非国民通信

ノーモア・コイズミ

低賃金で働く女性が増えてもねぇ

2015-09-09 23:38:50 | 雇用・経済

働く時間減少の矛盾 介護職の賃金を上げたけれど…配偶者控除の壁(産経新聞)

 深刻な介護職不足のなか、政府は介護職の処遇改善を目指し、賃金アップの旗を振る。しかし、非常勤の女性パートが多い訪問介護の現場では、時給を上げると、労働力が減るという不思議な現象が起きている。夫の「配偶者控除」に収まるよう、働き方を調整するためだ。制度の見直しを求める声も上がっている。(佐藤好美)

 

時給900円の求人に、なぜママが殺到したのか(東洋経済)

 この狙いは大当たりで、予想をはるかに超える反響があった。求人には、社会人経験のある子持ち主婦が殺到。アウトソーシング業界は人手不足で時給1400円でも人材が集まらないそうだが、今回時給900円で募集をかけたところ、なんと300人以上もの応募があったという。

 

 さて政財界は「女性と高齢者の活用」をしきりに語っているわけですが、実際のところどんな風に「活用」することを理想としているのか、その辺が明確に打ち出されていないと思います。中核的人材として将来的には経営の一端を担って欲しいのか、それとも「安価な労働力」として旧態依然たる人件費圧縮頼みの日本的経営を支えて欲しいのか、これはハッキリさせるべきでしょう。

 先月は「女性社長が男性従業員を蹴り殺す」なんてニュースもありました。やはり「男も女も大した違いはない」ものだと思います。会社で偉いのが男性ばかりであるからこそ、専らパワハラ、セクハラの加害者は男性が主でした。しかし会社で高い地位に就く女性が増えれば、女性がパワハラやセクハラの加害者になるケースは急速に増えていくことでしょう。世間が男性と女性に期待するものが異なろうと、結局は男も女も大した違いはありません。

 政治の世界にしても然り、サッチャーもメルケルも男性政治家よりもマシかと言えば、むしろ逆です。今まで男性が占有していた地位に女性が入っていけば何かが良くなるかと言えば、それは夢物語でしかないと思います。ただ単に、人手が不足すれば男性だけから募っている余裕はなくなる、女性だからとの理由で選考の対象から外してもいられなくなる、ぐらいですね。景気が本当に良くなれば、男性だけでは頭数が足りない、性別によって選り好みしてもいられない、その結果として女性にも活躍の機会が巡ってくる、それを結果論で「女性の活躍で経済成長」みたいに呼ぶのかも知れません。

 

「夢は専業主婦」と語るのはダメなことですか(東洋経済)

【ご相談】

この春、大学を卒業して専門商社に入社しました。先日、配属先の上司と面談があって、将来のキャリア目標について質問されたのですが、正直に「数年後には、専業主婦になって育児に専念したい」と言ったところ、すごくがっかりした顔をされた揚げ句、「育てる気がしなくなった」としかられてしまいました。

 

 さてこちらですが、ある意味で夢のある話です。今時、夫一人の稼ぎで妻子を養えるような甲斐性のある男性は希少ですし、男性側の結婚願望も薄まっている中でめでたく専業主婦の座に収まるというのは、今なお男性社会の会社の中で昇進を重ねていくことよりも難しい、よりレア度の高い挑戦と言えます。専業主婦になるのが難しい時代だからこそ、それを目指すのは「夢がある」と肯定的に評価してやっても……と思わないでもありません。

 なお私の勤務先の偉い人は「(女性社員に言及して)定年までウチで働くつもりでいられても困る」と語っていました。そりゃ、一般的な会社の本音はそうですよね。「(今時の)若者がすぐに辞めてしまって困る」と託ちつつ「もっと簡単に社員を解雇できるようにすべきだ」と訴えるのが日本の経営者というものです。要するに「会社の望む間は辞めて欲しくないが、不要になったら辞めさせたい、人を切るタイミングは会社が決めたい」わけです。

 上記引用の女性の場合も然り、会社の意図しないタイミングで寿退社されるようであっては困る、だから会社目線でしか物事の考えられない上司は彼女を叱ったのでしょう。しかし「本当に」定年まで働かれたら嫌だと、内心では思っていたはずです。若い間だけ、会社が必要な間だけは働いて欲しいが、トウが立ったら退社して欲しい、そしてまた若い子に入れ替えたいと、そう願っているものです。しかし、辞めるタイミングを社員の側で決められるのは許せない、だから「育てる気がしなくなった」と。

 生き方なんて本人の自由ですが、いずれは会社から切り捨てられるのに大層なキャリア目標を掲げることが求められるのもまた嫌な話です。会社の若い人が全員、会社に掲げさせられた目標の通りに昇進を重ねていったら瞬く間に「管理職の数>ヒラ社員の数」となってしまいそうなもの、ならば初めから「ほどほどに働いたら退職します」ぐらいの人の存在も調整弁として尊重されても良さそうに思います。しかるにキャリアを描かせておきながら梯子を外すのもまた日本的経営です。とりわけ冒頭に引用した事例を見るに、日本の会社は女性に何を求めているのか――それを理解しているなら会社に勤め続ける以外の選択肢を公言した人の方が、まだしも現状を理解しているのかも知れません。

 

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6 コメント

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介護現場では (介護員)
2015-09-11 00:55:49
女性と若者が活躍出来る職場
まあ旦那の賃金+パートなんて有閑主婦は今居ないな

定年退職後もガンガン働いて
夜勤こなして

まあ介護現場ではその女性が上司パワハラ

記事に関係ないかものコメント失礼。
介護現場では女性なら若者なら引く手あまたなんです。
訪問介護 (介護員)
2015-09-11 01:02:35
ではそうなんだ…配偶者控除問題で求人が
へ~地域とか関係ないか?
訪問関係バイトとか低い賃金の方が殺到か 考えてしまう
だってそれでは困るみたいな人も居れば
配偶者控除関係なくそれでも仕事ほしい方々
格差か暇な主婦が…失礼
たんなる家計の足しか。
Unknown (非国民通信管理人)
2015-09-12 23:54:47
>介護員さん

 結局のところ、生活できるだけの給与を求める人と、あくまで家計の補助レベルで働きたい人が競合して、それで給与水準が家計補助のレベルで収まってるのが現状ではないでしょうかね。
田舎は日本とは違う? (しもじい)
2015-09-16 21:53:05
私の住む田舎では、子供が小学生くらいになってパートに出ていない主婦など想像することも困難です。
都会には一生専業主婦なんて人たちがが本当にいるんでしょうか?なんだかよその国の話を聞かされているような・・・
田舎は日本ではない? (しもじい)
2015-09-16 22:08:17
>数年後には、専業主婦になって育児に専念したい

田舎では
専業主婦=子供が保育園に入ったらパート勤めをするお母さん
という意味で使われております。ごく一部の職業婦人(教員や公務員)を除けばほぼ全員が専業主婦ですが何か?
Unknown (非国民通信管理人)
2015-09-16 23:48:33
>しもじいさん

 そういう用法は初耳ですが、まぁ一般的な意味合いでの専業主婦は、豊かな時代の豊かな都市でこそ見られる稀有な存在であり、そうであるからこそ専業主婦を目指すのは夢のある話なんです。簡単に、なれるものではないのですから。

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