Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)発芽時のアブシジン酸生合成/シグナル伝達を負に制御するE3ユビキチンリガーゼ

2014-08-20 22:05:58 | 読んだ論文備忘録

The Putative E3 Ubiquitin Ligase ECERIFERUM9 Regulates Abscisic Acid Biosynthesis and Response during Seed Germination and Postgermination Growth in Arabidopsis
Zhao et al.  Plant Physiology (2014) 165:1255-1268.

doi:10.1104/pp.114.239699

シロイヌナズナECERIFERUM9CER9 )遺伝子はRINGドメインを含んだE3ユビキチンリガーゼをコードしている。cer9 変異体はクチクラ脂質の組成が変化して葉のクチクラ層が肥厚し、植物体の蒸散量が低下する表現型を示す。サウジアラビア アブデュラ王立工科大学Xiong らは、cer9 変異体のこのような表現型はアブシジン酸(ABA)と関連があるのではないかと考え、解析を行なった。cer9 変異体種子はABA存在下での発芽率が野生型よりも低く、ABAによる芽生え子葉の緑化抑制も野生型よりも強く受けた。よって、cer9 変異体は種子発芽から芽生えの初期成長にかけてのABA感受性が高く、CER9は種子発芽時のABAに対する応答に関与していると考えられる。CER9 転写産物は乾燥種子において蓄積量が高く、発芽と共に急速に減少していった。このCER9 転写産物量の変化はABA量の変化と一致しており、発芽時にABA処理をすることでCER9 転写産物量が増加した。収穫2週間後のcer9 変異体種子は野生型植物種子よりも休眠が強いが、乾燥貯蔵期間を延長することで休眠が弱まった。また、収穫したcer9 変異体種子を低温(層積)処理やジベレリン処理することによって休眠は打破された。さらにcer9 変異体にaba2-1 ABA欠損を導入することによってもcer9 変異の強い休眠性は弱まった。cer9 変異体種子は野生型種子よりもABA含量が高くなっていた。cer9 変異体種子をABAの前駆体であるカロテノイドの生合成を阻害するフルリドンを含む液に浸漬すると、ABA添加による発芽遅延が僅かに抑制された。よって、cer9 変異体種子のABAに対する高感受性には、ABA生合成量の増加が一部関与していると考えられる。cer9 変異体にaba2-1 変異を導入した場合にもABAに対する感受性が部分的に回復した。CER9はクチクラ生合成に関与しており、cer9 変異体の種皮は野生型よりもクチクラ層が僅かに厚くなっている。cer9 変異体の種子休眠が種皮クチクラ構造の変化と関連しているかを調査するために、種皮に穴を開けて発芽試験を行なったが、cer9 変異体種子のABA高感受性に変化は見られなかった。したがって、種皮の透過性や構造はcer9 変異体の発芽とは関連していないことが示唆される。CER9 遺伝子はE3リガーゼをコードしているので、CER9は発芽時にABA生合成もしくはシグナル伝達に関与するタンパク質の分解を制御していることが推測される。そこで、iTRAQ法による発芽種子のプロテオーム解析を行なったところ、野生型植物においてABA処理によって減少したタンパク質の多くは、ABA処理をしていないcer9 変異体においてタンパク質量が減少していることがわかった。したがって、種子発芽の際のタンパク質発現に対するcer9 変異の効果はABA処理と類似しており、CER9は種子発芽時のABA生合成もしくはABAシグナル伝達を負に制御していることが示唆される。そこで、ABAの生合成、異化、シグナル伝達に関与する遺伝子の発現量を比較したところ、cer9 変異体では、ABA生合成に関与する9-CIS-EPOXYCAROTENOID DIOXYGENASE6NCED6 )や、ABAシグナル伝達の正の制御因子をコードするABSCISIC ACID-INSENSITIVE5ABI5 )、ABI3ABI4 の転写産物量が増加していることがわかった。また、ABI5のターゲット遺伝子であるEarly methionine-labeled1EM1 )、EM6 の転写産物量も増加していた。一方、ABAシグナル伝達の負の制御因子をコードするABI2G-PROTEIN-COUPLED RECEPTOR1GCR1 )、ABA-hypersensitive germination2AHG2 )の発現量は減少していた。ABAシグナル伝達の負の制御因子をコードするABI1 の優性変異体abi1-1 はABAに対する応答性が失われる。cer9 abi1-1 二重変異体は種子発芽時のABA応答性においてabi1-1 単独変異体と同じ表現型を示し、cer9 変異によるABA高感受性は抑制された。また、abi3-1abi4-101abi5-1 変異もcer9 変異のABA高感受性を抑制した。よって、ABI3、ABI4、ABI5はABA応答においてCER9の下流で作用していると思われる。以上の結果から、CER9は種子発芽過程のABA生合成およびABAシグナル伝達を負に制御するE3ユビキチンリガーゼであると考えられる。

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論文)COP1タンパク質量を制御するE3ユビキチンリガーゼ

2014-08-14 05:52:51 | 読んだ論文備忘録

The RING-Finger E3 Ubiquitin Ligase COP1 SUPPRESSOR1 Negatively Regulates COP1 Abundance in Maintaining COP1 Homeostasis in Dark-Grown Arabidopsis Seedlings
Xu et al.  The Plant Cell (2014) 26:1981-1991.

doi:10.1105/tpc.114.124024

E3ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は、光形態形成を促進する因子をターゲットとしており、シロイヌナズナcop1 変異体の芽生えは、暗所で育成しても胚軸が短く、子葉が展開し、恒常的な光形態形成を示す。よって、COP1は暗所での芽生えの光形態形成を抑制する中心的な因子として機能している。しかしながら、COP1自身がどのように制御されているかはあまり知られていない。米国 エール大学Deng らは、シロイヌナズナの弱いcop1 変異のcop1-6 変異体を変異原処理し、cop1-6 の表現型を抑制するcop1 suppressor1cus1 )を同定した。暗所で育成したcsu1 cop1-6 二重変異体芽生えは野生型に類似した表現型を示すが、明所もしくは各種波長の光条件で育成した場合は胚軸の長さが野生型とcop1-6 単独変異体の中間となり、長日条件下でcop1 変異体が示すわい化した表現型も部分的に回復した。よって、csu1 は暗所においてはcop1 変異を完全に抑制するが、明所での抑制は部分的である。cus1 変異は機能未知のRINGフィンガータンパク質をコードするAt1g61620の変異であった。LONG HYPOCOTYL5(HY5)はCOP1の下流で作用し、暗所においてCOP1によってユビキチン化される。よって、hy5 変異は暗所においてcsu1 変異と同様にcop1 変異を抑制して胚軸を伸長させる。明所でのcop1-6 変異による胚軸伸長抑制のcsu1 変異およびhy5 変異による回復は部分的であるが、csu1 変異とhy5 変異が同時に加わるとcop1-6 変異が完全に抑制された。明所で育成したcsu1 単独変異体芽生えの胚軸は野生型よりも短くなり、胚軸伸張が促進されるhy5 単独変異体とは逆の表現型を示した。よって、CSU1とHY5は胚軸伸張の明所での阻害に対して逆の作用を示すと考えられる。明所で育成したhy5 csu1 二重変異体芽生えの胚軸の長さはhy5 単独変異体と同等になることから、hy5 変異はcsu1 変異よりも上位にあり、明所におけるcsu1 変異体の胚軸が短くなる表現型はHY5に依存していると考えられる。CSU1タンパク質はCOP1タンパク質と同様に核内構造体(核スペックル)に局在していることが確認された。cop1-6 はアミノ酸が挿入された変異COP1タンパク質をコードしており、生体内のCOP1-6タンパク質量は非常に少ないが、csu1 cop1-6 二重変異体ではCOP1-6タンパク質が野生型植物のCOP1タンパク質と同程度に蓄積していた。COP1はPIF3タンパク質の蓄積を正に制御し、HY5タンパク質を分解のターゲットとしている。よって、cop1-6 変異体ではPIF3タンパク質が減少してHY5タンパク質が増加しているが、csu1 cop1-6 二重変異体ではPIF3タンパク質量が増加してHY5タンパク質量が減少していた。したがって、COP1-6タンパク質は機能を有しており、csu1 変異によるCOP1-6タンパク質量の回復がcop1-6 変異体の表現型を抑制する理由であると思われる。暗所で育成したcsu1 単独変異体芽生えは、COP1タンパク質が増加し、HY5タンパク質が減少していた。暗所において、2分子のCOP1タンパク質と2分子のSPAタンパク質はSPA-COP1複合体を形成し、SPAはCOP1のE3ユビキチンリガーゼ活性を促進している。csu1 変異体黄化芽生えのSPAタンパク質量を野生型と比較したところ、4種類のSPAタンパク質(SPA1-SPA4)のうち、SPA1タンパク質量が増加していた。よって、CSU1は暗所においてSPA1タンパク質量を負に制御していることが示唆される。また、明所においてCSU1はCOP1、HY5、phyA、phyB、PIF3の各種タンパク質量に変化をもたらさなかった。CSU1タンパク質はRING-フィンガードメインを有していることからE3ユビキチンリガーゼとして機能していることが推測される。ユビキチン化アッセイや免疫沈降アッセイから、CSU1がCOP1タンパク質をユビキチン化することが確認された。よって、CSU1は、暗所において、核内のCOP1をユビキチン化してプロテアソーム系による分解へと誘導し、COP1タンパク質量を適切な量に維持することで光形態形成の微調整を行なっていると考えられる。

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論文)光によるMYC転写因子の安定性制御

2014-08-10 17:39:23 | 読んだ論文備忘録

Repression of Jasmonate-Dependent Defenses by Shade Involves Differential Regulation of Protein Stability of MYC Transcription Factors and Their JAZ Repressors in Arabidopsis
Chico et al.  Plant Cell (2014) 26:1967-1980.

doi:10.1105/tpc.114.125047

bHLHファミリー転写因子のMYC2/MYC3/MYC4は、ジャスモン酸(JA)シグナル伝達において遺伝子発現の活性化因子として機能している。スペイン国立バイオテクノロジーセンターSolano らは、35Sプロモーター制御下でMYC2-GFP融合タンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナのGFP蛍光が35Sプロモーターによる遺伝子発現量に比べて弱いことを見出し、MYC2タンパク質の安定性制御について解析を行なった。形質転換体のMYC2-GFP量は翻訳阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)処理をすると直ちに減少した。よって、MYC2は短命なタンパク質であることが示唆される。しかしながら、形質転換体を予めプロテアソーム阻害剤で処理するとMYC2-GFP蓄積量が増加し、CHX処理によるMYC2-GFPの分解が遅延した。よって、MYC2の安定性の制御には26Sプロテアソームが関与していると考えられる。同様の解析をMYC3とMYC4に対しても行ない、両タンパク質ともMYC2と同じように短命でありプロテアソームによる分解を受けることが確認された。MYC2の安定性に対するJA、サリチル酸、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン(ACC)の効果を見たところ、JAはMYC2の分解に対して抑制的に作用することがわかった。また、JA非感受性coi1-16 変異体はMYC-GFP量が野生型よりも低くなっていた。これらの結果から、MYC2の安定性にはJAが関与していることが示唆される。MYC2は青色光に対する応答に関与していることから、日長や光波長によるMYC2の安定性を調査したところ、MYC2量は日中に増加して夕方に最大となり、夜間に減少して明け方に最小となることがわかった。また、MYC2量は暗黒下や遠赤色光下で減少し、赤色光や青色光下では維持された。暗黒下でのMYC2量の減少は、プロテアソーム阻害剤の添加によって抑制され、coi1-16 変異体においても起こった。よって、暗黒下でのMYC2量の減少はプロテアソーム活性が関与しており、COI1は関係していないと考えられる。MYC2-GFP 発現個体にフィトクロムの変異を導入してMYC2量の減少に及ぼす効果を見たところ、脱黄化したphyA 変異導入個体に各種光条件処理をしてもMYC2量は野生型と同等であり、phyAは脱黄化芽生えのMYC2の暗黒下や遠赤色光下での不安定化には関与していないと考えられる。しかし、白色光下で育成したphyA 変異導入個体のMYC2量は野生型よりも僅かに少なく、遠赤色光下で発芽させたphyA 変異導入個体のMYC2量は野生型よりも大きく減少していた。よって、phyAはMYC2の安定化に関与していると考えられる。一方、日長周期下で育成したphyB 変異導入個体はMYC2量が野生型より少なく、赤色光下で発芽させたphyB 変異導入個体のMYC2量は大きく減少していた。以上の結果から、phyBはMYC2の蓄積に関与していることが示唆される。phyB 変異導入個体においてもJA処理によってプロテアソーム系によるMYC2の分解が遅延したことから、JAの効果はphyBとは独立したものであると考えられる。クリプトクロームの二重変異体cry1 cry2 は青色光下でMYC2量が減少することから、青色光によるMYC2の安定化にはCRY1とCRY2が関与していると考えられる。MYC2の暗黒下での不安定化や赤色光や青色光下での安定化は、HY5やHYHといった光形態形成の正の制御因子の挙動と類似しており、これらの因子はE3ユビキチンリガーゼCOP1の直接のターゲットとなっている。MYC2-GFP 発現個体にcop1 変異を導入した黄化芽生えのMYC2量は野生型よりも多く、COP1は暗黒下でのMYC2の分解に関与していると考えられる。また、日長周期下で育成したcop1 変異導入個体のMYC2量は常に野生型よりも多くなっていた。このCOP1によるMYC2の安定化制御は間接的なものであり、MYC2はCOP1の直接のターゲットとはなっていなかった。隣接する植物に光を遮られ遠赤色光の比率の高い光を受けることでphyBが不活性化すると、JAによる虫や病原菌に対する防御応答が負の制御を受ける。また、MYC2、MYC3、MYC4はJAによる虫害防御応答を活性化することが知られている。野生型シロイヌナズナは赤色光/遠赤色光の比を低くして日陰の状態を模倣した条件では白色光下よりも灰色カビ病(Botrytis cinerea )の罹病程度が高まるが、myc2 myc3 myc4 三重変異体では罹病程度に変化は見られなかった。したがって、MYC2、MYC3、MYC4はJAによる灰色カビ病に対する防御に関与しており、日陰による罹病性の増加は遠赤色光によるMYC2、MYC3、MYC4量の減少によって引き起こされているものと思われる。実際に、遠赤色光を多く含む光を照射した芽生えのMYC2とMYC4の量は白色光下で育成した芽生えよりも少なく、JA処理によるMYC2、MYC3、MYC4の安定化も低下した。遠赤色光を多く含む光はJAシグナルを負に制御しているJAZタンパク質の増加を引き起こし、JA処理によるJAZタンパク質の分解も白色光下よりも弱くなった。したがって、JAZタンパク質の安定化も日陰によるJAを介した防御応答の低下に関与していると考えられる。

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論文)腋生分裂組織誘導におけるオーキシンとサイトカイニンの作用

2014-08-02 16:45:52 | 読んだ論文備忘録

The Stem Cell Niche in Leaf Axils Is Established by Auxin and Cytokinin in Arabidopsis
Wang et al.  Plant Cell (2014) 26:2055-2067.

doi:10.1105/tpc.114.123083

オーキシンとサイトカイニンは腋芽の成長に対して拮抗的な制御を行なっており、オーキシンは抑制的に、サイトカイニンは促進的に作用している。しかしながら、腋芽の誘導に対してこれらのホルモンがどのような制御を行なっているかは明らかとなっていない。中国科学院 遺伝学発生生物学研究所Jiao らは、シロイヌナズナにおいて腋生分裂組織(AM)が誘導される領域の細胞はオーキシン含量が低いことを見出した。アグロバクテリウムのオーキシン合成酵素iaaMを葉腋特異的に発現させるとロゼット葉第6葉までのAM形成が抑制された。しかし、茎生葉でのAM形成には変化は見られなかった。したがって、初期に形成されたロゼット葉でAMが正常に誘導されるためには葉腋のオーキシン濃度が低い状態にあることが必要であると考えられる。茎頂分裂組織の形成と維持に関与するSHOOT MERISTEMLESSSTM )遺伝子は、AMが誘導される際に葉腋の中央部の細胞において発現が見られるが、iaaMを葉腋特異的に発現させるとSTM の発現量が低下した。一方、AM形成に関与している LATERAL SUPPRESSORLAS )の発現は、異所的にiaaMを発現させても変化は起こらなかった。したがって、LAS の発現は葉腋のオーキシン最小濃度とは関連していないと考えられる。葉腋でのオーキシン最小濃度は、オーキシン排出キャリアPINFORMED 1(PIN1)によるオーキシン輸送によって形成されていると考えられる。pin1 変異体では葉腋でのオーキシン濃度の低下が見られず、AMの誘導がしばしば損なわれた。したがって、PIN1を介したオーキシン排出は葉腋でのオーキシン最小濃度形成に関与し、AM形成に影響を及ぼしていることが示唆される。次に、AMの誘導過程でのサイトカイニンシグナルを合成レポーターのpTCS:GFP-ER を用いて可視化したところ、葉の発達過程の間に一過的に葉腋でサイトカイニンシグナルが強まることがわかった。この葉腋のでのサイトカイニンパルスはオーキシン最小濃度形成の後に起こり、iaaMを葉腋特異的に発現させるとサイトカイニンシグナルは見られなくなった。よって、葉腋でのサイトカイニンパルスはオーキシン最小濃度に依存していると考えられる。AMの誘導前から誘導時にかけて葉腋においてサイトカイニン受容体をコードするARABIDOPSIS HISTIDINE KINASE 4AHK4 )の強い発現が見られることから、サイトカイニンの受容とシグナルの両者が腋芽出現前の葉腋において活性化されていると考えられる。サイトカイニン受容体の変異体やサイトカイニンシグナル伝達に関与しているB-タイプARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR(ARR-B)の変異体ではAMの誘導が野生型よりも低下していた。また、arr 変異体の葉腋ではSTM の発現量が低下していた。一方、arr 変異体においてPIN1によるオーキシン排出に変化は見られなかった。シロイヌナズナのAM誘導を制御しているREGULATOR OF AXILLARY MERISTEMSRAX )遺伝子の変異体はAMの数が減少しているが、葉腋にサイトカイニンを添加したり葉腋特異的にサイトカイニン合成酵素遺伝子を発現させることによってAMの誘導が回復した。したがって、RAX転写因子はサイトカイニン生合成もしくはサイトカイニンシグナル伝達を介してAMの誘導に関与していると考えられる。以上の結果から、腋生分裂組織の誘導には、葉の発達過程初期に葉腋においてPIN1によって形成されるオーキシン最小濃度とその後のサイトカイニンシグナルパルスが必要であると考えられる。

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論文)アブシジン酸による根の成長阻害機構

2014-07-25 20:45:17 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid inhibits root growth in Arabidopsis through ethylene biosynthesis
Luo et al.  The Plant Journal (2014) 79:44-55.

DOI: 10.1111/tpj.12534

高濃度のアブシジン酸(ABA)はシロイヌナズナの根の成長を阻害することが知られている。中国農業大学Gong らは、根の成長においてABA抵抗性を示す変異体を単離したところ、得られた5つの変異体はいずれもエチレンシグナル伝達に関与する因子をコードしているETHYLENE INSENSITIVE2EIN2 )の変異体であった。過去の研究では、エチレン生合成阻害剤のAVGはABAによる根の伸長阻害を抑制しないが、エチレン受容阻害剤の銀イオンは根の成長に対するABA感受性を低下させることが報告されていた。また、ABA処理はエチレン生産やエチレン応答遺伝子の発現を増加させないとされてきた。そのため、ABAによる根の成長阻害にはエチレンシグナル伝達が関与しており、エチレン生合成は関与していないと考えられてきた。そこで、改めてABAによる根の成長阻害に対するAVGや銀イオンの効果を検証したところ、銀イオンの効果は過去知見が再現されたが、AVG処理もABAによる根の成長阻害を抑制することがわかった。今回の試験では過去の試験よりも10倍低い濃度でAVG処理をしており、過去の試験はAVGが高濃度であったために根の成長に対して毒性を示したものと思われる。通常の条件下において培地にAVGや銀イオンを添加すると根の成長が促進されることから、基底レベルのエチレンも根の成長を阻害していると考えられる。以上の結果から、ABAはエチレン生合成を促進することで根の成長を阻害していると考えられる。次に、ABAやエチレンのシグナル伝達経路の変異体のABA存在下での根の成長に対する銀イオンやAVGの効果を調査した。通常条件で育成した芽生えの根の成長に対する銀イオンとAVGの効果を見たところ、ein2-5 変異体を銀イオン処理した場合には根の伸長に変化は見られなかったが、野生型および他の変異体では銀イオンやAVG処理によって根の成長が促進された。したがって、エチレン生産およびエチレンシグナルは通常条件下での根の成長を抑制していることが示唆される。ABAシグナルの負の制御因子であるタンパク質フォスファターゼ2CのABA-INSENSITIVE 1(ABI1)、ABI2、HYPERSENSITIVE TO ABA 1(HAB1)が機能喪失したabi1 abi2 hab1 三重変異体は野生型よりもABA感受性が高くABA処理によって根の成長が強く阻害されるが、AVGもしくは銀イオンを同時処理することによってABAによる成長阻害が打ち消された。ein2-5 変異体およびetr1-1 変異体のABAによる根の成長阻害はAVG処理によって軽減されたが、銀イオンは効果がなかった。エチレン生産量が高いeto1 変異体は、通常条件において根の長さが野生型の半分程度であり、ABA処理によって根の成長が強く阻害されたが、AVGもしくは銀イオンの添加によってこの阻害から回復した。以上の結果から、根の成長においてエチレンシグナルはABAシグナルの下流で作用していると考えられる。野生型芽生えをABA処理するとエチレン生産量が増加した。ABA高感受性abi1 abi2 hab1 三重変異体はABA処理に関係なく野生型よりもエチレン生産量が増加していた。abi1-1 機能獲得変異体はABA処理をしてもエチレン生産量は増加しなかった。したがって、ABAシグナルはエチレン生産を促進しているといえる。エチレン生合成ではACC合成酵素(ACS)が律速酵素となっていることから、エチレン生合成がABAによる根の成長阻害の主要因であるならば、ACS の機能喪失変異体の根の成長はABAに対して野生型よりも抵抗性となると考えられる。シロイヌナズナは9つのACS 遺伝子をコードしており、機能重複していることから、ACS 遺伝子の単独変異体の表現型は野生型と同等であったが、ACS の六重変異体や七重変異体は根の成長においてABAに対する感受性が大きく低下していた。このことからも、ABAはエチレン生合成を促進することで根の成長を阻害していることが示唆される。ABA処理によるACS 遺伝子の転写産物量の変化について、8つのACS 遺伝子を調査したところ、3遺伝子(ACS2ACS7ACS8 )は発現量が増加し、4遺伝子(ACS4ACS5ACS9ACS11 )は発現量が減少、ASC6 は発現量変化が見られなかった。よって、ABAによるエチレン生合成の促進は転写レベルでなされていることが示唆される。ACSの安定性はタンパク質のリン酸化によって制御されており、タイプ1 ACSはMAPKとCDPKによるリン酸化、タイプ2 ACSはCDPKによるリン酸化を受けるとされている。シロイヌナズナは4つのサブグループに分かれた34のCDPKが存在し、このうちサブグループ1に属するCPK4とCPK11はABAによって活性化される。cpk4-1 変異体、cpk11-2 変異体およびcpk4-1 cpk11-2 二重変異体はABAによる根の成長阻害に対して抵抗性を示し、通常条件でのエチレン生産は野生型と同等だが、ABA処理後のエチレン生産量は野生型よりも低かった。したがって、CPK4とCPK11はエチレン生産に関与していると考えられる。CPK4とCPK11はACS6をリン酸化し、このリン酸化はABA処理によって促進された。CDPKによるACS6のリン酸化部位を特定するために、C末端側のSer残基をAla残基に置換したACS6を用いてCPK4およびCPK11によるリン酸化の程度を見たところ、S437、S462、S467、S469がリン酸化されうることがわかった。また、CDPKによるリン酸化はACS6の酵素活性には影響しないことがわかった。ACS6のリン酸化されうる4つのSer残基をAsp残基に置換してリン酸化状態を模倣したACS6を導入した形質転換体は野生型植物、正常なACS6もしくはSer残基をAla残基に置換したACS6を発現させた形質転換体よりもエチレン生産量が増加し、根の成長が抑制されていた。以上の結果から、ABAはエチレン生産を促進することで根の成長を阻害していると考えられる。

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論文)根の成長には根で生産されるオーキシンが必要

2014-07-21 13:08:53 | 読んだ論文備忘録

Auxin Overproduction in Shoots Cannot Rescue Auxin Deficiencies in Arabidopsis Roots
Chen et al.  Plant Cell Physiol. (2014) 55:1072-1079.

doi:10.1093/pcp/pcu039

根の成長はシュートから供給されるオーキシンを必要とするとされているが、オーキシンは根においても生産されている。米国 カリフォルニア大学サンディエゴ校Zhao らは、シロイヌナズナのマイクロアレイデータから、オーキシン生合成に関与するYUCCA 遺伝子の根での発現を調査し、11のYUC 遺伝子のうち4つ(YUC3YUC5YUC8YUC9 )は根の細胞で強い発現を示し、YUC7 も根において発現しているが、他のYUC 遺伝子は根での発現量が非常に低いか発現していないことを見出した。そして、根で発現している5つのYUC 遺伝子は系統樹上で同じクラスターに属していることがわかった。また、これらのYUC 遺伝子のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクト導入した形質転換シロイヌナズナでは、根でのGUS 発現が確認された。根で発現している5つのYUC 遺伝子を35S プロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナの芽生えは、胚軸が伸長して子葉が上向きとなるといったオーキシン過剰生産の表現型を示すことから、これらのYUC 遺伝子はオーキシン生合成に関与していると考えられる。個々のYUC 遺伝子の変異体は目立った生育異常は見られなかったが、5つのYUC 遺伝子(YUC3YUC5YUC7YUC8YUC9 )の変異体yucQ は一次根が非常に短くなり、重力屈性が見られなくなった。また、一次根の分裂組織のサイズが小さく、分裂組織細胞は肥大し、部分的に分化していた。したがって、これらのYUC 遺伝子は根分裂組織の維持と正常な細胞分裂・分化にとって重要であると考えられる。yucQ 変異体の根の遊離オーキシン含量は野生型の55%程度であった。yucQ 変異体にオーキシンを与えると根の成長が回復した。よって、yucQ 変異体の根の生育異常は局所的なオーキシンの欠乏によるものであると考えられる。野生型植物でYUC3 をシュート特異的に発現させると、胚軸や子葉はオーキシン過剰生産の表現型を示し、オーキシンレポーターDR5-GUSのシュートでの発現が見られたが、根端部ではDR5-GFPの発現量の変化は見られなかった。yucQ 変異体でYUC3 をシュート特異的発現させたところ、地上部ではオーキシン過剰生産の表現型を示したが、根の形態異常や重力屈性異常に変化は見られず、根端部でのDR5-GFPの発現は野生型と同レベルにはならなかった。YUC3 のシュートでの特異的発現は、野生型植物においてもyucQ 変異体においても根の伸長に影響を及ぼさなかった。また、YUC3 のシュートでの特異的発現はシュートのオーキシン含量を増加させたが、根のオーキシン含量に変化は見られなかった。yucQ 変異体でYUC3 を根特異的に発現させたところ、根の成長が野生型と同等にまで回復した。以上の結果から、シュートで生産され根へ輸送されたオーキシンは根の伸長や重量屈性には十分ではなく、根の正常な発達には根で生産されたオーキシンが必要であることが示唆される。

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論文)アブシジン酸による側根成長制御

2014-07-18 23:45:03 | 読んだ論文備忘録

The ABA Receptor PYL8 Promotes Lateral Root Growth by Enhancing MYB77-Dependent Transcription of Auxin-Responsive Genes
Zhao et al.  Sci. Signal. (2014) Vol. 7 Issue 328 ra53

DOI: 10.1126/scisignal.2005051

アブシジン酸(ABA)は根の成長を制御していることが知られている。米国 パデュー大学Zhu らは、シロイヌナズナABA受容体ファミリー pyrabactin resistance 1-like protein をコードするPYL8 のT-DNA挿入変異体pyl8 の芽生えはABAによる側根成長阻害が野生型よりも強く表れることを見出した。よって、PYL8はABAに応答した側根の成長を促進していると考えられる。以前の研究から、主根から出芽した側根は塩ストレスによって成長が抑制されるが、ストレスが持続すると成長が回復することが知られている。pyl8 変異体はABA処理による側根成長抑制から成長を回復するまでの期間が野生型よりも長いことがわかった。よって、PYL8はABA存在下での側根成長抑制からの回復に関与していると思われる。pyl8 変異体芽生えの側根の表現型がABAに対する応答性の低下によるものかを調査するために、ABAシグナル伝達に関与する主要な因子の変異体(abi1-1pyr1pyl1/2/4snrk2.2/3/6 )での側根成長を観察したところ、これらの変異体はABAによる側根成長阻害の程度が野生型よりも弱く、ABA処理から成長回復するまでの期間が野生型よりも短くなっていた。よって、ABAシグナルの中核経路は、ABAによる成長停止を促進していると考えられる。pyl8 変異体は、abi1-1 変異体やsnrk2.2/3/6 変異体と同様に、ABAによる一次根の伸長阻害や側根数の減少の程度が野生型よりも低くなっていた。また、pyl8 変異体の根でのABA応答遺伝子の発現は野生型と同等であり、ABA応答遺伝子の発現に関してPYL8は他のPYLと機能が冗長していると考えられる。したがって、PYL8は一次根の成長や側根誘導において他のPYLと同様の作用があると思われる。浸透圧ストレスによる側根成長の抑制はオーキシン添加によって回復することが知られている。ABA処理による側根成長抑制もオーキシン(IAA)添加によって回復するが、pyl8 変異体は野生型よりも成長抑制からの回復の程度が高かった。また、IAAとABAの同時添加によりpyl8 変異体の側根成長回復期間が野生型と同等になった。よって、pyl8 変異体での成長回復の遅延はオーキシンの欠乏もしくはオーキシン応答性の低下によるものと考えられる。オーキシンは側成長を促進する際に転写因子のMYB77を活性化することが知られている。酵母two-hybridアッセイから、PYL8はMYB77とABA非依存的に相互作用をし、他のPYLはMYB77と相互作用をしないことがわかった。またルシフェラーゼ相補アッセイからPYL8とMYB77の相互作用はABAとIAAを同時添加すると強まることがわかった。MYB77はオーキシン応答遺伝子のプロモーター領域に含まれるDNAモチーフ(MBSI、MBSII)に結合するが、PYL8はMYB77のMBSIへの結合を亢進した。myb77 変異体はABA処理による側根成長阻害が野生型よりも強く起こり、IAAの添加はABAによる側根成長阻害を回復させた。したがって、MYB77はPYL8と同様にABA処理した芽生えの側根成長を促進していると考えられる。PYL8はMYB77のパラログであるMYB44やMYB73とも相互作用を示し、IAA存在下でのMYB44やMYB73の転写促進を強めることがわかった。以上の結果から、ABAは2つの異なる経路で側根成長を制御しており、中核のシグナル伝達経路では側根成長を抑制しているが、ABA受容体の1つであるPYL8はMYB77およびそのパラログと相互作用をしてオーキシンに依存した転写を高めて側根成長を回復させていると考えられる。

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論文)葉の展開を制御するMYB‐様転写因子

2014-07-13 14:35:08 | 読んだ論文備忘録

Transcriptional control of ROS homeostasis by KUODA1 regulates cell expansion during leaf development
Lu et al.  Nature Communications (2014) 5:3767.

DOI: 10.1038/ncomms4767

ドイツ マックス・プランク分子植物生理学研究所のMuller-Roeber とSchippers らは、シロイヌナズナのトランスクリプトームデータから得られた葉が展開する際に誘導される転写因子をコードする遺伝子群について逆遺伝学的な選抜を行ない、MYB-様転写因子をコードするAt5g47390のT-DNA挿入変異体は葉の大きさが野生型よりも小さくなることを見出した。このMYB-様遺伝子をCaMV 35Sプロモーターで恒常的に発現させると葉が大きくなることから、本遺伝子をKUODA1KUA1 、中国語で「拡大」を意味する)と命名した。kua1 変異体の葉は細胞が野生型よりも小さく、このことによって葉のサイズが小さくなっていた。一方、KUA1 を過剰発現させた形質転換体の葉は、細胞数に変化は見られないが、細胞が野生型よりも大きくなっていた。双子葉植物の葉の成長は概日時計による制御を受けており、朝に最も展開率が高くなることが知られている。KUA1 の発現も概日変化を示し、朝に最も転写産物量が多くなることがわかった。朝に発現量が増加する遺伝子はCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1(CCA1)とLATE-ELONGATED HYPOCOTYL(LHY)の2つのMYB転写因子によって発現が調節されている。CCA1 過剰発現個体やcca1 /lhy 二重変異体ではKUA1 の朝の転写産物量増加が見られなくなることから、KUA1 転写産物量の日変化は概日時計によって制御されていると考えられる。KUA1 遺伝子のプロモーター領域はCCA1結合部位モチーフを含んでおり、この結合部位モチーフは他植物(ダイズ、イネ)のKUA1 オーソログにも見られた。CCA1LHY の発現ピークはKUA1 のそれよりも数時間早く起こった。KUA1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクト(pKUA1::GUS )を導入した形質転換体を用いて葉の展開過程でのKUA1 の発現を見たところ、12日目よりも前にはGUS活性は見られず、その後は葉の先端部からGUS活性が現れはじめた。14日目には葉身全体でGUS活性が見られたが、その後は先端部から基部へ向かってGUS活性が低下していった。したがって、KUA1 は葉の展開時特異的に発現していることが示唆される。KUA1タンパク質は中央にMYB-様DNA結合ドメイン、N末端側にCCHC zinc fingerドメインを含んでおり、他にも核局在配列と転写抑制ドメインが見られた。KUA1-GFP融合タンパク質の発現から、KUA1タンパク質は核に局在することが確認された。KUA1のターゲットとなる遺伝子を探索するために、エストラジオール誘導過剰発現(IOX)系を用いてKUA1 を発現誘導することによって発現量の変化する遺伝子を網羅的に解析したところ、KUA1 誘導4時間後で198遺伝子に発現量の変化が見られ、107遺伝子は発現量の増加、91遺伝子は発現量の減少を起こした。KUA1タンパク質は転写抑制ドメインを含むことから、発現量が減少する遺伝子に着目してそれらの遺伝子オントロジー(GO)を見たところ、パーオキシダーゼ活性に分類される遺伝子最も多く、次いで抗酸化活性、酸化ストレス応答に分類されるもの多くなっていた。KUA1によって正に制御される遺伝子のGOはグルタチオントランスフェラーゼ活性が最も多く、KUA1は活性酸素種(ROS)の恒常性に影響していることが示唆される。また、細胞壁や内膜系のGOに分類される遺伝子も発現量の増加が見られることから、KUA1は細胞壁再構築に関与していると考えられる。KUA1 を発現誘導すると10以上のパーオキシダーゼ遺伝子(Prx )の転写産物量が減少し、kua1 変異体ではPrx7Prx10Prx23Prx57 の発現量が増加していた。Prx7 プロモーター制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトと35Sプロモーター制御下でKUA1 を発現するコンストラクトをシロイヌナズナプロトプラストに同時に導入するとルシフェラーゼ活性が低下すること、ゲルシフトアッセイやクロマチン免疫沈降アッセイからKUA1はPrx 遺伝子プロモーター領域と相互作用をすることが確認された。したがって、KUA1はPrx 遺伝子と直接相互作用をし、Prx の発現を抑制していると考えられる。KUA1がPrx 遺伝子の発現を抑制していることから、パーオキシダーゼ活性の増加がkua1 変異体の表現型をもたらしていることが推測される。そこで、kua1 変異体にパーオキシダーゼ阻害剤サリチルヒドロキサム酸(SHAM)処理をしたところ、濃度に応じて植物体の大きさが回復した。クラスIII パーオキシダーゼはアポプラスにおいて過酸化水素を生産しているので、3,3′‐ジアミノベンジジンで染色したところ、kua1 変異体のアポプラストは野生型よりも強く染色された。また、野生型と比較してkua1 変異体の葉は過酸化水素濃度が高く、KUA1 過剰発現個体は低くなっていた。一方、スーパーオキサイド量に差は見られなかった。さらに、kua1 変異体を過酸化水素のスカベンジャーであるヨウ化カリウム(KI)で処理したところ、表現型の回復が見られた。これらの結果から、パーオキシダーゼ活性とアポプラストでの過酸化水素生産量の増加がkua1 変異体の成長抑制をもたらしていると考えられる。野生型植物の細胞壁パーオキシダーゼ活性の日変化を見たところ、ZT4の活性はZT9よりも低く、kua1 変異体では両時刻ともパーオキシダーゼ活性が野生型よりも高くなっていた。また、KUA1 過剰発現個体ではZT9のパーオキシダーゼ活性が野生型よりも低くなっていた。パーオキシダーゼが葉の展開を制御しているかを確認するために、Prx57 を過剰発現させることでパーオキシダーゼ活性をを高めた個体を観察したところ、この個体の葉および細胞の大きさは野生型よりも小さいことがわかった。よって、KUA1は細胞壁局在パーオキシダーゼの作用を介して細胞の大きさを調節していると考えられる。以上の結果から、KUA1は葉でのパーオキシダーゼの発現を抑制して過酸化水素量を低下させることによって細胞壁の架橋を減少させ、このことが細胞の拡張や葉の展開をもたらしていると考えられる。

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論文)イネの器官サイズを制御するAP2型転写因子

2014-07-03 20:36:09 | 読んだ論文備忘録

A Novel AP2-Type Transcription Factor, SMALL ORGAN SIZE1, Controls Organ Size Downstream of an Auxin Signaling Pathway
Aya et al.  Plant Cell Physiol. (2014) 55:897-912.

doi:10.1093/pcp/pcu023

名古屋大学の安益らは、器官サイズを制御する新規因子を同定するために、イネ品種「台中65号」をN-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)処理して作製した変異体ライブラリーの中から、形態が正常で器官サイズが小さくなったsmall organ sizesmos )変異体を複数単離し、その中のsmos1 変異体について詳細な解析を行なった。smos1 変異体は、形態は正常だが、栄養器官や生殖器官の長さが短く、植物全体が野生型よりも小さく、細胞が小型化していた。ただ、葉身、根、籾、稈の水平方向の細胞数が増加しているために幅が野生型よりも長くなっていた。また、smos1 変異体の稈、葉鞘、根では細胞の配列に異常が見られた。smos1 変異体の節間の柔組織細胞では微小管の配向に乱れが生じており、このことが細胞の小型化に関連していると思われる。smos1 変異はOs05g0389000に生じた変異によって引き起こされていた。この遺伝子は9つのエクソンで構成されており、AP2 DNA結合ドメインを有した425アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。smos1 変異体にOs05g0389000ゲノム断片を導入すると表現型が相補されることから、smos1 変異体はOs05g0389000の機能喪失変異体であると考えられる。SMOS1タンパク質は核に局在しており、器官形成や細胞の発達を制御する転写因子として機能していると考えられる。SMOS1 mRNAは調査した全ての器官で検出され、葉鞘と節での発現量が高くなっていた。SMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入してSMOS1 の発現部位を可視化したところ、葉身の先端部や若い葉鞘でGUS活性が検出された。茎頂分裂組織(SAM)ではGUS活性が認められなかったが、SAMの下の領域や初生葉の先端部ではGUS活性が見られた。根では、種子根および発達初期の側根の先端部でGUS活性が見られた。出穂期の稈では、節および節間の基部で強いGUS活性が見られた。花では、外頴、内頴、葯で弱いGUS活性が見られたが、柱頭では発現が見られなかった。よって、SMOS1 は活発に細胞増殖、細胞拡張を行なっている領域で発現していると考えられる。SMOS1 プロモーター制御によってGUS を発現している組織は、オーキシン応答プロモーターDR5 が発現誘導する組織と類似している。このことからSMOS1 の発現はオーキシンによって制御されているのではないかと考え、SMOS1 遺伝子プロモーター領域を調査したところ、オーキシン応答因子(ARF)のターゲットとなりうる配列が2箇所(AuxRE1、AuxRE2)見出された。また、イネ実生をオーキシン処理したところSMOS1 の発現量が増加した。OsARF1タンパク質のSMOS1 遺伝子プロモーター領域への結合をゲルシフトアッセイで調査したところ、OsARF1タンパク質はAuxRE1を含む断片と相互作用をすることが確認された。よって、AuxRE1はオーキシンによるSMOS1 発現のシスエレメントとして機能していると考えられる。SMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入したイネをオーキシン処理するとGUS の発現が誘導されるが、AuxRE1に変異の入ったSMOS1 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトではオーキシン処理によるGUS の発現誘導は見られなかった。これらの結果から、オーキシンはAux/IAA-ARF系を介してSMOS1 の発現を制御していると考えられる。smos1 変異体と野生型との間での遺伝子発現をマイクロアレイ解析で比較したところ、両者で3187遺伝子に発現量の差が見られた。このうち2226遺伝子はsmos1 変異体で発現量が低下し、961遺伝子は発現量が増加していた。発現量の低下した遺伝子は、微小管による運動、翻訳、DNA複製のカテゴリーに分類されるものが多く含まれていた。発現量低下遺伝子の中には細胞の拡張/伸長/分裂に関与する遺伝子も含まれており、その中からタバコphosphate-induced protein 1PHI-1 )およびシロイヌナズナEXORDIUMEXO )と相同性の見られるOs02g0757100(OsPHI-1 )について詳細に解析した。この遺伝子はATP-結合ドメインを有した細胞外タンパク質をコードしており、EXO は細胞拡張の正の制御因子として機能し、機能喪失変異体は細胞が小さくなり細胞数が増加するといったsmos1 変異体と類似した表現型を示すことが知られている。smos1 変異体ではOsPHI-1 の発現量が減少しており、恒常的にSMOS1 を発現させたイネではOsPHI-1 の発現量が増加していた。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイやゲルシフトアッセイからSMOS1タンパク質はOsPHI-1 遺伝子プロモーター領域と相互作用をすることが確認された。RNAiによってOsPHI-1 をノックダウンしたイネはわい化し、smos1 変異体と類似した表現型を示した。OsPHI-1 ノックダウン個体の稈では細胞配列の異常性は見られなかったが、柔組織細胞が小型化し、細胞数が増加していた。また、小型化した柔組織細胞では微小管の配向に異常が見られた。以上の結果から、SMOS1は器官サイズ関して細胞拡張をオーキシンに依存して制御する因子として機能していると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによる根表皮細胞のPIN2タンパク質の局在変化

2014-06-27 21:53:31 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone analog GR24 triggers changes in PIN2 polarity, vesicle trafficking and actin filament architecture
Pandya-Kumar et al.  New Phytologist (2014) 202:1184-1196.
doi: 10.1111/nph.12744

ストリゴラクトン(SL)はシロイヌナズナの根毛伸長を促進することが知られている。根毛伸長の制御にはオーキシン排出キャリアのPIN2が関与していることから、イスラエル 農業研究機関(ARO)ボルカニセンターKoltai らは、SLとPIN2との関係を調査した。PIN2 プロモーター制御下でPIN2-GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ芽生えを合成SLのGR24で処理すると、一次根伸長領域表皮細胞の細胞膜の上側のPIN2-GFPシグナルが増加し、細胞膜上のPIN2の極性(細胞膜上側と横側との比)も増加した。このような変化は、オーキシン取込キャリアであるAUX1では同様の試験を行なっても見られなかった。よって、SLは根伸長領域の表皮細胞細胞膜上のPIN2タンパク質の極性に影響していると考えられる。SL非感受性変異体max2 の根伸長領域表皮細胞でのPIN2-GFPシグナルの強度と極性は野生型と同等であったが、GR24処理によるPIN2-GFPシグナルの表皮細胞膜上の増加や極性変化は起こらなかった。よって、SLによるPIN2タンパク質の増加や分布の変化はMAX2に依存した作用であることが示唆される。max2 変異体でのPIN2 発現量は野生型よりも僅かに低く、野生型ではGR24処理によってPIN2 発現量が増加したが、max2 変異体ではPIN2 発現量に変化は見られなかった。よって、SLシグナルはMAX2に依存してPIN2 の発現を誘導していることが示唆される。PINタンパク質は細胞膜とエンドソームの間を恒常的に循環しており、この小胞輸送がPINタンパク質の細胞膜上の局在を決定している。小胞輸送の特異的阻害剤であるブレフェルジンA(BFA)処理をすると、野生型ではGR24処理によってPIN2タンパク質を含んだBAFボディが増加したが、max2 変異体ではそのような変化見られなかった。このことから、GR24処理はMAX2に依存してPIN2タンパク質のエンドサイトーシスを誘導していることが示唆される。エンドソームマーカーのARA7とGFPとの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナを用いて、一次根伸長領域表皮細胞でのエンドソームの運動速度を見たところ、GR24処理はエンドソームの運動速度を速めることがわかった。max2 変異体のエンドソームの運動速度は野生型と同等であったが、GR24を添加しても運動速度の変化は見られなかった。したがって、GR24はMAX2に依存して一次根伸長領域の表皮細胞でのエンドソームの運動を誘導していることが示唆される。細胞の小胞輸送にはF-アクチンが関与していることから、TALIN-GFPを導入してアクチン繊維を標識し、根端伸長領域表皮細胞のアクチン構造を観察したところ、GR24処理により細い繊維の割合の増加と太い繊維の減少、繊維の偏在性の低下が見られた。しかしながら、max2 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、GR24はMAX2に依存してアクチン繊維の束化を低下させていることが示唆される。アクチン重合阻害剤LatBによるアクチン繊維の脱重合はGR24処理によって促進されることから、GR24はF-アクチンの束化を低下させることで、アクチンを不安定化し、LatBによるアクチン脱重合を促進していると考えられる。アクチン繊維の束化の低下はアクチン繊維の動態を増加させることが知られている。GR24処理は一次根伸長領域表皮細胞のアクチン繊維の動態を増加させ、この増加はMAX2に依存していることがわかった。GR24処理によるアクチン構造や動態の変化は、オーキシン処理によっても引き起こされた。SLのPIN2、小胞輸送、アクチンの動態に対する効果が根毛伸長促進と関連しているかを見るために、ACTIN2ACT2 )の変異体der1PIN2 の変異体eir1 、PIN輸送関連タンパク質TRANSPORT INHIBITOR RESISTANT3の変異体tir3 およびmax2 変異体にGR24処理をして根毛の伸長を見た。その結果、eir1 変異体はGR24に対する感受性が野生型よりも高くなっていたが、tir3 変異体、der1 変異体、max2 変異体は野生型よりもGR24に対する感受性が低下していた。一方、これらの変異体の根毛伸長はオーキシン処理によって根毛伸長が促進された。以上の結果から、GR24による根毛伸長促進はアクチン繊維の束化の低下による小胞輸送の制御が関連しているが、単純にPIN2に依存したものではないと思われる。

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