非国民通信

ノーモア・コイズミ

青森の雪すら危険だというのなら

2012-02-27 23:04:00 | 社会

雪遊びイベント:那覇市が中止を決定 沖縄に避難の保護者ら、放射能汚染を不安視(毎日新聞/琉球新報)

 那覇市は21日、那覇市松尾のにぎわい広場で23日に開催予定だった青森県から運んだ雪を使った雪遊びのイベントを中止することを決めた。放射能汚染を恐れて沖縄に避難してきた幼い子どもを持つ保護者らが20日、雪の放射能汚染や子どもの被ばくを不安視し、市にイベントの中止を求めていた。
 
 同広場内にある久茂地児童館で21日に行われた保護者に対する説明会で、那覇市平和交流・男女参画課の比嘉勉課長は「中止を求める意見書に名前を連ねた大半が自主避難者だ。被ばくを恐れて避難して来た方々の放射線の汚染に対する心情に配慮して、中止を決定した」と説明した。
 
 市担当者は20日、県外からの避難者らに対し、イベントで使われる雪に関する青森県側の調査記録を示し「危険との認識はない」と説明していた。しかし、避難者からは調査結果を疑問視する声やイベントの中止を強く求める声が相次いだ。
 
 横浜市から昨年10月に家族で避難してきたという久野綾子さん(34)は「他の児童館でもイベントが予定されているのなら、久茂地児童館だけでなく、他の児童館も同じように中止してほしい」と訴えた。

 さて、今回も少しばかり取り上げるのが遅くなりましたが、こういうこともあったようです。まぁ、似たようなことが何度となく繰り返されてきたことではありますね。昨年の夏には京都の五山送り火で使われる予定だった岩手の松が送り返されたなんてこともあったわけです(参考)。その当時も放射性物質が付着していないかとか馬鹿なことを言う人が少なからずいたもので、きっと東北の地理すら知らないんだろうなと思いました。福島から岩手、福島第一原発から松の発送元であった陸前高田市の距離を考えれば原発事故の影響を気にしなければならないようなものではなかったのですが、その手の人の頭の中では福島の北隣に岩手があるのでしょう。

 そして今回、受け入れ中止を求められたのはなんと「青森」の雪です。降雪の後に原発事故が起こって、その雪を持ってくるのならまだしも、原発事故から1年近くが経過した後に新たに降り積もった雪に何かを心配するというのもおかしな話ではあります。加えて、岩手よりもさらに北にある青森ですから。福島から青森って、千葉や東京なんかより確実に遠いですよ。でも、その筋の人の頭の中では「東北は一つ」なのかも知れませんね。だから青森だろうと秋田だろうと東北産は即座に危険だと、そう確信して行動している人もいるのでしょう。ゆえに、青森の雪も心配だと。

 空にはビスマスという放射性物質が漂っていて、これは雨や雪と一緒に降ってきます。ゆえに雨天時には一時的に放射線量が増加したりして、これを「原発から再び放射性物質が放出されている!」と騒ぐ人も後を絶たなかったりしたものですが、ともあれ地球上であれば必ず、雨にも雪にも放射性物質は「原発事故とは無関係に」含まれます。それから東京でも沖縄でも北海道でも、精度の高い機械を使って念入りに検査すれば、放射性セシウムもストロンチウムも見つかりますね、核実験由来の。元よりラドンやラジウムは濃淡の差はあれ地球上の至る所で存在しますし、例えば沖縄へ向かうために飛行機に乗るなどして空の高いところへ行けば行くほど宇宙線によって被曝するわけです(そのため宇宙飛行士は原発作業員なんかとは比較にならないレベルの被曝労働となっています)。こうした現状に青森の新雪を持ち込むことで何かが変わると思っているとしたら、それは不勉強にもほどがあると言えます。

 科学的な説明ではなく、医学的な「治療」が必要な人も多いのではないかと思います。たぶん、被災地のガレキ受け入れ問題でもそうですけれど、この青森の雪にすら反対しているレベルの人には何を説明したところで無駄でしょう。確かに行政サイドには説明責任が常に求められるものですが、理解「したがらない」人が相手ではどうしようもありません。そして「理解したがらない」人は週刊誌や自称ジャーナリストや自称専門家の煽りやデマを堅く信じて、その他の人の声には断じて耳を傾けず、家族を巻き込んで大暴れしていたりするわけです。こうなってしまった人の扱い方は、カルトにはまってしまった人を社会復帰させるためにとるべきものと似ているのではないでしょうか。少なくとも悠長に「説明」しているだけでは永遠に解決できないものがあるはずです。

 

思いもよらない「言葉」(NHK 2/21放送)

北関東のある街で、浪江町からの避難生活を続けている中学1年生の女子生徒が取材に応じてくれました。
原発事故のあと、一家は避難先を転々としました。
さらに父親の勤務先も警戒区域にあったため、仕事場が無くなりました。
父親の新たな職場が見つかった北関東の街で、8月から家族6人で生活しています。
避難先の学校に通い出して間もなく、彼女はクラスメイトから思いもよらない「言葉」を突きつけられました。

「放射線があるから近よらないで」
その日以来、彼女は学校に通えなくなりました。
1日中泣き続け、4か月もの間、部屋に独り閉じこもっていました。
母親は「あぜんとして頭の中が真っ白になりました。この憤りをどこにぶつけていいのかも分からず、2人で泣いてました」と話しています。

 こうしたエピソードもまた、何度となく聞かされてきました。何かが変わったかと言えば、放射能ではなく放射線と言われるようになったことくらいでしょうか。どちらの場合も用法として不適切なのは同じですが、それ以前に差別として深刻な問題です。こうした放射能/放射線/放射性物質への恐怖を口実とした差別行為や嫌がらせは少なからず繰り返されているようですけれど、いったいどういう人がその担い手となっているのか考えるべきなのかも知れません。とりあえず子供の場合は、親による刷り込みも大きいように思います。親など周りの大人が放射能、というより福島や被災地に対する偏見を子供に植え付けた結果として子供が差別の実行者になっている可能性は決して小さくないはずです。

 そこで冒頭の事例を思い起こしてください。横浜市から昨年10月に家族で避難してきたという久野綾子さん(34)は、青森の雪をも危険だと訴え、他の場所でもイベントが行われるようなら中止にして欲しいとまで訴えるわけです。わざわざ実名を出してくる辺り、当人と毎日新聞的には英雄的な行動という認識なのでしょうか、それはともあれ福島から遠く離れた、そして事故から1年近く経過した後に降り積もった新雪ですら危険と信じて、それを排除するように要求してはばからない人がいます。自治体が屈したからには、決して一人二人ではなかったことでしょう。しかるに、東北から来たものであれば何でも危険だから排除すべしと信じている人々は、同様に東北から来た「人」をどう思っているのでしょうか?

 科学的根拠などなくとも、自分の思い込みの方を優先する人たちでもあります。自分たちが不安に思えば、それは即ち危険であり、排除することが正当化される、そういう世界観に深くはまり込んだ人たちなのです。青森など東北の雪は危険だと信じる、福島から来たものは危険だと信じる、では福島の浪江町から来た人間を、彼ら彼女らはどう思っているのか? 被災地に由来するものは何でも危険だと唱えて遠ざけようと躍起になっている人が、福島の「人間」だけを例外として扱っているとは、残念ながら考えにくいところです。

 

 ←応援よろしくお願いします

 

 ちなみに紆余曲折の末、青森の雪は他のイベントで使うことになったとか。他の件でもそうですが、被災地から来た何かに大騒ぎしてクレームを付ける人が殺到→自治体が屈する→新聞沙汰になる→自治体の対応に非難が殺到→自治体が方針を転換する、みたいなケースもまた多いように思われます。自治体側としても、寄せられた意見を元に「民意」を推し量ってしまうのでしょう。何であれ被災地由来のものを拒否する声が集中すればそれに靡き、その対応が批判されれば態度を翻すわけです。ならば最初から、自治体の受け入れ方針に賛成の声を寄せるなどの行動をとることにも意味は出てくるように思われます。被災地のガレキを受け入れるか否かで逡巡している自治体には、受け入れ拒否が決まって新聞沙汰になるのに先んじて、受け入れを支持するメールでもFAXでも送ってみたら良いのかも知れません。そういう意見が集まれば、自治体側も多少は強気になるのではないでしょうか。これもささやかな被災地復興支援です。

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7 コメント

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多数派とは限らない危険厨 (プチ左派)
2012-02-28 00:24:44
そもそもこの手のことに抗議してくる連中が多数派かというとそうも限らないわけです。
京都の送り火には千件の反対が来たということですが、賛成の人は初めから声を挙げるわけがなく、反対の人の数だけが計上されるというカラクリにマスコミも気づいてほしいものです。

日進市の花火では20件の抗議に屈して中止したら、その100倍もの「中止を批判」する抗議がきました。

マスコミは危険厨とそれに踊らされた人ばかりセンセーショナルに報道するのではなく、大多数の人は冷静であることを伝えるべきです。

また自治体がこうした抗議に過剰に反応してしまうのも、マスコミ主導の無責任な公務員バッシングが影響しているのかも知れません。
洗脳芸能人と同じヤマイか? (サンドウ)
2012-02-28 02:41:10
タイムリーにも女性芸能人の洗脳騒動がマスコミをにぎわせていますね。

推測の範囲を出ませんが、作為的な見方をすればご指摘のような方々は、あんなふうになっているの女性芸能人と同じなんですよという象徴として利用した演出を社会に見せているようにも見えます。

また一方で、ご指摘の不安心理教的な放射脳な人々自身の一部も含め、自分もあんなに醜くなってるのかもしれないという感覚を持ち始めているからこそ視聴率が伸びるような関心が集まっているのではないだろうか。っという段階にきているような気がします。

全てを拒否することが正義だと思い込んだ人を日本村が否定できない場の空気感から、特異な分子で病的といった社会的認知がされる過渡期のようで、だいぶ解脱する方向に社会情勢が動き出したようにも見えます。もうしばらくこういった事例でうんざりするくらいになるまで出し切らないと、その境地にできないかもしれませんね。
Unknown (くり金時)
2012-02-28 05:55:01
なんかもう、情けない話ですねぇ。自分の「正しさ」を振りかざす人達に屈服する「自治体」。私にしてみれば、「そこまでしなくとも」と、両方に思うのだが。(これが「生活保護」ともなれば、窓口で暴言吐かれて終わりである。それには何も言わぬのに。)雪であれだけ騒ぐのだから、これから「黄砂」が舞うころになるとどうなるのか。(黄砂の方がよほど健康に悪いが。昔ならともかく。)「この手」の人々には、ただ、呆れてしまう。「無知だ」と自ら吹聴しているようなもので、しかもゴリ押しするところが。(そして被害も大きい。困ったことに。)関わらないのが、唯一の方法かもしれません。マスコミも、この手の報道に関して少し考えてみるべきじゃないでしょうか。
青森の雪 (イチゴミルク)
2012-02-28 21:16:05
まるでオカルトの世界だなー。

福島原発から東京のほうが遥かに近いわけで、
放射能の危険は青森よりも高いわけで、
青森なんて距離的にぜんぜん遠くにあるのに
そんなことを言ったら東京に出稼ぎに来ている
沖縄県人に至急帰還命令を那覇市長は出さなければ
危ないぞ。。。
Unknown (非国民通信管理人)
2012-02-28 23:53:25
>プチ左派さん

 実数としては、そこまで多くないのでしょうね。ただ声高であるだけで。そこは自治体もわきまえて欲しいところですが、極右層を当て込んで選挙で惨敗した麻生政権みたいに、国政に関わるようなレベルの人ですら単に「声が大きい」だけの存在に対して勘違いしてしまう、この辺は我々の社会の脆弱さの一つとも言えそうです。

>サンドウさん

 まぁ、カルトと同じで社会的には冷めた目で見られるようになるほど、信者は先鋭化することもありますから、なかなか油断はできないように思います。騒ぐ人の数は減っても、一人一人がより過激になることもあるかと。

>くり金時さん

 生活保護に関しては、受給者(申請者)の方がバッシング対象ですが、今回のような類となると、やはり公務員サイドの方がバッシング対象になりやすいだけに、対応する側も萎縮するのでしょうかね。

>イチゴミルクさん

 ゆえに、その筋の人の頭の中では「東北は一つ」なのだと思ったわけです。危険だと信じている人の頭の中では、日本の地理すらも歪められているのでしょう。
Unknown (毛)
2012-03-02 21:20:31
しかし毎度毎度毎度毎度この手の騒ぎを起こすのは現地の人ではなく、被災地から避難してきた人でもなく、被災地でも何でもないところから避難してきた人ですね。

「横浜市から昨年10月に家族で避難してきた」・・・、ああまたかとため息ばかりが出てきます。

逆に言えばそういうところからわざわざ避難するような人だからこそ、こういう行動を起こすのだとも言えるでしょうが・・・。
Unknown (非国民通信管理人)
2012-03-02 23:56:51
>毛さん

 こうした東京や神奈川など被災地でも何でもないところから勝手に避難してきた人(もしくは避難しようかと思っている人)って、自分たちでは「被害者」のつもりなのでしょうけれど、しばしば福島や東北由来の諸々を排除しようとする「加害者」として振る舞っているんじゃないかと、そう思えるんですよね。

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