九州電力の相浦発電所(長崎県佐世保市)の点検データの虚偽報告・口止め工作問題で、検査業者がデータ捏造を断ったにもかかわらず、九電側が押し切り、うそを報告書に書かせていたことが30日、わかった。
九電の下請け業者に対する強引な姿勢が判明したことで、九電の企業体質にさらなる批判が集まりそうだ。
関係者によると、九電は、燃料タンク(直径約46メートル、高さ約20メートル)の定期点検を子会社を通じて検査業者に委託。業者は2008年12月、タンクの鉄製底板に、直径約5ミリの穴が二つ開いているのを発見。09年1月27日、発電所の課長級社員らとの打ち合わせの席で報告したところ、九電側は「佐世保市消防局に報告したくない」として、データの捏造を指示した。
さて、こんなニュースもあったわけですが世間の反応はどれほどのものなのでしょうか。とかくこの頃は原発限定で問題がクローズアップされがちで、多少なりとも労働の問題や企業の横暴に抗議の声を上げてきた身としては、その辺が原発の問題に矮小化されがちな昨今の傾向を強く危惧するものでもあります。日本中の至る所で起こっている問題なのに、あたかもそれが原発に特有の問題であるかのごとく扱われる、もっと他に原因があるのに「だから原発はダメなのだ」と批判の対象がすり替えられる等々、どうも「原発は消えて搾取は残る」みたいな結果にしか結びつきそうにないと感じられる動きも多く、まぁゲンナリするばかりです。
こういう時勢の中、相浦「火力」発電所でデータの捏造が行われたことが伝えられています。原発でなくとも下請け労働者の搾取は起こる、原発でなくとも現場の作業員が危険にさらされることは珍しくないように、原発ではなく火力発電所でもこういう問題は起こるわけです。原発の「悪」を暴くと息巻いている人は、この火力発電所の「悪」をどう思うのでしょうか。まぁ、この場合は火力発電所の問題ではなく電力会社の問題として扱われるケースが多いのかも知れません。でも、電力会社に問題アリとするのなら、風力でも太陽光でも電力会社が運用する限りは信用ならないということになりそうなものですよね。まさか、被災地で最も繋がらなかったことで有名な携帯電話の会社に任せれば安心などと考えている人はいないと思いたいですが……
宮城県知事定例記者会見(平成23年8月22日)- 県産牛出荷停止の一部解除について
◆Q
検査証明書の表記には検出値も表記するのか、あるいは食品衛生法の基準を下回っていると、安全であるというざっくりとした表記になるのか。どのようになるのか。
■村井知事
安全であるということだけでよろしいかと思っております。健康上全く問題のない数値であるわけですので、詳細な数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができないわけでありますから、安全か安全でないかということだけはっきりと証明すれば十分だというふうに思っております。正式には、牛肉の放射性物質検査結果通知書といったような形で添付をしたいと考えております。(1キログラムあたり)500ベクレル以下であるということであります。その証明書がついていれば(1キログラムあたり)500ベクレル以下で、どれだけ食べても全く問題がないということであります。
一方、ようやく出荷停止の解除が始まった宮城県産牛肉に関して、村井知事が色々と答えています。しかるに物議を呼びそうなのは引用した箇所で、検出値を表記するのではなく「基準値以下」であることを証明すればよいとのこと、理由としては「詳細な数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができないわけでありますから、安全か安全でないかということだけはっきりと証明すれば十分」なのだそうです。気持ちは、わからなくもありません。
実際のところ、昨今のゼロリスク幻想の中では健康に全く影響がない範囲であっても「ゼロではない」と言うだけで大騒ぎされ、市場からは敬遠されてしまうわけです。県内の生産者のため、そのような事態を避けるよう配慮するのは知事の務めでもあります。残念なことではありますが、詳細な数値を出されても理解できない消費者もまた目立つのではないでしょうか。行政サイドも必要十分な説明は繰り返し行っていますけれど、断固として理解しない、反原発を唱えるどこぞやの教祖様の言葉を鵜呑みにして危険と信じて止まない人も少なくありません。そういう人を粘り強く説得していくのも政治の役目とも言えますが、色々と大変な時期にカルト信者を相手にしている余裕はないとばかりに対応が投げやりになってしまったすれば、ちょっとは同情する気にもなります。
まぁ、住民が理解するまで説明しようという姿勢が見えないのは好ましくないですが、この辺は理解「したがらない」人の問題でもあります。こういう状況下で行政サイドに求められる最低限の責任は、安全基準をしっかり守ることであって、まぁ住民が不満に思おうとも住民が口にするのは基準値をクリアした牛肉という状態をキープできれば、責任は果たしたと言えるのかも知れません。ちゃんと住民の安全は守っているのですから。もっとも「どれだけ食べても全く問題がない」という知事発言はダメですね。国産の肥育された高カロリーな牛肉を食べ過ぎれば栄養バランスが悪いですし、衛生管理や加熱処理が不十分な牛肉は放射線なんかよりもずっと危険です。放射「能」こそが唯一にして絶対の危険であるかのごとく扱われ、他のリスクが完全に無視される傾向もまた強いですけれど、その辺の感覚は村井知事も一緒なのでしょうか。
小児科医・浦島充佳さんインタビュー全文(3)「原発事故の罠」にはまりつつある日本
――チェルノブイリ原発事故では、親の不安が子どもの健康に影響を与えているという調査もあるそうですね。
浦島 事故の時妊娠中で、原発のそばに住み、事故後、避難した母親から生まれた子ども138人と、もともと避難先に住み、事故時妊娠中でしたがほとんど被曝ひばくしなかった母親から生まれた122人を対象に、6~7歳と、10~11歳の時に発達状況を調べた研究があります。
いろいろな項目を調べたのですが、避難した妊婦から生まれた子どもは、言葉の障害、情緒障害、社会適応性の障害を持つ子が、避難していない妊婦から産まれた子どもに比べて多く、知能指数も低いという結果になりました。
ところが、母親の被曝量と子どもの知能指数を比べると、放射線が原因であれば被曝量の多い方が知能指数は低くなるはずなのですが、そういう結果はみられませんでした。放射線が胎児の知能に影響するのは、神経細胞が増殖して、脳の原型が形作られる妊娠8~15週なのですが、事故当時の妊娠週数と知能指数の間にも相関はありませんでした。
次に、母親、父親の不安やストレスと子どもの情緒障害の関係を調べたのですが、これははっきりと、親の不安が強いと、子どもの情緒障害の頻度が高まることがわかりました。避難した母親から生まれた子どもの情緒障害は約20%にも上り、事故後10年たっても半数以上の母親、3割以上の父親が不安、慢性的なストレスをかかえていました。
最後に紹介したいのはこちら、何でもチェルノブイリの場合「避難した妊婦から生まれた子ども」の方が、「避難していない妊婦から産まれた子ども」に比べて相対的に障害が多かったそうです。母親の被曝量と子どもの知能指数には相関がなく、親の不安やストレスと子どもの情緒障害には明白な関係があったとも伝えられています。被曝の影響はそこまで大きくなかった、統計上で有意な差が出るほどのものではなかったのに対し、親の不安やストレスは子供に強い影響を与えたということでしょうか。
この辺は福島の事故に対処する上でも参考にすべき点が多いはずです。ましてやチェルノブイリに比べれば放射線量もずっと低いだけに、被曝による影響は少なくとも統計上の差としては現れてこないであろうと推測されます。一方で、放射「能」への恐れからパニックを起こしている人々は、そのストレスによって子供にも悪い影響を与えているのではないでしょうか。一家離散で友達とも別れて遠隔地に移住するとか、腐ったコメのとぎ汁を吹き付けるとか、明らかに有害な対策ならずとも、過剰な反応そのものが福島近隣住民の健康リスクを高めている可能性は少なからず考えられるところです。本当に危惧すべきは放射「能」ではなく、過剰反応の方なのかも知れません。放射「能」の恐怖を煽っている人々は福島近隣住民への忌避感を強め、風評被害を撒き散らしているばかりではなく、人々の健康をも害していると言えそうです。
こればっかりは実際に子供を産んで、育ててみなければ分かりませんが一つ言えることは、子供にとって親のふるまいが「滑稽」に見えれば多少はマシかな、と思います。
実態とその結果は喧伝される危険性より低いのですからむしろ、親の別の危険性(過保護や家庭内の問題、その他過剰な期待などによる負担など)に注意した方がいいですね。
滑稽に見えれば、まだマシな方でしょうね。ただ放射「能」を前にヒステリーを繰り返す親の存在が、しばしば子供にとって真に迫った「恐怖」にもなっているケースも多いのではないかと心配してしまいます。心のケアが大事といえば当然ですけれど、親を煽っている人々への対策もいい加減に考えなければならないような気がしてくるところです。
もうほとんど、カルトの世界ですからね。牛乳の味がおかしいなんて、それこそ放射性物質とは無関係な話ですし、もし本当に味がおかしかったら衛生管理の方を疑うべき何ですが……教祖サマの教えを固く信じている人には何を行っても逆ギレされるだけなので困ったものです。
ある意味、創造性豊かな人たちですからね。彼らがどんなことを「思いついた」としても、今や不思議ではありません。
数値で言ってくれると分かりやすいですね。
まだまだこういう記事編集は続けてほしいです。
http://www.asahi.com/national/update/0909/TKY201109090206.html
>震災前の状態を0、最も強いストレスを3
>園児が1.04、低学年0.92、高学年0.81と、年齢が低いほどストレスが強かった。
強いて言えば、ストレスもまた健康に甚大な影響を与えるものであることも付け加えて欲しかったところです。放射「能」とは違って、実害が危惧されるにも関わらず蔑ろにされがちな領域でもありますから。
なぜ悲惨な結果になる前に戦争を止められなかったのか
などといった考察を軽視しているのではないかと思います。
感情論ばかりで極端に走るのは昔からなのかもしれません。
そうなる前に戦争を止められなかった要因もそうですし、自国側の被害だけが強調され他国に与えた損害もまた十分に教えられているとは言い難い、たしかに情緒的といわれても仕方のないところはあるのかも知れませんね。もうちょっと事態を客観的に見る目を養う必要があるのでしょうけれど……