DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

伊東静雄(1906-1953)「即興」『わがひとに与ふる哀歌』(1935年)

2016-09-15 18:20:45 | 日記
 即興
・・・・・・真実いふと 私は詩句など要らぬのです
また書くこともないのです
不思議に海は躊躇(タユト)うて
     新月は空にゐます

日日は静かに流れ去り 静かすぎます
後悔も憧憬もいまは私におかまひなしに
奇妙に明(アカ)い野のへんに
        独り歩きをしてゐるのです

《感想》
①この29歳の詩人は、なんと、「詩句など要らぬ」と言う。
①-2 彼がそう思う理由は、おそらく、書かれた詩句が、書かれる事柄・想念の影にすぎないためだろう。
①-3 実在するのは、書かれる事柄・想念そのもの。詩句は、実在しない影。
②その上、「書くこともない」とは、詩人にとり、不吉である。
②-2 書かれるべき事柄・想念を、詩人は見失う。
②-3 だから、不思議に「海」は全く穏やかで、つまり無である。空にある「新月」は、形を持たず、つまり虚無である。詩人は、無or虚無そのもの。
③「日日」が流れ去るが「静かすぎ」る、つまり形がない。形象・差違の不在。あるいは“無規定の有”。したがって“無と区別がつかない有”があるのみ。
④それでも詩人は、後悔や憧憬は知る。
④-2 しかし、実在するのは、“詩句から独立した事柄・想念”としての後悔や憧憬。それらの存在そのものは、詩人の詩句を必要としない。
④-3 事柄・想念(Ex. 後悔・憧憬)が独立し、影にすぎない詩人の詩句を必要とせず、公然と、明晰に、「独り歩きをしてゐる」。
⑤詩人は、影の助けを借り、実在を捉えようとする。だが詩人は、影しか知らない。プラトンのイデア論の洞窟と影の比喩が、思い出される。

 IMPROVISATION
・・・・・・To tell the truth, I need not poems.
In addition, I don’t even have anything to write about.
Mysteriously, the sea is calm, and a new moon is in the sky.
Days quietly flow away and it is too quiet.
Regretfulness and longing respectively walk alone now without minding me in the strangely bright field.
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