Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ブラシノステロイドフィードバックシグナルによる細胞壁の安定性維持

2012-11-01 19:38:57 | 読んだ論文備忘録

Plant Cell Wall Homeostasis Is Mediated by Brassinosteroid Feedback Signaling
Wolf et al.  Current Biology (2012) 22:1732-1737.
doi:10.1016/j.cub.2012.07.036

細胞壁に囲まれている植物細胞の成長は、膨圧によって引き起こされ、細胞壁の拡張にはペクチンが関与していることが知られている。ペクチンを構成するホモガラクツロナン(HG)はペクチンメチルエステラーゼ(PME)によって脱メチルエステル化され、構造負荷に耐えうるカルシウムイオンの架橋を形成する。フランス国立農業研究所(INRA)のHöfte らは、シロイヌナズナ芽生えをPME活性阻害剤の没食子酸エピガロカテキン(EGCG)処理をすると根の伸長が抑制され根が波うつことを見出した。よって、PME活性は成長にとって重要であることが示唆される。また、PME阻害タンパク質であるPMEI5(At2g31430)を過剰発現させた個体の細胞壁はエステル結合の絶対量が僅かに増加し、根の伸長には変化が見られなかったが、不均一な波うちが誇張されていた。さらに葉の湾曲やシュートのねじれが観察された。これらの表現型が細胞壁力学におけるペクチンのメチルエステル化パターンの変化によるものなのか、未知のペクチンの関与するシグナル伝達による二次的な効果なのかを検証するために、PMEI5 過剰発現個体の表現型を抑制する変異体の単離を行ない、comfortably numb1cnu1 )変異体を得た。この変異体の原因遺伝子の探索を行なったところ、ブラシノステロイド(BR)受容体タンパク質BRASSINOSTEROID INSENSITIVE 1(BRI1)のキナーゼドメインのアミノ酸置換(G944D)が起こっていることがわかった。また、PMEI5 過剰発現個体の表現型の抑制は他のBR関連変異体においても観察されることがわかった。野生型植物芽生えを24-epi-ブラシノライド(BL)処理をするとPMEI5 過剰発現個体のような根の波うちが起こるが、cnu1 変異体ではBLの効果は殆ど見られなかった。BRシグナルをBRI1の下流において活性化するビキニンを処理すると根の波うちは野生型だけでなくcnu1 変異体でも起こった。暗所で育成した野生型芽生えをBL処理すると、PMEI5 過剰発現個体のように胚軸が屈曲し重力屈性が失われた。PMEI5 過剰発現個体をBL処理すると胚軸伸長が抑制されるが、BR受容体の変異であるcnu1 変異体ではBL応答性が失われていた。しかし、cnu1 変異体をビキニン処理するとPMEI5 過剰発現個体に類似した表現型を示した。野生型植物芽生えをBL処理すると細胞壁のエステル量が増加してPMEI5 過剰発現個体と類似した表現型となった。PMEI5 過剰発現個体は野生型植物やcnu1 変異体と比較するとBR生合成阻害剤ブラシナゾール(BRZ)処理に対して抵抗性があった。BRZの直接のターゲットであるステロイド22-α-ヒドロキシラーゼDWF4はBRシグナルによる転写レベルでの負の制御を受けており、PMEI5 過剰発現個体ではDWF4 の発現量が減少していた。PMEI5 過剰発現個体でBRI1 を過剰発現させるとPMEI5 過剰発現個体の表現型がさらに強調され、強いわい化と器官のねじれが起こった。以上の結果から、BRシグナルがPMEI5 過剰発現個体の表現型をもたらしていることが示唆される。EGCG処理は、BRI1に結合してBRI1を不活性化するBRI1 KINASE INHIBITOR 1(BKI1)のBRI1からの解離を引き起こしてBRシグナル伝達が起こり、PME 遺伝子の発現を増加させることがわかった。したがって、PME活性の阻害はBRI1を介したフィードバックループによってPME 発現を増加させている。また、EGCG処理したbri1 変異体やBR生合成変異体は野生型よりも根の波うちが弱くなっていた。以上の結果から、EGCG処理やPMEI5 過剰発現といったPME活性の抑制は未知の機構によるBR受容体BRI1の活性化を起こし、このことによって生じたBRシグナルの増加は成長過程にある細胞においてPME 等の細胞壁修飾に関与する遺伝子の発現を高めると考えられる。このBRを介したフィードバック制御機構は細胞壁の硬化と弛緩のバランスの制御に関与していると思われる。

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論文)サリチル酸受容体

2012-10-30 20:24:32 | 読んだ論文備忘録

NPR3 and NPR4 are receptors for the immune signal salicylic acid in plants
Fu et al.  Nature (2012) 486:228-232.
doi:10.1038/nature11162

植物に病原菌が感染すると、感染した細胞は過敏感反応(HR)と呼ばれるプログラム細胞死(PCD)を起こす。この局所的なPCDは、サリチル酸(SA)の生産を介して全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する。シロイヌナズナにおいて、転写コファクターのnonexpressor of PR genes 1(NPR1)がSARに関与していることが知られている。NPR1タンパク質は通常の条件下ではオリゴマーを形成して細胞質に局在しているが、病原菌が感染するとモノマーとなって核へ移行し、転写因子のコファクターとして機能して防御応答遺伝子の発現を誘導する。よって、NPR1はSA受容体ではないかと考えられていたが、NPR1自体にはSA結合活性はない。NPR1はタンパク質相互作用に関与するBTBドメインを有しており、このドメインを持つタンパク質はクリン3(CUL3)E3リガーゼと相互作用をしてタンパク質分解に関与することが知られている。しかしながら、NPR1はプロテアソーム系によって分解される。分解されない変異NPR1を生成する個体もしくはCUL3 遺伝子の変異体は防御応答遺伝子の発現量は増加するが、SARの誘導は低下する。したがって、NPR1の核蓄積は防御応答遺伝子の発現に必要であるが、SARを起こすためにはその後のNPR1の分解が必要となる。米国 デューク大学Dong らは、NPR1のパラログのNPR3とNPR4がNPR1の分解に関与しCUL3のアダプターとして機能するのではないかと考えて解析を行なった。npr4 変異体、npr3 npr4 二重変異体はSA非存在下でNPR1タンパク質が野生型よりも多く含まれており、npr3npr4npr3 npr4 の各変異体はSA処理によるNPR1タンパク質の蓄積が野生型よりも早く起こった。変異体においてNPR1 転写産物量には変化が見られないことから、npr3npr4 変異によるNPR1タンパク質量の増加は転写後の制御によってなされていると思われる。野生型植物の粗抽出液にNPR1タンパク質を添加するとNPR1の分解が観察されたが、npr3 npr4 変異体の粗抽出液ではNPR1タンパク質の分解は見られなかった。また、プロテアソーム阻害剤MG115を添加することによって野生型粗抽出液でのNPR1タンパク質の分解が抑制された。in vitro プルダウン試験からNPR3とNPR4はCUL3と相互作用をすることが確認され、NPR4はNPR3よりも強くCUL3と結合した。形質転換体を用いた共免疫沈降試験から、NPR1とCUL3の相互作用にはNPR3、NPR4が必要であることがわかった。よって、NPR4、NPR3はNPR1の分解においてCUL3のアダプターとして機能していると考えられる。酵母two-hybrid(Y2H)法によってNPR1、NPR3、NPR4の相互作用を見たところ、NPR1とNPR4は相互作用示し、NPR1とNPR3の相互作用は弱かった。しかしながら、培地にSAやSAの機能的アナログの2,6-ジクロロイソニコチン酸(INA)を添加すると、NPR1とNPR4の相互作用が抑制され、NPR1とNPR3の相互作用が強まった。さらに、NPR3とNPR4はSAやINA存在下でヘテロ/ホモ二量体を形成した。よって、NPR3とNPR4はNPR1の安定性を制御するだけでなく、自己の制御も行なっていると考えられる。Y2Hの試験結果はin vitro プルダウンアッセイによっても確認された。以上の結果から、SAはNPR3やNPR4に直接結合してNPR1との相互作用を制御していることが推測される。そこで、NPR3とNPR4のSAとの親和性を測定したところ、どちらもSAと結合し、NPR3のSAとの親和性はNPR4よりも弱いことがわかった。また、NPR4には複数のSA結合部位があると考えられ、最初の結合によって他の部位への結合親和性が弱まる負の協同性があることがわかった。ゲルろ過解析から、NPR4は四量体を形成し、四量体にSA結合能があることが確認された。SARの正の制御因子であるNPR1のNPR3/4による分解の生物学的意義についてnpr3npr4npr3 npr4 変異体に病原菌を感染させて調査したところ、npr3npr3 npr4 変異体でのNPR1の安定化はSAR誘導性の低下をもたらし、これはcul3 acul3b 二重変異体の表現型と類似していることが明らかとなった。よって、NPR3、NPR4はCUL3を介したNPR1の分解とSARの誘導において重要であることが示唆される。また、npr3 npr4 二重変異体では菌感染によるPCDが起こらず、病原菌の生産するエフェクターに応答した抵抗性が弱くなっていた。この表現型はnpr1 npr3 npr4 三重変異体では抑制されていることから、npr3 npr4 二重変異体での抵抗性低下はNPR1の蓄積増加によって引き起こされていると考えられる。恒常的に核に局在するNPR1(C82A)とGFPとの融合タンパク質を発現させた個体に病原菌を感染させたところ、菌感染した細胞でのGFP蛍光は減少し、その周囲の細胞でのGFP蛍光は増加していた。よって、NPR1は抵抗性反応として引き起こされるPCDの阻害因子として機能していることが示唆される。以上の結果から、NPR3とNPR4はSAの受容体であると考えられる。菌感染していない状態では、CUL3-NPR4よってNPR1が分解されることで無用な抵抗性の活性化が抑制されるが、基底レベルのSAによってNPR1とNPR4の相互作用が妨げられことで、一定量のNPR1が維持される。病原菌が感染するとSA量は局所的および全身で増加し、感染部位から周辺部位へとSAの濃度勾配が形成される。そしてSA濃度の高い部位ではCUL3-NPR3によってNPR1が分解されてPDCが起こり、SA濃度の低い領域ではCUL3-NPR3相互作用が制限されることでNPR1が蓄積してSARが起こる。NPR3とNPR4によるSAの受容は、病原菌感染応答による細胞の生と死を決定する機構として機能していると言える。

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論文)サイトカイニンによる根の成長制御

2012-10-22 21:42:05 | 読んだ論文備忘録

A PHABULOSA/Cytokinin Feedback Loop Controls Root Growth in Arabidopsis
Dello Ioio et al.  Current Biology (2012) 22:1699-1704.
doi:10.1016/j.cub.2012.07.005

根は先端部分から基部に向かって明確な分化の勾配が形成されている。根端にある幹細胞周辺は細胞分裂を行なっている分裂領域(DZ)で、基部に近くなると細胞分裂が止まり細胞伸長によって成長する伸長/分化領域(EDZ)となる。DZとEDZの境界は移行領域(TZ)と呼ばれ、TZの位置によって分裂組織の長さが決まる。分裂細胞と分化細胞のバランスはサイトカイニンとオーキシンによって制御されており、根端部で形成されるオーキシン極大が幹細胞機能を維持し、サイトカイニンは先端部へ向けてオーキシンシグナルを抑制するように作用して分化を促進し、TZの位置を決定している。したがって、サイトカイニンは根の分裂組織のサイズを決めていることになるが、その詳細な機構は明らかとなっていない。英国 オックスフォード大学Tsiantis らは、冗長的に作用するHD-ZIPIII転写因子のPHABULOSAPHB )とPHAVOLUTAPHV )のマイクロRNA非感受性シロイヌナズナ機能獲得変異体phb-1dphv-1d の芽生えは根が短くなり、分裂組織が小さくなること、その表現型はサイトカイニン処理した芽生えやバクテリアのサイトカイニン合成酵素遺伝子ISOPENTENYL TRANSFERASEIPT )を過剰発現させた個体と類似していることを見出した。よって、PHBとPHVはTZの位置すなわち根分裂組織のサイズをサイトカイニンと同様の機構によって制御していると考えられる。PHBの活性がサイトカイニンシグナルを介していることを示す証拠として、サイトカイニンに応答するARABIDOPSIS RESPONSE REGULATOR 5ARR5 )の発現領域がphb-1d 変異体やphv-1d 変異体では野生型よりも拡張していること、サイトカイニンによる分裂組織サイズの制御に関与しているARR1 の機能喪失はphb-1d 変異体の根が短くなる表現型を抑制することが挙げられる。また、phb-1d 変異体やphv-1d 変異体の根端部の幹細胞には異常が見られないことから、これらの変異体ではTZの位置のみが異常であると考えられる。phb phv 二重変異体芽生えは野生型よりも根が長く、根分裂組織も長くなっており、これはサイトカイニンの生合成経路や受容体の変異体の表現型と類似している。phb phv 二重変異体芽生えをサイトカイニン処理すると根の表現型は野生型と同等になることから、PHB、PHVはサイトカイニン生合成を促進する作用があると思われる。サイトカイニン生合成酵素をコードするIPT 遺伝子のうち、IPT7 の転写産物量はphb phv 二重変異体で減少しており、phb-1d 変異体やphv-1d 変異体では増加していた。よって、PHB、PHVはIPT7 の発現活性化に必須であると考えられる。PHBIPT7 の発現部位は重なっており、クロマチン免疫沈降試験からPHBがIPT7 遺伝子プロモーター領域に結合することが確認されたことから、IPT7 はPHBの直接のターゲットであることが示唆される。ipt7 変異体は野生型よりも根と根分裂組織が長くなることから、IPT7 を介したサイトカイニン生合成は根分裂組織のサイズを決定していると言える。PHB/PHVが根分裂組織サイズの制御においてIPT7 以外の遺伝子をターゲットとしているかを調査するために、IPT7PHB プロモーター制御下で発現させたphb phv 二重変異体の表現を観察したところ、この個体の根の長さや根分裂組織のサイズは野生型と同等であった。よって、PHB 発現領域でのIPT7活性は正常な根の発達におけるPHB/PHVの機能に十分に取って代り得る事が示唆される。さらに、phb phv ipt7 三重変異体の根分裂組織のサイズはphb phv 二重変異体やipt7 変異体と同等であり、PHB/PHVはIPT7によるTZ位置決定にとって主要な制御因子であることが示唆される。サイトカイニンは一定のの量を超えるとIPT の発現量を低下させることで自身の生合成を抑制するフィードバックが存在する。野生型植物をサイトカイニン処理するとPHBPHV 転写産物量が減少し、この発現抑制にはARR1 が関与していることが確認された。したがって、サイトカイニン/ARR1を介したPHB 発現抑制は、PHBによるサイトカイニン生合成制御を通じてTZの位置決定に関与している。PHB はmiR165/166による転写後抑制も受けているが、サイトカイニンはARR1を介してMIR165A の発現を抑制していることが確認された。したがって、サイトカイニンは自らの生合成を活性化するPHB と、PHB の抑制をするマイクロRNAの両者の抑制を行なうという一貫性に欠ける制御ループを形成していることになる。この調節回路は、根の発達過程での細胞分裂と細胞分化のバランスを決定し、サイトカイニン機能の頑強性をもたらしていると考えられる。

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論文)DELLAタンパク質による花成制御

2012-10-18 20:40:09 | 読んだ論文備忘録

Gibberellin Regulates the Arabidopsis Floral Transition through miR156-Targeted SQUAMOSA PROMOTER BINDING-LIKE Transcription Factors
Yu et al.  The Plant Cell (2012) 24:3320-3332.
doi:10.1105/tpc.112.101014

短日条件下にあるシロイヌナズナが花成する経路には、ジベレリン(GA)による経路と、SQUAMOSA PROMOTER BINDING-LIKE(SPL)転写因子をターゲットとするマイクロRNA156(miR156)を介した経路の2つがある。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所のWang らは、花成誘導におけるGAの役割を解明することを目的に、GA非感受性型のRGA であるRGAd17 を自身のプロモーター制御下で発現するコンストラクト(ProRGA:RGAd17 )を導入したシロイヌナズナを作出し、表現型を観察した。この形質転換体はGA欠損変異体と類似した表現型を示し、葉が小さく葉色が濃くなり、花成遅延を起こした。RGAd17 を師部特異的プロモーターのSUC2 もしくは分裂組織特異的プロモーターのFD によって発現させたところ、長日条件下ではどちらの個体も花成遅延を起こし、短日条件下ではSUC2 プロモーターで発現させた個体の花成時期は野生型と同等であったが、FD プロモーターで発現させた場合には花成時期の更なる遅れが見られた。よって、RGAは長日条件下では葉と茎頂の両方で花成を抑制し、短日条件では茎頂において花成遅延を引き起こす。SUC2 プロモーターでRGAd17 を発現させた場合、葉のFLOWERING LOCUS TFT )の転写産物量が減少しており、RGAは葉維管束組織でのFT の発現を抑制していると考えられる。植物の齢が進んでmiR156が減少することによって増加したSPLは、FT の発現を負に制御するAP様転写因子SCHLAFMUTZESMZ )およびSCHNARCHZAPPENSNZ )をターゲットとするmiR172を活性化することが知られている。SUC2 プロモーターでRGAd17 を発現させた個体ではmiR172量が非常に低くなっており、miR172をコードする遺伝子の1つであるMIR172b の転写産物量も減少していた。しかし、FT の発現を制御しているCONSTANSCO )、FLOWERING LOCUS C FLC )、SHORT VEGETATIVE PHASESVP )、TEMPRANILLOTEM )の発現量には大きな変化は見られなかった。また、RGAd17 を発現する個体でFT もしくはMIR172a を発現させると、RGAによる長日条件下での花成遅延が抑制されて花成時期が早くなった。野生型植物では、栄養成長から生殖成長に移行するにつれてMADS box転写因子をコードするFRUITFULLFUL )やSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CO1SOC1 )の茎頂での発現量が徐々に増加していくが、FD プロモーター制御下でRGAd17 を発現させた個体ではFULSOC1 の発現量増加は見られなかった。よって、RGAはMADS box 遺伝子の発現を抑制していることが示唆される。野生型植物をGA処理すると花成が促進されるが、MIR156 を過剰発現させた個体ではGAに対する感受性が低下し、花成促進が打ち消された。また、GA処理によるSOC1FUL の発現量増加が、MIR156 過剰発現個体では見られなかった。シロイヌナズナの5つのDELLAタンパク質が機能喪失したdella 五重変異体長日条件下において野生型よりも花成が早くなるが、MIR156 を過剰発現させることによって花成が遅延した。miR156のターゲットであるSPL9およびSPL15が機能喪失したspl9 spl15 二重変異体はMIR156 過剰発現個体と同様に花成遅延を起こす。また、miR156耐性型のSPL9rSPL9 )を自身のプロモーター制御下発現させた個体は長日条件下で花成が促進される。rSPL9RGAd17 を同時に発現させた個体は、RGAd17 を発現させた個体と同様に葉色が濃い小さい葉を形成するが、花成はRGAd17 発現個体よりも早くなった。したがって、miR156のターゲットとなるSPLはGAによる花成誘導に必須であり、DELLAはSPLによる花成誘導経路を抑制していると考えられる。RGAとSPLとの相互作用を酵母two-hybrid 法によって調査したところ、RGAはmiR156のターゲットとなるSPLと相互作用をすることがわかり、BiFCアッセイや共免疫沈降(CoIP)試験から、この相互作用が植物体内においても確認された。rSPL9 を発現させた個体ではSOC1MIR172b の発現量が増加するが、RGAd17 を同時に発現させると発現量は野生型と同等になった。野生型植物をGA生合成阻害剤のパクロブトラゾール(PAC)処理をするとSOC1MIR172b の発現量が減少するが、rSPL9 発現個体やMIR156 過剰発現個体はPAC非感受性となり、PAC処理によるSOC1MIR172b の発現量変化は見られなくなった。よって、RGAはSPLを介したMADS box 遺伝子やMIR172 の発現を抑制していることが示唆される。以上の結果から、植物体の齢による花成誘導とGAによる花成誘導は、SPLとDELLAの直接の物理的相互作用によって制御されていることが示唆される。

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論文)ジベレリンシグナルとジャスモン酸シグナルの統合

2012-10-12 05:36:16 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis DELLA RGA-LIKE3 Is a Direct Target of MYC2 and Modulates Jasmonate Signaling Responses
Wild et al.  The Plant Cell (2012) 24:3307-3319.
doi:10.1105/tpc.112.101428

シロイヌナズナには、GA INSENSITIVE(GAI)、REPRESSOR OF GA1-3(RGA)、RGA-LIKE1(RGL1)、RGL2、RGL3の5種類のDELLAタンパク質が見られる。これまでの研究から、ジベレリン(GA)による生理作用のうち、栄養成長はRGAとGAI、発芽はRGL2、花芽形成はRGA、RGL1、RGL2が関与していることが明らかとされているが、RGL3については機能がよくわかっていない。フランス 植物分子生物学研究所(IBMP)Achard らは、RGL3の機能を明らかにすることを目的に、ATTED-IIシロイヌナズナ遺伝子共発現データベースを用いた解析を行ない、RGL3JAZ 遺伝子等のジャスモン酸(JA)関連遺伝子と共発現していることを見出した。実際に、シロイヌナズナ芽生えをメチルジャスモン酸(MeJA)処理するとRGL3 の発現量が一過的に植物体全体で増加した。JAによるRGL3 の発現誘導はcoi1 変異体では見られず、RGL3COI1 の下流に位置していると考えられる。また、myc2 変異体ではJAによるRGL3 の発現誘導が部分的に抑制され、myc2 myc3 myc4 三重変異体では発現誘導が完全に抑制された。よって、MYC2/MYC3/MYC4は冗長的にRGL3 の発現誘導に関与していると考えられる。MYC2/MYC3/MYC4はG-box(CACGTG)もしくはG-box様モチーフに結合することが知られているが、RGL3 プロモーター領域にはそのようなモチーフが5つ存在していた。クロマチン免疫沈降(ChIP)やゲルシフトアッセイ(EMSA)から、MYC2は直接RGL3 プロモーター領域をターゲットとしていることが判った。最近の研究から、DELLAタンパク質はJAZタンパク質と相互作用をすることが報告されているが、幾つかの実験からRGL3も植物体内でJAZタンパク質と相互作用をすることが確認された。rgl3 変異体では、MYC2を介してJAに応答して発現誘導される遺伝子(VSP2TAT1LOX2 )の誘導量が野生型よりも低くなっており、RGL3はこれらの遺伝子を十分に発現誘導させるために必要であることが示唆される。また、RGL3 過剰発現個体ではVSP2TAT1LOX2 の発現量が恒常的に高くなっていた。したがって、JAによるMYC2の転写活性の活性化には、COI1を介したJAZの分解と、増加したRGL3とJAZタンパク質との複合体形成の2種類のMYC2活性抑制解除機構が存在すると考えられる。RGL3とJAZタンパク質との相互作用による制御機構は、JAZ8のようにJAによる分解に対して比較的耐性を示すJAZタンパク質にとっては重要であると思われる。RGL3 は死体栄養性病原菌の灰色カビ病菌(Botrytis cinerea )の感染によって発現誘導されるるが、rgl3 変異体はB. cinerea の感染に弱く、菌の感染に応答して発現するPLANT DEFENSIN1.2ETHYLENE RESPONSIVE FACTOR1 といった病害応答遺伝子の発現量が低下していた。よって、RGL3はJAによる死体栄養性病原菌に対する病害応答を強めていると考えられる。半生物栄養性病原菌のトマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomato strain DC3000)の感染によってRGL3 は発現誘導されるが、コロナチン(COR)を生成しない系統の菌の感染ではRGL3 の発現誘導は起こらなかった。よって、P. syringae はCORに依存した経路でRGL3 の発現を制御している。rgl3 変異体では接種したP. syringae の成長が抑制されていた。P. syringae に対する防御応答ではサリチル酸(SA)がシグナル伝達物質として機能しているが、rgl3 変異体ではSAによるPATHOGENESIS-RELATED1PR1 )の発現誘導が野生型よりも強くなっていた。よって、RGL3はSAシグナル伝達経路に対して抑制的に作用していると考えられる。以上の結果から、RGL3は病原菌に対する抵抗性の制御においてGAシグナルとJAシグナルを統合する因子として機能していると考えられる。

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論文)フィトクロムによる花成制御に関与する転写因子

2012-10-10 21:15:46 | 読んだ論文備忘録

The Phytochrome-Interacting VASCULAR PLANT ONE-ZINC FINGER1 and VOZ2 Redundantly Regulate Flowering in Arabidopsis
Yasui et al.  The Plant Cell (2012) 24:3248-3263.
doi:10.1105/tpc.112.101915

京都大学河内らは、酵母two-hybrid法によってフィトクロムB(phyB)と相互作用をするタンパク質の選抜を行ない、ジンクフィンガーモチーフを含んだ転写活性化因子VASCULAR PLANT ONE ZINC FINGER PROTEIN1(VOZ1)とVOZ2を見出した。VOZ1VOZ2 の機能を解析することを目的に両遺伝子のT-DNA挿入機能喪失変異体を表現型を調査したところ、voz1 voz2 二重変異体は長日条件下で花成遅延を起こすことがわかった。voz1 voz2 二重変異はphyB 変異体による早期花成を完全に抑制することから、VOZ1VOZ2 はphyBによる花成時期の制御に関与していることが示唆される。phyB voz1 voz2 三重変異体ではphyB 変異体で観察される葉柄伸長、葉の下偏成長、葉の小型化といった表現型に変化は見られず、VOZ1VOZ2 はphyBによる花成時期制御にのみ関与していると考えられる。VOZタンパク質はphyBと相互作用をし、phyBは葉においてFLOWERING LOCUS TFT )の発現を抑制することが知られている。そこで、葉でのVOZ の発現を調査したところ、VOZ1 は維管束で発現し、VOZ2 は維管束だけでなく葉肉細胞でも発現していることがわかった。よって、VOZ1VOZ2 は葉の維管束で発現して花成を制御していると考えられる。voz1 voz2 二重変異体ではFT の発現が抑制されており、野生型植物において観察される日没期のFT 発現量のピークも見られなかった。CONSTANSCO )の発現パターンは野生型とvoz1 voz2 変異体の間で類似していたが、野生型植物のロゼット葉で見られる日没期と深夜のCO 発現のピークが変異体では弱くなっていた。voz1 voz2 二重変異体でのFLOWERING LOCUS CFLC )の発現量は野生型よりも高くなっており、voz1 voz2 二重変異体の花成遅延はFLC 発現量増加によってもたらされる葉でのFT 発現量の減少によるものであると考えられる。VOZタンパク質の細胞内局在をGFP-VOZ2融合タンパク質を用いて調査したところ、融合タンパク質は主に細胞質に局在し、光質(赤色光-遠赤色光)による局在変化は起こらないことがわかった。しかし、VOZタンパク質は転写活性化因子であることから核において機能すると考えられる。そこで、GFP-VOZ2に核局在シグナル(NLS)もしくは核排出シグナル(NES)を付加してvoz1 voz2 二重変異体で発現させたところ、核局在シグナルを付加したものでは花成遅延が相補されたが、核排出シグナルを付加した場合は相補が起こらなかった。よって、VOZ2タンパク質は核に局在することで花成に対して機能していると考えられる。生体内においてphyBとVOZタンパク質との相互作用は細胞質において起こっており、光質を変えても複合体の細胞内局在に変化は見られなかった。しかしVOZとphyBとの相互作用は遠赤色光照射下で起こり、赤色光照射下では起こらないことがわかった。これらの結果から、VOZタンパク質は光条件による制御によって細胞質から核へ移行し、そこで分解されるのではないかと思われる。遠赤色光照射下と暗黒下に置かれた植物体のVOZ2タンパク質量は明所下や赤色光照射下のもよりも少なくなっていた。しかし核排出シグナルを付加したGFP-VOZ2タンパク質は光条件の違いによる量の変化は見られなかった。よって、VOZタンパク質量は光条件によって核での翻訳後制御を受けていると考えられる。阻害剤を用いた実験から、核でのVOZタンパク質の分解はプロテアソーム系を介してなされていることがわかった。phyA 変異体、phyB 変異体では遠赤色光下でのVOZタンパク質の分解程度が低く、hy1 hy2 二重変異体では遠赤色光下においてVOZタンパク質量の変化はほとんど起こらなかった。よって、光条件によるVOZタンパク質の分解制御にはphyA、phyB等のフィトクロムが関与していると考えられる。以上の結果から、VOZ1、VOZ2はシロイヌナズナにおいて冗長的に花成促進をする転写因子として機能していると考えられる。そして、phyBはVOZタンパク質と相互作用をすることで、VOZタンパク質を遠赤色光条件下で細胞質に留め、核への移行を制限していると考えられる。また、phyBはVOZタンパク質と細胞質で相互作用をした際にリン酸化等の修飾をし、VOZタンパク質が核へ移行した後の分解が起こるものと思われる。

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論文)プロアントシアニジンによる種子発芽阻害

2012-10-02 05:13:19 | 読んだ論文備忘録

Proanthocyanidins Inhibit Seed Germination by Maintaining a High Level of Abscisic Acid in Arabidopsis thaliana
Jia et al.  Journal of Integrative Plant Biology (2012) 54:663-673.
doi: 10.1111/j.1744-7909.2012.01142.x

プロアントシアニジン(PA)は種子のフラボノイド生合成経路での主要産物である。PAの生物学的作用については様々な調査がなされており、シロイヌナズナ変異体の解析から種子休眠との関連が示されているが、詳細は明らかとなっていない。中国 香港中文大学Zhang らは、シロイヌナズナ種子をPAを含む培地で発芽させると、培地のPA含量が増加するにつれて発芽率が低下することを見出した。種皮を剥いだアブラナ種子を用いた実験においても、培地に含まれるPA量が増加すると幼根の伸長が抑制された。よって、PAの種子発芽阻害効果は幼根伸長の抑制が一部関与していると考えられる。種子を浸漬するとアブシジン酸(ABA)が徐々に減少していくが、PAを含んだ液に浸漬するとABA含量が増加した。よって、PA処理はABAの新規合成を誘導していることが示唆される。ABA含量は生合成と分解のバランスによって制御されている。そこで、発芽種子でのABA生合成酵素遺伝子NCED6NCED9 およびABA異化酵素遺伝子CYP707A2 の発現量を見たところ、PA処理した発現種子では水に浸漬した種子よりもABA生合成酵素遺伝子の発現量が高く、ABA異化酵素遺伝子の発現量には差が見られなかった。よって、PA処理によるABA蓄積量の増加はABA生合成の上昇によるものであると考えられる。ABA含量はPA処理12時間後においても高い状態を維持しているが、この時にはABA生合成酵素遺伝子の転写産物量は大きく減少していた。しかし、ABA異化遺伝子の転写産物量も減少していることから、PA処理12時間後において見られる高いABA蓄積量はABAの異化の低下によるものであると思われる。ABA生合成の阻害剤であるノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)もしくはABA異化の阻害剤であるジニコナゾールを用いてPAとABAとの関係を見たところ、NDGAはPAによる種子発芽阻害を打ち消し、ジニコナゾールとPAの同時処理は発芽阻害をさらに強めることがわかった。PA欠損変異体成熟種子のABA含量は野生型よりも少なく、PAは種子の成熟過程でのABA蓄積にも影響していることがわかった。以上の結果から、PAはABA生合成を促進することで種子発芽を阻害していると考えられる。

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論文)MEDIATOR25によるジャスモン酸応答遺伝子の発現制御機構

2012-09-30 18:53:27 | 読んだ論文備忘録

MEDIATOR25 Acts as an Integrative Hub for the Regulation of Jasmonate-Responsive Gene Expression in Arabidopsis
Cevik et al.  Plant Physiology (2012) 160:541-555.
doi:10.1104/pp.112.202697

シロイヌナズナPHYTOCHROME AND FLOWERING TIME1 遺伝子はメディエーター複合体のMEDIATOR25(MED25)サブユニットをコードしている。変異体の解析からMED25はジャスモン酸(JA)シグナル伝達に関与していることが示されており、JA関連の転写因子と相互作用をすると考えられる。英国 ウォーリック大学Çevik (現 セインズベリー研究所)らは、MED25とJAシグナル伝達関連転写因子との相互作用について解析を行なった。MED25タンパク質をN末端側のメディエーター結合に関与いているフォンヴィルブランド因子A(vWF-A)ドメインを含む領域とC末端側のアクティベーター相互作用ドメイン(ACID)を含む領域に分けて酵母two-hybrid法によってJA関連転写因子との相互作用を調査したところ、ACIDドメインが転写因子と相互作用をすることがわかった。ACIDドメインと相互作用をする転写因子には、APETALA2(AP2)/ETHYLENE RESPONSE FACTOR(ERF)転写因子グループIXのERF1、OCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS AP2/ERF59(ORA59)、TRANSCRIPTIONAL REGULATOR OF DEFENSE RESPONSE1(TDR1)/ERF98、EFR15、bHLH転写因子のMYC2、MYC3、MYC4といったJA関連および防御応答関連転写因子や、AP2/ERF転写因子グループIVに属し、乾燥や低温の応答するDEHYDRATION-RESPONSIVE ELEMENT BINDING PROTEIN2(DREB2A)が含まれており、他にはWRKY10、MYB104、B-box zinc-finger転写因子(At4g39070)、bZIP転写因子(At2g31370)があった。ヒトMED25タンパク質のACIDドメインはVP16ヘルペス単純ウイルスタンパク質の転写活性化ドメイン(TAD)と相互作用をすることが知られている。AP2/ERF転写因子ERF1、ERF15、TDR1/ERF98、ORA59のC末端にはTADとして機能するConserved Motif IX-1(CMIX-1)/EDLLモチーフがあり、このモチーフがMED25との相互作用にも関与していることがわかった。MED25と相互作用をするERF1とORA59はJAに応答してPLANT DEFENSIN1.2PDF1.2 )遺伝子の転写を活性化し、MYC2はVEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )遺伝子の転写を活性化する。これらの転写因子の転写活性化能力はmed25 変異体では低下しており、MED25はこれらの転写因子の転写活性化に必要であることが示唆される。JA処理によるPDF1.2HEVEIN-LIKEHEL )、塩基性キチナーゼ(CHI-B )の発現誘導はmed25 変異体では野生型よりも減少しており、myc2 変異体では増加していた。med25 myc2 二重変異体ではこれらの遺伝子の発現誘導量は減少し、med25 変異体と同程度になっていた。よって、MED25はPDF1.2HELCHI-B の発現活性化に必要であり、MYC2によるこれらの遺伝子発現抑制にもMED25が関与していると考えられる。myc2 変異体ではJA処理によるORA59 およびERF1 の発現誘導量が野生型よりも高くなるが、med25 myc2 二重変異体ではmyc2 変異による発現誘導量増加が消失し、野生型と同程度になっていた。よって、MYC2はJA処理によるPDF1.2HELCHI-B の発現誘導をERF1ORA59 の発現抑制を介して抑制しており、この機構にMED25が関与していると考えられる。半生物栄養性植物病原菌Fusarium oxysporum の感染はJAに応答した防御遺伝子の発現を誘導する。F. oxysporum の感染はORA59 の発現を誘導するが、med25 変異体では発現誘導が見られなかった。一方、ERF1 の発現はF. oxysporum の感染に応答せず、野生型とmed25 変異体で差が見られなかった。よって、med25 変異体でのJA応答防御遺伝子の発現低下はORA59 の発現低下よって引き起こされていると考えられる。MYC2 とそのホモログのMYC3MYC4 の発現は野生型とmed25 変異体で差が見られないことから、med25 変異体でのMYC2ターゲット遺伝子の発現低下は、med25 変異体においてMYC2の転写活性化能力が低下しているためであると考えられる。med25 変異体でORA59 発現量が低下していることから、MED25はORA59 の上流に位置する転写因子の発現にも関与していると考えられる。酵母one-hybrid法によりORA59 遺伝子プロモーター領域に結合する転写因子の探索を行なったところ、13のAP2/ERF転写因子およびORA59自身がORA59 遺伝子プロモーター領域に結合することがわかった。よって、ORA59 の発現は正のフィードバック制御を受けていると考えられる。以上の結果から、MED25はJA応答遺伝子の発現制御の統合中心として機能していると考えられる。

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論文)光シグナルによる根の成長制御

2012-09-26 20:03:11 | 読んだ論文備忘録

COP1 mediates the coordination of root and shoot growth by light through modulation of PIN1- and PIN2-dependent auxin transport in Arabidopsis
Sassi et al.  Development (2012) 139:3402-3412.
doi:10.1242/dev.078212

オーキシンは胚軸伸長、フック形成、光形態形成、避陰反応といった光に応答した形態形成や成長において重要な役割を演じている。オーキシンはキャリアタンパク質によって細胞から細胞へと極性的に輸送され、植物体内での分布が制御されている。明所で育成した芽生えでは、若い葉原基で合成されたオーキシンが根へと輸送され、側根原基の形成が促進されるが、暗所で育成した場合には胚軸伸長が促進され根の成長や側根形成は抑制される。このことから、光はシュートから根へのオーキシンの極性輸送に影響をおよぼして根の形態形成を制御していると考えられている。最近の研究では、光によって根端分裂組織でのオーキシン排出キャリアPIN-FORMEDの細胞内分布に変化が生じ、このことによって局所的なオーキシン輸送や根の成長が変化することが示されているが、その詳細な機構は明らかとなっていない。シンガポール国立大学Xu らのグループは、シロイヌナズナの芽生えを用いて、光による根の成長制御機構について解析を行なった。黄化芽生えの根は明所で育成した芽生えの根よりも短く、どちらの根の表皮細胞も長さに違いは見られないが、黄化芽生えは根端部裂組織(RAM)が小さい。よって、暗所では細胞分裂が阻害されていると考えられる。この阻害は可逆的であり、黄化芽生えに光照射をすると根の成長は回復した。土耕栽培したシロイヌナズナにおいて、シュートが光照射されている条件での根のPINタンパク質の細胞内局在を見ると、PIN1は液胞と細胞膜に局在し、PIN2は細胞膜に局在していた。しかし、シュートを暗黒下におくと、PIN1は完全に細胞膜から消失して液胞にのみ局在し、PIN2も細胞膜の局在量が減少して液胞に移っていった。よって、光によるPINタンパク質の局在変化は、根で自律的に起こるのではなく、シュートからのシグナルによって制御されているいることが示唆される。黄化芽生えの根の表現型は、茎頂の切除や胚軸へのオーキシン極性輸送阻害剤NPA処理といったことで茎頂からのオーキシン供給が絶たれた芽生えの根と類似している。よって、暗黒処理はシュートから根へのオーキシン極性輸送が阻害されているとこが考えられる。オーキシンによって分解されるDII-VENUSオーキシンセンサーを用いてオーキシンの分布を観察すると、明所で育成した芽生えの胚軸ではDII-VENUSの蛍光は観察されないが、黄化芽生え胚軸ではDII-VENUS蛍光の勾配が見られ、胚軸基部での蛍光が強くなっていた。また、黄化芽生えのRAMのDII-VENUS蛍光は明所で育成したものよりも強くなっていた。オーキシン誘導プロモーターDR5 制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した個体を用いた観察においても、黄化芽生えの地上組織では強いGUS活性が見られ、RAMでのGUS の発現も黄化芽生えでは明所育成芽生えよりも弱くなっていた。以上の結果から、黄化芽生え胚軸ではシュートから根へのオーキシン極性輸送が減少して、RAMのオーキシン量が減少していることが示唆される。胚軸で発現しているPIN 遺伝子はPIN1PIN3PIN7 の3種類あるが、PIN1 の発現は黄化芽生え胚軸で大きく減少していることがわかった。したがって、光によるシュートから根へのオーキシン極性輸送は胚軸でのPIN1 遺伝子の発現量によって制御されていることが示唆される。明所で育成した野生型およびpin1 変異体芽生えの胚軸をNPA処理すると、野生型では根長が短くなりRAMが小さくなるが、pin1 変異体での根長やRAMの変化は僅かであった。また、pin1 変異体のRAMの大きさはNPA処理した野生型植物のものと同程度であった。よって、PIN1 を介したシュートから根へのオーキシン極性輸送がRAMのサイズを制御していることが示唆される。RAMではPIN1PIN2PIN3PIN4PIN7 が発現し、明所での根の成長に対して冗長的に作用していることが知られているが、変異体を用いた実験から、PIN1PIN2 が光条件に応答した根の成長制御にとって重要であることがわかった。暗黒処理した根ではPIN1とPIN2の細胞膜局在と絶対量が変化するが、PIN1PIN2 の転写に変化は見らなかった。よって、この変化は転写制御によるものではないと考えられる。オーキシンはPINタンパク質の細胞内局在と安定性を制御することが知られていることから、明所育成芽生えの胚軸をNPA処理したところ、RAMにおいてPIN2の細胞膜局在が大きく減少し、PIN1も減少が見られた。したがって、暗黒処理によって胚軸でのPIN1 活性の低下が根のオーキシン量の低下を招き、これが細胞膜のPIN1、PIN2量の減少、根の成長抑制をもたらしていると考えられる。RING E3 ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は光形態形成の抑制に関与しており、cop1 変異体芽生えの根は、明所で育成した場合は野生型よりも短いが、暗黒下で育成した場合は野生型よりも長くなる。cop1 変異体のRAMは光条件に関係なく野生型よりも大きい。したがって、COP1は光に応答した根の成長制御にとって重要であることが示唆される。cop1 pin1 二重変異体の根は光条件に関係なくcop1 単独変異体よりも短く、RAMも小さいが、暗黒下で育成したpin1 単独変異体の根よりも長く、RAMも大きい。よって、cop1 変異とpin1 変異の組合せは光条件による根の成長制御が部分的に回復していることが示唆される。同様の傾向はcop1 変異とpin2 変異との間にも見られ、COP1、PIN1、PIN2は互いに光による根の成長制御に関与していると考えられる。黄化芽生え胚軸でのPIN1 の発現は明所で育成した芽生えよりも大きく減少するが、cop1 変異体ではPIN1 発現は維持され、明所で育成した芽生えと同等であった。よって、COP1は黄化芽生え胚軸でのPIN1 の転写を抑制し、シュートから根へのオーキシン極性輸送と根の成長の阻害に関与していると思われる。暗黒下で育成してPIN1 の発現量が低下した個体にNPA処理をしても無処理個体と比べて根長やRAMの大きさに違いは見られない。一方、暗黒下で育成したcop1 変異体芽生えをNPA処理すると、無処理個体と比べて根の成長は強く阻害されるが、RAMの大きさに違いは見られなかった。よって、NPAはcop1 変異体胚軸でのシュートから根へのオーキシン極性輸送を阻害していると考えられる。また、COP1はRAMの大きさの制御にも関与していると考えられる。cop1 変異体では暗黒処理によるRAMでのPIN1の細胞内局在変化が見られず、PIN1の細胞膜局在量も減少しなかった。また、cop1 変異体では暗黒処理によるPIN2の液胞局在が抑制された。よって、COP1は暗黒処理によるRAMでのPIN1およびPIN2の局在変化を制御していると考えられる。暗黒下でPIN2はユビキチン化され液胞で分解されるが、cop1 変異体ではPIN2の分解が抑制されており、COP1はPIN2の安定性に関与していることが示唆される。以上の結果から、COP1はシュートでのPIN1 転写の制御と根でのPIN1、PIN2の細胞内局在を制御することで根へのオーキシン輸送を制御し、光シグナルによる根の成長制御を行なっていると考えられる。

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論文)アブシジン酸シグナルを負に制御するレセプターキナーゼ

2012-09-20 22:19:47 | 読んだ論文備忘録

FERONIA receptor kinase pathway suppresses abscisic acid signaling in Arabidopsis by activating ABI2 phosphatase
Yu et al.  PNAS (2012) 109:14693-14698.
doi:10.1073/pnas.1212547109

レセプター様タンパク質キナーゼ(RLK)は細胞外レセプタードメインと細胞質Ser/Theキナーゼドメインで構成されており、植物ホルモンや環境因子に応答してシグナル伝達を行なう。米国 カリフォルニア大学バークレー校Luan らは、シロイヌナズナ芽生えにおいてRLKの1種をコードするFERONIAFER )の発現がオーキシン処理によって増加し、アブシジン酸(ABA)処理によって減少することを見出し、このRLKについて詳細な解析を行なった。fer 変異体種子は通常の条件下では正常に発芽成長し、野生型との差異は認められないが、野生型では正常に芽生えが成長する濃度のABA存在下で発芽させると、著しい成長遅延を示して芽生えが茶色に変色し、ABAによる成長阻害が非常に強くなった。また、切り取ったロゼット葉を用いて気孔の開閉試験を行なったところ、fer 変異体の気孔開口は野生型よりもABA感受性が高いことがわかった。過去の報告でFERが活性酸素種(ROS)の蓄積に関与していることが示されており、ROSはABAシグナル伝達において第二メッセンジャーとして機能することが知られている。fer 変異体の孔辺細胞はROS量が野生型よりも高く、ABA処理によってROS量が著しく増加した。よって、fer 変異体のABA高感受性は、野生型よりもROS生成量が多いことによると考えられる。FERはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)と直接相互作用をしてオーキシンに応答したGTPase(ROP/ARAC)の活性化に関与すること、ROP10やROP6といった幾つかのROPはABA応答を負に制御することが知られている。よって、FERはROP/ARACの活性化を介してABA応答性を制御していることが推測される。酵母two-hybrid アッセイによる調査を行なったところ、ROP11/ARAC10はFERと相互作用をするGEFのGEF1、GEF4、GEF10と相互作用をするだけでなく、ABAシグナル伝達経路の因子の1つであるA-タイプPP2CのABI2とも相互作用をすることを見出した。また、ABI2はGTP-結合型の活性型ROP11/ARAC10と相互作用することがわかった。したがって、ROP11/ARAC10はFER-GEFによって活性化された後にABI2と相互作用し、FER経路とABAシグナル伝達の間のクロストーク機構として機能していることが示唆される。ROP10とROP11/ARAC10はアミノ酸配列が類似しており、どちらもABA応答に関与しているが、ROP10はABI2と相互作用を示さなかった。よって、ROP10は別のパートナータンパク質やシグナル伝達経路を介してABA応答の制御していると思われる。実際、ROP10およびROP11に変異の生じた植物はどちらもABA感受性が高くなるが、両者は機能重複はしていない。ROP11/ARAC10 は孔辺細胞やその他の組織において強く発現しており、この発現パターンはFERGEF1 の発現パターンと一致していた。ROP11/ARAC10はABI2のフォスファターゼ活性を活性化することが確認されたことから、ROP11/ARAC11はABAシグナル伝達の負の制御因子であるABI2を活性化することでABAシグナル伝達を阻害していると考えられる。rop11/arac10 変異体は、fer 変異体と同様に、種子発芽、芽生えの成長、気孔の開口においてABAに対する感受性が高くなっていた。また、gef1 gef4 二重変異体やger1 gef4 gef10 三重変異体もABAに対する感受性が高くなっていた。したがって、これらのGEFはFERやROP11/ARAC10と相互作用をしてFERシグナルをABAに対する応答へ伝達していると考えられる。以上の結果から、FER-RopGEF-ROP/ARACモジュールはABA応答を負に制御し、オーキシンシグナルとABA応答との間の拮抗的な作用におけるクロスートークの接点として機能していると考えられる。

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