給食を実施している全国の国公私立の小中学校で、全児童生徒の約1%にあたる10万人近くが05年度に給食費を滞納し、滞納総額は22億円余りになることが24日、文部科学省による初の調査でわかった。滞納がある学校は全体の約44%。滞納の理由について学校側は、60%の子どもについて「保護者としての責任感や規範意識」の問題、約33%については「経済的な問題」と見ている。
滞納した児童生徒がいるのは43.6%の1万3907校で、総額4212億円余の給食費のうち0.5%の22億2964万円が滞納された。滞納した児童生徒は計9万8993人で、小学校で6万865人、中学校で3万8128人。
PCトラブルのために少し時機を逸してしまいましたが、つっこみどころ満載のこのニュースは是非お読みいただきたいところなのです。世の中には産経新聞しか取り上げないニュースもあれば毎日新聞しか取り上げないニュースもあるなど、各新聞の問題意識によってニュースは取捨選択されています。そんな中でこのニュース、給食費の滞納問題は大手新聞社が足並みを揃えて取り上げました。どうやら全国民に関わる重大な問題として各新聞社の意見が一致する深刻な課題のようです。
記事によると22億2964万円にのぼり、これは総額4212億円余の給食費のうち0.5%に相当するそうです。つまり、今まで一人あたり200円でやりくりしていたのであればその0.5%に相当する1円が未納、従来200円でやりくりしていたものが199円でやりくりせねばならないことになるわけです。ワォ、こいつは深刻な問題だぜ! ちなみに国民年金の未納率は平成16年度で36.4%、滞納も含めれば半数近いでしょうかね。ついでに言えば日本政府は国連分担金を毎年滞納しています・・・
滞納の原因について学校側の見方を選択式で尋ねたところ、保護者の姿勢を問題としたのが60.0%で、保護者の経済状況をあげたのは33.1%だった。
どんな選択肢があったのかが気になりますが「保護者としての責任感や規範意識」を滞納の原因として選択した人が6割に到達。反動教育の成果でしょうか、教育現場でも規範意識の論理は確実に浸透してきているようです。そこでもう一つ気になるのが、滞納の原因は何か?ということです。
このニュースはほとんどの全国紙で取り上げられているにもかかわらず、不思議なことにどのメディアも滞納の原因には触れていません。ただ、学校側への聞き取り調査の結果――60%の子どもについて「保護者としての責任感や規範意識」の問題――を紹介するだけです。そこからわかるのは学校側では保護者の規範意識に原因を求める人が6割を占めていることであって、実際の原因は推測するほかありません。
いずれにせよ問題に対処するにはまず原因を正しく把握することが重要であり、それに対する感想を聞くのは後回しでも良さそうなものです。しかるにこの文部科学省の調査では給食費滞納の原因は公表せず(調査はしたのでしょうか?)、ただ給食費滞納の原因はなんだと思いますか?とアンケートを採っただけでした。これではただの世論調査です。
児童生徒の数で見た都道府県別の「滞納率」は表の通り。沖縄が6.3%と突出しており、北海道(2.4%)、宮城(1.9%)、福岡、大分(1.6%)などが続いた。
唯一データらしいデータといえばこんなところ、日本で最も経済的に立ち後れている沖縄の滞納率が傑出しており、次に来るのが最北の地である北海道、いずれも景気回復から取り残された人の多そうな地域です。この辺から推測される限りではやはり滞納の原因は経済的なものが大半であるように見えますが、とにかくちゃんとした調査が求められるところです。
ちなみに滞納費の総額22億2964万円は、多連装ロケットシステムMLRS1台19億3933万円とOH−1観測ヘリコプター1機24億4750万円の中間くらいの値です(兵器の値段は2003年度のもの)。これが高いか安いかは読者諸兄の判断に任せます。ついでに言えばこの調査にかかった費用はどれくらいでしょうか?
過去と比べて給食費の滞納が増えたかどうかについては、「かなり増えた」が13%、「やや増えた」が36%で約半分の学校が増加傾向とした。「やや減った」は9%、「かなり減った」が3%で、「変わらない」は39%だった。
これもただの世論調査であり、実態を表したものではありません。実際に滞納が増えたかどうかの調査は行われず――もしくは公表されず、ただ学校の先生の考えるところでは「かなり増えた」が13%、「やや増えた」が36%。この調査からわかることは、実際に滞納が増えたかどうかは不明ながらも滞納が増えたと考えている人が全体の49%存在するということだけです。
これと似たような例として思い起こされるのは、凶悪犯罪、少年犯罪、外国人犯罪などを巡る言説です。これらの犯罪は実際には増えていない、むしろ長期的には減少傾向にあるにもかかわらず、世論調査では増加しているとの回答が多数を占めがちです。現実では問題が減少象に向かっている場合でも、逆に増加していると勘違いした回答が得られる場合が時々あるわけでして、その一つが凶悪犯罪の問題であり、そしてもう一つが給食費滞納の問題なのかもしれません。
もっとも凶悪犯罪に関しては、微罪を見逃さないことで検挙数を稼ぐ努力の結果であるとはいえ、検挙数の増加という一応の論拠があるだけにまだ世論調査の結果も納得できるものがあります。しかし給食費の滞納に関しては、そもそもデータに隠された部分が多すぎです。わかっているのは全体の0.5%相当が滞納され、沖縄など経済的に立ち後れた地域で滞納が多いことだけ、これを論拠に増加したか減少したかを語ることは不可能であり、ただ個人的な体験に基づく感想を述べることしかできないはずです。
学校給食費 「払わない」は親失格だ(朝日新聞)
なぜ滞納するのか。文科省が学校の見方を聞いたところ、経済的な事情で「払えない」保護者が33%、払えるのに「払わない」保護者が60%だった。
給食費を集めたり、保護者に払うよう求めたりしている教職員の判断なので、実態を反映した数字とみていいだろう。
経済的な事情で払えない場合には、就学援助の制度や、生活保護による教育扶助がある。しかし、文科省によれば、保護者が就学援助制度を知らなかったり、教育扶助の資金を他に使ったりする家庭が多かった。
その憤りと断言に満ちた論調が産経新聞を彷彿とさせる1月28日付の朝日新聞社社説の中から、それほど感情的ではない部分を抜粋しました。例によって単なる世論調査と実態調査を混同した上で断言を積み重ねており、上記引用の論者も「金があるのに払わない奴が6割もいる、けしからん!」とそんな論調なのですが、その中から実際には多数を占めるであろう経済的な事情による滞納者に触れた部分がここです。
曰く「就学援助の制度や、生活保護による教育扶助がある」と。しかし日弁連の調査によると生活保護の拒否66%は「違法」(初出は朝日新聞、掲載期限終了のため人民網にリンク)
失業や病気で生活できなくなった人を支える生活保護制度について、日本弁護士連合会(日弁連)が電話相談を実施したところ、自治体窓口で保護の申し出を拒否されたうち、66%が自治体の対応に生活保護法違反の可能性があることがわかった。保護申請書を渡さないケースがほとんどで、病気で生命の危険があったのに働くよう求めたり、生活が苦しい親族に援助してもらうよう説得したりしたケースもあった。日弁連では、保護費を抑えようとして申請をさせない「水際作戦」が広がっているとみている。
他人を断罪しようとする前に、もう少し現実に目を向けるべきでしょうね。










