「『息抜きのために私用でネットやメールを使うのは、使った社員が悪い』というのは誤り。もっと深い原因がある」。そう話すのはキヤノン電子社長・酒巻久氏だ。
PC導入以前は給湯室など社員のサボる場所は決まっていたが、ネットサーフィンが自席でできるようになり、一見しただけではサボっているか否かがわかりにくくなってしまった。
キヤノン電子では、PC操作をリアルタイムで監視するソフトを商用化した。このソフトで就業中にネットやメールで遊んでいる社員をあぶり出すことができる。
酒巻氏曰く、「調査すると、一般にPC利用時間の3割程度は私用で使われていることが多い」という。
特に経営層や管理職までがネットで遊んでいる会社は、業績が悪くなりがちだ、と酒巻氏は指摘。「銀行から出向してきた人など、職務があいまいな人ほど遊んでいる」(酒巻氏)。
この酒巻氏には「椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!」という著書があるそうですが、氏が社長を務めるキヤノン電子には当然パソコンがあるわけで、その代りに監視ソフトを常用しているようです。椅子は本当にないそうですね(参考)。それ以外に目を惹くのは「5メートルを3.6秒以内に通り過ぎないと警報が鳴る廊下」辺り、まぁいずれ氏のアイデアはどこかの収容所で採用されるのではないでしょうか。こうした環境に人間を閉じこめると、人間はサル以下に堕ちるようですが。
まぁ、キヤノン製の監視ソフトなど使わずともサーバーのアクセスログなどからインターネット利用状況は割り出せるもので、その辺は解雇理由としてよく用いられるのはご存知のことと思います。普通はクビにしたい人を狙って監視する、目的があって監視するのでしょうけれど、キヤノン電子の場合は監視そのものが目的なのかも知れませんね。椅子に座らせず社員を立たせておくことに快感を覚える社長であるなら、社員を監視することにも喜びを感じるでしょうから。
さて、私用でPCを使うのは「暇があるから」と引用元の記事の後半にあります。この「暇」をなくそう、社員の労働力を使い尽くそうとするのが日本式の効率化、「カイゼン」であるわけですが、それで業績が伸びるかどうかは微妙なところです。そもそも「仕事が上手く運んでいる」からこそ「暇になる」訳で、むしろ「暇がない」会社ほど無駄が多い、無駄が多いから仕事に時間が掛かり、それゆえ結果的に「暇がない」会社も多々あります。これを効率化すると、仕事に掛かる時間が減って「暇になる」訳ですが、この状態を「カイゼンすべきである」と勘違いする経営者も多くて、余計な仕事を増やして現場を混乱させる、まぁ珍しいことじゃありませんよね。
―― 売り上げが減るのは経営者にとって恐怖感のあることだから、普通は何とかして売り上げを増やそうとします。
いや、その何とかするとか頑張っちゃうのが、やはり良くないんです。
(中略)
輸出産業は大変でしょうけど、日本の売れ行きはそんな何割も変わっていない。全体で数%しか下がってません。うちは数%の落ち込みで全体がびびるような仕組みじゃない。
確かに、既存店だけを見れば、なかなか伸びないですよ。ただ、よそよりはましでしょう。なぜましかというと、よそは普段売り過ぎているから(笑)。いつも、うちは普段売ってないからあんまり落ちないと言っているんだけど。
―― それはどういう意味ですか。
頑張ってないからです。頑張って売り上げをつくってきた人は、こういう環境になった時にそれ以上の頑張りができないから、落ち込みが大きく出ちゃうんです。普段から無理をしていると、足元を揺らされたら厳しい。
こちらはケーズデンキの社長の話です。ケーズデンキはケーズデンキなりの問題もあるのでしょうけれど、ここで文章に起こされている分に関しては、なかなか見所があるように感じます。ヨドバシやヤマダとは対極ですね。で、曰く「普段から無理をしていると、足元を揺らされたら厳しい」と。
大半の会社がそうでしょうけれど、目先の利益を最大化することが求められる、今月は予算を達成したから、後はのんびりしていればいいや、では済まされないわけです。成果主義などといいつつ、「結果さえ出せば許される」会社などほぼ皆無でしょう。そうではなく、ノルマ達成だろうが未達だろうが、限界まで売上を伸ばすよう絶えず迫られる、営業の世界ではよくあることです。
今月は売り上げ好調で予算を達成したから、後は無理に売り込みするまでもない、そうなると「余裕」「暇」が出てくるわけです。それこそネットサーフィンでもして時間を潰そうかというような。ところがこの「暇」をなくそう、くつろいでいる余裕があるならもっと売れと、普通の職場だったらそうなります。しかるにこれをやっていると、つまりいつも全力で営業していると、そこから先がないわけです。不況になってもそれ以上の余力がない、落ちていくしかない、「普段から無理をしていると、足元を揺らされたら厳しい」ことになるわけです。
好況時にも無理をして大幅利益、不況時には無理が利かず大幅減益、あるいは好況時には余裕を持って小幅の利益、不況時には余力を活用して小幅でも利益確保、前者も後者も、もしかしたらトータルで見れば収支はトントンなのかも知れません。私には後者の方が、景気に振り回されて右往左往する無駄がない分、クレバーに見えますけれどね。











日本の会社は不況時の大幅減益に備え、好況時に内部留保を溜め込んでますからね〜。
素晴らしき日本企業は、好況だからといって利益を労働者に分配するような、そんな馬鹿なマネはしません! 流石、日本企業は優秀ですなァ!(棒読み)
日本マンセェェェェェェェェ!!!!(やけくそ)
こちらに、社長室のイスにふんぞり返ってくつろぐキヤノン電子社長・酒巻さんの画像がありますよ。
急がないと、会社も地球も滅びてしまうそうですよ。
『シュガー・エグゼクティブが会社を溶かす』
『シュガー・コーポレーションが日本を溶かす』
まあ、どんな最悪な条件でこき使うだけこき使われても、社員の方から辞めるなり、過労による死亡や自殺があれば、すぐに次の人員を補充すれば済むので「効率的」と言えるでしょう。キャノンに限らず経営者は何をしても免罪してもらえることの方が多いですから。
このような行いを立派だと言うような人はこのような会社に入って働くなり何なりしてくれればよいのですが、このやり方が大中小問わず経営者に気に入られて、「当然」となってしまうのではないかと心配ですね。少なくともtamaさんのリンク先を見るに日経新聞には賞賛されているようですし。
ある意味では、食い溜めして脂肪を蓄積させて冬眠に入る動物と、一年中活動する動物みたいなものでしょうか。どちらが人間の生活に適した経営科と言えば……
>tamaoさん
えぇ、最初にこのネタを知ったのはそこからです。そこから拝借した画像も、こっそりリンク先に埋め込んであります。
>Green Monsterさん
しかるにキヤノン電子では「急ごう、さもないと会社も地球も滅びてしまう」と喧伝しているそうで、我々の予想以上にスケールが大きいようです。もう、日本どころか、「地球」ですって。
>GXさん
対比として挙げたケーズデンキの社長も言っていたわけですが、労働者側に選択の余地が失われる不況期こそ、会社からすれば新たに人を雇いやすい時期ですからね。キヤノン電子にしても、「代りはいくらでもいる」状態でしょうか。そして「経済誌」はこんなのをヨイショするわけですから……
その一方で社員がオフィスの掃除してる非効率さは全く気にならない様子です。
学生の時分から「何で経済や会社は右肩上がりでなければならないのか?」分からない(いまだに分かりません)ので就職先がまともにありませんでした(苦笑
「ほどほど稼いでダラダラ暮らす」が許されない世の中は一種の牢獄です。
日本人は勤勉だ、なんてどこの誰が言い始めたことなんでしょうね。いい迷惑です。
社員が椅子に座って休憩しているのは無駄だが、社員が掃除であろうと汗を流していれば無駄ではない、例によって「効率改善」=「社員の“ゆとり”をなくすこと」なのでしょうね。それが会社の判断なのでしょう。
>紅葉修さん
まぁ社会に余裕を持たせるためには、必要最小限の稼ぎでは対応できませんから、経済全体としてみれば成長は必要なのでしょうけれど、個人がそれをどうこうするというものではないですからね。それでも「勤勉に」働かせようとするのは個人の降伏ではなく、富国強兵殖産興業を追っているからなのかもしれません。
塾講師の経験のある作家が、「都会の親は自分の子供のスケジュールに空きができることを不安がる傾向にある」「だから都会の子供から自由な時間が奪われていく」と書いていたのですが、キヤノンもその口なのでしょうか。
企業経営者の感覚と、子供を支配したがる親の感覚は似たようなもののようですね。社員/子供を事由にさせておくことに「無駄を感じる」「不安を感じる」と。どっちも支配される側としては堪ったものではないわけですが。支配する側はその辺を「カイゼン」なり「子育て熱心」と勘違いしているのでしょうか。