十代目 金原亭馬生師匠の「米櫃松茸(こめびつまつたけ)」、別名「のりとふんどし」を紹介します。
「あのぉ、なんだよぉ。
松茸ぇ、貰ってきたんだよ。」
「あぁ、そぉ。
うーん、松茸、貰ってきたの?
まぁー、いい形の松茸。
高いでしょうねぇ。」
「うーん。
俺たちには、なかなか買って食えねぇな。」
「あぁら、まぁ、ほんとに、...。」
「おめぇ、松茸、好きか?」
「変なこと、聞くもんじゃないよ。
じゃ、あのぉ、ちゃんと...。」
「あぁ、いいもんだからねぇ。
いいかい、大事なところにねぇ。
ねずみなんぞに、かじられないようにな。
えっ、あー、楽しみだねぇ。
明日の朝ぁ、
えっ、お汁(つゆ)にして、やるからよ。
今夜、食おうと思ったけど、飯(めし)を食っちゃった後だ。
えっ、あぁぁ、これ、いい格好だぁ。
おぉぅ、よせよ。
俺の顔ぉ見て、変な笑い顔するんじゃねぇ。
えっ、じゃ、しまっといてくれよ。」
「はい、分かったよ。」
おかみさんが、なんか、ごそごそしていたが、...。
「大丈夫なとこにしまっといた。」
「そうか。
じゃぁ、今夜は寝よう。」
カラス、カァーでもって、夜が明けまして、
「えー、さっ、おう。
楽しみだねぇ、えっ。
お汁にして、あの松茸を食いてぇなぁ。」
「そぉう、じゃ、出してくるから。」
「おぅ。
どうした?」
「あっ、まぁ。
すっかり、駄目んなっちゃった。」
「駄目んなっちゃったぁ?
んー、どれ、見せてごらん。
あれっ、おい、ちょっと冗談じゃねぇぜ。
おいぃ、えっ。
一体、こんなに、一晩で腐るわけがねぇ。
いってぇ、これ、松茸ぇ、どこへ入れといた?」
「それがねぇ、ねずみにかじられたらいけないと思って、
米櫃(こめびつ)ん中、入れといたの。」
「おい、馬鹿だなぁ。
米、一粒(いちりゅう)付いても、松茸は腐るってぇぐらいのもんだよっ。」
「あっ、そおぉ。
いけないの。
あっ、それで、ふんどしに糊は付けないんだね。」