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屋上から人がぶらさがってる

2014年12月22日 | 面白画像

今年9月の下旬、出張で都内のビジネスホテルに泊まった。
翌朝、同僚と一緒にホテル1階のレストランで朝食を食べていると、
ホテルの前にパトカーが止まり、警察官が駆け込んでくるのが見えた。
何だろ? と思っている間にパトカーがどんどん増え、レスキューまで来たので、
俺は「ちょっと見てくる」といって、同僚を残してホテルの前の道路に出た。

外ではレストランの窓からは見えなかったが、
救急車や覆面パトカーなどが列を作っていて、
多くの通行人が立ち止まってホテルを見上げていた。
俺もつられて見てみると、ホテルの屋上に手をかけて、
人間がぶらさがっているのが見えた。

外壁を足で蹴り、這上がろうとしているのか、バタバタと動いている。
ちなみにホテルは十数階建てだった。
俺はびっくりしてしばらく見ていたが、
このままだと嫌なものを見るハメになると気付き、
レストランに戻ることにした。
席に着いた俺に同僚が「何だったんだ?」と聞いてきたので、
「屋上から人がぶらさがってる」とだけ答えた。

同僚は驚いた様子だったが、外に見に行こうとはせず、
なんとなく会話もなくなって、2人で食事を続けた。
そのまま5分くらい経って、
何の動きも無かったので助かったのかな、と思った瞬間、
「バーン!」という大きな音が聞こえた。
思わず同僚と顔を見合わせる。
「落ちたね……」と同僚が呟く様に言い、
俺も頷きながらそのまま無言で食事を続けた。

しばらくして、
警察官がレストランの窓の外に青いビニールシートを貼り付けだした。
しかし一面全てがガラスであったため、シートでは全て隠すことはできず、
隙間から外を見ることができた。
俺は窓の横の席だったが、なるべく気にしない様にしてコーヒーを飲んでいたが、
間もなくして消防隊員がタンカを持って窓の横を通るのが見えた。
俺は見たくなかった筈なのに、自然と目が吸い付けられる。
タンカに乗せられ、白いシーツを被せられた人型の盛り上がりが目に入った。
顔まで被せられてるのは死んでいるからだろうか?
時間にすれば一瞬だったが、
シーツの白さがやけに瞼に残って気持ち悪かった。

 

2日後、出張を終えて会社に戻り、
週末と重なったので月曜日に久しぶりに出社したところ、
同僚が休んでいた。
体調が悪いとのことで、同期の女の子に
「東京で悪い病気貰ってきたんじゃない? 君は大丈夫?」
とからかわれたが、出張中は特に調子の悪そうな様子は無かったので、
不思議に思った。

仕事が終わり、見舞いがてら様子を見に行こうと、
俺は同僚が住むマンションに立ち寄った。
エレベーターで7階に上がり、同僚の部屋を訪ねると、
目の下にクマをつくった、異様に疲れた表情の同僚が迎えてくれた。
「大丈夫か? 飯は食べてるか」
と俺が聞くと、同僚は軽く笑った。
「ああ。外に出れないから、買い置きのインスタントばかり食べる」
「そんな悪いのか? じゃあ何か買ってくるよ。何がいい?」
と尋ねる俺に、同僚は泣き笑いみたいな何ともいえない表情を見せた。
……そうとう精神的に参ってるようだ。
「……出れないんだよ。エレベーターでも、階段でも、アイツがいるんだ」
「何? アイツって誰だよ? もしかして、借金取りか何かか?」
「そんなんじゃないっ!!うう、何で俺なんだよ、何で……」
同僚はそのまま泣き出してしまった。

ラチがあかないと思った俺は、取りあえず飯でも食おうと外に誘ったが、
同僚は外に出ることを激しく嫌がった。
冷蔵庫の中身はほとんど空で、買い置きも無い様子。
仕方なく俺は買い出しにいってくると告げて、玄関の外に出た。
同僚の様子を会社に連絡するか、それとも両親に知らせるか。
俺は考えながらエレベーターを待っていると、
下から上がってきたエレベーターが目の前を通り過ぎていった。

エレベーターは扉がガラスになっていて、外からでも中をみることが出来た。
通り過ぎていくエレベーターの中に、子供の様な低い姿が一瞬みえた。
それからエレベーターは最上階に止まったまま、なかなか降りてこなかった。
5分くらいしても降りてくる気配のないエレベーターに嫌気がさした俺は、
階段で降りることにした。

7階だが、下りならそれほど苦でもない。
階段のドアを開けると、
普段あまり使う人がいないためか、空気が淀み、埃がたまっていた。
しばらく降りていくと、下から誰かが上がってくる音が聞こえた。

階段使う人もいるんだな、と少し驚きながら降りていくと、
下から上がってきたモノとすれ違った。
それは、子供ほどの身長だった。
顔は中年の女。どこにでもいそうな顔だが、位置が違う。
顔は本来あるべき場所より遥か下の、ミゾオチのあたりにあった。
強い力で頭を押し込んだような感じといえばいいのか?
腕はやや上向きに開いており、歩くたびにユラユラ揺れていた。
俺はあまりのことに息を呑んだ。叫ぶこともできなかった。
足が固まり、悪夢でも見ているかの様な思いだった。
女は硬直した俺の横を、ヒョコヒョコと階段を登っていき、
やがて音も聞こえなくなった。
俺は金縛りが解けた様に大声で叫ぶと、
無我夢中で階段を降り、マンションから逃げ出した。

 

コンビニまで走り、明るい場所で同僚に電話した。
俺は慌てまくっていたが、同僚は以外に冷静だった。
「……お前もみたんだ。
あれ、飛び降りた女だよ。あの時タンカなんか見るんじゃなかった。
運ばれていくアイツと目が合ったんだ。
潰れて、めり込んだ顔で目だけがやたら大きく見えて……
あんなに警察や消防がいたのに、何で俺なんだよ」
そう言って同僚は大きくため息をついた。

しばらくして同僚は会社を辞め、田舎に帰った。
実家は平屋なので安心すると言っていた。
不思議なのは、同僚はタンカに乗せられた女をみたと言っていたが、
俺の記憶ではタンカには確かにシーツが被せられ、
人はみえなかった筈なのだが。

俺はあの日以来、なるべく階段は使わない様にしている。
またアイツとすれ違ったらと思うと、怖くて使えないからだ。

 

 

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