若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

岩盤規制に立ち向かえ ~ 加計学園騒動の本質 ~

2017年06月14日 | 政治
○国家戦略特区ワーキンググループ 平成26年度 関係省庁等からのヒアリング
・平成26年8月5日 文部科学省 農林水産省 獣医師養成系大学・学部の新設 配布資料
======【引用ここから】======
大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準
(平成十五年三月三十一日文部科学省告示第四十五号)

第一条 文部科学大臣は、大学、短期大学及び高等専門学校(以下この条及び附則第二項において「大学等」という。)並びに大学院に関する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号。以下「法」という。)第四条第一項の認可(設置者の変更及び廃止に係るものを除く。次条第一号を除き、以下同じ。)の申請の審査に関しては、法、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)、高等専門学校設置基準(昭和三十六年文部省令第二十三号)、大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)、短期大学設置基準(昭和五十年文部省令第二十一号)、大学通信教育設置基準(昭和五十六年文部省令第三十三号)、短期大学通信教育設置基準(昭和五十七年文部省令第三号)、専門職大学院設置基準(平成十五年文部科学省令第十六号)その他の法令に適合すること及び次に掲げる要件を満たすことを審査の基準とする。

一~三(略)

四 歯科医師、獣医師及び船舶職員の養成に係る大学等の設置若しくは収容定員増又は医師の養成に係る大学等の設置でないこと。

======【引用ここまで】======

意訳すると、

文部科学大臣は、歯科医師、獣医師、船舶職員に係る大学の設置や収容定員増の申請を門前払いとする

ということになる。
新設や増員の申請そのものを審査対象から除外するという、こんな露骨な新規参入制限を私は見たことが無い。国家戦略特区うんぬんの前に、学問の自由、営業の自由、職業選択の自由を不当に侵害する違憲・違法な告示として無効になってもおかしくない。こんな規制を憲法に照らして無効に出来ないで、何が立憲主義だ。憲法によって国家権力を制限する考え方が立憲主義だ。この立憲主義を掲げていた野党連合の側から文科省への批判が聞こえてこないどころか、前文科省事務次官を擁護する声が上がっているというのは、頭がおかしいのではないか。

規制というのは個人の自由な活動を妨げるものであって、本来なら存在してはならない。100歩譲って役所が規制をかけるのであれば、規制をかける側が必要性・合理性を示さなければならない。規制は原則ダメ。規制をかけるのであれば、規制をかける省庁がその根拠を示し、根拠の必要性・合理性を説明できなければならない。

では、役所の側は規制の必要性・合理性をちゃんと説明できているか?
国家戦略特区の委員、文科省、農水省のやりとりを見てみよう。

○国家戦略特区ワーキンググループ 平成27年度 関係省庁等からのヒアリング
・平成27年6月8日 文部科学省 農林水産省 国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)

所管官庁である文科省の課長は「需要に基づいて定員管理をしている」と言いながら、漠然と「需要は満たされていると農水省から聞いている」と答えるのみで、具体的な需要を全く把握していない。文科省側が農水省に話を振っても、農水省からは「うちは国家試験で合格者の質を担保している。学部の定員は文科省の管轄」と突き放される。

文科省は需要を把握していない。そもそも需給調整は役所でなく市場がすべきである、という指摘にも反論できていない。規制の根拠の必要性・合理性を検証するどころか、文科省は規制の根拠となりうる具体的なものを何ら示せていない。そんな杜撰な状態で規制しているにも関わらず、特区を申請した愛媛県や今治市に対しては「具体的な需要の数までを示せ」と要求し、委員から「挙証責任がひっくり返っている」と突っ込まれる始末。

文科省で代々引き継がれてきた【獣医師会様への配慮】を死守するために、課長が無理してしどろもどろの答弁をしたんだろうなぁ、と推察。天下り斡旋事務次官を先頭に、既得権益層への配慮に満ち溢れた心優しきお役所、それが文部科学省だ。


~~~~~~(以下追記・修正)~~~~~~

さて。

上記会議の中に出てくる国家戦略特区の委員の1人、八田達夫氏が自身のブログで会議における発言を掲載している。これを読んでほしい。

○八田達夫のブログ: 獣医学部新設に関する国家戦略特区諮問会議での発言
======【引用ここから】======
営業の自由を保障するする観点、および競争によって利用者の利益を最大化するという観点からは、この文科省告示は明らかに撤廃すべき岩盤規制であります。
----(中略)----
 今回の獣医学部の新設は、せめて特区ではこの告示に例外を作ろうという試みです。しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。そうである以上、地域的に獣医学部の必要性が極めて高く、しかも福田内閣以来、永年要求し続けた地域に新設を認めたのは当然であります。この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
 しかし、突破口を作ったことには、大きな意義があります。今後、続けて第二、第三の獣医学部が認められるべきです。

======【引用ここまで】======

八田氏は、獣医学部新設を認めない文科省告示そのものを撤廃せよと主張している。この主張は極めて正当なものである。規制する役所側が、規制の根拠となる数字を示せておらず、従ってその必要性や合理性を検証することすらできない状態なのだ。

本来なら、
「規制の根拠となりうる需給の数字を文科省は把握しておらず、規制の必要性・合理性を示すことができない。このため、規制している文科省告示は撤廃する」
でおしまいである。加計学園も京都産業大もそれ以外の大学も、自由に獣医学部を設立できるのが当然の形だ。

ところが、規制の告示は生き残っている。これについて、八田氏は
「新設するとしても2つ以上は認められない」
という既得権益側の激しい抵抗があったと述べ、妥協の産物として
「まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。」
と述べている。この抵抗さえなければ、そもそも愛媛県・今治市の1ヶ所のみとする必要はなかったのだ。

これは八田氏だけが言っていることではない。既得権益側である獣医師会が、「奔走し」「大臣や国会議員へ粘り強い要請活動」をした成果であると自ら述べている。

公益社団法人 日本獣医師会 会長短信「春夏秋冬(42)」
======【引用ここから】======
 昨年11月の「春夏秋冬(40)」でお伝えしましたが、11月9日、国家戦略特区諮問会議が開催され、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定されました。
 そして、11月18日から12月17日までの1カ月間、国家戦略特区による内閣総理大臣の認定を受けた獣医学部の設置について、獣医学部の新設・定員増を認めないとする大学設置認可基準の適用外とするための文部科学省告示改正についてのパブリックコメント募集が行われました。
 この意見募集に対しては、皆様方から多数の怒りのコメントを提出いただき、総数976件の意見のうち83%が反対意見という結果でした。
 この間、私や日本獣医師政治連盟の北村委員長を始めとした本会の役職員は、できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方に、本会の考え方にご理解をいただくよう奔走いたしました。
 このような皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました。

======【引用ここまで】======

八田氏の発言と獣医師会会長の発言は辻褄が合っており、信憑性は高い。
加計学園騒動は、こうした規制緩和側と既得権益側のせめぎ合いの中で1校限定になったという経緯を把握しておく必要があろう。

1分野の岩盤規制を撤廃しようとするだけで、これだけ野党が騒ぎ、マスコミが騒ぐ。既得権益層の影響力の恐ろしさがここにある。
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