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小便を持って行くのです。それを飲む奴がイケナイ。

2014年08月10日 | 落語・民話

 十代目桂文治の噺、「禁酒番屋」(きんしゅばんや)によると
 

 酒癖は人様ざま、イイ酒もあれば悪い酒癖もある。

悪いのは酒乱です。

森安芸守の藩中で月見の宴が開かれた。

その宴席で酒癖の悪いのが絡んで、相手の若者を殺めてしまい、翌日目覚めて慌てたが後の祭り、切腹してしまった。

酒のせいで若者二人を亡くした殿様が、禁酒令を出した。

 最初の内は禁酒が守られていたが、その内グズグズになって、禁酒令何処吹く風になってしまった。

これではイケナイと、門の脇に番屋を建てて、飲酒の取締と酒の持ち込みを厳しく取り締まった。

これを誰言うとはなしに禁酒番屋と呼んだ。

 酒好きな近藤様が贔屓の屋敷前の酒屋を訪れ、五合升に2杯旨そうに平らげた。

金に糸目は付けないから、1升寝酒に届けるようにと言い捨てて店を出ていった。

店の者は事情が充分判っているので困った。

 小僧の一人が、徳利を下げては門をくぐれない。

最近売り出された”カステラ”を買ってきて、五合徳利2本を入れ替えて持ち込めば分からないと言い出した。

すっかり菓子屋の支度を整えて番屋に、

 「その方は何者だ」、

「向こう横町の菓子屋です。近藤様のご注文でカステラを持参しました」、

「近藤は酒飲みだが菓子を食べるようになったのかな? 間違いがあっては困る、こちらに出せ」、

「お使い物で、水引が掛かっています」、

「進物か。それなら通れ」、

「アリガトウございます。ドッコイショ」、

「待て!今『ドッコイショ』と言ったな」、

「口癖ですから」、

「役目であるから、取り調べる。水引は自分で直せ。この徳利は何だ。徳利に入るカステラがあるか」、

「最近売り出された”水カステラ”でございます」、

調べるからと、水カステラならぬ酒を飲まれてしまった。

その上「この偽り者。立ち帰れ」。
 店に帰って、経緯を話すと、今度は油屋に変装して”油徳利”だと言って通ってしまうと言い始めた。

支度を整え、 「お願いでございます」、

「通~れェ」先程と違って役人は酔っている。

「油屋です。近藤様の御小屋に油のお届け物です」、

「間違いがあっては困る、こちらに出せ。油徳利であるが、水カステラの件がある、取り調べる。控えておれ。御同役、水カステラの味がする。棒縛りだ、この偽り者、立ち帰れ」。

 店に駆け戻ったが、「また飲まれてしまった。これで2升だ」、

「番頭さん、『偽り者、偽り者』と言われて、黙っていられますか。

今度は敵討ちに行かせて下さい。」、

「ダメだよ。今度飲まれたら3升だよ」、

「いえ、今度は酒を持っていかない。・・・小便です」、

「そんな事したら後が大変だ」、

「大丈夫です。小便屋が小便を持って行くのです。それを飲む奴がイケナイ。オ~イみんな、ここに出してくれ」と言う訳で、徳利一杯にして、持ち出した。

 「お願いでございます」、

「通ォ~れェ」、先程以上に役人は酔って、ろれつが回らない。

「近藤様の御小屋にお届けです」、

「どちらだ」、

「向こう横町の・・・、植木屋です」、

「何を持参した」、

「小便です」、

「ん、なんて申した」、

「小便です」、

「バカ。小便を注文してどうする」、

「松の肥やしに」、

「出せ。これに出せ」、

「どうぞごゆっくりとお調べの程」、

「黙って出せ。間違いがあっては困るので取り調べる。

 最初は水カステラ、先程は油と偽って、

 今度は小便と偽って・・・、

 町人というのはたわいのない者だ。

 御同役、今度は燗を付けてきたようであるぞ。

 この偽り者め。

 控えておれ。(湯飲みに取り出して)

 燗が付きすぎたようで泡立ちしておる。(口まで運んで)・・・ん、

 ○X△。

 かような物を持参して」、

「最初から小便だと申しております」、


「う~~ん、正直者め」。

 

 

 

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