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海に落ちて鮫に食べられて、重い鮫だからと江戸に送られて腹を割かれると俺が出てくる。

2014年11月03日 | 落語・民話

『びっこ馬』
 戸塚泊まりはまだ陽が高い、駒を早めて藤沢へ。

と言うのにまだ保土ヶ谷くんだりを歩いているんじゃダメだよ。

その訳は品川に女が居て別れの挨拶をしてくると言ってみんなで泊まった。

翌朝、雨が降っていたので、雨では旅立ちに縁起が悪いと言って、もう一晩泊まった。

その翌朝は良く晴れて女が「洗濯物を干すから手伝って・・・」と言うから、も一日。それでは旅に出られないと出掛けてきたが、この遅足では何処まで行けるやら。

精を出してドンドンドンドン歩いた。

 遠くに見える、あの高い山は何だ。

箱根の山だ。

箱根の道は8里あるのは分かったが、重さはどのくらいだ。

もうここから帰ろうよ。帰ってどうする。

山の上から西方を見て、あれが京大坂だと言えば、江戸の連中は分からないから納得してくれる。

帰るのも大変だから、海に落ちて鮫に食べられて、重い鮫だからと江戸に送られて腹を割かれると俺が出てくる。

と、バカなことを言っていると、仲間の一人が足を引きずっている。

 マメが出来て歩けないという。

それでは、向こうにいる馬子に声かけさせて値切る算段をした。

旅慣れていると馬子に宣言して、値段を聞くと符丁で3人で「ヤミ」と言う。

高いなら「ジバ」にしておくと言う。

高いから「モモヒキ」にしろと言ったが馬子には通じず。

足が二本で、一本百だから二本で二百だ。

負けた、と交渉成立。聞くとジバは二百だという、言い値で手を打ってしまった。

 馬が来たが、乗ってみると首がない。

後ろ向きに乗ってしまった。

尻持ち上げている間に馬を回せ。

馬に大声で小言を言っている。「こらァ、長い面して・・・」、「馬はみんな長い顔をしているんだ。

どうして馬の顔が長いか知っているか」、

「そんなこと知らねェ」、

「飼い馬桶が長いから、丸顔では食べられないので、みんな長くなった」、

「馬より先に飼い馬桶があったんだナ」。

 お客を見れば仕事が分かる。

「馬だって、お客がバカか利口か直ぐ分かるよ。あんたらの職業も私らは分かるよ」、

「では何だと思う」、

「アンタは分からないが、後ろの御仁は義太夫の三味線引きだ」、

「その通り、良く分かったな」、

「先程、松の根方で用を足しているとき、前を見たら太棹だった」。

 「我々は百姓で、手が空いているときは馬を出して、馬子をやっている。宿を聞かれるのは有り難い。世話になるので、お客を連れて行けば喜ばれるし、顔が立つ。鶴屋善兵衛が大きくはないが親切でおなごも綺麗で、江戸風呂と言って大きな風呂もある」。

 仲間の一人がまだ来ない。

聞くとびっこ馬で長い短い足で歩くからそのたびに頭が下がる。

すれ違う人に失礼はないが、くたびれてしょうが無い。

「だから、大人しいだろ」、

「それが、何かに驚くと思いっ切り駆け出すダ。こないだも客を乗せたまま走り出して、『きゃー』と言いながら駆けだして、谷底に落ちてしまった。仕方が無く仲間と一緒に馬はあげたが、客人はどうなったか」、

「下ろしてくれ」、

「おどけだおどけだ、そんな事無い。びっこのメッカチだから走れない」。

 道中、客人を口車に乗せて、飽きさせずに行くのも馬子の腕。

 

 

 

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