ブラック企業大賞授賞式の様子

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 11月29日、「ブラック企業大賞2015」(主催:ブラック企業大賞実行委員会)が発表となり、セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブン)が大賞に選ばれた。都内で“授賞式”も行われた。

 今年のブラック企業大賞候補にノミネートされていたのは、セブンのほか、暁産業、フジオフードシステム、エービーシー・マート(ABCマート)、明光義塾を運営する明光ネットワークジャパン、アリさんマークの引越社を運営する引越社関東の6社だった。

 セブンへの受賞理由として実行委は、販売期限の近い弁当などを値下げする「見切り販売」を妨げるなどしてフランチャイズ加盟店から搾取しており、そのしわ寄せがアルバイトに及んでいるとしている。実行委メンバーの佐々木亮弁護士は「フランチャイズという歪んだ構造に問題がある」と語った。

 また、「週刊誌などは(今回の受賞を)取り上げないのではないか」と指摘した。新聞や週刊誌の販売は今やコンビニエンスストアに大きく依存し、テレビCMの巨額な宣伝広告費を考えれば、セブンのメディアへの影響力は絶大だからだ。実際、昨年の大賞は広告を大量に流しているヤマダ電機だったが、その報道は限定的だったという。

 大賞以外では、「ブラックバイト賞」に明光、「ありえないで賞」に引越社関東、「特別賞」に暁産業が選ばれた。なお、一般からの投票で決まる「Web投票賞」は引越社関東だった。2万票あまりの投票のうち1万票以上を集めて、2位のセブンを大きく引き離した。

 ブラック企業大賞は弁護士やジャーナリスト、学者などでつくる実行委が主催し、今年で4回目。12年に東京電力、13年にワタミフードシステムズ、14年にヤマダ電機が大賞に選ばれている。実行委は毎年、ノミネート企業を授賞式に招待しているが、これまでに1社も出席したことはない。今回もノミネートされた6社の関係者は姿を現さなかった。賞状と副賞は実行委が受賞企業に送付するとしている。

●各社の受賞理由

※以下、「ブラック企業大賞2015」の公式サイトより抜粋

【大賞】セブン‐イレブン・ジャパン

 2013年8月、フランチャイズに加盟する店主4人が、販売期限が近い弁当などを値下げして売る「見切り販売」の権利を同社から妨害されたとして損害賠償を請求していた裁判で、東京高裁は妨害の事実を認め、セブン側に計1140万円の支払いを命令。14年10月に最高裁が本部、加盟店双方の上告を棄却したことで判決が確定した。セブン本部による見切り販売妨害については09年に公正取引委員会が、独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」に当たると認定し、排除命令を出していた。

 セブン本部の不当な経営圧迫に対し、加盟店主らは09年に「コンビニ加盟店ユニオン」を結成して団体交渉を要求。同社は「加盟店主は労働者ではない」と主張し、団交を拒否してきたが、14年3月には岡山県労働委員会が加盟店主らの労働組合法上の労働者性を認め、救済命令を出している。

【ブラックバイト賞】明光ネットワークジャパン(明光義塾)

 2015年10月には、同社直営の宮城県内の教室に勤務する20代の学生講師アルバイトの申告に基づき、賃金未払いで仙台労働基準監督署から是正勧告が出された。同社では、授業に対する「コマ給」と、授業外業務に対して1日30分間分の手当が支払われていたが、授業の準備と生徒の見送り、報告書の記入、片付けなどで1時間を超える未払い労働が恒常的にあったという。同学生は「生徒のための仕事なのに賃金が払われず、納得いかなかった」と語っている。また全国の明光義塾のフランチャイズ教室でも、今年8月には茨城、10月には埼玉、東京、大阪で、労基署の是正勧告が出されている。

【ありえないで賞】引越社関東(アリさんマークの引越社)

 引越社関東は、同社従業員で元は営業職であったA氏をシュレッダー係に配転するなどしていたところ、2015年8月、突如としてA氏を懲戒解雇し、その懲戒解雇の事由を「罪状」などと記載し、A氏の顔写真を入れた書類(罪状ペーパー)を作成、これをグループ内の全国の店舗に掲示した。さらに、同社は同様の文面を従業員に送る社内報にも掲載し、これをグループ会社の所属従業員に送付した。

 A氏が懲戒解雇の無効を訴えて東京地裁に仮処分を申し立てたところ、同社はすぐに解雇を撤回し、復職を命じた。ところが、A氏が出社すると「罪状ペーパー」とされた書類が社内に多数貼り出されており、さらにはA氏の顔写真と「北朝鮮人は帰れ」などの記載のある書類までも貼り出されていた。

 同社に対しては、A氏からシュレッダー係への配転無効の裁判が起こされているほか、同社が引っ越し荷物の破損等に対する損害賠償を従業員にすべて負わせて給与から天引きしていたことから、全国各地でこれを取り戻す裁判が起こされている。

【特別賞】暁産業

 2010年12月、同社の保守点検部門で働いていた当時19歳の男性社員が、自宅で首をつり、亡くなった。男性は高校在学中だった同年2月に同社でアルバイトとして働き始め、卒業後の4月に正社員として入社。 だが入社後は、直属の上司(リーダー)から「辞めればいい」「死んでしまえばいい」「相手するだけ時間の無駄」「もう直らないのなら、この世から消えてしまえ」などの暴言を執拗に投げつけられ、11月下旬には鬱状態に陥っていたとみられている。これらの暴言を含め、男性はリーダーからの指導内容を克明にメモに取るよう命じられており、この記録を証拠に福井労働基準監督署は12年7月、男性の自殺原因は上司からのパワハラであると認定した。

 その後、男性の遺族は暁産業と上司らを相手取り、福井地裁に約1億1100万円の損害賠償を求め提訴。会社側は全面的に否認していたが、同地裁は14年11月28日、「典型的なパワーハラスメント」であるとして、会社と直属の上司に約7,200万円の支払いを命じた(15年9月16日に双方の控訴を高裁が棄却し、判決確定)。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

 

 

セブン-イレブンのブラック企業大賞受賞をマスコミが完全無視! 最強セブンタブー支配されたメディアの実態とは

【この記事のキーワード】
 
2015.11.30 リテラ
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セブン&アイ・ホールディングス公式サイトより


 既報のとおり、昨日ブラック企業大賞2015にコンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブンイレブン)が選ばれた。

 しかし、残念ながら本サイトの予想どおり、ほとんどのメディアは今回のセブンイレブンのブラック企業大賞受賞を完全スルーし、一切報じていないのだ。まさかとは思っていたが、ここまでとは。

 本サイトのほか、「ねとらぼ」、「弁護士ドットコム」など数えるほどのネットメディアが報じただけで、新聞・テレビ、週刊誌も完全無視だ。

 唯一、スポーツ報知がきのうの大賞決定直後に「「セブン-イレブン」がブラック企業大賞、副賞に「ポケット六法」」と授賞式の写真とともに報じたのだが、この記事もなぜか30分もしないうちに削除されてしまった。

 実行委員のひとりでレイバーネット日本の松元千枝氏は「セブンイレブンがブラック企業大賞に輝いた直後にネットにニュースをアップして、また30分後にはそのニュースが消えている…というのが2件もあると、なんだかなー、と思わざるをえないよね。あえてどことは言わんけど。それだけセブンからの圧力がすごいんだろう。」とツイート。

 実は、このマスコミの無視はノミネート発表の直後から始まったのだという。

「ノミネートの段階では、新聞、テレビ各社がこぞってきていたんですが、『セブン』が入っていたことを知って、各社、一斉に引いてしまったようです。実際、『セブンが入ってるので、今年は書けません』と言っていた記者もいたらしい。大賞の発表の際にはほとんどマスコミはいなかったようですね」(ブラック企業大賞関係者)

たしかに、たとえば居酒屋チェーンのワタミや、すき家のゼンショーHDのブラック問題についてメディアがこぞって報じていたのに比べると、とりわけセブンイレブンのブラック問題についての報道は圧倒的に少ない。というより、ほとんど皆無に近い。ワタミやゼンショーなどに比べて、セブンイレブンのブラック体質がマシということではまったくない。

 今回の受賞理由にも挙げられているが、セブンイレブンでは奴隷契約のような本部有利のフランチャイズ契約に追いつめられ、加盟店オーナーの自殺も続出し、契約のしわ寄せがさらに末端にまで及びアルバイトも低待遇で酷使されている。フランチャイズシステムそのものに搾取の構造が組み込まれており、個別の案件だけでなく、本来ならセブンイレブンの企業体質そのものが問われてしかるべき問題だ。

 自殺者まで出ているにもかかわらず、セブンイレブンのブラック体質が一向に改善されないのには、このメディアにおけるセブンイレブンタブーの影響も無関係ではない。

 本サイトでも繰り返し指摘したが、ひとつはセブンイレブンの巨大広告費の存在が大きい。たとえば2014年2月期には524億円もの広告費が投入されるなど、マスコミとってセブンイレブンは貴重な大スポンサーだ。

 また、週刊誌や新聞にとっては、コンビニはいまや書店に代わって最有力の販売チャンネル。なかでも最大手のセブンイレブンに置いてもらえるかどうかは死活問題だ。

 さらに、セブンイレブンは雑誌や書籍の流通の生命線である「取り次ぎ」もおさえている。セブンイレブンの鈴木会長は大手取次会社「トーハン」出身であり、現在、トーハンの取締役も務めている。00年に発売された『鈴木敏文 経営を語る』(江口克彦/PHP研究所)では「いまではチェーン全体の書籍と雑誌の年間売上げは約一四〇〇億円。基本的にセブン‐イレブンで売っている出版物はすべてトーハン経由ですから、トーハンの売上高の約一割はセブン‐イレブンのもの」と語っているほど。00年当時2兆円だった全売上高は昨年には3.7兆円にまでなっており、セブンイレブンの影響力がより大きくなっていることは想像にかたくない。

 実際、取り次ぎを使って、実力行使に出た過去もある。鈴木会長の独裁体制による社内の閉塞状況をあばいた『セブン-イレブンの正体』(古川琢也、金曜日取材班/金曜日)が取次より配本拒否にあったのだ。

 新聞、テレビはおろか、週刊誌までセブンイレブンに都合の悪い報道はできない状態なのだ。

 ブラック企業大賞に選ばれたことで、セブンイレブンにはこれを機にブラック体質を見直し改善をはかってもらいたいところだが、メディアがこの体たらくでは、のぞむべくもないのかもしれない。

 数々の自殺者まで出しながらセブンイレブンのブラック体質が一向に改善されないのには、異常な搾取構造を自社の利益のために放置するメディアの罪もまた重いことをあらためて指摘しておきたい。
編集部