Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)根のジャスモン酸シグナル伝達におけるNINJAの役割

2013-10-21 22:35:02 | 読んだ論文備忘録

Role of NINJA in root jasmonate signaling
Acosta et al.  PNAS (2013) 110:15473-15478.
doi:10.1073/pnas.1307910110

植物に機械的な傷害を与えるとJASMONATE ZIM DOMAIN 10JAZ10 )のようなジャスモン酸(JA)応答遺伝子が迅速に強く発現誘導される。スイス ローザンヌ大学Farmer らは、JAZ10 プロモーター制御下で分泌性GUS(GUSPlus)を発現させるコンストラクト(JGP )を導入したシロイヌナズナを用いて、JAを介した傷害シグナル伝達機構の解析を行なった。芽生えの子葉の一方に穴を開け、2時間後にGUS染色を行なうと、強いJGP の活性化が傷害を与えた子葉だけでなく、シュート、胚軸、根においても観察される。しかし、JA欠損変異体aosJGP を導入した場合にはJGP 活性は見られなかった。そこで、JGP を導入した植物体をEMS処理して得られた集団からJGP 活性が変化している変異体の選抜を行なった。子葉に傷害を与えた後のJGP 活性が低下している変異体には、JA受容体をコードするCOI1 の変異体やJA生合成酵素をコードするOXOPHYTODIENOATE-REDUCTASE 3OPR3 )の変異体が含まれていた。変異体61E系統は、地上部の器官では比較的正常なJGP 活性を示すが、根では活性が殆ど現れなかった。61Eは、JA-Ile生成を触媒するGH3ファミリータンパク質をコードするJASMONATE RESISTANT 1JAR1 )の変異体であった。jar1 変異体の子葉に傷害を与えると、JAZ10 の発現は誘導されるが、野生型よりも低く、根では殆ど発現が見られなかった。これは傷害処理からGUS染色までの時間を延長(8時間)しても変わりはなく、jar1 変異体芽生えをメチルジャスモン酸(MeJA)処理をしても根のJGP 活性化は起こらなかった。したがって、jar1 変異体では胚軸と根を境に感受性組織と非感受性組織の明確な区切りが存在していると考えられる。一方、子葉に傷害を与えたときのJGP 活性は正常だが、根と胚軸では子葉に傷害を与えなくても恒常的にJGP 活性を示す変異体が3系統得られた。これらの変異体は、JAシグナルを負に制御するリプレッサー複合体の因子をコードするNovel Interactor of JAZNINJA )の異常によるものであり、これらの変異体をninja-1ninja-2ninja-3 と命名した。ninja 変異体では、傷害処理1時間後のJAZ10 転写産物量が野生型よりも多く、根は地上部よりも転写産物量が多くなっていた。ninja-1 aos 二重変異体は、ninja-1 単独変異体と同様に、根と胚軸での恒常的なJGP 活性が見られた。よって、このJGP 活性化にJAは関与していない。しかし、ninja-1 aos 二重変異体は、子葉に傷害を与えても地上部でのJGP 活性化が起こらなかった。3つのninja 変異体はNINJAタンパク質のC末端側にあるJAZタンパク質との相互作用部位が欠けており、JAZタンパク質によるJAシグナルの抑制機能が作用していないと考えられる。野生型植物でJAZ10.3JAZ10.4 を過剰発現させるとMeJA処理による根の伸長阻害が起こらなく、JA非感受性を示すが、JAZ10.3JAZ10.4 を発現させたninja 変異体はMeJAに対して感受性を示した。したがって、ninja 変異はJAZ10.3やJAZ10.4によるJAシグナル抑制効果を減じさせていると考えられる。JAシグナル伝達において、bHLH型転写因子のMYC2が活性化因子として機能しているが、ninja 変異体にmyc2 変異(jin1-7 )を付与しても胚軸や根での恒常的なJAZ10 の発現は見られた。ninja 変異体芽生えは野生型芽生えよりも根が短く、JAによる根の伸長阻害と類似した表現型を示し、この表現型は、ninja aos 変異体やninja jin1-7 変異体でも見られた。したがって、NINJAの機能喪失は、根の成長抑制をJAのない状態でも引き押し、この過程にMYC2は関与していないことが示唆される。ninja 変異体での根の伸長抑制は、細胞伸長の抑制によるところが大きいことがわかった。以上の結果から、NINJAは根においてJAシグナルを抑制して正常な細胞伸長を引き起こしていることが示唆される。また、根と地上部組織では、JA生合成から転写活性まで、全てのレベルでJA経路の制御が異なっていると考えられる。

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論文)カリキン/ストリゴラクトンのシグナル伝達においてMAX2の下流で機能する因子

2013-10-17 05:55:16 | 読んだ論文備忘録

SUPPRESSOR OF MORE AXILLARY GROWTH2 1 Controls Seed Germination and Seedling Development in Arabidopsis
Stanga et al.  Plant Physiology (2013) 163:318-330.
doi:10.1104/pp.113.221259

煙から発見された非生物化学シグナル物質のカリキン(KAR)と内生の植物ホルモンのストリゴラクトン(SL)は、共にMORE AXILLARY GROWTH2 (MAX2 )を介してシグナル伝達を行なっている。しかしながら、MAX2よりも下流のシグナル伝達については明らかとなっていない。米国 ジョージア大学Nelson らは、MAX2 遺伝子がフレームシフトを起こしたmax2-8 変異体をEMS処理して得られた種子をKAR存在下で発芽させ、max2 変異が抑制されて種子休眠が浅くなった劣性の復帰突然変異体suppressor of max2 1smax1max2 を単離した。smax1 変異は、At5g57710遺伝子の第1エクソン内の塩基置換(C→T)により、Arg-292が未成熟終止コドンとなったものであることがわかった。max2 変異体は発芽率が低く、KAR処理やGR24処理に対して非感受性で発芽率の向上は見られないが、smax1 max2 変異体は野生型よりも発芽率が高くなっていた。また、smax1 変異は二次休眠を引き起こす高温条件下においてもmax2 変異による発芽率低下を回復させた。max2 変異体の芽生えは、光に対する応答正が低下し、胚軸が長くなり、子葉が小さくなる。smax1 max2 変異体の芽生えの胚軸は野生型よりも短く、KAR処理をした野生型芽生えと同程度の長さとなった。smax1 max2 変異体は子葉も拡張して野生型芽生えと同等の表現型となった。max2 変異体の子葉は葉柄が伸長して上向き(下偏生長)となるが、smax1 max2 変異体ではこれらの形質も回復した。以上の結果から、smax1 変異はmax2 変異体の成長初期過程において見られる一連の表現型を抑制していると考えられる。KARやSL処理によって、D14-LIKE2DLK2 )、KAR-UP F-BOX1KUF1 )は発現誘導され、INDOLE-3-ACETIC ACID INDUCIBLE1IAA1 )は発現抑制されることが知られており、max2 変異体ではDLK2KUF1 の発現が野生型よりも低く、IAA1 の発現は高くなっている。smax1 max2 変異体ではDLK2IAA1 の転写産物量が野生型と同等になり、KUF1 の転写産物量は野生型よりも高くなっていた。よって、smax1 変異はmax2 変異によるマーカー遺伝子の発現に対する効果をも抑制しており、SMAX1はKAR/SLシグナル伝達においてMAX2の下流において作用していると考えられる。max2 変異体は側根数の増加、分枝数の増加、一次花序茎の伸長抑制といった表現型を示すが、smax1 max2 変異体のこれらの表現型はmax2 変異体と同等であった。また、smax1 単独変異体の表現型は野生型に類似していた。max2 変異体は葉の老化が遅延するが、smax1 max2 変異体においても同様の遅延が見られた。したがって、SMAX1はMAX2の関与している種子発芽や芽生えの成長過程に関しては影響しているが、MAX2による全ての成長制御に関与している訳ではないことが示唆される。SMAX1 は機能未知の8つの遺伝子からなるファミリーに属しており、他のファミリー遺伝子をSMAX1-LIKE2SMXL2 )〜SMXL8 と命名した。これらのファミリーと最も類似性の高い遺伝子は細胞質ヒートショックタンパク質100/カゼイン分解ペプチダーゼB(Hsp100/ClpB)をコードするHEAT SHOCK PROTEIN 101AtHSP101 /HOT1 )であるが、SMAX1にClpB様のシャペロン活性があるかは不明である。SMAX1 転写産物は乾燥種子に多く、他のSMXL 転写産物よりも多くなっていた。SMAX1 は、芽生えとロゼット葉では他のSMXL よりも発現量が高いが、老化葉ではSMAX1SMXL7 の発現量が高く、根ではSMXL3 、腋芽ではSMXL7 の発現が高くなっていた。SMXL 遺伝子がSMAX1 と同じような機能を持っているのであれば、このような組織特異的な発現パターンはMAX2による成長制御と関連を反映している可能性がある。KAR/SLによるSMAX1 ファミリー遺伝子の発現量変化を見たところ、GR24処理によってSMXL2SMXL3SMXL6SMXL7SMXL8 の発現量が増加し、KAR処理ではSMXL2SMXL8 の発現量が増加した。また、max2 変異体ではSMAX1SMXL2 の発現量が減少していた。よって、SMAX1 ファミリー遺伝子の一部はMAX2を介した負のフィードック制御を受けているものと思われる。smax1 変異体の芽生えはKAR/SL処理した野生型植物と類似した表現型を示すが、KAR/SLに対する応答性は見られることから、SMAX1 ファミリー遺伝子は芽生えにおいて部分的な機能重複があるものと思われる。以上の結果から、SMAX1は、種子発芽や芽生えの成長において、MAX2の下流でKAR/SL応答の負の制御因子として機能していると考えられる。

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論文)ジャスモン酸応答を負に制御するbHLH型転写因子

2013-10-14 21:44:43 | 読んだ論文備忘録

Basic Helix-Loop-Helix Transcription Factors JASMONATE-ASSOCIATED MYC2-LIKE1 (JAM1), JAM2, and JAM3 Are Negative Regulators of Jasmonate Responses in Arabidopsis
Sasaki-Sekimoto et al.  Plant Physiology (2013) 163:291-304.
doi:10.1104/pp.113.220129

理化学研究所 植物科学研究センター白須らは、ジャスモン酸(JA)シグナル伝達に関与する新規転写因子を見出すために、シロイヌナズナの2220のJA応答遺伝子について共発現ネットワークを構築し、233遺伝子を発現パターンの特徴から11のグループにクラスター化した。このうち、JAや傷害に対して早くかつ強く応答する128の遺伝子が含まれるクラスター7にはMYC2 が含まれており、このクラスター内でMYC2タンパク質とアミノ酸レベルで30%の相同性があるbHLH型転写因子をコードするJASMONATE-ASSOCIATED MYC2-LIKE1JAM1 、At2g46510)について詳細な解析を行なった。シロイヌナズナの133のbHLH型転写因子のうち、MYC2とJAM1はグループIIIに含まれ、JAM1と小さなクレイドを形成する2つのホモログをJAM2(At1g01260)、JAM3(At4g16430)と命名した。芽生えをメチルジャスモン酸(MJ)処理するとJAM1JAM2 の発現量は増加したが、JAM3 の発現量は変化が見られなかった。JAM1JAM2JAM3 の発現量は、myc2 変異体やcoi1 変異体で減少していることから、JAM の発現はCOI1MYC2 によって制御されていると考えられる。JAM 遺伝子のノックアウト変異体について、MJ添加培地での芽生えの根の伸長を調査したところ、野生型と大きな差は見られなかった。そこで、交雑によって変異を集積したところ、jam1 jam2 jam3jam x3)三重変異体はMJ存在下で野生型よりも根が短くなり、jam1 jam2jam1 jam3jam2 jam3 の各二重変異体は野生型とjam x3変異体との中間の表現型を示した。この実験系においてmyc2 変異体芽生えの根は野生型よりも長くなるが、myc2 jam x3四重変異体ではmyc2 変異体の表現型が打ち消され、myc2 jam1 jam2 三重変異体やmyc2 jam1 jam3 三重変異体ではmyc2 変異体と同じ表現型を示した。これらの結果から、JAM1JAM2JAM3 は冗長的に作用し、JA応答においてMYC2 と拮抗していることが示唆される。jam 変異によるJA応答遺伝子の発現パターンの変化を見たところ、VSP2 遺伝子の発現がMJ処理したjam x3変異体において増加しており、この発現量増加はmyc2 変異が加わることによって打ち消された。PDF1.2 遺伝子の発現は、MJ処理したjam x3変異体と野生型で同程度であった。よって、JAMVSP2 の発現を負に制御し、PDF1.2 の発現には関与していないと考えられる。他のJAシグナルの下流に位置する遺伝子についてGeneChipを用いて網羅的に解析したところ、82プローブがMJ処理したjam x3変異体において野生型よりも発現量が増加しており、8プローブが発現量を減少させていた。したがって、90プローブに対応する97遺伝子がJAM の下流に位置するターゲット候補遺伝子であると考えられる。これらの候補遺伝子には、アレンオキシドシンターゼ(AOS )、Ja-Ile-12-ヒドロキシラーゼ(CYP94B3 )、JA カルボキシルメチルトランスフェラーゼ(JMT )、ヒドロキシルジャスモン酸スルフォトランスフェラーゼ(ST2A )をコードする遺伝子が含まれており、定量PCRを行なったところ、AOSCYP94B3JMTST2A の発現量がjam1 jam2 変異体やjam x3変異体において増加していた。したがって、JAM はMJ処理時にJA代謝に関与する遺伝子の発現を抑制していると考えられる。JA代謝に関与する遺伝子は葉に傷害を与えることによって発現量が増加するが、jam x3変異体は野生型よりも発現量が高く、myc2 変異体では低くなっていた。jam x3変異体にmyc2 変異が加わると、一部の遺伝子は発現量の増加が抑制された。したがって、JAM は、MYC2 とは逆に、JA代謝経路に関与する遺伝子の傷害による発現誘導を負に制御していると考えられる。全ての遺伝子型で傷害によりジャスモン酸類の蓄積が増加したが、jam x3変異体ではOPDA、JA、12-OH-JAの量が野生型よりも高くなっていた。myc2 変異体でのOPDAとJAの蓄積は野生型と同等であったが、myc2 jam x3変異体のOPDA、JA含量はmyc2 変異体よりも高くなっていた。したがって、JAM は傷害葉でのOPDA、JA、12-OH-JAの蓄積を負に制御している。MYC2は下流の遺伝子の発現をANAC019ERF1ORA59 といった転写因子をコードする遺伝子の発現を介して制御している。JAM によって発現が制御されている遺伝子の中には転写因子をコードしていると考えられるものが14個あり、その中にはANAC019ERF1 が含まれていた。MJ処理によるANAC019 の発現誘導は、jam1 jam2 変異体、jam x3変異体で高くなっており、myc2 jam1 jam2 変異体、myc2 jam x3変異体ではmyc2 変異体と同程度であった。したがって、JAMANAC019 の発現を負に制御していると考えられる。ERF1 のMJ処理による発現誘導は、jam1 jam2 変異体、jam x3変異体で野生型よりも高く、myc2 jam1 jam2 変異体、myc2 jam x3変異体でmyc2 変異体よりも高くなっていた。よって、JAMERF1 の発現を野生型においてもmyc2 変異体においても負に制御している。これらの結果から、JAM による下流遺伝子の発現制御にANAC019ERF1 が関与していると考えられる。この他にも、PAP1MYB47RAP2.6 、bHLH型転写因子をコードするAt1g10585がJAMによる下流遺伝子の発現制御に関与していると考えられる。このうち、PAP1 はアントシアニン生合成酵素遺伝子のDFR /TT3 を制御していることが知られており、jam x3変異体のアントシアニン含量は野生型よりも高くなっていた。アントシアニンの蓄積はショ糖処理によっても促進されるが、jam1 jam2 変異体やjam x3変異体をショ糖処理するとアントシアニン量がさらに高まることから、JAM はJAによるアントシアニン蓄積だけでなく、ショ糖による蓄積についても負に制御していると考えられる。以上の結果から、JAM はJAに応答する遺伝子の多くに対してMYC2 と拮抗的に作用して発現を負に制御していると考えられる。

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論文)サリチル酸による葉の老化制御

2013-10-09 21:24:06 | 読んだ論文備忘録

Salicylic acid 3-hydroxylase regulates Arabidopsis leaf longevity by mediating salicylic acid catabolism
Zhang et al.  PNAS (2013) 110:14807-14812.
doi:10.1073/pnas.1302702110

米国 コーネル大学Gan らは、シロイヌナズナの葉の老化過程のトランスクリプトーム解析から、老化関連遺伝子としてSAG108 と命名した遺伝子At4g10500を同定した。この遺伝子はサリチル酸(SA)の異化を触媒するSA 3-ヒドロキシラーゼ(S3H)をコードしており、老化していない葉では殆ど転写産物は検出されないが、老化葉では転写産物の蓄積が見られた。また、S3H の発現はSA処理によって誘導された。T-DNA挿入s3h 変異体は、葉の老化が著しく加速化した表現型を示し、同じ齢の野生型の葉と比べてクロロフィル含量が少なく、クロロフィル蛍光のFv/Fm比が低下していた。しかし、s3h 変異体の初期成長は正常であった。s3h 変異体の葉の老化は、老化する速度が速いことと、老化の開始が早いことの2つの側面から促進されていることがわかった。S3H を35Sプロモーターで恒常的に過剰発現させた個体は、葉の老化が遅延したが、花成時期に変化は見られなかった。s3h 変異体では、葉の老化のマーカー遺伝子であるSAG12SAG13 やSAシグナルのマーカー遺伝子であるEDS1PAD4PR1 が野生型よりも早く発現し、S3H 過剰発現個体ではこれらの遺伝子の発現が抑制されていた。したがって、S3H は老化関連遺伝子とSAシグナル関連遺伝子を制御していることが示唆される。s3h 変異体ロゼット葉の遊離SA量は野生型よりも高く、S3H 過剰発現個体では減少していた。SAの不活性貯蔵型であるSAグルコシド(SAG)含量もs3h 変異体では野生型よりも多く、S3H 過剰発現個体では検出限界以下に減少していた。SAの異化産物である2,3-ジヒドロ安息香酸(2,3-DHBA)や2,5-DHBAは、シロイヌナズナの葉では検出限界以下であるが、これらの糖結合体の含量は野生型と変異体で差が見られた。s3h 変異体では、2,3-DHBA糖結合体は検出されず、2,5-DHBA糖結合体は野生型よりもわずかに増加していたが、S3H 過剰発現個体では2,3-DHBA糖結合体量が野生型の2倍程度あり、2,5-DHBA糖結合体量は野生型の半分程度になっていた。したがって、S3Hは、生体内でSAを2,3-DHBAに転換していると考えられる。大腸菌に生産させた組換えS3Hを用いて酵素活性を調査したところ、組換えS3Hは鉄イオン存在下でSAを2,3-DHBAや2,5-DHBAに転換し、SAと構造が類似した安息香酸やアントラニル酸は基質としなかった。以上の結果から、SAによって誘導されたS3Hは、SAを2,3-DHBAに加水分解してSAの過剰な蓄積を妨げるフィードバック調節を行なっていると考えられる。また、老化葉でS3H の発現が高いのは、老化葉で内生SA量が増加したことによると考えられ、SAは葉の老化開始と速度制御において重要な役割を演じていると考えられる。

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論文)芽生えのアブシジン酸応答を制御するTALEファミリー転写因子

2013-10-07 21:46:05 | 読んだ論文備忘録

BLH1 and KNAT3 modulate ABA responses during germination and early seedling development in Arabidopsis
Kim et al.  The Plant Journal (2013) 75:755-766.
doi: 10.1111/tpj.12236

3アミノ酸ループ伸長(TALE)ホメオドメイン転写因子をコードするBEL1-LIKE HOMEODOMAIN 1BLH1 )は、アブシジン酸(ABA)によって発現誘導される。したがって、BLH1はABAやストレスのシグナル伝達に関与し、成長や環境応答の制御を行なっていると考えられるが、その詳細は明らかとなっていない。韓国 浦項工科大学校Hwang らは、シロイヌナズナの種子、葉、根、茎、花でのBLH1 の転写産物量を調査し、BLH1 は調査した全ての組織で発現しているが、種子や茎での発現量が高いことを見出した。シロイヌナズナ芽生えをABA処理すると、BLH1 転写産物量は処理後3時間で2.7倍に増加するが、ABA受容体のpyr1 pyl1 pyl2 pyl4 四重変異体やABA非感受性abi1-1 変異体ではABA処理によるBLH1 の転写活性化が見られなかった。したがって、BLH1 の発現は、PYR/PYL/RCARやABI1を介したシグナル伝達によって制御されていると考えられる。BLH1 を35Sプロモーターで過剰発現させた個体やblh1 変異体の種子の発芽率は、ABA非存在下では野生型と同等であった。ABA存在下では、blh1 変異体種子の発芽率は野生型種子よりも高いが、pyr1 pyl1 pyl2 pyl4 四重変異体種子よりは低く、BLH1 過剰発現個体種子の発芽率は野生型種子よりも低くなっていた。ABA非存在下での子葉の展開は、blh1 変異体、BLH1 過剰発現個体共に野生型と同等であったが、ABA存在下では、blh1 変異体はABA感受性が低く、BLH1 過剰発現個体は感受性が高くなっていた。NaCl存在下でBLH1 過剰発現個体種子の発芽率は低下したが、blh1 変異体種子の発芽阻害の程度は野生型種子よりも低く、pyr1 pyl1 pyl2 pyl4 四重変異体種子よりも高くなっていた。発芽後のABA感受性について、芽生えの根のABAによる伸長阻害を指標として調査したところ、BLH1 過剰発現個体は野生型よりも感受性が高く、blh1 変異体では野生型との有意な差は見られなかった。BLH1 過剰発現個体では、芽生えをABA処理することによってABA応答遺伝子のEm1Em6ABI3ABI5RD29ARD29B の発現量が増加し、blh1 変異体ではRD29BABI3 の発現量が野生型よりも低くなっていた。また、ABA無処理のBLH1 過剰発現個体芽生えでは、RD29BEm1Em6 の発現量が野生型よりも高くなっており、blh1 変異体ではABI3 の発現量が低くなっていた。これらの結果から、BLH1はABAによって発現誘導される遺伝子の発現を正に制御していることが示唆される。BLH1はTALEホメオドメイン転写因子ファミリーに属するKNOTTED-LIKE FROM ARABIDOPSIS THALIANA 3(KNAT3)、KNAT5、KNAT6と相互作用をすることが知られている。そこで、BLH1とこれらのタンパク質との相互作用がABAシグナル伝達に関与しているかを調査した。それぞれのT-DNA挿入変異体のうち、knat3 変異体のみが種子発芽、子葉展開においてABA感受性が低下し、種子発芽における塩ストレス感受性も低下していた。また、これらのタンパク質をコードする遺伝子のうち、KNAT3 のみがABA処理によって発現量が増加し、この発現はPYR/PYL/RCARやABI1を介したシグナル伝達によって制御されていた。knat3 変異体でBLH1 を過剰発現させた系統は、BLH1 過剰発現個体で見られる種子発芽やABA応答遺伝子の発現誘導におけるABA高感受性が低下していた。したがって、KNAT3はBLH1と共に種子発芽時のABAシグナル伝達を制御していることが示唆される。TALEタンパク質はKNOX1とKNOX2の2つの保存されたドメインを介して他のTALEタンパク質と相互作用をすることが知られている。KNOX1ドメインを欠いたKNAT3やKNOX2ドメインを欠いたKNAT3はBLH1と相互作用をしないことから、KNAT3の2つのKNOXドメインはBLH1との相互作用に必要であることが示唆される。BLH1タンパク質は主に核に局在していたが、KNAT3タンパク質は主に細胞質に局在していた。タンパク質を核外へ輸送するエクスポーチンの阻害剤であるレプロマイシンB処理をするとKNAT3タンパク質は核に蓄積した。よって、KNAT3タンパク質はエクスポーチンによって細胞質へ輸送されていると考えられる。KNAT3タンパク質のKNOX1ドメインにある核外移行シグナル(NES)のLys173をSerに置換すると、KNAT3タンパク質は核に蓄積した。ABA存在下でのRD29B プロモーター活性は、アミノ酸置換したKNAT3タンパク質によって2.4倍増加したが、野生型KNAT3タンパク質による増加は1.6倍であった。したがって、ABA応答遺伝子の発現活性化には、KNAT3タンパク質の核局在が必要であることが示唆される。BLH1とKNAT3を同時に発現させると、多くのKNAT3タンパク質は核に局在した。KNOX1ドメインを欠いたKNAT3タンパク質は、NESがないために、BLH1の有無に関係なく核に局在していた。KNOX2ドメインを欠いたKNAT3タンパク質は、野生型KNAT3タンパク質と同様に細胞質に局在していたが、BLH1を同時に発現させても核へ移行するものはわずかであった。したがって、KNOXドメインを介したBLH1とKNAT3の相互作用がKNAT3タンパク質の核局在を引き起こしていると考えられる。BLH1タンパク質はABI3 遺伝子のプロモーター領域に結合し、この結合はKNAT3が同時に存在することで強まった。しかしながら、KNAT3タンパク質自身はABI3 遺伝子のプロモーター領域には結合しなかった。よって、KNAT3タンパク質は、BLH1タンパク質のABI3 プロモーターへの結合親和性を高めていると考えられる。BLH1 を過剰発現させたプロトプラストはRD29ARD29BEm6 の発現が誘導されるが、abi3-8 機能喪失変異体由来のプロトプラストでではこれらの遺伝子の発現誘導は起こらなかった。したがって、BLH1はABI3 を直接のターゲットとしてABA応答遺伝子の発現を制御していると考えられる。以上の結果から、BLH1/KNAT3ヘテロ二量体は、種子発芽時などの成長初期過程におけるABAシグナルの制御を、ABI3 の発現を制御することによって行なっていると考えられる。

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論文)シクロフィリンによる花成制御

2013-10-04 06:07:06 | 読んだ論文備忘録

The Cyclophilin CYP20-2 Modulates the Conformation of BRASSINAZOLE-RESISTANT1, Which Binds the Promoter of FLOWERING LOCUS D to Regulate Flowering in Arabidopsis
Zhang et al.  The Plant Cell (2013) 25:2504-2521.
doi:10.1105/tpc.113.110296

ブラシノステロイド(BR)は植物の成長過程の多くを制御しており、花成の制御にも関与している。しかしながら、BRシグナルによる花成制御に関与している因子については明らかとなっていない。中国科学院 植物研究所のChong らは、BRシグナル伝達の正の制御因子であるbHLH型転写因子のBRASSINAZOLE RESISTANT1(BZR1)の234番目のProをLeuに置換したmBZR1にCFPを付加した融合タンパク質をBZR1 プロモーター制御下で発現する形質転換シロイヌナズナmx3系統は、BZR1 の機能獲得変異体bzr1-1D と類似した表現型を示し、長日条件で花成が遅延することを見出した。そこで、BZR1のターゲットとなってい遺伝子を探索するために、花成に関与する174遺伝子のプロモーター領域についてBR応答シスエレメント(BRRE;CGTGNG)の有無を調査したところ、17遺伝子のプロモーター領域にBRREと考えられる配列が見られた。これらの遺伝子のうち、自立的花成促進経路に関与している因子として、FLOWERING LOCUS DFLD )とFY が含まれていたが、FY はBZR1による発現量変化を示さなかったので、FLD について詳細に解析したところ、BZR1はFLD 遺伝子プロモーター領域のBRREに結合し、転写を抑制していることがわかった。FLD を35Sプロモーターによって恒常的に発現する形質転換体(OXFLD )とmx3系統を交雑して得られた個体の花成は、mx3系統よりも早かったが、OXFLD よりも遅かった。mx3 OXFLD でのFLD 転写産物量は、mx3系統よりも多く、OXFLD よりも少なくなっていた。したがって、mx3系統の花成遅延は、FLD の過剰発現によって部分的に抑制され、BZR1 の機能はFLD に依存していることが示唆される。fld-4 変異体においてFLD を自身のプロモーター(pFLD:FLD )もしくはBRREに変異を加えたFLD プロモーター(pmFLD:FLD )で発現させるとfld-4 変異による花成遅延を回復させるが、mx3系統やbzr1-1D 変異体でこれらを発現させた場合、pFLD:FLD を発現させた個体では花成遅延の回復は起こらなかったが、pmFLD:FLD を発現させた個体では花成遅延が回復した。したがって、BZR1はFLD の発現を制御することによって花成時期を調節していることが示唆される。BZR1タンパク質は、ペプチジルプロリルシス‐トランスイソメラーゼ(PPIase)活性を有するシクロフィリン(CYP)と相互作用をすることが知られており、シクロフィリンのCYP20-2がBZR1と生体内で相互作用をすることが確認された。シロイヌナズナCYP20-2(AtCYP20-2)を過剰発現させた個体は、日長条件に関係なく花成が野生型よりも早くなり、FLOWERING LOCUS CFLC )の発現量が大きく低下し、SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )の発現量が増加、FLC の負の制御因子であるFLD の発現が増加していた。したがって、花成を制御するFLD の発現はCYP20-2 を介してなされていると思われる。コムギのCYP20-2(TaCYP20-2)を過剰発現させたシロイヌナズナは、日長条件に関係なく花成遅延を起こし、この花成遅延は低温春化処理やジベレリン(GA)処理をすることによって回復した。この結果から、TaCYP20-2 過剰発現個体ではBRシグナルによる花成制御がなされているが、GAによる花成制御は機能することが示唆される。TaCYP20-2 過剰発現個体では、FLC の転写産物量が増加しており、FLC によって発現が阻害されるSOC1 の転写産物量は減少していた。flc-3 TaCYP20-2 系統の花成は野生型と同等になることから、TaCYP20-2 による花成制御はFLC を介してなされていると考えられる。TaCYP20-2は、AtCYP20-2と異なり、DELLAタンパク質と相互作用をする。TaCYP20-2 過剰発現個体ではGA生合成酵素をコードするGA20ox1GA2ox2 の転写産物量が増加していた。よって、TaCYP20-2 過剰発現個体では、GAシグナルとBRシグナルが花成遅延に関与していると考えられる。mx3系統でTaCYP20-2 もしくはAtCYP20-2 を過剰発現させた黄化芽生えの胚軸は、mx3系統よりも長く、野生型と同等になった。黄化芽生えをBR生合成阻害剤であるブラシナゾール(Brz)処理をすると、mx3 35S:TaCYP20-2 (mx3 Ta)の子葉はmx3系統と同様に閉じたままであったが、mx3 35S:AtCYP20-2 (mx3 At)の子葉は野生型のように展開した。Bzrの添加量を上げると、mx3 Ta、mx3 Atともに野生型と同じ表現型を示すようになった。したがって、mBZR1の過剰発現によって引き起こされた表現型は、CYP20-2 の過剰発現によって弱められ、AtCYP20-2TaCYP20-2 よりも効果が大きいことが示唆される。BZR1 の発現量は、mx3系統、mx3 Ta、mx3 At共に野生型よりも高くなっていた。BZR1タンパク質量はmx3系統とmx3 Taは野生型よりも多いが、mx3系統と比較するとmx3 Ta、mx3 Atは少なかった。mBZR1タンパク質のリン酸化について調査したところ、CYP20-2はmBZR1がユビキチン-プロテアソーム系により分解されるリン酸化を促進し、その効果はAtCYP20-2のほうがTaCYP20-2よりも高いことがわかった。AtCYP20-2はTaCYP20-2よりもPPIase活性が高く、BZR1タンパク質との結合能力やBZR1タンパク質の二次構造を変化を変化させる能力が勝っていた。AtCYP20-2 過剰発現個体はFLD の発現量が野生型よりも高いが、ヒストンH3Lys9のトリメチル化(H3K9me3)やH3アセチル化の量は減少していた。一方、TaCYP20-2 過剰発現個体はFLD の発現量が低く、H3K9me3やH3アセチル化の量が野生型よりも多くなっていた。BZR1 を自身のプロモーターで発現させた個体やmx3系統では、FLD 転写産物量が減少し、H3K9me3やH3アセチル化が劇的に増加していた。したがって、3K9me3やH3アセチル化の量とFLD の発現との間には負の相関があると考えられる。以上の結果から、CYP20-2は、分子シャペロンとして機能してFLD 遺伝子を直接のターゲットとして発現を抑制しているBZR1の構造を変化させ、自立的花成促進を制御していると考えられる。

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論文)GATA転写因子によるオーキシンシグナルとジベレリンシグナルの統合

2013-09-30 21:43:10 | 読んだ論文備忘録

Convergence of auxin and gibberellin signaling on the regulation of the GATA transcription factors GNC and GNL in Arabidopsis thaliana
Richter et al.  PNAS (2013) 110:13192-13197.
doi:10.1073/pnas.1304250110

GATAファミリー転写因子をコードしているGNCGATA, NITRATE-INDUCIBLE, CARBON-METABOLISM INVOLVED )とGNL/CCA1GNC-LIKE /CYTOKININ-RESPONSIVE GATA FACTOR1 )の発現は、ジベレリン(GA)によって抑制され、この抑制は種子発芽、緑化、花成、伸長成長に関与していることが知られている。シロイヌナズナにおいてGNCGNL を過剰発現させた個体は、オーキシンのシグナル伝達に関与するAUXIN RESPONSE FACTOR2(ARF2)の機能喪失変異体arf2 と類似した表現型を示し、クロロフィルの蓄積や老化遅延が見られる。ドイツ ミュンヘン工科大学Schwechheimer らは、arf2 変異体でGNCGNL を機能喪失させたarf2 gnc gnl 三重変異体はarf2 変異が強く抑制されることを見出した。よって、GNCGNLARF2 の下流において機能していることが示唆される。arf2 変異体では、GNCGNL の転写産物量が野生型よりも多く、クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、ARF2はGNC およびGNL 遺伝子プロモーターのオーキシン応答エレメント(AuxRE)を含む領域に結合することが確認された。また、arf2 変異体では、GNC およびGNL 遺伝子の転写開始部位近傍で活性クロマチンの指標であるK9-アセチル化ヒストン3(H3K9Ac)量が増加していることがわかった。したがって、ARF2はGNC およびGNL 遺伝子のプロモーター領域に直接結合してこれらの遺伝子の転写を抑制していると考えられる。GNC およびGNL 遺伝子の転写はオーキシン処理によって強く抑制されることから、これらの遺伝子の発現はオーキシンによって制御されている転写抑制因子によって調節されていることが示唆される。GNC およびGNL 遺伝子の発現が脱抑制されているarf2 変異体やGA欠損ga1 変異体においてもオーキシンによる両遺伝子の発現抑制が強く起こることから、ARF2以外にもオーキシンに応答してこれらの遺伝子の発現を抑制する因子が存在すると考えられる。ARF7やARF19と相互作用するSLR/IAA14の機能獲得変異体slr は、GNCGNL を過剰発現させた個体やarf2 変異体と類似した表現型を示す。slr 変異体やarf7 arf19 機能喪失二重変異体はGNC およびGNL 遺伝子の発現量が野生型よりも高く、arf2 arf7 arf19 三重変異体ではさらに発現量が増加していた。また、slr 変異体の表現型はslr gnc gnl 三重変異体において抑制されていた。したがって、GNC およびGNL 遺伝子は、SLR /IAA14 の下流において植物の成長を制御していると考えられる。ChIP試験から、ARF7もGNC およびGNL 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。arf2 変異体は花成遅延を起こすが、この表現型はGA処理によって抑制され、GA処理はarf2 変異体でのGNCGNL の転写産物量増加も抑制していた。恒常的にGA応答を示すspindlyspy )変異をarf2 変異体に導入すると、arf2 変異体の花成遅延表現型が抑制され、GNC およびGNL の転写産物量も減少した。よって、GAシグナルの恒常的な活性化によるGNC およびGNL の発現抑制は、オーキシンシグナルの欠損した変異体の表現型を抑制しうることが示唆される。GNC およびGNL の発現を抑制しているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR1(PIF1)をarf2 変異体で過剰発現させると、GNC およびGNL の発現量はarf2 変異体とPIF1 過剰発現個体の中間となった。したがって、GAシグナルとオーキシンシグナルは独立してGNC およびGNL の発現を制御しており、この2つの遺伝子はGAおよびオーキシンによる成長制御にとって重要であることが示唆される。オーキシンはARF2、ARF7タンパク質量の制御に関与していないが、GA処理はARF2タンパク質量を増加させた。ARF2タンパク質量は、タンパク質生合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)処理によって減少し、この減少はプロテアソーム阻害剤のMG132処理によって抑制された。したがって、ARF2は26Sプロテアソームによって分解されると考えられる。CHXとGAの同時処理はARF2タンパク質の分解に影響を及ぼさないことから、ARF2の翻訳はGAによって制御されているか、新規に生合成される未知のGA応答タンパク質がARF2タンパク質の量を制御していると考えられる。GAによって誘導されるARF2タンパク質の増加は、GNC およびGNL 遺伝子のプロモーター領域のAuxREへのARF2タンパク質の結合を増加させ、GNC およびGNL 発現抑制を高めていると考えられる。GA処理はARF2タンパク質量を増加させるが、ARF2 転写産物量は減少させた。一方、GA/CHX同時処理でARF2タンパク質量は減少するが、ARF2 転写産物量は増加した。GAによるARF2 遺伝子の転写抑制はGA非感受性gidabc 三重変異体では見られず、この変異体ではGAによるARF2タンパク質量の増加も起こらなかった。ChIP試験によって、ARF2タンパク質はARF2 遺伝子プロモーター領域のAuxREに結合することが確認されたことから、ARF2は自身の転写を抑制する負のフィードバックループを形成していると考えられる。以上の結果から、GNC、GNLは、オーキシンのジベレリンのシグナルの下流において、両シグナルを統合して植物の成長を制御する転写抑制因子であると考えられる。

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論文)草食昆虫の食害に対するアブシジン酸の関与

2013-09-27 05:12:00 | 読んだ論文備忘録

The HERBIVORE ELICITOR-REGULATED1 Gene Enhances Abscisic Acid Levels and Defenses against Herbivores in Nicotiana attenuata Plants
Dinh et al.  Plant Physiology (2013) 162:2106-2124.
doi:10.1104/pp.113.221150

野生タバコNicotiana attenuata は、草食昆虫による食害とその他の傷害とを昆虫の出すエリシターを受容することによって区別しており、そのようなエリシターとして、タバコスズメガ(Manduca sexta )の幼虫が葉を食害する際に傷害部分に供給される口腔分泌物(OS)に含まれる脂肪酸-アミノ酸結合物(FAC)が知られている。しかしながら、FACのシグナルが植物にどのように伝達されるかは明らかとなっていない。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所のGalis (現 岡山大学)らは、N. attenuata の葉に傷害を与えてOSを処理(WOS処理)した際に発現が強く誘導される遺伝子を見出し、NaHER1 と命名した。この遺伝子の発現誘導にはジャスモン酸(JA)シグナルは関与しておらず、JA生合成を抑制したN. attenuata においてもOS処理によって発現が誘導され、傷害部にメチルジャスモン酸(MeJA)処理をしても発現は誘導されなかった。一方、NaHER1 は合成FACであるC18:3-Gluに対して強い応答性を示した。HER1に類似のタンパク質は多くの植物種において見出されているが、機能は明らかとなっていない。NaHER1 は、WOS処理をした際に、無傷の葉や根においても発現が誘導された。N. attenuata は食害を受けると揮発性有機化合物(VOC)を発して防御応答をする。RNAiによってNaHER1 の発現をノックダウンした植物(irHER1植物)では、WOS処理した葉の上位に位置する無傷葉の発するVOCが野生型植物よりも少なくなっており、野生型植物に傷害を与えただけの場合と同程度になっていた。よって、irHER1植物ではOSのシグナルがブロックされていることが示唆される。irHER1植物はタバコスズメガの食害を受けた際の防御応答に関与する二次代謝産物の生産や、NaMYB8NaMYC2 といった防御応答を制御している遺伝子の転写産物量が減少しており、野生型植物よりも強い食害を受けた。偶然に、irHER1植物は野生型植物よりも早く萎れることが判明し、irHER1植物は葉の蒸散速度が野生型植物よりも速いことがわかった。また、植物への潅水を止めて成長を観察したところ、irHER1植物は成長が止まり、潅水停止12日後に野生型植物は開花したが、irHER1植物は開花には至らなかった。切取った葉にアブシジン酸(ABA)をスプレーしたところ、irHER1植物の葉は野生型植物の葉よりも早く水分が失われた。よって、irHER1植物はABAの受容に欠陥があるか外から与えたABAを野生型植物よりも早く異化していると考えられる。irHER1植物の葉のJA、ABA、防御応答二次代謝物質の含有量は、通常の条件では野生型植物との間で差は見られないが、WOS処理後では野生型植物よりも低くなり、特にABA含量において差が顕著であった。防御応答二次代謝産物含有量の減少は遺伝的にJA量が減少した植物においても観察され、この場合はJAを外から与えることで回復する。WOS処理したirHER1植物にMeJA処理をしてもこれらの物質の含有量は野生型植物と同等とはならないことから、NaHER1はJAに対する応答を通常のJAシグナル伝達とは異なる経路で制御していると考えられる。irHER1植物ではABA量も減少していることから、NaHER1はOSに対する応答においてABAシグナルを調節しているのではないかと仮説を立て、ABA受容体PYL4をウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)させた植物(NaPYL4-VIGS)の表現型を観察した。NaPYL4-VIGS植物はWOS処理後のJAおよびJA-Ileの蓄積量が野生型植物よりも少なく、タバコスズメガによる食害を受けた後のJA誘導性の防御応答二次代謝産物の蓄積量も減少していた。したがって、OS(FAC)によって誘導される防御応答にはABAシグナルが必要であることが示唆される。irHER1植物にMeJA処理をしても防御応答二次代謝産物の蓄積に回復は見られなかったが、ABA処理をすると野生型植物と同等にまで回復した。irHER1植物において、ABA生合成経路の酵素ゼアキサンチンエポキシダーゼをコードするNaABA1 やABA輸送に関与するATP-結合カセット(ABC)トランスポーターをコードするNaPDR12 の発現量は野生型植物と同等であったことから、NaHER1はABA生合成には直接関与していないと考えられる。irHER1植物ではABAの異化物質であるファゼイン酸(PA)、ジヒドロファゼイン酸(DPA)、ABA-Glcエステルの量が野生型植物よりも多くなっており、irHER1植物ではABAの異化が促進されていることが示唆される。したがって、FACによって維発現誘導されるNaHER1 は、ABAの異化を阻害することで、防御応答物質を蓄積させるJAシグナル伝達を強化し、草食昆虫による食害に対する防御に貢献していると考えられる。

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論文)GATA転写因子とSOC1との相互作用

2013-09-20 05:50:35 | 読んだ論文備忘録

Cross-Repressive Interactions between SOC1 and the GATAs GNC and GNL/CGA1 in the Control of Greening, Cold Tolerance, and Flowering Time in Arabidopsis
Richter et al.  Plant Physiology (2013) 162:1992-2004.
doi:10.1104/pp.113.219238

GATAファミリー転写因子のGNC(GATA, NITRATE-INDUCIBLE, CARBON-METABOLISM INVOLVED)とGNL/CCA1(GNC-LIKE/CYTOKININ-RESPONSIVE GATA FACTOR1)は、ジベレリン(GA)、DELLA、フィトクロム相互作用因子(PIF)の下流において作用し、GA応答を抑制している。gnc gnl 二重変異体は花成がやや促進されることが知られており、GA欠損変異体ga1 の花成遅延がga1 gnc gnl 三重変異体では部分的に抑制される。しかしながら、ga1 gnc gnl 三重変異体の花成は、野生型植物やGA処理をしたga1 変異体よりもはるかに遅いことから、GNC、GNLに加えて他の転写因子がGA非存在下での花成を遅らせていることが示唆される。ドイツ ミュンヘン工科大学Schwechheimer らは、GNC、GNLのターゲット遺伝子として花成を制御している因子の探索を行なった。GNC もしくはGNL を過剰発現させたシロイヌナズナは花成遅延を起こす。これらの過剰発現個体の芽生えでは、花成時期を制御しているFLOWERING LOCUS TFT )の転写産物量に変化は見られなかったが、MADS box転写因子をコードするSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1SOC1 )の転写産物量が減少していた。また、ga1 gnc gnl 三重変異体のSOC1 転写産物量は、ga1 変異体よりも多くなっていた。GNL 過剰発現個体でSOC1 を過剰発現させると花成遅延が起こらなくなることから、SOC1GLN の下流において花成を誘導していることが示唆される。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、GNC、GNLはSOC1 遺伝子の第1イントロンおよびエクソンに存在するGATAボックスに結合することがわかった。また、GNCGNL を過剰発現させた個体のSOC1 遺伝子ATG開始コドン近傍は活性クロマチンの指標であるK9-アセチル化ヒストン3(H3K9Ac)量が減少し、不活性クロマチンの指標であるK9-ジメチル化ヒストン3(H3K9me2)量が増加していた。ga1 変異の場合と異なり、soc1 gnc gnl 三重変異体はsoc1 変異による花成遅延に対して影響を及ぼさなかった。したがって、GNC、GNLはSOC1 の発現を直接制御して花成遅延を引き起こしていると考えられる。シロイヌナズナgnc 変異体はクロロフィル含量が低下する表現型を示し、GNCGNL はクロロフィル生合成とクロロプラスト分裂の正の制御因子であることが知られている。したがって、gnc gnl 変異体は葉色が淡く、GNCGNL の過剰発現個体は葉色が濃く、クロロフィルの蓄積が見られる。soc1 変異体は野生型よりも葉色が濃いが、soc1 gnc gnl 三重変異体は葉色が淡く、クロロフィル含量が低下し、クロロフィル生合成経路に関与している酵素遺伝子の発現量も低下していた。GLN の過剰発現はSOC1 の過剰発現による早期花成を遅らせることは出来ないが、クロロフィル含量とクロロフィル合成経路の酵素遺伝子の発現は増加させた。よって、花成時期の制御に関して、GNCGNLSOC1 の上流で機能しているが、クロロフィル生合成に関してはGNCGNLSOC1 の下流に位置していることになる。soc1 変異体をジベレリン(GA)処理しても花成誘導は促進されないので、SOC1 はGAシグナルの下流に位置していると考えられるが、soc1 変異体の葉色が濃い表現型はGA処理によって抑制されることから、緑化の制御に関してはSOC1 はGAシグナルの上流に位置していると考えられる。したがって、クロロフィル合成と緑化において、GNCGLN はGAシグナルとSOC1 の下流に位置していることが示唆される。SOC1は植物の低温耐性を妨げる作用も有していることが知られており、低温処理をした芽生えではGNCGNL の転写産物量が増加していた。また、GNCGNL 過剰発現個体は低温耐性を示し、C-REPEAT/DROUGHT-RESPONSIVE ELEMENT-BINDING FACTOR2CBF2 )、COLD-REGULATED15aCOR15a )、COR15b の発現量が増加していた。soc1 変異体は低温耐性が高まるが、soc1 gnc gnl 三重変異体ではsoc1 変異による低温耐性に対する効果が抑制されていた。GNL の過剰発現は、低温耐性、低温応答遺伝子の発現においてSOC1 の過剰発現よりも優位にあり、低温耐性の制御に関してGNCGNLSOC1 の下流において機能していると考えられる。低温による成長抑制や低温耐性はDELLAによって促進され、低温処理はDELLAタンパク質量を増加させいることが知られている。GNCGNL の過剰発現個体は通常の温度条件でDELLAタンパク質であるREPRESSOR OF ga1-3 (RGA)の量が多くなっているが、rga gai 機能喪失変異体でGNL を過剰発現させても低温耐性を示すことから、GNL 過剰発現による低温耐性の誘導はDELLAタンパク質の蓄積が原因となっているのではなく、他の因子が関与していると考えられる。soc1 変異体の緑化や低温耐性がsoc1 gnc gnl 三重変異体で抑制されることから、GNCGNL の発現がSOC1によって制御されていることが考えられる。soc1 変異体ではGNCGNL の転写産物量が増加しており、ChIP試験から、SOC1タンパク質がGNCGNL 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。また、SOC1 過剰発現個体ではGNL の発現が抑制されていた。したがって、SOC1はGNCGNL の転写を直接抑制していると考えられ、SOC1GNCGNL はお互いに発現を抑制しあう関係にあると考えられる。

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論文)受容体様キナーゼERECTAによる葉原基形成の制御

2013-09-17 20:45:53 | 読んだ論文備忘録

ERECTA Family Genes Regulate Auxin Transport in the Shoot Apical Meristem and Forming Leaf Primordia
Chen et al.  Plant Physiology (2013) 162:1978-1991.
doi:10.1104/pp.113.218198

ERECTA ファミリー遺伝子(ERfs )は受容体様キナーゼをコードしており、シロイヌナズナでは、ERECTAER )、ERECTA-LIKE1ERL1 )、ERL2 が知られている。ERfs は栄養成長期の茎頂分裂組織や葉原基で発現しており、QTL解析や変異体解析から、ERfs は葉数の制御に関与していることが示唆されている。米国 テネシー大学Shpak らは、ERfs による葉の形成制御機構を、シロイヌナズナのERf 遺伝子の変異体を用いて解析した。長日条件下において、erl1erl2er の各単独変異体およびerl1 erl2 二重変異体の葉の形成速度は野生型と同じであったが、er erl1er erl2 二重変異体は葉原基の誘導と葉原基の成長が遅れることで葉の形成速度が遅くなった。また、葉の形成速度の変化が顕著となる短日条件下では、erl1erl2 変異体では変化が見られなかったが、er 変異体ではわずかに葉の形成速度が遅くなった。er 変異にerl2 変異を加えると葉の形成速度がさらに遅くなったが、erl1 変異を加えた場合は変化が見られなかった。そして、er erl1 erl2 三重変異体はさらに葉の形成が遅くなった。また、erl1 erl2 二重変異体は葉の形成速度が野生型よりも速くなった。以上の結果から、これらの受容体様キナーゼは短日条件での葉の形成の制御に関与しており、ERはERL1やERL2よりも効果が強いことが示唆される。erl1 erl2 二重変異体での葉の形成速度の加速化は、ERL1ERL2 の欠損によってER の効果が高まったことによるのではないかと思われる。er erl1 erl2 三重変異体の葉序を走査型電子顕微鏡で観察したところ、葉原基の形成角度に乱れが生じていることがわかった。また、花序の形成パターンもおかしくなっており、ERfsは葉序と花序のパターン形成において重要であることが示唆される。er erl1 erl2 三重変異体の分裂組織は、野生型よりも平坦で幅が広くなっていた。ERfs 遺伝子は乾燥種子では発現していないが、種子を浸漬して種皮が破れるころからシュートと根の分裂組織で発現が見られるようになり、その後は茎頂分裂組織や形成中の葉原基で発現が強くなった。er erl1 erl2 三重変異体の茎頂分裂組織の拡大に呼応して、分裂組織の発達の主要な調節因子であるWUSCHELWUS )やSHOOT MERISTEMLESSSTM )の発現量が増加し、子葉や葉の特定化に関与しているMYB転写因子をコードするASYMMETRIC LEAVES1AS1 )、葉原基において初期に発現するAINTEGUMENTAANT )の発現量が減少していた。er erl1 erl2 三重変異体の茎頂分裂組織のL1層およびL2層の細胞は野生型の倍に拡大しており、細胞数も適度に増加していた。したがって、er erl1 erl2 三重変異体の茎頂分裂組織の拡大は、WUS の過剰発現による細胞分裂の増加や葉原基となる細胞の減少のみでは説明できない。ERfsによるMAPキナーゼカスケードの下流に位置するマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)キナーゼキナーゼ(MAPKKK)であるYODAの恒常的活性化型CA-YODAer erl1 erl2 三重変異体で発現させたところ、誘導される葉原基の数と成長速度が増し、分裂組織の大きさが小さくなった。er erl1 erl2 三重変異体は気孔のクラスター形成を引き起こすが、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GKS3)様キナーゼの阻害剤であるビキニンで処理することによってこの表現型が回復する。er erl1 erl2 三重変異体をビキニン処理すると葉原基形成も部分的に回復したことから、茎頂分裂組織におけるERfsからのシグナル伝達は、表皮組織でのERfsのシグナル伝達と機構が類似していると思われる。分裂組織でのオーキシン極大の形成は葉原基形成の指標となるが、er erl1 erl2 三重変異体の茎頂分裂組織のL1層でのオーキシン極大が見られず、胚軸維管束のオーキシン分布も低下していた。これに伴ない、er erl1 erl2 三重変異体ではオーキシン応答遺伝子のMONOPTEROSMP )、IAA1IAA19 の発現量が低下していた。しかしながら、オーキシン生合成酵素遺伝子の発現量には変化が見られなかった。したがって、ERfsは茎頂分裂組織のオーキシン分布の制御に関与していると考えられる。茎頂分裂組織のオーキシン分布はPIN1に依存していることから、PIN1 プロモーター制御下でPIN1-GFPを発現させてer erl1 erl2 三重変異体の茎頂分裂組織のL1層でのPIN1-GFPタンパク質量を見たところ、野生型よりも多いことがわかった。また、PIN1-GFP の発現は発達中の葉原基の維管束では野生型よりも減少してた。しかし、野生型とer erl1 erl2 三重変異体との間でPIN1 転写産物量に差が見られないことから、ERfs はPIN1タンパク質の局在や安定性に関与することで、茎頂分裂組織でのオーキシンの流れを制御していると考えられる。以上の結果から、ERfsはPIN1の転写後制御をすることで茎頂分裂組織の維持、葉の誘導、葉序の確立を制御していると考えられる。

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