非国民通信

ノーモア・コイズミ

それは自衛ではない

2007-05-19 22:46:02 | ニュース

首相、集団的自衛権行使の研究を指示 第1回有識者会議(朝日新聞)

 集団的自衛権の研究を掲げる安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の初会合が18日、首相官邸で開かれた。首相は、米国向け弾道ミサイルの迎撃など四つの事例を挙げて「新たな時代状況を踏まえた、新たな安全保障政策の構築」の検討を指示。集団的自衛権行使の禁止など政府の憲法9条解釈も含めて、安全保障に関する法的な制約を見直すことを諮問した。懇談会は、5~6回議論したうえで秋に提言をまとめる。

 首相が例示したのは、(1)公海上で行動をともにする米艦船への攻撃に対する反撃(2)米国に向かう弾道ミサイルの迎撃(3)国際平和活動をともにする他国部隊への攻撃に対する駆けつけ警護(4)国際平和活動に参加する他国への後方支援――の4点。(1)と(2)は集団的自衛権の行使につながるほか、(3)と(4)は政府が憲法解釈で禁じている「海外での武力行使」や「他国軍の武力行使と一体化する行為」の原則にかかわる。

 集団的自衛権の研究のための諮問機関があるそうで、安倍首相の肝いりであるからには初めから結論ありきの翼賛団体であるような気がしてならないのですが、とりあえず秋までは議論を続けるということで、当面は考えるフリをして過ごす模様です。

 今回のニュースで少しおもしろいのは、安倍首相の例示した「集団的自衛権」と市民レベルでの改憲論者が唱える「集団的自衛権」に小さからぬ溝があるところでしょうか。すなわち専門の政治家ではなく、ごく普通の市民が声高に改憲、とりわけ9条を巡る改憲問題を語るときに前提とするのは彼らが熱望してやまない仮想敵国からの侵略です。「もし日本が攻め込まれたときにどうするのか?」そう言って攻め込まれることを前提として議論を始めるわけですが、これは安倍首相の考える9条改憲の行く末とはいくらか違うようです。

 引用記事中にあるように、安倍首相の語る集団的自衛権の具体例は曖昧な仮想敵を必要としたものではなく、良くも悪くも具体的なものでした。すなわち(1)公海上で行動をともにする米艦船への攻撃に対する反撃(2)米国に向かう弾道ミサイルの迎撃(3)国際平和活動をともにする他国部隊への攻撃に対する駆けつけ警護(4)国際平和活動に参加する他国への後方支援・・・

 もしかしたら専門用語としての「集団的自衛権」にはそのような意味合いがあるのかもしれませんが、より一般的な意味合いでの「自衛」を思わせるものは安倍首相が挙げる具体例の中にはありません。どうやらアメリカ艦隊が攻撃された場合、アメリカにミサイルを撃ち込まれた場合が安倍首相の考える集団的自衛権の具体例のようです。そして国際平和活動云々とは言うものの、過去の例にさかのぼって考えるのであれば日本の国際平和活動とはすなわち米軍に随伴して行われるものであり、国際平和活動をともにする他国部隊=アメリカ軍、国際平和活動に参加する他国=アメリカ、そのアメリカ軍を警護すること、アメリカへの後方支援が日本の集団的自衛権の行使である、と。

 普通に考えれば、そこで護られるのは日本ではなくアメリカであり、一般的な用語で語るのであれば「自衛」ではなく「米国防衛」です。その過程では日本がアメリカの盾となる、すなわち日本が危険に晒される可能性の増大が予測されるわけで、もし国の命運を握る為政者の考える「集団的自衛権」がこのようなものであるならば、そんな権利は放棄してしまった方が間違いなく安全でしょう。 

 

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