非国民通信

ノーモア・コイズミ

ご先祖様「侍じゃなくてごめんな」

2012-01-20 23:02:39 | 社会

長友「侍らしく」ミラノダービーで躍動(サンケイスポーツ)

 インテル・ミラノの日本代表DF長友佑都(25)が、ACミランとの「ミラノ・ダービー」に日本人として初出場。左サイドバックでフル出場し、1-0での勝利に貢献した。伝統の一戦を制したチームは、これで6連勝。長友は「歴史に名を残せた」と充実感を漂わせた。

 8万観衆の大声援を背に、聖地サンシーロでDF長友が躍動した。インテル移籍2季目で初めて立った「ミラノ・ダービー」。昨季2連敗を喫した宿敵を蹴散らし、アルゼンチン代表MFサネッティと抱き合った。

 「思ったより冷静に試合に入れた。成長している実感がある。恐れず勇気を持って、日本人の侍らしく、そのぐらいの感じでやった」

 国外リーグでちょっと活躍したかと思いきや、移籍や監督の変更で異なった戦術に放り込まれた途端に輝きを失ってしまう日本人選手が多い中、長友は着々とトップスターへの階段を上っているようです。相対的に人材の手薄なサイドバック、とりわけ中央でプレーする選手にばかり脚光の当たりがちな日本からサイドで活躍できる選手が出てきたのは喜ばしい限りであります。そんな長友選手、ミラノ・ダービーに際して「日本人の侍らしく、そのぐらいの感じでやった」とのこと。まぁ、みんなお侍が好きですよね。

 それはさておき、長友選手のご先祖様は士農工商もしくはその他で言えばどこに属する方だったのでしょうか。日本にルーツがある人ならだいたいは「農」の子孫だと思います。とりあえず「士」階級を祖先に持つ人はあまり多くない、かの有名な土佐の坂本家みたいに武士の身分を「買った」りしたケースを含めても、決して多数派ではないはずです。それでも武士の子孫である人が今なお侍を称するのは理解できなくもないのですが、農民や町人の子孫が侍を称するのはどうなんだろうと首を傾げるところです。自分の先祖を誇る気持ちはないのかな?

 現代日本語において「侍」とは「とにかく良い」という意味の形容詞のように使われます(対義語は「官僚」でしょうか)。猫も杓子も侍を称したがる時代です。士農工商と身分が定められていた時代のお侍でさえ、今ほどには賞賛されていなかったことでしょう。侍・イズ・グレート! 侍・イズ・ビューティフル! でも侍ではなかった圧倒的多数の人々(皆さんのご先祖様ですよ)だって、決して侍身分に比べて劣る人ではなかったと思います。にもかかわらず、現代の日本人は侍を称するばかりで、自身を農民とも町人とも考えません。我ら侍ジャパン! 農民にあらずなり! きっとご先祖様型も草葉の陰で自身の身分(侍ではないこと)を恥じていらっしゃることでしょう。何せ子孫に誇りを持って名乗ってもらえないのですから。

 

愛知の柔道教員、6日で黒帯…30年間全員合格(読売新聞)

 愛知県教育委員会が県柔道連盟へ委託し、中学、高校の体育教員を対象に2年に1度開いている柔道の指導者講習(計6日)で、30年近く、受講者全員に段位(黒帯)が授与されていたことがわかった。

 柔道の総本山・講道館(東京都)によると、黒帯の取得には「平均でも2年程度かかる」というが、愛知の場合は短期間の上、審査も一般の昇段試験と違って試合の勝敗を考慮していない。関係者からはこうした段位認定のあり方を疑問視する声が出ており、講道館でも実態を調査する方針だ。

          ◇

 同県教委によると、体育指導の質の向上を目的に1984年頃から、柔道経験がほとんどない「白帯」の体育教員を集めて講習を実施。
 
 1年目は受け身などの基礎、柔道の歴史・理念、安全管理を学ぶ「指導者養成講習」(2日間)、その1年後に実戦や審判などを経験する「段位認定講習」(4日間)という内容で、毎回30人程度が受講している。
 
 これまで全受講者が段位審査で“合格”し、黒帯を取得していることに、県柔道連盟は「柔道ではほぼ初心者だが、体育教員としての運動能力はあり、6日間で全員が初段程度のレベルに達している。講習内容も十分で段位認定に問題はない」と説明。県教委も問題はないとの考えで、「段位はあった方が、無いよりは充実した指導ができる」として、学習指導要領の改定で柔道などの「武道」が必修化される新年度は受講者枠を44人に増やす方針だ。

 

中高生114人、柔道で死亡していた…名大調査(読売新聞)

 学校での柔道事故を巡っては、受け身の習得が不十分なまま投げ技練習に参加したり、頭を打った後に適切な救急措置を受けられなかったりした生徒が死亡するケースが後を絶たない。
 
 名古屋大の内田良准教授(教育社会学)によると、柔道事故で死亡した中学、高校生は1983~2010年度の28年間に全国で114人(中学39人、高校75人)。中高ともに1年生が半数以上を占め、計14人が授業中の死亡例。また、後遺症が残る障害事故も83~2009年度で275件あり、3割は授業中だった。
 
 中学の部活動における競技別の年間死者数(2000~09年度の平均、10万人当たり)を見ると、柔道が2・376人で、2番目のバスケットボール(0・371人)に比べても圧倒的に多い状況だった。死亡原因の大半は頭部外傷で、内田准教授は「首の筋力などが未発達なうちに、安易に立ち技や乱取りを行わせるのは危険」と警鐘を鳴らす。

 さて、今後は柔道など「武道」が必修化されるわけです。内柴先生に技術だけではなく心も鍛えてもらうには良い機会でしょうか。しかし一億層侍の時代である現代ならば、柔道みたいな明治以降に作られた代物を教えるより、もっと歴史の長い武士の習俗である「衆道」を取り入れた方が良いように思います。柔道なんて、侍がやってきたことではないですから。侍を名乗るなら、まずは衆道からでしょう。これまで保健体育を通じて「正しい性」の刷り込みが行われてきましたけれど、衆道を必修化することは「正しい性」として真っ先に持ち出されるものだけが全てではないこと、伝統を重んじるだけではなく異なる嗜好や文化への理解と寛容の精神をも養うのに良い機会です。

 ということで、柔道に代えて衆道を取り入れることを当ブログは推奨しますが、次善の策としては何があるでしょうか。柔道は突出して死亡事故に至るケースが多いようですが、教員の質の向上に期待するのも難しそうです。まぁ、先生は先生で学校行事が忙しい、行政は行政で国歌を歌わせるのに精一杯で、教育の質の向上なんかには手が回らないのが日本の学校教育というものなのかも知れません。そうした中でも柔道をやるしかないとしたら、どういった対策をとれば良いのでしょう。提案の一つとしては「受け身の取り方を教える」ですかね。

 もっとも、「受け身」と言っても柔道の受け身ではありません。柔道の受け身は、あくまで柔道の投げを想定した受け身ですから。ちゃんとした柔道選手なら綺麗に背中から落とすので柔道の受け身は役に立つのでしょうけれど、一方で学校体育や部活動ともなれば、わざと相手を痛めつけるように落とす、頭から落とすようなことは日常茶飯事です。こうした学校柔道の実態に添った受け身の開発が安全管理の面から求められるように思います。ちゃんと背中から落ちるように投げなさいと指導したところで、子供が言うことを聞くわけがありません。頭から落とされるケースは必然的に発生します。そこで事故を防ぐためには、頭から落とされることを想定した受け身の取り方を身につけさせる必要があるはずです。

 まぁ、そんなことをするくらいなら柔道なんかやめてしまえと思うところですけれど、ことによると頭から落とすような投げへの対策を学ぶことは、とかく生徒間での暴力が容認(もしくは隠蔽)されがちな学校生活において役に立つ機会がないとは言い切れません。柔道など「武道」を通して内柴先生のような精神を身につけることより、危険な投げに対する身の守り方など、いわば「武術」に近いカテゴリーの教育の方がまだしも意味がありそうな気がします。後はそうですね、学校柔道用の頭部と頸部を保護する防具でも作りましょうか。とにかく事故を防ぐには、柔道的に正しい綺麗な投げとは異なる、危険な投げが繰り返されることを前提に対策をとらなければいけないと思います。

 

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19 コメント

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Unknown (amanojaku20)
2012-01-20 23:28:22
私の姉も、どうせ武道をやらせるなら自分の身を守る技を教えた方がいいのではないかと言ってましたね。私も賛成です。

武道に限らず理不尽な暴力から身を守る技と知識は幼いうちから学んでおいた方がいいでしょう。それこそ社会に出て役に立つ事でしょうから。



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美しい国 (観潮楼)
2012-01-20 23:38:24
とほざいた人の政権が決めたことでしたね。
先日スポニチで二宮清純が同じように懸念してました。
井上康生が「畳の下にスプリングを入れることをしないと。
板の上に畳を敷くようでは危ない」と取材に答えたとのこと。
まあ中高生男子がやるとすれば授業でなく「プロレス大会」になるでしょう。
私らの時が現にそうでした。
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-01-21 00:56:10
>amanojaku20さん

 どうにも道徳教育の一環的な色合いでの「武道」ですからね。そんなものは糞の役にも立たない精神修養なんかより、とりわけ学校では頻繁に遭遇するであろう暴力への対処法を学んだ方が良さそうなものです。

>観潮楼さん

 井上康生は流石にわかってますね。ともあれ私の場合、柔道の時間は蹴りやヒジ打ちを使う機会の方が多かったような気がします。しょせんは学校の授業ですから、柔道らしい綺麗な投げ、ちゃんと受け身をとれるような投げなんて期待できないわけで、ちゃんとした選手がやる柔道とは別次元で考えなきゃいけません。
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柔道 (イチゴジャム)
2012-01-21 08:39:30
私が中学生だったとき柔道部で死亡事件がありました、
柔道部に入ったばかりの部員が先輩の
投げ技の練習だい、にされ頭を打ち死んでしまいました。

人と人が直接接触するスポーツはとても危険であると認識しなければ、
アメリカンフットボールの防具を見れば明らか。
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授業くらいで (ユルカラ)
2012-01-21 10:15:34
テレビで、おそらくはその世界では有名な空手家のインタビューを見ました。
子どもが空手を習い始めたら、型や技を習うのと同時に、自分がこれから身につけるものがいかに危険なものであるかを知り、また、逆上して使ってしまうこともないよう、時間をかけて心も鍛練しなければならないと言っていました。
精神論は好きではないのですが、武器を持たせる前にその怖さを教え込むという点は腑におちました。
これは空手の話でしたが、武道全般に共通する話でもあると思います。学校の授業ごときで、武道を習わせたがっている人が期待するような「精神」が身につくとは到底思えません。
きちんと教えられる先生の数も圧倒的に足りないでしょう。
チャチな「武器」 でも、精神を身につけずにハンパに教わった武道で遊んでしまったりした時の影響の方が心配です。
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-01-21 13:44:36
>イチゴジャムさん

 授業だけではなく部活動でも、結構なリスクはありますよね。たとえばボクシングでアマチュアがヘッドギアを着用するように、柔道も一部のトップ選手以外は、しかるべき防具を身につけさせるなどの対策が必要なのかも知れません。

>ユルカラさん

 なにせ世界の頂点に立つほど柔道に打ち込んだ人でさえ、よからぬ行為の疑いで逮捕される世界ですしね。あまり精神面の効果を期待すべきものではない、むしろ危険性を考えなければならないものであるように思われるのですが……
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先祖は「侍」か (あるみさん)
2012-01-21 21:15:27
という題に今回は惹かれました。
江戸時代、武士階級は総人口の6%程度だったので、多くの人の先祖は「侍」ではなかったハズです。
それでも世の中には「系図屋」なるものが存在しまして、ず~っと辿っていけば〇〇家に繫がるとか調べれば分るんだそうです?(別の辿り方をすれば、当時賤視されていた階層にも行き着くとも思うのですが…)

あと、江戸時代の侍って、皆さんの大嫌いな「官僚」の仕事をやっていたのではないのでしょうか?

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Unknown (非国民通信管理人)
2012-01-21 21:27:33
>あるみさん

 身分の縛りがきつい中でも無限に系図をたどっていけば多様な先祖がいる、中には武士階級の人がいる場合もあるでしょうね。でも数多の先祖がいる中で、侍だった人をピックアップしてしまう、他の先祖を背景に追いやってしまうとしたら、まぁ先祖を蔑ろにしていると言えますね。ちなみに武士が官僚化したと同時に衆道の文化も衰えました。侍の精神を取り戻すためには、やはり衆道必修化しかないでしょう。
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Unknown (ルーピー)
2012-01-21 22:40:43
どうあがいても危険な投げしかできませんでした。あと、ただでさえ冬の寒い時期だったので、毎回足のけいれんでした。
 柔道を必修にすれば、学校の危険度は高まるのにきまっています。学校に監視カメラまで設置しているのはいったいなんなのでしょうか。少年犯罪の加害者と被害者が増えることはあっても、減ることはないでしょう。
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Unknown (ルーピー)
2012-01-21 22:46:15
健全な精神とはむしろ対極にあるのかもしれませんね。パワハラやスキャンダルのオンパレードですから。
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