臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(10月24日掲載分・其のⅠ)北方四島以南、本日大公開!乞う、ご一読賛嘆!

2016年10月25日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]
○  「山月記」の李徴の虎の咆哮が聞こえた気がしたコンビニのレジ  (神奈川県)九螺ささら

 中島敦作の小説『山月記』は、かつて、高等学校の現代国語の教科書の定番とされ、是を掲載していない教科書は教科書検定を通らないとも噂されていたのである。
 ところで、この必ずしも現代社会の若者好みとは言えない小説が、自民党政権の文教政策の要とされる彼の〈教科書検定の検査官たち〉に何が故に好まれたかと言うと、それは、この小説の「長い者には巻かれろ」式のテーマが〈教科書検定の検査官〉及び彼らを操る保守政党の文教族の好みと一致していたからである。
 時代が時代でありましたから、このような時期に高校生活を送られた方々の中の何方かが、「『コンビニのレジ』から『山月記の李徴の虎の咆哮が聞こえた気がした』」などと仰ったとしても、私としても頷かざるを得ません。
 しかし、小説『山月記』の人気が冷めかかっている現代社会に於いて、仮にでも何方かが、「コンビニのレジ」から「『山月記』の李徴の虎の咆哮が聞こえた気がした」などと仰ったならば、それは、その方の現在の生活状態や精神状態に問題が在るのではないでしょうか?
 例えば、三度三度の食事の内容に問題がないか?
 例えば、過度な喫煙や過度な飲酒,或いは覚醒剤や違法薬品の使用、或いは、身体に負担が掛かり過ぎる運動を頻繁に行う、などの理由に因る、身体の異常や精神異常などである。
 いずれにしろ、掛かり付けのドクターやスクールカウンセラーなどの方々ともご相談なさり、ご自身の生活態度や精神状態の抜本的な改善を図らなければなりません。
 

○  絶対はありえないのに絶対にあり得ないよと「は」を「に」に変える  (横浜市)田口二千陸

 「絶対はありえない」事の一例を挙げれば、「原発事故は絶対に再発しない、させない」といった〈自公連立政権の与太話〉は勿論の事、「金王朝は絶対に崩壊しない、させない」と言う、〈隣国の首脳の夢物語〉などは、その類の都市伝説でありましょう。
 [反歌]  相対的にクリントンの方がよりまともな大統領候補ではある  鳥羽省三


○  起つためにあるのかいや坐るため椅子から総立ち議場の議員  (岐阜市)臼井 均

 例の一件に取材した作品とは思われるが、絶対的にそうだとは言い切れない側面も無しとせず。
 という事は、本作は文意不明瞭な凡作である、という事である。
 但し、「文意不明瞭=凡作」という訳では無く、文意不明瞭な側面が当該作品の奥行きの深さを保証し、作品の最大の魅力となっている作品もありましょう。
 だが、本作の場合は、そうした類の作品とは異なります。


○  疲れ果て最終電車に乗り込めば今夜は車庫まで行きたい気分  (守口市)小杉ぎんなん

 本作の作者は、お名前から推察しても、「腐れ易く疲れ果て易い」身体の持ち主でありましょう。
 従って、通常の乗客の場合は、自宅の最寄駅で確実に下車して、確実にご帰宅なさる方が、疲労解消策としてより有効な方策でありましょうが、本作の作者の場合は、「今夜」に限って「車庫まで行きたい気分」になられるのと、当然の事でありましょうし、また、それが許されるのでありましょう。
 一人の人間が「疲れ果て」ているか否かの判断は、その人間の体から発する匂いに依って為すことが可能であります。


○  秋がふる月光がふるサラサラとさみしき者のガラスの屋根に  (福島市)美原凍子

 「秋がふる」、「月光がふる」と動詞「ふる」の連発、そして「サラサラとさみしき者のガラスの屋根に」という下の句に、本作の作者お得意の「被害者意識」が覗われるのであるが、題材が一先ず、〈被災地-フクシマ〉から離れた点に就いては、美原凍子さんの作品としては、大いに評価しなければなりません。 


○  あなたには透明人間のわれなれど熱き血潮も牙もあります  (鹿嶋市)児矢野雅恵

 「おお、怖!」とだけ、一言申し上げます。


○  半生を捧げし会社へ回り道する霊柩車天高きかな  (沼津市)石川義倫

 本作に詠まれているような形の葬儀は、何かの団体や組織を支配していた独裁者がお亡くなりになった場合、それに伴って次の支配者たらんと企む輩がよくする葬儀の定番みたいなものでありますが、一般的に言うと、亡くなってからそんな事をしてもなんの足しにもなりませんから、いっそのこと、ご葬儀の参列者や焼香客の方々が持って来られたご仏前や御霊前の黒い熨斗袋の中身の中の幾分かを沼津市の社会福祉協議会にご寄付なさったら如何でありましょうか。


○  仰向けにモグラ一匹ころがりて秋の林道弔いすすむ  (横須賀市)梅田悦子

 本作も亦、文意不明瞭な側面が無しとしません。
 仮に何方かが「モグラ」の「弔い」を「秋の林道」で挙行したならば、それは神をも恐れぬ所業、その者の増上慢の証しでありましょう。


○  死んでいた小鳥の名前調べても分からずにいる空は重たい  (小牧市)白沢英生

 本作も亦、文意不明瞭のみならず、中身が空白の凡作である。


○  きっかけがあれば木の実は落ちてくる声をかけても笑いかけても  (館林市)阿部芳夫

 「万有引力の法則」に逆らうような作品を詠んではいけません。
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