あの社会人時代の、馬鹿なオレ。子守するほう、の。( 摸摸具和の7 )終

2017-10-19 06:08:29 | 馬鹿なオレ、
エゾモモンガが、尻尾を出さないまま、4日が過ぎた。

そして、
5日目、思いきって、
山奥育ちの、へなちょこ精鋭撮影作業部隊の、隊長プロデューサーの勘で、
明るい15時から、準備をして待つことに作戦を変更した。

準備中、16時過ぎに、
なんと ‼︎
はじめて、オレたちの前に、エゾモモンガが、姿を現した。

見事、隊長、作戦、成功 ‼︎

へなちょこ精鋭撮影作業部隊は、
お前、やっぱり、ここに、いたんだ、ね、って、

驚きと、感動と、涙目と、安心と、これからの希望を、
味わう、いとまもなく、オレたちは、椅子から転げ落ちた。

はじめての、エゾモモンガは、いきなり、
照明を運ぶ、オレの肩に、飛んで来て、一瞬、乗って止まった、のだ。

オレたちは、
転げ落ちた、椅子を、探したが、
余りにも、驚いたので、あるはずもない妄想の椅子よりも、
眼の前のエゾモモンガの、その後の行動に、釘付けとなった。

エゾモモンガは、上空から、滑空することは出来るが、
平地から、飛び立つことは出来ないようだった。

オレの肩から、樹に飛び移り、
樹を、素早くよじ登って、滑空して、
まだ、明るさの残る、森の奥に、軌道を残して、消えて行った。


エゾモモンガにも、
ワカッテシマッタノカ、
馬鹿なオレが、
ニンゲン界より、どうぶつ界への近さを。

イヤッ、どうぶつ界でもない、せいぶつ界への近さに、
(生物、静物、性物……… 、)
ちょっと、おちょくってやろうと思う、下等性を、感じとったのか。


この日を境に、
15時には、スタンバイして、
撮影に臨んだ。

夜行性といわれるエゾモモンガたちは、
16時過ぎには、
つがいと、その子どもなのだろうか、3匹、
次々と、30分位の間に、樹を駆け上がり、滑空して、
決まって、同じ方角の森に消えて行った。

そして、
19時頃から遅くても21時の間には、
消えて行った方角から、
次々と、巣穴に戻ってきた。

撮影用に、調教させているかのようだ。

3日の間で、
飛び立ちと、巣穴に戻るチャンスを、確実に撮影した、と、判断した、
オレたちは、一旦、撮影を終了することにした。

東京に戻って、フィルムを現像して、
編集が成立するかどうかを検証し、
今後を考えようという事にした。

そして、
今回の撮影素材で、
無事、編集することが出来た。


おかげさまで、
なんか、賞を、頂いたようだ。

表彰状と、楯(たて、トロフィー)を、
見せられただけで、
昇給も、金一封も、祝福のねぎらいの食事会もなかった。

そんな、モノが、あっても、
オレは、授賞への特別な感慨は、無かっただろう。

できあがって、編集された映像に、
達成感を、感じていなかった、から、だ。

現場にいたオレには、
あの丘の、エゾモモンガたちなら、
へなちょこ精鋭撮影作業部隊のオレたちにも、
カメラの位置も変えて、別のアングルでのショットも、期待できたはずだし、
もっと、素晴らしく、驚くような、映像を、与えてくれたであろう。
そんなの想いも残っていたから、だ。

すべては、大人の事情、
なんとか賞を、頂いて、大人たちだけで、満足したんだ。


結局、オレが、頂いたのは、
寒さを凌ぐために、アゴの下や、腹のまわりの、カラダに溜め込んだ、
脂肪分だけだった、のか。


北海道のアイヌ民族たちは、
エゾモモンガが「子守する神」として、信じているそうだ。

大人に、上手くなれない、
馬鹿なオレは、子守する神に、遊ばれたことが、
なによりの宝であった、グレイス、恵み、だったんだ。


どうなんだろう、あの時の神さまは、
まだ、
あの「うろ」で、生きているのだろうか。
それとも、
引っ越しを、してしまったのか。
そして、
世代交代を、しているのだろうか。
そもそも、
あの丘の森は、残っているのだろうか。


モモンガ、
当て字で「 摸摸具和 」と、書くそうだ。

その意味を、オレは、知らない。


それ以上に、
エゾモモンガは、夜行性で日中は樹洞等に潜む、と云うけれど、
ニンゲンが、勝手にいう、夜行性と、
エゾモモンガが、実際に、行動する、夜行性との、ギャップだったのか。

それとも、
いつもの、行動時間を、
照明で、人工的に、明るくされての、
余儀なくされた、時間差行動、だったのか。

エゾモモンガが、夜の静かな暗闇だった森を、
騒がしく明るくされたことに、
どう、感じていたのか、
肩の上に、止まって、喜んでいる、
馬鹿なオレには、まったく、知ることは、出来ない。




ホントは、
オレって柄じゃないんだけどね。