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堀口大學(1892-1981)「歴史」『白い花束』(1948年、56歳) 2017/02/06

2017-02-06 14:21:19 | 日記
 歴史

火事がなければ
地震があつた。
病気がなければ
いくさがあつた。
あひまあひまに
生活(クラシ)があった。
国はだんだん
大きくなった。
世路(セロ)はだんだん
嶮(ケハ)しくなつた。
ばらはだんだん
咲かなくなつた。

《感想1》
戦中に作られたが、戦後、発表された作品である。

《感想2》
詩人は1892(M25)年生まれ。1904-05(M37-38)年の日露戦争は10歳代前半。
シベリア出兵が1918-22(T7-11)年で、20歳代後半。
関東大震災、1923(T12)年、31歳。「火事がなければ/地震があつた。」
満州事変、1931(S6)年、39歳。日華事変、1937(S12)年、45歳。太平洋戦争、1941(S16)年、49歳。
確かに、「病気がなければ/いくさがあつた。」
そして「あひまあひまに/生活(クラシ)があった。」

《感想3》
この間、1895(M28)年「台湾割譲」、1910年(M43)年「韓国併合」、、1918(T7)年「南洋群島」委任統治、1932(S7)年、「満州国」成立。かくて「国はだんだん/大きくなった。」
ところが1938(M13)年「国家総動員法」成立(46歳)。それ以降、40年砂糖・マッチ切符制、41年米穀配給制、42年衣料切符制など。「世路(セロ)はだんだん/嶮(ケハ)しくなつた。」(世路(セロ)とは、この世で生きていく世わたりの方法。)

《感想4》
かくて、詩人誕生後の日本の「歴史」は、残念ながら、「ばらはだんだん/咲かなくなつた」と言うしかなかった。

 A HISTORY

While no fires happened, earthquakes did.
While there were no pandemics, there were wars.
In spite of such calamities, people managed to earn their livelihood.
The nation has become larger and larger.
Their lives have become harder and harder.
The number of flowers of roses has become smaller and smaller.
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