JR西日本の日勤教育は、平成17年の福知山線の脱線事故をきっかけに批判が高まりました(こんな事故を起こした日本が中国を笑えるのでしょうか)。
事故を起こした運転士が、直前の駅で電車をオーバーランさせるミスを犯し、日勤教育を課せられることへの心配から運転がおろそかになっていたとみられたからです。当時の航空・鉄道事故調査委員会は、最終報告書の中で、懲罰的な日勤教育が事故の背景にあったとしてJRに内容の見直しを求めました。
裁判所も運転士らが起こした別の裁判で一部の運転士の日勤教育を違法と認め、最高裁判所でJRなどに賠償を命じた判決が確定しています。
JR西日本の運転士など250人余りが、ミスをした際に課せられる社内の日勤「教育」で不当な扱いを受けたと訴えた裁判で、大阪地方裁判所は61人の原告について「草むしりをさせるなど行き過ぎた内容があった」として、損害賠償をJRに命じました。
「訓練に3分近く遅刻しただけで、運転士に5か月以上にわたる不当に長い日勤教育を課し、担当者が退職を強要したり、『給料泥棒』と罵倒したりした。また、乗務中に同僚と談笑し、会社にうその報告をした運転士に草むしりをさせるなど、教育としてふさわしくないケースもあった」と指摘しました。
そのうえで、原告のうち61人が受けた日勤教育について、「行き過ぎた内容だった」として、JR西日本に対し、1人当たり5万円から30万円、合わせて620万円の慰謝料の支払いを命じたものです。
しかし、61人だけが勝訴で、しかも慰藉料額が一人頭平均10万円とは安すぎる。裁判では、JR西日本の運転士や車掌など合わせて258人が「日勤教育で不当な扱いを受けた」として、会社に損害賠償を求めていましたが、下の記事にもあるように、判決は「事故防止や質の高いサービスを提供するため、社会通念上、相当と認められる範囲で、必要な教育を実施できる」と一般論を述べて日勤「教育」自体は適法として、多くの原告の請求を棄却しています。
そんなお題目が、具体的にこのような日勤「教育」を認める根拠になるとは到底思えません。原告の車掌さんや運転手さん達が、この一部勝訴判決を受けて、怒り心頭に発しているのはもっともでしょう。
最長で5ヶ月の日勤「教育」をされた人がいます。
わずか2分の遅刻をきっかけに、上司らに取り囲まれ、「こんなアホはおらん。下の下や」「頭も悪い、心も悪い」といった暴言を浴びせられ、同僚から丸見えの場所で、命じられるまま連日、就業規則をひたすら書き写しをさせられる。あげくのはてに、退職届の用紙を渡され、辞職も迫られる。
どうですか?
私なら、こんな目に遭ったら死んでいたかも知れません。
仲間がいたから闘えたんでしょうね。
これは、教育というもおこがましい「リンチ」でしょう。日勤「リンチ」。刑務所より酷い。
大人のいじめは陰湿です。こういうのは弁護してやらない。
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「人格否定していいのか」 運転士ら不満の声 JR西日本の日勤教育訴訟
「会社の裁量で個人の人格を否定していいのか」。JR西日本の日勤教育をめぐる27日の大阪地裁判決は同社に賠償を命じたが、請求が認められた運転士らは約4分の1にとどまり、原告側は判決後の記者会見で一様に不満の声を上げた。
原告の1人、土井憲治さんは「日勤教育で人格を否定され、精神的にぼろぼろになった。そういった教育が裁量権の範囲と認めた今回の判決は不満だ」と強く批判。
鍵谷稔さんは、請求の一部を認めた点は評価したが「勝てた人数もたった60人で、この判決で日勤教育を会社から排除できるのか」と声を荒らげた。
代理人の浦功弁護士は「判決は、安全とは何かということを真摯に考えていない」と述べ、控訴を検討するとした。
ミスなどをした運転士らに対するJR西日本の「日勤教育」は人権侵害で違法として、運転士ら約260人がJR西に1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。中村哲(さとし)裁判長は、原告のうち61人が受けた日勤教育で、JR西が裁量を逸脱・乱用したと認定し、計620万円の損害賠償の支払いをJR西に命じた。
日勤教育はJR福知山線脱線事故の背景とも指摘された。中村裁判長は「JR西は必要に応じて教育に関する権限を行使できる」と判断、日勤教育そのものの違法性は否定した。一方で、一部の原告が受けた日勤教育が「期間が長すぎ、賃金面で過分な不利益を与えた」「期間や内容の面で不必要な精神的負担を科した」などと認定し、61人について1人5万~30万円の賠償をJR西に命じた。
原告らは、JR西日本労働組合の組合員ら。日勤教育の実態が、トイレ掃除や草むしり、たばこの吸い殻拾い▽「株式上場について」や精神論など、ミスと関係がないテーマのリポート作成--などだったと訴えていた。
中村裁判長は判決文の最後で「脱線事故から5年以上経過したのに、原告らとJR西は過去の日勤教育について訴訟で争いを続け、安全性向上などの議論が進んでおらず、憂慮すべき事態だ」と所見を示した。さらに「過去の日勤教育に関する不毛な議論を続けることなく、脱線事故で損なわれた信頼を取り戻してほしい」と双方に呼びかけた。【坂口雄亮】
毎日新聞 2011年7月27日 13時18分(最終更新 7月27日 13時30分)
遅刻2分の運転士、さらし者5カ月「頭も悪い、心も悪い」と暴言 JR西の日勤教育訴訟
「神経がすり減っていく日々だった」。JR西日本の「日勤教育」をめぐる27日の訴訟で、請求額のうち30万円が認められた奈良電車区の運転士、鍵谷稔さん(52)は12年前を、こう振り返った。
同僚の前で、就業規則を書写の日々
きっかけは平成11年12月、乗務員訓練に2分ほど遅刻したことだった。鍵谷さんが課された日勤教育の期間は、今回の訴訟の原告で最も長い約5カ月。だが、「日数や達成目標などについて、事前に説明は一切なかった」という。
上司らに取り囲まれ、「こんなアホはおらん。下の下や」「頭も悪い、心も悪い」といった暴言を浴びせられた。退職届の用紙を渡され、辞職も迫られた。
なにより苦痛だったのは、「さらし者」にされたことだった。同僚から丸見えの場所で、命じられるまま連日、就業規則をひたすら書き写した。「先が見えない毎日だった」
約5カ月後、「今度事故を起こしたら運転士を辞める」と宣言させられ、日勤教育はようやく終わった。鍵谷さんは「日勤教育は精神的に追い込むだけ。ミスの根本的な解消にはつながらない」と話した。