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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

アベノミクスと「アベノリスク」4 新自由主義路線の規制緩和・骨太方針・成長戦略で大格差時代に突入する

2013年06月09日 | 所得の再分配と格差社会の是正

 

 安倍政権が、「アベノミクス」の第3の柱となる「成長戦略」をまとめたのに続いて、今後の財政運営の指針となる「骨太方針」(素案)を経済財政諮問会議で決めました。

 国民全体で見ると、厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、日本国民の平均世帯年収は1994年の664万円をピークに減少を続け、2010年は538万円と、なんと126万円も減少しています。毎年10万円以上もの大幅な所得ダウンです。これでは昭和の時代に逆戻りです。

 さらに、平均所得(538万円)以下の世帯が6割を超え、その比率は年々増加傾向にあります。例えば300万円以下の世帯は、10年前の27.2%から32.9%に増えています。今やわが国では、3割以上の世帯が300万円以下の低所得に甘んじているのです。

 当然、成長戦略はこういう点を根本的に改革するものでなければなりませんが、相も変らぬ大企業優先の施策しか出ていません。

 日本は1980年代まで「一億総中流社会」と呼ばれましたが、そうした言葉はもはや死語に等しいといえます。1960~80年代において日本の貧困率(年収が全国民の 年収の中央値の半分に満たない国民の割合)は5~10%程度でしたが、今や先進国の中では米国に次ぐ16.0%(2009年)に達しています(米国は 17.1%)。

貧困率過去最悪の16%  6人に1人は所得112万円未満 一人親世帯は半分以上貧困 子ども貧困率も最悪

 さらに「貯蓄ゼロ家庭」は2011年で28.6%と過去最高となり、生活保護受給者も2013年2月時点で215.5万人と、10カ月連続で過去最多記録を更新中です。このように、すぐにも生活困窮を来すような低所得世帯層が、広がっているのです。

 生活保護の申請さえさせない窓口規制を強化する生活保護「改正」法案が衆院で成立しましたが、国民の所得を増やさないと、生活保護受給者数の増加一つだけでも何も解決しないのは明らかです。

生活保護申請を受理さえせず追い返す「北九州方式」また炸裂 所持金600円の母子4人を追い返した市職員

 


 こうした格差を急拡大させたのは、2001年以降の小泉政権による、規制緩和を主体にした米国型の新自由経済主義政策にあります。その中心人物だった竹中平蔵氏を重用しているように、そして第二次安倍政権も、小泉新自由主義路線の正統な継承者です。このままでは、わが国が今後、さらなる大格差社会に向かうのは明らかです。

 アベノミクスの円安で潤うのは、トヨタやキヤノンなど一部の輸出関連企業、そしてそうした企業の大株主である、外資ファンドや大手金融機関、そして、もともと富裕な個人資産家たちだけです。TPP交渉参加も同じです。

  一方、日本の内需関連企業と一般の国民の生活にとって、資源・エネルギーと輸入商材の高騰を招く円安は明らかにデメリットです。つまり、物価高を招くだけです。他方、もちろん、株高による資産効果も、そもそも株を保有しない大多数の庶民には無関係です。それどころか、2014年4月には消費増税の実施が待ち受けているのです。

 もし、円安や株価の上昇で大企業がもうけを増やしても、労働者の賃金や雇用が増えなければ国民の所得は増えません。利益を社会に還元させる法人税などの税率はさらに引き下げようというのが財界の要求です。これでは税のゆがみがいよいよ激しくなり、税収も落ち込むことになります。

 そんな中、「骨太方針」が、来年4月からの消費税増税について「着実に取り組む」としていることは重大で、消費税増税は、すべての国民に重い負担を押し付け、購買力を奪うもので、経済も税収も落ち込ませます。

 つまり大多数の日本人は昭和より貧しくなったし、さらに貧乏になるということです。国民世帯当たりの所得は昭和並みで、格差は昭和の時代と違ってさらに大格差時代になっていいんでしょうか。

 働く国民の所得を増やし雇用を安定させるとともに、社会保障や教育を充実させてこそ、経済も財政も立て直すことができます。「アベノミクス」は中止し、消費税増税は断念して、国民の所得を増やす政策に転換すべきです。

生活が苦しい国民が初めて6割を超す 子どものいる世帯では7割!それでも消費税増税を強行するのか!!

 

参考記事 ビジネスジャーナル

アベノミクス“不況”? 増える低所得/貯蓄ゼロ家庭、スーパー/コンビニ売上減

 

 

アベノリスク1 お調子者国粋主義が国際社会から批判される

アベノリスク2 成長戦略が屈辱のTPP参加とは。アメリカに「朝貢」する安倍政権。

アベノリスク3 教育再生は安倍ちゃんでは無理 だって・・・・・

 

 

向いている方向が国民の方ではなく、アメリカと大企業だからどうしようもないです。

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骨太、成長…「アベノミクス」の具体策

すべては多国籍企業のために

安倍晋三首相がいう「世界で一番企業が活動しやすい国」とは、国民生活を破壊し、一握りの多国籍企業に奉仕する国づくり―。アベノミクスの具体策 として「規制緩和」「骨太方針」「成長戦略」と立て続けに示された政策から、安倍内閣の「亡国の政治」ぶりが浮かび上がってきました。(金子豊弘、清水 渡、柳沢哲哉)


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原発再稼働・輸出へ政府一丸

 「骨太方針」や「成長戦略」は、「原子力発電の活用」を掲げ、「原発の再稼働を進める」ために、「政府一丸となって最大限取り組む」としています。

 原発については、4月に開かれた日本原子力産業協会の年次大会で、今井敬会長が「基幹電源としての原子力の必要性は自明」と述べ、早期再稼働を要 求していました。さらに原発輸出について、今井会長は「原子力技術の海外展開は、日本の成長戦略の一翼を担う」と強調しています。

 「成長戦略」は「2020年に30兆円のインフラ輸出を実現する」としています。産業基盤を輸出する「インフラ輸出」の中には原発輸出も含まれています。

 原発の再稼働や輸出は、莫(ばく)大(だい)な利益を目当てに原発に固執する原発利益共同体の要求に応えるものです。

 また、「世界で一番ビジネスのしやすい環境」をつくるとして「国家戦略特区」の創設を掲げました。疲弊した国民経済を立て直すことよりも、多国籍企業に奉仕するものです。また、世界の金融市場をかく乱させている投機マネーを呼び込むことになります。

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低賃金を強いて、解雇自由化へ

 「骨太方針」や「成長戦略」で示された「雇用制度改革」は、「国際競争力強化」を図る多国籍企業のための「改革」です。

 その「改革」の一つが「限定正社員」制度の導入です。世界規模で活動する多国籍企業のため、世界中どこへ行っても働ける従業員だけを「正社員」として雇い、それができない従業員は「限定正社員」として、低賃金で不安定な労働条件で雇うというものです。

 多国籍企業にとって都合のいいように働ける者だけを残し、他の者はいつでも解雇できる状態に置きます。「正社員」の中に格差を持ち込み、競争を激しくさせ、労働者の使いつぶしをさらに激しくするものです。解雇自由化への足がかりです。

 他にも「多様な働き方の実現」という口実で、派遣労働の拡大をねらう労働者派遣制度の見直しや、長時間タダ働きを合法化する労働時間法制の見直しも提起されています。

 しかし、「多様な働き方」とは、企業が労働者を必要に応じて使い分けるためのものであり、人件費コストの削減がねらいです。労働者には「痛み」が押し付けられるだけです。

 こうしたいっそうの労働規制緩和で、日本社会全体が「ブラック企業」化し、「働く人が世界一住みにくい国」になってしまいます。

社会保障を敵視し、軒並み削減

 「骨太方針」素案は、国の税財政運営の重点を大企業支援に置き、国民には史上最大の消費税の大増税を押し付け、社会保障給付費を削減する方向を示しました。

 素案は、多国籍企業の活動を支援するため、「国際競争力を強化するインフラ(首都圏空港・国際コンテナ戦略港湾・三大都市圏環状道路等)」に集中 投資するとしました。また、成長戦略のために「税制の活用等を含め広範な政策対応を行う」としました。菅義偉官房長官は6日の記者会見で、経団連など財界 が強く求めている法人税率引き下げについて、「当然、検討対象」と述べています。

 社会保障については、「聖域とはせず」見直すと強調。具体的には、「高齢者医療の自己負担の見直し」を検討するとし、70歳から74歳の医療費の 窓口負担を現行の1割から2割に拡大することを想定しています。年金給付額を抑制する「マクロ経済スライド」の早期実施、生活保護では、住宅費への補助の 削減を含めた見直しなどを検討する意向です。

 民間労働者の平均賃金は1997年のピーク時から年間約70万円も下落しています。このようなとき、消費税率10%への大増税と、社会保障の削減を国民に押し付ければ、生活は破たんし、日本経済も奈落の底に落ちていきます。

投機筋も指摘 「いずれ崩壊」

 安倍政権と日銀が進める「異次元の金融緩和」で日本株を買い込み、暴落する前に売り抜けた世界的投機家のジム・ロジャーズ氏は週刊誌(『週刊現代』6月15日号)のインタビューで、「アベノミクス」によって日本の経済システムは、「いずれ崩壊する」と発言しています。

 ロジャーズ氏は、日本株を買った理由を「金融緩和がなされれば、株価が上がることを経験上知っているから」といいます。「アベノミクス」は、海外の投機マネーを呼び込み、彼らに巨利を与えたのです。

 しかし、ロジャーズ氏は言います。

 「私はアベノミクスが成功するとは思っていません」「円は25%も価値が下がり、輸出関連産業は息を吹き返しました。しかし、日本は食料、石油、 銅、綿など、多くのものを輸入に頼っている国家です。円安が止まらなくなれば、それらの輸入物価がどんどん上がっていく。インフレが起こり、物価が上がっ て日本国民の生活はどんどん苦しくなることは必至です」

 そして、「借金とインフレに基づいた経済システムは、いずれ崩壊するでしょう」と言い切ります。

しんぶん赤旗 2013年6月8日

 

 


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6 コメント

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共産党の主張がわからないですね (ケイ)
2013-06-09 19:11:53
≪日本共産党の市田忠義書記局長は22日、国会内で記者会見し、1ドル=75円台という戦後最高値を更新している異常な円高問題について記者団に問われ、「円高で一番被害を受ける労働者の雇用や中小企業の営業を守るための緊急対策を講じることが必要だ。≫

でいくら位が妥当と考えているんでしょう。
古い記事を (へんせいふう)
2013-06-10 10:09:42
2011年8月23日の記事をひっぱり出してね。
で何が言いたいのでしょう。
へんせいふうさん (ケイ)
2013-06-10 16:55:30
素朴な疑問ですけど。

円高は批判。
円安も批判。
ですから共産党はどの位が妥当かと思いました。
最も為替ですから中国みたいに操作はできませんけどね。

詭弁 (くろねこ)
2013-06-11 00:08:55
国民所得が喩え10万円でも増えるなら、其れは喜ばしきこと。
国民総所得が1人あたり150万円増えるのは、最頻値ではなく平均値。国民所得が増えるのではなく企業や富裕層の所得が増え、格差が広がるだけ。
安倍総理の「所得」 (lemonlemon)
2013-06-11 07:57:12
「国民総所得」「年収」「所得」の概念をきっちりと使い分けることの出来ない総理大臣なんか信用できるわけがない。

だいたい、うまれてこのかたカネで苦労したことが無いだろう「安倍・麻生・甘利」などの世襲ボンボン議員に一般国民の感覚があろうはずがない。

「農業を成長産業に」になどと簡単に言っているが、「農業は土作りから」なんてことはつゆ一つ理解できないだろう。

春に「堆肥まき」を、夏に「潅水」をやって農業の苦労を知ってみろ!!!!
アベノリスクです。 (とら猫イーチ)
2013-06-19 23:09:18
 「アベノミクス」なるものを批判する方も、擁護される方も同じ間違いをされていますね。
 第一に、昨年第三半期からの円安と株高ですが、アベノ何んとかとは何の関係もありません。 長年投資をしている私の者のような人間の眼は誤魔化せません。 世界的なリスクオン(リスクを取った投資実施)で、まず、為替が円からユーロ等へ流れた結果が円安で、米英のヘッジファンドが割安の日本株に眼をつけ、仕手戦を仕掛けた結果が日本株高です。 もっとも世界的に株高になっていますが。 
 金融緩和は、先進諸国で手の打ちようが無くなった各国政権が金融政策しか後が無くなったので実施しているので、何も日本のみではありません。 もっとも、米国のQEでは、経済効果には疑問が付けられていますが。 
 投資環境の変化に依る円安と株高を己が実績と呼ばわった似非経済・金融政策を「アベノ」何んとかと云われているだけで、実質は「アホノミクス」です。 米国の実験結果から、インフレ2%は達成不可能であり、期待に「期待」しても暖簾に腕押しでしょう。 ただ、政治的には効果がありましたね。 詐欺のような宣伝で政権についたのですから。
 例証は、5月末の株の暴落です。 仕手戦の挙げ句に、莫大な利益を得たのは、米英のヘッジファンドのみで、「アベノミクス相場」等々の株屋の宣伝に乗った馬鹿な日本人は大損しました。 自業自得ですが。 今後もこうした局面はあることでしょう。 ただし、米英のヘッジファンド等には勝てないでしょう。 彼らの資金は、レバレッジを使うので、一千兆円以上のマネーになりますので。
 株式市場より債券それも国債市場が心配です。 長期金利が上昇していますので、借換債の調達が心配です。金利が上昇すれば、それだけ利息が高くつくのですから、一千兆円もの借金がある日本にとって死活問題です。 異次元の国債買い取りをする日銀は地獄の蓋を開けたのです。 正気の沙汰ではありません。 
 この本質は、安倍政権の財政ファイナンスです。 即ち、選挙に勝ちたいがために、財源を国債に求めて、日銀に実質上の買い取りをさせているのです。 バラマキ目的で財源が欲しいのです。 もっとも、白川日銀の時代から、実質的国債買い取りは行われていました。 それだけ、国家財政が危機的、と云うより、既に、破綻しているのです。 財政学の教科書程度の知識からでも、歳入予算の半分以上が借金である事実を観ると、気が狂いそうになります。 家計に置き換えて考えてみて下さい。 財布の中身の半分をローンで賄う家計に平気でいられる訳がありません。
 国家財政が危機的状況になり現実に破綻すると、被害は弱者に集中し、資産を外貨で持っている大金持ちは、却って儲けることになります。 現実にロシアや韓国等々で起こったことです。 国の借金は減りますし、大企業は、外貨に換え持っていた資金で出直しするので、困ることは無いでしょう。 彼らにとっては、アベノ何んとが失敗しても良い訳です。 我々も、ドルやポンドで一億か二億の外貨預金でも持っていれば心配は要りませんよ。

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