Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)未知カロテノイド誘導体による側根形成制御

2014-05-06 13:44:42 | 読んだ論文備忘録

Periodic root branching in Arabidopsis requires synthesis of an uncharacterized carotenoid derivative
Van Norman et al.  PNAS (2014) 111:E1300-E1309.
doi:10.1073/pnas.1403016111

米国 デューク大学Benfey らは、シロイヌナズナ芽生えをカロテノイド生合成経路の阻害剤であるノルフラゾン(NF)もしくは2-(4-クロロフェニルチオ)-トリエチルアミン塩酸塩(CPTA)で処理すると、主根がが短くなり、側根数が減少することを見出した。しかしながら、この処理をするとシュートが白化するので、カロテノイド生合成阻害による側根数の減少は二次的な結果とも考えられる。そこで、イソプレノイドやカロテノイドの生合成に直接関与している酵素をコードする遺伝子の1-hydroxy-2-methyl-2-(E)-butenyl 4-diphosphate reductase /CHLOROPLAST BIOGENESIS 6HDR /IspH /CLB6 )やPHYTOENE SYNTHASEPSY )の変異体を観察したところ、阻害剤処理した芽生えと同じように側根数の減少が見られた。また、カロテノイド含量に間接的に影響を及ぼすプラスチド指向性RNAポリメラーゼ SCABRA 3 (SCA3 )の変異体においても側根数が減少していた。したがって、化学物質処理や遺伝的欠損によってカロテノイド生合成が抑制されると側根の減少した表現型となることが示唆される。CPTA処理をした芽生えの根は成長速度が低下し、細胞の大きさも小さくなっていた。しかし、根端部の大きさや形態には変化は見られず、重力に対する応答性も正常であった。CPTAを含む培地から通常の培地へ移植すると側根形成パターンは正常に戻った。よって、カロテノイド生合成は側根形成の初期過程に必要であると考えられる。オーキシン応答プロモーターDR5 制御下でルシフェラーゼを発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いて将来側根が形成される部位を視覚化したところ、CPTA処理によってそのような部位の数は大きく減少することがわかった。しかし、部位が形成されれば側根原基は形成された。よって、カロテノイド欠乏条件は将来側根が形成される部位の確立に関与していると考えられる。側根形成は根端部で6時間周期に起こる遺伝子発現の振幅(側根時計)が関与しているが、CPTA処理した根では遺伝子発現周期に異常が見られた。カロテノイドの代謝や生合成に関与する遺伝子の発現に振幅は見られなかったが、側根の形成や発達に関与している細胞列においてカロテノイド生合成の主要な遺伝子の高い発現が見られた。カロテノイド生合成経路の重要なステップを触媒するPSYの発現パターンをPSY プロモーター制御下でLUC を発現するコンストラクトを導入して調査したところ、側根分化の起こる領域や側根で高く、遺伝子発現の振幅が起こる根端部では殆ど発現していないことがわかった。また、側根原基、主根と側根の接合部、根の先端部でLUC の発現が見られた。PSY をユビキチン10プロモーター制御下でpsy 変異体で発現させると表現型の回復が見られたが、PSY を野生型植物で過剰発現させても側根形成に変化は見られなかった。したがって、カロテノイド生合成量を高めても側根時計に変化は起こらないと考えられる。カロテノイド生合成経路はリコペンの環化の段階でα-カロテンとβ-カロテンの2つの経路に分枝し、CPTAはこの環化過程を阻害している。そこで、側根形成に関与しているカロテノイド類を特定するために、α-カロテンやβ-カロテンの生合成経路の酵素遺伝子の変異体での側根形成を野生型と比較した。その結果、α-カロテン類は側根形成に関与していないことが示唆された。次にβ-カロテン類およびこの経路から生成されるアブシジン酸(ABA)やストリゴラクトンといった植物ホルモンの効果について調査した。ABAやストリゴラクトンに関して欠損変異体や添加試験を行なって解析したが、カロテノイド生合成阻害によるこれらの植物ホルモンの含量低下では側根形成の低下を説明できず、β-カロテン経路で合成される未知のカロテノイドが側根形成に関与しているものと思われる。カロテノイド酸化開裂酵素(CCD)1を阻害するD15を芽生えに与えると、地上部の緑化が維持され、一次根の伸長がやや低下し、側根形成が低下した。したがって、D15添加によるカロテノイド分解活性の阻害によって生じた未知のカロテノイドの量的な変化が側根形成に影響しているものと思われる。以上の結果から、側根形成の初期過程に未知のカロテノイド誘導体が関与ていると考えられる。

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論文)STENOFOLIA転写抑制因子による葉身拡大機構

2014-04-21 22:48:00 | 読んだ論文備忘録

STENOFOLIA Recruits TOPLESS to Repress ASYMMETRIC LEAVES2 at the Leaf Margin and Promote Leaf Blade Outgrowth in Medicago truncatula
Zhang et al.  The Plant Cell (2014) 26:650-664.
doi:10.1105/tpc.113.121947

タルウマゴヤシ(Medicago truncatula )のWUSCHEL関連ホメオボックス(WOX)転写抑制因子のSTENOFOLIA(STF)は、細胞分裂を促進することで葉身の拡大において重要な役割を演じているが、詳細な分子機構は明らかとなっていない。米国 オクラホマ州立大学Tadege らは、野生タバコ(Nicotiana sylvestris )のWOXファミリー遺伝子が機能喪失して葉身が細くなったlaminaless1lam1 )変異体を用いてSTFによる葉身拡大の分子機構を解析した。STFタンパク質のアミノ酸配列を他植物と比較して、N-末端ドメイン(NTD)、ホメオドメイン(HD)、中間ドメイン(MD)、WUS boxとSTF boxの2つの保存されたモチーフを有するC-末端ドメイン(CTD)の4つに区分し、何れかのドメインが欠失したタンパク質をlam1 変異体で発現させて、表現型が相補されるかを調査した。その結果、NTDもしくはMDが欠失したSTF を発現させたlam1 変異体は完全なSTF を発現させた個体と比べてやや葉身が細くなり波打つがlam1 変異を相補し、NTDとMDの両方を欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では相補の程度が弱くなった。一方、HDもしくはCTDを欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では表現型の相補は見られなかった。したがって、HDを介したDNAとの結合およびCTDを介した相互作用はSTF の機能にとって必須であると考えられる。CTDのWUS boxとSTF boxのSTF活性に対する貢献度を一過的転写抑制実験系を用いて調査したところ、WUS boxのみの変異およびSTF boxのみの変異は部分的な転写抑制活性を示し、WUS boxとSTF boxの両方に変異がある場合にはSTFの転写抑制活性が失われた。よって、STFが転写抑制活性を示すためにはWUS boxとSTF boxの両方が必要であると考えられる。CTDドメインを欠いたSTF(STFdel)がlam1 変異を相補しなかったのは転写抑制活性が失われたためと考えられる。そこで、STF-delにEARモチーフリプレッションドメインSRDXを付加した融合タンパク質(SRDX-STFdel)をlam1 変異体で発現させたところ、表現型が相補された。したがって、転写抑制活性がSTFの機能にとって重要であることが示唆される。STFdelにWUS boxもしくはSTF boxを付加した融合タンパク質によるlam1 変異体の表現型相補を見たところ、STFdel-STF-boxはSTFdel-WUS-boxよりも相補の程度が高かった。よって、葉身拡大においてSTF boxはWUS boxよりも重要であると思われる。BLAST検索の結果、STF boxの保存された10アミノ酸(QFIEFLPLKN)は双子葉植物においてのみ見られ、単子葉植物、裸子植物、非維管束植物では見られなかった。葉身の拡大におけるSTFを介した転写抑制の分子機構を解析するために、STFと相互作用をするタンパク質を酵母two-hybridスクリーニングによって探索したところ、シロイヌナズナのTOPLESS(TPL)タンパク質と83%相同性のあるタルウマゴヤシタンパク質が見出され、これをMt-TPLと命名した。STFとMt-TPLとの相互作用はBiFCアッセイやプルダウンアッセイによっても確認された。また、Mt-TPLはCTDを欠失したSTFとは相互作用を示さなかった。よって、Mt-TPLとの相互作用はSTFの転写抑制活性にとって重要であると考えられる。Mt-TPLは単独のCTDとは相互作用を示さなかったが、MDもしくはHDと融合したCTDとは相互作用を示した。したがって、STFのCTDはMt-TPLとの相互作用に必須であり、HDもしくはMDは相互作用の安定化に必要であることが示唆される。また、STFとMt-TPLとの相互作用にはSTF boxとWUS boxの両方が必要であることがわかった。STFとの相互作用に必要なMt-TPLのドメインを調査したところ、LiSHドメイン、CTLHドメイン、Pro-リッチドメインを含んでいるN-末端領域が相互作用に関与し、特にPro-リッチドメインが重要であることがわかった。STFdelとMt-TPLとのキメラ融合タンパク質をlam1 変異体で発現させたところ表現型が相補された。このことから、STFによる葉身拡大にはコリプレッサーのTPLが必要であり、STFのWUS boxとSTF boxはTPLとの相互作用に関与している考えられる。過去の調査において、stf 変異体ではLOBドメインタンパク質をコードする遺伝子の発現量が高いことが知られている。シロイヌナズナASYMMETRIC LEAVES2AS2 )遺伝子は葉身発達に関与するLOBドメインを含んだ向軸側の因子をコードしている。そこで、タルウマゴヤシのAS2 ホモログ(Mt-AS2 )の発現量を見たところ、stf 変異体では野生型の2倍の発現量があり、STF 過剰発現個体では発現量が1/5になっていることがわかった。よって、STFAS2 の発現を抑制している可能性がある。葉原基において、AS2 は向軸側で発現しており、STF の発現している葉縁や葉肉では発現していない。しかし、stf 変異体ではAS2 は葉縁部においても発現していた。よって、STFは葉縁部でのMt-AS2 の発現を抑制していることが示唆される。STFがMt-AS2 遺伝子のプロモーター領域に直接結合して転写活性を抑制しているのかをクロマチン免疫沈降やゲルシフトアッセイによって調査したところ、STFはAS2 プロモーターの複数の領域に結合しうることがわかった。さらに、一過的発現抑制実験により、STFのHDとCTDがMt-AS2 の発現抑制に必要であることがわかった。また、シロイヌナズナtpl1 変異体プロトプラストを用いた一過的発現抑制実験から、STFによるMt-AS2 プロモーター活性の抑制にはTPLが必要であることがわかった。野生型タルウマゴヤシでRNAiによってMt-AS2 を発現抑制すると葉身が広くなり、stf 変異体で発現抑制するとstf 変異体の葉身が細く鋸歯の無い葉縁となる表現型が部分的に回復した。よって、AS2 の異所的な発現がstf 変異体の細い葉身となる表現型に関与していることが示唆される。Mt-AS2 を野生タバコで過剰発現させると、葉身は様々な形態を示し、極度に湾曲したものから針状葉になるものまで見られた。また、lam1 変異体でMt-AS2 を過剰発現させると表現型がさらに極端になり、短く且つ直立した葉となった。以上の結果から、タルウマゴヤシSTFは、WUS boxとSTF boxを介してコリプレッサーのTOPLESSと物理的相互作用をし、葉縁部でのAS2 の発現を抑制することで葉の拡大を促進していると考えられる。

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論文)DELLAタンパク質による葉の老化制御

2014-04-14 22:17:47 | 読んだ論文備忘録

Removal of DELLA repression promotes leaf senescence in Arabidopsis
Chen et al.  Plant Science (2014) 219-220:26-34.
doi: 10.1016/j.plantsci.2013.11.016

葉の老化は、葉の発達過程の最終段階であり、細胞構造の崩壊、代謝、老化関連遺伝子(SAG)の発現にその特徴が見られる。植物ホルモンのうち、アブシジン酸、ジャスモン酸、エチレン、サリチル酸は葉の老化に対して促進的に作用し、オーキシンとサイトカイニンは老化を遅延させる。しかしながら、葉の老化におけるジベレリン(GA)の役割については明らかとなっていない。中国 浙江大学Jiang らは、シロイヌナズナの葉の老化におけるGAの役割を解明するために、GAシグナル伝達の抑制因子であるDELLAのうちGA INSENSITIVE(GAI)、REPRESSOR OF GA1-3(RGA)、RGA-LIKE1(RGL1)、RGA-LIKE2(RGL2)が機能喪失した変異体(Q-DELLA )およびGA生合成能が欠失したga1-3 変異体を用いて解析を行なった。Q-DELLA /ga1-3 変異体は野生型よりも草丈が高く、ga1-3 変異体は非常に草丈が低くなる。葉の老化の視覚的な指標として黄変を見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体のロゼット葉は移植33日後に周縁部に黄変が現れ、55日後には葉全体に広がった。一方、野生型では葉の緑は維持されており、ga1-3 変異体は野生型よりも緑色が維持された。野生型植物の葉をGA処理すると、無処理葉よりも有意に早く老化が起こった。老化特異的遺伝子であるSAG12 およびSAG29 の発現パターンを見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉でのSAG 遺伝子転写産物量は老化過程において野生型よりも高くなっており、ga1-3 変異体では野生型よりも低くなっていた。葉の老化過程において、クロロフィル含量は移植33日後、乾燥重量は移植40日後に最大となり、その後減少していく。Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉のクロロフィル含量および乾燥重量は常に野生型よりも低く、ga1-3 変異体では常に高くなっていた。葉の老化が進むにつれて可溶性糖類の含量が増加するが、野生型の糖含量はga1-3 変異体よりも高く、Q-DELLA /ga1-3 変異体の糖含量は野生型よりも高くなっていた。葉の脂肪酸含量は野生型とQ-DELLA /ga1-3 変異体では移植33日後に最大となり、ga1-3 変異体では40日後に最大となり、その後は何れの遺伝子型においても減少していったが、野生型の脂肪酸含量は常にQ-DELLA /ga1-3 変異体よりも高く、ga1-3 変異体よりも低くなっていた。脂肪酸組成を比較したところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体では不飽和度の高いリノレン酸(C18:3)の含量が野生型やga1-3 変異体よりも少なく、飽和脂肪酸のパルミチン酸(C16:0)はQ-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも多く、ga1-3 変異体では少なくなっていた。そこで、脂肪酸β-酸化に関与する酵素遺伝子の発現を見たところ、ga1-3 変異体では野生型よりも低く、Q-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも高くなっていた。DELLAの機能喪失によって葉の老化を制御しているホルモンのシグナル伝達に関与している遺伝子発現に変化が見られるかを調査したところ、EDS1EDS16OPR3RNS1EAT1EIN3NIT2OSM34 の転写産物量はQ-DELLA /ga1-3 変異体において野生型やga1-3 変異体よりも高く、COS1ga1-3 変異体において高くなっていた。以上の結果から、DELLAタンパク質によるGAシグナルの抑制は、葉の老化を遅延させていると考えられる。

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論文)ヨーロッパに侵入したブタクサの特性

2014-04-05 17:19:45 | 読んだ論文備忘録

Germination and seedling frost tolerance differ between the native and invasive range in common ragweed
Leiblein-Wild et al.  Oecologia (2014) 174:739-750.
DOI 10.1007/s00442-013-2813-6

侵略的外来種は全世界において生物多様性に対する大きな脅威とみなされている。また、その脅威は気候変動によって拡大している。ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia L.)は北アメリカ原産の一年草で、ヨーロッパには19世紀に小麦や農産物に混入して進入した。現在では鳥の餌が最も大きな進入経路となっている。ブタクサは、多くのヨーロッパ諸国において、農耕地、道端や建設現場のような荒地で生育しており、南東ヨーロッパ、ポー川流域、南フランスを中心に分布している。ブタクサは他の一年生植物に比べてライフサイクルが長く、早くに発芽し、痩果は10月まで成熟しない。よって早春に発芽した芽生えは霜に当たることがある。このことから、異なる地域のブタクサ集団は成長や開花のフェノロジーのような生活史に違いがあり、遺伝的に高度に多様化していることが推測され、発芽特性や霜耐性にある程度の変動があると思われる。ドイツ 生物多様性と気象研究センター(BiK-F)Leiblein-Wild らは、ヨーロッパに進入したブタクサ集団と自生地である北アメリカの集団の発芽特性と霜耐性について調査した。ヨーロッパの17地域と北アメリカの10地域の集団の種子を5℃から25℃まで5℃間隔の温度条件で発芽させたところ、ヨーロッパ進入集団も北アメリカ自生集団も15℃で発芽率が最も高く、それ以上およびそれ以下の温度条件では発芽率が低下した。また、全ての温度条件において進入集団は自生集団よりも高い発芽率を示した。また、種子が50%発芽するまでの日数(T50)は全ての温度条件で進入集団よりも自生集団のほうが長く、低温(5℃)条件では5.9日、発芽至適温度(15℃)で24.0日、高温(25℃)条件では17.8日長かった。各集団の発芽至適温度を見ると、13.8℃から21.8℃の間にあり、両集団で有意な差は見られなかった。発芽最高温度は23.6℃から40.3℃の間にあり、進入集団のほうが高く、発芽最低温度は平均3.1℃で進入集団のほうが低かった。したがって、進入集団は発芽温度の幅が自生集団よりも広い。最終的な発芽率は、全集団の平均で70.1%であり、進入集団のほうが高かった。次に、11の進入集団と12の自生集団の芽生えに、春の夜に霜が降りる状態を模倣して2℃ 9時間、-5℃ 6時間、2℃ 9時間の順に処理をして霜耐性を評価したところ、進入集団(37.0±12.8%)は自生集団(23.3±7.8%)よりも耐性が高く、自生集団の耐性の変動の幅(12.9から36.8%)は進入集団の変動幅(7.9から56.8%)よりも狭くなっていた。試験に使用した両集団の種子重量と最終的な発芽率、霜耐性の間には正の相関が見られたが、最低発芽温度とT50については種子重量との相関は見られなかった。両集団の採種地の環境要因(緯度、経度、平均気温、春期霜害リスク)と発芽特性との相関を見たところ、自生集団では最終的な発芽率と経度との間に負の相関があり、東部の大洋に近い集団は発芽率が低かった。しかし、進入集団の発芽特性は環境要因との相関は見られなかった。霜耐性に関しては、自生集団においては春期霜害リスクと強い正の相関が見られたが、進入集団では環境要因との相関は見られなかった。以上の結果から、ブタクサヨーロッパ進入集団は北アメリカ自生集団よりも発芽率、芽生えの成長速度、霜耐性、発芽温度領域において優れており、これらの特性はブタクサと他植物との競争に有利に作用し、ヨーロッパへの侵入に成功をもたらしていると考えられる。

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論文)ストリゴラクトンによる胚軸伸長の制御

2014-03-31 22:52:28 | 読んだ論文備忘録

Strigolactone-Regulated Hypocotyl Elongation Is Dependent on Cryptochrome and Phytochrome Signaling Pathways in Arabidopsis
Jia et al.  Molecular Plant (2014) 7:528-540.
doi: 10.1093/mp/sst093

ストリゴラクトン(SL)は芽生え胚軸の伸長に関与していることが報告されており、シロイヌナズナ芽生えに合成ストリゴラクトンのGR24を与えると胚軸の伸長が阻害される。中国 上海交通大学のYang らは、ストリゴラクトンによる胚軸伸長制御について詳細な解析を行なった。明所で発芽させたシロイヌナズナ芽生えは、培地に添加したGR24の濃度に応じて胚軸の伸長が阻害されたが、暗所で発芽させた芽生えでは胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。SL非感受性のmax2 変異体では明所育成芽生えのGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。したがって、GR24による胚軸伸長阻害は、光とMAX2 の両方に依存していることが示唆される。光は胚軸伸長を阻害し、これには青色光受容体クリプトクロムと赤/遠赤色光受容体のフィトクロムによるシグナル伝達が関与している。芽生えに照射する青色光の強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、cry1 cry2 二重変異体では照射する青色光の強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は殆ど見られなかった。また、光シグナル伝達に関与するbZIP型転写因子HY5の機能喪失変異体hy5 も青色光照射量を高めてもGR24による胚軸伸長阻害がわずかしか起こらなかった。よって、青色光下でのSLによる胚軸伸長阻害はクリプトクロムが関与していることが死される。赤色光においても光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyB 変異体では赤色光強度を高めてもGR24による胚軸伸長阻害は見られなかった。同様に遠赤色光の光強度を高めるとGR24による胚軸伸長阻害の程度が強くなるが、phyA 変異体はGR24非感受性であった。さらに、hy5 変異体も赤色光や遠赤色光照射によってGR24応答性が低下した。したがって、SLによる胚軸伸長阻害は赤色光下ではphyBに、遠赤色光下ではphyAに依存していることが示唆される。CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)はクリプトクロムやフィトクロムと直接相互作用をして光シグナル伝達を負に制御している。また、フィトクロム相互作用因子(PIF)は光形態形成の負の制御因子であることが知られている。cop1 変異体やpif1 pif3 pif4 pif5 四重(pifq )変異体の暗所育成芽生えはGR24による胚軸伸長阻害を起こすことから、COP1とPIFはSLによる胚軸伸長阻害を負に制御していると考えられる。COP1は、胚軸伸長を負に制御しているHY5をユビキチン化して26Sプロテアソーム経路による分解へ導く。cop1 変異体が暗所においてGR24に対する感受性が高くなることと、HY5との関係を明らかにするために、cop1 hy5 二重変異体のGR24応答性を調査したところ、この変異体はcop1 単独変異体と比較するとGR24応答性が大きく低下していることがわかった。また、cop1 max2 二重変異体もGR24応答性が低下していた。これらのことから、SLによる胚軸伸長阻害の暗所でのCOP1による抑制はHY5やMAX2を介してなされていることが示唆される。pifq hy5 五重変異体暗所育成芽生えは、pifq 変異体と比較すると程度は幾分劣るがGR24によって胚軸伸長が阻害された。よって、SLによる暗所での胚軸伸長阻害のPIFによる抑制はHY5を介してなされているのではなく、別の経路が存在するものと思われる。GR24は、明所においても暗所においてもHY5 の発現を促進しており、max2 変異体ではHY5 の発現はGR24による影響を受けなかった。暗所育成cop1 変異体はGR24処理によってHY5 発現が誘導されたが、cop1 max2 二重変異体ではHY5 の発現誘導は起こらなかった。よって、MAX2 を介したSLシグナルは光条件に関係なくHY5 の発現を正に制御していると考えられる。GR24処理は、明所でのHY5タンパク質の蓄積を促進したが、暗所では蓄積が見られなかった。また、max2 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質の蓄積は見られなかった。cop1 変異体やpifq 変異体は暗所においてGR24に対する感受性が高くなることから、これら変異体のHY5タンパク質の蓄積を見たところ、HY5タンパク質の蓄積はcop1 変異体ではGR24処理によって高まるが、cop1 max2 二重変異体ではそのような蓄積は起こらないこと、pifq 変異体ではGR24処理に関係なくHY5タンパク質の蓄積が起こらないことがわかった。このことからも、暗所におけるpifq 変異体のGR24応答性の増加にHY5は関与していないと思われる。GR24によるHY5タンパク質の蓄積は、青色、赤色、遠赤色の何れの光条件においても見られるが、青色光下でのcry1 cry2 変異体、赤色光下でのphyB 変異体ではGR24によるHY5タンパク質の蓄積が見られず、phyA 変異体では光条件に関係なくHY5タンパク質が殆ど検出されなかった。したがって、MAX2を介したSLシグナルによるHY5タンパク質の蓄積促進は、光およびクリプトクロム、フィトクロムといった光受容体に依存したものであることが示唆される。以上の結果から、ストリゴラクトンによる胚軸伸長の阻害には、クリプトクロム、フィトクロム、COP1、HY5、PIFといった光シグナル伝達の因子が関与していると考えられる。

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論文)温度上昇による花成促進機構

2014-03-25 05:50:13 | 読んだ論文備忘録

The time of day effects of warm temperature on flowering time involve PIF4 and PIF5
Thines et al.  Journal of Experimental Botany (2014) 65:1141-1151.
doi:10.1093/jxb/ert487

多くの植物種は気温が高くなると花成する。この応答には様々な花成シグナル伝達経路が関与していると考えられるが、詳細な機構は明らかとなっていない。米国 カリフォルニア大学バークレー校Harmon らは、シロイヌナズナを12時間日長で育成し、通常の22℃の育成温度に対して、日中のみ28℃の高温(WD)、夜間のみ高温(WN)、常に高温(CW)の条件にして花成までの期間を調査した。その結果、いずれの高温処理も対照よりも早く花成したが、WN条件はWD条件よりも早く花成し、CW条件はWN条件と同等か幾分花成が早まることがわかった。また、育成の際の光強度を強めてもWN条件とWD条件との花成時期の差は維持された。よって、夜間に高温であることは日中に高温であることよりも強く花成を誘導することが示唆される。そこで、高温処理によって花成誘導因子の発現量や概日リズムに変化が見られるかを調査した。通常条件においてFLOWERING LOCUS TFT )は夕方(ZT12)に発現量が最大となるが、WD条件ではFT 発現のピークが見られなくなった。よって、WD条件での花成促進はFT の発現とは別の要因によって引き起こされていると考えられる。一方、WN条件ではFT 転写産物量が他の条件よりも高く、ZT12の発現量のピークは維持されていたが、夜明け(ZT4)には転写産物量が増加し始めた。CW条件も対照よりFT 転写産物量が増加していたが、転写産物量の増加開始時刻の早期化は見られず、ZT12のFT 発現量はWN条件より低かった。FT の発現を直接制御しているCONSTANSCO )の発現は、対照では明期のZT8-ZT12に発現量が増加し始め、暗期のZT16-ZT20に発現のピークが見られた。WN条件ではCO 発現量の増加時期が対照よりも早くZT4-ZT8には始まり、ZT8-ZT12には発現量がピークに達し、その後発現量は減少していった。WD条件ではCO の発現はZT12以降の暗期に増加し、その後は対照と同じ挙動を示した。CW条件ではCO の発現は対照や他の条件よりも低くなっていた。したがって、高温条件でのFT の発現パターンの変化を説明しうるCO の発現パターン変化はNW条件の高温処理のみで起こっていた。高温処理による花成促進にCOが関与しているかを明らかにするためにco-9 T-DNA挿入機能喪失変異体を用いて解析したところ、高温処理による花成促進およびZT12の時点での各処理によるFT 発現量の差異は野生型と同じように起こった。よって、WN条件でのFT 発現量増加は、CO以外の因子も関与していると考えられる。花成の制御に関与しているとされる他の遺伝子について調査したところ、FVEFCAFLOWERING LOCUS MFLM )、FLOWERING LOCUS CFLC )については、対照と高温処理条件との間で発現に顕著な違いは見られなかった。FT をターゲット遺伝子としているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4PIF4 )の発現のピークはZT8近辺で見られるが、WN条件ではZT24に発現がピークに達しており、他の条件に比べて8時間周期が早くなっていた。WN条件ではPIF5 の発現のピークも他の条件よりも4時間早く生じていた。よって、WN条件でのPIF4PIF5 の発現周期のずれが花成促進と関連していることが示唆される。PIF4とPIF5が高温条件での花成促進に関与しているかを調査するために、変異体を用いて調査したところ、通常の育成温度においてpif4 およびpif5 単独変異体の花成は野生型と同等であったが、pif4 pif5 二重変異体は花成に遅れが見られた。よって、通常条件ではPIF4PIF5 が冗長的に花成に関与していることが示唆される。WN条件およびWD条件では、pif4 およびpif5 単独変異体の花成は野生型よりもやや遅れ、CW条件ではさらに遅れた。したがって、高温による花成促進にはPIF4PIF5 の両方が高温に曝す時間帯に関係なく必要であると考えられる。pif4 pif5 二重変異体では全ての高温条件で花成遅延が通常条件よりも強く起こった。pif4 pif5 二重変異体でのCO の発現は何れの条件でも野生型と類似しており、pif4 pif5 二重変異体での花成遅延にCO の発現は強くは影響していないと考えられる。FT の発現パターンは、WD条件、CW条件では野生型とpif4 pif5 二重変異体で類似していたが、WN条件ではpif4 pif5 二重変異体の発現量が野生型よりも低くなり、ピーク時の発現量は野生型の20%程度になっていた。しかしながら、このFT 発現量の減少はCO の発現とは対応していなかった。よって、PIF4とPIF5はWN条件でのFT の発現にとって重要であり、この発現制御はCO とは独立してなされていると考えられる。PIFタンパク質は転写後制御を受けており、光照射下でフィトクロムBと相互作用をして分解されるが、WN条件でのPIF4とPIF5の転写後制御に通常条件との違いは見られなかった。以上の結果から、高温条件での花成促進にはPIF4とPIF5が関与しており、夜間の高温ではこれらの因子がFT の発現を誘導することで、日中の高温ではFT 以外の未知の機構を介して花成促進が起こると考えられる。

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論文)ジャスモン酸とエチレンの拮抗的作用の分子機構

2014-03-21 08:47:30 | 読んだ論文備忘録

Interaction between MYC2 and ETHYLENE INSENSITIVE3 Modulates Antagonism between Jasmonate and Ethylene Signaling in Arabidopsis
Song et al.  The Plant Cell (2014) 26:263-279.

doi:10.1105/tpc.113.120394

ジャスモン酸(JA)とエチレンは植物の成長や防御応答を制御しており、両者は根毛の発達や死体栄養性の病原菌に対する抵抗性に対して協働的に作用するが、芽生えのフック形成や虫害に対する防御応答に関しては拮抗的に作用する。中国 清華大学Xie らは、JAとエチレンの拮抗的な作用の分子機構について解析を行なった。エチレンはフックの屈曲を誘導し、エチレンを過剰生産するethylene overproducer1eto1 )変異体や恒常的にエチレン応答を示すconstitutive triple response1ctr1 )変異体ではフックの屈曲が誇張され、エチレンシグナル伝達変異体のethylene insensitive2ein2 )、ein3ein3-like1eil1 )ではフックの屈曲が弱まる。eto1 変異体やctr1 変異体のフックの屈曲はJA処理によって阻害されることから、JAはETO1CTR1 の下流においてエチレンによるフックの屈曲を抑制していることが示唆される。HOOKLESS1(HLS1)はフック形成を正に制御する因子であり、eto1 変異体やctr1 変異体ではHLS1 の発現量が高い。JAはエチレン(ACC)処理によるHLS1 の発現誘導を抑制することから、JAはHLS1 の上流において作用することでフックの屈曲を抑制していると考えられる。JA非感受性coronatine insensitive1coi1 )変異体はフックの屈曲が誇張されるが、coi1 hls1 二重変異体やcoi1 ein3 eil1 三重変異体ではフックの屈曲が見られなくなる。よって、COI1はフック形成におけるEIN3/EIL1-HLS1のシグナル伝達系の上流において作用していることが示唆される。JAシグナル伝達に関与する因子のフック形成の関与を調査したところ、JAシグナル伝達の抑制因子であるJAZタンパク質の蓄積量が増加するJAZ1Δ3A 発現形質転換体ではフックの屈曲が誇張された。また、myc2 変異体は野生型よりもフック屈曲が誇張され、myc2 myc3 二重変異体やmyc2 myc4 二重変異体ではさらに屈曲が誇張された。myc2 myc3 myc4 三重変異体は屈曲の誇張がさらに強くなり、coi1 変異体と同程度になった。単独変異体や二重変異体のフックの屈曲はJA処理によって阻害されたが、三重変異体ではJAに対して完全に非感受性となった。また、三重変異体のACC処理による屈曲の誇張はJA処理による抑制を受けなかった。myc2myc2 myc3myc2 myc4myc2 myc3 myc4 の各変異体はHLS1 の発現量が増加しており、myc2 myc3 myc4 三重変異体をACC処理した際のHLS1 の発現量増加はJA処理をしても抑制されなかった。これらの結果から、MYC2、MYC3、MYC4は冗長的にJAによるフック屈曲の阻害に関与していることが示唆される。MYC2、MYC3、MYC4はEIN3、EIL1と相互作用をすることがBiFCアッセイ、プルダウンアッセイ、共免疫沈降アッセイから確認された。EIN3はHLS1 遺伝子のプロモーター領域に結合してHLS1 の発現を活性化し、フックの屈曲を誘導することが知られている。MYC2はEIN3やEIL1と相互作用をすることでEIN3やEIL1によるHLS1 の転写活性化を抑制することがわかった。EIN3とEIL1は、死体栄養性病原菌に対する抵抗性を誘導する転写因子をコードするETHYLENE RESPONSE FACTOR1ERF1 )もターゲット遺伝子としているが、MYC2とEIN3、EIL1との相互作用はEIN3やEIL1によるERF1 の転写活性化も抑制していた。実際に、myc2 変異体ではERF1 の他にERF1 のホモログのOCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS AP2/ERF59ORA59 )やこれらの転写因子のターゲット遺伝子であるPLANT DEFENSIN1.2PDF1.2 )といった防御応答遺伝子類の発現量が高く、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea )に対する抵抗性が高くなっていた。よって、MYC2の変異によって遊離状態となったEIN3やEIL1は、フックの屈曲や防御応答を誘導するHLS1ERF1 の発現を活性化していることが示唆される。myc2 ein3 eil1 三重変異体やmyc2 myc3 myc4 ein3 eil1 五重変異体では、myc2 類の変異体において観察されるフックの屈曲の誇張やHLS1 の発現量増加が抑制されており、myc2 myc3 myc4 ein3 eil1 五重変異体でのHLS1 の発現はJA処理やACC処理の影響を受けなくなった。また、ein3 eil1 変異はmyc2 変異による灰色カビ病菌抵抗性の増加を抑制した。myc2 myc3 myc4 三重変異体を用いた解析から、MYC2は傷害応答遺伝子のVEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )、VSP2TYROSINE AMINOTRANSFERASE3TAT3 )や虫害によって誘導される遺伝子のCYP79B3BRANCHED-CHAIN AMINOTRANSFERASE4BCAT4 )、BILE ACID TRANSFERASE5BAT5 )のJAによる発現誘導を促進していることが確認され、ein3 eil1 二重変異体ではこれらの遺伝子のJAによる発現誘導が野生型よりも高くなっていることがわかった。myc2 myc3 myc4 三重変異体はグルコシノレートがほぼ完全に含まれておらず、ハスモンヨトウ(Spodoptera littoralis )やシロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua )といったゼネラリストの食害を受けやすい。一方、ein3 eil1 二重変異体はゼネラリストに対する防御が高い。したがって、EIN3とEIL1はMYC2、MYC3、MYC4と相互作用をすることでこれらの因子の機能を抑制していると考えられる。以上の結果から、MYC2、MYC3、MYC4とEIN3、EIL1との間の相互作用によってエチレンとジャスモン酸の拮抗的な関係が形成されていると考えられる。

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論文)葉の老化におけるジャスモン酸とオーキシンのクロストーク

2014-03-14 08:32:57 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WRKY57 Functions as a Node of Convergence for Jasmonic Acid- and Auxin-Mediated Signaling in Jasmonic Acid-Induced Leaf Senescence
Jiang et al.  The Plant Cell (2014) 26:230-245.

doi:10.1105/tpc.113.117838

WRKY転写因子ファミリーはシロイヌナズナに74存在し、その多くが生物/非生物ストレス応答にに関与している。また、WRKY 遺伝子は老化時に転写産物量が増加する転写因子遺伝子として2番目に大きなグループとなっている。中国科学院 西双版納熱帯植物園Yu らは、老化葉で発現量が増加するWRKY57に着目して詳細な解析を行なった。葉の老化を誘導することが知られているアブシジン酸(ABA)、ジャスモン酸(JA)、サリチル酸(SA)、エチレンの処理によるWRKY57 の発現量変化を調査したところ、JA処理によってWRKY57 の発現量が増加することがわかった。よって、WRKY57はJAによる老化誘導において機能していることが推測される。T-DNA挿入機能喪失wrky57 変異体の葉は、メチルジャスモン酸(MeJA)処理による黄化、クロロフィル量の減少、細胞死が野生型やWRKY57 過剰発現形質転換体よりも強く表れることから、WRKY57はJAの誘導する葉の老化を負に制御していると考えれられる。wrky57 変異体は、老化に関連しているSENESCENCE4SEN4 )、SENESCENCE-ASSOCIATED GENE12SAG12 )、SAG18SAG20 のMeJA処理後の発現量が野生型やWRKY57 過剰発現個体よりも高く、WRKY57 はこれらの老化関連遺伝子の転写産物量を負に制御していることが示唆される。WRKY転写因子はターゲット遺伝子のプロモーター領域のW-boxに結合して機能することが知られており、発現調査した4つの老化関連遺伝子のプロモーター領域は幾つかのW-boxを含んでいた。クロマチン免疫沈降試験から、WRKY57はSEN4 遺伝子やSAG12 遺伝子のプロモーター領域にW-boxを介して結合することが確認され、SAG12 遺伝子プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを用いた一過的発現解析から、WRKY57は遺伝子発現を抑制する因子として機能することがわかった。WRKYタンパク質は他の因子と複合体を形成することで機能することが知られていることから、酵母two-hybrid系を用いてWRKY57と相互作用をするタンパク質の探索を行なった。得られた候補の中にはJAZ4、JAZ8、IAA29が含まれており、プルダウンアッセイやBiFCアッセイから、WRKY57はこれらのタンパク質とと強い相互作用を示し、複合体は核に局在することが確認された。老化葉のJAZ4JAZ8 の転写産物量は通常の葉よりも多く、T-DNA挿入jaz4 変異体やjaz8 変異体の葉はMeJA処理による老化誘導が野生型よりも強く表れた。一方、JAZ4JAZ8 を過剰発現させた形質転換体の葉は、MeJA処理による老化が野生型よりも遅く、クロロフィル含量の減少や細胞死についても表現型と一致していた。jaz4 変異体やjaz8 変異体でのSEN4SAG12 の転写産物量は野生型よりも高く、JAZ4JAZ8 を過剰発現させた形質転換体では低くなっていた。これらの結果から、JAZ4JAZ8 はJAによる葉の老化を抑制していることが示唆される。老化葉のIAA29 転写産物量は通常の葉よりも高く、T-DNA挿入iaa29 変異体のMeJA処理による老化誘導は野生型と同等であったが、IAA29 過剰発現形質転換体は野生型よりも早く老化を示し、クロロフィル含量の減少や細胞死、SEN4SAG12 の発現からも老化が促進されていることが示された。よって、IAA29はJAによる葉の老化に促進的に作用していると考えられる。これまでの知見から、オーキシンは老化を抑制することが知られている。しかしながら、その機構やJAによる老化誘導との関係については明らかとなっていない。野生型植物の切り葉を水、MeJA、インドール-3-酢酸(IAA)、MeJA+IAAの各処理を行なったところ、水とIAA処理では老化は観察されなかったが、MeJA処理では老化症状が表れた。MeJA+IAA処理した葉ではわずかに老化の兆候が見られ、MeJA処理と比較してクロロフィル含量の減少や細胞死、SEN4SAG12 の発現が抑制されていた。よって、オーキシンはJAによる老化誘導を部分的に抑制することが示唆される。オーキシン処理によってWRKY57 の発現が強く誘導されることから、WRKY57 はオーキシンシグナル伝達に関与していると思われる。wrky57 変異体をMeJAもしくはMeJA+IAA処理した際の老化誘導に差が見られないことから、オーキシンはWRKY57 を介してJAによる老化誘導に対して拮抗的作用していると考えられる。IAA29タンパク質はドメインⅡを介して、JAZタンパク質はZIMドメインを介してWRKY57タンパク質と相互作用をしており、WRKY57タンパク質はジンクフィンガードメインを介してこれらのタンパク質と相互作用をしていることが確認された。また、JAZ4とIAA29は競合的にWRKY57と相互作用をすることがわかった。オーキシン処理はWRKY57の転写産物量とタンパク質量の両方を増加させ、MeJA処理はWRKY57 転写産物量を増加させるが26Sプロテアソーム系によるWRKY57タンパク質の分解を誘導すること、この分解には一部COI1が関与していることがわかった。よって、WAKY57はタンパク質レベルにおいてJAとオーキシンによる拮抗的な制御を受けていることが示唆される。以上の結果から、WRKY57はJAの誘導する葉の老化においてJAとオーキシンの間のクロストークの鍵となる因子であると考えられる。

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論文)サイトカイニントランスポーター

2014-03-07 20:44:52 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis ABCG14 protein controls the acropetal translocation of root-synthesized cytokinins
Zhang et al.  Nature Communications (2014) 5:3274
doi:10.1038/ncomms4274

ATP結合カセット(ABC)トランスポーターは、ATPのエネルギーによって物質を輸送する膜輸送体で、全ての生物に存在している。シロイヌナズナゲノムにはABCトランスポーターをコードする遺伝子が120以上含まれており、配列の特徴から幾つかのサブファミリーに分類されている。米国 ブルックヘブン国立研究所Liu らは、ABCトランスポーターサブファミリーG(ABCG)のうちの機能未知なトランスポーターの遺伝子発現解析結果から、根の維管束において強い発現の見られるAtABCG14 に着目して解析を行なった。AtABCG14 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失変異体の芽生えは、一次根の伸長が著しく抑制される表現型を示した。atabcg14 変異体の根分裂組織の細胞分裂活性をCYCB1;1::uidA を導入して調査したところ、野生型よりも大きく低下していることがわかった。したがって、AtABCG14 の機能喪失は根分裂組織の活性に影響していると考えられる。atabcg14 変異体の根の伸長に対する各種ホルモンおよびホルモン前駆体の効果を見たところ、オーキシンやACCの添加による伸長阻害に対しては野生型との差は見られなかったが、サイトカイニン添加による伸長阻害に対しては感受性が低下していた。また、atabcg14 変異体の花序茎は野生型よりも細く、維管束の数が少なくなっていた。さらに、維管束の師部と木部の細胞数が減少し、リグニンの合成や沈着の遅れ、維管束間繊維や木部維管束での木化した細胞の減少が観察された。このような二次成長の遅延は、サイトカイニン合成に関与するATP/ADPイソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)が機能喪失したatipt1;3;5;7 四重変異体においてサイトカイニン量が減少して形成層の活性が低下した際に類似の現象が見られる。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が減少していることが推測される。他にもatabcg14 変異体芽生えは葉柄が短く、葉面積が小さく、クロロフィル含量が少ないといった表現型を示し、atabcg14 変異体では地上部組織のサイトカイニン量が減少していることが想像される。これらの形態学的および生理学的データから、AtABCG14 の機能喪失は根とシュートにおいてサイトカイニンの分布もしくは蓄積を妨げていると思われる。AtABCG14 がサイトカイニン分布に影響しているかを確認するために、タイプ-A サイトカイニンレスポンスレギュレーターをコードするARR5 のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトをatabcg14 変異体に導入してGUS活性を見たところ、野生型と比較して子葉のGUS活性は大きく減少していたが、一次根のGUS活性は組織全体で強くなっていた。成熟個体においても、atabcg14 変異体の花序のGUS活性は野生型よりも低くなっていた。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が低く、根のサイトカイニン量が高くなっており、根とシュートの間でのサイトカイニンの分配に異常があることが示唆される。atabcg14 変異体の内生サイトカイニン量を測定したところ、根で合成されて木部を介してシュートへ輸送されるtrans-ゼアチン(tZ)-タイプやジヒドロゼアチン(DHZ)-タイプのサイトカイニンはシュートでの含量が低下し根での含量が増加していた。一方、シュートで合成され師部を介して輸送されるイソペンテニルアデニン(iP)-タイプのサイトカイニンは、シュートと根の両方で野生型よりも含量が高くなっていた。したがって、AtABCG14は根で合成されるtZ-タイプやDHZ-タイプのサイトカイニンの分布において重要な役割を演じていることが示唆される。AtABCG14 プロモーター制御下でGUS もしくはAtABCG14とGFPの融合タンパク質を発現させた解析から、AtABCG14 はシュートよりも根において強く発現しており、根の移行領域から伸長/分化領域にかけての内鞘と中心柱で主に発現し、分裂領域では殆ど発現していないことがわかった。他にも、抽だいした植物の若い葉の中ろくや葉脈、成熟した葯、長角果においても発現が見られた。また、AtABCG14タンパク質は細胞膜に局在していた。標識したtZを根に与えると、野生型ではシュートに輸送されていたが、atabcg14 変異体では殆ど輸送されていなかった。35S プロモーター制御下でAtABCG14 を過剰発現させた形質転換体の葉に標識したtZを与えると、表皮細胞への標識の取込が野生型よりも少なく、ABCトランスポーターの阻害剤であるオルトバナジウム酸塩で予め処理した葉では野生型との間の標識取込量の差が緩和された。このことから、AtABCG14は排出輸送体として機能しているものと考えられる。以上の結果から、AtABCG14は根で合成されたサイトカイニンの地上部への輸送に関与するトランスポーターであると考えられる。

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論文)アブシジン酸の異化を抑制することで乾燥耐性をもたらす転写因子

2014-02-28 05:35:05 | 読んだ論文備忘録

bHLH122 is important for drought and osmotic stress resistance in Arabidopsis and in the repression of ABA catabolism
Liu et al.  New Phytologist (2014) 201:1192-1204.
DOI: 10.1111/nph.12607

塩基性へリックスループへリックス(bHLH)ファミリーは真核生物に共通して見られる転写因子で、シロイヌナズナにはbHLH因子をコードする遺伝子が160以上存在する。しかしながら、機能が知られているものはその中のおよそ30%程度である。中国農業科学院 作物科学研究所のLi らは、シロイヌナズナbHLH 遺伝子の発現パターンを公的データベースを用いて調査し、ストレス応答に関すると思われるbHLH122 (At1g51140)に着目して詳細な解析を行なった。マイクロアレイデータから、bHLH122 転写産物量は浸透圧ストレスや塩ストレスによって大きく増加するが、乾燥ストレスでは変化が見られないことがわかっている。しかしながら、RT-PCRを行なうと乾燥ストレスによってもbHLH122 の転写産物量が増加することが確認された。これはマイクロアレイとRT-PCRでは乾燥処理条件が異なることに起因していると考えられる。乾燥ストレスによって転写産物量が増加する遺伝子の中にはアブシジン酸(ABA)の蓄積が関与しているものがあるが、bHLH122 の発現量はABA処理による変化は見られず、ABA欠損変異体(aba2-1 )やABA非感受性変異体(abi4-1 )においても乾燥処理によってbHLH122 の転写産物量は増加した。したがって、bHLH122 の発現にABAシグナルは関与していないと考えられる。bHLH122 の転写産物は、根、葉、茎、花を含むシロイヌナズナの様々な組織で検出され、bHLH122 プロモーター制御下でGUS を発現させて組織学的に発現部位を観察すると、芽生えでは子葉、根の維管束や根端、葉では維管束系や孔辺細胞、そして花や長角果において発現が見られた。また、bHLH122タンパク質は核に局在することがわかった。35S プロモーター制御下でbHLH122 を恒常的に過剰発現させた形質転換体は乾燥耐性を示し、乾燥処理後の再潅水による回復が野生型よりも高くなっていた。そこで、bHLH122 過剰発現個体の気孔開度を野生型と比較したところ、通常条件では両者の気孔開度に差は見られなかったが、乾燥条件での気孔開度はbHLH122 過剰発現個体は野生型よりも40-63%低くなっていた。また、bHLH122 過剰発現個体の切り葉は野生型よりも水分の減少が遅くなっていた。シロイヌナズナはストレスに応答して葉にアントシアニンを蓄積するが、bHLH122 過剰発現個体は乾燥ストレス後のアントシアニン蓄積量が野生型よりも75%少なくなっていた。以上の結果から、bHLH122 過剰発現個体は野生型よりも乾燥ストレスに対する耐性が高く、bHLH122 は乾燥耐性に関与していることが示唆される。bHLH122 過剰発現個体は塩ストレスや浸透圧ストレスに対しても耐性を示した。bHLH122 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失bhlh122 変異体は、野生型と比較して乾燥耐性に差は見られなかったが、塩ストレスと浸透圧ストレスに対する感受性は高くなっており、bHLH122はこれらのストレスの耐性に関与していると考えられる。bHLH122 を介したシグナル伝達を明らかにするために、bHLH122 過剰発現個体と野生型との間でマイクロアレイ解析を行なったところ、非ストレス条件下で214の遺伝子の発現量に差が見られた。このうち87遺伝子は発現量が増加しており、127遺伝子は発現量が減少していた。そして、発現量が増加している遺伝子の92.0%、発現量が減少している遺伝子の94.5%はプロモーター領域にbHLH転写因子の結合部位とされているG-box(CACGTG)またはE-box(CANNTG)を含んでいることがわかった。bHLH122タンパク質がこれらのシスエレメントと相互作用をするかを、ゲルシフトアッセイとクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを行なって調査したところ、bHLH122タンパク質はG-boxとE-boxの両方のシスエレメントと相互作用を示すことがわかった。野生型とbHLH122 過剰発現個体で発現量の異なる214遺伝子の中にはABAの異化に関与しているABA 8'-ヒドロキシラーゼをコードするCYP707A3 が含まれていた。CYP707A3 遺伝子のプロモーター領域にはG-boxが2つ、E-boxが6つ含まれていたことから、この領域からクローニングしたG-boxを1つ含むDNA断片を用いてゲルシフトアッセイを行なったところ、bHLH122タンパク質はこの断片と結合することがわかった。また、ChIPアッセイからもCYP707A3 はbHLH122のターゲットであることが確認された。マイクロアレイのデータではCYP707A3 はbHLH122によって発現抑制される遺伝子であることが示されている。CYP707A3 の発現はbHLH122 過剰発現個体では野生型よりも約60%低く、bhlh122 変異体では約3倍高くなっていた。cyc707a3 機能喪失変異体は野生型よりもABA含量が高いことが報告されていることから、bHLH122 過剰発現個体のABA含量を調べたところ、野生型よりも高いことがわかった。以上の結果から、bHLH122はCYP707A3 の発現を抑制することでABA含量の増加をもたらしており、このことによってbHLH122は乾燥、塩、浸透圧ストレスに対する正の制御因子として機能していると考えられる。

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