Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)ETHYLENE-INSENSITIVE3(EIN3)による葉の老化誘導

2013-12-02 05:17:49 | 読んだ論文備忘録

ETHYLENE-INSENSITIVE3 Is a Senescence-Associated Gene That Accelerates Age-Dependent Leaf Senescence by Directly Repressing miR164 Transcription in Arabidopsis
Li et al.  Plant Cell (2013) 25:3311-3328.
DOI:10.1105/tpc.113.113340

エチレンは植物の老化を誘導することが知られている。しかしながら、その分子機構は明らかとなっていない。中国 北京大学Guo らは、シロイヌナズナのマイクロアレイデータから、エチレンシグナル伝達に関与する転写因子をコードするETHYLENE-INSENSITIVE3EIN3 )が葉の老化が進むにつれて転写産物量が増加することに着目し、詳細な解析を行なった。EIN3 転写産物は葉が成長して老化するにつれて徐々に増加し、一般的に老化誘導に用いられる暗黒処理によっても増加した。EIN3 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナを用いた解析から、老化して黄変した葉は緑葉よりもGUS活性が高く、葉が加齢する間にEIN3 の転写量が増加していくことが示唆される。また、同一葉内において、老化した部分は老化していない部分よりもGUS活性が高くなっていた。EIN3 とそのホモログで機能が重複しているるEIN3-Like1EIL1 )の機能喪失変異体ein3 eil1 は、老化が遅延する表現型を示した。また、エチレン前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)やエチレンと同様に老化誘導作用のあるジャスモン酸の処理による老化促進に対して、ein3 eil1 変異体の葉は耐性を示した。ein3 単独変異体の葉はこれらの処理による老化誘導に対して中程度の老化遅延を示したが、eil1 単独変異体は野生型と同等の老化を示した。EIL1 転写産物量は成熟葉で最も高く、葉の齢が進むにつれて減少していくことから、EIL1 老化誘導に対する役割はEIN3 よりも低く、EIN3 が真の老化関連遺伝子(SAG)であると考えられる。EIN3 を35Sプロモーターで恒常的発現させた形質転換シロイヌナズナは、野生型よりも老化が早まる表現型を示した。エチレンシグナル伝達経路においてEIN3の上流に位置しているEIN2の機能喪失変異体ein2 はエチレン非感受性となるが、EIN3 を過剰発現させるとein2 変異体よりも老化が早まった。よって、EIN3は葉の老化誘導にとって十分な転写因子であることが示唆される。EIN2はmicroRNA164miR164 )の発現を負に制御しており、miR164は葉の老化の正の制御因子をコードするORESREA1ORE1 )/NAC2 の転写産物を分解する。miR164 は3つの遺伝子座miR164AmiR164BmiR164C にコードされており、miR164A /B の発現量は古い葉よりも若い葉で高い。ein2 変異体の古い葉でのmiR164A /B の発現量は若い葉と同程度に高く、ein3 eil1 二重変異体もein2 変異体と同じ傾向が見られた。逆に、EIN3 過剰発現個体では若い葉のmiR164 の発現量が低くなり、ORE1 /NAC2 の発現量が増加していた。したがって、EIN3とEIL1は葉の老化過程でのmiR164 発現を抑制していることが示唆される。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験およびゲルシフトアッセイ(EMSA)試験から、EIN3タンパク質がmiR164B 遺伝子およびmiR164C 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認され、EIN3はmiR164 の転写を直接抑制していることが示唆される。葉の齢が進むにつれてmiR164 遺伝子のプロモーター領域に結合する内生のEIN3タンパク質量が増加することから、EIN3は葉の齢に依存してmiR164 の転写を抑制していることが示唆される。miR164 の転写産物量は育成1週目から徐々に減少していくが、EIN3とmiR164 プロモーターとの相互作用は育成3週目に最大となること、miR164A 転写産物量の減少はein3 eil1 二重変異体においても観察され、ein2 変異体においても僅かに見られることから、EIN3以外にもmiR164 の発現を抑制する機構が存在すると考えられる。EIN3 過剰発現個体でmiR164A を過剰発現させたところ、EIN3 によるORE1 /NAC2 の発現と老化の誘導が抑制された。nac2 機能喪失変異体は老化遅延を起こすが、この変異体でEIN3 を過剰発現させたところ、EIN3 による老化誘導が抑制された。したがって、EIN3による老化誘導にはNAC2が必要であると考えられる。以上の結果から、EIN3は葉の老化を誘導する主要な転写因子として機能し、EIN2の下流に位置してmiR164 の発現を直接抑制していることが示唆される。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)サイトカイニンによる静止中心の細胞分裂誘導機構

2013-11-28 19:59:44 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin Induces Cell Division in the Quiescent Center of the Arabidopsis Root Apical Meristem
Zhang et al.  Current Biology (2013) 23:1979-1989.
doi:10.1016/j.cub.2013.08.008

根端分裂組織において、オーキシンとサイトカイニンは拮抗的に作用し、オーキシンは細胞分裂を促進し、サイトカイニンは細胞分化を促進している。オーキシンは根端の静止中心(QC)の維持や、QC周辺の幹細胞の分化を制御しているが、こられの細胞に対するサイトカイニンの役割については明らかとなっていない。米国 ノースカロライナ大学Kieber らは、サイトカイニンを添加した培地で育成したシロイヌナズナ芽生えの約6割で根のQCが細胞分裂を起こしていることを見出した。また、サイトカイニンシグナルを負に制御しているタイプA Arabidopsis Response Regulator(ARR)のARR5 の機能損失変異体はQCの細胞分裂が促進される表現型を示した。サイトカイニン分解酵素のサイトカイニンオキシダーゼをコードするCKX3CKX5 が機能喪失することで内生サイトカイニン量が増加した変異体においてもQCの分裂促進が見られた。 サイトカイニンによって誘導されるQCの細胞分裂は既知のサイトカイニン応答経路を介してなされており、サイトカイニン受容体が機能喪失したahk2 ahk4 二重変異体ではサイトカイニンによるQC分裂の誘導が大きく低下していた。根でのサイトカイニン応答に関与しているタイプB ARRのARR1とARR12が機能喪失したarr1 arr12 二重変異体では、サイトカイニンによるQC分裂誘導が完全に失われており、QCの分裂にARR1ARR12 が必要であることが示唆される。QCの細胞分裂はエチレンによっても誘導されることから、サイトカイニンによるQC分裂がサイトカイニン処理によってエチレン生成量が増加したことによるものかを調査するために、エチレン結合阻害剤の1-メチルシクロプロペン (1-MCP)とサイトカイニンの同時処理やエチレン非感受性変異体ethylene insensitive 2ein2 )へのサイトカイニン処理を行なったが、サイトカイニンによるQCの分裂誘導に変化は見られなかった。よって、サイトカイニンによるQC分裂誘導にエチレンは関与していない。サイトカイニン存在下で育成したシロイヌナズナ芽生えのQCでは、QC特異的マーカー遺伝子(QC46、QC184)の発現が低下し、QCの独自性が低下していると考えられる。これらの結果から、サイトカイニンはQCの独自性維持に対して負に作用することが示唆される。QCの独自性に関与している転写因子の発現がサイトカイニンによって変化するかを見たところ、SCARECROWSCR )とWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX 5WOX5 )の発現が低下し、PLETHORA 1PLT1 )とPLT2 の発現は変化していないことがわかった。サイトカイニンによるSCRWOX5 の発現量の低下はarr1 arr12 二重変異体では観察されないことから、この発現量変化にはタイプB ARRのARR1ARR12 が関与していると考えられる。ckx5 変異体やarr5 変異体の根端部では定常状態のSCRWOX5 の発現が野生型よりも低く、内生サイトカイニンによってもこれらの遺伝子の発現が抑制されていることが示唆される。QCがその特性を維持するためにはオーキシンが輸送されてQCにおいてオーキシン極大が形成されることが重要である。サイトカイニンはオーキシン排出キャリアをコードするPIN 遺伝子の発現を抑制してQCへのオーキシン流入を弱めているが、この過程でのオーキシン取込キャリアの役割やサイトカイニンの効果については明らかとなっていない。そこで、オーキシン取込キャリアをコードするAUXIN RESISTANT 1AUX1 )、LIKE AUXIN RESISTANT 2LAX2 )、LAX3 の発現を調査したところ、AUX1LAX2 の転写産物量はサイトカイニン処理によって減少し、LAX3 の転写産物量は変化しないことがわかった。特にLAX2 の転写産物はAUX1 よりも変化量が大きく、SCRWOX5 のサイトカイニンによる発現抑制よりも先に起こった。根端分裂組織において、LAX2 は主に前形成層細胞において発現していた。サイトカイニンによるLAX2 転写産物量の減少は、ahk2 ahk4 二重変異体では低下しており、LAX2 の発現制御はサイトカイニン受容体が関与していると考えられる。arr1 変異体やarr12 変異体においてもサイトカイニンによるLAX2 発現抑制が僅かに低下し、arr1 arr12 二重変異体では殆ど見られなくなっていた。よって、ARR1ARR12 は冗長的にサイトカイニンによるLAX2 の発現抑制を制御していると考えられる。サイトカイニンによるPIN 遺伝子の発現抑制は、ARR1やARR12が直接SHY2 AUX/IAA遺伝子の発現調節領域に結合して発現を誘導することによってなされている。サイトカイニンによるLAX2 の発現抑制はshy2-2 機能獲得変異体やshy2-24 機能喪失変異体においても見られることから、LAX2 の発現にSHY2 は関与していないことが示唆される。LAX2 遺伝子のプロモーター領域やイントロンにはARR1結合モチーフが見られ、クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、ARR1がこれらのモチーフに結合することが確認された。よって、ARR1はLAX2 のサイトカイニンによる発現抑制を直接制御していると考えられる。LAX2がQCでのオーキシン極大形成に貢献しているのかを確認するために、lax2 変異体においてオーキシンレポーターDR5:GFP を発現させたところ、lax2 変異体の根のQCではレポーターの発現量は減少していたが、発現パターンに変化は見られなかった。よって、lax2 変異体のQCではオーキシン量が低下していると考えられる。LAX2 の発現パターンはPIN1PIN3PIN4PIN7 の発現パターンと重複しているが、lax2 変異体でのこれらのPIN 遺伝子の発現やPIN1タンパク質の局在は野生型と変わりはなく、LAX2 はQCでのオーキシン極大の形成や維持に関与していると考えられる。lax2 変異体のQCでの細胞分裂の頻度は野生型よりも高く、WOX5 の発現量が減少していた。よって、lax2 変異体ではQCの機能が低下していると考えられる。lax2 変異体でのSCR の発現は野生型と同等であることから、サイトカイニンはSCRLAX2 の発現を別個に制御していると考えられる。以上の結果から、サイトカイニンはPINとLAX2を制御することで根端分裂組織のオーキシン分布を制御し、このオーキシン分布の変化がQCの分裂活性を制御していると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)液胞膜に局在するオーキシン排出輸送体

2013-11-21 05:15:12 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WAT1 is a vacuolar auxin transport facilitator required for auxin homoeostasis
Ranocha et al.  Nature Communications (2013) 4:2625.
DOI:10.1038/ncomms3625

フランス トゥールーズ大学のGoffner らは、ヒャクニチソウ(Zinnia elegans )の木部培養細胞を用いて二次細胞壁の形成に関与する遺伝子の探索を行ない、その中の1つの遺伝子のシロイヌナズナにおけるホモログWALLS ARE THIN1WAT1 )が機能喪失した変異体は茎の二次細胞壁が薄くなることを見出した。WAT1は、オーキシンシグナルと二次細胞壁形成の統合に関与していることが推測されており、wat1 変異体は茎におけるオーキシン関連遺伝子の発現やオーキシン含量が低下している。wat1 変異体の表現型の変化は茎の発達過程の後期になって見られるようになるが、WAT1 遺伝子の発現自体は発達過程の初期に起こる。発芽10日目の野生型およびwat1 変異体の芽生えを用いてマイクロアレイ解析によって遺伝子発現の比較を行ったところ、wat1 変異体では40遺伝子の発現量に変化が見られ、13遺伝子の発現量が減少し、27遺伝子の発現量が増加していた。発現量が最も減少していたのは、IAA19 とオーキシン応答性のGH3 ファミリー遺伝子であり、どちらもオーキシン応答に関連していることが知られている。発現量が低下した13遺伝子のうち7遺伝子は、野生型植物においてオーキシンによって発現誘導される遺伝子で、発現量が増加した27遺伝子のうち5遺伝子は、野生型植物ではオーキシンによって発現抑制される遺伝子であった。したがって、wat1 変異によって幾つかのオーキシン応答遺伝子の発現が変化している。wat1 変異体にオーキシンを与えると、維管束間繊維の細胞壁の厚さが野生型と同程度にまで回復した。WAT1 遺伝子は、10の膜貫通ドメインを有した389アミノ酸からなる植物特異的なタンパク質をコードしており、このタンパク質はPlant Drug Metabolite Exporterファミリーに分類されている。WAT1はPINやAUX1といったオーキシントランスポーターとアミノ酸配列の類似性は見られないが、二次構造は液胞膜に局在するPIN5やPILS2/5と類似性が見られた。GFPを付加した融合タンパク質を用いた実験から、WAT1タンパク質は液胞膜に局在しており、ブレフェルジンA(BFA)非感受性でゴルジ装置とは異なる経路で液胞膜へ輸送されることがわかった。単離液胞と標識したオーキシンを用いた実験から、野生型植物の液胞はオーキシンを蓄積しないが、wat1 変異体の液胞は経時的にオーキシン蓄積量が増加することがわかった。野生型植物とwat1 変異体のオーキシンの液胞への取込量が同じであるのならば、野生型植物の液胞はWAT1によってオーキシンを液胞の外へ排出し、wat1 変異体の液胞ではオーキシンの排出が欠如していると考えられる。液胞からのアニオンのオーキシンの排出は熱力学的に上り坂輸送となることから、エネルギー源としてプロトンの下り坂輸送がカップリングしていると考えられる。よって、WAT1はプロトン:IAAシンポーターとして液胞からオーキシンを排出していることが推測される。そこで、プロトン勾配を消すために、アンモニウムイオンを添加したところ、野生型植物液胞でのオーキシン量の増加が観察された。実際にシロイヌナズナの液胞にオーキシンが存在するかを調査したところ、IAA、IAAの前駆体、IAAの異化産物であるoxIAA、IAAとグルコースの縮合体が検出された。したがって、液胞はオーキシンの蓄積やオーキシン量の制御において重要であることが示唆される。WAT1 を発現させた酵母は標識したIAAの取込量が増加するが、この取り込みは非標識IAAを添加することで強く阻害され、oxIAAやNAAを添加することによってもある程度阻害された。IAAとアミノ酸や糖との縮合体、インドール-3-酪酸や2,4-Dの添加では標識IAAの取込は阻害されなかった。また、WAT1 を発現させた酵母のトリプトファンの取込に変化は見られなかった。WAT1 を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞においても酵母と同様に標識IAAの取込が観察されたことから、WAT1によるIAA輸送は植物特異的な他の因子を必要としないと考えられる。以上の結果から、WAT1は液胞においてオーキシンの排出輸送体として機能しており、液胞は細胞内オーキシン量の調節において重要であると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)シロイヌナズナ芽生えの光屈性における光受容部位

2013-11-18 22:25:09 | 読んだ論文備忘録

Defining the Site of Light Perception and Initiation of Phototropism in Arabidopsis
Preuten et al.  Current Biology (2013) 23:1934-1938.
doi:10.1016/j.cub.2013.07.079

光屈性は、植物が光合成を行なうための光受容を最適化するための応答である。これは屈性を起こす器官の光の当たる側と陰の側の間の不均等な成長によって起こる。単子葉植物の芽生えでは、子葉鞘の先端部が光を受容し、このことが引き金となってオーキシンの勾配が形成され、下部の組織で不均等な分裂が起こり、屈曲が形成される。双子葉植物の芽生えでは胚軸が屈曲を起こす場となるが、光受容の場については明らかとなっていない。これまでの研究から、子葉は光屈性において重要な役割をしていないことが明らかとなっている。スイス ローザンヌ大学Fankhauser らは、子葉、茎頂部、茎頂フック部分を含む上部を切除したシロイヌナズナ黄化芽生えに青色光照射をすると屈曲を起こすが、胚軸の伸長領域やその下部を切除した芽生えは光刺激に対して応答を示さないことを見出した。したがって、黄化芽生えでは、伸長領域を含む胚軸の上部が光屈性を引き起こすために必要であると考えられる。子葉と胚軸先端部を切除した明所育成シロイヌナズナ芽生えも光屈性を起こすが、黄化芽生えの場合と比較すると応答性は低下していた。よって、脱黄化した芽生えは黄化芽生えよりも子葉や茎頂分裂組織の役割が大きいと考えられる。先端部を切除した試験では傷害応答が光屈性に影響する可能性があるので、子葉の発達が見られないpid wag1 wag2 三重変異体の黄化芽生えを用いて解析を行なったところ、野生型と比較すると応答性は低いが、この変異体も光屈性が観察された。以上の結果から、黄化芽生えの子葉、胚軸先端部、胚軸の伸長領域よりも下の組織は光屈性刺激の受容や光屈曲に関与していないと考えられる。胚軸の伸長は、子葉や茎頂から供給されるオーキシンによって引き起こされるので、光屈性の低下は成長の低下によるとも考えられる。そこで、光照射90分前にフック部分を切除した芽生えを用いて試験を行なったところ、無処理芽生えと比較すると応答性は低下していたが、そのような芽生えでも光屈性を起こした。よって、黄化芽生え胚軸での光屈性には、子葉、胚軸先端部、胚軸下部から供給されるオーキシンは関与しておらず、胚軸上部と子葉の節の部分の下の領域での局所的なオーキシン再配分が屈曲を引き起こしていると考えられる。光屈性刺激を受容している領域を限定するために、光受容体であるフォトトロピン1(phot1)をphot1 phto2 変異体で局所的に発現させて光屈性が回復するかを見たところ、PHYTOCHROME KINASE SUBSTRATE4 プロモーター(pPKS4 )でphot1を胚軸の伸長領域で発現させた形質転換体や、CHLOROPHYLL A/B BINDING PROTEIN 3 プロモーター(pCAB3 )で子葉やフック部分で発現させた形質転換体は光屈性を起こすことがわかった。先に述べたように、子葉と茎頂分裂組織は光屈性に必要ではない。よって、pCAB3pPKAS4 で発現領域が重なっているフックの下の数細胞での光受容が屈性を誘導しているか、子葉から胚軸伸長領域までの広い領域で光受容を行なっているかのどちらかであると思われる。phot1はシロイヌナズナ胚軸の全ての細胞層で発現している。そこで、phot1を表皮特異的に発現するMERISTEM LAYER 1ATML1 )プロモーター、皮層特異的なAT1G09750C1 )プロモーター、内皮特異的なSCARECROWSCR )プロモーター制御下でphot1 phot2 変異体で発現させたところ、いずれのプロモーターで発現させた形質転換体においても光屈性が回復した。phot1をどの細胞層で発現させも光屈性が起こるということは、phot1から発せられたシグナルは胚軸の各細胞層へ素早く伝達されていることが推定される。NON PHOTOTROPIC HYPOCOTYL 3(NPH3)タンパク質は、光屈性に関与しており、光受容したphot1によって脱リン酸化される。NPH3の脱リン酸化は、phot1をどの細胞層で発現させた場合でも見られることから、局所的にphot1が活性化してもすぐのそのシグナルは各層へ広がると考えられる。以上の結果から、黄化芽生えの光屈性は、胚軸の上部から子葉の節の下部の伸長領域での局所的なphot1の活性化によって発せられたシグナルが素早く胚軸の全ての細胞層に広がって引き起こされると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)オーキシン結合タンパク質1(ABP1)によるオーキシンシグナルの制御

2013-11-15 22:46:12 | 読んだ論文備忘録

Auxin-Binding Protein 1 is a negative regulator of the  SCFTIR1/AFB pathway
Tromas et al.  Nature Communications (2013) 4:2496
DOI:10.1038/ncomms3496

オーキシンは2種類の異なる受容体、transport inhibitor response 1(TIR1)/auxin-related F-box proteins(AFB)およびオーキシン結合タンパク質 1(ABP1)によって受容される。TIR1/AFBはSCF型ユビキチンリガーゼのサブユニットであり、転写抑制因子auxin/indole-3-acetic acid(AUX/IAA)のユビキチンに依存する分解を促進してオーキシンシグナル伝達を調節している。ABP1は様々な成長過程を制御しており、オーキシン応答遺伝子の発現にも関与しているが、その作用機作やTIR1/ABF-AUX/IAAによるオーキシンシグナル伝達との関係は明らかとなっていない。フランス国立科学研究センター(CNRS)植物科学研究所(ISV)Perrot-Rechenmann らは、ABP1に対するモノクローナル抗体を発現することによってABP1がノックダウンされたシロイヌナズナ(SS12K9)にTIR1 /ABF の機能喪失変異を導入して両者の関係を解析した。SS12K9系統の芽生えは根の成長が抑制される表現型を示す。この系統にTIR1 /ABF の単独変異(tir1 )を導入してもSS12K9の表現型が維持されるが、tir1 afb3afb2 afb3 といった二重変異を導入するとSS12K9の表現型が弱まり、tir1 afb2 二重変異やtir1 abf2 abf3 三重変異を導入するとABP1のノックダウンによる表現型が打ち消され、tir1 afb2 二重変異体やtir1 abf2 abf3 三重変異体において見られる伸長した主根が波打つ表現型が現れた。したがって、TIR1 /AFBABP1 よりも上位にであると考えられる。ABP1のノックダウンはTIR1ABF1 の転写産物量やTIR1タンパク質量に変化を起こさないことから、TIR1 /AFB の発現はABP1に依存していないと考えられる。AUX/IAAタンパク質のAXR3(IAA17)にGUSを付加した融合タンパク質を用いた実験から、SS13K9系統はAXR3-GUSの分解が促進され、この分解はプロテアソーム阻害剤MG132の添加によって抑制されることがわかった。よって、ABP1はAUX/IAAの分解に対して負の制御因子として機能していると考えられる。tir1 abf2 abf3 三重変異体でABP1をノックダウンした場合はAXR3-GUSが蓄積することから、SS12K9の根の表現型がtir /abf 変異によって回復する現象はAUX/IAAの安定性と関連していることが示唆される。よって、ABP1はAUX/IAAの安定性を高めることでオーキシン応答を抑制し、ABP1を介した経路は、AUX/IAAの安定性に対してTIR1/ABF-AUX/IAA経路と拮抗的に作用して植物の成長を制御していると考えられる。ABP1がSCF型ユビキチンリガーゼに影響することでAUX/IAAの安定化をもたらしているかを、SCFの骨格タンパク質であるCULLIN1(CUL1)へのRELATED TO UBIQUITIN(RUB)の付加を指標として調査したが、ABP1のノックダウンはCUL1へのRUB付加に変化をもたらさなかった。また、TIR1/ABF-AUX/IAA経路と同様に、ユビキチン-プロテアソーム系によってシグナル伝達を行なっているジャスモン酸受容体COI1によるJAZタンパク質の分解に対してABP1は影響を及ぼさなかった。よって、ABP1のノックダウンはAUX/IAAの分解にのみ影響していると思われる。しかしながら、ジベレリンによるDELLAタンパク質(RGA)分解誘導はABP1のノックダウンによって遅延した。このことは、ジベレリンによって誘導されるRGAの分解がオーキシンの減少によって遅延するという過去知見と関連があるように思われる。ABP1をノックダウンした植物の根は、細胞が伸長し、根毛や側根が減少しており、オーキシン含量が低下したような表現型を示すが、内生遊離IAA含量に変化は見られなかった。また、ABP1ノックダウン植物の根にオーキシン処理をしても細胞伸長や根毛伸長が起こらず、オーキシン耐性を示した。ABP1のノックダウンはエンドサイトーシスの阻害を引き起こすが、オーキシン排出タンパク質PINの細胞内での極性局在やオーキシン輸送に変化は見られなかった。したがって、ABP1のノックダウンによるAUX/IAAの分解促進はオーキシン含量が増加したことによって引き起こされたのではないと考えられる。イカルガマイシンやチルホスチンA23といったエンドサイトーシスの阻害剤を処理するとAXR3-GUSの分解が抑制され、これはPINタンパク質のリサイクルが阻害されたために細胞内のオーキシン含量が低下したことによると考えられる。よって、ABP1のノックダウンによるAUX/IAAの分解促進はエンドサイトーシスの阻害によって起こったのではなく、根の形態変化はエンドサイトーシスやPINタンパク質のリサイクリングとは関連していない。以上の結果から、ABP1は何らかの形でTIR1/AFBとAUX/IAAとの相互作用に関係してAUX/IAAを安定化させ、オーキシンシグナル伝達を制御していると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)光条件よる分枝成長制御におけるアブシジン酸の関与

2013-11-12 05:59:02 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Regulates Axillary Bud Outgrowth Responses to the Ratio of Red to Far-Red Light
Reddy et al.  Plant Physiology (2013) 163:1047-1058.
doi:10.1104/pp.113.221895

分枝は様々な環境要因によって制御されている。光条件もその1つに含まれ、光合成光量子束密度(PPFD)や赤色/遠赤色光比(R:FR)は分枝に対して強い影響を及ぼす。R:FRが低下すると、植物は避陰反応(SAS)を示して分枝を抑制して主茎を伸長させる。米国 テキサスA&M大学Finlayson らは、シロイヌナズナを用いてR:FRによる分枝制御機構を解析した。植物体を低R:FR条件で育成した後に高R:FR条件に移すと、主茎の伸長と主茎から発生した分枝の成長が抑制される。ロゼットから形成された分枝は着位によって異なる成長変化を示し、一番上のロゼット芽(「芽 n」)はやや成長が鈍くなるが、低R:FR条件で成長が抑制されていた上から3番目のロゼット芽(「芽 n-2」)は伸長を始める。「芽 n-2」での遺伝子発現をマイクロアレイによって解析したところ、R:FRの上昇によって1402遺伝子の発現量が低下し、1255遺伝子の発現量が増加することがわかった。ロゼット芽の着位やR:FRの違いによって、アブシジン酸(ABA)の生合成、シグナル伝達、転写調節に関連する遺伝子の発現パターンに違いが見られ、ABA生合成の鍵酵素をコードするNINE-CIS-EPOXYCAROTENOID DIOXYGENASE3NCED3 )は、低R:FR条件で「芽 n-2」での発現量が高く、R:FRが高くなると発現量が低下していた。よって、高R:FR条件では「芽 n-2」のABA含量は低下しているものと思われる。ABAシグナル伝達に関与する遺伝子やABA応答に関与する転写因子遺伝子もNCED3 遺伝子と同様の発現量変化を示しており、「芽 n-2」では低R:FR条件ではABAシグナルが強く、高R:FR条件に移行すると低下すると考えられる。「芽 n」では、ABAによって正の制御を受ける遺伝子の多くは発現量自体が低く、光条件の変化による発現量変化も見られなかった。よって、この変化は「芽 n-2」に特異的なものであると考えられる。「芽 n-2」のABA含量は高R:FR条件に移行後に減少した。「芽 n」のABA含量は「芽 n-2」よりも低く、高R:FR条件移行後の減少は見られたが、減少量は少なかった。「芽 n」は高R:FR条件に移行するとインドール-3-酢酸(IAA)含量が低下したが、「芽 n-2」のIAA含量は「芽 n」よりも少なく、光条件の変化による含量の変化は起こらなかった。ABA生合成の変異体nced3-2aba deficient2-1aba2-1 )は、高R:FR条件による草丈の変化は野生型と同じように起こったが、「芽 n-2」の低R:FR条件での成長抑制が弱まっており、野生型よりも成長量が高く、高R:FR条件へ移行後の成長量の増加は見られなかった。よって、ABAは「芽 n-2」の成長を抑制していると考えられる。以上の結果から、アブシジン酸はR:FRに応答した分枝の成長制御において重要な役割を果たしており、芽の着位による成長パターンの違いにも関与していることが示唆される。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)ストリゴラクトンによる節間伸長の制御

2013-11-10 10:22:53 | 読んだ論文備忘録

Strigolactones Stimulate Internode Elongation Independently of Gibberellins
de Saint Germain et al.  Plant Physiology (2013) 163:1012-1025.
doi:10.1104/pp.113.220541

エンドウのストリゴラクトン(SL)欠損変異体rms1 やSL非感受性変異体rms4 は、分枝が多くなる表現型を示すが、それに加えてわい化した表現型も示す。フランス Jean-Pierre Bourgin 研究所Rameau らは、rms1 変異体やrms4 変異体の腋芽を切除して節間長に変化が起こるかを調査したが、節間長に変化は見られないことを見出した。また、rms1 変異体の腋芽に合成SLのGR24処理をすると、腋芽の成長は阻害されるが、草丈の伸長は起こらなかった。したがって、SL関連変異体は単純に分枝が成長したことによってわい化したのではないと考えられ、SLは腋芽の成長阻害とは別に節間の伸長にも関与していることが示唆される。rms1 変異体、rms4 変異体を水耕栽培し、根からGR24を供給すると、rms1 変異体の節間はは伸長したが、rms4 変異体では節間伸長は見られなかった。また、野生型植物ではGR24添加水耕栽培による節間の更なる伸長は起こらなかった。rms1 変異体の茎頂部にジベレリン(GA)処理をすると節間の伸長が促進されたが、腋芽の成長が阻害される濃度の10倍量のGR24を茎頂に処理しても節間の伸長は起こらなかった。よって、GAとは異なり、GR24を茎頂に処理しても節間の伸長には効果を示さない。GA 3-オキシダーゼをコードするLEPsGA3ox )遺伝子の機能喪失変異体le-1 は、節間が野生型よりも71%短くなり、le-1 rms1 二重変異体の節間はrms1 変異体よりも69%短くなった。また、rms1 変異体の節間は野生型よりも23%短く、le-1 rms1 二重変異体の節間はle-1 変異体よりも17%短くなった。したがって、節間伸長におけるSLの効果はGAほどは強くないが、両者はお互いとは関係なく節間伸長を制御していると考えられる。le-1 rms1 二重変異体の節間はそれぞれも単独変異体よりも短いことから、SLとGAは節間伸長に対して独立して相加的に作用することが示唆される。le-1 rms1 二重変異体は、それそれの単独変異体よりも分枝数や分枝の成長量が増加していた。よって、SLとGAは独立して分枝制御を行なっていると考えられる。rms1 変異体の節間は、細胞数が減少しており、細胞の長さに関しては変化が見られなかった。したがって、SLは細胞分裂に影響を及ぼすことで節間伸長を促進していると考えられる。rms1 変異体の内生GA量は野生型と同等であり、GR24処理した野生型植物においてGA生合成酵素遺伝(PsGA20ox1PsGA3ox1LE ])やGA異化酵素遺伝子(PsGA2ox1PsGA2ox2 )の発現量に変化は見られなかった。したがって、rms 変異体でのわい化した表現型は、GA量の低下によるものではなく、SL処理による節間伸長はGA生合成とは関連していない。エンドウのDELLAタンパク質をコードしている遺伝子が機能喪失したla cry-s 二重変異体は、節間が非常に長くなる表現型を示すが、rms1 変異が加わると節間が短くなった。よって、SLによる節間伸長制御にはDELLAタンパク質は関与していないと考えられる。シロイヌナズナを用いた実験から、DELLAタンパク質はGR24処理をしても分解されないことが確認されたことから、SLはDELLAを介したGAシグナル伝達に関与していないと考えられる。野生型植物、rms1 変異体、rms4 変異体の托葉にGA処理をすると、その添加量に応じて節間が伸長するが、野生型植物と変異体との節間長の差は縮まることはなかった。以上の結果から、ストリゴラクトンはジベレリンとは独立して節間伸長を制御していると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)コシヒカリの日長応答性が低い理由

2013-11-04 14:16:23 | 読んだ論文備忘録

Hd16, a gene for casein kinase I, is involved in the control of rice flowering time by modulating the day-length response
Hori et al.  The Plant Journal (2013) 76:36-46.
doi: 10.1111/tpj.12268

ジャポニカイネ品種の日本晴とコシヒカリは、出穂時期や日長に対する花成誘導の応答性が異なっており、長日条件において日本晴はコシヒカリよりも出穂時期が遅い。よって、日本晴はコシヒカリよりも日長感応性が高いといえる。QTL解析や準同質遺伝子系統(NIL)を用いた解析によって、日本晴とコシヒカリの出穂時期の違いはHd16 遺伝子が関与してることが明らかとなっている。(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センターの矢野らは、日本晴とコシヒカリのHd16 ゲノム遺伝子配列を比較し、カゼインキナーゼI(CKI)をコードするOs03g0793500の第10エクソンに非同義一塩基多型(SNP)があることを見出した。日本晴ではグアニンであるところがコシヒカリではアデニンとなっており、このことによって日本晴でAlaであるアミノ酸がコシヒカリではThrとなっていた。このアミノ酸置換は、CKIの触媒活性ドメインの近傍にあり、他生物のCKIの同じ位置のアミノ酸残基は全てAlaで、コシヒカリのみがThrとなっていた。よって、日本晴Hd16 が先祖型で、コシヒカリHd16 は変異型であると考えられる。Os03g0793500は、Early flowering 1EL1 )として報告されており、ジベレリンを介した花成誘導経路に関連しているとされている。CKIをコードする日本晴のゲノム断片を導入したコシヒカリは、対照に比べて、短日条件での出穂が早くなり、長日条件での出穂が遅くなった。Hd16 の発現をRNAiで抑制した日本晴は、短日条件での出穂が遅くなり、長日条件での出穂が早くなった。よって、Hd16 遺伝子およびこの遺伝子がコードするCKIタンパク質は、日長による花成誘導に関与していることが示唆される。Hd16 の転写産物は、全ての組織において全ての成長ステージで観察され、成長後期の葉身で発現量が増加する傾向が見られた。Hd16 プロモーターでGUSを発現させると、葉の維管束やシュートや根の先端部が染色された。コシヒカリHd16 遺伝子に見られるSNPはジャポニカ品種にのみ見出され、恐らく、古い日本稲品種である「森多早生」がSNPの起源であると思われる。イネにおいて花成時期を制御する他の遺伝子(Hd1Ghd7DHT8Hd2 )とHd16 を組合わせたNILについて出穂時期を調査したところ、Hd16 による長日条件での出穂遅延には、これらの遺伝子の機能が必要であることがわかった。Hd16 による花成制御遺伝子の発現制御を定量PCRによって調査したところ、Hd16 は長日条件においてEhd1Hd3aRFT1 の転写を負に制御していることがわかった。CKIは哺乳類において概日時計の調節に関与していることが知られているが、Hd16 は時計機能には関与していなかった。日本晴型Hd16は一般的なCKIの基質であるホスビチンをリン酸化したが、コシヒカリ型Hd16はリン酸化活性が弱く、自己リン酸化機能も低下していた。Ghd7Hd1Hd16 による転写制御の変化が明確に見られなかったが、Ghd7タンパク質は日本晴型Hd16によってリン酸化され、Hd1タンパク質はリン酸化されないことがわかった。したがって、Hd16はGhd7をリン酸化し、リン酸化されたGhd7が下流遺伝子の転写を低下させることで出穂遅延を起こしていると考えられる。酵母two-hybridアッセイから、日本晴型Hd16はGhd7と相互作用をし、コシヒカリ型Hd16もGhd7と相互作用をしたが、日本晴型Hd16よりも弱かった。以上の結果から、Hd16は長日条件下で花成抑制因子として機能するGhd7を直接リン酸化してイネの出穂を制御していると考えられる。


農業生物資源研究所のプレスリリース

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)植食性昆虫の共生者による植物防御応答の制御

2013-10-31 05:23:16 | 読んだ論文備忘録

Herbivore exploits orally secreted bacteria to suppress plant defenses
Chung et al.  PNAS (2013) 110:15728-15733.
doi:10.1073/pnas.1308867110

植食性昆虫の多くは微生物の共生者を宿しており、このことによって栄養物やビタミン類を得たり、捕食者や寄生者に対する防御の役割を担わせたりしている。さらに、この共生は植物と昆虫の間の相互作用にも関係している。米国 ペンシルバニア州立大学Felton らは、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata )の幼虫が摂食したトマトの葉の食害部には、予め抗生物質の入った人工飼料を与えて育成したコトラドハムシ幼虫による食害部よりも多くの微生物が付着していることを見出した。したがって、コロラドハムシ幼虫は口腔分泌物(OS)に共生している微生物を植物に付着させていることが示唆される。予め幼虫の食害を受けた葉を摂食した一齢幼虫は、抗生物質処理をした幼虫による食害を受けた葉を摂食させた一齢幼虫よりも体重が増加した。無処理幼虫の食害を受けた葉のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性は、抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも低くなっていた。無処理幼虫の食害を受けた葉は、ジャスモン酸(JA)よって誘導されるシステインプロテアーゼインヒビター(CysPI )やポリフェノールオキシダーゼF/B(PPOF/B )の発現量が抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも低く、逆に、サリチル酸(SA)処理によって誘導されるpathogenesis-related 1(PR-1P4 ))の発現量が高くなっていた。機械的に傷害を与えたところに無処理幼虫のOSを処理した葉のPPO活性は、傷害部に水処理もしくは抗生物質処理幼虫のOSを処理した葉よりも低く、抗生物質処理幼虫のOS処理と水処理でPPO活性に差は見られなかった。また、傷害部を抗生物質処理しても遺伝子発現やPPO活性に変化は見られなかった。これらの結果から、コロラドハムシ幼虫のOSに含まれる微生物は植物の虫害防御を抑制していることが示唆される。無処理幼虫の食害を受けた葉は、抗生物質処理幼虫の食害を受けた葉よりも、cis-JA含量が低く、SA含量が高くなっていた。SA欠損NahG 変異体は、無処理幼虫の食害を受けても防御遺伝子の発現抑制やPPO活性の低下が起こらなかった。したがって、JAシグナルとSAシグナルとの間の負のクロストークが防御応答の抑制に関与していると考えられる。コロラドハムシのOSに含まれる真菌類(カビ)と細菌類(バクテリア)のどちらが植物の防御応答を抑制しているかを確かめるために、抗バクテリア剤や抗カビ剤をを与えた幼虫の食害を受けた葉のPPO活性を見たところ、無処理幼虫や抗カビ剤を与えた幼虫の食害を受けた葉は、抗バクテリア剤を与えた幼虫や抗カビ剤と抗バクテリア剤を同時に与えた幼虫の食害を受けた葉よりもPPO活性が低下していた。したがって、JAに応答した防御応答の抑制には、OSに含まれる細菌が関与していると考えられる。無処理幼虫のOSからは22種類の細菌が検出され、このうち3種類はPPO活性を抑制させた。この3種類の細菌は、ステノトロホモナス属、シュードモナス属、 エンテロバクター属の菌であり、PPO活性の抑制を起こさない菌は、ラオウルテラ属の一種、シュードモナス属の一種、腸内細菌科の菌であった。PPO活性を抑制する細菌による防御応答抑制は、一定の閾値を越えると菌量に応じて抑制効果を示したが、抑制効果を示さない細菌は葉へ処理する菌量を高めてもPPO活性の低下を起こさなかった。PPO活性を抑制するシュードモナス属菌を処理した傷害葉は、CysPIPPOF の発現量が無処理傷害葉よりも低く、PR-1P4 )の発現量は高くなっていた。PPO活性を抑制する細菌を混合して処理しても、相助作用、拮抗作用、相加作用は見られず、全ての組合せでPPO活性の低下が起こった。したがって、これらの細菌のうち1種類でもOSに含まれていれば防御応答の抑制が起こると考えられる。防御応答を抑制する細菌は抗生物質処理によって増殖が抑制され、無処理幼虫内のシュードモナス属の菌量は抗生物質処理幼虫よりも多くなっていた。また、抗生物質処理した幼虫にPPO活性を抑制する細菌を再感染させて摂食させると、防御応答の抑制が起こった。よって、PPO活性を抑制する細菌は、OSを介して葉の傷害部に供給されると考えられる。PPO活性を抑制するシュードモナス菌より精製したフラジェリンを傷害部に処理するとPPO活性の低下が起こることから、防御応答の抑制にはフラジェリンが関与していると考えられる。以上の結果から、コロラドハムシ幼虫の口腔分泌部内に共生している微生物は、摂食の際に植物組織に分泌され、JAシグナルとSAシグナルの負のクロストークを引き起こして防御応答の誘導を抑制していることが示唆され、コロラドハムシ幼虫は植物のシグナル伝達経路を操作して自らの成長にとって有利な状況を作り出していると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)MYC2/MYC3/MYC4によるグルコシノレート生合成の制御

2013-10-28 21:23:13 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis Basic Helix-Loop-Helix Transcription Factors MYC2,MYC3, andMYC4 Regulate Glucosinolate Biosynthesis, Insect Performance, and Feeding Behavior
Schweizer et al.  Plant Cell (2013) 25:3117-3132.
doi:10.1105/tpc.113.115139

bHLH型転写因子のMYC2/MYC3/MYC4は、ジャスモン酸(JA)シグナル伝達の正の制御因子として相加的に作用している。JAは植食性昆虫に対する防御応答に関与しており、シロイヌナズナのmyc234 三重変異体やcoi1-1 変異体といったJAシグナル伝達が欠損した変異体は、ゼネラリストであるコットンリーフワーム(Spodoptera littoralis )による食害を野生型植物よりも強く受ける。スイス ローザンヌ大学Reymond らは、トランスクリプトーム解析から、myc234 変異体では84遺伝子の発現量が野生型よりも低いことを見出し、両者で発現量の差が大きい50遺伝子のうち、27遺伝子は昆虫に対する防御物質であるグルコシノレート(GS)の生合成経路に関与するものであった。これらの遺伝子の多くは、myc234 変異体、coi1-1 変異体では植食性昆虫の食害による発現誘導が起こらないが、定常状態での発現量はcoi1-1 変異体ではmyc234 変異体よりも高くなっていた。したがって、JAは植食性昆虫に応答してGS遺伝子の発現を誘導しているが、MYC2/3/4はGS遺伝子の定常状態での発現制御する役割も担っていることが示唆される。GS生合成酵素をコードするBCTA4CYP79B3SUR1 の発現量は、myc 単独変異体では野生型と同等であったが、myc234 変異体では減少していた。また、MYC2 過剰発現個体ではこれらの遺伝子の発現が高くなっていた。myc234 変異体では、cyp79B2 cyp79B3 myb28 myb29 四重変異体(quadGS )と同様にGSが殆ど検出されず、両者は植食性昆虫の食害を受けてもGSの増加は起こらなかった。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS蓄積における重要な因子であると考えられる。coi1-1 変異体のGS含量は野生型の83%あったが、植食性昆虫に応答したGS量の変化やGS生合成酵素遺伝子の誘導は見られなかった。したがって、JAシグナルは植食性昆虫によって誘導されるGS蓄積に必要であるが、恒常的なGS蓄積はCOI1とは独立し、MYC2/MYC3/MYC4に依存していることが示唆される。myc234 変異体やquadGS 変異体を摂食したコットンリーフワーム幼虫は野生型植物を摂食した場合よりも体重が増加した。coi1-1 変異体はGSを含有しているが、摂食したコットンリーフワーム幼虫はmyc234 変異体やquadGS 変異体を摂食した場合と同程度に体重が増加した。一方、スペシャリストのオオモンシロチョウ(Pieris brassicae )の幼虫は、野生型、myc234 変異体、coi1-1 変異体では同じように成長したが、quadGS 変異体では成長量が低下した。GSはゼネラリストに対しては防虫効果を示すが、スペシャリストに対しては摂食や産卵を誘引する効果があることが知られている。二者選択実験から、ゼネラリストのコットンリーフワームはmyc234 変異体、quadGS 変異体、coi1-1 変異体を野生型植物よりも好むが、スペシャリストのオオモンシロチョウは逆のパターンを示し、myc234 変異体やquadGS 変異体よりも野生型植物を好んだ。また、オオモンシロチョウはmyc234 変異体とquadGS 変異体の間で好みの区別はなく、野生型植物とcoi1-1 変異体の間での差も見られなかった。さらに、オオモンシロチョウ成虫は野生型植物を選択して産卵し、myc234 変異体やquadGS 変異体には産卵しなかった。コットンリーフワーム幼虫は、野生型やcoi1-1 変異体のようにGSを含有する葉では葉身の内側を摂食し、myc234 変異体やquadGS 変異体の葉では周縁部の葉身を好んで摂食した。オオモンシロチョウ幼虫は、植物の遺伝子型に関係なく、葉の周縁部を摂食した。GS含量は中央脈や周縁部で高いことから、ゼネラリストはGS含量の高い組織を避けて摂食するが、GSが含まれていなければ周縁部を好むこと、スペシャリストはGSに適応し、GSによって摂食が誘引されるが、GS欠損個体であっても葉の周縁部を摂食し、葉の周縁部は昆虫が好む特別な特性を有していることが示唆される。myc234 変異体ではGS生合成酵素遺伝子の発現量が低下しているが、これらの遺伝子の発現を制御しているR2R3-MYB転写因子の発現量に変化は見られなかった。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS生合成をMYB 遺伝子の転写活性化を介して行っているのではないと考えられる。GS生合成を制御しているMYBタンパク質はJAシグナルを抑制するJAZタンパク質と相互作用を示さなかったが、MYC2/MYC3/MYC4タンパク質とは、MYCタンパク質がJAZタンパク質と相互作用をするJAZ相互作用ドメイン(JID)を介して相互作用をした。よって、MYC2/MYC3/MYC4はGS生合成を制御するMYBタンパク質と複合体を形成してGS生合成を制御いていることが推測される。GS生合成酵素をコードする遺伝子のプロモーター領域にはG-boxモチーフが含まれており、野生型とmyc234 変異体で発現量の異なる27のGS生合成酵素遺伝子のうち、14遺伝子のプロモーター領域にMYC2が結合することが確認された。よって、多くのGS生合成酵素遺伝子は、プロモーター領域のG-boxモチーフを介して、MYC2の直接のターゲットとなっている。以上の結果から、MYC2/MYC3/MYC4は恒常的および虫害に応答したグルコシノレート生合成において重要であることが示唆される。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加