Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)オーキシンと環境ストレス応答との関係

2012-12-27 20:15:52 | 読んだ論文備忘録

A GH3 family member, OsGH3-2, modulates auxin and abscisic acid levels and differentially affects drought and cold tolerance in rice
Du et al.  Journal of Experimental Botany (2012) 63:6467-6480.
doi:10.1093/jxb/ers300

生体内のオーキシン(IAA)量の調節は、遊離の活性型IAAからIAAとアミノ酸(Asp、Ala、Phe)との不活性型縮合体への転換によってなされており、この反応はGH3ファミリーに属するIAA-アミド合成酵素によって触媒されている。中国 華中農業大学のXiong らは、イネを実験材料に用いて、オーキシン量制御と環境ストレス耐性との関係を調査した。OsGH3-2 を過剰発現させた形質転換イネは、わい化し、葉身と葉鞘との間の屈曲の程度が増し、止葉、穂、節間の長さが短くなった。よって、OsGH3-2 の過剰発現はイネの成長に対して有害な効果を示す。過剰発現個体の葉身の表皮や節間の細胞は小さく、このことが過剰発現個体のわい化をもたらしていると考えられる。また、過剰発現個体は冠根数が少ないが、根自体は長く、根毛の密度が低くなっていた。OsGH3-2 は野生型植物において多くの組織や器官で発現しており、特にカルス、葉、根での発現量が高く、穂や茎での発現量は低くなっていた。OsGH3-2 の発現はIAA処理によって急速に増加し、アブシジン酸(ABA)処理によって減少した。また、OsGH3-2 の発現は乾燥処理によって誘導され、低温処理によって抑制された。ABA欠損変異体でのOsGH3-2 の発現量は通常の栽培条件でも乾燥処理条件でも野生型との差が見られず、乾燥処理によるOsGH3-2 の発現誘導はABA生合成量の変化によるものではないと考えられる。OsGH3-2 過剰発現個体は乾燥処理による葉のしおれが野生型よりも早く起こり、通常の栽培条件に戻した際の生存率も低かった。過剰発現個体でのスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は、通常栽培条件下では野生型よりも高いが、乾燥処理後には野生型よりも低くなっていた。よって、OsGH3-2 過剰発現個体は乾燥ストレス条件下での活性酸素種(ROS)の除去能力が低下していると考えられる。低温処理をした場合には、野生型植物はOsGH3-2 過剰発現個体よりも早くしおれ、通常栽培条件に戻した際の回復もOsGH3-2 過剰発現個体のほうが優れていた。低温処理は細胞膜に損傷をもたらすが、OsGH3-2 過剰発現個体の細胞膜の損傷の程度は野生型よりも低くなっていた。OsGH3-2 過剰発現個体でのIAA量の減少と酸化ストレスとの関係を見るために、野生型植物に合成オーキシンのナフタレン酢酸(NAA)もしくはIAA生合成阻害剤のアミノエトキシビニルグリシン(AVG)処理をしてROSの生成量を見たところ、NAA処理ではROS生産量が増加し、AVG処理では減少していることがわかった。OsGH3-2 過剰発現個体はメチルビオロゲン(MV)処理によるクロロフィル含量低下の程度が野生型よりも低く、酸化ストレスをもたらす中間代謝産物のモノデヒドロアスコルビン酸(MDA)の低温処理による生成量が野生型よりも低くなっていた。したがって、OsGH3-2 過剰発現個体は酸化ストレス耐性が高くなっていると考えられる。OsGH3-2 過剰発現個体は内生IAA含量が野生型よりも少ないが、内生ABA含量も少なく、ABAの前駆体であるα-カロテン、β-カロテンの含量も少なくなっていた。OsGH3-2 過剰発現個体でABA含量が減少していることから、気孔の開閉度と密度を調査したところ、OsGH3-2 過剰発現個体では乾燥ストレス条件での気孔の開度が野生型よりも高くなっており、このことか乾燥ストレス感受性に関与していると考えられる。OsGH3-2 過剰発現個体では多くのABA生合成酵素遺伝子の発現が抑制され、ABAの異化に関与する酵素遺伝子の発現量が増加していた。ABAシグナル伝達に関与する遺伝子の発現量には大きな変化見られなかったが、OsPPC30OsPPC49 の発現量は僅かに増加し、OsbZIP23 の発現量は僅かに減少していた。IAAシグナル伝達に関与する遺伝子は、OsIAA20 、OsRAA1OsSAUR39 の発現量は増加していたが、他の遺伝子の発現量には変化は見られなかった。以上の結果から、OsGH3-2 過剰発現個体ではABA生合成に関与する遺伝子やオーキシンシグナルに関与する遺伝子の発現量が変化し、このことが乾燥や低温ストレスに対して異なる応答性をもたらしていると考えられる。したがって、オーキシン量とABA量の調節は乾燥や低温に対する応答性にとって重要であると考えられる。RNAiによってOsGH3-2 の発現を抑制した個体では、IAA量やABA量、ストレス応答性に変化は見られず、他のOsGH3 ファミリー遺伝子によってOsGH3-2 の機能が相補されていると考えられる。

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論文)果実成長における2種類のジベレリン応答機構

2012-12-24 17:25:47 | 読んだ論文備忘録

Fruit Growth in Arabidopsis Occurs via DELLA-Dependent and DELLA-Independent Gibberellin Responses
Fuentes et al.  The Plant Cell (2012) 24:3982-3996.
doi:10.1105/tpc.112.103192

果実の形成にはオーキシン、ジベレリン(GA)、サイトカイニンが関与しており、これらのホルモンが単独もしくは組み合わさって作用することによって、受粉しなくても果実の成長(単為結果)を誘導することができる。これまでの知見から、受粉によって種子から発せられたオーキシンシグナルがジベレリン生合成を増加させ、果実の成長が誘導されることが知られている。英国 ジョン・イネスセンターØstergaard らは、シロイヌナズナを用いて、GAシグナルのリプレッサーであるDELLAタンパク質の果実成長に対する役割を解析した。シロイヌナズナの5つのDELLAタンパク質が機能喪失したglobal 変異体とglobal 変異にGA生合成欠損を加えたga1 global 変異体の長角果の成長を見たところ、果実成長の初期過程ではga1 global 変異体の果実は野生型よりも僅かに長かったが、その後の成長過程ではglobal 変異体もga1 global 変異体も野生型よりも果実の長さが短くなった。また、両変異体とも発達が止まった胚珠が見られ、種子量が減少した。ga1 global 変異体と野生型植物を交雑したところ、どちらを母親もしくは花粉親としても種子量の回復は見られなかったことから、ga1 global 変異による稔実低下は母親、父親のどちらの変異によっても引き起こされることが示唆される。global 変異体もga1 global 変異体も野生型よりも花柱が長く、柱頭が幅広になっていた。よって、DELLAタンパク質は果実の成長と稔実に関与していると考えられる。果実の成長過程における個々のDELLA 遺伝子の発現パターンは異なっており、果実成長過程の各ステージにおいて関与するDELLA 遺伝子が異なっていると考えられる。野生型植物を開花前に除雄すると果実の伸長は促進されないが、除雄したglobal 変異体やga1 global 変異体の雌ずいは成長して単為結果を起こす。della 単独変異体を除雄して果実の成長を比較した結果から、未受精果実の成長抑制はGAI、RGA、RGL2が主に関与しており、RGL1は一部関与、RGL3の関与は低いことが判った。除雄した野生型植物の果皮は6つの細胞層が明確ではないが、global 変異体やga1 global 変異体では、受粉やGA処理した雌ずいと同様に果皮の細胞層がはっきり区別でき、各層の細胞とも十分に拡張していた。除雄したglobal 変異体やga1 global 変異体の雌ずいは単為結果を起こして果実が成長するが、受粉した変異体の果実と比較すると短く、まだ成長の余地が残されている。除雄した野生型植物の雌ずいはIAA処理をすると伸長が促進されるが、global 変異体やga1 global 変異体の雌ずいはIAA処理による伸長が見られず、オーキシンによって誘導される単為結果はDELLAによるGAシグナルを介して起こるものと考えられる。除雄したglobal 変異体果実のIAA含量は受粉したglobal 変異体果実よりも低く、global 変異体での単為結果はIAA含量の増加によるものではなく、DELLAタンパク質の欠損の直接の効果であることが示唆される。したがって、global 変異体における単為結果誘導機構は、胚珠からのオーキシンシグナルよりも下流において作用いているものであると考えられる。global 変異体やga1 global 変異体の果実をGA処理すると、その濃度に応じて果実の伸長が起こることから、DELLAタンパク質とは独立したGA応答機構が存在していると考えられる。GA耐性のDELLA(GAI)を生産するgai-1 優性変異体の雌ずいをGA処理すると果実の成長が促進されることからも、DELLA非依存GA応答機能の存在が示唆される。gid1a/b/c 三重変異体の雌ずいをGA処理しても伸長促進は起こらないことから、DELLA非依存GA応答はGID1を介したGA受容は必要であると考えられる。global 変異体のGA処理による雌ずい伸長は26Sプロテアソームの阻害剤であるMG132で予め処理することによって完全に抑制されることから、この機構には26Sプロテアソームが関与していると考えられる。DELLAタンパク質のユビキチン化に関与しているF-boxタンパク質SLY1の変異体sly1-10 の雌ずいではGA処理による伸長が見られることから、この機構にはSLY1は関与していない。bHLH転写因子のSPATULA(SPT)と4つのDELLAタンパク質の変異体quad-della spt-2 はGA処理による果実伸長が見られず、SPTがDELLA非依存GA応答に関与していることが示唆される。除雄したspt 変異体の雌ずいは野生型よりも長くなることから、GA非存在下でSPTは雌ずい成長の抑制因子として機能していると考えられる。しかし、GA処理をした場合にはspt 変異体雌ずいは野生型よりも短くなり、SPTはDELLA非依存GA応答に関与していると考えられる。SPTはGA処理による分解やGID1Aとの直接の相互作用を示さないことから、SPTによる作用はDELLAタンパク質とは全く別のGAシグナル伝達機構によってなされていると考えられる。以上の結果から、シロイヌナズナの果実の成長はDELLAタンパク質を介した主要なGA応答機構と、DELLAタンパク質とは独立したSPTを介したGA応答機構によって制御されていると考えられる。

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論文)ジャスモン酸イソロイシンヒドロラーゼによる虫害応答の調節

2012-12-20 22:12:36 | 読んだ論文備忘録

Jasmonoyl-L-isoleucine hydrolase 1 (JIH1) regulates jasmonoyl-L-isoleucine levels and attenuates plant defenses against herbivores
Woldemariam et al.  The Plant Journal (2012) 72:758-767.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.05117.x

ジャスモン酸(JA)とイソロイシン(Ile)の縮合体JA-Ileは、生物活性を有した分子であり、F-boxタンパク質のCOI1と相互作用をしてJAシグナル伝達のリプレッサーであるJAZタンパク質の26Sプロテアソームによる分解を引き起こす。しかし、JAシグナルが下流へと伝達された後には、シグナルカスケードをリセットする必要がある。JAZ 遺伝子には負のフィードバック制御機構があり、JAシグナルによって発現が誘導される。また、JA-IleもシトクロムP450によってヒドロキシル化もしくはカルボキシル化されることで不活性化されることが報告されている。しかしながら、JA-Ileを直接加水分解してJAとする機構の関与については報告がない。ドイツ マックスプランク化学生態学研究所Galis らは、JA-Ileを加水分解するジャスモン酸イソロイシンヒドロラーゼ1(JIH1)について、野生タバコNicotiana attenuata を用いて解析を行なった。NaJIH1 遺伝子は、草食昆虫の食害を模して葉に傷害を与えることで発現が誘導され、傷害葉をタバコスズメガ(Manduca sexta )の口腔分泌物で処理(WOS処理)した場合よりも強く発現した。NaJIH1 の発現量とJA-Ile量との間には負の相関が見られた。NaJIH1はJA-Ile、JA-Val、JA-GluおよびIAA-Alaを加水分解したが、IAA-Aspは分解しなかった。RNAiによってNaJIH1 の発現が抑制された野生タバコ(irJIH1)は、WOS処理1時間後に野生型よりも多くのJA-Ileを蓄積していたが、3時間後には基底レベルにまで減少していた。WOS処理1時間後のIAA量は野生型とirJIH1植物との間で差が見られなかったことから、NaJIH1はIAA-AlaよりもJA-Ileの代謝に主に関与していると考えられる。WOS処理と同時にIAA処理を行なってもirJIH1植物のJA-Ileは野生型よりも高くなっていることから、WOS処理によるJA-Ile量の上昇はIAA量とは独立したものであることが示唆される。WOS処理したirJIH1植物は、野生型よりも多くのOH-JA-IleやCOOH-JA-Ileを蓄積しており、NaJIH1活性の低下を補っていると考えられる。OH-JA-Ile生成を触媒する酵素をコードしているCYP94B3 の発現量はirJIH1植物において変化が見られないことから、irJIH1植物でのOH-JA-Ileの増加は転写レベルでの制御によるものではない。irJIH1植物ではスペシャリストであるタバコスズメガおよびゼネラリストであるSpodoptera littoralis (ヤガの一種)の幼虫の摂食による体重増加が野生型植物を摂食させた場合よりも低くなっていた。また、irJIH1植物ではWOS処理24時間後のニコチン、17-ヒドロキシゲラニルリナロオールジテルペングリコシド(HGL-DTG)、プロテアーゼインヒビターといった防御応答物質の蓄積量が野生型よりも高くなっており、これらの物質の蓄積量増加が幼虫の体重増加の抑制に関与していると考えられる。また、野外試験において、irJIH1植物ではGeocoris pallens (カメムシの一種)によるタバコスズメガの卵の摂食量が野生型よりも高くなっており、G. pallens を誘引する揮発性有機化合物(VOC)のWOS処理による放出量が高くなっていた。よって、irJIH1植物では直接的および間接的な虫害応答が野生型よりも高くなっていると考えられる。以上の結果から、NaJIH1によるJA-Ileの代謝は、草食昆虫による食害や傷害によって上昇したJA-Ile量を下げ、虫害に対する防御応答を厳密に調節していると考えられる。

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論文)CTR1によるEIN2のリン酸化とエチレンシグナル伝達

2012-12-17 06:12:42 | 読んだ論文備忘録

CTR1 phosphorylates the central regulator EIN2 to control ethylene hormone signaling from the ER membrane to the nucleus in Arabidopsis
Ju et al.  PNAS (2012) 109:19486-19491.
doi:10.1073/pnas.1214848109

エチレンの受容体およびエチレンシグナル伝達に関与しているCONSTITUTIVE TRIPLE RESPONSE1(CTR1)やETHYLENE INSENSITIVE2(EIN2)は小胞体膜に局在しており、これらが核での遺伝子発現を制御している。米国 メリーランド大学Chang らは、酵母two-hybridアッセイ試験から、CTR1のC末端側キナーゼドメインとEIN2のC末端側ドメインが相互作用をすることを見出した。また、BiFCアッセイによって、完全長CTR1とEIN2が生体内において相互作用することを確認した。CTR1キナーゼドメインはEIN2C末端ドメインをリン酸化し、645番目と924番目のSer残基が強くリン酸化されることがわかった。645番目と924番目のSer残基をそれぞれAla残基に置換したEIN2ein2 変異体で発現させたところ、S645Aでは僅かに恒常的エチレン応答表現型を示したが、S924Aではctr1 変異体のような強い恒常的エチレン応答表現型を示し、両Ser残基をAlaに置換したEIN2 を発現させた場合にはさらに表現型が強まった。よって、両Ser残基のリン酸化はEIN2シグナルを抑制するために必要であり、924番目のSer残基が645番目の残基よりも重要であることが示唆される。GFP等を付加した融合タンパク質を用いた実験から、EIN2タンパク質はエチレン処理をしない条件では小胞体に膜に局在しているが、エチレン処理をすることによって核にも局在することがわかった。一方、EIN2のN末端側ドメインはエチレン処理に関係なく小胞体膜に局在していた。よって、エチレンの受容によってEIN2タンパク質の切断が起こり、C末端側は核へ移行し、N末端側は小胞体膜に残ると考えられる。両Ser残基をAlaに置換したEIN2はエチレン処理に関係なく核において検出されることから、両Ser残基をAlaに置換したEIN2はC末端が核へ移行して恒常的なエチレン応答表現型を示すものと考えられる。ctr1 変異体ではエチレン処理をしない状態でもEIN2C末端は核に局在していた。以上の結果から、CTR1によるEIN2のリン酸化は、エチレン非存在下でのEIN2によるシグナル伝達を妨げ、エチレン受容によってCTR1のキナーゼ活性が阻害されることでEIN2のC末端が切断されて核へと移行し、下流に位置する転写因子等の転写が活性化してエチレンシグナル伝達が起こると考えられる。

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論文)トウモロコシTeosinte branched1 とストリゴラクトンとの関係

2012-12-13 20:27:34 | 読んだ論文備忘録

Diverse Roles of Strigolactone Signaling in Maize Architecture and the Uncoupling of a Branching-Specific Subnetwork
Guan et al.  Plant Phyiology (2012) 160:1303-1317.
doi:10.1104/pp.112.204503

トウモロコシは、栽培化の過程において、原種であるテオシントの頂芽優勢が増して1本の中央茎となったものを選抜してきたと考えられている。トウモロコシではTCPファミリー転写因子をコードするTeosinte branched1Tb1 )遺伝子の発現量がテオシントよりも高く、Tb1 遺伝子の上流に挿入された2つの転位因子が発現量増加の原因となっている。Tb1 のオーソログはシロイヌナズナ(AtBRC1AtBRC2 )、エンドウ(PsBRC1 )、イネ(FC1 )のものが知られており、いずれもストリゴラクトン(SL)のシグナル伝達の下流に位置する遺伝子であることが明らかとされている。しかしながら、SLシグナルのトウモロコシの形態に対する役割は不明な点が残されている。米国 フロリダ大学Guan らは、SL生合成酵素のカロテノイド酸化開裂酵素8(CCD8)をコードするZmCCD8 (GRMZM2G446858)にDs トランスポゾンが挿入されたノックアウト変異体zmccd8 を用いて、SLとTb1 との関係を解析した。zmccd8 変異体の芽生えでは野生型では見られない腋芽の成長が起こり、トウモロコシにおいてSLは分枝を抑制していることが示唆される。zmccd8 変異体での分枝形成数は野生型の2倍程度あり、雌穂節よりも下の腋芽が成長するが、シロイヌナズナのSL変異体のように旺盛に分枝が伸長することはなく、成長量は限られていた。また、二次、三次の分枝は見られなかった。zmccd8 変異体は、野生型と比較して、草丈が低く、雌穂が小さく、主茎が細く、節間が短くなっていたが、雄穂はやや長くなっていた。zmccd8 変異体は一次根が野生型よりも短く、節根の成長にも遅延が見られた。zmccd8 変異体のシュートにおけるTb1 遺伝子の発現量は野生型よりも高くなっており、野生型トウモロコシの芽生えをGR24処理をしてもTb1 の発現量に変化は見られなかった。よって、トウモロコシのTb1 はSLによる発現制御を受けていないと考えられる。zmccd8 変異体はtb1 変異体のような著しい分枝は起こさないことから、zmccd8 変異体ではSLが欠損していても分枝が抑制されていることが示唆される。tb1 zmccd8 二重変異体は、zmccd8 変異体と同様に草丈が低くなり、分枝数の増加、分枝の伸長、二、三次分枝の形成、先端部での雄穂形成についてはtb1 変異体と同等になった。Tb1 遺伝子のヘテロ接合体では分枝形成が野生型とtb1 変異体の中間程度となり、ここにzmccd8 変異が加わると分枝数が増加した。よって、Tb1 の発現量が制限された条件においてはSLシグナルが相加的に作用することが示唆される。以上の結果から、栽培化されたトウモロコシではTb1 はSLシグナルとは独立して分枝の抑制に機能しており、SLによる分枝抑制効果は他植物に比べて低いと考えられる。また、SLは分枝抑制以外にも草丈等に対してTb1 とは独立した多面的な効果を示す。

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論文)オーキシン処理とエチレン処理のプロテオーム解析比較

2012-12-08 17:34:48 | 読んだ論文備忘録

Effects of exogenous auxin and ethylene on the Arabidopsis root proteome
Slade et al.  Phytochemistry (2012) 84:18-23.
doi:10.1016/j.phytochem.2012.08.007

オーキシンとエチレンは共に様々な生理的、発生的な過程の制御をしており、両者の応答やシグナル伝達は多くの場面で相互依存していることが知られている。米国 バージニア工科大学Helm らは、この2つのホルモンの効果をシロイヌナズナの根のプロテオーム解析によって比較した。シロイヌナズナ芽生えをオーキシン(IAA)もしくはエチレン(ACC)処理をし、24時間後に根からタンパク質可溶化液を調製して二次元電気泳動で分画した。スポットの強度を無処理区と比較したところ、IAA処理では24のスポットに変化が見られ、13は強度が増加、11は減少していた。ACC処理では7つのスポットが変化し、4つは強度が増加、3つは減少していた。しかし、IAA処理とACC処理の間で変化の見られたスポットには重複しているものがなく、2つの植物ホルモンは共にシロイヌナズナの根に生理学的変化をもたらすにもかかわらず、量的変化を起こすタンパク質は異なっていた。強度の変化したスポットをMALDI TOF/TOF MSで同定したところ、IAA、ACC共に転写、翻訳、タンパク質ホールディングに関与するタンパク質の蓄積に影響しており、IAA処理によってのみ変化するタンパク質として、細胞骨格、細胞壁形成、炭素代謝に関与するタンパク質、ACC処理では硫黄代謝に関与するタンパク質が見られた。オーキシンとエチレンはターゲットとしている細胞過程が類似しており、分子機構に重複があるように思われるが、タンパク質量変化に対する効果は異なっていることがこの結果から示唆される。

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論文)ストリゴラクトン受容体?

2012-12-05 23:31:47 | 読んだ論文備忘録

DAD2 Is an α/β Hydrolase Likely to Be Involved in the Perception of the Plant Branching Hormone, Strigolactone
Hamiaux et al.  Current Biology (2012) 22:2032-2036.
doi: 10.1016/j.cub.2012.08.007

ストリゴラクトン(SL)は、分枝、葉の老化、根の発達、微生物との相互作用に関与しているカロテノイド誘導体である。SLは主に根で合成され、生合成酵素が各種植物から見出されているが、SL受容体については明らかとなっていない。ニュージーランド 植物・食品研究所のSnowden らは、ペチュニアを実験材料に用いてSL受容体の探索を行なった。ペチュニアdecreased apical dominance 2dad2 )変異体は分枝した表現型を示し、合成ストリゴラクトンGR24に対して非感受性である。DAD2 遺伝子はイネD14 遺伝子やシロイヌナズナAtD14 遺伝子のオーソログであり、野生型ペチュニアのほとんどの器官で発現し、特に葉と腋芽での発現が高い。成長中の腋芽よりも休眠中の腋芽で発現が高いことから、DAD2は芽の休眠維持に関与していると考えられる。DAD2タンパク質をX線結晶構造解析したところ、7つのαへリックスが並列した7つのβシートからなるコアドメインで構成されたα/β加水分解酵素構造に、4つのαへリックスで構成された蓋のついた形状をしていることがわかった。S96、H246、D217が触媒三残基を構成し、S96の上にコア構造と蓋によって大きなL字型の空洞が形成されていた。この空洞は、ストリゴラクトンを収容する十分な大きさがあり、7つのPhe残基によって強い疎水性となっていた。DAD2タンパク質はGR24存在下で熱安定性が低下し、おそらく、GR24の結合によって蓋が動き、構造変化を起こすものと考えられる。DAD2タンパク質とSLシグナル伝達に関与しているF-boxタンパク質のPhMAX2AおよびPhMAX2Bとの相互作用を見たところ、GR24存在下でその濃度に依存してDAD2とPhMAX2Aが相互作用を示すことがわかった。DAD2タンパク質はGR24を2箇所加水分解し、2種類の物質が生成された。この2種類の生成物はGR24のような芽の成長抑制作用を有していなかった。DAD2タンパク質の触媒残基をAlaに置換したDAD2S96AとDAD2H246Aは、GR24加水分解活性を示さず、構造変化も起こさなかった。また、dad2 変異体でDAD2S96A を発現させても変異体の表現型を相補しなかった。DAD2S96AはGR24存在下でPhMAX2Aと相互作用を示さないことから、両者の相互作用には活性部位の存在が必要であることが示唆される。DAD2とPhMAX2AはGR24分解産物存在下では相互作用を示さず、DAD2S96AとPhMAX2は野生型DAD2存在下ではGR24を添加しても相互作用を示さなかった。したがって、DAD2によって生成されたGR24分解産物は生物活性に必要なDAD2とPhMAX2Aとの相互作用を誘導しないと考えられ、DAD2は単に酵素として作用しているのではなく、SLを活性シグナルへと加工しているものと思われる。以上の結果から、SLシグナル伝達にはDAD2の酵素活性が必要であるが、生成産物はおそらく必要ではなく、反応過程の中間体の形成がDAD2タンパク質の構造変化を起こし、このことによってPhMAX2Aとの相互作用およびSLシグナル伝達がもたらされるものと思われる。

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論文)フック形成におけるジベレリンとオーキシンのクロストーク

2012-11-29 19:57:46 | 読んだ論文備忘録

WAG2 represses apical hook opening downstream from gibberellin and PHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 5
Development (2012) 139:4020-4028.

doi: 10.1242/dev.081240

ドイツ ミュンヘン工科大学Schwechheimer らは、シロイヌナズナのジベレリン(GA)の生合成やシグナル伝達の変異体ではオーキシンの極性輸送に異常が見られることに着目し、オーキシン輸送の制御に関与しているセリン/スレオニンキナーゼのサブファミリーAGCVIIIキナーゼファミリーをコードする遺伝子のGA処理による発現量変化を調査した。その結果、GA生合成欠損ga1 変異体をGA処理することによってWAG2 遺伝子の転写産物量が増加すること、野生型植物をGA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)処理することによってWAG2 転写産物量が減少することを見出した。GA処理によるWAG2 転写産物量の変化は、タンパク質生合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)の添加によっても起こることから、この機構は、GAによるDELLAタンパク質の分解誘導のように、タンパク質の新規生合成を介さずに起こると考えられる。WAG2 転写産物量は、gid1a gid1c 二重変異体、gai-1 変異体、sly1-10 変異体のようなDELLAタンパク質の蓄積を起こす変異体では減少し、DELLA機能喪失変異体のrga-24 gai-t6 では増加していた。暗黒下で育成した芽生えを明所に移すとWAG2 転写産物量が減少することから、WAG2 の転写はフィトクロム相互作用因子(PIF)のような光照射によって不安定化する転写因子によって制御されていることが示唆される。したがって、WAG2 の発現はDELLAによって制御され、おそらくPIFの下流に位置しているものと思われる。WAG2 の発現が暗所育成芽生えにおいて増加することから、wag2 変異体芽生えの暗所での形態変化を観察したところ、この変異体ではフックの屈曲の度合いが野生型よりも開いていることがわかった。しかも、このフックの開きは発芽3〜4日目のフックが開く際の芽生えでのみ観察され、発芽2日目のフック形成過程では野生型との差は見られなかった。よって、WAG2 はフックが開く際に抑制的に作用していると考えられる。WAG2 のパラログとされているWAG1 の変異体wag1 では正常にフック形成が起こることから、WAG1はこの過程には関与していないと考えられる。ga1 変異体ではフックが形成されないが、GA処理をすることで形成される。wag2 ga1 二重変異体ではGA処理をしてもフックは開いたままであり、WAG2 はGAよりも下流において暗所育成芽生えのフックの開きを抑制していることが示唆される。WAG2 プロモーター制御下でGUSを発現させてWAG2 の発現部位を調査したところ、フックの凹面でGUS活性が見られた。WAG2 の発現は、pif5 変異体では減少し、pif4 変異体では増加していた。pif1 変異体、pif3 変異体では変化が見られなかったが、pif1 pif3 二重変異体では減少していた。また、PIF5 過剰発現個体ではWAG2 の発現量が増加していた。よって、WAG2 の発現において、PIF5は活性化因子、PIF4は抑制因子、PIF1とPIF3は冗長的に活性化因子として機能していると考えられる。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、PIF5はWAG2 遺伝子プロモーター領域にあるG-boxに結合することが確認されたことから、PIF5は直接WAG2 の発現を制御していると考えられる。オーキシン排出キャリアのPINタンパク質はフックの維持にとって重要であり、変異体の解析から、PIN3が特に重要であることが示唆されている。wag2 pin3 二重変異体はそれぞれの単独変異体よりもフックが開くことから、WAG2PIN3 は共にフックの開きに対して抑制的に作用していることが示唆される。WAG2はPIN2をリン酸化して根の皮層細胞におけるPIN2の極性を制御していることが知られている。今回、in vitro でのリン酸化試験を行なったところ、WAG2はPIN2以外にもPIN1、PIN3、PIN4、PIN7もリン酸化することがわかった。そこで、野生型植物とwag2 変異体でPIN1、PIN3の細胞内局在を比較したが、両者においてPINタンパク質の分布や量に違いは見られなかった。オーキシン応答レポーターDR5を用いて暗所育成芽生えフック部分のオーキシン分布を見たところ、wag2 変異体のフックでは、野生型植物において観察されるフック凹面側でのレポーターの発現が抑制されており、GA処理をしてもレポーターの発現に変化は見られなかった。よって、WAG2はフック部分での側面方向のオーキシン極大形成を正に制御していると考えられる。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。GAによるDELLAタンパク質の分解誘導によってPIF5の活性抑制が解除され、WAG2 の発現が誘導される。WAG2はPINタンパク質をリン酸化し、このことによってオーキシンの極性輸送の変化、フック凹面でのオーキシン極大形成が起こり、フックの開きが抑制される。

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論文)FLOWERING LOCUS T と拮抗的に作用する花成阻害因子

2012-11-22 14:19:43 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis thaliana CENTRORADIALIS homologue (ATC) acts systemically to inhibit floral initiation in Arabidopsis
Huang et al.  The Plant Journal (2012) 72:175-184.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.05076.x

シロイヌナズナの花成誘導因子をコードするFLOWERING LOCUS TFT )は、TWIN SISTER OF FTTSF )、TERMINAL FLOWER 1TFL1 )、BROTHER OF FT AND TFL1BFT )、MOTHER OF FT AND TFL1MFT )、Arabidopsis thaliana CENTRORADIALIS homologueATC )からなる遺伝子ファミリーを構成している。このうち、FTTSFMFT は花成活性化因子として、TFL1BFTACT は花成阻害因子として機能する。ATC を恒常的に発現させた形質転換シロイヌナズナは花成遅延を起こすが、atc-1 変異体は長日条件下で正常に花成を起こす。ATC は長日条件下でも発現しているが、短日条件の暗期に転写産物量が最も多くなる。台湾 植物および微生物學研究所Yu らは、ATC は短日条件での花成阻害に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。ATC 遺伝子の第1エクソンにT-DNAが挿入されたatc-2 変異体は、長日条件では野生型と同じように花成誘導を起こすが、短日条件では花成が促進された。atc-2 変異体にATC ゲノム遺伝子を導入すると短日条件での花成時期が野生型と同等となることから、ATC は短日条件下で花成阻害因子として機能していると考えられる。ft-10 変異体は長日条件で花成遅延を起こすが、atc-2 ft-10 二重変異体はft-10 変異体よりもやや花成時期が早くなった。よって、ATC はFT量が低下した際に花成阻害因子として機能し、ATCFT の発現量のバランスが花成誘導を決定しているものと思われる。ATC の完全長cDNAを35Sプロモーター制御下で発現させた形質転換シロイヌナズナは花成遅延を起こし、コンパニオン細胞特異的に発現するAtSUC2 プロモーターやシュートや根の分裂組織の表皮組織特異的に発現するMERISTEM LAYER1ML1 )プロモーターでATC を発現させた場合にも花成遅延が起こった。これらの形質転換体でのFT の発現量は野生型と同等であったことから、ATC による花成阻害はFT を発現抑制しているために起こっているのではなく、ATC はコンパニオン細胞や茎頂で発現させることによっても花成阻害を起こす。ATC プロモーター制御下でGUS 遺伝子を発現させたところ、GUS活性は主に葉柄、胚軸、根の維管束組織で見られ、茎頂では活性が検出されなかった。胚軸の横断切片を見ると、GUS活性は師部において見られた。また、日長条件によるGUS活性のパターン変化は見られなかった。atc-2 変異体と野生型植物との接木試験から、ATC RNAは野生型植物の台木からatc-2 変異体の接ぎ穂へと1〜5%程度が移動することがわかった。また、ATC を35Sプロモーターで発現させた台木にatc-2 変異体の花序を接いだ際、atc-2 変異体の接ぎ穂でATCタンパク質が検出され、野生型植物やatc-2 変異体を台木とした場合よりも花成時期が遅れた。よって、ATC による花成阻害は接木によって移動することが示唆される。シロイヌナズナの花成誘導はbZIP型転写因子のFDとFTが相互作用をしてAPETALA1AP1 )の発現を促進することで引き起こされる。BiFCアッセイにより、ATCもFDと相互作用をし、複合体は核に局在すること、FTもATCもC末端側を欠いたFD(FDΔC)とは相互作用を示さないことがわかった。したがって、FTとATCは共におそらくFDのC末端側ドメインを介してFDと物理的相互作用をすると考えられる。ATC を35Sプロモーターで発現させた形質転換体では、LEAFYLFY )の発現量に変化は見られなかったが、AP1 の発現量は減少していた。よって、ATC はAP1 の発現を抑制していると考えられる。以上の結果から、ATCとFTは拮抗的にFDと相互作用をして同一の花芽生成遺伝遺伝子の発現を制御していると考えられる。そして、日長条件の変化に応じたFTATC の発現量のバランスによって花芽形成の微調整がなされていると考えられる。

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論文)ETHYLENE INSENSITIVE2によるエチレンシグナル伝達機構

2012-11-20 20:02:25 | 読んだ論文備忘録

Processing and Subcellular Trafficking of ER-Tethered EIN2 Control Response to Ethylene Gas
Qiao et al.  Science (2012) 338:390-393.
DOI: 10.1126/science.1225974

エチレンのシグナル伝達において、小胞体膜に局在するNRAMP-様タンパク質のETHYLENE INSENSITIVE2(EIN2)が重要な役割を果たしているが、その機構は明らかとなっていない。米国 ソーク研究所Ecker らは、EIN2タンパク質において保存されているC末端側の核局在シグナル(NLS)配列に変異を加えてYFPを融合させたタンパク質(EIN2Fm-YFP)をシロイヌナズナein2-1 変異体で発現させたところ、このタンパク質は小胞体に局在していたが、エチレン処理による核への移行が起こらず、ein2 変異の相補も起こさないことを見出した。したがって、EIN2がエチレンに応答して機能するためにはNLSが必要であることが示唆される。エチレン未処理の条件ではEIN2は核には局在していないが、エチレン処理10分以内には核での局在が観察され、30分後まで局在量が増加していった。したがって、小胞体から核へのEIN2タンパク質の移行はエチレン応答にとって重要であることが示唆される。エチレン受容体ETHYLENE RESPONSE1(ETR1)の変異体etr1 ではEIN2タンパク質の核蓄積が起こらず、ETR1と直接相互作用を示すエチレン応答の負の制御因子CONSTITUTIVE TRIPLE RESPONSE1(CTR1)の変異体ctr1-1 ではEIN2タンパク質はエチレン処理をしなくても恒常的に核に局在していた。エチレンシグナル伝達においてEIN2の下流に位置している転写因子のEIN3、ETHYLENE INSENSITIVE LIKE1(EIL1)の二重変異体ein3 eil1-1 ではEIN2タンパク質の核移行に変化は見られなかった。よって、EIN2タンパク質の小胞体から核への移行にはETR1とCTR1が関与しており、EIN3/EIL1はこの過程に関与していないことが示唆される。EIN2タンパク質をウエスタン分析によって解析したところ、エチレン処理0時間、4時間のサンプルでは完全長のEIN2タンパク質が検出されず、約75 kDaのEIN2タンパク質C末端側断片(EIN2-C')が検出された。しかし、ctr1-1 変異体や長時間エチレン処理をした個体では完全長のEIN2タンパク質が検出された。エチレン無処理条件では完全長EIN2タンパク質が膜タンパク質画分において検出され、エチレン処理によってEIN2-C' 断片が核タンパク質画分で検出されるようになった。EIN2-C' 断片にYFPを付加した融合タンパク質を発現させたところ、融合タンパク質は核に局在し、融合タンパク質を発現させた形質転換体はctr1-1 変異体のように恒常的にエチレン応答をしている表現型を示した。マススペクトル分析の結果、エチレン処理によるEIN2タンパク質の切断は645−646番目のアミノ酸の間で起こることがわかった。シロイヌナズナEIN2タンパク質にはエチレン無処理条件下でリン酸化されるアミノ酸残基が3箇所あり、そのうち、645番目のSer残基(S645)は他植物のEIN2タンパク質においても保存されており、EIN2タンパク質の切断部位と一致している。野生型植物では、エチレン無処理条件ではEIN2のS645はリン酸化されているが、エチレン処理するとリン酸化されたEIN2タンパク質が検出されなくなった。ctr1-1 変異体ではエチレン処理の有無に関係なくS645がリン酸化されたEIN2タンパク質は検出されなかった。よって、CTR1はEIN2タンパク質のS645のリン酸化に必要であることが示唆される。S645をAlaに置換したEIN2をein2-5 変異体で発現させた形質転換体は、黄化芽生えも成熟個体もエチレン処理なしで恒常的にエチレン応答した表現型を示し、EIN2-C' 断片の核局在が見られた。この形質転換体で発現量が変化している遺伝子の60%以上はエチレン処理をした野生型植物や無処理のctr1-1 変異体で発現量が変化している遺伝子と一致していた。よって、EIN2 S645A変異はエチレン応答遺伝子に対して転写レベルで影響を及ぼしていることが示唆される。S645をGluに置換したEIN2を発現させた形質転換体では、エチレン処理をしてもEIN2-C' 断片への分解と核局在が見られなかった。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。エチレンのない状態では、EIN2は小胞体内に局在し、CTR1に依存したリン酸化を起こしてエチレン応答を抑制する。エチレンが小胞体膜上のETR1に受容されると、EIN2は脱リン酸化され、このことによってEIN2が分解され、生じたC末端側の断片(EIN2-C')が核へと移行してEIN3/EIL1によるターゲット遺伝子の転写を活性化する。

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