05:55 | 読んだ論文備忘録

Sugar demand, not auxin, is the initial regulator of apical dominance
Mason et al.  PNAS (2014) 111:6092-6097.
doi: 10.1073/pnas.1322045111

オーキシンは頂芽優勢を引き起こすホルモンであるとされており、古典的なモデルでは、茎頂で生産されたオーキシンが下へと輸送され腋芽の成長を阻害していると考えられている。茎頂を切除すると下位の腋芽が成長して新たな茎頂となること、茎頂切断面からオーキシンを供給すると腋芽の成長が抑制されることが実験的に示されている。しかしながら、詳細に観察すると、1)茎頂切断面からのオーキシン供給は腋芽成長の初期段階は抑制していない、2)摘芯、環状剥皮、オーキシン輸送阻害剤処理による茎のオーキシン欠乏は常に腋芽の成長を促進するわけではない、3)シロイヌナズナ等のある種の植物において、また高温等の成育条件下において、茎頂切除後のオーキシン供給は腋芽の成長を阻害しない、4)茎頂から離れたところにある腋芽では、茎頂切除後、茎のオーキシン量の変化が起こる前に腋芽の成長が観察される、といった茎頂からのオーキシン供給と腋芽の成長との間の不一致が見られる。オーストラリア クイーンズランド大学Beveridge らは、エンドウを実験材料に用いて、茎頂切除による腋芽の成長について解析を行なった。茎頂から40cm下にある腋芽は、茎頂切除後2.5時間以内に成長を開始した。よって、茎頂切除によって発せられたシグナルは時速16cm以上の速さで伝達されたことになり、これはIAAが茎頂から輸送される速度よりも10倍速い。このような速い速度で長距離を移動する腋芽成長誘導シグナルは、茎頂部の展開途中の若い葉を切除しても見られた。この現象を説明する解釈として、IAAよりも速く移動する腋芽成長阻害物質を茎頂部が生産していることが考えられる。そこで、茎に環状剥皮処理をして処理部分より上から下への物質輸送を物理的に遮断し、剥皮部分より下にある腋芽の成長を見た。その結果、大部分の展開中の葉含む位置よりも下で剥皮を行った場合、その下の腋芽は成長を起こさなかった。このことは、オーキシンを含め茎頂部から供給される阻害物質だけでは腋芽の成長促進が起こらないことを示している。さらに、剥皮部分の下にある腋芽は茎頂切除をしても成長が誘導されなかった。したがって、剥皮よりも上のシュートは腋芽の成長を促進するシグナルを生産していると考えられる。同化産物等の栄養物が腋芽成長のシグナルである可能性を検証するために、成熟葉を全て除去したところ、茎頂切除による腋芽成長は完全に抑制された。よって、頂芽優勢を起こすためには成熟葉が必要であることが示唆される。そこで、上位の成熟葉を含むように茎の低い位置で切除して腋芽の成長を見たところ、高い位置で切除した場合よりも腋芽の成長速度が遅くなることがわかった。この腋芽成長遅延は、葉もしくは同化産物が腋芽の成長にとって重要であることを示していると考えられる。同位体二酸化炭素を上位葉に与えて同化産物の移動速度を見たところ、無傷の植物も茎頂を除去した植物も時速150cmで輸送されており、IAAの輸送速度よりも2桁速く、腋芽の成長を誘導するシグナルの伝達速度よりも速いことがわかった。また、茎頂を切除した植物は無傷の植物よりも下位節間に輸送される同化産物量が多いことがわかった。腋芽の内生糖含量を見たところ、ショ糖は茎頂切除4時間後に44%増加していたが、グルコース含量は変化していなかった。また、腋芽へのショ糖供給は茎頂切除によって2倍速くなった。よって、腋芽での糖の増加は局所的なデンプン代謝によるものではなく、輸送されてきたショ糖によるものと考えられ、茎頂切除後に植物は腋芽の成長誘導に十分な時間の中で腋芽の糖含量を増加させていることが示唆される。無傷の植物にショ糖を与えると、茎頂切除した植物と同様に腋芽の成長誘導が起こり、茎の低い位置で切除した場合もショ糖は腋芽を成長誘導させた。添加するショ糖濃度を変えても腋芽の成長誘導は起こったが、ショ糖濃度が高くなると腋芽の成長量が増加した。転写因子をコードするBRANCHED1BRC1 )は、腋芽においてストリゴラクトンやサイトカイニンによって転写制御を受け、腋芽の成長を阻害していると考えられている。無傷植物へのショ糖の添加は、茎頂を切除した場合と同様に、腋芽でのBRC1 の発現量を減少させた。以上の結果から、頂芽優勢や茎頂切除後の腋芽の成長誘導は、糖の供給が制御していると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによるDWARF14タンパク質の分解

2014-05-21 21:23:26 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone Promotes Degradation of DWARF14, an α/β Hydrolase Essential for Strigolactone Signaling in Arabidopsis
Chevalier et al.  Plant Cell (2014) 26:1134-1150.
doi:10.1105/tpc.114.122903

スペイン国立バイオテクノロジーセンターCubas らは、シロイヌナズナの変異体集団を密植して育成し、そのような条件でもシュートが分枝する1因子劣性のseto5 (「seto」はスペイン語で「茂み(bush)」)変異体を得た。seto5 変異体は、野生型植物が平均2つの分枝をロゼットから形成するところを6つ以上形成し、やや草丈が低い表現型を示した。野生型植物は、長日条件で育成し花成や抽だいが始まる段階では茎頂に近い腋芽ほど良く発達する。seto5 変異体においても腋芽の成長勾配は見られるが、腋芽の成長は野生型よりも良くなっていた。seto5 変異体は側生花序の開花が野生型よりも早く、この表現型は分枝の成長を抑制しているBRANCHED1BRC1 )の変異体と類似していた。seto5 brc1-2 二重変異体の側生花序の開花はbrc1-2 変異体と同等であることから、brc1-2 変異はseto5 変異よりも上位にあると考えられる。これらの結果から、野生型SETO5 は腋芽の成長・発達や側生花序の開花に対して抑制的に作用していると考えられる。seto5 変異の原因遺伝子の探索を行なったところ、At3g03990遺伝子の翻訳開始点から506番目の塩基がCからTに置換しており、これによってコードするタンパク質の169番目のアミノ酸がProからLeuに置換することがわかった。At3g03990はイネのDWARF14D14 )、ペチュニアのDECREASED APICAL DOMINANCE2DAD2 )のオーソログであるAt-D14 であり、これらの遺伝子座はストリゴラクトンによるシュート分枝の阻害に関与している。seto5 の表現型はD14 の点変異によって引き起こされており、この変異をd14-seto と命名することにした。d14-seto 変異体の表現から、D14タンパク質のPro-169は重要な役割を持っていることが示唆される。PyMOLを用いてPro169残基のタンパク質3次元構造上の位置を調査したところ、cap helix αD3 のN末端に位置し、側鎖は溶媒側を向いていることがわかった。D14関連タンパク質の配列を比較すると、Pro-169はD14関連タンパク質では保存されていたが、KAI2関連タンパク質ではこの位置がSerとなっていた。長日条件で育成した植物において、D14 の転写産物量はロゼット葉や茎生葉で高く、腋芽、花序、茎、根での発現量は低かった。D14 プロモーター制御下でGUS を発現させ、D14 の発現する組織を可視化したところ、発芽5日目の芽生えでは根と発達中の子葉維管束組織で発現が見られ、根での発現は徐々に維管束環に限定されていった。10日目の芽生えでは胚軸の維管束組織でも発現が見られた。根での発現は分裂組織領域では見られないが、分化領域では強い発現が見られ、伸長領域でも発現が検出され、発現部位は師部に限定されていた。地上部では、葉原基や若い葉で発現が見られ、成熟するにつれて発現部位は師部に限定されるようになり、成熟葉では発現は見られなくなった。花では、花柱や小花柄、花序の先端部で強い発現が見られた。また、腋芽においても発現が見られた。D14 がシュート分枝において細胞非自立的に作用するかを調査するために接木試験を行なったところ、野生型の台木に接いだd14-seto 変異体のシュートで分枝の抑制は見られなかった。よって、D14 mRNAもしくはD14タンパク質は根からシュートへと移動することはなく、D14がシュート分枝を抑制するためには地上部で発現する必要があると考えられる。D14 の発現量はmax2 変異体やmax4 変異体と野生型との間で有意差は見られず、合成ストリゴラクトンGR24や合成オーキシンNAAを処理しても変化は見られなかった。しかし、オーキシン輸送阻害剤NPA処理を行なったところ、転写産物量の減少が見られた。また、腋芽成長を誘導する主茎の摘芯処理や腋芽休眠を誘導する遠赤色光照射を行なってもD14 転写産物量の変化は起こらなかった。そこでD14タンパク質の安定性について調査したところ、D14タンパク質はGR24処理によって減少すること、この減少はmax2 変異体では起こらないことがわかった。よって、ストリゴラクトンはD14タンパク質の速やかな分解を誘導し、この分解にはMAX2 遺伝子の機能が必要であることが示唆される。以前の報告にあるようにD14がストリゴラクトンの受容体であるならば、このような負のフィードバックループはストリゴラクトンシグナルの持続や強度の制御に関与しているものと思われる。

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論文)トライコーム形成におけるジベレリンとジャスモン酸の相乗作用

2014-05-16 22:45:45 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis DELLA and JAZ Proteins Bind the WD-Repeat/bHLH/MYB Complex to Modulate Gibberellin and Jasmonate Signaling Synergy
Qi et al.  Plant Cell (2014) 26:1118-1133.
doi:10.1105/tpc.113.121731

ジベレリン(GA)はトライコームの形成に対して促進的に作用しており、シロイヌナズナのGA生合成変異体ga1-3 はほとんどトライコームが形成されない表現型となる。中国 清華大学Xie らは、ga1-3 変異体にDELLAタンパク質の変異を導入した五重変異体(ga1-3 gai-t6 rga-t2 rgl1-1 rgl2-1RGL3 は野生型)ではトライコームの形成されない表現型が相補されること、della 変異体(gai-t6 rga-t2 rgl1-1 rgl2-1 rgl3-1 )はトライコームの密度が増加することを見出した。これらの結果から、DELLAタンパク質はトライコームの形成を抑制していることが示唆される。また、ga1-3 変異体およびga1-3 変異に幾つかのDELLAタンパク質の変異を導入した変異体をGA処理すると、トライコーム形成密度が野生型にGA処理をした場合と同等にまで増加した。DELLAタンパク質変異の組み合わせとトライコーム密度の関係を定量的に解析した結果、5つのDELLAタンパク質のうち、RGAとGAIがトライコーム形成抑制に対して重要であり、RGL1とRGL2は中程度の作用、RGL3は作用が小さいことがわかった。トライコーム形成にはWD-repeat(TRANSPARENT TESTA GLABRA1 [TTG1])/bHLH (GLABRA3 [GL3] もしくはENHANCER OF GLABRA3 [EGL3])/MYB (GLABRA1 [GL1]もしくはMYB23)複合体が関与していることが知られている。WD-repeat/bHLH/MYB複合体の変異体であるgl3 egl3gl1ttg1 ではトライコームが形成されず、GA添加によるトライコーム形成誘導が起こらなかった。よって、GAによるDELLAタンパク質の分解によって引き起こされるトライコーム形成の活性化はWD-repeat/bHLH/MYB複合体を介してなされていることが示唆される。DELLAタンパク質とWD-repeat/bHLH/MYB複合体との相互作用について酵母two-hybridアッセイによって調査したところ、RGAおよびRGL2のC末端領域(RGA-R、RGL2-R)はGL1、EGL3、GL3と相互作用を示すがTTG1とは相互作用をしないことがわかった。また、この相互作用はプルダウンアッセイや蛍光タンパク質再構成(BiFC)アッセイによっても確認された。よって、DELLAタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体のbHLHとMYBと物理的相を作用を示すと考えられる。シロイヌナズナプロトプラストを用いた一過的発現解析から、GL1、EGL3、GL1の転写活性化因子としての機能はRGAやRGL2によって阻害されることがわかった。実際に、WD-repeat/bHLH/MYB複合体のターゲット遺伝子であるGL2MYB23 の発現は、DELLAタンパク質が蓄積するga1-3 変異体において減少しており、五重変異体では野生型と同等にまで回復していた。五重変異体ではトライコームが高密度で形成されるが、gl3 egl3 変異が加わることでトライコームが形成されなくなった。また、この七重変異体ではGL2 やMYB23 の発現量も減少していた。したがって、GAを介したトライコーム形成においてDELLAタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体よりも上流で機能していることがことが示唆される。ga1-3 変異体でEGL3 を過剰発現させるとトライコームが高密度で形成され、MYB23GL2GL3 の発現量も野生型と同等にまで回復した。よって、GAを介したトライコーム形成においてWD-repeat/bHLH/MYB複合体はDELLAタンパク質の下流で機能している。ジャスモン酸(JA)はトライコーム形成に対して促進的に作用し、JAシグナル伝達を抑制するJasmonate ZIM-domain(JAZ)タンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体と相互作用をして転写活性を抑制することが知られている。一過的発現解析において、RGAとJAZ1を同時に発現させるとそれぞれを単独で発現させた場合よりも強くEGL3やGL1の転写活性を抑制することが示された。したがって、DELLAタンパク質とJAZタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体の転写活性抑制に対して相乗的作用していることが示唆される。GAとJAを同時に処理した野生型植物のトライコーム形成数は、それぞれを単独で処理した場合よりも多くなり、GL2MYB23 の発現量も多くなった。よって、トライコーム形成においてもGAとJAは相乗的に作用している。GA生合成阻害剤のパクロブトラゾールを処理することによって生体内のDELLAタンパク質を蓄積させた植物ではJAによるトライコーム形成やGL2MYB23 の発現誘導が抑制された。ga1-3 変異体においてもJAによるトライコーム形成やGL2MYB23 の発現誘導が抑制され、JAとGAを同時に処理するとトライコーム形成が誘導された。したがって、JAによるトライコーム形成誘導にはGAシグナルが必要であることが示唆される。同じように、GAによるトライコーム形成やGL2 、MYB23 の発現誘導はJAシグナル伝達変異体coi1-1 では抑制されており、GAによるトライコーム形成もJAシグナルを必要とする。以上の結果から、GAとJAはWD-repeat/bHLH/MYB複合体と相互作用をするDELLAタンパク質およびJAZタンパク質の分解を引き起こすことでトライコーム形成に対して相乗的に作用しており、両者のシグナルは相互に従属してトライコーム形成を制御していると考えられる。

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論文)フック形成におけるジャスモン酸とエチレンの拮抗作用

2014-05-14 21:25:37 | 読んだ論文備忘録

Jasmonate-Activated MYC2 Represses ETHYLENE INSENSITIVE3 Activity to Antagonize Ethylene-Promoted Apical Hook Formation in Arabidopsis
Zhang et l.  Plant Cell (2014) 26:1105-1117.
doi:10.1105/tpc.113.122002

多くの地上植物は、発芽の際に茎頂組織や子葉を保護するためにフックを形成する。フックの形成は植物ホルモンや光によって制御されており、エチレンとジベレリンはフック形成の正の制御因子として、光、ブラシノステロイド、ジャスモン酸(JA)は負の制御因子として作用する。エチレンによるフック形成の促進はJAによって抑制されるが、その分子機構は明らかとなっていない。中国 北京大学Guo らは、フック形成の制御におけるエチレンとJAの相互作用について解析した。暗所で発芽させたシロイヌナズナ芽生えは、エチレン生合成の前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)を添加した培地で育成するとフック形成が誇張され、JAを添加した培地で育成するとフック形成が阻害される。ACCとJAを同時に添加すると、エチレンによるフック形成の誇張がJAによって部分的に抑制される。JA受容体に欠損のあるcoronatine insensitive1-2coi1-2 )変異体はACC添加によってフックの誇張を起こすが、JA添加に対しては応答せず、JAとACCの同時添加でフックの誇張を起こした。よって、JAによるフック形成の抑制はCOI1に依存していることが示唆される。恒常的にエチレンシグナルが活性化しているconstitutive triple response1-1ctr1-1 )変異体やETHYLENE INSENSITIVE3EIN3 )過剰発現形質転換体はACC処理をしなくてもフック形成が誇張されるが、JA添加はこれらの個体のフック形成も部分的に抑制した。したがって、COI1を介したJAシグナルはEIN3を介したエチレンシグナルによるフックの屈曲に対して拮抗的に作用することが示唆される。N -アセチルトランスフェラーゼとの類似性を示すHOOKLESS1(HLS1)タンパク質は、シロイヌナズナ芽生えのフック形成に必須な調節因子として機能しており、hls1-1 変異体はフックが形成されない。hls1-1 変異体はエチレンにもJAにも応答しないことから、フック形成におけるエチレンとJAの拮抗作用においてHLS1は共通の調節因子として作用していると考えられる。芽生えをエチレン処理するとHLS1 の発現が1時間以内に誘導され、2時間後には最大となり、6時間後に僅かに減少した。一方、JAはHLS1 の発現量を低下させ、エチレンによるHLS1 発現誘導も抑制した。HLS1 遺伝子はEIN3およびEIN3-Like1(EIL1)の直接のターゲットとなっている。ein3 eil1 二重変異体でのJAによるHLS1 の発現抑制の程度は野生型と比べて非常に低いことから、EIN3/EIL1はJAによるHLS1 の発現抑制に関与していることが示唆される。EIN3/EIL1はF-boxタンパク質のEIN3 BINDING F-BOX PROTEIN1(EBF1)およびEBF2を介してプロテアソーム系によって分解されることが知られており、エチレン処理によってEIN3/EIL1タンパク質量は増加するが、JA処理をするとこれらのタンパク質量は減少した。FBF1とEBF2が機能喪失した変異体ではJA処理によるEIN3タンパク質量の減少が見られないことから、JAはプロテアソーム系を介したEIN3/EIL1の分解を促進していると考えられる。JAはEBF1 の発現を誘導し、この誘導はmyc2 変異体では低下していた。EBF1 遺伝子プロモーター領域には2つのMYC2結合すると推測される部位(MBS1およびMBS2;CACATG)が存在しており、ゲルシフトアッセイやクロマチン免疫沈降-PCR解析(ChIP-PCR)からEBF1 はMYC2の直接のターゲットであることが確認された。ebf1 変異体やmyc2 変異体ではJA処理をしてもEIN3タンパク質量の減少が起こらなかった。これらの結果から、JAはMYC2を活性化しEBF1 の発現を誘導することでEIN3/EIL1の分解を促進していると考えられる。ebf1 変異体とmyc2 変異体のJAによるフック形成抑制を見たところ、myc2 変異体ではJAに対する応答性が喪失していたが、ebf1 変異体ではJAに対する応答性が見られた。よって、プロテアソーム系にるEIN3の分解を迂回してJAによるフック形成抑制を引き起こす経路がMYC2の下流に存在していると思われる。MYC2とEIN3は他の転写因子と相互作用をすることが知られているので、MYC2とEIN3との間で相互作用が見られるかを幾つかの試験で調査したところ、両者は物理的に相互作用を示すことが確認された。myc2 変異体のフック形成はJAに対して感受性を示さないがエチレンには応答した。ein3 eil1 二重変異体はエチレンに対する感受性は喪失しているが、JAに対しては応答した。よって、JAはein3 eil1 変異体においてもHLS1 の発現を阻害しており、EIN3/EIL1の機能が失われていてもフック形成おいてJAに応答する経路が存在していることが示唆される。myc2 ein3 eil1 三重変異体はエチレンやJA処理をしてもフック形成に殆ど変化が見られなかった。このことから、MYC2とEIN3/EIL1はJAとエチレンによるフック形成制御において必須の因子であると考えられる。EIN3のHLS1 プロモーターへの結合に対するMYC2の効果をゲルシフトアッセイによって調査したところ、少量のMYC2はEIN3のHLS1 プロモーターへの結合を高めたが、MYC2添加量を高めるとEIN3のDNA結合能力が低下した。MYC2自身はHLS1 プロモーターには結合しないことから、MYC2はEIN3と相互作用をすることでEIN3のDNA結合を阻害していると考えられる。ベンサミアナタバコを用いた一過的発現実験系から、生体内においてもMYC2がEIN3と相互作用をすることでEIN3の転写活性を抑制することが確認された。以上の結果から、JAによって活性化されたMYC2は、EBF1 の発現を誘導してEIN3/EIL1の分解を促進することと、EIN3と相互作用をしてEIN3の転写活性を抑制することで、フック形成を抑制していると考えられる。

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論文)FLOWERING LOCUS T とリン脂質との結合

2014-05-09 13:51:28 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis florigen FT binds to diurnally oscillating phospholipids that accelerate flowering
Nakamura et al.  Nature Communications (2014) 5:3553.
doi:10.1038/ncomms4553

花成誘導因子であるFLOWERING LOCUS T(FT)は、構造が哺乳類のホスファチジルエタノールアミン(PE)結合タンパク質(PEBP)と構造が類似していることが知られている。PEBPはRafキナーゼ阻害タンパク質(RKIP)として機能し、Rafキナーゼシグナル伝達を阻害するとされている。台湾 中央研究院 植物および微生物学研究所中村らは、FTタンパク質の脂質結合特性を調査し、FTはホスファチジルコリン(PC)と結合すること、他のグリセロ脂質やPEとは結合しないことを見出した。PE生合成の律速酵素であるCTP:ホスフォリルエタノールアミンシチジルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子を人工マイクロRNA(amiPECT1)によって発現抑制し、生体内のPC量を相対的に高めた形質転換シロイヌナズナは、花成が促進された。また、amiPECT1FD プロモーター制御下で茎頂特異的に発現させるコンストラクト(pFD:amiPECT1 )を導入した形質転換体は花成が促進されたが、SUCROSE TRANSPORTER2SUC2 )プロモーター制御下でコンパニオン細胞特異的に発現させた場合には花成促進は起こらなかった。PECT1 を茎頂特異的に過剰発現させた形質転換体は野生型よりも花成が遅延した。これらのことから、茎頂でのPC量は、その濃度に応じて花成時期を制御していると考えられる。pFD:amiPECT1 導入個体は、FTのエフェクターであるAPETALA1AP1 )とSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )の発現量が野生型よりも高くなっていた。pFD:amiPECT1ft-10 tsf-1 二重変異体に導入した形質転換体ではpFD:amiPECT1 導入による花成促進効果が弱まったが、FT を過剰発現させて花成促進した個体にpFD:amiPECT1 を導入した場合にはさらに花成が促進された。よって、茎頂でのPC量の増加による花成時期の制御はFTを介してなされていると考えられる。PCは光、温度、大気成分といった環境要因によって脂肪酸の構成を変化させることが知られている。PCの分子種は概日変化を示し、日中には不飽和脂肪酸の少ないPCが多く、夜間はリノレン酸を含んだPCが増加していた。このような変化はPEでは見られなかった。FTタンパク質と脂肪酸組成の異なるPCとの結合を見たところ、夜間に多い分子種であるdi18:3-PCとFTとの結合は他のより飽和した脂肪酸で構成されたPCよりも弱いことがわかった。したがって、FTと結合するPC分子種は夜間に不足し、夜間はPCと結合したFTが少なくなっていると考えられる。PCの18:2脂肪酸を18:3に不飽和化するFATTY ACID DESATURASE3FAD3 )を過剰発現させた形質転換体は、長日条件での花成が野生型よりも遅くなった。よって、18:3-PCの増加は花成遅延を起こす。以上の結果から、FTタンパク質は、明期に多くなるPC分子種と相互作用を示し、このことは開花時期の促進に関与していると考えられる。

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論文)未知カロテノイド誘導体による側根形成制御

2014-05-06 13:44:42 | 読んだ論文備忘録

Periodic root branching in Arabidopsis requires synthesis of an uncharacterized carotenoid derivative
Van Norman et al.  PNAS (2014) 111:E1300-E1309.
doi:10.1073/pnas.1403016111

米国 デューク大学Benfey らは、シロイヌナズナ芽生えをカロテノイド生合成経路の阻害剤であるノルフラゾン(NF)もしくは2-(4-クロロフェニルチオ)-トリエチルアミン塩酸塩(CPTA)で処理すると、主根がが短くなり、側根数が減少することを見出した。しかしながら、この処理をするとシュートが白化するので、カロテノイド生合成阻害による側根数の減少は二次的な結果とも考えられる。そこで、イソプレノイドやカロテノイドの生合成に直接関与している酵素をコードする遺伝子の1-hydroxy-2-methyl-2-(E)-butenyl 4-diphosphate reductase /CHLOROPLAST BIOGENESIS 6HDR /IspH /CLB6 )やPHYTOENE SYNTHASEPSY )の変異体を観察したところ、阻害剤処理した芽生えと同じように側根数の減少が見られた。また、カロテノイド含量に間接的に影響を及ぼすプラスチド指向性RNAポリメラーゼ SCABRA 3 (SCA3 )の変異体においても側根数が減少していた。したがって、化学物質処理や遺伝的欠損によってカロテノイド生合成が抑制されると側根の減少した表現型となることが示唆される。CPTA処理をした芽生えの根は成長速度が低下し、細胞の大きさも小さくなっていた。しかし、根端部の大きさや形態には変化は見られず、重力に対する応答性も正常であった。CPTAを含む培地から通常の培地へ移植すると側根形成パターンは正常に戻った。よって、カロテノイド生合成は側根形成の初期過程に必要であると考えられる。オーキシン応答プロモーターDR5 制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いて将来側根が形成される部位を視覚化したところ、CPTA処理によってそのような部位の数は大きく減少することがわかった。しかし、部位が形成されれば側根原基は形成された。よって、カロテノイド欠乏条件は将来側根が形成される部位の確立に関与していると考えられる。側根形成は根端部で6時間周期に起こる遺伝子発現の振幅(側根時計)が関与しているが、CPTA処理した根では遺伝子発現周期に異常が見られた。カロテノイドの代謝や生合成に関与する遺伝子の発現に振幅は見られなかったが、側根の形成や発達に関与している細胞列においてカロテノイド生合成の主要な遺伝子の高い発現が見られた。カロテノイド生合成経路の重要なステップを触媒するPSYの発現パターンをPSY プロモーター制御下でLUC を発現するコンストラクトを導入して調査したところ、側根分化の起こる領域や側根で高く、遺伝子発現の振幅が起こる根端部では殆ど発現していないことがわかった。また、側根原基、主根と側根の接合部、根の先端部でLUC の発現が見られた。PSY をユビキチン10プロモーター制御下でpsy 変異体で発現させると表現型の回復が見られたが、PSY を野生型植物で過剰発現させても側根形成に変化は見られなかった。したがって、カロテノイド生合成量を高めても側根時計に変化は起こらないと考えられる。カロテノイド生合成経路はリコペンの環化の段階でα-カロテンとβ-カロテンの2つの経路に分枝し、CPTAはこの環化過程を阻害している。そこで、側根形成に関与しているカロテノイド類を特定するために、α-カロテンやβ-カロテンの生合成経路の酵素遺伝子の変異体での側根形成を野生型と比較した。その結果、α-カロテン類は側根形成に関与していないことが示唆された。次にβ-カロテン類およびこの経路から生成されるアブシジン酸(ABA)やストリゴラクトンといった植物ホルモンの効果について調査した。ABAやストリゴラクトンに関して欠損変異体や添加試験を行なって解析したが、カロテノイド生合成阻害によるこれらの植物ホルモンの含量低下では側根形成の低下を説明できず、β-カロテン経路で合成される未知のカロテノイドが側根形成に関与しているものと思われる。カロテノイド酸化開裂酵素(CCD)1を阻害するD15を芽生えに与えると、地上部の緑化が維持され、一次根の伸長がやや低下し、側根形成が低下した。したがって、D15添加によるカロテノイド分解活性の阻害によって生じた未知のカロテノイドの量的な変化が側根形成に影響しているものと思われる。以上の結果から、側根形成の初期過程に未知のカロテノイド誘導体が関与ていると考えられる。

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