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春風亭小朝の噺、「寛政力士伝」  横綱谷風梶之助

2014年08月13日 | 落語・民話

春風亭小朝の噺、「寛政力士伝」(かんせいりきしでん)
 

 江戸の相撲取りで人格、技量ともに優れた力士に横綱谷風梶之助がいた。

温厚でまず怒った事がなかったが、人生でただ一回だけ怒った事があった。

 伊豆の下田に大巌(おおいわ)大五郎という素人だが強い相撲を取る男がいた。

取り口も汚く相手を負かし、人を殺めた事もあったが、バックに地のヤクザが付いていたので手出しが出来なかった。

有頂天になった大巌は「江戸の相撲取りと一番やりたいが、恐くて箱根を越えられないだろう」とうそぶいていた。

この声を谷風が聞いた。

そこで小田原で3日興行を打って対戦する事になった。

 当日の賑やかな事、初日は頭突きの鯱(しゃちほこ)清五郎であった。

頭突きでは敵う者が居なかった。

その二人が対戦し大巌の胸に頭付きを食らわした。

普通の人間だったら血反吐を吐いて倒れる所だが、さすがの大巌受け止めた。

行司に見えないように指で目つぶしを食らわしたが、鯱もう一度頭突きを掛けたが、見透かされ体を変わして投げ飛ばされて、沼津まで飛んでいった。

 これを見ていた谷風、これほど強いとは思わず、宿に帰って思案していると、親子連れが入ってきた。

母親が言うには、亭主は奉納相撲で大巌に汚い相撲で投げ殺された。

その遺恨を晴らして欲しいという嘆願。

年端もいかない息子も家の鶏が産んだ卵50個あるから必ず勝ってよと置いていった。

 それを襖越しに聞いていた雷電が、ものの順番として私が取りましょう。

谷風からOKが出ると、この卵は私のものですよね、といって丼に割り込んで飲み込んでしまった。

 2日目木村庄之助が呼び上げた、大巌、こなた雷電。

雷電は197cm、169kg有ったという、大巌はそれより一回り大きかった。

軍配を上げると、誰しもぶつかると思っていたが、雷電両手を上げてバンザイの形になった。

大巌驚かず二本差してガブッた。

さしもの雷電も土俵際まで追いつめられたが、ここで両の腕を下ろして、カンヌキの形に入った。

大巌の両の腕が内側に曲がり、血の気が失せてブルブルと震え始めた。

その時「ブキッ」と異様な音がした。

続けてもう一度響いた。

雷電両腕を上げると大巌の腕がブラリと垂れ下がっていた。

後々の事があると言うので、雷電張り手で大巌の顔面を張った。

後年雷電の張り手は禁じ手になったほどスゴかった。

それを左右連続で張ったからたまらない、顔が3倍にも膨れあがってしまった。

後は廻しと肩を持って投げ飛ばした。

場内割れんばかりの興奮が収まらなかった。

 谷風、雷電の師弟が親子のあだを討ったという、小田原相撲の一席でした。

 


  

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