Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)シュート再分化時のオーキシンとサイトカイニンのクロストーク

2013-02-08 20:37:55 | 読んだ論文備忘録

Pattern of Auxin and Cytokinin Responses for Shoot Meristem Induction Results from the Regulation of Cytokinin Biosynthesis by AUXIN RESPONSE FACTOR3
Cheng et al.  Plant Physiology (2013) 161:240-251.
doi:10.1104/pp.112.203166

カルスからの器官の再分化にはオーキシンとサイトカイニンが関与しているが、両者の相互作用の分子機構については不明な点が残されている。中国 山東農業大学Zhang らは、シロイヌナズナの雌ずいをオーキシンを含むカルス誘導培地(CIM)で培養して生じたカルスをサイトカイニンを含むシュート誘導培地(SIM)に移植し、再分化過程の分子機構を解析した。GFPをオーキシン応答プロモーターDR5rev 制御下で発現させたカルスは、周縁部に均一にGFPシグナルが見られる。カルスをSIMに移植すると、幹細胞の誘導が始まっていない2日目でシグナルは外側の細胞層の特定の領域に移動し、4日目には幹細胞の誘導に関与するWUSCHELWUS )の発現の高い領域の頂端の周縁に環状にシグナルが局在していた。シュート分裂組織が形成されるSIM移植6日目では、GFPシグナルはWUS 発現領域の頂端部に見られた。したがって、幹細胞誘導からシュート分裂組織形成の間のオーキシン応答の分布は、WUS 発現領域とは相容れないことが示唆される。サイトカイニン応答合成プロモーターTCS 制御下でGFPを発現させたカルスでは、GFPシグナルの見られる領域はオーキシン応答と一致していたが、SIMに移植した後にはWUS 発現領域と一致するようになった。以上の結果から、シュートを誘導する前の段階ではサイトカイニン応答領域とオーキシン応答領域は一致いているが、SIM移植4日目ではオーキシン応答領域はリング状となり、サイトカイニン応答領域はリングの中心のWUS 発現部位へ移行しており、シュート分裂組織が形成される過程で両者の応答領域は分かれることがわかった。オーキシン応答領域は、オーキシンの局所的な生合成か輸送の結果生じると考えられる。シュート誘導時のYUCCAYUC )遺伝子の発現を見たところ、YUC1YUC4 の転写産物量が増加しており、これらを介したオーキシン生合成がオーキシン応答領域の分布に関与していると考えられる。オーキシン排出キャリアのPIN1はSIM移植前は極性をもった膜局在をしていなかったが、SIMでの培養が進むにつれてWUS が発現している領域の頂端部の外側の細胞層において極性をもった分布が見られるようになった。SIMに移植したカルスにオーキシン輸送阻害剤のNPAを処理すると、オーキシン応答領域やWUS 発現領域は未分化カルスと同じような状態となった。また、yuc1 yuc4 二重変異体やPIN1 をアンチセンス抑制したカルスは再分化効率が低下していた。したがって、新規のシュート再分化には局所的なオーキシン生合成とオーキシン輸送が重要であることが示唆される。SIMでの培養の間のサイトカイニン合成酵素遺伝子ATP/ADP ISOPENTENYL TRANSFERASEAtIPT )の発現を見たところ、AtIPT3AtIPT5AtIPT7 が上昇していることがわかった。AtIPT5 の発現部位について詳細に調査したところ、誘導前のカルスでは細胞表層全体で発現が見られたが、SIMでの培養が進むにつれて前分裂組織以外での発現が消失していった。AtIPT の変異体は再分化効率が低く、AtIPT によるサイトカイニン生合成は新規のシュート再分化にとって重要であることが示唆される。PIN1 の発現抑制とNPA処理は、SIM培養によるサイトカイニン応答領域の形成を乱し、NPA処理はSIM培養時のWUS の発現やAtIPT5 発現領域の局在化を抑制した。したがって、サイトカイニン応答領域の形成やサイトカイニン生合成は、オーキシンの極性輸送、おそらく正しいオーキシン応答領域の形成に依存していると考えられる。SIM移植4日目の幹細胞の誘導が始まったカルスの内生オーキシン量は移植前の未分化カルスよりも高く、このオーキシン量の増加はオーキシン生合成遺伝子の発現量増加と関連していると考えられる。SIMでの培養の間にオーキシン応答因子のAUXIN RESPONSE FACTOR3ARF3 )の発現量が上昇しており、その発現パターンはオーキシン応答領域と類似していた。ARF3 の変異体であるarf3/ett のカルスは再分化効率が低く、AtIPT との二重変異体ett atipt5 の再分化効率はett 単独変異体よりも僅かに低くなっていた。ARF3は転写抑制因子として機能しているが、ARF3以外の転写抑制因子として機能するARFはシュートの再分化に影響を及ぼしていなかった。したがって、ARF3は新規シュート再分化時のオーキシン応答における重要な因子であると考えられる。arf3 変異体カルスでは、SIM移植後のAtIPT5 発現部位の前分裂組織局在が見られず、カルス表面で一様に発現していた。よって、ARF3は高オーキシン応答領域でのAtIPT5 の発現を抑制していると考えられる。AtIPT5 遺伝子プロモーター領域のオーキシン応答エレメント(AuxRE)に変異を導入したプローモーターにレポーターとしてGUS 遺伝子を接続したコンストラクトを導入したカルスは、GUS活性がカルス表面で一様に見られるが、SIM移植後のGUS活性部位の局在化は起こらなかった。また、ARF3はAtIPT5 プロモーター領域に直接結合することが確認された。以上の結果から、ARF3によるAtIPT 遺伝子の発現抑制によってサイトカイニン生合成部位が限定されることがシュート再分化を誘導しており、ARF3はオーキシンとサイトカイニンのクロストークにおいて重要な役割を演じていると考えられる。

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論文)転写メディエーターによる根毛形成の制御

2013-02-04 15:52:59 | 読んだ論文備忘録

PFT1, a transcriptional Mediator complex subunit, controls root hair differentiation through reactive oxygen species (ROS) distribution in Arabidopsis
Sundaravelpandian et al.  New Phytologist (2013) 197:151-161.
doi: 10.1111/nph.12000

転写メディエーターはRNAポリメラーゼIIと転写因子とを架橋して転写開始を誘導し、様々な成長過程を調節している。台湾 中央研究院 植物及微生物學研究所Schmidt らは、シロイヌナズナのメディエーターサブユニット遺伝子のT-DNA挿入系統における根毛の形態を観察し、2つのメディエーターサブユニット、MED8とMED25のT-DNA挿入変異体において根毛の数と長さが減少することを見出した。MED25は以前にPHYTOCHROME AND FLOWERING TIME1(PFT1)として報告されており、ジャスモン酸を介した防御応答遺伝子の発現に関与していることが知られている。mad8 pft1 二重変異体は根毛形成の抑制に対して相加的に作用し、両変異は独立して機能していることが示唆される。pft1 変異体と野生型植物の間では発現量の異なる遺伝子が304個存在し、大部分の遺伝子(261)はpft1 変異体で転写産物量が減少していた。これらの遺伝子の中には酸化還元に関与するものが含まれており、pft1 変異体では13のクラスIIIパーオキシダーゼ遺伝子の発現量が減少していた。また、4つのクラスIIIパーオキシダーゼ遺伝子と3つのNADPHオキシダーゼ遺伝子の転写産物量が野生型よりも高くなっていた。これらのPFT1によって制御を受けるクラスIIIパーオキシダーゼ遺伝子とNADPHオキシダーゼ遺伝子は主に根毛領域で発現していることから、PFT1は活性酸素種シグナルを制御して根毛形成に関与していることが示唆される。pft1 変異体の根では過酸化水素量が減少しスーパーオキシド量が増加していた。よって、PFT1は根における活性酸素種のバランス維持に関与していると考えられる。pft1 変異体の根を過酸化水素もしくはパーオキシダーゼ阻害剤のKCN処理をすると根毛形成が回復したことから、過酸化水素の量もしくは分布が根毛形成にとって重要であることが示唆される。また、NADPHオキシダーゼ阻害剤のジフェニレンヨードニウム(DPI)処理をしてスーパーオキシド量を減少させると根毛形成が回復した。以上の結果から、PFT1は根における活性酸素種の分布を制御することで根毛の分化を調節していると考えられる。

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論文)断続的な低温ストレスによる花成遅延

2013-01-31 20:06:58 | 読んだ論文備忘録

The E3 Ubiquitin Ligase HOS1 Regulates Arabidopsis Flowering by Mediating CONSTANS Degradation Under Cold Stress
Jung et al.  JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (2012) 287:43277-43287.
DOI:10.1074/jbc.M112.394338

シロイヌナズナに断続的な低温処理(1日に数時間の4℃処理)をすると花成遅延を起こす。花成抑制因子FLOWERING LOCUS CFLC )の欠損変異体の花成は断続的低温処理による影響を受けないことから、この過程にFLC が関与していると考えられるが、断続的低温処理によるFLC の発現誘導は遅いことから、低温処理にすぐに応答するFLC 以外の因子が存在すると推測される。韓国 ソウル大学校Park らは、断続的低温処理による花成遅延の分子レベルでの解析を行なった。シロイヌナズナを16時間の長日条件で育成し、明期の後半6時間に4℃の低温処理をすると花成遅延が起こる。この時、花成を促進するCONSTANSCO )やSUPPRESSOR OF EXPRESSION OF CO 1SOC1 )の発現は誘導されるが、FLOWERING LOCUS TFT )の発現は抑制されていた。また、FT mRNAの日変化も見られなくなっていた。よって、断続的低温所処理による花成遅延はFT の発現抑制によるものであることが示唆される。断続的低温処理によるFT の発現抑制は日長花成誘導の変異体gi-2co-101 では見られないことから、この過程には日長感応花成誘導経路が関与していると考えられる。断続的低温処理は花成抑制因子のTARGET OF EAT1TOE1 )の発現を誘導するが、toe1-2 機能喪失変異体においてもFT の発現は抑制されているので、FTTOE1 とは独立して低温処理による花成制御に関与していると考えられる。CO を35Sプロモーターによって恒常的に過剰発現させた形質転換体を低温処理するとCOタンパク質量が急激に減少し、低温から常温に戻すことによってCOタンパク質量は増加した。一方、これらの処理によるCO mRNA量の変化は見られなかった。よって、低温ストレスはCOタンパク質量の減少を引き起こしていることが示唆される。低温条件でのCO 転写産物量は、COタンパク質量の減少を相補するフィードバック制御によって増加していると考えられる。低温ストレスによるCOタンパク質量の変化は、プロテアソーム阻害剤のMG132を処理することによって打ち消されることから、COタンパク質は低温ストレスによってユビキチン/プロテアソーム系によって分解されることが示唆される。実際に、低温ストレスによってポリユビキチン化されるCOタンパク質量は増加しており、低温ストレス時にMG132を添加することでCOタンパク質量が増加するとFT の発現量も増加した。よって、低温ストレス下でのユビキチン/プロテアソーム系を解したCOの分解がFT の発現抑制をもたらしていることが示唆される。断続的低温処理をした際に、FLC の発現に変化は見られないことから、低温ストレスによるFT の発現抑制はFLCとは独立したものであると考えられる。FT を過剰発現させた個体では断続的低温処理による花成遅延が起こらないことから、低温処理によるCOタンパク質量の変化が花成遅延をもたらしていると考えられる。暗黒期のCOタンパク質の分解には、E3ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)が関与していることが知られている。明所で低温処理をした際のCOタンパク質の減少は、常温で暗黒処理をした場合よりも緩やかであることから、COタンパク質量の変化に対する暗黒処理の効果は低温処理よりも勝っていることが示唆される。常温において、COタンパク質は夜明けと共に増加し、夕方にピークとなるが、低温では、夜明けに増加した後に基底レベルにまで減少した。低温ストレスによるCOタンパク質量の変化は、光の波長を変えても起こり、光受容体の変異体でも見られることから、低温によって誘導されるCOタンパク質の分解は光条件には依存していないとことが示唆される。cop1 変異体においても低温処理によるCOタンパク質の分解やFT の発現抑制が見られることから、この過程にはCOP1は関与していないと考えられる。RINGフィンガーE3ユビキチンリガーゼのHIGH EXPRESSION OF OSMOTICALLY RESPONSIVE GENE 1(HOS1)は、日中のCOタンパク質の分解に関与しており、hos1 変異体は花成促進されることが知られている。また、HOS1は低温ストレス応答に関与していることが報告されている。常温において、hos1-3 変異体のCOタンパク質量は野生型の2倍程度になっており、低温ストレスによるCOタンパク質のユビキチン化や分解が抑制されていた。よって、低温ストレスによるCOのユビキチン化にHOS1が関与していることが示唆される。HOS1はPHYTOCHROME B(PHYB)を介した光シグナルに応答してCOタンパク質の分解を誘導することが知られている。hos1 変異体では低温ストレスによるCOタンパク質の分解が抑制されているが、phyB 変異体での抑制効果は僅かであることから、低温処理によるCOタンパク質量の変化にPHYBは関与していないと考えられる。以上の結果から、断続的低温処理に応答してHOS1がCOタンパク質を分解し、花成遅延が起こると考えられる。

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論文)bHLHタンパク質による細胞伸長の制御

2013-01-29 20:04:46 | 読んだ論文備忘録

A Triantagonistic Basic Helix-Loop-Helix System Regulates Cell Elongation in Arabidopsis
Ikeda et al.  The Plant Cell (2012) 24:4483-4497.
doi:10.1105/tpc.112.105023

植物の細胞伸長はさまざまな因子によって制御されている。PREサブファミリーに属するbHLHタンパク質のPACLOBUTRAZOL RESISTANCE1(PRE1)は、ジベレリンによって発現誘導され、細胞伸長に対して促進的に作用する。また、bHLHタンパク質のILI1 binding bHLH1(IBH1)は細胞伸長に対して抑制的に作用し、IBH1 を異所的に発現させたシロイヌナズナはわい化する。ブラシノステロイド(BR)シグナル伝達に関与しているBRASINAZOLE-RESISTANT1(BZR1)はPRE1 の発現を活性化し、IBH1 の発現を抑制する。IBH1 過剰発現個体でPRE1 を過剰発現させると、わい化する表現型が抑制されることから、PRE1はジベレリンおよびBRシグナルに応答してIBH1による細胞伸長抑制を阻害していることになるが、その詳細な分子機構は明らかではない。独立行政法人 産業技術総合研究所の高木らは、CRES-T 法を用いて細胞伸長制御機構の解析を行なった。SRDXリプレッションドメインを付加したIBH1IBH1-SRDX )を恒常的に発現させた形質転換シロイヌナズナ(Pro35s:IBH1-SRDX )は、わい化し、葉が丸みを帯び、葉色が濃くなり、葉柄、長角果、根が短くなり、側根が減少した。この表現型はBR非感受性変異体であるbri1 と類似しており、暗所育成芽生えの胚軸伸長も抑制されていた。この形質転換体のわい化は細胞伸長が抑制されているために起こっていた。形質転換体芽生えをブラシノライド(BL)処理をしても胚軸伸長が起こらないことから、この個体はBR非感受性となっていることが示唆される。この形質転換体ではXTH 遺伝子やEXP 遺伝子のBL処理による発現量の増加が起こらず、IBH1はBRによる遺伝子発現も制御していることが示唆される。IBH1 を恒常的に発現させた形質転換シロイヌナズナ(Pro35s:IBH1 )は、Pro35s:IBH1-SRDX 個体と同じ表現型を示すことから、IBH1は転写抑制因子として機能していると考えられる。IBH1 のRNAiをIBH1 プロモーター制御下で発現させた個体(ProIBH1:IBH1RNAi )は、Pro35s:IBH1-SRDX 個体やPro35s:IBH1 個体とは逆の表現型を示し、野生型よりも大型化し、胚軸や葉が長くなり、EXP8 遺伝子の発現量が増加していた。よって、IBH1は転写抑制因子として機能してBRシグナル伝達と器官伸長を負に制御していると考えられる。IBH1タンパク質のアミノ酸配列にはリプレッションドメインに分類されるようなモチーフが見られない。したがって、IBH1は受動的な抑制因子として機能していると考えられる。一般的に、受動的抑制因子は直接的な抑制活性を有しておらず、他の転写因子とシスエレメントへの結合を競合して機能している。しかしながら、IBH1タンパク質はDNAに直接的にも間接的に結合しないことがわかった。また、IBH1タンパク質のbHLH領域は典型的なbHLHタンパク質とは異なっており、bHLHタンパク質がDNAのE-box(CAGCTG)やG-box(CACGTG)に結合するために必要なアミノ酸残基が欠けていた。このようなDNA非結合型のbHLHタンパク質は、他のbHLH型転写因子とヘテロ二量体を形成することが知られている。そこで、酵母two-hybrid 法によってIBH1タンパク質と相互作用をする転写因子の探索を行なったところ、22の陽性クローンが得られ、このうち16はbHLH型転写因子をコードしていた。この中には、bHLH049、bHLH074、bHLH077といった転写因子や、PREサブファミリーのPRE1、PRE3、PRE4、PRE5が含まれていた。系統樹解析によると、bHLH049、bHLH074、bHLH77は同じサブファミリーに属しており、このサブファミリーに属する12のbHLHタンパク質についてIBH1との相互作用を見たところ、CRYPTOCHROME INTERACTING BASIC-HELIX-LOOP-HELIX1(CIB1)とCIB5もIBH1と相互作用をすることがわかった。さらにBiFCアッセイによって、bHLH049、bHLH074、bHLH077、CIB5はIBH1と核でヘテロ二量体を形成することがわかった。そこで、bHLH049、bHLH074、bHLH077をそれぞれACTIVATOR FOR CELL ELONGATION1(ACE1)、ACE2、ACE3と命名した。ACEとCIB5にSRDXリプレッションドメインを付加して恒常的に発現させたところ、ACE1-SRDXACE2-SRDXCIB5-SRDX を発現させた個体はPro35s:IBH1-SRDX 個体やPro35s:IBH1 個体と類似した表現型を示し、ACE3-SRDX を発現させた個体は野生型と類似した表現型を示した。ACE およびCIB5 を恒常的発現させた個体は胚軸が僅かに長くなり、ACE1ACE2CIB5 を発現させた個体の子葉は細長く、葉色が淡くなって、Pro35s:IBH1-SRDX 個体やPro35s:IBH1 個体とは逆の表現型を示した。ACE1CIB5 を発現させた個体の花弁とがく片は野生型よりも大きくなり、IBH1 を発現させた個体の花は野生型よりも小さくなった。ACE1CIB5 を発現させた個体での花弁の拡大は、細胞伸長が増加したことによるものであった。したがって、ACE1、ACE2、CIB5は転写活性化因子として機能し、細胞伸長を正に制御していることが示唆される。ACE1タンパク質がCIB1結合エレメント(CIBE)に結合することを指標として、IBH1がACE1の活性に対してどのように影響しているのかを見たところ、IBH1はACE1の転写活性化活性を阻害するが、CIBEへの結合に対してACE1と競合はしていなことがわかった。また、ゲルシフトアッセイからもIBH1は添加する濃度に応じてACE1-CIBE複合体形成を抑制し、IBH1自身はCIBEに結合しないことが確かめられた。これらの結果から、IBH1はACE1とヘテロ二量体を形成することでACE1のCIBEへの結合を阻害していると考えられる。PRE1は細胞伸長の正の調節因子として機能し、IBH1と相互作用をすることが知られている。IBH1がACE1の転写活性化活性を抑制する際に、同時にPRE1が存在するとACE1の活性が回復した。よって、PRE1はIBH1のACE1に対する負の効果を相殺していると考えられる。ゲルシフトアッセイの結果から、PRE1およびPRE1-IBH1複合体はCIBEに結合しないこと、PRE1はACE1-CIBE複合体と相互作用をしないことがわかった。また、PRE1とACE1は相互作用をしないことが確認された。これらの結果から、PRE1はIBH1のACE1に対する負の効果を阻害することでACE1の活性を促進していると考えられる。ACE1はEXP8 遺伝子プロモーター領域のG-box様エレメントに結合し、EXP8 の発現を直接活性化するが、この活性化はIBH1によって抑制させれ、IBH1による抑制活性はPRE1によって阻害された。したがって、EXP8 の発現は3種類のbHLHタンパク質、典型的なbHLH型転写活性化因子であるACE1と2種類のDNA非結合bHLH型阻害因子のIBH1とPRE1によって制御されていると考えられる。BRはIBH1 の発現を抑制しているが、ACE1CIB5ACE2 の発現はBR処理によって変化することはなかった。したがって、BRはBZR1を介したIBH1 の発現抑制によって細胞伸長を誘導していると考えられる。野生型植物でのIBH1 の発現は、茎の基部、完全に展開した古い葉や長角果といった成長の止まった器官で高くなっていた。PRE1 の発現は、IBH1 とは逆に、伸長過程にある器官において高くなっていた。ACECIB5 の発現パターンには、成長過程やIBH1 の発現量との相関は見られなかった。以上の結果から、細胞伸長はbHLHタンパク質による三敵対的な機構によって制御されていると考えられる。bHLH型転写活性化因子のACEやCIB5は細胞伸長に関与する遺伝子の発現を直接活性化することで細胞伸長を促進している。IBH1はACEとヘテロ二量体を形成してACEのG-box結合を抑制することで細胞伸長を負に制御している。PRE1はIBH1とヘテロ二量体を形成してIBH1によるACE活性の阻害を抑制し、細胞伸長を正に制御している。ジベレリンやブラシノライドのシグナルによる細胞伸長もこれらのbHLHタンパク質を介してなされていると思われる。

産業技術総合研究所のプレスリリース

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論文)水ストレスによる根の成長変化

2013-01-24 22:26:31 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid accumulation modulates auxin transport in the root tip to enhance proton secretion for maintaining root growth under moderate water stress
Xu et al.  New Phytologist (2013) 197:139-150.
doi: 10.1111/nph.12004

根は水分の欠乏を根端部で感知すると、主根の伸長や根毛の発達を促進させる。この過程には、ストレス応答に関与するアブシジン酸(ABA)や根の伸長に関与するオーキシンが関わっていると考えられる。香港中文大學Zhang らは、イネおよびシロイヌナズナの水耕栽培液にポリエチレングリコール8000(PEG)を加えて水ストレスを与えたりABAを添加したりすると、主根の伸長が促進され、細胞膜プロトンATPアーゼの活性が上昇してプロトン放出量が増加し、根毛密度が高まり、内生ABA量が増加すること、ABA生合成阻害剤のフルリドンを添加するとこれらの応答が抑制されることを見出した。シロイヌナズナのABA生合成変異体aba3-1 をPEGもしくはABA処理した際の主根の伸長速度、プロトンATPアーゼ活性、根毛密度、プロトン放出は、野生型よりも低くなっていた。PEGやABA処理をする際にオーキシン輸送阻害剤であるCHPAAやNPAを同時に添加したところ、主根の伸長等の水ストレス応答が抑制された。更に、シロイヌナズナをPEGやABA処理をするとオーキシンキャリアをコードするAUX1PIN2 の転写産物量が増加すること、AUX1PIN2 の機能喪失変異体は野生型と比較して水ストレス応答が低下していることがわかった。シロイヌナズナ細胞膜プロトンATPアーゼに欠損が見られるaha2 変異体の水ストレス応答は野生型よりも低下しているが、CHPAAやNPAを添加した際には野生型との有意差は見られなくなった。PEGやABA処理をしたシロイヌナズナ根端部のオーキシン含量は野生型と同等であったが、これらの処理をすることで、オーキシンの分布が根端部から表皮細胞や皮層細胞へと広がり、求基的なオーキシン輸送量が増加しした。以上の結果から、水分欠乏によって引き起こされた根端分でのABA蓄積がオーキシン輸送を増加させ、その結果、細胞膜プロトンATPアーゼの活性化とプロトン放出、根の伸長、根毛発達が起こると考えられる。

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論文)ブラシノステロイドシグナルによる器官の境界領域形成制御

2013-01-22 20:18:59 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis LATERAL ORGAN BOUNDARIES negatively regulates brassinosteroid accumulation to limit growth in organ boundaries
Bell et al.  PNAS (2012) 109:21146-21151.
doi:10.1073/pnas.1210789109

Brassinosteroids regulate organ boundary formation in the shoot apical meristem of Arabidopsis
Gendron et al.  PNAS (2012) 109:21152-21157.
doi:10.1073/pnas.1210799110

ブラシノステロイド(BR)シグナルによる器官の境界領域形成に関する論文が、PNAS 2012年12月18日号(No. 51)に2報掲載された。

米国 カリフォルニア大学リバーサイド校 植物生物学センターSpringer ら(PNAS 109:21146-21151)は、シロイヌナズナの植物特異的な転写因子をコードするLATERAL ORGAN BOUNDARIESLOB )が器官の境界部分で発現することに着目して機能解析を行なった。lob 機能喪失変異体は茎生葉と脇茎の境界部分が融合しており、融合領域の細胞は野生型植物よりも大きくなっていた。よって、lob 変異体は器官の境界領域が拡張もしくは過成長しているために器官の分離が見られないものと思われる。LOBタンパク質にグルココルチコイド受容体ホルモン結合ドメインを融合したタンパク質(LOB-GR)を35Sプロモーター制御下で発現する形質転換体(35S:LOB-GR )は、デキサメタゾン(DEX)存在下で育成するとわい化し、不稔となった。この表現型はBRの蓄積もしくは応答の欠損した変異体と類似していることから、この形質転換体のBR応答性について調査した。DEX処理した35S:LOB-GR 暗所発芽芽生えは、フックが形成されず、胚軸が無処理個体よりも短くなった。この表現型はepi-ブラシノライド(BL)を添加した培地で発芽させても回復しなかった。培地に添加するBL量を増やすと、濃度に応じて胚軸が長くなっていったが、DEX無処理の形質転換体では、野生型と同様に、BL濃度が上昇するにつれて胚軸伸長が抑制された。DEX処理した35S:LOB-GR 芽生えは、BR応答遺伝子(TCH4SAUR-AC1 )の発現誘導が減少していた。したがって、異所的なLOB活性はBRに対する感受性の低下をもたらしていることが示唆される。35S:LOB-GR 個体に恒常的にBR応答性を示すbzr1-1d 変異を導入した暗所発芽芽生えをDEX処理すると、フック形成に関しては35S:LOB-GR 個体と同様に抑制されたが、胚軸は35S:LOB-GR 個体よりも長くなった。また、DEX存在下で明所育成した35S:LOB-GR bzr1-1d 個体は35S:LOB-GR 個体よりも大きくなった。よって、bzr1-1d 変異は35S:LOB-GR 個体の成長を部分的に回復させており、35S:LOB-GR 個体の表現型はBR応答性の低下によって引き起こされること、LOBBZR1 よりも上流で作用していることが示唆される。芽生えをBR処理することによって境界領域でのLOB 転写産物量の増加が観察された。35S:LOB-GR 個体をDEX処理することによって288の遺伝子に発現量の変化が見られ、これらの遺伝子の大部分にLOBタンパク質が結合するLBDモチーフに類似した配列が見られた。LOBによって制御される転写産物の6割はBRによる制御を受ける遺伝子であることが報告されていることから、LOBはBR応答の制御に関与していることが推測される。BRを不活性化するP450酵素をコードしているBR応答遺伝子のPHYB ACTIVATION TAGGED SUPPRESSOR1BAS1 )の転写産物量は35S:LOB-GR 個体をDEX処理することによって増加し、この増加はタンパク質合成阻害剤のシクロヘキシミド存在下でも起こった。また、BAS1 転写産物量はlob 変異体では減少していた。BAS1 のプロモーター領域にはLBDモチーフに類似した配列が2箇所あり、LOBタンパク質がこの領域と相互作用をすることがわかった。BAS1LOB の発現部位は期間の境界領域で重複していることから、LOBは直接BAS1 の発現を制御していると考えられる。lob 変異体でBAS1LOB プロモーター制御下で発現させると、器官が融合するlob 変異体の表現型が回復した。よって、lob 変異体でのBRシグナルの増加が器官融合を引き起こしていると考えられる。bas1 機能喪失変異体では器官の融合が見られないことから、BAS1 の減少だけではlob 変異体のような器官融合は起こらないと考えられる。

米国 カーネギー研究所Wang ら(PNAS 109:21152-21157)は、シロイヌナズナBR高感受性変異体bzr1-1D では茎が分枝と茎生葉が接合している部分で側生器官側に屈曲することを見出した。また、BR欠損変異体det2-1 の茎では分枝とは反対側の方向に屈曲し、この傾向はbri1-5bin2-1 といったBRシグナル変異体においても見られた。bzr1-1D 変異体での茎の屈曲は茎生葉と分枝が主茎と融合していることによって生じており、det2-1 変異体等では主茎と分枝の間に深い裂け目が見られた。bzr1-1D 変異体の主茎と側生器官との接合部は境界が不明瞭で、側生器官基部の細胞が肥大していた。bzr1-1D 変異体は長角果も柄の部分で屈曲しており、この屈曲は雄ずいと心皮との融合によって生じていた。また、bzr1-1D 変異体では子葉の融合もしばしば見られた。したがって、bzr1-1D 変異体では様々な器官の境界領域に異常が見られる。BR生合成酵素をコードするDWF4 の過剰発現個体は器官の融合を起こし、bzr1-1D 変異が加わることでこの表現型が強まった。また、野生型植物の一次花序をBR処理すると雄ずい同士の融合が起こった。よって、bzr1-1D 変異体の器官融合は、BRシグナルの増加によって器官の境界部分で不適切な細胞拡張や過成長が起こることによって引き起こされていることが示唆される。BR欠損変異体やBR非感受性変異体の茎が分枝とは反対側の方向に屈曲するのは、境界領域の成長が悪いために、側生器官の原基が中央の分裂組織から早い段階でもしくは効果的に分離するために起こるものと思われる。これらの結果から、BRシグナルが器官の境界領域の形成に密接に関与していることが示唆される。器官の境界領域で特異的に発現するCUC1CUC2CUC3LOF1 遺伝子の発現は、bzr1-1D 変異体では抑制されており、det2-1 変異体では活性化されていた。一方、CUCLOF とは経路の異なる境界領域特異的遺伝子のLOB の発現は、bzr1-1D 変異体では僅かに増加し、det2-1 変異体では抑制されていた。CUC 遺伝子の発現はBL処理によって抑制され、BR生合成阻害剤のブラシナゾール処理によって増加した。特にCUC3 の発現変化が顕著であることから、詳細な調査を行なったところ、BZR1はCUC3 遺伝子プロモーター領域に強く結合することがわかった。これらの結果から、BRはCUC1CUC2CUC3LOF1 遺伝子の発現を抑制し、少なくともCUC3 に関してはBZR1が直接CUC3 遺伝子プロモーター領域に結合して制御を行なっていると考えられる。分裂組織において、BZR1タンパク質は境界領域では検出されないが、BR非依存的にPP2Aによって脱リン酸化されるbzr1-1Dタンパク質は分裂組織全体に均一に分布していた。したがって、BZR1 は分裂組織において均一に発現いているが、器官の境界領域ではBRシグナルが弱いためにBZR1が不活性化されていると考えられる。以上の結果から、器官の境界領域でのBRシグナルの不活性化が境界領域の制御に関する遺伝子の発現を制御して境界の形成を引き起こしていると考えられる。

 

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論文)サリチル酸シグナル伝達に関与するメディエーターサブユニット

2013-01-18 05:55:45 | 読んだ論文備忘録

Non-Recognition-of-BTH4, an Arabidopsis Mediator Subunit Homolog, Is Necessary for Development and Response to Salicylic Acid
Canet et al.  The Plant Cell (2012) 24:4220-4235.
doi:10.1105/tpc.112.103028

サリチル酸(SA)は防御応答や成長制御のシグナル分子として機能している。SAシグナル伝達に関与する因子としては、NON-EXPRESSER OF PATHOGENESIS-RELATED GENE1(NPR1)が知られており、NPR1のパラログのNPR3、NPR4はSAとの結合能を有している。スペイン バレンシア工科大学のTornero らは、SAシグナル伝達に関与する新規因子を単離することを目的に、SAのアナログ物質であるベンゾチアゾール(BTH)に対して非感受性となるシロイヌナズナ変異体を単離し、解析を行なった。Non-Recognition-of-BTH4NRB4 )と命名した遺伝子座に変異のある単離された植物体はnpr1-1 変異体のようにBTHに対して非感受性であり、BTH存在下での成長抑制が起こらなかった。また、npr1 変異体芽生えは高濃度SA条件では成育できないが、nrb4 変異体も同様の傾向を示した。更に、病害応答性の低下についてもnrb4 変異体はnpr1 変異体と類似していた。nrb4 npr1 二重変異体の解析から、両者は相加的に作用することが示唆された。nrb4 変異体においてNPR1タンパク質の安定性や核局在に変化は見られないことから、NRB4はNPR1の下流において機能していると考えられる。NRB4 はAt1g15780にコードされており、翻訳産物のN末端側にKIXドメインが、中央部にGln-rich領域が含まれていた。単離された3種類のnrb4 対立遺伝子は全てKIXドメインに点変異が見られた。T-DNA挿入nrb4-4 変異体は成長が遅いために野生型よりも小さく、葉のトライコームの表面に見られる乳頭突起とトライコームの基部の細胞群が欠落していた。またトライコームの腕にも異常が見られた。npr1 変異体は核の内複製を野生型よりも多く起こすことが知られているが、nrb4-4 においても同じ現象が見られた。nrb4-4 変異体を長日条件で育成すると抽だいは起こすが、殆ど花成せず、まれに花成しても花に雄ずいがなく、心皮は胚珠を完全には包み込んでいなかった。nrb4 変異体のSA含量は通常条件では野生型と同等だが、病原菌の感染によるSA蓄積増加量は野生型よりも高くなった。しかしながら病原菌に対する抵抗性は非常に低くなっていた。NRB4は転写調節に関与するメディエーターのモジュールの1つであるMED15のオーソログであると思われ、SA応答の際の転写制御に関与するメディエーターのサブユニットとして機能していることが推測される。マイクロアレイデータによると、NRB4 の発現量は各種刺激による変化が見られず、npr1 変異体での発現量も野生型と同等であった。酵母two-hybridアッセイにおいてNRB4とNPR1は物理的相互作用を示さなかった。NRB4タンパク質には核局在シグナルは含まれていないが、GPPとの融合タンパク質を発現させたところ、強い核局在が観察された。また、この核局在性はBTH処理による変化は見られなかった。NRB4 を過剰発現させた形質転換体は病害応答性に大きな変化は見られなかったが、SAに対する感受性は高くなっていた。以上の結果から、メディエーターサブユニットと推測されるNRB4はNRP1の下流においてSA応答に関与していると考えられる。

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論文)エチレンによる胚軸伸長制御とCOP1との関係

2013-01-14 20:03:10 | 読んだ論文備忘録

Involvement of COP1 in ethylene- and light-regulated hypocotyl elongation
Liang et al.  Planta (2012) 236:1791-1802.
DOI:10.1007/s00425-012-1730-y

シロイヌナズナ黄化芽生えをエチレン(ACC)処理すると胚軸伸長が抑制されるが、明所育成芽生えでは伸長が促進される。よって、エチレンは胚軸伸長に対して光条件の違いによって反対の効果を示すが、その機構については明らかとなっていない。中国 蘭州大学Bi らは、シロイヌナズナの各種変異体芽生えを用いて、明所と暗所でのエチレンの胚軸伸長に対する効果の違いをもたらす因子の解析を行なった。エチレン非感受性変異体であるetr1-3ein2-1 は明所においても暗所においてもACC処理による胚軸伸長変化が見られず、この過程にはエチレンシグナル伝達が必要であることが示唆される。明所での胚軸伸長はオーキシンによって促進されることから、オーキシン非感受性変異体tir1-3axr1-3axr1-12 でのACCの効果を見たところ、暗所での伸長抑制は起こったが、明所での伸長促進は見られなかった。したがって、エチレンによる明所での胚軸伸長促進はオーキシンを介してなされていると考えられる。オーキシン応答DR5プロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ芽生えにおいて、明所ではACC処理によって胚軸でのレポーター遺伝子の発現誘導が観察されたが、暗所では発現は見られなかった。オーキシン生合成酵素をコードするTAA1YUCCA1YUCCA5 は明所においてエチレンによって発現が促進されるが、暗所ではTAA1 の発現は促進されるが、YUCCA1YUCCA5 の発現は抑制された。したがって、YUCCA1YUCCA5 の発現量変化と胚軸のIAA量とは一致している。オーキシン輸送に関与する因子のACCによる発現量変化を見たところ、PIN7AUX1PGP19 の発現がACC処理によって明所では促進され、暗所では抑制されること、PIN3PGP1 の発現がACC処理によって明所で促進されることがわかった。したがって、エチレンは明所育成芽生え胚軸でのオーキシンの生合成、輸送、分布に対して影響していることが示唆される。シロイヌナズナの光形態形成において、bZIP型転写因子のELONGATED HYPOCOTYL 5(HY5)は正の制御因子として機能し、CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)ユビキチンリガーゼはHY5の分解に関与することで光形態形成の抑制を行なっている。よって、hy5 変異体やCOP1 過剰発現個体では明所での胚軸伸長が促進され、cop1 変異体は暗所での胚軸伸長が抑制されて、明所育成芽生えと同等になる。ACC処理による明所での胚軸伸長促進は、hy5 変異体やCOP1 過剰発現個体においても見られるが、促進の程度は野生型と比較すると劣っていた。暗所で育成したcop1-4 変異体芽生えをACC処理すると胚軸伸長が促進され、野生型の芽生えではACC処理によって胚軸伸長が抑制された。よって、COP1がエチレン処理による胚軸伸長制御の重要な因子であることが示唆される。エチレンシグナル伝達経路に関与してるETHYLENE-INSENSITIVE 3(EIN3)転写因子を過剰発現させた芽生えは、明所においては胚軸伸長が促進され、暗所においては胚軸伸長が抑制された。EIN3 を過剰発現させたcop1-4 変異体暗所育成芽生えは、胚軸がcop1-4 変異体よりも長く、EIN3はエチレンによる胚軸伸長に関与していると考えられる。暗所で育成したcop1-4 変異体はACC処理によって胚軸伸長が促進されるが、同時にオーキシン輸送阻害剤のNPAで処理すると伸長促進が抑制された。よって、暗所育成cop1-4 変異体芽生えのACCによる胚軸伸長促進はオーキシンを介してなされており、オーキシン輸送がこの過程に関与していると考えられる。YUCCA1YUCCA5 の発現はACC処理と同様にEIN3 過剰発現個体においても明所育成芽生えでは促進され、暗所では抑制された。cop1-4 変異体では暗所においてもACC処理もしくはEIN3 の過剰発現によってYUCCA1YUCCA5 の発現が促進されることから、COP1はEIN3の転写促進活性を制御していると考えられる。EIN3によって発現が促進されるETHYLENE RESPONSE FACTOR 1ERF1 )の発現は、ACC処理もしくはEIN3 過剰発現によって明所においては促進され、暗所においては抑制されるが、cop1-4 変異体ではACC処理もしくはEIN3 過剰発現によって暗所においても発現の促進が起こった。以上の結果から、エチレンによる胚軸伸長制御は、明所ではEIN3によるYUCCA1YUCCA5 の発現促進によってオーキシン量が増加して胚軸伸長が促進し、暗所ではCOP1によってEIN3の転写活性が抑制され、EIN3の下流に位置するYUCCA1YUCCA5 の発現が抑制されて胚軸伸長が抑制されるものと考えられる。したがって、胚軸伸長に対するエチレンの効果の光条件による違いには、COP1が重要な役割を演じていると考えられる。

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論文)グルタミンアミドトランスフェラーゼによる分枝形成制御

2013-01-09 05:59:08 | 読んだ論文備忘録

A Nitrogen-Regulated Glutamine Amidotransferase (GAT1_2.1) Represses Shoot Branching in Arabidopsis
Zhu and Kranz  Plant Physiology (2012) 160:1770-1780.
doi:10.1104/pp.112.199364

米国 ワシントン大学Kranz らは、マイクロアレイ解析によって選抜されたシロイヌナズナの芽生えを低窒素源条件で育成した際に発現量の変化する230遺伝子のうち、17遺伝子についてT-DNA挿入変異体の表現型を観察し、その機能の解析を試みた。その結果、クラス1 グルタミンアミドトランスフェラーゼ(GAT1)をコードするGAT1_2.1 (At1g15040)遺伝子のT-DNA挿入変異体gat は、シュートの分枝が増加することがわかった。gat 変異体はロゼット葉の数が野生型よりも多く、葉はやや小さく、花成時期が早くなるるために若い植物体は草丈が高くなるが、成熟個体の草丈は野生型よりも低くなった。したがって、GAT は腋芽分裂組織の誘導と成長の両方を制御していると考えられる。gat 変異体でGAT 遺伝子を過剰発現させると表現型は回復したが、野生型植物でGAT 遺伝子を過剰発現させても分枝数に変化は見られなかった。gat 変異体の表現型はmax ストリゴラクトン変異体と類似した表現型を示すが、必ずしも同一ではなく、gat 変異体は供給する窒素量に関係なく分枝数の増加が見られるが、max 変異体では低窒素条件で分枝数が増加するのはmax2 変異体のみであり、max1max3max4 では分枝数の増加が見られなかった。暗所育成芽生えのフックの屈曲程度はgat 変異体もmax 変異体も野生型よりもやや弱くなり、胚軸の長さはgatmax1max3max4 の各変異体は野生型と同等だが、max2 変異体は長くなった。野生型植物でのGAT 遺伝子の発現を定量PCRによって調査したところ、芽生えではシュートよりも根で発現量が高く、成熟個体では花や未熟な長角果で発現量が高く、茎や葉では低くなっていた。芽生えを低窒素条件で育成するとGAT 遺伝子の発現量は低下し、低リン酸条件で育成すると発現量は増加した。gat 変異体でのカロテノイド生合成関連遺伝子やMAX 遺伝子の発現量は野生型と比較して大きな差は認められず、max1max4 変異体でのGAT 遺伝子の発現量にも大きな変化は見られなかった。gat 変異体に合成ストリゴラクトンGR24やオーキシン処理をしても分枝表現型に変化は見られなかった。以上の結果から、GATは未知物質をアミド化することでシュートの分枝を制御しており、窒素ストレスによる分枝形成制御に関連していると考えられる。

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論文)JAZタンパク質の核への移行

2013-01-07 23:05:53 | 読んだ論文備忘録

Transcription factor-dependent nuclear localization of a transcriptional repressor in jasmonate hormone signaling
Withers et al.  PNAS (2012) 109:20148-20153.
doi:10.1073/pnas.1210054109
 
JASMONATE-JIM DOMAIN(JAZ)ファミリータンパク質は、中央部のZIMモチーフとC末端側のJasモチーフから構成されており、ZIMモチーフはJAZタンパク質のホモ/ヘテロ二量体形成に、Jasモチーフはジャスモン酸(JA)受容体であるCORONATINE-INSENSITIVE1(COI1)との相互作用に関与している。これまでの試験において、Jasモチーフを欠いたJAZタンパク質(JAZ1、JAZ3、JAZ10)を異所的に過剰発現させたシロイヌナズナはJA非感受性となることが知られており、JAZタンパク質はJAシグナル伝達における転写抑制因子として機能していることが明らかとなっている。米国 ミシガン州立大学He らは、Jasモチーフを欠いたJAZ9タンパク質(JAZ9ΔJas)を過剰発現させたシロイヌナズナではJA非感受性とならないことを見出した。JAZ9ΔJasタンパク質はJAZ1ΔJasタンパク質と同様に生体内において安定しており、酵母two-hybridアッセイから、JAZ9ΔJasタンパク質もJAZ1ΔJasタンパク質もCOI1と相互作用を示さないことがわかった。しかし、JAZ9ΔJasタンパク質はJAZ1ΔJasタンパク質とは異なり、MYC2との相互作用を示さなかった。JAZ1タンパク質をC末端側から順次削ってMYC2との相互作用を見たところ、Jasモチーフを欠いたJAZ1は正常なJAZ1と比較すると程度は落ちるがMYC2との相互作用を示し、ZIMモチーフまでの100アミノ酸を削ったタンパク質においてもMYC2との相互作用能力を有していたが、更に50アミノ酸を削ったタンパク質ではMYC2との相互作用が失われていた。よって、ZIMモチーフよりもN末端側にもMYC2との相互作用に関与する領域が存在すると考えられる。JAZ1ΔJasタンパク質は核と細胞質に局在していたが、JAZ9ΔJasタンパク質の核の局在量はJAZ1ΔJasタンパク質に比べて少なく、このことから、MYC2との相互作用能力がJAZタンパク質の核局在に関与しており、MYC2はJAZタンパク質を核へ移行させる能力があると考えられる。MYC2タンパク質はN末端側を介してJAZタンパク質と相互作用をし、C末端側に核局在シグナルが含まれている。MYC2タンパク質C末端側断片(207-624)は核に局在するが、N末端側断片(1-333)は核と細胞質に局在していた。C末端側MYC2はJAZ9タンパク質と相互作用をせず、JAZ9タンパク質の核局在に対して影響しなかったが、N末端側MYC2はJAZ9タンパク質と相互作用をして、JAZ9タンパク質を細胞質に局在させた。したがって、MYC2とJAZ9の物理的相互作用がJAZ9タンパク質の細胞内局在を制御していることが示唆される。また、JAZタンパク質と相互作用をするMYC3、MYC4もJAZ9タンパク質の核局在に関与していることがわかった。さらに、JAZ9タンパク質のJasモチーフに含まれるアミノ酸残基のうち、JasモチーフのC末端側に位置するArg残基がJAZ9タンパク質の核局在とMYC2タンパク質との相互作用にとって重要であることがわかった。そしてこのArg残基はCOI1との相互作用にも関与していた。以上の結果から、JAZ9タンパク質Jasモチーフ内のArg残基はMYC2の関与した核局在とMYC2との相互作用に関与していることになる。JAZ9ΔJasタンパク質に核局在シグナルを付加して発現させると、核局在は起こるがJAシグナルに対する感受性は保たれており、JAZ9ΔJasタンパク質を核に局在させるだけではJAシグナルの抑制は起こらなかった。したがって、JAZ9タンパク質の核移行と核でのMYC2との相互作用の両方がJAシグナルの抑制に必要であることが示唆される。

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