非国民通信

ノーモア・コイズミ

算数ができなくても就職はできますし

2014-02-06 23:22:32 | 雇用・経済

9―3÷1/3+1=? 新入社員の正答率4割(朝日新聞)

 「9―3÷1/3+1」(1/3は、3分の1)の答えは? ある大手自動車部品メーカーが、高卒と大卒の技術者の新入社員をテストしたところ、正答率は4割にとどまった。中部経済連合会が3日に発表した、ものづくりの競争力についての提言に、能力低下の事例として盛り込まれた。

 この大手部品メーカーは毎年、同様の算数テストを行っており、1980年代の正答率は9割だった。

 基礎学力の低下のほかにも、中経連が会員企業に行った調査によると、企業が学生に求める能力と、実際の能力に差が広がっている。企業が採用の際に重視する能力は「コミュニケーション」がトップの87%。一方、学生に低下を感じるのもコミュニケーションが59%と最も多かった。

 こうしたギャップから、特に中小企業で、若手社員の離職につながるケースが増えている。中経連は今後、「ゆとり教育で希薄化した初等教育の充実を図る」「授業にディベートを採用し、コミュニケーション能力を養う」ことなどについて、国や教育機関に改善を求めていく。

(答えは「1」)

 

 ……こんなニュースがあったのですが、むしろ朝日新聞社のダメさ加減をこそ如実に伝える報道となっているように思わないでもありません。以前には読売の報道で「『デートDV』調査…言葉も意味も知らず55%」なんて記事がありました。記事の最後では「若年からデートDVについて伝え、具体的な相談方法を知らせていく必要がある」と県男女共同参画課のコメントまで載せられていたものです。しかるに、デートDVとは何かについて元の記事では全く触れられていなかったりするわけです。調査委対象者はデートDVについて知らない人が多い、ただし読売新聞読者は違うとでも言うのでしょうか? デートDVの認知度の低さを伝えるのなら、その意味についてまず読者に伝えることもまた新聞社の務めではないかと感じたものです。

参考、無責任な報道の一例

 その伝で言いますと、上記の朝日の報道も質が低い、新入社員の正答率の低さを伝えていますが、朝日新聞読者はどうなのやら。新入社員の学力について肩をすくめてみせるのは結構ですが、朝日新聞社社員は人のことをとやかく言えるのか、申し訳程度に(答えは「1」)と末尾に書き添えられていますけれど、実際はどうなのでしょうね。なぜ答えが1になるのか理解できないにも関わらず、これだから「ゆとり」はダメなんだと憤慨してみせる自惚れ屋も少なくないのではと思われるところです。

 もう一つ言えば、朝日新聞社の電子化時代への対応力も問われそうです。そもそもの冒頭の表記では意味が分からない人も多いのではないでしょうか。「9―3÷1/3+1」(1/3は、3分の1)――要するに、こういう感じを伝えたいようです。

 確かに現行のweb上のフォーマットですと、この手の数式は表記が難しいのですけれど、そこに対応できないメディアは時代に取り残されても仕方ないのではないかと、そんな気がします。逆にweb上では分かりにくいものを伝えやすいメディアとして紙媒体を売り込んでいくのもありなのかも知れませんが。

参考、人物重視で選考された結果

 それはさておき、「この大手部品メーカーは毎年、同様の算数テストを行っており、1980年代の正答率は9割」かつ「企業が採用の際に重視する能力は『コミュニケーション』がトップの87%」だと伝えられているわけです。なぜコミュニケーション能力最優先で採用したのに、学力を問うのでしょうか? 新入社員の学力低下が気になるのなら、学力重視で選別すれば済むだけの話です。勉強のできる学生を採用しておけばこんなことにならなかった、それは誰の目にも明らかなことでしょう。「ゆとり教育で希薄化」云々と中部経済連合会は思い込みを恥ずかしげもなく披露していますけれど、勉強しなくてもコミュニケーション能力さえあれば採用される、そういう時代を作ったのは誰なのか胸に手を当てて考えるべきです。

 「こうしたギャップから、特に中小企業で、若手社員の離職につながるケースが増えている」と朝日新聞は語ります。本当でしょうか? 中小の離職率は昔から高いもの、待遇の違いなど要因たり得るものが他にある中で「こうしたギャップ」のせいにするのは筋違いにも思われます。そもそもコミュニケーション能力最優先、学力は二の次で採用しておきながら学力不足を託つ、そのギャップの責任を取るべきは誰なのでしょう。矛盾した要求をする側が悔い改めるべきなのか、それとも矛盾した要求に対応できない学生を咎めて終わるのか、本当に愚かな側が自らを恥じない限り、日本企業の競争力など望めようはずがありません。

 

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4 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2014-02-08 14:33:04
来日一年目にして打率.303、本塁打19本の成績を残すもフロントから「長打力が足りない」と言われてしまった外国人野球選手曰く「打率.260、本塁打40本だったら「アベレージが足りない」と言われただろうね。つまりどっちにしてもダメってことなんだ。」

あるいは戦前に出羽海部屋にいた床山が1938年に言った言葉。「相撲社会で逃げるのは力士ばかりじゃない。床山だってそう。少しやればすぐ大銀杏が結えると思っている。」

まあ要するに若手や現場の人間はそれ以外の人間から物足りなく思われ続けていて、それは今に始まったことではないということなのでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2014-02-08 23:12:14
>ノエルザブレイヴさん

 昔から変わっていない部分もあるのですが、今回の件は少し違うのではないでしょうか。野球で喩えるなら、球団方針として長距離打者ばかりを集めてきたのにスモールベースボールができないと嘆くようなもの、どっちにしてもダメというのではなく、方針と要求が異なっているところに第一の問題があるのですから。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2014-02-09 12:04:55
働く側からすれば「そう言われても困る」面は多いと思います。

しかし、オリンピックの季節がだんだん憂鬱になっている自分に気付きます。自分のところの代表を応援するのはいいとして、贔屓が過ぎて対戦相手へのむき出しの悪意を隠さない、あるいは「勝ったら正当な結果、負けたら相手のせい」といった態度が嫌でも目につく環境になってきているからです。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2014-02-09 12:21:46
ジャッジがどうとかぶーたれている者どもはきっと自分たちの思う通りの結果になったら「それは正当な結果だ」とか言うのでしょう。
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