飲酒運転を絶対に認めない私としては、飲酒運転幇助も憎むべき犯罪だと思います。しかし、その罪状についてはやはり運転した者が最も悪いのであって、上司が「いいから乗っていけ」と言ったような場合に、断り切れるサラリーマンがどれほどいるかは甚だ疑問です。
コメント欄からの質問で、ある学生が飲酒運転幇助罪で検挙されたが不起訴はあるのか?というのがありました。私としては飲酒運転を幇助したのであれば全く知恵を貸すつもりはなかったのですが、どうも詳細を聞いてみると幇助が成立するかどうかは微妙な案件だったため、主義に反して丁寧に回答したつもりでした。
しかしこの学生は、1回目の私の回答で不起訴は難しいと判断すると、すぐに「諦めます」というコメントを返してきました。最終判断は自分ですれば良いとして、違法行為を働いた自覚がないのであれば否認するのは構わないだろうと思ったので、それに対して「本当に幇助したつもりがないならこうやって否認してみれば?」というような回答を返したのですが、彼は同日交番に出頭して、警察が求めるまま「(飲酒運転を)黙認した」という調書を録られてきています。本当に諦めて罰金を支払う気になったのであれば問題ありませんが、私はてっきり否認するものと思っていたので、私の回答を読んで一体何を知ったのか?と年甲斐もなくキレてしまいました。このへんの経緯はコメント欄を読んでいただければわかります。
で、学生に説教した私としては、飲酒運転幇助罪というのが、どの程度で起訴されるものなのかを調べてみたくなりました。何故なら、今ほど飲酒運転が危険視されていなかった時代において、私自身は飲酒運転などした事がありませんが(当時は遵法精神からというよりは、単に私は下戸なので飲み会に行っても一滴も飲まない人間だったので)軽く飲酒をした先輩の車に同乗したことならあります。もちろん断りましたし、「それで事故ったら首では済まないからやめましょう!」と止めもしました。しかし、日頃から世話になっている先輩に「いいから乗っていけって!」
と強い調子で言われ、渋々乗った事ならあります。あまり言うと怒られるので乗っている間中ハラハラしながら周囲の交通を見ていた記憶があります。さて、私の行為は今なら飲酒運転幇助罪が成立するのでしょうか?
結論を先に言えば、今なら幇助罪が成立して立件されると思います。幇助罪の構成要件は
①運転を勧める、もしくは制止せずに黙認するなどして飲酒運転を助長する
②飲酒した者に車両を提供する
③飲酒運転をするつもりの者に酒類を提供する
のいずれかを満たすと成立するようです。
私のケースでは制止はしましたが結果的に同乗していますので①において成立したでしょう。質問を寄せた学生のケースでは、居酒屋の駐車場内で酔った友人が学生のバイクを借りて乗り回すのを制止しなかった。との事ですので、①が成立するかどうかは微妙ですが②が成立するとして警察に検挙されたようです。
ここで重要なのは「車両の提供」の定義です。「貸して」と言われて「いいよ」と答えた。もしくは「運転するよ」と言われて何も言わずに黙認した。これらは幇助罪が成立するでしょう。しかし、学生のケースでは「他の友人と座って話している時、目を離した隙に運転されてしまった」とのことです。目を離した隙に運転されたという事はバイクには鍵が差さっていたということでしょう。その後はバイクを押して近所の友人宅に行って泊めてもらうのが恒例だったようですので、後で移動させるつもりで鍵を差していた行為自体は責められるものではありませんし、それをもって「いつでも誰でも運転していいよ」と車両の提供の意思表示をしたと認めるのは強引です。
だとすれば、目を離した隙に友人が勝手に飲酒運転をしたのであって、学生に幇助罪が成立したとするのは強引な論理のような気もします。もちろん、気付いたらすぐに制止すべきでしたが、彼自身も相当に酔っていたのであればそのような正常な判断が出来ないこともあるでしょうし、友人が運転したのは駐車場内を10m程度だったようで、そのまま公道に出て飲酒運転を続行する意思があったとも思えません。もちろん、駐車場内であっても公道と自由に出入りできる部分では道交法が適用され飲酒運転をしたことは紛れもない事実ですが、これをもって幇助とみなすかどうかは判断が分かれると思います。
飲酒運転幇助罪自体の判例はネットでは拾えませんでしたが、以下のようなものがありました。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=37564&hanreiKbn=03
これに関しては判決文を精読することをお勧めします。沖縄県というのが象徴的ですが、飲酒運転がどのような悲劇に繋がるかもわかりますし、同時に読み取れることが2点あります。
①これほどの事件で、飲酒運転を止めもせずに同乗しているのに、刑事処分としては不起訴(起訴猶予処分)になっている。
②飲酒運転幇助罪は不起訴でも、この行為を理由とした分限免職が合法とされている。
考えてみればこれは公務員の分限免職に対する行政訴訟ですから、原告に勝ち目などは最初からなかったわけですが、これでも起訴猶予で済んでしまうところをみると、幇助罪の成立はかなりハードルが高いようです。もちろん、被疑者が認めていれば略式起訴して罰金刑になった者も多いでしょうが、おそらくこの原告は幇助罪については否認したのでしょう。これほどの重大な事故を伴ったケースでも不起訴なのですから、飲酒運転幇助罪については否認すれば不起訴の可能性が高いと予想されます。
一方で、仕事的には停職6ヶ月+分限免職という公務員としてはかなり重い処分が下されています。これは完全に会社によるでしょうが、お堅い職場では飲酒運転に同乗しただけでもクビになる可能性があることを示唆しています。やはり飲酒運転は絶対にさせない。止めても聞かない奴はぶっ飛ばしてでも止めるしかないということでしょうね。それで傷害罪でパクられたら元も子もありませんが、飲酒運転を放置してこの事件のような悲劇が起こってからでは遅いと思います。
しかし、これらを総合して考えると新たな疑問が2つ浮かんできます。
①これが事故を伴わず、飲酒検問で検挙されたようなケースだったとしても停職6ヶ月+分限免職になっていただろうか?
②飲酒運転幇助罪で起訴猶予処分にされたという事実は、就職には影響をするのか?
事故の有無や大きさによって同乗者の受けるべき制裁が異なるというのは少し奇異な気もします。事故が起きたら同乗者も処分で、事故が起きなければ同乗者にはほとんど累が及ばないのだとすれば、飲酒運転に同乗するという行為は、運転者と運命を共にすることを意味しますが、私の過去のケースのように、本当に逆らえない相手に同乗を強制された場合でも、クビのリスクと先輩に反抗するリスクを比べなければならず、先輩に反抗して乗車を拒否したが事故も検挙もされなかったようなケースでは、飲酒運転をしたのは自分ではないのに自分の立場が微妙になるという問題が発生します。同乗者がシートベルト非着用の場合でも運転者が責任を問われるのに、運転者が飲酒で事故を起こすと同乗者までもが社会的制裁を受けるという論理は、慎重に検討しなければならないでしょう。
質問してきた学生は就職活動を気にしていましたし、公務員試験を考えていたような事も書いていました。仮に彼が否認して不起訴(どうせ起訴猶予処分でしょうが)になった場合に、公務員採用時の身辺調査で、この「前科にはなっていないが起訴猶予処分を受けた」という事実が参照されて不合格になる可能性があるのでしょうか?
彼にも非はあるだろうし、それで不利益を被るのはある程度は仕方ないとは思います。しかし、本当に幇助をしていなくても(例えば酔っ払ったから駐車場で朝まで寝ようと車で就寝し、寝ている間に運転されて捕まったというようなケース)幇助罪の容疑で立件されたら検察は起訴猶予処分しか出さないと思うのです。起訴猶予処分とは不起訴ですから、被疑者にとっては有利な処分です。有利な処分を根拠に不利益処分を行うのは法の趣旨に反します。はてさて、この問題はどう考えればよいのでしょうか?
質問をした学生は、私がキレたのでもう来ないでしょうが、この疑問点についての解答がわかる方がいらしたら教えて下さい。
繰り返しになりますが飲酒運転は許せません。しかし、目を離した隙に車両を勝手に運転された者にまで責任を問うのは少し違うと思うのです。。。
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不慣れですみません。
この為だけにブログを立ててみました・・・
ブログも拝見いたしましたが、どのような形でご相談に乗れば良いのかわかりません。
他の方のようにコメント欄にご質問内容を投稿していただければ回答いたします。非反則行為での検挙で、上申書の添削をご希望ならばメールアドレスを交換しても構いませんが、今のところ何の容疑で検挙されたのかもわかりませんし、貴方のブログをどう利用すべきかもわかりません。
貴方のブログのコメント欄を利用して相談がしたいということでしょうか?このブログのコメント欄には投稿出来ないようなご相談内容だとすると、私に出来る事はほとんどないと思われますが…
コメント欄には書けますので宜しくお願い致します。
他の方とのコメントのやり取りを見ていただければご理解いただけると思いますが、コメント欄に質問が投稿されれば時間のある時に回答しております。
前置きが長すぎますと面倒に感じてしまいますので、ご質問があるならば投稿して下さい。