非国民通信

ノーモア・コイズミ

ガバナビリティ ―― 統治「される」能力

2015-01-07 23:39:23 | 社会

 さて色々と問題のある政治家には事欠かないわけですが、会社に行けば「そういうタイプ」の人が要職に就いていたりしまして、まぁ人を選ぶ立場の人が選ぶ人というのは、どこも似たり寄ったりなんだろうなと思いました。人事権を持った人が取り立てる人と選挙権を持った人が当選させる人には共通項が多い、と。もっとも前者と後者では「選ぶ人」と「選ばれる人」の力関係が全く異なるのではありますが。

 いつぞやの「理想の上司」ランキングで大阪市長の橋下が1位に選ばれたことがありまして(このランキングでろくな人が選ばれないのは、ある意味で象徴的です)、橋下は「市の職員に聞いたら、絶対にそんな順位にならない。同じ組織にいないから無責任に言えるんじゃないですか」とコメントしました。橋下を選んだ人よりは橋下自身の方が物事を理解しているようです。ただ付け加えるならば、日本人は下っ端でも経営者目線で考えるのが普通だと言えます。「下」の人間として「自らを率いて欲しい」上司を選ぶよりも、しばしば「上」からの目線に立って「部下を率いさせたい」人物を選択しているのが実態ではないでしょうか。日本人はいつでも経営者目線を忘れません。大阪市の職員だって案外、「橋下みたいなの」を「理想の上司」と考えている人が多いのではと思います。

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 英語教育の早期化論も喧しいところ、では本当に日本人に英語は必要なのかと聞かれれば「個人的に何かを楽しむ上では有用」とは言えます。日本製に限らず英語圏で制作されたコンテンツを楽しめるようになることは悪いことではありません。しかし日本で働く上ではどうなのでしょうか? 少なくはない職場を渡り歩いてきましたけれど、どうにも英語力を活かせる職場というのは決して多くはないわけです。就職の際に求められる頻度とは全く比例しないのですから呆れてしまいますね。

 逆に日本ではなく外国の――英語圏の――会社で働きたいのなら、英語力は役に立つ、というよりは必須になることでしょう。ただし、外国人として制度的な不利がなかろうとも現地出身の人間に比べてスタートラインの時点で大きく後れを取らざるを得ないのは覚悟する必要があります。調子の良い成功体験談ばかりが語り継がれている中、甘い夢を抱いて海外に働きに出ては痛い目を見た人も多いはずです。あるいは、海外から日本に働きに来た人の立場は良き判断材料になることでしょう。出身国で働くよりも稼げる可能性はあるかも知れませんが、現地出身者のように稼げるかと言えば、その可能性は小さいわけです。

 日本企業が海外展開を強めるとしても、現地法人の主体を現地出身者が占めるのならば、英語に堪能な日本人の必要性は大して多くはなりません。海外志向の強い人だけでも十分に必要数は賄えることでしょう。ただ「海外で日本人を働かせる」ことを想定するのなら話は別です。世界の例外と言える日本を尻目にアジア諸国だけでなく世界各地の人件費は上がり続けている、しかもヨソの国では雇用関係を契約関係と考え給料以上の働きは見せてくれない人も多いわけです。日本の労働者相手には通用したことが国外では全く通用しない、それは数多の日本企業が通った道です。

 しかるに中国人なら暴動や経営者の監禁に発展するような事態でも、日本人は従順です。いかなる時でも経営者目線を忘れず、ヒラ社員やアルバイトですら「自分が欠勤/退職したら会社に迷惑がかかる」と組織のことを常に心掛けるなどマネジメントの役割を当たり前のように下っ端が肩代わりしてくれる、そんな都合の良い労働者を日本の外で見つけるのは至難の業でしょう。それでも日本企業が海外でも日本的な労使関係を維持したいと思うならば、解決策は一つです。すなわち「日本人を海外で働かせる」ことですね。そのためには、英語に堪能な日本人労働者が大量に必要になります。

 サービス残業など「外国人がやりたがらないことを日本人にやらせるため」に、これからの日本人労働者は英語力が強く求められるようになるのかも知れません。日本の会社が中国などアジアの現地法人で現地出身者と同等の給与で日本人を募集しているケースも既にありますし、日本人の人件費は今や決して高いものではなくなった一方、世界中の人件費は着々と上昇しているわけです。消費税増税だの法人税減税だの自殺的な経済政策を続けていれば、遠からず「日本人を雇うのが最も安上がり」になってしまうことでしょう。そうなった時、日本企業が海外に展開する際は現地人ではなく日本人を海外に連れて行くことを選ぶようになる、そして英語力は必須となると言えます。もう少し日本人が経営側にとって扱いにくいものであったなら、多少は未来も変わるかも知れませんが。

 

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