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中原中也(1907-1937)「冷たい夜」 『在りし日の歌』(1938年):理由なく悲しみがある

2017-05-19 08:30:41 | 日記
 冷たい夜 
 
冬の夜に私の心が悲しんでゐる
悲しんでゐる、わけもなく……
心は錆びて、紫色をしてゐる。

丈夫な扉の向ふに、
古い日は放心している。
丘の上では
棉の実が罅裂(ハジ)ける。

此処では薪が燻(クスブ)つてゐる、
その煙は、自分自らを
知つてでもゐるやうにのぼる。

誘はれるでもなく
覓(モト)めるでもなく、
私の心が燻(クスブ)る……

《感想1》
何に悲しむのか?冬で寒く景色が枯れているからか?わけもなく悲しむのは陶酔が目的か?ロマンチズムの罠か?
錆びた心とは何か?古くなったのか?腐食しているのか?
錆びたら赤色なのに、なぜ紫色か?異常な腐食である。
詩人の心は、悲しく、腐食し、異常である。
《感想2》
丈夫な扉が何のためにあるのか?侵入を許さないし、出ることを許さない。扉は開かない。
扉の向こうにある古い日は、こちらから入れないし、向こうから出て来ることもない。遮断されている。
しかも古い日は放心している。つまり無力に固化している。
棉の実がはじけるのは冬で、それは今。過去は固化しているが、現在(冬)は、過去と別に自律的に作動する。
《感想3》
今、ここで薪が燻(クスブ)る。激しく燃えず、煙が立ち上るのみ。煙は、不完全燃焼を示す。
しかし立ち上る限りで、煙は不完全燃焼の自分を知る。
煙が下降するなら、煙は自分を知らない。煙の上昇は自分を知ること、煙の下降は自分についての無知。
《感想4》
私の心も燻(クスブ)る。激しく燃えない。
そのことに、外因はないし、また求めたわけでもない。
この燻りは、心の悲しみ。しかも理由のない悲しみ。心は腐食し、異常。
この時、心の過去は、現在と遮断され、無力。
現在が、過去と別に、自律的に動く。
その現在において、薪が燻る。
煙が立ち上り、煙は自分の不完全燃焼を知る。
私の心も燻る。これに外因はなく、求めたわけでもなく、ただ理由なく悲しみがある。

 A COLD NIGHT

At night in winter, my heart is sad.
It is sad without reason.
It is rusty and purple.

Behind the strong door, old days are absent-minded.
On the hill, cottonseeds split open.

Here, firewood is smoking.
The smoke is going up as if it knew its own self.

My heart is smoking though this situation is neither stimulated nor desired.
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