臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

角川『短歌』2017年7月号

2017年08月24日 | 古雑誌を読む
     『息のふくろ』  内山晶太

○  エンドロールにフォントちいさき人の名の雪降れり天にさかのぼり降る

○  霧雨に帰路いろうすく閉ざされておそらくは秋の蛹を濡らす

○  コンデンスミルクてのひらに受けて飲むしたたりにけり夜のすべてに

○  父がすこしずつ消えてゆく晩秋の、ふかみにどんぐりだけが照り合う

○  雨にぬれて傘の匂いに包まるる傘よ灯りの下に閉じたり

○  ハンカチをゆすぶる たたむ 百余りキク科の花の咲くハンカチを

○  息のふくろ壊れし父をおもうときほおずき点る、夜をむやみに

○  ひとりの死ながくにれがみ冬過ぎて春過ぎてほのしろき粥となるまで

○  ひらく目のなかに閉ざされたりし目のひとときは死に瞠かれたり

○  菊食べてしびるるごときつかのまを瞑目し部屋を透きとおらしむ

○  もはや父はむすうの蜻蛉せわしなくわが生涯の秋をながらう
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