臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(10月17日掲載分・其のⅡ)掲載遅延多謝!平身低頭!

2016年10月17日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]
○  〝ねじ式〟は今もなんだか解らぬが捨ててしまえば僕でなくなる  (松本市)牧野内英詩
○  秋風といつしよにけふ逐電の友がぼくの〈つげ義春〉を返しにくる  (京都市)森谷弘志

 「『ねじ式』は、漫画家・つげ義春により1968年『月刊漫画ガロ』6月増刊号〈つげ義春特集〉に発表された短編漫画作品」であり、「作者が千葉県の太海を旅行した経験に取材したとの伝承が為されているが、その作風が前衛的であり、シュールである点が多くの漫画(と言うよりも文学)ファンの好むところとなり、つげ義春を代表する作品として知られている」のである。
 従って、純文学が書かれなくなってから久しい我が国に於いては、つげ義春作の漫画『ねじ式』こそは、〈純文学中の純文学〉としても多くの文学ファンに愛読されているのである。 
 永田和宏選の一、二席を占めた掲出の二首の短歌は、漫画家・つげ義春や彼の代表作品『ねじ式』に関わる、そうした事情に取材した傑作であり、それを愛する二作品の作者、即ち、長野県松本市にお住まいの牧野内英詩さん及び京都府京都市にお住まいの森谷弘志さんの心情が十分に傾けられた秀作である。
 「〝ねじ式〟は今もなんだか解らぬが捨ててしまえば僕でなくなる」のは、作者の牧野内英詩さんにとっては当然のことでありましょうし、「秋風といつしよにけふ逐電の友がぼくの〈つげ義春〉を返しにくる」のも、作者・森谷弘志さんの友人としては、公金拐帯逐電の罪状で以て警察官に逮捕される云々を超えての当然の義務でありましょう。


○  漫画から抜け出たようにある時は現実感なき大谷翔平  (横浜市)森 秀人

 彼・大谷翔平は、何と驚いたことに昨日のソフトバンク戦で時速165kmの超超豪速球を投げたんですよ!
 あなた方、本ブログの読者諸氏は、彼・大谷翔平の投げる時速165kmの超超豪速球が、どれだけの猛スピードであるかご存じでありましょうか?
 斯く申す私・鳥羽省三は、かつて時速130km台の直球を投げる高校生投手と対決したことがありますが、彼・高校生投手が、敢えてホームベースのど真ん中を通してくれた、その投球でさえも、思わず腰が引けてしまって、私としては二度と再び硬式野球の打席に立ちたいとは思いません。
 その「超超豪速球を投げる大谷翔平が『漫画から抜け出たようにある時は現実感なき』存在である」とするのが、本作の趣旨である。
 そう言われてみれば、なんだかそんな気がして来るようにも、私・鳥羽省三には思われます。


○  出身は「京都です」少し間をおいて「府下ですけど」とあやまるように  (大和郡山市)四方 護

 「少し間をおいて『府下ですけど』」には、全く脱帽である!
 本作こそは、今週一番の傑作です!
 [反歌] 「出身は郡山だけど大和の方だから被災者でない!」


○  河童橋に姉妹五人で穂高みるまん中に母いた日のように  (松戸市)猪野富子

 私の偽らない気持ちを言わせていただきますと、少し不健康で嫌な気持ちのする作品である。
 大凡、この世の中で、兄弟や姉妹といった関係ほど複雑で煩わしい人間関係はありません。
 然るに、私の両親から生まれた女性や男性どもは、何か事ある毎に、温泉旅行に出掛けたり会食したりするのである。
 私は、現在、そうした煩わしい人間関係を厭うあまりに、兄弟姉妹や親戚縁戚関係とのお中元やお歳暮の贈答は勿論のこと、一年一度の年賀状の遣り取りさえもして居りません。
 従って、「まん中に母いた日のように」というのも女々しくて汚らわしい!


○  日本中豊洲の地下を騒ぎいて米軍機また美ら海に墜つ  (長野市)関 龍夫

 「豊洲の地下」騒動は、あの厚化粧の女を一躍スターダムにのし上げてしまったように見受けられる。 
 然るに、彼・厚化粧の女は、肝心要のところには何一つ触れずに、問題の落としどころを覗っているのでありましょう。


○  国連で米・ロが罵り合っている シリアの子らを血まみれにして  (近江八幡市)寺下吉則

 一旦ことが起こるや、世の歌詠みどもは、「詠歌の為の格好の題材が発生した」とばかりに大挙して押し寄せるのであるが、本作の作者の場合は如何なものでありましょうか?


○  「池上線」夜更けの風呂に口ずさむ今頃駅に降り立つ二人  (青梅市)山田京子

 作者のご氏名の「山田京子」こそは、「今頃駅に降り立つ二人」とはまるで無関係であり、「『池上線』夜更けの風呂に口ずさむ」ようなタイプの女性によくあるご氏名のように思われますが、事の真相は如何なものでありましょうか?


○  湖の底おもわせる駅裏の店に流れる中島みゆき  (横浜市)杉本恭子

 「湖の底おもわせる」のは、「駅裏」でありましょうか?
 それとも「駅裏の店」でありましょうか?
 その孰れにしろ、当代人気の彼女のヒット作「糸」の歌唱と歌詞の繊細さは、「湖の底」の静けさを「おもわせる」にしても、「湖の底おもわせる駅裏の店に流れる中島みゆき」と言うに相応しい曲とは、私・鳥羽省三には思われません。
 同じ「中島みゆき」作詞・作曲・歌唱の曲でも、例えば、あの名曲『時代』だとか『わかれうた』だとか『悪女』ならば「駅裏の店に流れる」に相応しい「中島みゆき」の歌でありましょうが! 

     なぜめぐり逢うのかを
     私たちはなにも知らない
     いつめぐり逢うのかを
     私たちはいつも知らない
     どこにいたの生きてきたの
     遠い空の下ふたつの物語

     縦の糸はあなた 横の糸は私
     織りなす布は いつか誰かを
     暖めうるかもしれない

     なぜ生きてゆくのかを
     迷よった日の跡のささくれ
     夢追いかけ走って
     ころんだ日ひの跡のささくれ
     こんな糸がなんになるの
     心許なくてふるえてた風の中

     縦の糸はあなた横の糸は私
     織りなす布はいつか誰かの
     傷をかばうかもしれない

     縦の糸はあなた横の糸は私
     逢うべき糸に出逢えることを
     人は仕合わせと呼びます

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