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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

仕分け人から抜本的見直しと言われた超危険高速増殖炉もんじゅは廃炉にして核燃サイクルをストップすべきだ

2011年11月23日 | 原発ゼロ社会を目指して

 


 政府の行政刷新会議の提言型事業仕分けが「存続の是非を含めた抜本的見直し」を突きつけました。

 これまで日本は「核燃料サイクル」を原子力政策の基本としてきました。原発で燃やした後の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やすという政策です。

 この夢物語によって、「ゴミ捨て場のない発電所」である原子力発電がゴミを捨てなくても再利用できるのだ、と誤魔化されてきたわけですが、その一翼を担うのが高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)です。

 産経新聞の11月20日付け社説

「高速増殖炉は、燃やしたよりも多くの燃料を生む夢の原子炉だ。エネルギー輸入国の日本にとって実用化の意義は極めて大きい。」

と述べていますが、実用化は計画通りでも2050年。夢は夢でしかありません。

高速増殖炉の恐怖―「もんじゅ」差止訴訟 [単行本]

原子力発電に反対する福井県民会議 




 もんじゅはその開発途上の原型炉ですが、トラブルの連続で、1995年(平成7年)夏に発電を開始したものの、同年12月には早くもナトリウム漏れ火災事故を起こして停止しました。

 もんじゅでは、原子炉を冷却するのに水ではなくナトリウムを使うのですが、冷却材のナトリウムは水と反応し激しく燃えるため、制御や事故時の対応の難しさは通常の軽水炉以上だという問題が当初から指摘されていたのです。

 この問題は原理的なものですから、絶対に解決不可能なもので、当然いまだに解決していません。




 このもんじゅを差し止める訴訟は1985年に提起され、名古屋高裁でナトリウム漏れ事故の2003年にもんじゅ設置許可無効を確認するという画期的な判決が下りました。

 しかし、最高裁が2005年にそれをひっくり返し、司法の原発推進を維持してしまったという経緯があります。

  最高裁のお墨付きを得て、もんじゅは去年、ようやく運転を再開しましたが、今度は下の図のように原子炉容器内に装置が落下して突き刺さり、再び運転停止となりました。

 重い装置なので落ちたら原子炉に突き刺さっちゃいましたって、一体、どんな機械!?(怒)。



 このもんじゅは、1996年以降は、運転を止めているだけで毎年100億円の維持費を要していて、人件費などを合わせると、これまでに、もんじゅに使われた費用は約1兆810億円に上ります。

 産経新聞の社説でさえ、

「大部分が国民の税金だ。成果はほとんどなく、民間企業ならとっくに破綻していて不思議はない。」

と述べています。

読売新聞の社説は産経新聞のようにマイナス面を検討することもなく、玄派推進姿勢丸出しで

「日本が高速増殖炉を推進してきたのは、ウラン資源の有効活用を目指しているからだ。今の原子炉では燃やせないウランを燃料に変えられる。資源に乏しい日本の将来を見据えている。」

というのですが、そもそも、もんじゅはあくまで実験炉なので、実用化までには実証炉の建設も必要となるわけで、こんな夢物語が実現するのには何世紀かかるか分かりません。

読売新聞は文化の日の社説で「早く原発を再稼働して運転しながら点検しろ」と主張する野蛮新聞だ

読売新聞が社説で堂々と「核武装のための原発推進」論を展開

もんじゅ事故の行きつく先は? (岩波ブックレット (No.401)) [単行本]

 高木 仁三郎  




 というか、最初から実現不可能なのは関係者も分かっているのに、予算分捕りと原発推進「理論化」のためにゴリ押ししてきたのでしょう。

 もんじゅ関連の来年度の予算要求額は今年度と変わらない。これでは一般の人の納得は得られない。仕分けでは、出力試験に向けた22億円の計上見送りが提言されました。

 また、今回の仕分けでは、もんじゅを運営する独立行政法人「日本原子力研究開発機構」の不透明な税金の使われ方にも疑問の声が集中しました。原子力機構には、旧組織の動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の体質が温存されているのです。

 もんじゅを保有し、核燃料サイクルを統括する日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、末尾の新聞記事にあるように、11月14日、830億円かけて作った施設が10年以上使われていないなど、研究開発の総事業費の不透明さなどを会計検査院から指摘されたばかりです。

 

保安院のやらせを産んだ原発推進利権 自民党・経産省・財界・マスメディア・自治体の癒着の構造



 核燃料サイクルのもうひとつの要である使用済み核燃料の再処理工場も、たび重なるトラブルで完成は次々延期され、コストがふくれあがっています。

 もんじゅを含めた日本の原子力政策の全体像は、国家戦略室に設置されたエネルギー・環境会議が来夏までに決めることになっており、仕分けに法的な拘束力があるわけではありません。

 しかし、原子力分野の仕分け人全員が「このまま進められない」と判定した意義は大きいでしょう。末尾の琉球新聞は「空嘘だ」と厳しいのですが、この分野の仕分けが可能になったのは、まさに原発推進自民党政権から政権交代をしたからなのですから、もう一歩踏むこんで「廃炉」と言って欲しかったのですが、まあ、前進は前進でしょう。

自民党 原発推進派議員の暴走開始! エネルギー政策合同会議のお笑い

中曽根・小泉・安倍自民党原発推進議員人脈 地下式原発議連のお笑い


 下の図表のように、もんじゅ事故当時も放射能漏れが指摘されており、至近距離で活断層も発見されています。エネルギー・環境会議は核燃サイクルをあきらめ、もんじゅは廃炉にすべきです。

 この原子力関連予算が浮くだけでも、毎年1兆円以上の復興予算が獲得できるのですから、百害あって一利も一理もない原発推進に固執すべきではないのです。

 

 

 

 

 

茨城県東海村の「リサイクル機器試験施設」=共同
茨城県東海村の「リサイクル機器試験施設」=共同

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の使用済み核燃料を再処理しプルトニウムを取り出す技術を研究する茨城県東海村の「リサイクル機器試験施設」(RETF)が、建設や維持費に約830億円かけながら、もんじゅの運転停止に伴い10年以上利用もなく放置されていることが会計検査院の調査で分かった。原発事故による原子力政策の見直しでもんじゅ再稼働の見通しは立っておらず、検査院は14日、「原子力関連施設としての特性を生かし幅広い活用を検討すべきだ」と日本原子力研究開発機構に改善を求めた。

 RETFは95年7月に着工し、00年6月に地上6階、地下2階、延べ床面積3800平方メートルの試験棟が完成した。しかし、95年12月にナトリウム漏れ事故を起こしたもんじゅの運転再開の見通しが立たず、管理棟などの建設は中断された。もんじゅは昨年5月に運転を再開したが、3カ月後に機器の一部が炉内に落下するトラブルが発生し、また運転を停止している。

 検査院は、もんじゅが昨年一時稼働したことを受け関連施設を含め改めて調査した。その結果、RETFの試験棟には研究用機器も一部納品され、建設費や維持費、地元自治体への固定資産税などで10年度末までで約830億8500万円もかかっているのに一度も利用されていないのは問題と判断。文部科学省や経済産業省などと協議し、建物から放射能が漏れないなど施設の特性を生かした活用を早急に図るよう求めた。

 検査院はさらに機構が公表している10年度末までのもんじゅの総事業費(約9265億円)について、人件費や固定資産税、RETFの費用が含まれておらず、事業の透明性が不十分と指摘。それらを含めると約1兆810億円になるとした。

 試験棟について、事故のあった東京電力福島第1原発の核燃料の状況を分析する調査などに利用可能ではとの意見も文科省幹部から出ており、機構は「政府の原子力政策の見直しに合わせ試験棟の活用を検討したい。もんじゅの総事業費は検査院の指摘を踏まえ額を公表する」としている。【桐野耕一】

毎日新聞 2011年11月14日 19時42分(最終更新 11月14日 22時01分)

 

 

もんじゅ 廃止が素直な結論だろう

西日本新聞社説 2011年11月22日 10:46 

 政府の行政刷新会議(議長・野田佳彦首相)は、提言型政策仕分けで、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の存廃を含めた計画の抜本的見直しを求めた。

 同会議の直前に行われた衆院決算行政監視委員会の小委員会による「国会版事業仕分け」でも、「もんじゅ8 件は廃炉にすべきだ」などと厳しい指摘を受けた。

 もんじゅに対する風当たりが強い。長い時間と巨額の費用をかけているのに成果が乏しい。東京電力福島第1原子力発電所の事故によって国の原子力政策が見直される中、無駄遣いの象徴になった。

 一体いくらかかっているか。これにも会計検査院から注文が付いたばかりだ。

 原子力研究開発機構が公表しているもんじゅ8 件の総事業費は約9265億円(1980―2010年度)だった。

 だが、会計検査院は研究開発に従事した職員の人件費や敦賀市に納付した固定資産税など、本来加えるべき数字を加算すると約1兆810億円になるとした。

 そして、もんじゅに対する国民の関心は高いのだから、経費の全体規模が分かるような公表をしなさいと注意した。

 高速増殖炉とは何だろう。発電しながら消費した以上の核燃料を生産することができる原子炉だという。もんじゅは原型炉で、実証炉、商用炉と進んでいって政府は2050年の実用化を目指す。

 ほとんどのエネルギー資源を海外に頼っている日本にとって夢の技術である。

 しかし、である。当初の計画通りならば既に20年以上前に実用化されていることになっている。新しいものに挑戦するのだから予定通りにいかないのは当然だが、それにしても目算が外れすぎだ。

 もんじゅは昨年5月、14年5カ月ぶりに試験運転を再開した。同7月には、13年春以降の本格運転に向け、その前に3段階ある試験の第1段階の試験を終えたとして、いったん原子炉を止めた。

 翌8月、原子炉容器内で燃料交換に使う装置(重さ約3・3トン)が落下する事故が起きた。そして、その後の段取りは大きく狂った。運転は止まったままだ。

 計画が動きだして40年以上になる。いまだにトラブル続きの「もんじゅ計画はやめる」のが素直な結論だろう。

 ただ、行政刷新会議の抜本的見直しには、どこか奥歯に物が挟まったような感じもある。それは、もんじゅは国が進める核燃料サイクル推進の要だからだ。

 原発の使用済み核燃料には、まだ使えるウランやプルトニウムが含まれている。これらを再処理して使えば資源の有効利用になる。高速増殖炉があれば、ウラン燃料の使用効率は飛躍的に上がる。

 国はこう考えたが、現実は違った。

 もんじゅ8 件計画がなくなれば核燃料サイクルは崩れる。すると、原発の使用済み核燃料はどうするのかなど、これまでの政策のひずみや矛盾が表面化してくる。

 すべてを見直すしかない。国には無駄な事業を続ける余裕はないのだから。


=2011/11/22付 西日本新聞朝刊=

 

 

 

もんじゅ仕分け 見直しではなく廃炉を2011年11月22日  琉球新報 社説

 空疎な「政治ショー」が繰り広げられた。政府・行政刷新会議の「提言型政策仕分け」で、安全性、費用対効果の両面で問題が山積する高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)による研究開発に対し「存続の是非を含め体制・計画を抜本的に見直す」という曖昧な判定しか示されなかったからだ。
 「発電しながら、使った燃料よりも多くの燃料をつくれる」というのがうたい文句の高速増殖炉は、空気や水に触れると爆発的に燃える液体ナトリウムを冷却材に用いるため制御が難しい。1995年にはナトリウム漏れ事故で火災が起きた。
 会計検査院によると、もんじゅの総事業費は1980~2010年度で約1兆810億円。施設を運営する日本原子力研究開発機構(原子力機構)がこれまで公表していた額より1500億円以上多い。これだけの巨費をつぎ込みながら、何の成果も挙げられない。
 もはや廃炉以外の選択肢は考えられない。「存廃を含めた計画の抜本的見直し」という仕分けの判定は極めて不十分だ。このままだと、原子力機構の鈴木篤之理事長が述べたように、発電の実用化とは別の研究開発に軸足を移して延命する可能性がある。
 経済産業省、文部科学省を中心とする「原子力村」の関係者は胸をなで下ろしているのではないか。放射能の危険にさらされた上、税金の無駄遣いが続きかねないのだから、一般国民にとっては踏んだり蹴ったりだ。
 もんじゅは、運転を停止していても年間およそ200億円の維持管理費が掛かる。今、この瞬間にも血税が湯水のように費やされている。本来、真っ先に切り込まなければならないのは、公金を浪費してきた政府、文科省、とりわけ経産省資源エネルギー庁の責任と原子力行政の在り方だ。
 国のエネルギー基本計画は資源エネルギー庁所管の諮問機関・総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて策定される。現行計画には「高速増殖炉サイクル技術は、我が国の長期的なエネルギー安定供給等に大きく貢献するものであり、早期実用化に向けた研究開発を着実に進める」と記されたままだ。
 政府の考えに合致した人を数多く調査会委員に据えれば、エネルギー政策は官僚の意のままになる。民意が反映されない現在の仕組みにメスを入れることこそ急務だ。

 

 


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3 コメント

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名前負け (matu)
2011-11-23 19:31:01
科学は万能ではないことを、政治家は知らなさすぎる。
そして御用科学者は無責任過ぎる。
今回ようやく気付いたようですが、無駄にした1兆は誰が責任をとるのでしょう?

落下事故直後に責任者が自殺しているという事実からも、推進派の最後の砦が今回の見直し案で崩されかけている感は有りますが、廃炉になるまでは安心出来ません。
勇気ある撤退を是非お願いしたいものです。
返信する
日本の核燃料サイクル導入について、その核兵器研究開発の動機を検討してみないと、この問題のテーマを良く理解できない、着眼点を変えてみなければ核心に迫ることができない (cafe)
2011-11-24 00:32:40
 日本の核燃料サイクル工程は、原爆開発のために、アメリカ合衆国の軍事利用とエネルギー平和利用の共用技術を、導入した経緯からしても、先ず絶対に廃止することはないでしょう。
 どうする?
返信する
原発推進と温暖化防止推進 (科戸の風)
2012-06-08 16:52:21
私は福島原発事故が発生する以前から反原発運動を、
動画投稿を通じて訴えています。
リーマンショックが起きる前に、あまりに行き過ぎた
金融グローバルスタンダードを危惧して、グローバル金融
について調べてみました。

なにやらCDSって金融派生商品を米国の投資銀行が売りまくって、
それがやがて焦げ付き世界中のCDSが一気に大爆発し、
金融恐慌が起きる事がわかりました。当時、SNSなどを通じて、
NYダウが10000$を割り、東京市場も1万円を割り、
更に円がドルに対して77円を付けると予告しました。

08年当時は馬鹿にされましたが、現在はそれらは全て
実現しました。(NYダウは一時10000ドルを割り込みました。)

そして、もう一つ地球温暖化がどうやら胡散臭い事にも気づきました。
ロスチャイルド、ロックフェラーらの大財閥が、原発推進などの為に、
地球温暖化で大儲けをしようと企んだのです。
そして、08年以降は原発が世界中で爆発的に建設計画が立てられて、
その後アメリカ、新興国などで原発建設ブームに火が付きました。
福島第一原発事故以降もその勢いは衰えていません。
沈静化するのを待っているだけなのです。

福島原発事故であれほど放射能が危険である事が認知されたはずなのに、国会議員・地方議員・官僚・東電・
大企業を中心にまた原発推進へ舵を切ろうとしています。
その機運に憤りを感じて原発推進と温暖化がセット
である事をわかって頂きたくて動画投稿しています。

存在しない地球温暖化を、原発利権の為に利用する電力会社の実態
http://www.youtube.com/watch?v=udWOVj4lulc&feature=plcp

地球温暖化捏造報道・ヒマラヤ氷河消失捏造平成22年1月26日NHKにて報道.avi
http://www.youtube.com/watch?v=AXW9l5RSwyI&feature=plcp
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