「二度と来るかよぉ、ボケッ」と、吐き捨てて、店を出た。

月に、1回、多くて、2回のローテーションで、髪を切る。

税込み、1,100円の、洗髪なしの散髪ショップで。
自販機で、最初に、チケットを購入して、自分の順番を待つ。

散髪席は、2席の小さなお店。

自分は、いつもの決まった女性に、
指名料350円を、足して、1,450円也。


座った自分の足元から、上は、美容師の顔まで余裕で映る大きな鏡の前に、
回転椅子のシンプルな造り。

洗髪はなし、髭剃りもない、カットのみなので、洗面台はなく、
壁面の鏡と、カットされる回転椅子までの距離は、近い。

その壁面の鏡の脇に、お客の荷物を置く台がある。


洗髪をしないので、10分〜15分で、散髪をした後は、
ドライヤーで、ざっくりと、切った髪を飛ばして、
掃除機より太い蛇腹のダクトで、細かい髪を吸い取り、
化粧筆で、額と目の周りを、さっと、はたいて、出来上がりのシステム。

自分は、まだ、散髪中だったが、
仕上げに取り掛かった、隣の60歳近くのの男性客が、怒鳴った。

「ドライヤーで、髪を吹き飛ばすなら、荷物の置き場所、ここじゃ、ねぇだろぉ」

今まで、髪を切っている最中は、黙って、目を閉じているので、
意識もしなかったし、気付きもしない、ことだった。
しかし、言い方はともかく、ごもっともな、ご意見である。

これに、若い店員の彼の返した言葉が、良くなかった。
「他に、置く場所が、」と、言うか、言わないか、

かぶせるように、
「言い訳、するんじゃねぇ。」

火に油、
「客に、こんなこと、言わせんじゃねぇ、
商売やる資格は、ねぇんじゃ、ボケッ。」

ごもっともです。

が、しかし、
店の雰囲気が、一気に、凍った。

散髪中の自分。

いつもは、お店で無口な自分も、
この場を救おうと、ひと言、…と思って辞めた。

更に、火に油を注ぎ、今度は、自分に、火の粉が飛んで、
これまた、面倒になるのは、と。

あと、数分の我慢である。

待っているお客さんが、5名程。

店員の彼も、すみませんでしたと、
荷物を、他の場所に、移動すれば良いのに。
謝りもなく、作業を続けた。

怒った客は、
「二度と来ねぇからな」と、立ち上がり、
前金制なので、
「こんなのに、カネは、払わねぇぞぉ」と言えない気持ちも折り込んで、

店を出る際に、もう一度、
「 二度と来るかよぉ、ボケッ 」と、吐き捨てて、店を出て行った。

怒った客の言っていることは、正しいし、啖呵も、間違っては、いない。

なのに、
あと味が悪いのは、なんだろう。


虫の居所が悪かった、と引き受けるか、
60近くのくせに、手前ぇの思いを吐き出して、
お店に来ている他の客のことをも考えられない、チンピラ親父と、片付けるのか。


店を、吐き捨てて、出て行くお客に、
自分の髪を切ってる彼女は、大きな声で、「ありがとうございました」と、
お決まりかもしれないが、感謝の声を掛けた。

次の、お客さんに、店員の彼は、
「どう、しましょう」と、これまた、
髪型の注文のお決まりの声を掛けていた。









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