生酔い勘定
亭主の留守をさいわいに、若い男を連れこんで、一戦におよんでいるところへ、
ヒョッコリと、亭主が帰ってきた。
寝床にいる若い男の顔つきは、まるで青菜に塩、さすがに女は、ベテランの奥さん、
落ちつきはらって、
「どうやら酔っぱらって帰ったようだから、さわがない方がいいわ。
そのまま、じっと動かないでね」
そこへ亭主が、赤い顔をしてはいってきた。
「ああ、酔った、酔った。眠くてしょうがないよ」と、
ひとりで服をぬぐと、ベッドの中へもぐりこんだ。
寝つきがわるく、何やらモゾモゾやっていたが、やがて、
不思議そうな顔つきで、むっくりと起きあがった。
「どうもおかしい?このベッドの中には、脚が六本あるようなんだが・・・」
「何いってんの。おバカさんね。アルコールがはいると、すぐそれなんだから・・・。
さあさあ、おとなしくねんねしなさい」
すまし顔の細君の声に、一度は横になったが、また妙な顔つきで、
「うんにゃ、たしかに六本だ!」
細君も、もはや、これまでと覚悟をきめ、
「あんたとあたしの脚が六本になったらバケ物よ。勝手になさい!」
「よしっ!そんなら数えてみよう」
ふらふらベッドをおり、毛布をめくり、ひィ、ふゥ、みィ、と数えていたが、
「ちがいねえ、おまえのいうとおりに、やっぱり四本だ!」