Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ストレスによる花成誘導機構

2014-01-24 20:24:23 | 読んだ論文備忘録

Stress-induced early flowering is mediated by miR169 in Arabidopsis thaliana
Xu et al.  J. Exp. Bot. (2014) 65:89-101.
doi: 10.1093/jxb/ert353

マイクロRNA(miRNA)のmiR169ファミリーはシロイヌナズナに14遺伝子存在しており、乾燥、低温、高塩濃度、窒素欠乏、UB-B照射といった非生物ストレスによって発現量が増加する。miR169のターゲットは、NF-Y転写因子のサブユニットの1つであるAtNF-YA 遺伝子ファミリーであることが知られている。NF-YはNF-YA、NF-YB、NF-YCからなるヘテロ三量体のCCAAT-結合転写因子で、様々な遺伝子の転写を制御している。シロイヌナズナにはNF-YAサブユニットをコードする遺伝子が10遺伝子存在している。中国農業科学院のWang らは、miR169d の前駆体転写産物を35Sプロモーター制御下で過剰発現する形質転換シロイヌナズナを作出し、miR169のストレス応答における機能の解析を行なった。miR169d 発現個体と野生型植物の花成時期を比較したところ、長日条件下で野生型植物は平均11枚のロゼット葉をつけたところで花成したのに対して、miR169d 発現個体は平均7枚のロゼット葉で花成した。短日条件下では、野生型植物の花成は長日条件よりも遅れ、開花までに平均22枚のロゼット葉をつけたが、miR169d 発現個体は長日条件と同じ平均7枚のロゼット葉で花成した。したがって、miR169d の過剰発現は花成を促進し、この促進効果は日長に影響されない。miR169d 過剰発現個体では、miR169dのターゲットとなりうるAtNF-YA 遺伝子の転写産物量が減少しており、特にAtNF-YA2AtNF-YA8AtNF-YA10 の転写産物が大きく減少していた。そこで、AtNF-YA2 もしくはmiR169dのターゲット配列を改変して分解を受けなくなったAtNF-YA2m を35Sプロモーター制御下で過剰発現する形質転換シロイヌナズナを作出して花成を観察した。長日条件下でAtNF-YA2 発現個体は平均12枚のロゼット葉をつけて花成し、野生型よりも花成がわずかに遅れたが、AtNF-YA2m 発現個体は平均14枚のロゼット葉をつけて花成し、野生型植物やAtNF-YA2 発現個体よりも花成が遅れた。短日条件下では、AtNF-YA2 発現個体は平均27枚、AtNF-YA2m 発現個体は平均33枚のロゼット葉で花成し、野生型よりも花成が遅れた。AtNF-YA2 発現個体でmiR169d を過剰発現させると、花成時期はmiR169d 発現個体と同程度になった。したがって、AtN-YA2 の発現量増加は花成遅延を起こし、miR169dを介したAtNF-YA ファミリー遺伝子の制御は花成時期の制御に関与していることが示唆される。miR169d 発現個体ではAtNF-YA2 の転写産物量が減少しており、miR169dは直接AtNF-YA2 をサイレンシングさせていると考えられる。miR169d 発現個体では、花成を抑制するFLOWERING LOCUS CFLC )の転写産物量が減少しており、FLCによって発現が抑制されるFLOWERING LOCUS TFT )やLEAFYLFY )の転写産物量が増加していた。一方、AtNF-YA2 発現個体やAtNF-YA2m 発現個体ではFLC の発現量が増加しており、AtNF-YA2m 発現個体ではFTLFY の発現量の減少も観察された。以上の結果から、miR169dはAtNF-YA2 をターゲットとして花成を制御し、この制御によってFLC の発現が抑制されて花成を促進するFTLFY の発現が起こるものと考えられる。NF-YAタンパク質はCCAAT boxに結合し、FLC 遺伝子のプロモーター領域や第1イントロンには複数のCCAATモチーフが存在する。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイやゲルシフトアッセイの結果、NF-YA2タンパク質はFCL 遺伝子のCCAATモチーフに結合することが確認された。よって、NF-YA2はFLC のプロモーターや第1イントロンと物理的相互作用をすることでFLC の発現を制御していると考えられる。NF-YA2タンパク質はFLC のパラログであるMADS AFFECTING FLOWERING 1MAF1 )-MAF5 遺伝子とは相互作用を示さなかった。環境ストレスとして低温処理をしたmiR169d 発現個体では花成時期に変化が見られなかった。これは、低温処理によってFLC の発現量が十分に低下していたためであると考えられる。野生型植物とAtNF-YA2 発現個体は日長条件に関係なく低温処理によって花成が促進されたが、AtNF-YA2m 発現個体は短日条件での低温処理で花成促進が起こらなかった。これは、AtNF-YA2m 転写産物がmiR169のターゲットとならないために低温処理に関係なく十分量蓄積していたことによると考えられる。花成に対して促進的に作用するCONSTANSCO )、抑制的に作用するSHORT VEGETATIVE PHASESVP )やマイクロRNA miR156 は、野生型と形質転換体で発現量に差が見られないことから、miR169を介した花成促進にこれらの因子は関与していないと考えられる。AtNF-YA2 発現個体やAtNF-YA2m 発現個体は、野生型植物と同様に、ジベレリン処理によって花成が促進された。よって、miR169はジベレリンを介した花成促進経路には関与していないと考えられる。以上の結果から、miR169/AtNF-YAは、花成抑制因子FLC の発現を制御することで、ストレスに応答した花成促進を引き起こしており、この経路は他の花成制御経路とは独立して機能していると考えられる。

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論文)種子の大きさと発芽光要求性

2014-01-20 22:38:43 | 読んだ論文備忘録

Campanulaceae: a family with small seeds that require light for germination
Koutsovoulou et al.  Ann Bot (2014) 113:135-143.
doi: 10.1093/aob/mct250

種子の光に応答した発芽の制御は、芽生えの生存にとって重要である。発芽に光を必要とする種子は小型のものが多く、種子の光応答性と種子の大きさは、種子が土の表面近くあるときに発芽するよう共進化してきたことが示唆される。一方、系統学的に光による発芽誘導と種子の大きさには関連が無いとの指摘もある。ギリシャ アテネ大学Thanos らは、キキョウ科の131の分類群の種子について発芽に対する光の効果を調査した。キキョウ科は双子葉植物の科で、大部分が草本、一部はつる性の、85属約2300種からなり、世界的に広く分布する。使用したキキョウ科の種子のサイズは5~1060 μgの範囲にあった。分類群はは27属と3つのサブファミリーに別れ、5大陸(アフリカ:4分類群、アメリカ:26分類群、アジア:13分類群、ヨーロッパ:75分類群、オセアニア:13分類群)の様々な生息環境に自生するものを用いた。調査した131の分類群全ての種子において、光照射(1日に8時間もしくは12時間)した種子は連続暗黒下の種子よりも高い発芽率を示したが、発芽に対する光の必要度は種子のサイズが大きくなるにつれて低下した。また、サイズの大きい種子は一定温度条件の連続暗黒下よりも1日の温度条件を可変した連続暗黒下で高い発芽率を示した。種子発芽に対して促進的に作用するジベレリン処理をすると、試験した10種において光の代替として作用し、最終的には光照射よりも高い発芽率を示した。一方、栄養源として硝酸を与えた場合は、暗黒下での発芽が促進されたのは3種のみであった。以上の結果から、キキョウ科の多くの種は発芽に光を必要とし、ジベレリンは光の代替となること、硝酸も一部の種では代替となることがわかった。発芽における光の効果は大きい種子の種よりも小さい種子の種において強く表れ、小さい種子は地中深くに埋もれている際には発芽が抑制されると考えられる。また、大きい種子は地中深くに埋もれていても温度変化によって発芽しうることが示唆される。

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論文)ストリゴラクトンシグナルの抑制因子

2014-01-15 21:40:27 | 読んだ論文備忘録

DWARF 53 acts as a repressor of strigolactone signalling in rice
Jiang et al.  Nature (2013) 504:401-405.
doi:10.1038/nature12870

D14-SCFD3-dependent degradation of D53 regulates strigolactone signalling
Zhou et al.  Nature (2013) 504:406-410.
doi:10.1038/nature12878

News & Views
Plant biology: Witchcraft and destruction
Steven M. Smith   Nature (2013) 504:384-385.

ストリゴラクトンのシグナル伝達にはF-boxタンパク質(イネ:DWARF3、シロイヌナズナ:MORE AXILLARY GROWTH2、エンドウ:RAMOSUS4)が関与しており、このことから、ストリゴラクトンシグナル伝達にはSCF複合体によってユビキチン化、分解される抑制因子が関与していることが推測されていたが、その実体は明らかとなっていなかった。今回、中国の2つのグループからイネDWARF3の基質となるストリゴラクトンシグナル抑制因子の論文が発表された。


中国科学院 遺伝・発育生物学研究所Li ら[Nature (2013) 504:401-405.]は、ストリゴラクトン(SL)の生合成経路やシグナル伝達経路を解析するために、イネの多分けつわい化変異体に着目し、その中から優性のe9 変異体(親品種:日本晴)について詳細な解析を行なった。e9 変異体は、合成ストリゴラクトンGR24の添加に対して耐性を示し、D10 の発現量が高く、内生SL(epi -5DS)量が野生型よりも30%程度高い表現型を示す。よって、e9 はストリゴラクトンのシグナル伝達に関与していると考えられる。マップベースクローニングの結果、e9 はLOC_Os11g01330の第3エクソンに15塩基の欠損があり、813-817番目のアミノ酸(Gly-Lys-Thr-Gly-Ile)の欠損と812番目のアミノ酸の置換(R→T)を起こすことがわかった。この変異はイネd53 変異体と全く同じ変異であり、以降、e9d53 と呼ぶ。d53 由来のLOC_Os11g01330を野生型イネに導入すると、全ての系統でd53 と同じ表現型を示した。D53 遺伝子は、Double Clp-N motif-containing P-loop nucleoside triphosphate hydrolase スーパーファミリーに属するタンパク質をコードしており、イネLOC_Os12g01360(D53-like)と96.5%の相同性が見られた。また、最近シロイヌナズナにおいて同定され、HEAT SHOCK PROTEIN 101(HSP101)とも類似性が見られる、D53-like(SUPPRESSOR OF MORE AXILLARY GROWTH2 1-LIKE(SMXL))サブファミリーと36-41%の類似性があった。D53タンパク質は、エチレン応答性エレメント結合因子関連両親媒性抑圧(EAR)モチーフにと推定される配列をを3つ含んでおり、このモチーフは幾つかの植物ホルモンシグナル伝達経路においてコリプレッサーとして機能しているTOPLESS(TPL)との相互作用に関与していることが指摘されている。D53 は主に芽生えのシュート基部、若い葉、腋芽、若い円錐花序で発現していた。D53タンパク質およびd53変異型タンパク質は共に核に局在しており、変異型タンパク質は細胞内局在に変化は見られなかった。野生型植物をGR24処理するとD53 転写産物量が増加し、SL生合成やシグナル伝達が欠損したd 変異体類ではD53 転写産物量が減少していた。よって、D53 の発現はSLシグナルの負のフィードバック制御に関与していると考えられる。一方、D53タンパク質量はd53 変異体を含む全てのd 変異体類で野生型よりも多くなっていた。野生型植物をGR24処理するとD53タンパク質量は速やかに減少したが、変異型d53タンパク質は減少しなかった。GR24処理によるD53タンパク質の減少はプロテアソーム阻害剤MG132処理によって抑制された。よって、D53タンパク質の分解はユビキチン化が関与していると考えられる。GR24処理によってD53タンパク質はポリユビキチン化されたが、d53タンパク質はされなかった。したがって、D53タンパク質はGR24に応答してポリユビキチン化され、ユビキチン-プロテアソーム系を介して分解されると考えられる。以上の結果から、D53はSLシグナル伝達の抑制因子として機能し、d53 変異体ではd53タンパク質がSLによる分解に対して非感受性であるため優性の表現型を示すと考えられる。d3 変異体およびd14 変異体でD53 を過剰発現させてもそれぞれの変異体の表現型に殆ど変化は見られなかったが、D53 の発現を抑制するとそれぞれの変異体の分けつ数が減少した。また、d3 変異体およびd14 変異体ではD53タンパク質の分解がGR24を添加しても起こらなかった。よって、D53D3 およびD14 の下流において作用していると考えられる。さらにD53タンパク質のユビキチン化はd3 変異体およびd14 変異体では起こらなかった。したがって、SLの誘導するD53タンパク質の分解は、D3およびD14の機能に依存していることが示唆される。D53タンパク質はD14タンパク質と相互作用をすることが確認され、変異型d53タンパク質もD14タンパク質と相互作用を示した。よって、d53 変異はユビキチン化に必須な部位の変異であり、D14との相互作用には関与していないと考えられる。D53とD14の相互作用は、GR24の添加によって、その濃度に応じて強くなった。D14のヒドロラーゼ活性に関与しているSer-His-Aspの3アミノ酸に変異が入ると、SLの誘導するD53タンパク質の分解が弱まり、D53とD14の相互作用も弱くなった。よって、D14によるSLの受容はSLの誘導するD53タンパク質の分解に必須であると考えられる。D14とD3は相互作用をし、GR24はこの相互作用を強めた。また、D14の3アミノ酸の変異はGR24の誘導するD3とD14の相互作用を弱めた。D53はD3とも相互作用をすることから、D53はD3の直接のターゲットであると考えられ、SLを介したD14とD3およびD53との相互作用がD53のユビキチン化と分解を引き起こしていると考えられる。イネには3種類のTPL/TPL関連タンパク質(TPR)が存在し、D53はイネTRPと相互作用をすることが確認された。よって、TPRコリプレッサーがストリゴラクトンシグナル伝達の制御因子として機能しているものと思われる。以上の結果から、D53 はSCFD3ユビキチン化複合体の基質をコードしており、D53はストリゴラクトンシグナル伝達の抑制因子として機能していると考えられる。


イネdwarf53d53 )変異体は、草丈が低く、分けつ数が多く、茎が細く、冠根が短い表現型を示す半優性の変異体である。中国 南京農業大学のWan ら[Nature (2013) 504:406-410.]は、d53 変異体ではストリゴラクトン(SL)生合成経路のカロテノイド裂開ジオキシゲナーゼ8(CCD8)をコードするD10 の発現量が高く、腋芽の成長を阻害するFINE CULM 1FC1 )の発現量が低くなっていることを見出した。このことから、D53 はSLの生合成かシグナル伝達に関与していることが示唆される。d53 変異体は、合成SLであるGR24を添加しても腋芽の成長は阻害されず、内生SL含量が高いことから、SL非感受性の変異体であると考えられる。マップベースクローニングの結果、d53 ではLOC_Os11g01330遺伝子の第3エクソンに1塩基の置換と15塩基の欠損があり、このことによって翻訳産物は1アミノ酸の置換と5アミノ酸の欠損を起こすことがわかった。野生型もしくは変異型のD53 をアクチンプロモーター制御下で発現させた野生型のイネは、どちらのD53 を発現させた場合も分けつ数が増加する表現型を示し、RNAiによってD53 をノックダウンした形質転換イネは分けつ数が減少した。したがって、D53はSLによる分枝阻害経路において抑制因子として作用し、d53 はD53活性が強まった機能獲得変異であると考えられる。D53 は1131アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、イネゲノム中にはアミノ酸レベルで96.6%の相同性のあるホモログ(D53-like、LOC_Os12g01360)が存在していた。D53様タンパク質は他の単子葉植物や双子葉植物においても見出されたが、下等植物や動物、微生物には見られなかった。D53タンパク質は、二次構造がクラスI Clp ATPaseファミリーと類似性が見られ、C末端側には、TOPLESSファミリータンパク質と相互作用をして転写抑制に関与するとされているEARモチーフによく似た配列が含まれていた。D53 はイネの様々な組織で発現しており、GR24処理によって発現量が増加した。また、D53タンパク質は主に核に局在していた。イネのSLシグナル伝達においては、F-boxタンパク質のD3とα/βヒドロラーゼのD14が重要な因子であり、D14のシロイヌナズナオーソログのAtD14、ペチュニアオーソログのDAD2は直接SLを受容することが指摘されている。酵母two-hybrid アッセイの結果、D53とd53はGR24存在下でD14と物理的に相互作用をすることが示された。D14とD3もGR24存在下で物理的相互作用をすることから、SLはD14、D3、D53の複合体形成を促進する作用があることが示唆される。野生型植物において、D53タンパク質はGR24処理によって速やかに分解されたが、d3 変異体やd14 変異体では分解は起こらなかった。また、D53タンパク質はプロテアソームによって分解されること、変異型d53タンパク質はD53タンパク質よりもGR24処理に対して安定であることがわかった。よって、SLはプロテアソーム系を介したD14、D3によるD53の分解を引き起こしていると考えられる。d53タンパク質がSLによる分解誘導に対して非感受性であることが、d53 変異体の半優性の表現型をもたらしていると考えられる。d3 d53 二重変異体やd14 d53 二重変異体は、それぞれの単独変異体の表現型と比較して明確な相加効果が見られないことから、D3D14D53 は同一のシグナル伝達経路において作用していると考えられる。d3 変異体およびd14 変異体においてRNAiによりD53 遺伝子をノックダウンすると、野生型に近い表現型を示すことから、D53D3D14 の下流に位置しており、D53タンパク質の蓄積がd3 変異体、d14 変異体のSLシグナル伝達の遮断とわい化や分けつ数の増加を引き起こしていると考えられる。以上の結果から、D53はイネのストリゴラクトンシグナル伝達経路において抑制因子として機能し、ストリゴラクトンはD14、D3を介してD53のプロテアソーム系による分解を誘導していると考えられる。

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論文)FLOWERING LOCUS T によるタマネギの鱗茎形成と花成の制御

2013-12-27 21:56:07 | 読んだ論文備忘録

FLOWERING LOCUS T genes control onion bulb formation and flowering
Lee et al.  Nature Communications (2013) 4:2884
DOI:10.1038/ncomms3884

タマネギは二年生の植物で、温帯地域では、春に移植した苗は日長が長くなると鱗茎を発達させ、鱗茎で越冬して低温(春化処理)に曝されると翌年の春に花成する。ニュージーランド オタゴ大学Macknight らは、タマネギの鱗茎の発達や花成におけるFLOWERING LOCUS TFT )の役割について解析した。トランスクリプトームデータのBLAST解析によって、タマネギから6種類のFT -様遺伝子(AcFT1AcFT6 )が同定された。これまでの研究ではFT-様タンパク質はIとIIの2つのグループに分かれていたが、今回の解析によってさらにIA、IB、IIA、IIBの4つのサブグループに分かれた。サブグループIAにはAcFT1とAcFT2が含まれ、同じグループにイネ(Hd3a、RFT1)、オオムギ(HvFT1、HvFT2)、ラン(CgFT)といった単子葉植物の花成制御に関与するFTが属していた。AcFT4はサブグループIIAに属し、トウモロコシ(ZmZCN8)やオオムギ(HvFT3)の花成に関与するFT-様タンパク質がこのサブグループに含まれていた。AcFT3、AcFT5、AcFT6はサブグループIBに含まれるが、このサブグループに属するFT-様タンパク質の機能は明らかとなっていなかった。これらのタマネギFT -様遺伝子の機能について、シロイヌナズナft-1 変異体でこれらの遺伝子を35Sプロモーター制御下で発現させ、ft-1 変異体の花成遅延が相補されるかを調査したところ、AcFT1AcFT2 を発現させた個体では花成が促進され、AcFT4 を発現させた個体は花成が非常に遅くなり、AcFT3AcFT5AcFT6 を発現させた個体の花成はft-1 変異体と同等であった。タマネギのFT-様タンパク質がシロイヌナズナにおいて移動性の花成シグナルとして機能するかを見るために、ft-1 変異体において師部特異的プロモーターSUC2 の制御下でAcFT を発現させたところ、AcFT3AcFT5AcFT6ft-1 変異を相補しなかったが、AcFT1 を発現させた個体では花成が早まり、AcFT1が移動性の花成シグナルとして機能することが確認された。一方、AcFT2 を発現させた個体では多くの個体で花成時期に変化が見られず、AcFT2の移動性シグナルとしての機能は低いと考えられる。AcFT4 を発現させた個体はft-1 変異体よりも花成が遅延したことから、AcFT4は移動性の花成阻害因子としてシロイヌナズナ内生のFT 遺伝子と拮抗して機能いると考えられる。タマネギのFT -様遺伝子のうち、AcFT2 は芽生えや鱗茎形成期前後には殆ど発現していないが、春化処理をした鱗茎で後に花序となる中心部の組織において強い発現が見られた。よって、AcFT2 はタマネギの花成における主要な調節因子であると考えられる。AcFT3AcFT5AcFT6 は、タマネギの成長ステージや日長による発現量の変化は見られなかった。若い芽生えの葉でのAcFT1 の発現量は日長条件に関係なく非常に低いが、AcFT4 の発現量は比較的高くなっていた。鱗茎形成が誘導されうる成長ステージの葉において、AcFT1 は長日条件でのみ発現が見られ、短日条件では発現は見られなかった。逆に、AcFT4 は短日条件でのみ発現が見られた。同様の傾向は鱗茎においても観察された。よって、長日条件による鱗茎形成の誘導に、AcFT4 の発現量低下とAcFT1 の発現量増加が関与していると考えられる。短日条件で育成した芽生えを長日条件下に移すと、1日目でAcFT4 の発現量低下が起こり、4日目では発現が観察されなくなった。AcFT1 の発現は逆のパターンを示し、長日条件移行2日目から発現が観察された。したがって、AcFT4AcFT1 鱗茎形成の主要な調節因子であり、AcFT4 は鱗茎形成の阻害因子、AcFT1 は促進因子として機能すると考えられる。AcFT を35Sプロモーター制御下で過剰発現する形質転換タマネギを作出したところ、AcFT1 を過剰発現させた場合は組織培養の段階から鱗茎様の組織が形成された。また、この組織では、鱗茎の形成過程で発現量が増加することが知られているスクロース:スクロース 1-フルクトシルトランスフェラーゼ(1-SST )の発現量が高くなっていた。AcFT4 を過剰発現させた形質転換タマネギは対照と同等の表現型を示したが、対照が春の終わりに鱗茎の発達を開始するのに対して、AcFT4 過剰発現個体は鱗茎の発達が見られず、冬になっても栄養成長を続けた。AcFT4 過剰発現個体ではAcFT1 の発現が強く阻害されていた。よって、長日条件下でのAcFT4 の発現量低下は、AcFT1 の発現量増加をもたらし、このことによって鱗茎形成が誘導されると考えられる。以上の結果から、AcFT1AcFT2AcFT4 はタマネギの成長過程においてそれぞれが異なる役割を担っていることが示唆される。FTタンパク質は14-3-3タンパク質を介してbZIP型DNA結合タンパク質のFDと複合体を形成することが知られている。タマネギFTタンパク質の機能の違いが14-3-3タンパク質との親和性の違いによるものかを明らかにするために、各AcFTタンパク質の14-3-3タンパク質との接続部位の構造を比較したところ、幾つかのアミノ酸残基に違いが見られた。よって、AcFT1とAcFT2は相互作用をする14-3-3タンパク質が異なることが推測され、AcFT4は14-3-3タンパク質以外のタンパク質と相互作用をするかドミナントネガティブなタンパク質として機能することが推測される。FTタンパク質には花成促進に関与する領域が2箇所あり、このうち、segement B のアミノ酸配列を見ると、AcFT1の配列は他植物のFTタンパク質とほぼ一致しているが、AcFT2とAcFT4の配列は異なっていた。そこでAcFT2とAcFT4のsegment B をAcFT1の同配列と置換して、SUC2 プロモーター制御下でシロイヌナズナft-1 変異体で発現させたところ、AcFT2のsegment B に置換したAcFT1は花成促進能力が低下することがわかった。しかし、正常なAcFT2 を発現させた個体ほどは花成が遅延しないことから、segment B 以外のアミノ酸残基も両者の違いに関与していると考えられる。AcFT4のsegment B に置換したAcFT1は花成促進能力が失われたが、正常なAcFT4 を発現させた場合のような更なる花成遅延は起こらなかった。以上の結果から、タマネギのFT-様タンパク質をコードする遺伝子は鱗茎形成と花成の制御を担っていることが示唆される。春に移植されたタマネギ芽生えはAcFT4 が発現していることにより鱗茎形成が抑制されているが、日長が長くなるとAcFT4 の発現が低下してAcFT1 の発現が増加し、鱗茎形成が誘導される。そして、鱗茎が越冬して春化処理を受けると、AcFT2 の発現が増加して花成が誘導され、翌年の春/夏に開花すると考えられる。

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論文)オーキシンの真の異化産物

2013-12-19 20:40:13 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Auxin Homeostasis and Gradients in Arabidopsis Roots through the Formation of the Indole-3-Acetic Acid Catabolite 2-Oxindole-3-Acetic Acid
Pencík et al.  The Plant Cell (2013) 25:3858-3870.
doi:10.1105/tpc.113.114421

天然オーキシンのインドール-3-酢酸(IAA)は、糖やアミノ酸との可逆的な縮合体形成や、IAAの酸化産物である2-オキソインドール酢酸(oxIAA)の形成による不可逆的な分解によって異化される。シロイヌナズナを用いた試験から、IAAの主要な異化産物はoxIAA、IAA-Glu、IAA-Aspであり、その中でもoxIAAが量的に多いことが明らかとなっている。スウェーデン農科大学 ウメオ植物科学センターLjung らは、IAAの異化において縮合体形成と分解がどのように貢献しているかを解析した。superoot1-3sur1-3 )変異体およびsur2-1 変異体はインドールグルコシノレートの生合成が遮断されているためにIAAを過剰生産する。sur1-3 変異体、sur2-1 変異体芽生えの根は、IAAだけでなくoxIAAの蓄積量も野生型より多くなっていた。これらの変異体ではIAA縮合体のIAA-AspやIAA-Gluの蓄積量も野生型よりも多くなっていたが、IAAに対する量比はoxIAAの方がはるかに高くなっていた。15Nで標識したIAAの前駆体(アントラニル酸、インドール)を芽生えに与えたところ、標識されたIAAは直ちに出現し、oxIAAはやや遅れて標識されることが示された。芽生え根端部でのIAAやIAA異化産物の濃度勾配を見ると、oxIAAの濃度勾配はIAAのそれとほぼ一致していたが、IAA-AspやIAA-Gluの濃度はIAAよりも低く、濃度勾配も見られなかった。したがって、IAA縮合体の形成は根端部でのIAA量の維持に対する貢献度は低く、oxIAAの形成がIAAの不活性化において最も重要な機構であると考えられる。根端部の各組織で特異的に発現するプロモーター制御下でGFPを発現する植物体からプロトプラストを調整し、蛍光活性化セルソーター(FACS)解析によって各組織のIAA、oxIAA量を調査したところ、M0028プロモーターが発現している根冠、コルメラ細胞、コルメラ始原細胞、静止中心と、SCARECROWSCR )プロモーターが発現している内皮では、J2812プロモーターが発現する表皮や皮層、WOODEN LEGWOL )プロモーターが発現している中心柱よりもIAAに対するoxIAAの比率が高くなっていた。タバコBY-2細胞を用いた解析から、oxIAAはオーキシンの取込や排出に影響しないことが確認された。オーキシンレポーターのDR5rev:GFP を発現させたシロイヌナズナ芽生えの根ではGFPシグナルが静止中心、コルメラ始原細胞、コルメラ細胞において観察され、IAA添加によってシグナル増加するが、oxIAA添加ではそのような増加は見られなかった。以上の結果から、oxIAAは、根において、オーキシンの応答や輸送に対して影響していないと考えられる。芽生えにoxIAAを濃度変えて添加しても胚軸や根の伸長に影響は見られず、非常に高濃度のoxIAAを添加した際に根の伸長が僅かに阻害された。oxIAAがオーキシン受容体のTIR1と相互作用をするかプルダウンアッセイを行なったところ、oxIAAはTIR1-IAA3およびTIR1-IAA6のコリプレッサー複合体に結合しないことが確認された。以上の結果から、IAAの酸化によって合成されるoxIAAは、オーキシン活性はほとんど有していないIAAの主要な不可逆的異化産物であり、根でのオーキシン量の調節や濃度勾配形成にとって重要であると考えられる。

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論文)光合成によって生産された糖による概日時計の調節

2013-12-13 23:40:39 | 読んだ論文備忘録

Photosynthetic entrainment of the Arabidopsis thaliana circadian clock
Haydon et al.  Nature (2013) 502:689-692.
doi:10.1038/nature12603

植物の炭素同化やデンプン代謝は概日リズムによる制御を受けており、クロロフィル生合成や光合成装置に関与している転写産物の量は明け方4時間後付近で最大となる。シロイヌナズナの芽生えを糖を含む培地で育成すると、連続光下で育成した芽生えは概日周期が短くなり、暗黒下で育成した芽生えでは概日リズムが持続される。英国 ケンブリッジ大学Webb らは、光合成によって生産された内生の糖類自身が概日リズムに影響しているかを調査した。時計遺伝子のPSEUDORESPONSE REGULATOR 7PRR7 )およびCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1CCA1 )のプロモーター制御下でルシフェラーゼ(LUC)を発現するコンストラクトを概日周期のレポーターとして導入したシロイヌナズナ芽生えを二酸化炭素を含まない空気中、もしくは光化学系IIの阻害剤である3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)を添加して低光量の連続光下で育成すると、時計遺伝子の発現周期が二酸化炭素除去で2.9時間、DCMU処理で2.5時間対照よりも長くなった。また、両処理によって、PRR7:LUC の活性は増加し、CCA1:LUC の活性は減少した。これらの処理による時計遺伝子の発現周期の延長は、芽生えにショ糖を与えることによって抑制された。ノルフルラゾンやリンコマイシンといった葉緑体から核へのシグナル伝達の低下を引き起こす薬剤処理を行なった芽生えでは、ショ糖の添加に関係なくPRR7:LUC の発現周期の延長やCCA1:LUC の活性低下は起こらなかった。さらに、光合成は活性酸素種の生産を介して時計機能に影響を及ぼしているのではないことか確認された。CCA1:LUCPRR7:LUC およびTIMING OF CAB EXPRESSION 1TOC1 )プロモーター制御下でLUC を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いて、糖添加による概日周期の変化を見たところ、低光量の連続光下ではショ糖、グルコース、フラクトースの添加はマンニトールを添加した場合よりも概日周期が平均して4.2時間短くなった。概日周期レポーターの活性変動は連続暗黒下では殆ど見られないが、これらの糖の添加は概日周期変動をもたらし、マンニトールや非代謝グルコースアナログの3-O-メチルグルコースの添加ではそのような効果は見られなかった。これらの結果から、代謝される糖類は概日リズムのタイプ1の同調因子として機能することが示唆される。糖の添加によって、概日周期明期初期のCCA1:LUC 活性は促進されたが、暗期の活性に対しては効果は見られなかった。暗黒下に適応したした芽生えにタイプ0の同調因子である光の照射もしくは糖を添加をした際のCHLOROPHYLL A/B BINDING PROTEIN 2CAB2 )プロモーター:LUC 活性の最初の概日リズムのピークの出現時期を見ると、光照射ではピークが26.9時間後に現れるが、糖添加の場合は22.8時間後に現れ、糖添加は光処理よりもピークの出現が4.1時間早かった。それぞれの処理によるピーク出現時刻は、光強度や糖添加量を変えても変化は見られなかった。光照射下した芽生えにDCMUを添加しての光合成による糖の生産を阻害すると、ピークの出現は2.5-3.5時間遅れた。これらの結果から、光と糖の2つの同調因子は別々に機能していると考えられる。両者の周期の差異は明け方から内生のショ糖やグルコース含量が最大となるまでのすれと一致しており、光合成によって生産された糖類は中心振動体に信号を入力して概日時計の調節に関与していることが推測される。概日時計遺伝子のうち、PPR7 はDCMU処理をすることによって転写産物量が増加し、ppr7 変異体は概日周期に対する糖の効能が低下していた。よって、光合成によって生産された内生の糖類はPPR7を介して概日リズムの同調に関与していると考えられる。

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論文)ETHYLENE-INSENSITIVE3(EIN3)による葉の老化誘導

2013-12-02 05:17:49 | 読んだ論文備忘録

ETHYLENE-INSENSITIVE3 Is a Senescence-Associated Gene That Accelerates Age-Dependent Leaf Senescence by Directly Repressing miR164 Transcription in Arabidopsis
Li et al.  Plant Cell (2013) 25:3311-3328.
DOI:10.1105/tpc.113.113340

エチレンは植物の老化を誘導することが知られている。しかしながら、その分子機構は明らかとなっていない。中国 北京大学Guo らは、シロイヌナズナのマイクロアレイデータから、エチレンシグナル伝達に関与する転写因子をコードするETHYLENE-INSENSITIVE3EIN3 )が葉の老化が進むにつれて転写産物量が増加することに着目し、詳細な解析を行なった。EIN3 転写産物は葉が成長して老化するにつれて徐々に増加し、一般的に老化誘導に用いられる暗黒処理によっても増加した。EIN3 プロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナを用いた解析から、老化して黄変した葉は緑葉よりもGUS活性が高く、葉が加齢する間にEIN3 の転写量が増加していくことが示唆される。また、同一葉内において、老化した部分は老化していない部分よりもGUS活性が高くなっていた。EIN3 とそのホモログで機能が重複しているるEIN3-Like1EIL1 )の機能喪失変異体ein3 eil1 は、老化が遅延する表現型を示した。また、エチレン前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)やエチレンと同様に老化誘導作用のあるジャスモン酸の処理による老化促進に対して、ein3 eil1 変異体の葉は耐性を示した。ein3 単独変異体の葉はこれらの処理による老化誘導に対して中程度の老化遅延を示したが、eil1 単独変異体は野生型と同等の老化を示した。EIL1 転写産物量は成熟葉で最も高く、葉の齢が進むにつれて減少していくことから、EIL1 老化誘導に対する役割はEIN3 よりも低く、EIN3 が真の老化関連遺伝子(SAG)であると考えられる。EIN3 を35Sプロモーターで恒常的発現させた形質転換シロイヌナズナは、野生型よりも老化が早まる表現型を示した。エチレンシグナル伝達経路においてEIN3の上流に位置しているEIN2の機能喪失変異体ein2 はエチレン非感受性となるが、EIN3 を過剰発現させるとein2 変異体よりも老化が早まった。よって、EIN3は葉の老化誘導にとって十分な転写因子であることが示唆される。EIN2はmicroRNA164miR164 )の発現を負に制御しており、miR164は葉の老化の正の制御因子をコードするORESREA1ORE1 )/NAC2 の転写産物を分解する。miR164 は3つの遺伝子座miR164AmiR164BmiR164C にコードされており、miR164A /B の発現量は古い葉よりも若い葉で高い。ein2 変異体の古い葉でのmiR164A /B の発現量は若い葉と同程度に高く、ein3 eil1 二重変異体もein2 変異体と同じ傾向が見られた。逆に、EIN3 過剰発現個体では若い葉のmiR164 の発現量が低くなり、ORE1 /NAC2 の発現量が増加していた。したがって、EIN3とEIL1は葉の老化過程でのmiR164 発現を抑制していることが示唆される。クロマチン免疫沈降(ChIP)試験およびゲルシフトアッセイ(EMSA)試験から、EIN3タンパク質がmiR164B 遺伝子およびmiR164C 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認され、EIN3はmiR164 の転写を直接抑制していることが示唆される。葉の齢が進むにつれてmiR164 遺伝子のプロモーター領域に結合する内生のEIN3タンパク質量が増加することから、EIN3は葉の齢に依存してmiR164 の転写を抑制していることが示唆される。miR164 の転写産物量は育成1週目から徐々に減少していくが、EIN3とmiR164 プロモーターとの相互作用は育成3週目に最大となること、miR164A 転写産物量の減少はein3 eil1 二重変異体においても観察され、ein2 変異体においても僅かに見られることから、EIN3以外にもmiR164 の発現を抑制する機構が存在すると考えられる。EIN3 過剰発現個体でmiR164A を過剰発現させたところ、EIN3 によるORE1 /NAC2 の発現と老化の誘導が抑制された。nac2 機能喪失変異体は老化遅延を起こすが、この変異体でEIN3 を過剰発現させたところ、EIN3 による老化誘導が抑制された。したがって、EIN3による老化誘導にはNAC2が必要であると考えられる。以上の結果から、EIN3は葉の老化を誘導する主要な転写因子として機能し、EIN2の下流に位置してmiR164 の発現を直接抑制していることが示唆される。

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論文)サイトカイニンによる静止中心の細胞分裂誘導機構

2013-11-28 19:59:44 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin Induces Cell Division in the Quiescent Center of the Arabidopsis Root Apical Meristem
Zhang et al.  Current Biology (2013) 23:1979-1989.
doi:10.1016/j.cub.2013.08.008

根端分裂組織において、オーキシンとサイトカイニンは拮抗的に作用し、オーキシンは細胞分裂を促進し、サイトカイニンは細胞分化を促進している。オーキシンは根端の静止中心(QC)の維持や、QC周辺の幹細胞の分化を制御しているが、こられの細胞に対するサイトカイニンの役割については明らかとなっていない。米国 ノースカロライナ大学Kieber らは、サイトカイニンを添加した培地で育成したシロイヌナズナ芽生えの約6割で根のQCが細胞分裂を起こしていることを見出した。また、サイトカイニンシグナルを負に制御しているタイプA Arabidopsis Response Regulator(ARR)のARR5 の機能損失変異体はQCの細胞分裂が促進される表現型を示した。サイトカイニン分解酵素のサイトカイニンオキシダーゼをコードするCKX3CKX5 が機能喪失することで内生サイトカイニン量が増加した変異体においてもQCの分裂促進が見られた。 サイトカイニンによって誘導されるQCの細胞分裂は既知のサイトカイニン応答経路を介してなされており、サイトカイニン受容体が機能喪失したahk2 ahk4 二重変異体ではサイトカイニンによるQC分裂の誘導が大きく低下していた。根でのサイトカイニン応答に関与しているタイプB ARRのARR1とARR12が機能喪失したarr1 arr12 二重変異体では、サイトカイニンによるQC分裂誘導が完全に失われており、QCの分裂にARR1ARR12 が必要であることが示唆される。QCの細胞分裂はエチレンによっても誘導されることから、サイトカイニンによるQC分裂がサイトカイニン処理によってエチレン生成量が増加したことによるものかを調査するために、エチレン結合阻害剤の1-メチルシクロプロペン (1-MCP)とサイトカイニンの同時処理やエチレン非感受性変異体ethylene insensitive 2ein2 )へのサイトカイニン処理を行なったが、サイトカイニンによるQCの分裂誘導に変化は見られなかった。よって、サイトカイニンによるQC分裂誘導にエチレンは関与していない。サイトカイニン存在下で育成したシロイヌナズナ芽生えのQCでは、QC特異的マーカー遺伝子(QC46、QC184)の発現が低下し、QCの独自性が低下していると考えられる。これらの結果から、サイトカイニンはQCの独自性維持に対して負に作用することが示唆される。QCの独自性に関与している転写因子の発現がサイトカイニンによって変化するかを見たところ、SCARECROWSCR )とWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX 5WOX5 )の発現が低下し、PLETHORA 1PLT1 )とPLT2 の発現は変化していないことがわかった。サイトカイニンによるSCRWOX5 の発現量の低下はarr1 arr12 二重変異体では観察されないことから、この発現量変化にはタイプB ARRのARR1ARR12 が関与していると考えられる。ckx5 変異体やarr5 変異体の根端部では定常状態のSCRWOX5 の発現が野生型よりも低く、内生サイトカイニンによってもこれらの遺伝子の発現が抑制されていることが示唆される。QCがその特性を維持するためにはオーキシンが輸送されてQCにおいてオーキシン極大が形成されることが重要である。サイトカイニンはオーキシン排出キャリアをコードするPIN 遺伝子の発現を抑制してQCへのオーキシン流入を弱めているが、この過程でのオーキシン取込キャリアの役割やサイトカイニンの効果については明らかとなっていない。そこで、オーキシン取込キャリアをコードするAUXIN RESISTANT 1AUX1 )、LIKE AUXIN RESISTANT 2LAX2 )、LAX3 の発現を調査したところ、AUX1LAX2 の転写産物量はサイトカイニン処理によって減少し、LAX3 の転写産物量は変化しないことがわかった。特にLAX2 の転写産物はAUX1 よりも変化量が大きく、SCRWOX5 のサイトカイニンによる発現抑制よりも先に起こった。根端分裂組織において、LAX2 は主に前形成層細胞において発現していた。サイトカイニンによるLAX2 転写産物量の減少は、ahk2 ahk4 二重変異体では低下しており、LAX2 の発現制御はサイトカイニン受容体が関与していると考えられる。arr1 変異体やarr12 変異体においてもサイトカイニンによるLAX2 発現抑制が僅かに低下し、arr1 arr12 二重変異体では殆ど見られなくなっていた。よって、ARR1ARR12 は冗長的にサイトカイニンによるLAX2 の発現抑制を制御していると考えられる。サイトカイニンによるPIN 遺伝子の発現抑制は、ARR1やARR12が直接SHY2 AUX/IAA遺伝子の発現調節領域に結合して発現を誘導することによってなされている。サイトカイニンによるLAX2 の発現抑制はshy2-2 機能獲得変異体やshy2-24 機能喪失変異体においても見られることから、LAX2 の発現にSHY2 は関与していないことが示唆される。LAX2 遺伝子のプロモーター領域やイントロンにはARR1結合モチーフが見られ、クロマチン免疫沈降(ChIP)試験から、ARR1がこれらのモチーフに結合することが確認された。よって、ARR1はLAX2 のサイトカイニンによる発現抑制を直接制御していると考えられる。LAX2がQCでのオーキシン極大形成に貢献しているのかを確認するために、lax2 変異体においてオーキシンレポーターDR5:GFP を発現させたところ、lax2 変異体の根のQCではレポーターの発現量は減少していたが、発現パターンに変化は見られなかった。よって、lax2 変異体のQCではオーキシン量が低下していると考えられる。LAX2 の発現パターンはPIN1PIN3PIN4PIN7 の発現パターンと重複しているが、lax2 変異体でのこれらのPIN 遺伝子の発現やPIN1タンパク質の局在は野生型と変わりはなく、LAX2 はQCでのオーキシン極大の形成や維持に関与していると考えられる。lax2 変異体のQCでの細胞分裂の頻度は野生型よりも高く、WOX5 の発現量が減少していた。よって、lax2 変異体ではQCの機能が低下していると考えられる。lax2 変異体でのSCR の発現は野生型と同等であることから、サイトカイニンはSCRLAX2 の発現を別個に制御していると考えられる。以上の結果から、サイトカイニンはPINとLAX2を制御することで根端分裂組織のオーキシン分布を制御し、このオーキシン分布の変化がQCの分裂活性を制御していると考えられる。

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論文)液胞膜に局在するオーキシン排出輸送体

2013-11-21 05:15:12 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis WAT1 is a vacuolar auxin transport facilitator required for auxin homoeostasis
Ranocha et al.  Nature Communications (2013) 4:2625.
DOI:10.1038/ncomms3625

フランス トゥールーズ大学のGoffner らは、ヒャクニチソウ(Zinnia elegans )の木部培養細胞を用いて二次細胞壁の形成に関与する遺伝子の探索を行ない、その中の1つの遺伝子のシロイヌナズナにおけるホモログWALLS ARE THIN1WAT1 )が機能喪失した変異体は茎の二次細胞壁が薄くなることを見出した。WAT1は、オーキシンシグナルと二次細胞壁形成の統合に関与していることが推測されており、wat1 変異体は茎におけるオーキシン関連遺伝子の発現やオーキシン含量が低下している。wat1 変異体の表現型の変化は茎の発達過程の後期になって見られるようになるが、WAT1 遺伝子の発現自体は発達過程の初期に起こる。発芽10日目の野生型およびwat1 変異体の芽生えを用いてマイクロアレイ解析によって遺伝子発現の比較を行ったところ、wat1 変異体では40遺伝子の発現量に変化が見られ、13遺伝子の発現量が減少し、27遺伝子の発現量が増加していた。発現量が最も減少していたのは、IAA19 とオーキシン応答性のGH3 ファミリー遺伝子であり、どちらもオーキシン応答に関連していることが知られている。発現量が低下した13遺伝子のうち7遺伝子は、野生型植物においてオーキシンによって発現誘導される遺伝子で、発現量が増加した27遺伝子のうち5遺伝子は、野生型植物ではオーキシンによって発現抑制される遺伝子であった。したがって、wat1 変異によって幾つかのオーキシン応答遺伝子の発現が変化している。wat1 変異体にオーキシンを与えると、維管束間繊維の細胞壁の厚さが野生型と同程度にまで回復した。WAT1 遺伝子は、10の膜貫通ドメインを有した389アミノ酸からなる植物特異的なタンパク質をコードしており、このタンパク質はPlant Drug Metabolite Exporterファミリーに分類されている。WAT1はPINやAUX1といったオーキシントランスポーターとアミノ酸配列の類似性は見られないが、二次構造は液胞膜に局在するPIN5やPILS2/5と類似性が見られた。GFPを付加した融合タンパク質を用いた実験から、WAT1タンパク質は液胞膜に局在しており、ブレフェルジンA(BFA)非感受性でゴルジ装置とは異なる経路で液胞膜へ輸送されることがわかった。単離液胞と標識したオーキシンを用いた実験から、野生型植物の液胞はオーキシンを蓄積しないが、wat1 変異体の液胞は経時的にオーキシン蓄積量が増加することがわかった。野生型植物とwat1 変異体のオーキシンの液胞への取込量が同じであるのならば、野生型植物の液胞はWAT1によってオーキシンを液胞の外へ排出し、wat1 変異体の液胞ではオーキシンの排出が欠如していると考えられる。液胞からのアニオンのオーキシンの排出は熱力学的に上り坂輸送となることから、エネルギー源としてプロトンの下り坂輸送がカップリングしていると考えられる。よって、WAT1はプロトン:IAAシンポーターとして液胞からオーキシンを排出していることが推測される。そこで、プロトン勾配を消すために、アンモニウムイオンを添加したところ、野生型植物液胞でのオーキシン量の増加が観察された。実際にシロイヌナズナの液胞にオーキシンが存在するかを調査したところ、IAA、IAAの前駆体、IAAの異化産物であるoxIAA、IAAとグルコースの縮合体が検出された。したがって、液胞はオーキシンの蓄積やオーキシン量の制御において重要であることが示唆される。WAT1 を発現させた酵母は標識したIAAの取込量が増加するが、この取り込みは非標識IAAを添加することで強く阻害され、oxIAAやNAAを添加することによってもある程度阻害された。IAAとアミノ酸や糖との縮合体、インドール-3-酪酸や2,4-Dの添加では標識IAAの取込は阻害されなかった。また、WAT1 を発現させた酵母のトリプトファンの取込に変化は見られなかった。WAT1 を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞においても酵母と同様に標識IAAの取込が観察されたことから、WAT1によるIAA輸送は植物特異的な他の因子を必要としないと考えられる。以上の結果から、WAT1は液胞においてオーキシンの排出輸送体として機能しており、液胞は細胞内オーキシン量の調節において重要であると考えられる。

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論文)シロイヌナズナ芽生えの光屈性における光受容部位

2013-11-18 22:25:09 | 読んだ論文備忘録

Defining the Site of Light Perception and Initiation of Phototropism in Arabidopsis
Preuten et al.  Current Biology (2013) 23:1934-1938.
doi:10.1016/j.cub.2013.07.079

光屈性は、植物が光合成を行なうための光受容を最適化するための応答である。これは屈性を起こす器官の光の当たる側と陰の側の間の不均等な成長によって起こる。単子葉植物の芽生えでは、子葉鞘の先端部が光を受容し、このことが引き金となってオーキシンの勾配が形成され、下部の組織で不均等な分裂が起こり、屈曲が形成される。双子葉植物の芽生えでは胚軸が屈曲を起こす場となるが、光受容の場については明らかとなっていない。これまでの研究から、子葉は光屈性において重要な役割をしていないことが明らかとなっている。スイス ローザンヌ大学Fankhauser らは、子葉、茎頂部、茎頂フック部分を含む上部を切除したシロイヌナズナ黄化芽生えに青色光照射をすると屈曲を起こすが、胚軸の伸長領域やその下部を切除した芽生えは光刺激に対して応答を示さないことを見出した。したがって、黄化芽生えでは、伸長領域を含む胚軸の上部が光屈性を引き起こすために必要であると考えられる。子葉と胚軸先端部を切除した明所育成シロイヌナズナ芽生えも光屈性を起こすが、黄化芽生えの場合と比較すると応答性は低下していた。よって、脱黄化した芽生えは黄化芽生えよりも子葉や茎頂分裂組織の役割が大きいと考えられる。先端部を切除した試験では傷害応答が光屈性に影響する可能性があるので、子葉の発達が見られないpid wag1 wag2 三重変異体の黄化芽生えを用いて解析を行なったところ、野生型と比較すると応答性は低いが、この変異体も光屈性が観察された。以上の結果から、黄化芽生えの子葉、胚軸先端部、胚軸の伸長領域よりも下の組織は光屈性刺激の受容や光屈曲に関与していないと考えられる。胚軸の伸長は、子葉や茎頂から供給されるオーキシンによって引き起こされるので、光屈性の低下は成長の低下によるとも考えられる。そこで、光照射90分前にフック部分を切除した芽生えを用いて試験を行なったところ、無処理芽生えと比較すると応答性は低下していたが、そのような芽生えでも光屈性を起こした。よって、黄化芽生え胚軸での光屈性には、子葉、胚軸先端部、胚軸下部から供給されるオーキシンは関与しておらず、胚軸上部と子葉の節の部分の下の領域での局所的なオーキシン再配分が屈曲を引き起こしていると考えられる。光屈性刺激を受容している領域を限定するために、光受容体であるフォトトロピン1(phot1)をphot1 phto2 変異体で局所的に発現させて光屈性が回復するかを見たところ、PHYTOCHROME KINASE SUBSTRATE4 プロモーター(pPKS4 )でphot1を胚軸の伸長領域で発現させた形質転換体や、CHLOROPHYLL A/B BINDING PROTEIN 3 プロモーター(pCAB3 )で子葉やフック部分で発現させた形質転換体は光屈性を起こすことがわかった。先に述べたように、子葉と茎頂分裂組織は光屈性に必要ではない。よって、pCAB3pPKAS4 で発現領域が重なっているフックの下の数細胞での光受容が屈性を誘導しているか、子葉から胚軸伸長領域までの広い領域で光受容を行なっているかのどちらかであると思われる。phot1はシロイヌナズナ胚軸の全ての細胞層で発現している。そこで、phot1を表皮特異的に発現するMERISTEM LAYER 1ATML1 )プロモーター、皮層特異的なAT1G09750C1 )プロモーター、内皮特異的なSCARECROWSCR )プロモーター制御下でphot1 phot2 変異体で発現させたところ、いずれのプロモーターで発現させた形質転換体においても光屈性が回復した。phot1をどの細胞層で発現させも光屈性が起こるということは、phot1から発せられたシグナルは胚軸の各細胞層へ素早く伝達されていることが推定される。NON PHOTOTROPIC HYPOCOTYL 3(NPH3)タンパク質は、光屈性に関与しており、光受容したphot1によって脱リン酸化される。NPH3の脱リン酸化は、phot1をどの細胞層で発現させた場合でも見られることから、局所的にphot1が活性化してもすぐのそのシグナルは各層へ広がると考えられる。以上の結果から、黄化芽生えの光屈性は、胚軸の上部から子葉の節の下部の伸長領域での局所的なphot1の活性化によって発せられたシグナルが素早く胚軸の全ての細胞層に広がって引き起こされると考えられる。

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