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宝の瓢箪

2014年12月30日 | 落語・民話

 たからのひょうたん
『宝の瓢箪』
― 岩手県 ―


 昔、あるところに貧乏(びんぼう)な正直爺(じい)がおったと。
 その日、その日をどうにかしのいでおったが、一度ぐらい福運(ふくうん)が向いて来ないかなあと思って観音(かんのん)さまに詣(もう)でて、七日七夜(なのかななや)のお籠(こも)りをしたそうな。
 やがて満願(まんがん)の日になったが、何の霊験(しるまし)もない。爺は何とも呆気(あっけ)ない心持ちがして、お堂の前の坂道をぶらりぶらりと降りて来たと。
 ところが、爺の後から瓢箪(ひょうたん)が一つ転がって来た。

 どこから転がって来たんだろうと思って立ち止まって首を傾(かし)げていると、その瓢箪もまた転がるのをやめた。不思議に思って爺が歩き出すと、瓢箪もまた爺のあとから転がって来た。
「おかしな瓢箪だなあ。どれ、そんじゃあわしにだっこしてみろ」
と両手をさしのべると、ピョコンと跳(と)び乗って、その中から小っちゃい二人の童(わらし)が飛び出したと。
 爺が目をまんまるにしていると、二人は、爺のたまげた顔を見て笑いながら、
 「俺らたちは観音様からのいいつけで、爺のところにきた金七(きんしち)と孫七(まごしち)という者だ。これから爺に福を授(さず)けるから。何が欲しい」
という。
 爺はやっと合点(がてん)がいって、
 「それはありがたいこんだ。遠慮するのはかえって観音様に悪かろう。それではわしの大好物の神酒(おみき)を少々、それから団子」
と望むと、二人はそれを瓢箪から取り出したと。
 爺は、たらふく飲み、食べたと。
 ここちよくなった爺は、金七、孫七を連れて、その瓢箪を肩に担(かつ)いで旅に出たと。
 行く先々で瓢箪から色々なごちそうを取り出して、大勢の人たちにふるまったと。
 そしたら、たちまち評判(ひょうばん)になって、あっちの村、こっちの村で祝い事や法事どきの仕事を頼まれたと。
 あるとき、いつものように道端で沢山の人にごちそうしていると、馬を七匹ひいた馬喰(ばくろう)が通りかかった。爺のごちそうをごちそうになっているうちに、その瓢箪が何としても欲しくなった。
 「その瓢箪、おれに売ってくれんか。懐金(ふところがね)三百両に引き馬七匹を添(そ)えるがどうじゃ」
 「これは売れんのじゃ」
 爺がことわると、金七と孫七が「売れ」「売れ」とささやいたと。
 二人が言うんじゃあと、爺はやむなく売ったと。
 馬喰は、爺の気が変わらん内にと、金と馬をその場に置いて、ひったくるように瓢箪を持って行ってしまった。
 馬喰は、その瓢箪を殿様(とのさま)に献上(けんじょう)して、そのごほうびに国(領土)のひとつでももらうつもりだったそうな。
 それである日お城に行って、世にも不思議な瓢箪を献上したいと申し入れたと。
 殿様も、かねてから、その瓢箪の評判を聞いておったので、戦(いくさ)のときの兵の食糧(しょくりょう)などは、それを持って行けば事足りると大喜びしたそうな。
 馬喰はお城の広間で、殿様の前で瓢箪からごちそうを出して見せることになったと。
 ところがどうしたことか瓢箪からは何んにも出てこないのだと。
 殿様は火のように怒って、馬喰を百たたきにしてからお城の外へつまみ出したと。
 爺は馬喰が置いていったお金をもとに、大層(たいそう)な長者(ちょうじゃ)になって、金七、孫七の二人の童と一緒に、のちのち楽しい毎日を送ったそうな。

  いんつこ もんつこ さかえた。

 

  


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