非国民通信

未来なんてあるわけがない

規律なき経済

2011-12-29 23:07:14 | 雇用・経済

均等法25年:わたしたちはいま/下 「非正規」の待遇改善遠く(毎日新聞)

 関東地方の自治体で、非常勤職員として相談員を務めていた正子さん(39)=仮名=は、出産を機に退職を余儀なくされた。約7年間勤めた職場だった。
 
 08年春に、長男を出産。2カ月間の産休が明けた後は、保育所に長男を預けて職場復帰するつもりだった。しかし保育所に空きがなく、民間の託児サービスも利用料が高くて手が出なかった。
 
 保育士の夫と共働きで、双方の親は離れて暮らす。預け先が見つからず職場に戻れないまま、自己都合の「欠勤」扱いになった。正子さんは労組を通じ、育休が取れるように交渉を続けたが、逆に上司からは「代わりの職員を補充できず、職場が大変」と暗に退職を勧められた。1年ごとの雇用契約は翌春、更新されなかった。長期の「欠勤」が理由だった。

(中略)

 待遇は劣っていても、社会的意義を感じて続けてきた相談員の仕事。「職場は非常勤職員で支えられているのに、育休を取ることさえ認められなかったのはおかしい」と正子さんは憤る。この自治体で相談員は「一般職」ではなく、専門性の高い「特別職」と位置づけられているため、育休法改正後の今も、育休取得が認められていない。

 さて民間企業であれば経営上の理由から、官公庁であれば財政上の理由に加えて「世論に応える」必要性から非正規雇用への置き換えが進む我らが日本社会ですが、いわゆる非常勤職員の場合は直接雇用とあってか割と長く続けられるケースも多いのでしょうか。派遣の世界であれば期間の定めがない「事務用機器操作」などの「専門職」であっても3年と保たないのが普通、役所がらみの仕事だって外注に出された先はそんなものだろうと思われる一方で、正子さん(39)の場合は7年間勤めたというのですから相対的にはマシな方に見えなくもありません。とはいえ7年間も勤務を続けた一方で出産を機に仕事に穴を開けたが最後、職場から放り出されてしまうのですから、いかに日本の雇用制度が労働者側のことを蔑ろにしているかが窺われるというものです。

 だからこそ、雇用者側に安易な解雇や雇い止め(契約打ち切り)ができないよう規制をかけていく必要があるわけです。この正子さん(39)の場合は職場に育休制度が設けられる前のケースであったことも不利に作用してしまったようですが、育休制度ができたところで雇用側に契約継続の完全な自由を与えてしまっている限り、事態は改善されないでしょう。有休を使おうとすると上に睨まれる、みたいな職場にお勤めの方も多いかとは思いますが、同様に制度として許されているからといって育休の取得を雇用者側が歓迎するとは限らないですから。育休制度を利用せず、いつでも職場に呼び出せる人間が欲しいと雇用者側が思えば、その次の契約更新時に何が起こるかは言うまでもありません。だから「雇用者の好きにはさせない」ための取り組みもまた必要になってくる、正当な理由なく契約更新を打ち切ることを許さないような制度作りが求められるのです。

 

 中国電力に約30年間勤めてきた長迫忍さん(49)は08年、同社を相手取り、広島地裁に提訴した。昇級や賃金に男女差別があったとして、損害賠償などを求めている。

(中略)

 今年3月の地裁判決は、社内全体で女性が男性より平均して昇格が遅く、「男女差がある」ことは認めた。だが、長迫さんが昇格しないのは個別の人事評価の結果とし、「女性差別ではない」と訴えを退けた。
 
 長迫さんが判決で何より驚いたのは、中国電力が提出した女性社員の意識調査に言及した箇所。調査は97年に実施され、女性の75%が「管理職になりたくない」と回答していた。

 <女性社員には、就労するのは結婚出産までという意識や女性は家庭を守るべきという意識の人が少なくない。このような意識が労働意欲に影響を与える結果、人事考課で評価が男性より低くなる女性がいるという可能性も否定できない>

 今や性別問わず若手正社員全体で見ても過半数が「出世したくない」と回答する時代ではあるのですが(参考)、こちらの問題では女性の75%が「管理職になりたくない」と回答していた意識調査が持ち出されており、裁判所側はそれを引き合いに出して「女性差別ではない」との結論を導いたようです。この辺、いかにも三流のコンサルタントが使いたがる論法という気がしないでもありません。たとえば冒頭の非正規雇用に関する扱いでも「(派遣など)非正規として働きたい」と回答する人は一定数いるもので、そうした人の意見を引き合いに出しては「非正規雇用を望む人もいる」として現行の無法状態を擁護する人もいるわけです。そんな馬鹿げた誤魔化しが通用するのは経済誌くらいだろうと思っていたものですが、裁判所でも通用してしまうとしたら、まぁ驚きなのかも知れませんね。

 結局のところ、多様性を「つまみ食い」するばかりで個別に対応する気がないというのが日本の雇用制度であり就労慣行とも言えそうです。バリバリ働いてバリバリ出世したい人もいれば、自分の生活を優先させたい人もいる、ちょうど真ん中くらいでバランスをとりたい人もいる、甲斐性のある男を捕まえて有閑マダムになりたい人もいます。そして可能なら正規雇用で定年(年金受給年齢)まで働き続けたい人もいれば、小遣い稼ぎや家計扶助として一時的に働きたいだけの人もいるわけです。こうした個々に異なる要望を持った人々がいる中で、出世したい人に出世コースを、出世したくない人に出世しないコースを(人口構成がピラミッド型ではなくなった以上、部下となるべき年下の数は少なくなる一方なのですから、勤続年数を重ねても「ヒラ」として働き続ける人の需要は必然的に増えます)、それぞれ用意してやることができれば問題は解決するはず、ではなぜそうならないのでしょう。

 「管理職になりたくない」人の存在を理由に女性全般から昇進機会を奪ったり、「非正規で働きたい」人の存在を理由に非正規雇用に関する無法状態を容認したりと、こういう非論理が幅を利かせるばかりで、働く人の要望とポストを一致させようとする努力は一向に見えてきません(あるいは出世したくない人に重責を負わせたり)。これこそミスマッチであり、放っておいても(会社任せにしても)解決しないからこそ政治の出番でもあるわけですが、どうにも雇用側に自由を与えることこそ経済政策と勘違いした人が、現状の破綻ぶりには目もくれずに頭の中の理想を追いかけ続けているというのが近年の日本と言えます。全ては雇用側の思うがまま、本人の意向に関わらず出世させたい人を出世さえ、永遠に下っ端で/非正規で働かせたい人はそのまんま、入れ替えたくなったらさようなら――個別の企業だけであればこれでも回るのかも知れませんが、そうした無秩序を放置してきた結果として社会の破綻があり、日本全体の経済停滞にもつながっていることを権力者が理解するのはいつになるのでしょうか。喩えるなら今の日本経済の舵取りは選手(企業)を約束事から解放して自由にプレーさせてやれば最大限に能力を発揮できるのだと信じているかのごとくですけれど、それで勝てると思っている人がいたら救いようのない馬鹿です。

 

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ジャンル:
社会
キーワード
非正規雇用 非常勤職員 ミスマッチ
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2 コメント

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Unknown (amanojaku20)
2011-12-30 23:00:49
>>今の日本経済の舵取りは選手(企業)を約束事から解放して自由にプレーさせてやれば最大限に能力を発揮できるのだと信じているかのごとくですけれど

よく雇用に関して規制を強めたら雇用が減るなどと言う人が居ますけども

毎月ちゃんと生活していけるだけの給与を労働者に得させる為に、仕事漬けの人生にしたくない人にはそういう人生を送らせる為に規制を作って、雇用が減るなら、それでいいじゃないかと思えてきました。

キツいだけで満足に生活を送れない額の給与しか貰えない。そんなロクでも無いジョブが一掃されている社会の方が、例え失業率が上がろうとも現状よりはマシだと思うのは私だけでしょうか?実際は失業率が上がっても、ヨーロッパを見る限りはたかが知れていると思いますけどね。

まぁ、失業率が上がる事など絶対にあってはならないみたいな考えの人にとってはもっての他なんでしょうけどね。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-31 00:00:02
>amanojaku20さん

 仕事は生活のためですからね。生活が成り立たないようなレベルの仕事が増えたところで意味がない、そして規制緩和によって増えるのは、そういう類いの仕事ばかりですから。見せかけ上の失業率を減らすことではなく、実際に困窮する人を減らすこと、そういう観点で見ていかなければならないのですが、まぁ失業率を減らすと称して規制緩和、実質は雇用側に便宜を図るような代物が日本においては経済政策を呼ばれるのですから呆れてしまいます。

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