藍こみっ

楽しみな未来へ向けて、昨日と違う明日への一歩

軌跡

2013年09月08日 09時57分08秒 | インポート
今回は本気だという、宮崎駿の引退会見が行われました。

全体で100分程度の引退会見(インタビュー)だったかと思いますが、そのすべてを見てみました。

他紙との比較をしていませんが、昨日の日経(朝刊)の記事は、それがまとまっていたと思います。

引退の要因は何か?と言えば、アニメーター出身で、そのスタンスで行う監督業は、絵コンテに膨大な時間と集中力が必要になる。しかし、年とともにどんなに体調管理に勤めても、数年前の前作から比べれば、一日に机に向かっていられる時間が減り、それが今後も減っていくのは確実だろう。

一方で、ナウシカやラピュタの頃は創作に向けた「案(パーツ」もたくさんあったが、今はその多くを使ってこれまでの作品に込めてきたため、またゼロから創作しようと思ったら、絵コンテを描くという仕事以外にも時間がかかるようになった。

したがって、今回の作品には5年かかり、次は5年か、7年か。そうなると宮崎駿は80歳を超えることになり、それが達成できるかが難しい課題となってきた。

昔は「長編アニメーションに携われる機会」が本当に貴重で、それこそスタッフ全員で「これが二度とない機会かもしれない!」と思い、死力を尽くして短期間(カリオストロは4~5ヶ月)で作り上げたこともある。でもそれは継続的に行える取り組みではもちろんないし、スタッフも次第に家庭を持つようになり、もっと「仕事」として向き合える形が必要だった。

そういった中で取り組んできた30年であるが、先の体力的な問題から、今回長編アニメーション監督から引退することを決めた。

長編アニメーションとは、要は2時間程度の映画を指す言葉で、意地悪く読めば短編はするのか?という風にも読める。

そんな質問も挙がったが、宮崎駿は「今後したいと思っていることは、例えば三鷹の森美術館に掲げられている絵コンテの修繕などで、アニメーションの仕事ではない!」ときっぱり言い放った。

確か、もののけ姫を作っている頃は「何億円も掛けて、それを回収することが命題のアニメーションではなく、もっと気楽にゲラゲラ笑えるような作品(東京汚穢合戦)などを作ってみたい」と話していたが、今したいことはそういったことではないようだ。

インタビューのやりとりはなかなか面白く、合間合間に、一緒に壇上に挙がっていた鈴木プロデューサーと笑顔でやり取りしている様は、従来の引退会見にはなかなか見られない光景だと感じた。

また、イタリアのインタビュアーに対して「イタリア料理は好きです」と答えれば、フランスのインタビュアーから「フレンチは如何ですか?」と問われ、会場が湧き上がった。

それに対して「フォアグラは口に合いませんでしたが、自分がアニメーターを目指すきっかけになった影響は受けた」など、丁寧な回答をしていた。

今後もこれまでと同じように職場には通うつもりで、これからも弁当をお願いしますと奥さんに言ったところ「ふんっ。こんな歳でまだ弁当を作っている人なんて、周りにはいない。」と言われたなど、ユニークなトピックもいろいろあった。

その中で、自分にとって最も印象的だったのは、宮崎駿がいなくなった後のジブリに関する質問だった。要はこれからのジブリはどうなるんですか?と。

それに対して、宮崎駿は「自分という重石(看板)がいなくなったら、きっと若い世代の声がもっと鈴木プロデューサーに届くだろう。鈴木さんはそれを無碍にあしらう人ではない。また30~40台でそういった自分がやりたい、やらせてくれ!という気持ちや案を持っていない組織では、きっとダメだろう。」といった旨のコメントをしていた。

宮崎駿は、随分前にNHKの番組で、若いアニメーターに対して「企画を持っていき、年寄りに否定されても、腐らずにその案をずっと持ち続け、それが活かせる時を待て」と言っていた。

ナウシカやトトロなどの構想が、もともとは違う形(作品)だったことからも、そういった取り組みが確かに感じられる。

さて、30~40台の自分は、そういった気持ちが果たしてあるだろうか?

どうしたいか、どうありたいか。想いを形にしていかねば。

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