非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本を見習うな

2009-02-06 22:28:11 | ニュース

洪水被災者に腐ったイワシの缶詰、タイで閣僚辞任(読売新聞)

 タイで1月中旬、政府が洪水の被災者に配った缶詰の中身が腐っていたことが明らかになり、配給の責任者であるウィトゥーン社会開発・人間安全保障相が3日、辞任に追い込まれた。

 発足後わずか1か月あまりのアピシット内閣で初の閣僚辞任となった。

 洪水に遭ったのは、南部パタルン県。英字紙バンコクポストによると、配給されたイワシの缶詰を食べた被災者約100人が下痢や嘔吐の症状を訴えた。保健省は、製造元の工場を閉鎖し、工場の所有者を刑事告発した。

 原因は何なのでしょうね、単に管理が甘かったのか、それとも意図的に品質を下げた結果でしょうか。あくまで「救済」するために配るのだから、受け取る側の被災者は贅沢を言える立場ではない、食糧が配給されるだけでもありがたいはず、そういう神経で管理していると、このような事態が発生する必然性も高まる気がします。

 日本の場合も似たようなものですよね。洪水の被災者ならぬ、派遣切りという人災の被災者の場合はどうだったでしょうか? 被災者に提示された新たな就業先は、軒並み派遣社員以下、生活保護水準以下の超薄給だったり、常に過労死の危険と戦わざるを得ないブラック企業だったりと、まぁ腐った食料を押しつけるような「善意」が相継ぎました。職を選んでいる余裕のない失業者の増加に「(不人気業種が人を集める)良い機会」と言い出す人もいるわけですが、食べられるものなら選り好みせずに食べるしかない洪水被災者を見て、在庫処分の「良い機会」と呟いた人がタイにいたとしても不思議ではありません。

日本の電機メーカーも見習いたい!IBMが挑んだビジネスモデルの創造的破壊”(ダイヤモンド・オンライン)

 去る1月、IBMは二度にわたって立て続けにビジネス界を驚かせた。

 最初は、1月20日に行われた2008年第4四半期の業績発表。この不況下でテクノロジー企業を含んだほとんどの企業の業績が悪化する中、IBMは純利益(継続事業)がウォールストリートの予想を上回って、前年同期の40億ドルから12%増の44億ドルになったと発表、2009年の見通しも明るいと強気に出たのだ。

 だが、そのわずか数日後、同社で2800人とも4000人とも言われる解雇が行われているという噂が駆け巡った。これほどの大企業ともなると、解雇の規模は明らかにされることが多いが、同社は「発表しなくても違法ではない」と口を固く閉ざした。

 好調な業績の中で、なぜ解雇を? だが、このふたつのニュースは決して無関係ではない。IBMはここ数年、コストカットによる厳しい経営効率化を図り、同時に不況に備えたビジネスモデルの確立を目指して着々と自己刷新を行ってきたからだ。その結果がこの好調な業績。あるアナリストは、「IBMは、まさにこういう不況の時に浮き上がるべく準備してきた」とすら語っている。

 お笑いダイヤモンドの記事なので主張はアレですが、事例そのものは興味深いです。業績好調のIBMが大規模な解雇に踏み切ったという話ですね。ともすると「不況だから」解雇が横行するかのように語られるものですが、実際は違います。好景気でも解雇が業績向上、企業の社会的評価の向上に繋がると判断されれば、労働者のクビはいつでも切られます。

 で、こうしたクビキリを連発する企業の方が投資家の評価は高い、経営面でも将来有望と目されがちです。逆に言えば、労働者に支払うべきものを支払い、安易な解雇に走らない業界の評価は低いわけです。典型的な例がアメリカの自動車産業でしょうか、私はフェアトレードの観点から、奴隷労働で作られた日本車の購入はやめ、(相対的にではあれ)健康で文化的な労働環境から生み出されたアメリカ車を買うべきだと主張したいくらいなのですが、そのアメリカの自動車産業が色々とヤバイだけではなく、見捨てられようとしているわけです。

 トヨタですら経営悪化だのと騒いでいますが、そのトヨタが販売台数世界一にのし上がる=GMが世界一の座から転落するなど、同業他社はもっと深刻な状態です。そこで内部留保の積み上げもなく経営破綻の危機に瀕したアメリカ自動車業界は公的支援を要請するに至ったものの、提示した経営再建計画が不十分とみなされているとか。日本のメディアから伝え聞くところに拠ると、労働者への手厚い保護が少なからず残されており、それが経営再建の足かせになる、経営再建の見込が薄く、公的支援を投入しても無駄に終わる可能性が高いと判断されているそうです。

 まぁ、経営判断としては間違っていないのかも知れません。潰れるのが確実な会社に融資をするのは、新銀行東京の愚を繰り返すようなものです。不良債権化することがわかっているなら、金を出さないのが正解なのでしょう。ただし、業績好調でも解雇を連発、労働者を絞り上げることで利益を上げる企業を有望な投資先と見なす一方で、労働者を守る、労働者に健康で文化的な生活を保障できる企業を切り捨てるようだと、投資には成功したのに社会全体は貧しくなる、政治の面から見れば「失敗」でしかない結果が待っています。政府及び社会がクビキリを促している、それで自分の首を絞めるわけですから。製造業では華々しい勝利を積み重ねておきながら、国民の生活に明るい兆しはなく、一人あたりのGDPも低下を続けた日本のように!

 

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まぁ、確かに (Surnivers)
2009-02-07 09:43:17
固定費は少ない方が良いですからね。
人件費は少なければ少ないほど良い訳ですけれども。

ただし、日本の場合は企業と言うのはある意味公器的な意味合いがあったはずなのです。
つまり従業員の暮らしを支える為の公器ですね。
その意識が最近の企業を見ているとかけているのでは無いかと思います。
あの松下でさえ、15,000人の従業員をカットするとかです。
幸之助氏が見たら何と言うでしょうね。
苦しいのは分かりますが考えものだと思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-02-07 17:16:37
>Surniversさん

 松下幸之助が現役の経営者だったら、今の経営者と同じことをやったでしょう。昔の日本人(経営者)は立派だったが、今の日本人(経営者)はモラルが云々と語りたい人は、そう思い描くかも知れませんがね。中負担低福祉の国家の代わりに企業が社員を守る(=公器のフリをする)ことが経営上もプラスになる時代ならともかく、働く人の取り分を減らせば減らすほど社会的評価が高まる時代なら、幸之助の決断も当然、過去とは違ったものになりますよ。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2009-02-08 01:14:19
会社が儲かることで従業員も幸せになるシステム(←ここ大事!モラルや個人能力に頼るやり方は破綻します)ができれば良いんですけどねぇ…。

あと、経済問題でやたら松下幸之助の名前を持ち出す人は割と見かけますけど、それは私には「双葉山の名前を持ち出して現在の相撲界を非難する行為(彼と同時代の「悪童」の力士も割と簡単に見つかる)」と同じ匂いを感じてフェアじゃないように感じるのですよ。ちょっと管理人さんの考え方とは違いましょうか。
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もはや日本とは悪夢の代名詞なのか (BR-S)
2009-02-08 12:39:56
そんなのは俗論だと言われればそれまでなのですけれど、

「アメリカを見習え」と言えば、個人主義・能力主義・大量生産大量消費など
「ヨーロッパを見習え」と言えば、他国との協調・高福祉・自然との調和など

といった事柄を指向するものだと思うのですが、それでは、高度成長やバブルの頃ではなく現在の「日本を見習え」と言われて、一体どのような事柄が連想されるのでしょうか。
米ビッグスリーの救済の際にもそんな話が出ましたが、どうやらアメリカのように勇ましく、表面的な富裕さを享受しやすいものでもなければ、ヨーロッパのように人や地球に優しいものでもなさそうです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-02-08 14:20:12
>ノエルザブレイヴさん

 なるほど、松下幸之助の美談には事欠きませんが、同時代には取り繕いようもない悪質な事業主が数多いたはずですよね。仮に松下幸之助が理想的な経営者だったとしても、その時代の経営者が皆そうだったわけではない、そうした面では松下幸之助を徒に持ち上げるのは色々なものを見誤らせることになりそうです。

>BR-Sさん

 90年代初頭までの日本には、欧米とは異なった未来像を見出す人がいたようですが、21世紀の日本は今、どういう目で見られているのでしょうね。欧米と比べると労組が弱くて人員整理が簡単、会社が儲けやすい……と見せかけて、輸出産業、製造業への依存度が高くGDPは上がらない国ですから。
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働く意味 (熊蔵)
2009-02-08 19:21:33
 正直、誰からもアクセスして就ける、または働き続けられる職でまともな人間生活が維持できるものが異常に少ないのですよ(こじんてきにはかいむだと考えています)。
 そんな中でまるで施しものでもあるかのように用意されている職は、人手不足になるのが当然のような条件のものであるわけです。それに関しては論を繰り返すまでもありませんが…
 私事に至りますが、自分個人は貧困者向けの公営団地に住んでいるのですが、同じ団地の住人でも貧困化が進んでいるようです。元々まっとうな職(不安定且つ低所得)とは無縁な人たちが多く、この状況では生活保護水準以上の所得を労働市場で得るのは不可能であるだろう人が少なくありません。
 そんな人と話すこともあるものですから「今の状況で体や心を壊すまで頑張る必要はないですよ。共産党に相談して生活保護につなげたり勤医協病院で提供してくれる無料医療サービスに助けを求めたほうがいいですよ。自分は共産党シンパじゃないですけど…。」
 とアドバイスしています。自分と先は分からない身ですから不毛な労働市場から撤退する段取りと心づもりはしておかなければならないかと思っています。
 真面目なものや素直な者が最初に死ぬ国だと自分は感じています。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-02-09 22:32:52
>熊蔵さん

 誰もが雇用主の求めるものを等しく備えているわけではありませんが、生きていくための収入源は誰もが必要としていますからね。能力に応じて働き、必要に応じて……と行きたいところですが、残念ながらそうはなっていないどころか、(会社から見て)価値のない人間はムダとばかりに切り捨てようとする世の中ですし。
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