英語習得のための言語の基礎知識

英語習得のための三枝幸夫氏の論文です

2-4 どれくらいの学習時間が必要なのか (1)

2009年06月10日 | 2.想像以上に重要な自己学習
 それでは、英語能力を実用レベルにまで伸ばすためには、具体的にどれくらいの学習時間が必要なのであろうか。アメリカ国務省の付属機関で、外国語研修を行っている Foreign Service Institute(以下 FSI と省略)という組織がある。この FSI が1973 年に発表した外国語の研修成果と、それに要した研修時間に関する資料は、日本人が英語学習に必要な学習時間を推定するためにきわめて示唆に富む事実を提供している。

 FSI はアメリカ人の国務省研修生に教える外国語を、その難易度によって4つのグループに分類している。

 第1グループはフランス語、ドイツ語、スペイン語などで、英語と言語系統が最も近いので、英語国民であるアメリカ人にとっては最もやさしい言語である。

 第2グループはこれよりも言語系統が異なった言語、つまりアメリカ人にとて第1グループより難しい言語で、ギリシャ語、ヒンズー語、インドネシア語などがその中に含まれる。

 第3グループはさらに難しい言語で、ロシア語、ヘブライ語、トルコ語などが含まれる。

 第4グループはアメリカ人にとって最も難しい言語で、日本語、中国語、朝鮮語、アラビア語の四つの言語がこのグループに属している。

 これらの諸言語の speaking 能力達成度と、それに要した研修時間を見ると、当然のことながら、アメリカ人にとってやさしい言語は必要研修時間が短く、難しい言語の研修時間は長い。

 次に示した表は、各グループがレベル2+またはレベル3の speaking 能力に達するまでに要した研修時間の平均値である。レベル2+またはレベル3のspeaking 能力というのは、日常生活にはほとんど差し支えないレベルを示す。もちろんlistening 能力にも問題はない。

 また、この研修は普通の研修とは違って、インテンシブ・コース(集中訓練)と呼ばれるものである。1日6時間の研修は、月曜から金曜まで連続5日間続き、週当り30 時間の猛特訓である。インテンシブ・コースは普通の研修より30%程度は効率がよいとされているが、それだけに厳しく、だれでも気楽に参加できるといったものではない。

 しかも、FSI の研修生は、数多くの就職希望者の中から、難関を突破して国務省に採用されたエリート官僚の卵、将来の外交官である。したがって、一般の学習者の場合には、これよりもかなり多くの学習時間がかかることが予想される。



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