橋下徹大阪市長の指示で市が全職員を対象に入れ墨の有無を尋ねた調査で、市は16日、入れ墨をしている職員が13部局の計110人に上ったとする中間報告を発表した。
市は同日、職員の不祥事根絶を図る「服務規律刷新プロジェクトチーム(PT)」の会合を開き、入れ墨禁止の内部ルールの策定や、服務研修の強化などを打ち出した。
調査は教育委員会を除く約3万3500人を対象に記名方式で実施していた。110人のうち、腕や首、頭部など市民の目に触れる部分に入れていると回答し、配置転換の検討対象となる職員は98人に上った。
橋下市長は市役所で報道陣に、「何をやっても許される甘い風潮があった。どうしても入れたいという職員は民間企業に移ったらいい」と語った。
さて、報道ではなるべく読者が市職員に悪い印象を持つようにとの配慮なのか、概ねどこのメディアでも「入れ墨」と記されていますが多くは一般に「タトゥー」と言われる類の代物のようです。この辺、茶髪と一緒でいずれは市民権を得るのではないか、化粧の一部のようにむしろ常識化するのではないかという気がしないでもありませんが、ともあれ「入れ墨」があるという職員に向けて橋下市長は「何をやっても許される甘い風潮があった。どうしても入れたいという職員は民間企業に移ったらいい」等と述べています。私の知る限り民間企業は公務員の世界よりもずっと外見にはうるさい印象がありますけれど、橋下の出自であるサラ金業界であれば入れ墨をしていても簡単に採用されるのでしょうかね。
戸籍証明書の発行を巡るトラブルで米国在住の女性(59)から約5300万円を脅し取られたとして、山口市の女性職員(46)が約5900万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしていたことが分かった。
山口地裁で15日に判決があり、内山孝一裁判官は被告女性に全額支払いを命じた。被告女性は一度も出廷しなかった。
訴状によると、2009年11月に女性が山口市市民課に戸籍の証明書発行を請求。職員が本人確認などを行って証明書を送付したが、女性から「証明書の入手が遅れて予定通り日本に帰国できず、渡航費用など損害を受けた」と連絡があった。職員は「(トラブルが発覚すれば)職場に迷惑がかかる。解雇や退職に追い込まれるかもしれない」などと思い、09年12月~11年9月に計50回にわたって女性に現金や航空券など計5291万1822円相当を支払ったとしている。
一方、こちらは山口市の事例ですが、部外者の思いとは裏腹に当の公務員自身は解雇や退職(強要)の可能性に怯えていたことが分かります。「何をやっても許される甘い風潮」とやらが実在していたのであれば、ここで伝えられているような事態には発展しなかったことでしょう。果たして山口市だけが特別にピリピリした役所なのか、それとも大阪市だけが特別に甘いのか、とかく誇張して伝えられる公務員の世界ですけれど、報道と内情は必ずしも一致するものではないように思います。まぁ公務員の内情は知らずとも民間企業のことが分かっている人なら、目に見える箇所に「入れ墨」をした人が民間企業に移れるかのようなことを宣う人間など信用しないはずですが。
よしもと「現在受給せず」河本親族生保受給問題(サンケイスポーツ)
吉本興業は16日、自社のホームページに「河本準一に関する報道について」と題して、週刊誌やネットなどで報じられている、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ、次長課長の河本準一(37)の親族の生活保護費受給について見解を発表した。
それによると、生活保護費の受給については河本が無名の時代に始まったもので、現在は受給はしていないと明記。その上で「本件は個人の重大なプライバシー上の問題で、人権に配慮した対応を望む」としている。
一連の報道では、河本に高額の収入がありながら親族が生活保護を受けていたのは「不正受給ではないか」と指摘。自民党の世耕弘成(49)、片山さつき(53)両参院議員がブログなどで批判している。
さて、こちらも前二者と同じ日の報道なのですが、社会保障受給者にネガティヴなイメージを植え付けることに情熱を注いでいる人も少なからずいるもので、まぁ格好のネタともなっているわけです。たばこを吸いながら『この仕事は僕に合わないから』みたいな人は、大阪市から出て行ってくれ」とは、何故か橋下と対立していたことになっている前市長の平松氏の言葉ですけれど、こうしたケースにはどう対処したのでしょうね。ともあれ、今のところは人気芸人と呼べる河本準一氏の親族が生活保護を受給していたとかで、あろうことかこれに突っかかる国会議員まで出てくる始末です。政治家の役割って何なんだろうと、思い悩まずにはいられません。
何はともあれ、吉本興業側の説明では生活保護受給は河本氏が無名の時代に始まったとのこと。売れない芸人なんて「本業」での収入は皆無、かろうじてバイトで食いつないでいる人ばっかりでしょうから、当然のことながら夢を追っている限り親族を扶養などできはしないであろうと容易に想像できます。だから親が生活保護を受けるのも不自然ではないですけれど、何とか顔が売れて稼げるようになったらどうなのか、親族の収入が増えたなら生活保護は辞退/打ち切りが当然というのが世間の認識のようです。まぁ、ほんの近い未来に河本氏が「あの人は今」状態になっているとも限らないのが芸人の世界だと言うことは、普通の人だって知っていると思うのですが……
最高のベンゼマというサッカーのフランス代表選手がいます。年収は10億円以上と推定される選手ですが、祖母の扶養費支払いを巡って親族と法廷で争ったりもしていました。当然のことながら親戚筋の中では突出して収入の多いベンゼマには扶養費支払いが期待される一方、本人は「自分一人に責務があるとは考えていない」と親族にも扶養費を出すよう求めたそうです。まぁ、誰か身内に金を持っている人がいるならその人の支払いで暮らせと、そういう感覚は日本ならずともあるのだとは思います。しかし日本のように自立を重んじる社会では、親の援助を受ける子は恥ずかしいものとされ、親もまた子の援助を受けることを潔しとせず貧乏でもやせ我慢、みたいなケースもまた多いのではないでしょうか。子世代が中流家庭として不自由なく暮らしている一方で、離れたところに済む親は貧乏暮らし、という家庭だって決して珍しくないはずです。なるべく子供に負担はかけたくない、ましてや母親心からすれば、息子がようやく成功して稼げるようになったなら、その稼いだ金は好きに使わせてやりたい、自分は生活保護費だけで食いつないでいくから……みたいな思いがあったとしても不思議ではありますまい。
それより橋下の父親はヤクザだったそうです。早くに死に別れてしまったとのことですが、生きていたらどうだったのでしょうか。案外、よろしくやっていたのではないかという気がしないでもありませんが、ことによると父親とは縁を切りたいと思うこともあったかも知れません。この河本氏の例から察するに、零落したヤクザであろうと肉親である以上は扶養義務があると世間的には扱われるのでしょうけれど、それが自分自身の場合だったらどう思いますか? つまり、あなたの親が反社会的勢力の一員で、親子関係は至って険悪、さっさと親元を離れて独立して成功したときに、落ちぶれた親の扶養を求められるとしたら? 親子関係が良好なら扶養義務を課せられるのも、脆弱極まりない社会保障を補うためには仕方がないことと言えますが、どこの家庭でも円満な親子関係、親族関係が築かれるとは限りません。法律的に意味のある絶縁関係には至らずとも、お互い独立して距離を取って暮らしたいケースもあるはずです。だから一律に親族に扶養義務を課すのはどうか、親族に収入があっても独立した世帯であればもっと柔軟に考えられるのが筋ではないかと、そう思います。
福岡市職員が酒絡みの不祥事を起こした問題で、市長が職員全員に「禁酒令」を出したというのも完全な憲法違反であり、到底許される指示ではないと思うのですが、ネット上の単細胞どもはこの「禁酒令」に賛成しているのが圧倒的。
じゃあ2ちゃんねる絡みの犯罪や名誉毀損が続出している現状を考えれば、すべての掲示板もブログも禁止なんて法律だって許されることになります。
福岡市職員も例の飲酒運転事故のことがあって、大阪市職員と同じくマスコミの好餌にされているきらいがありますよ。酒の上の騒動なんて、どこの自治体でも、いやそれ以前にどんな民間企業だって掃いて捨てるほど起きているのに、ことさらに福岡市を取り上げるマスコミの姿勢や、それに橋下のコピーのようなパフォーマンスで応対する市長の愚かさはどうしようもありません。
河本氏のことを国会で取り上げるのは「常軌を逸している」としか思えません。法的責任の在り方は「当事者間で受け入れられる結論を出して」、道義的責任は「誰も問うなよ。明日の自分かもしれないし」でお終いでしょう。
陰謀論と言われても「こんなのに報道のリソースを割いていたら99年と同じや」と思ったものです。
>プチ左派様
>福岡市
市長は叩けば「何をやっているんだ」というのが出てきます。医療センターを辺鄙な所に建設しているというのがその例です。
ラジオも「公務員が身分になっているからこういう不祥事が起きるんだ。職業に改めろ」という単細胞な意見を採り上げていていて「ふざけるな」と思いました。
とかく「民間では」という人ほど民間企業の実態に沿わないことを言うのが常なんですよね。全く民間企業と関わりを持ったことがないという希有な人ならいざ知らず、普通の人なら「民間」とはどういうものか見知っているはずなのですが、まぁろくに考えてもいないのでしょう。
>nobuさん
世間の人々の頭の中で高給取りとされる人々がバッシングされることは少なくなりませんけれど、不思議と「ならば所得に応じて累進的に課税すれば」という声は出てこないものなんですよね。誰かをスケープゴートにはしたがる一方、本当の富裕層は守られるべきとでも考えているのでしょうか。
>ノエルザブレイヴさん
まぁ世間には、濫給(≒不正受給)を大きく喧伝することに情熱を注いでいる人が少なくありませんからね。漏給の原因をミスリードさせるにはそれがベストであり、もし我々が生活保護を必要としてもよほどのことがなければ受給はできない、そんなとき「それもこれも不正な受給者が悪いのだ」とシナリオが用意されているわけです。昨今の電力需給問題もそうですけれど、何かを悪者にすることで根本的な問題から目を背けさせることが大好きな人がいるのかも知れません。
>プチ左派さん
プライベートにまで干渉する禁酒令なんかも、あまりに気にされていないようですけれどその実はかなり危ういところがありますよね。勤務先に拘束されないはずの時間までをも雇用側が支配しようとしているわけで、公務員という「向こう側」の世界のことと甘く見ているべきではないはず、しかし例によって世間の反応は……
>不肖の弟子さん
今やマスコミはどこも客商売、「お客様」に喜んでもらうのが第一のようですからね。「お客様」に最も歓迎されるニュースがこれであり、そして「お客様」重視の政治家もまた増えてきたと言うことなのだと思います。ちなみに禁酒令、勤務時間外への干渉を許すことこそ公務員の「身分」扱いであり、「職業」であるのなら勤務時間外は縛れないはずなのですが、叩く側にはそれも分からないのでしょう。
一番上の上司の名誉のために言っておきますがこの方世間平均よりはずっとインテリジェンスは高いですし、私も仕事の上で大変お世話になっていてむしろいつも足を引っ張って申し訳ないなあ、と思っている位の方なのです。その方をしてそういうところに目が行ってしまうあたりなかなか難しいものを感じます。
そして、今朝日訴訟みたいな事態が発生したらどうなるのだろう、と考えたらちょっと厭な気分になりますね。
拙ブログの拙記事でも指摘しましたが、自民党は生活保護バッシングを明らかに党の政策としてやっているわけで、それで世耕とか片山みたいな生まれてこの方経済的に苦労なんかしたこともない人間が確信的にほざいているんだから、こいつら人間のクズだと思います。どうしようもない連中です。
http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/a03079fe14f3008e94cdcf8b85b07607
とても解雇や退職になる事例とは思えませんけど、なにか裏事情でもあるんですかね。お金も通常であればとても回収できないと思いますが…。
私は以前、債権回収の仕事をしていましたけれど、当時の課長が給食費の滞納を随分と憤っていたことがありました。「でも、給食費の滞納率は0.5%程度ですよ。でもウチの会社は、この前ようやく売掛金の滞納が3%を切って、それでも上出来と部長に褒められたじゃないですか」みたいなことを話したものですが、例によって理解されませんでしたね。ビジネスマンも政治家もジャーナリストも、みんな道徳の世界に生きていて数値の多寡なんて気にしていないんだと思います。
>Bill McCrearyさん
でも、おそらくは自民党に反対している「つもり」であろう人もまた、結局は自民党と同じことを言っている、世耕と片山と世界観を共有しているんじゃないでしょうかね。改革と称して社会と経済を退行させたり、維新と称して復古的な理想を掲げたりするように、社会保障の対象となるべき弱者を慮る風を装って、その実は生活保護受給者に対するネガティヴなイメージを植え付けることに余念が無い、そういう人はBill McCrearyさんのブログのコメント欄にも見受けられるようですが。