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八代目林家彦六の噺、「五月雨坊主」

2015年05月24日 | 落語・民話

村上元三作
 八代目林家彦六の噺、「五月雨坊主」(さみだれぼうず)
 

 
 神田・橋本町に願人坊主(※1)が多く住んでいた。

文政6年、江戸も爛熟していたが、五月雨が降り続き、
あちこちで出水し隅田川に架かる橋も危ないという噂も出始めた。

 両国米沢町二丁目に薬種問屋・茨城屋勘兵衛の店は立派であった。

そこに願人坊主が入ってきた。
鉄願という町内には明るい馴染み坊主であったが、店内の異様な空気を感じ取った。
旦那様が手代と木曽路に旅立って1ヶ月。

行方知れずになっているが、それが見付かったのかと尋ねた。
見付からないが、話は出来ないから帰れと言うが、
お嬢様の具合が悪く寝込んでいるのか聞いたが、帰れの一点ばり。

その時奥から後添いのおたねと言う粋な女が縦暖簾から顔を出して勝手口に回るように言いつけた。

鉄願は裏に回るとおたねさんは既に来ていて、顔を近づけるとおたねさんは一歩引いて袖屏風で話し始めた。

薬研小町と言われたお駒は寝たきりであったが、ある日居なくなってしまった。

そこで江戸中を歩く鉄願に頼んで、見付かったら教えて欲しいと頼まれた。

それにはとお金を渡されたが、そんな大金受け取れないと拒んでいると、奥から庄太郎という者が出てきて教えて欲しいことがあると二人で奥に戻った。

庄太郎はおかみさんの兄弟で一月ほど前に住み始めた男だと教えてもらったが、鉄願が三宅島に流されているとき一緒にモッコを担いでいた野州無宿の直助だ。

向は気がつかなかったが、おかみさんの弟だと言うが、何かお嬢さんの家出と関係がありそうだと思うし、旦那の行方知れずも何か絡んでいそうだと、雨の中番傘を広げて駆け出した。

 鉄願はお寺の出ではなく、気がついたら青年になっていて、賭場で喧嘩になり相手を半殺しにしたため島送りになっていた。

5年の刑期を終わって帰ってきたら、捕縛した同心に、このままだともっとヒドい刑になるからと、無理矢理願人坊主にさせられていた。

最初はふてくされていたが、身体を動かして銭を稼ぐと様になってきた。

 雨の帰り道、柳原の柳森神社の灯明の明かりに気がついた。

幽霊のように若い娘がそこに居た。

よく見ると茨城屋のお嬢さんだった。声を掛けると傘の内に入ってきて、貴方のお寺に連れて行ってと言い、尼になりたいという。

このまま家に帰ったら大変だからと、棟割り長屋に連れて行った。

隣に住む尼さんにお願いし濡れた着物を着替えさせ、落ち着いた所で聞くと、ここは駒込の吉祥寺だという。

鉄願を阿弥陀様だと言い、少し気が違っているのが分かった。

家を抜け出したのも天人が導いてくれたし、父親は庄太郎に殺されたと天人に教えてもらった。

杯を交わしましょうのと言われたので、酒は無いが湯呑みを出すと、お父つぁんが見ているからイケマセン。

その方向を見ると二人の影がちらちらと動いている、
「旦那様私はやましいことは何もいたしません。お嬢さんをただ守るだけです」
といって、一晩中お嬢様の話し相手を務めた。

 翌朝、雨もあがったのでお嬢様の手を取って米沢町の茨城屋の店の前に立った。

大声で「野州無宿の直助出て来い」と怒鳴ったところに鉄願を世話した捕り物の同心が現れた。

前々からおかしいと踏んでいたので、ここで見張っていた。

鉄願に先を越されたが、二人を縛り上げてきた。調べると二人は兄弟では無く、昔の悪の仲間で、茨城屋乗っ取りを画策してのことであった。

 木曽路に調べに行くと、旦那と手代は川に突き落とされて居たが、木こりの家に助けられ、医者に診せると傷は負っていたが元気になった。

 娘の婚礼が開かれた。

立派な式で、木曽に行った手代を婿に結婚式が開かれていたが、正客として式に招かれていた鉄願ではあったが、坊主は晴の式には似合わないと、旅姿で庭の片隅に控えていた。

旅に出て手に職付けて帰ってきますが、門出のご祝儀に贈る物もありませんのでと、住吉踊りを踊った。

 鉄願の頬を伝うのは雨ばかりでは無く、涙も含まれていた。

 


※1 願人坊主(がんにんぼうず)は、江戸時代(17世紀 - 19世紀)に存在した日本の大道芸人で、神仏に対する参詣・祈願あるいは修行・水垢離を客の代理として行うことに始まり、江戸市中を徘徊して軽口、謎かけ、住吉踊り、あほだら経など、さまざまな芸による門付、あるいは大道芸を行う者の総称である。乞胸と同様に芸能中心の賤民である。住吉踊り、かっぽれをはじめ、念仏踊り系統の多くは願人坊主によって諸国に流布された


     

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