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男の妻と子が車ごと崖から転落死した。

2015年02月12日 | 面白画像

暗い取り調べ室に座る、作業着姿の男。
男の妻と子が車ごと崖から転落死した。
別の場所で男の母親が川で水死体で発見された。
足の不自由な母親は、水辺まで引き摺られた様な形跡があった。
男の容疑は殺人。
事件の真相をこの男が自供する独白形式で話は進む。

仕事一筋じゃないけど、人が良くていかにも騙されやすい男。
案の定騙されて、莫大な借金を抱える事となる。
働いても働いてもかさむ借金。
家も売ったのか、取られたのか、狭くて汚いアパートに移る男の一家。
それでも一生働いても到底返し切れない。
家族会議で出た結論は、一家心中だった。

しかしその時点で、皆は吹っ切れた様に明るくなった。
とにかく頑張ろうよってな感じで、家族の気持ちが1つになった、と
そんな気が男にはした。
それから今までと違って、一生懸命働く様になった。
家に帰れば、労をねぎらう家族達。
笑い声まで起こる一家団欒。
男はむしろ、今の方が幸福にさえ思っていた。
しかし。

ある日仕事を終えて、家に帰ってきた男。
家には母親しかいない。
「あれ?皆(妻と子)は?」
「何言ってるんだい、今日だろ?」
「?」
 「もう行っちゃったよ.... あたしも早く連れて行っておくれよ」
決行日は今日だった。

男はその時思い知った。
皆、その日までせめて明るく生きようとしてただけだった。
自分1人がいつの間にか、このまま何とか
逆境を乗り越えられる様な気にスライドしてしまっていただけなんだと。
呆然自失の男は母親に促されるままに、川辺までおんぶして行く。
でも、それでも母親を川へ放り込むなんて、男には出来なかった。
....分かった、あたしが自分で行くよ」
母親は自ら、男の背中から降り、四つんばいで足を引き摺りながら、
ずる、ずる、と進んでいく。
男は母親を見ていられなかったが、止めることも出来なかった。
そして残った自分は最後まで死ぬことが出来なかった。

「水色の迷宮」より

 

 

 

  

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