若年寄の遺言

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資料要求なんて認めませんっ! ~地方議員と市民との平等性~

2014年09月17日 | 地方議会・地方政治
地方議員は、本会議や委員会に出席して発言し、議案に対し賛成や反対の意思表示をする権限は有している。しかし、こうした議員の権限は本会議や委員会の場におけるものであって、本会議や委員会を離れて出来ることは何も無いと言っていい。

○クイズ<第4問>議員の地位と職責について | 江口是彦(えぐち このひこ)
=====【引用ここから】=====
[問] 議員の地位と職責に関する次の記述のうち、妥当でないものを1つ選びなさい。
( 中 略 )
③ 地方議員は通常は議会全体として活動することが想定されているが、議員個人としての活動が禁じられておらず、議会外で地方自治法98条や100条の検査権や調査権を有しているため、議員が執行機関に対して資料提出を要求すれば、執行機関は正当な理由がない限りこれに応じなければならない。
( 中 略 )
③は妥当でない。地方自治法上自治体議会の議員は、議会を通じて活動することが予定されており議員個人に執行機関の行政活動に関する検査権や調査権が付与されているものではなく、したがって議員個人として資料請求権を有するわけではない。
=====【引用ここまで】=====

○議員はどこまで資料の提出を求めることができるか? -洋々亭フォーラム 過去ログ[229]
=====【引用ここから】=====
Re: 議員はどこまで資料の提出を求めることができるか?
           GM局 - 2010/10/06(Wed) No.25539

結論から申し上げれば、法的には「議員個人」に資料の提出を求める権利はありません。
原則として議会に与えられている調査の権限は、地方自治法第100条の規定に基づくもの(いわゆる100条調査権)、もしくは第98条第1項の検査権が考えられますが、いずれも「議会」に与えられているもので、議員個人に与えられているものではありません。また、余談ながら双方の権限の発動には議決が必要です。
お尋ねのケースでは文面から判断する限り、議員個人が要求しているだけのようであり、資料提出を拒否することはできます。

…以上が建前論ですが、実際の対応としては、執行部として議員に一定の配慮は必要でしょうし、以後の議会でのスムーズな審査のためには、出せる資料であれば出しておいたほうがいいと思います。

=====【引用ここまで】=====

このように、法的には「議員個人」に権限はなく、あくまで議会(ないし委員会)に権限がある。それが合議体というものである。議員個人への資料提供や情報提供は、合議体の構成員として影響力を持っていることを考慮し、行政当局から事実上の配慮(法律に基づかない、行政当局担当者の個人的な配慮)を受けているに過ぎない。
そのため、その行政当局の側が「議員に特別の配慮はしません。法律と条例に則って対応します」と言い出すと、どうにもならないというのが実際のところである。

○西宮市議会 平成14年 6月(第13回)定例会-07月01日-06号
=====【引用ここから】=====
◆37番(西村義男) 日本共産党の2番手としてただいまより一般質問を行いたいと思います。
( 中 略 )
何人にも公開できる公文書の写しを議員の活動の資料としては提供できない、欲しければ条例に基づいて請求してください、これが当局の態度です。議会活動に必要な資料を一般市民と同じように手続を踏んでくださいでは、議会活動は大きく制約されます。市民に公開できる公文書を資料として提供できない理由、根拠は全くありません。これは議員の特権でも何でもありません。先ほども明らかにしたように、議会、議員の権限に基づいて、当局の提案した議案の審査、代表・一般質問に必要な資料であり、当局がこれに応ずるのは当然だと思います。そのことが議員と一般市民との公文書公開請求、資料の請求、提出の根本的な違いであります。このようなかたくなな当局の態度は、行政の保有する公文書は原則公開と規定した情報公開に関する法律、これに基づく情報公開条例の精神にも反することではないでしょうか。
( 中 略 )
◎総務局長(阿部泰之) 4番目の資料請求と情報公開条例についての御質問にお答えいたします。
 会派や議員からの資料請求につきましては、これまで、公文書公開条例及び個人情報保護条例に配慮しながら、これにできるだけ応じてまいりましたが、国においていわゆる情報公開法が制定されたことなどから、昨年、本市の公文書公開条例を見直し、その名称も情報公開条例に改めるなどの全面改正を行ったことなどから、御指摘の公文書公開請求と市議会各会派等からの資料請求の取り扱いについて庁内各所属長に周知をいたしたところでございます。この通知は、情報公開条例と資料請求の取り扱いについて整理をしたものでありまして、市議会の会派または議員から議案の審議や一般質問等の準備のため資料請求がある場合においては、これにできるだけ応じることとしており、提供する資料につきましては、請求を受けました主管局等がこの請求の趣旨を把握しておりますことから、その主管局等において判断することとし、また、公文書の原本の閲覧または複写の請求につきましては、条例に基づきまして、他の請求者と同様の取り扱いをすることを所属長に周知したものでございます。

=====【引用ここまで】=====

この市議会議員のように、事実上のものとして容認されていたに過ぎない地方議員の資料請求を、公の場である本会議で質問するというのは、筋が悪い。論理として成り立たない。公私混同である。行政当局の側からすると、
「いやいや議員さん、我々は内々に便宜を図るために資料提供していたのであって、それを公開の場である本会議場で『当然の権利だ』と言われても、お答えのしようがありません。」
という気持ちになったのではなかろうか。
内々で便宜を図っていた資料提供の中で、公文書については開示手続きを定める条例ができたのだから、そのルールを適用し運用を統一するのは当然のことである。



ではここで、



議員の側からではなく、市民の側から、
「議員に提供しているのと同じ資料をよこせ」
と言われたり、あるいはマスコミから、
「議員への周知と関係なく、取材したタイミングで情報提供してほしい」
と言われたりした場合、どう行政当局はどう対応すべきであろうか。

市民との平等性の問題である。

筋論からすると、法律上の根拠なく便宜的に地方議員に提供しているものについては、同じ取扱いで市民やマスコミに提供可能としておかなければならない。
「この資料は議員にだけ提供しています。市民には提供しません」
「先に議員に情報提供します。議員への周知が終わるまではマスコミにはお知らせできません」
といった対応をした際、問い合わせた市民側、マスコミ側は果たして納得するであろうか。しないだろう。そうする法律上の根拠は何も無いのだから。
ただただ
「職員としては、本会議の審議や委員会の審査がスムーズに進んでほしいから、便宜上、地方議員には優先して情報や資料を提供しています」
という職員側、行政当局側の都合でしかないのだから。

特定の人を優遇して情報提供等を行うというのは、平等原則、法適用の平等の観点からは好ましくない。検査権、調査権等の法律上の権限を有しているのは「議会」であって、議員ではない。法律上、議員と市民の権限はほぼ同じである。権限が同じ議員が知りうることは、市民も同じ条件で知りうるべきである。
「議員だから資料提供をしてもらえる」
「議員だからマスコミよりも先に知らせてもらって当然である」
という状態は、特別扱い、法律や条例に基づかない特権である。

ルール無き特権状態を解消するためには、便宜上の特権的運用を廃止するか、あるいは、法律か条例で地方議員に情報提供をする根拠を定めルール化するか、どちらかを採る必要がある。

憲法第14条「法の下の平等」には学者の数だけ様々な見解がある。そんな中、どの学者にも共通するのは「最低限、法適用の平等は保障されている」ということだ。行政当局に対し「法律をはじめとする様々なルールを、行政当局は等しく適用すべき。平等に取り扱うべき」との義務付けがされている、ということである。議員と市民との平等性という言葉は、非常に重たいということを認識しなければならない。

市議会議員は市民として情報公開請求できるのか?できないのか? - Togetterまとめ

市議会議員は、市民として情報公開請求できるのか?できないのか?
答えは、「できる」である。より正確に言えば「議員個人では情報公開請求『しか』できない」としなければ、市民との平等性は保たれない、ということになる。
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