にっぽんの文化的アイデンティティを発掘、発見、発信する会 ( JICP )

世界共通言語のひとつ「映像」でつながる、ひろがる、深まる!
日本の文化的アイデンティティを楽しく再確認しましょう。

第6回大人の遠足「堺アルテポルト黄金芸術祭と南宗寺」(2016年3月20日)レポート

2016-03-30 08:55:45 | Weblog
第6回大人の遠足「堺アルテポルト黄金芸術祭と南宗寺」(2016年3月20日)レポート
2016年3月20日(日)13:00 南海高野線「堺東」駅集合 参加者10名

『堺の文化・歴史をテーマとした芸術祭』
 堺アルテポルト(SACAY ARTE PORTO)とはポルトガル語でアートの港という意。一風変わったSACAYの英表記もそこからきているという。黄金の輝きを見せた南蛮文化に敬意を表して命名したという。



 堺市は大阪市に次ぐ二つ目の政令指定都市であり、約83万人の人口を抱える大都市ではあるがここには美術館がない。しかし、地元を拠点として国内外で活動する芸術家は人口に比例して比較的多くいる。本芸術祭ではそのような堺のアーティストやものづくり産業の方々が大きく尽力されたのではないかと想像しながらアート巡りをスタートさせた。

 初めの会場に選んだのは、堺東駅から徒歩ですぐの堺市役所。ガラス張りでひときわ目立つ高層館の21階は展望となっている。ここでまず堺市の全容を上から俯瞰し地元ボランティアスタッフの方から仁徳陵古墳など歴史と地理の説明を受けた。ざっくりと堺のアウトラインを詰めたところで、地元の竹工芸作家の田辺小竹さんの作品を観賞。竹だけで組み上げられた「天と地」という作品。



 1階に戻り実行委員の古谷晃一郎さんの作品解説を受けながら、今井紀彰さんの古墳からインスピレーションを受けたという傘のインスタレーション、建物エントランスに大きく飾られた片桐功敦×小野晃蔵コラボレーションによる写真作品を観賞した。この写真作品では華道家の片桐さんが地元の一般の方をモデルに装飾を施し、堺能楽堂を舞台として写真家の小野さんが撮影をした。さらには全ての大型プリントがキングプリンティン社(本社工場堺)の協賛である。オール・メイド・イン堺にこだわった作品のひとつである。市庁舎前広場には、友井隆之さんの金属彫刻、路上アーティストの松本かなこさんの作品が展示されていた。





『JICPとして外せない南宗寺』
 芸術祭のルートに南宗寺が参加しているわけではなく、ここはオリジナルプランとして加えた。市庁舎前からタクシーで5分ほど南に移動。本年のJICPテーマ「余白」に相応しいいくつかの見所が含まれている禅寺である。建立したのは三好長慶(1522-1564)、堺は信長より20数年前に三好一族によって繁栄をもたらされたともいわれている。境内には三好一族四名の供養塔がある。また、千利休(1522-1591)一門とその師武野紹鷗(たけのじょうおう)の供養塔もあり、さらに奥には利休好みの茶室「実相庵(じっそうあん)」がある。その前庭には枯山水の庭が突如現れる。重要文化財の仏殿には「八方睨みの龍」が天井に描かれており、皆上を向きながらその眼光を確かめてぐるりと歩いた。ここでは一連の解説を市民ボランティアの方が丁寧にガイドしてくれる。ゆえに、思いのほか予定時間をおしてしまい、一行は足早に次の目的地「かん袋」を目指した。(※南宗寺内はすべて撮影禁止)



『鎌倉時代の甘味』
 南宗寺から徒歩で10分ほど、閑散とした街並に突如人が吸い込まれるように入っていく一軒の甘味処「かん袋」がある。茶道の銘菓としてここ堺のこのお店でしか手に入らないくるみ餅。現主人は27代目。温かいお茶とお餅で一服をして、いざ芸術祭の次の会場へ向けて再出発。



『生活感が残る江戸時代の町家』
 阪堺電気軌道阪堺線(通称チン電)に乗り、「寺地町」から「綾ノ町」まで移動。町家歴史館「山口家住宅」へ到着。ここはその名の通り山口さんというおばあ様が数十年前までお一人で暮らしていたらしい。建物の跡を継ぐ者がおらず堺市へ寄贈され一般公開されることとなった。



 この大きな町家では、三名の作家が展示していた。出展作家のひとりであるウエダリクオさんと会場で合流し、作品解説とともに西土蔵に展示された世界各地の風の作品を観賞。2001年から継続している本作では堺市民の協力を得た新作の三点を加えて全250点より抜粋した一部を展示した。デンマーク人作家スティーン・ラスムッセン(Steen Rasmussen)さんとの共作である。他には、土間にフジオカ・ヨシエさんの金属彫刻、庭園に柴辻健吾さんの石彫が展示。




『列車が駆け抜ける商店街』
 日も暮れ始め、夕方17時にはほとんどの会場が閉館。これ以上作品巡りをする時間がなくなってきたため、作家のウエダさんに地元の観光スポットを案内してもらう。既にシャッター街と化した綾之町東商店街が面白いというウエダさん。その狭く薄暗い様子に一同絶句。しかし、ここの中央にはチン電が通過するため線路で商店街が分断され踏切で歩行を妨げられるという大胆な構造に驚かされる。ウエダさん曰く、全国からマニアが撮影にくるほどの観光スポットだそう。我々も初めて見る摩訶不思議なシチュエーションに大興奮で撮影し列車の通過に歓喜した。



『アトリエ訪問〜混沌製作所』
 綾ノ町界隈から徒歩で15分ほど南下するとウエダさんのアトリエ兼住居である。この日のために少し作品制作の過程がライブで観賞できるようにセッティングして頂いた。元鉄工所跡の建物は築90年を迎える。昨年引っ越したばかりだというが、長年の作品や道具類が空間にびっしりと収納されていて建物の強度が心配になるほどであった。ここで3つのウィンド・ドローイングの実演を堪能した後、アルコールやコーヒーで一日歩いた足を休めて二度目の一服をした。
 夕食は、再び堺東駅に戻り、ウエダさん一押しの居酒屋「とっつぁんのおかあちゃん」で海鮮料理を堪能して解散した。



(後記)
 今回のメンバーは大阪、奈良、京都、兵庫からの参加者。主に大阪をメインに活動する面々ではあるものの堺には詳しくない人間ばかり。大阪市から近くて、電車でもいくつかの路線で通過できる好立地だが、今まで特別知る機会がなくぼんやりとしたイメージのまま訪れた。芸術祭でもなければ一日かけて、ゆっくり街を見て歩く機会は無かっただろう。大都市がゆえに、芸術家も産業も多種多様であった。特に今回の発表では現代アートと伝統芸が同じプラットフォームで違和感なく融合していた点が印象深い。街並については混沌としていて公私が入り交じったような自由で個性的。生活感に溢れていた。忘れてはならないのは、ここの人々は1500年以上前からある大小44基の古墳の周囲を取り囲むように生活している。この特殊な環境は堺市民の特権だと羨ましく思う。



(記録:南 なつ)

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第6回 大人の遠足「さかいアルテポルト黄金芸術祭と南宗寺」のご案内(3/20)

2016-03-02 20:54:45 | Weblog
残寒もゆるみ、春が待ち遠しい今日この頃ですが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は今月開催、第6回大人の遠足「さかいアルテポルト黄金芸術祭と南宗寺」のご案内です。

「さかいアルテポルト黄金芸術祭 2016」とは、堺市内の魅力的な地域を使って開催する現代アートの祭典です。
堺を拠点とするまたはゆかりのある国内外で活躍するアーティストの作品を街歩きを楽しみながら観賞しませんか。

美術館のない堺市ですが、かつては千利休や与謝野晶子、刃物や線香や和菓子など職人文化資源にあふれていました。
本祭典は過去の魅力を礎に次世代へ繋げていこうという試みの第一弾です。ビエンナーレやトリエンナーレでの継続を目指しています。

会場は、旧堺港エリア、さかい利晶の杜のある宿院エリア、堺市役所のある堺東エリア、山口家住宅のある綾之町エリアです。
旧境港では海の見えるカフェなどがあり、旧堺燈台からは綺麗な夕日が見えます。
宿院エリアは、チンチン電車が走りフランシスコ・ザビエルにゆかりのあるザビエル公園(戎公園)などがあります。
堺東エリアには、古くからの銀座商店街がありディープなお食事処がたくさんです。市役所のてっぺんからは、世界最大の古墳仁徳天皇陵を上から眺めることが出来ます。

これらの場所に以下の作家達の作品が点在しています。(http://sacayarteporto.com)
↓↓↓↓
【国内参加予定アーティスト】
今井紀彰/ウエダリクオ/大野知英/片桐功敦/小野晃蔵/河合晋平/七野大一/柴辻健吾/Theatre Group GUMBO/田辺小竹/友井隆之/中村岳/滑川みさ/西村佳子/藤井達矢/フジオカヨシエ/松本かなこ/ヨタ(Yotta)
【海外参加予定アーティスト】
Domènec [ドメネク]/Francesca Llopis [フランチェスカ・ヨピス]/Steen Rasmussen [スティーン・ラスムッセン]/Victoria Rabal [ヴィクトリア・ラバル]


また、近隣の観光スポットとして、千利休が修行し沢庵和尚が住職をつとめた禅寺「南宗寺」へも足をのばします。
茶の湯の発展には南宗寺ぬきには語れない。茶と禅を結びつけた拠点と言われています。

どうぞ、ご参加お待ちしております。


◎日時 2016年3月20日(日)13:00〜夜 ※雨天決行です

◎集合場所 南海高野線「堺東」駅(市役所方面 西出口)

◎行程 芸術祭観賞(堺東エリア/宿院エリア/綾之町エリア)→チンチン電車で「南宗寺」→ 銀座商店街でお食事・解散

◎参加費 芸術祭は無料、有料施設およびお食事代は実費

◎参加申込 3月16日(水)までにメールでご返信下さい


[ 企画 ]JICP 事務局 南、郷戸、中野
このメールに返信でも結構ですし、
下記アドレスに参加申込メールを送っていただいても結構です。
よろしくお願いします。
info.jicp@gmail.com
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第48回 JICP会合「余白の世界」備忘録(要旨)

2016-01-08 15:35:20 | Weblog
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
昨年11月に開催した講演会の記録をアップさせていただきます。

*   *   *

第48回 JICP会合 「余白の世界」 水墨画家 濱中応彦氏
 日時:2015年11月18日(水)18:30―20:30 
 会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター 2F ルーム8

【水墨画とは】
墨さえ使えば水墨画と言われています。
水墨画は、塗る(ペインティング)のではなく、筆勢によって描く(ドローイング)、修復のできない世界です。作家のイメージに加えて、水と紙にゆだねる部分があります。ですから仕上がった画は、「こうしたい」という作家本人の思いにとどまらず、「こうなったんだ」という世界になるんですね。
陶芸にも似ています。「窯の蓋を開けてみたら、こうなったんだ」と言う世界と同じです。

水墨画は彩色せず墨の色のバリエーションで表現します。色を押し付けるのではなく、どのように色を感じてもらえるのか、観る人にゆだねる世界です。観る人と対話する絵画です。




【日本と中国、水墨画の違い】
中国の水墨画の描き方は鉤勒法(こうろくほう)といって線描きが多く、日本では没骨法(もっこつほう)という面描きが主流です。面描きは線描きよりも水を多く使うので、水に強い紙が必要です。
ですから紙も麻紙(まし)や楮紙(こうぞし)といった水に強い紙を使います。
日本人は水に耐えうる紙を作ってきたのです。中国の紙を使って、日本の画法で水をたっぷり使って描くと破れてしまいます。日本と中国の水墨画は、そういうところにも違いがあります。



【日本の精神性】
日本では昔から中国の文化をそのまま真似るのではなく、日本の風土性をとり入れて独自の文化として育んできました。
例えば、お茶についてもそうですね。お茶をただ味わうだけではなく、正客(しょうきゃく)と主がお茶を介して時間を共有する。そのための「しかけ」が、茶庭の飛び石や「にじり戸」を辿って行きつく二畳台目(にじょうだいめ)です。飛び石を注意しながら渡り、「にじり戸」をくぐることで肉体的な刺激を受け、同じ精神性を共有する。そういう茶席の文化が育まれてきました。

庭造りもそうです。中国から伝わった庭の様式とは異なり、日本独特の庭造りが行われてきました。
夢窓疎石(むそうそせき)が創った枯山水に代表されるように、水のないところに水の流れを感じさせ、また「ししおどし」で静寂を表現する。見たまま、聞いたままでなく、そこに何かを“感じる世界”です。

木造建築も然り。日本の風土性に合わせて釘を使わない建築を生み出しました。何故でしょうか?日本は湿度が高く、釘が錆びやすいからです。そのために釘を使わずに建造します。そこに匠の技が必要となります。考えて、考えて、風土性に合うものを創り出す、そういうDNAが日本人の中にあります。

【間とは】
音楽、演劇、水墨にしても、最終的にたどり着くのは「間」(ま)です。ある時に、人間国宝の方が舞いをされている最中に扇子を落とされました。誰が見ても失敗をして落としたと思うのですが、彼はすぐには拾わないで床に落ちた扇子を主役に仕立てたのです。そして優雅に舞いながら扇子を拾ったのです。落としたのも芸のうち、というのが素晴らしい。人間は鍛練していくと「間」がすべてであることに気づきます。

水墨も「間」が大切です。「間」は読み切れないところもありますが、それを自分のものにするには、やはり鍛練が必要なのです。宮本武蔵が『五輪書』に鍛練と言う言葉を残しています。
人にはそれぞれ癖があります。その癖を自分のリズムとして磨き、鍛練することで「間」が生まれます。

【余白とは】
余白については絵、お茶、庭、建築すべてに共通することがあります。
《ホワイトボードに図を描く》(イ)(ロ)広がりについて説明します。


(イ)、(ロ)のどちらに広がりを感じますか?(ロ)のほうが枠からはみ出るリズムや動きを感じませんか。それが広がりを感じるということです。はみ出る状態をどう捉えるか。
余白というのは“ただ何もない”のではなく、そこに何かを感じるための導きなのです。すべてに共通するのは、感じることです。導きの中に感じさせることが大切で、それが「余白」です。

注)鉤勒法(こうろくほう):筆線で丁寧に物象の輪郭をとらえる技法
注)没骨法(もっこつほう):輪郭線を引かずに水墨や彩色の広がりある面によって形体づける技法
注)二畳台目(にじょうだいめ):丸畳二畳と台目畳一畳で構成された茶席の事で3畳に4分の1足りない広さ
注)夢窓疎石(むそうそせき):造園術に優れた臨済宗の僧。天竜寺、西芳寺など築庭

【質疑から】
◆ 余白は紙の白い部分ではありません。有るものを取っていく、引き算の世界です。でないと「描かずして描く」世界になりません。
水墨の世界は深く深く心で感じるところの日本の精神性があります。
◆ 日本には季節感を表現できる環境があります。絵の中にただ描くのではなく、ストーリー性があります。そして、日本には余白の文化があります。
長谷川等伯は「松林図」屏風では絵の中ストーリー性をつくり、余白/空間を描きました。主役は脇役があってこそ成り立ちますね。
◆ 昔の絵は伝達の手法としての役目もあったが、今はインテリアの中でどう対話するか、エネルギーを与えてくれるのかの要素に変わってきつつあります。インテリアや建築が絵を選ぶようになったと気づきました。
◆日本人は世界から見るとあいまいな人種と見られがちだが、そうではない。日本の誇るべき文化である俳句や水墨画にも、きちんとした定義があります。決してあいまいな文化ではありません。

(記録・郷戸)

【後記】
最後の方で、濱中先生がおっしゃいました。「余白は白だけではなく、黒でも同じではないかと思うようになってきた」と。つまり、何も描かれていない空間に何を感じさせることができるのか、
ということでしょうか。
RaRa Projectの映像制作で「余黒(よぐろ)」という言葉が出たことがあります。それは、通常であれば、映像を撮影画面で全部埋めるのですが、そうではなく実際の画面を小さくして廻りを黒のままにしたことです。
見ている人がそこに何かを感じ完成させる世界。無限の世界がそこには広がっています。
余白の美は奥が深いです。
濱中先生、ご講演をありがとうございました。
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よいお年を。来年もよろしくお願いします。

2015-12-28 18:40:03 | Weblog
今年もいろいろお世話になりました。
今年は8回の会合を開催することができました。

納会は、1部、2部、3部構成。
1部では、仏像カフェのお店のコンセプトを高橋さんにお話いただき
2部では、平野さんによる「香木を感じる」世界。
「柴舟」と「軒洩る月」の香木を香炉でじっくり味わいました。
これは追加講座があるといいなというリクエストがありましたら、来年は第2回を考えてみましょう。
3部は、カニ。ゆでガニをまず1人一匹ずつ。そのあとカニ鍋。途中無口になりましたが、満足の味わいでした。


最後は、皆さん、お気に入りの仏像を手に記念写真。
何とも不思議な世界でした。


今年も残り少なくなりました。
よいお年をお迎えください。
そして来年も引き続きよろしくお願いします。
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2015年 JICP活動報告

2015-12-28 18:19:27 | Weblog
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