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不審なマッチョ

2014年12月25日 | 面白画像

 

クリスマスに不審なマッチョ

学生の頃、実家を離れて大学の寮に住んでいた。
田舎の学校で、その敷地から歩いて20分程度の場所にある寮だ。
周りは住宅地で、古くからのお宅とベッドタウン化による
新興宅地が混ざった感じ。

寮は4階建てで屋上に物干があり、夜間は屋上への出入り禁止だったけど、
みんな時々屋上へ出て煙草を吸ったり小声でだべったりとそんな感じ。

たしか僕が大学2年生のクリスマス、なんとなく眠れない日が続いてた頃。
独り身の友だちが集まって、
ちょっとしたパーティーをした後でみんなが飲み潰れ、
ひとり持て余した僕は、
良く夜中に屋上へ出て1時間くらいボーっとしたりはしていたので、
その日もダウンジャケットにマフラーをぐるぐる巻きにして行ってみた。

フェンスのそばのベンチで夜空を見上げたり、
夜の住宅街を上から眺めたりしていたら、
寮の門の前に左右に伸びる比較的広めの道路に何か動くものを見つけた。
自分から見て左手側、門から100m以上離れた辺りに人影があった。
周りとの比較から成人と思えるくらいの背格好。
脇道からその道路へひょいっと出たり入ったり、
ちょこちょこっと走り出したと思ったらまた向きを変えて脇道へ入ったり。
何だろう? こんな夜中に(確か午前1時は過ぎていた)と思いながら、
なぜか目が離せなくなってじっと観察してしまった。
なかなか近づいてこないのでイライラした気持ちでいたんだけど、
田舎道のまばらな街灯の光で、徐々にそいつの姿が判別できる様になってきた。
びっくりした。
道端の自販機と較べた感じでは背丈はたしかに成人くらいの男性。
全裸で体はマッチョで筋肉質、動くたびに下半身のモノが大きく揺れ、
筋肉が盛り上がっているのが遠めにも見える。 

 

表情はニヤニヤ笑いだった。
妙に自信ありげで挑発的なニヤニヤ笑い。
夜中に4階の屋上から見ていた自分が、
それをはっきり目にしたという自信は今となっては持てないけど、
フラフラ歩いて近づいてくる無気味さは消え様がない。

門から50m程になった時、マッチョがいきなりこっちへ視線を向けた。
僕は黒いダウンジャケットを着て、
声も出さずにしゃがみ込んで4階の屋上にいたのに、
そいつは迷わず僕の方に視線を向けてきた。
お互いに相手を見ていることが僕にもはっきり判って、
鳥肌が立つのと手の平に汗が出るのを同時に感じた。
マッチョは立ち止まってこっちをじっと見ながら、
ニヤニヤ笑いを続けていた。
僕が固まった様になっていると、突然こっちに向かって走り出した。
あのニヤニヤ笑いを浮かべたままで。
訳のわからない恐怖感に僕は多分パニックになりかけで、
声を必死で押さえたままで屋上から中へ飛び込んだ。
寮の建物自体はオートロックで施錠されている。
自室のドアも鍵がかかる。
3階にある自分の部屋に駆け込んで鍵をかけ、
異常なくらいの心臓のバクバク音を感じていた。
何をどうしたらいいかわからない。
なんでこっち来るの?
なんでこの寒い中裸なの?
部屋の電気をつけたら僕の居場所が判ってしまうという恐怖で、
暗闇の中で震えた。
友だちの部屋に行こうか? でも廊下でマッチョに会ってしまったら?
寮の中に入れるわけがない! きっとただの酔っ払いか何かだ!
いや、何かってなんだ? ああ、もうよくわからない……
頭がグルグル回る様な感じがして、気がついたら涙まで出ていた。

窓の外から砂利を踏む音が聞こえた。
寮の周りをマッチョが歩いてる様だ。
僕はもうたまらずに寮長さんの携帯に電話した。
眠そうな寮長さんの声が聞こえたとたん、
妙なプライドや気取りが蘇った僕(笑)はできるだけダルそうな声を作り、
「寮長さん、夜分にすみません。
 誰かが寮の周り歩いてるみたいで迷惑なんスよね~」
と言ってみた。
すると寮長さん曰く、
「わかりました。念のために見回ってきますから」ということで一安心。
しばらくして明らかにさっきとは違う普通の足音がして、去って行った。
今度は寮長さんから電話をくれて、
「不審なものはなかったですよ。施錠も大丈夫でした」
という言葉で自分を安心させ、
何とか眠ることができた。

 

次の日、1限目からの授業だったので、早めに起きて寮の玄関を出た。
玄関の左側へ10mくらい行った辺りが、僕の部屋の窓の真下になる。
昨日は怖かったなぁ、と思いながらその辺りに目を向けると、
何かいつもと違う印象を受けた。
恐る恐るそっちへ近づくと、昨日感じた鳥肌と汗が一気に蘇ってきた。

僕の部屋の窓の真下、
その地面に、子供がやる様に片足で砂利の地面をこすって線が引かれていた。
図形はきれいな丸に矢印だった。
直径1mもないくらいの丸に矢印が、僕の部屋の真下を示す様に、
まるで手で整えられた様にきれいに書かれていた。
侵入者の証拠を残すとかいう考えもなく、
頭が真っ白になった僕は夢中で自分の足で砂利を蹴って二重丸を消した。
あれから砂利を踏む足音が聞こえると、
あの不審な......マッチョを思い出してしまう。

 

 

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