あの社会人時代の、馬鹿なオレ。お得意さまは、お見通し、のほうの。

あの社会人時代の頃、

当時、良く仕事をしていた、
代理店のクリエイティブのお得意さまは、ゲイだった。

もう、その事を、オレたちには、カミングアウトしていた。

馬鹿なオレのことを、試そうとしたのだろうか、
自分の行きつけのお店に、何軒か、連れて行き、
ママと言っていいのだろうか、
お店の主人と話をさせられた。

及第点が、頂けたのだろうか、
そのお得意さまの自宅に招かれた。

赤ワインで、乾杯し、飲み直しだ。
部屋を案内され、キレイに整えたベットルームも紹介してくれた。

酔いが、醒める。
もう、散々、飲んだ後だった、が。

もちろん、こころの中では、
LGBTの人たちに対しての、差別は、持っていないつもりだが、
肉体関係となると、それは、躊躇する。

盗人(ぬすびと)にも三分(さんぶ)の理(り)というけれど、
まだ、若かったオレにも、
あたらしい世界、という好奇心も、一分(いちぶ)はあった。

しかし、
怖かったのは、後戻りできるかどうかだ。
そのまま、その世界に、突っ走る、オレも、一分で、想像できた。

盗人は、三分を持ちだす、口実で、
大意は、ない。

そんな、若気の好奇心で、踏み込んでいい世界なのだろか。

こんな事を言ってるオレは、いけないのか。

ハードリカーが、欲しかった。
しかし、オレも頼むタイミングを逸し、
お得意さまも、出さなかった。

そのお得意さまのご自宅には、
綺麗な、グレーのシャム猫がいた。

そのシャム猫が、オレに、なつく。
しっぽを立て、エレガントに、
オレに、まとわり、じゃれてくる。

こころを決めるか、
ハードリカーを、頼もうか、逡巡している、オレに、

お得意さまは、タクシー、呼ぼうか、
明日も、あるんでしょ、と。

すべて、
お得意さまの掌(てのひら)の上で、
弄(もてあそ)ばれていたのか。


良く、そのお得意さまは、オレに、
「消えていなくなって欲しいと思う人は、
私が、念じると、必ず、消えて行くのよ」と、言っていた。

オレは、その業界から、消えた。

お得意さまに、消えろと、念じられたのか。

業界から、脚を洗ってから、
ばったり、そのお得意さまに、街で会った。

お得意さまは、オレに、商談の時間があるから、と言って、
急いでいる様子で、すれ違い際に、
「また、プロデューサーやらないの、やればいいじゃない」って言ってくれた。

オレは、
「お客さまが、いませんので」と、言って別れた。

あれは、本音だったのか、それとも、社交辞令だったのか、
呪われたのか、呪われていなかったのか。

今となっては、知る由もない。

まだ、お得意さまは、あの業界に居れば、
いいポジションについているはずだ。



ホントは、
オレって柄じゃないんだけどね。





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