非国民通信

ノーモア・コイズミ

No, We Can't!

2014-11-13 22:54:53 | 雇用・経済

 アメリカの労働省が発表した10月の雇用統計によると、景気動向を反映する非農業部門の就業者数は季節調整済みで前月比21万4000人増となり、失業率は前月から0.1ポイント低下し6年3カ月ぶりの低水準となったそうです。9カ月連続で雇用の持続的改善に必要とされる20万人以上の伸びを維持したとも伝えられ、オバマ政権の経済運営は十分に上手く行っているように見えるのですが、アメリカ国民はオバマ政権を支える米民主党には投票したがらなかったわけで、まぁ皮肉な話です。もっとも日本も自国の経済的地位を失墜させ格差を急激に拡大させた総理が絶大な人気を誇り、朝日新聞などからは今なおヨイショされ続けているのですから、大事なのは実績ではなく別の何かということなのでしょう。

 一方で私の勤務先の会社はと言うと、ちょっと深刻な事態に陥っているようで毎日のように役員が各部課の管理職達を怒鳴りつけていたりします。末端の非正規社員にまで聞こえるような場所で会社の行く末が見え隠れするような話をするのはどうかと思うところ、どうせ私が真面目に働いてもろくな給料なんてもらえないのですから、どこかに会社の内部情報でも売りつけてやりたくもなりますね。掻い摘んで言えば、ここまで見込んでいたような利益が全く出ていない、当初の予測と実績があまりにも乖離していて会社の事業計画が根底から狂うレベルになってしまったわけです。やれやれ、こうなるのは「下」の人間にはわかりきっていたことなのですけれど。

 私の席から見える位置に、ある役員が座っていまして、この人が「馬だ」と言えば鹿でも馬になるくらい社内では権勢を振るっていたりします。で、この馬鹿が諸悪の根源と言いますか、むやみに営業目標を引き上げては、それに基づいて事業計画が策定されてきました。そんな非現実的な目標設定が実現されるはずもなく、昨季まで無理をして何事も前倒しで売り上げを作ってきた反動も重なり、今年は例年になく予定していた数値と実際に上がってきた数値がかけ離れ、ちょっと危険な領域に足を突っ込んでしまったわけです。もっと早い時期から実際の営業成績に合わせて手を打っておけば、もう少し将来の展望は開けたように思われるところですが、今となっては後の祭りですね。

 もっとも、その役員が一人で経営を揺るがしたわけではありません。その専横を許した社長もいれば、取り巻きの部長や課長達にも責任はあるでしょう。馬鹿が明らかに達成不可能な目標を掲げたときに、各部門の管理職達は軒並み「できます」「やります」と回答してきたわけです。そこで役員は自分の持ち出した数値が達成可能なものと思い込み、甘い夢を見ていたのかも知れません。それを社長に報告して、この役員に絶大な信頼を置く社長もまた甘い夢を見ていたのでしょう。夢の賞味期限は長いものではありませんでしたが……

 「君側の奸」という言葉もありますけれど、上述の役員がそれに該当するのでしょうか。ただ私が思うに、「君側の奸」を除けば済むというものではないな、とも。結局のところ、こうした馬鹿が高い地位に上り詰めてしまう、そういう評価の仕組みが残っている限りは、趙高なり十常侍なり黄皓なりを斬首したところで新たな馬鹿が権力を握るだけです。結局のところ会社で人事に影響力を及ぼしているような人に気に入られるのは「上」に対して「できます」「やります」「達成して見せます」という人ばかり、「上」のご機嫌を取ることに秀でた人ばかりなのですから。

 会社の掲げた目標が実現不可能であることは、社長と上述の馬鹿役員以外には、概ね最初から分かっていたことだと私は思っています。ただし、「無理です」「できません」と回答することは許されていませんでした。それこそが現状を正しく伝える声なのですけれど、権力を手にした馬鹿は自分の設定した目標を部下達が実現できないとしたら、それは怠慢だとぐらいにしか思っていなかったのでしょう。真実を伝える声に耳を塞ぎ、自分に阿った答えを鵜呑みにして事業計画を策定、それで会社を傾かせる、愚かな話です。まぁ、「不可能です」「やれません」「そんなに上手く行くはずがありません」――そう現状を正しく報告する人が重用されないようでは、どこの会社も遠からず頭を抱える事態に見舞われるのではないのでしょうかね。

 

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3 コメント

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結局業績を減退させるだけでなく (ヘタレ一代)
2014-11-15 12:08:09
>>毎日のように役員が各部課の管理職達を怒鳴りつけていたりします。

>>役員は自分の持ち出した数値が達成可能なものと思い込み、甘い夢を見ていたのかも知れません。

どこでも同じような光景が繰り広げられているのですね。
かなり現場で無理をして数値を下手に達成してしまうと、自分の実力のおかげと勘違いした役員に更に高い業績を求められるという悪循環を、私の職場でも何度も見てまいりました。

こんなことを何度も繰り返しているうちに、中高年のベテラン社員たちが消耗して体を壊していっています。こういう一年二年ではとうてい作り上げられない本当の資本を、いたずらに消費させて短期利益を上げているだけにすぎないんですが。

自分が責任者であるときだけ業績が上がればいいと思っているのか、それとも本当に気づいてないのかはわかりませんが、なぜかこういう方ばかりが出世するんですよね。
Unknown (nordhausen)
2014-11-16 11:52:45
>もっと早い時期から実際の営業成績に合わせて手を打っておけば、もう少し将来の展望は開けたように思われるところですが、今となっては後の祭りですね。

かつて北海道炭礦汽船(北炭)が経営破綻し、夕張市が財政破綻したのも、かなり無理して業績を上げようとしたからなんですよね。1970年代には石炭産業は既に衰退期に入っており、大幅な合理化が進められていましたが、その中で北炭夕張新炭鉱に代表される大規模炭鉱の開発が行われていました。
しかし国から国内石炭の生産維持を要求された故に、北炭はかなり無理な生産計画を立てており、保安対策が不十分なまま開発を続けていたわけです。そして結局、1981年のガス爆発事故を引き起こして閉山し、1987年に夕張市に全てのインフラを押し付ける形で撤退しました。このため、市は「炭鉱から観光へ」の流れを加速させて、後の財政破綻への遠因となってしまいました。

ただ、夕張市も当時は6期24年(1979年~2003年)務めた市長が事実上の独裁者として振る舞い、彼の市政の下で次々と観光施設が乱立されたが、彼に反論できる市幹部は誰もいなかったそうです。北炭もそうだが、要は市役所が「ブラック企業」と化していたわけです。そして結局観光都市化は上手くいかず、財政破綻を引き起こしてしまいました。

その後市職員は半減しましたが、人件費の削減や残業代カットなどによる市役所のブラック企業化はさらに進みました。そして残った職員も連日の加重労働に耐えられず辞めていく現状にあります(現在では流石に残業手当はついてると思いますが)。

総論をいえば、北炭も夕張市も現状と乖離した計画を立てていたが故に悲惨な末路を辿っていったと感じています。
Unknown (非国民通信管理人)
2014-11-16 23:32:54
>ヘタレ一代さん

 特定の会社だけではなく、ヨソの会社でも珍しくない光景なんだろうなとは思います。上の人間が無理を強いて業績を膨らませ、その功績で上の人間は評価を高めるけれど、その無理がたたって破綻する、そしてツケは「下」が払わされる、日本の会社において人を評価する人々の愚かさ故でしょうかね。

>nordhausenさん

 先行きが暗いならば暗いなりに、それに応じた手の打ち方はあるはずですからね。しかるに、自らの過ちを認めずに部下を叱咤して数値を挙げろと迫るばかりの人間が権力を持っている組織が目白押しで、なおさら破綻に近づいてしまうような、誤った方針が強いられてしまうわけでして……

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