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永瀬清子(キヨコ)(1906-1995)「焔について」『焔について 詩集』(1950年)

2016-10-14 19:30:38 | 日記
 焔について
焔よ
足音のないきらびやかな踊りよ
心まゝなる命の噴出よ
お前は千百の舌をもって私に語る
暁方のまっくらな世帯場で。

年毎に落葉してしまう樹のやうに
一日のうちにすっかり心も身体もちびてしまう私は
その時あたらしい千百の芽の燃えはじめるのを感じる。
その時私は自分の生の濁らぬ源流をみつめる。
その時いつも黄金色の詩がはばたいて
私の中へ降りてくるのを感じる。

焔よ
火の鬣(タテガミ)よ
お前のきらめき、お前の歌
お前は滝のやうだ
お前は珠玉のやうだ
お前は束の間の私だ。

でもその時はすぐ過ぎる
ほんの十分間
なぜなら私は去らねばならない
まだ星のかゝやいている戸の外へ水を汲みに。
そしてもう野菜をきざまねばならない。
一日を落葉のほうへいそがねばならない。

焔よ。
その眼にみえぬ鉄床の上に私を打ちかゝやかすものよ。
わが時の間の夢殿よ。

《感想1》
①詩人には、焔が「踊り」のように思える。もちろん焔は、人でないから、本来「踊り」でない。すでに焔が人格化されている。
①-2 「踊り」なのに、「足音」がなく無音の奇妙な踊り。「足音」がないのは、人間の「踊り」でないから。
②詩人は、焔に「命」ある人格を見るが、「心ままなる命の噴出」と、焔の人格は最上級に賛美される。
②-2 詩人自身が、「焔」のようになりたいのだ。
③彼女は、焔の人格に対し、「お前」と親しく呼びかける。
③-2 焔は、多くの小さな焔からなる。それらが詩人には「千百の舌」に見える。かくて焔は、多弁である。いったい何を語るのか?
④詩人は、農家の主婦で。「暁け方のまっくらな世帯場」にいる。

《感想2》
⑤焔が、「一日のうちに心も身体もちびてしまう」農家の主婦に向かって語る。
⑤-2 疲れ果て、いわば日々「落葉」する私を、焔は激励し、「新しい千百の芽の燃えはじめる」感覚を与える。
⑤-3 焔は、詩人に「自分の生の濁らぬ源流」を見させる。
⑤-4 焔は、天上から「詩がはばたいて私の中へ降りてくる」感覚を、詩人に与える。その詩は「黄金色」で、神々しい威厳をもつ。
⑥かように、焔は多弁である。

《感想3》
⑥焔は、この詩人にとって「黄金色」の神々しい詩の、天上からの降臨である。
⑥-2 焔は、疾走する馬の「火の鬣(タテガミ)」である。
⑥-3 焔は、詩の天上からの降臨の「きらめき」であり、それ自身「歌」である。そして「滝」であり、「珠玉」である。

《感想4》
⑧「焔」の「きらびやかな踊り」、「心まゝなる命の噴出」、「生の濁らぬ源流」、そして「黄金色の詩がはばたいて私の中へ降りてくる」のは、実は「ほんの十分間」にすぎない。
⑧ー2 「心も身体もちびてしまう」ような仕事に、農家の主婦である詩人は、戻らねばならない。

《感想5》
⑨ 焔は、「ちびてしまう」私を、詩作の「鉄床」において「うちかがやかす」。
⑨-2 だが詩の「焔」は、一瞬の「時の間の夢殿」である。
⑩詩作は、この詩人にとって、「乾く」生命に水を与える唯一の行為である。(「詩を書く理由」)

 ON FLARE (excerpt)
Oh, flare!
You are a gorgeous dance without any sound of footsteps.
You are a freely erupting fountain of life.
You talk to me with your thousands of tongues at a really dark backyard at dawn.

(omission : 2 stanzas)

Oh, flare!
You make me hummered out and brilliant on your invisible anvil.
You are my dreamy palace only for a moment.
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