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三遊亭円窓の噺「五百羅漢」

2014年11月27日 | 落語・民話


三遊亭円窓の噺「五百羅漢(ごひゃくらかん)」によると。
 

 八百屋の棒手振り八五郎は、六つくらいの見ず知らずの女の子を連れて商いから帰ってきた。
 この子は迷子で、かみさんの問い掛けにも口を利けない。どうやら、先だっての大火事で親とはぐれてしまい、驚きのあまりに言葉を失ってしまったのであろう。
 迷子だったので”まい”という名前をとりあえず付けて、親が見つかるまで手許に置くことにした。
 翌日から、八五郎は商いをしながら、女房は外へ出て用足しをしながら、尋ね回るが、一向に手がかりはなかった。
 四日目。「このまいは、いやな子だよ。ヤカンを持って口飲みするよ」、とかみさん。
「親の躾が悪いのかな~。親が見つからなかったら、うちの子にしてもいいと思っていたのに・・・。手がかりがねぇんだから、探しようがねぇ」。
「だったら、この子を檀那寺の五百羅漢寺へ連れってって、羅漢さんを見せたらどうだい? 五百人の羅漢さんのうちには自分の親に似た顔があるというよ。それを見つけて、なんか言おうとするんじぇないかい。それが手がかりになるかもしれないよ」 。
 翌日、五百羅漢寺へ行って羅漢堂の中の五百の羅漢さんを見せた。上の段の一人の羅漢をジーッと見つめて、指差しをした。「この子の父親はこういう顔か。これも何かの手がかり」と納得して、境内を出たところで、住職とばったり会った。
 ”まい”のことを話すと、住職が「今、庫裏の畳替えをしているんだが、その畳屋さんが『火事でいなくなった娘がまだ見付からない』と、来る度に涙ぐむんだ」と言う。
 その時、子供が畳の仕事場になっている所へ駆け寄ると、小さいヤカンを持って口飲みを始めた。
 これを見た八五郎「畳屋の娘だ! 躾が悪かったわけじゃねぇ。いつも親と一緒に仕事に付いて行って、覚えたのが、口飲みだったんだ」。
 ちょうど庫裏から畳を運び出してきた畳屋が、子を見付けて”よしィ!”と絶叫。
 はじかれたように立ちあがった子が、「ちゃーん!」と声を出して、吸い寄せられるように跳び付いていった。
 畳屋は泣きながら、その子を両手で包むように抱きしめて離さない。
 この様子を見ていた八五郎「やっと声が出た・・・。本物の親にゃ敵わねぇ」。
 住職も八五郎も涙して「しばらく、二人切りにさせておきましょうや」。
 二人が手をつなぎながら、親が大きなヤカンを持って口飲みをして、プーと霧を吹き出すと、畳ほどの大きな虹が立った。子供が小さなヤカンで口飲みして、ぷーっと小さく霧を吹くと、可愛い虹が立った。この二つの虹と虹の端が重なった様は、親子がしっかりと手を握り合って「もう離さないよ」と言っているようだった。
 八五郎は「こちらへ来てよかった。さすが五百羅漢のおかげだ」。
 住職は「な~ぁに、今は親子ヤカン(羅漢)だよ」。

 

 

 

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