○ 夕闇の濃くなる方に消えなむと携帯電話をOFFにして出づ 鳥羽省三
○ 省三とは「一日三度反省す」といふ謂ひかや我が事ならず 鳥羽省三
〇 居住まひを正して居たり歌どもが我が訪れをひたすらに待ち 鳥羽省三
〇 居住まひを正して居たり歌どもが十首揃ひて吾を待ち居たり
○ 喪の家の門を出づれば月のみち逝きにし人を偲びて往かむ 鳥羽省三
○ 喪の家を出づれば明かき月のみち逝きにし人を偲びて往かむ
〇 阿寒湖の水の緊張解けざれば丹頂五百羽飛び立つを得ず
〇 十二月八日佐渡山豊の誕生日『ドゥーチュイムニイ』を聴きて祝ひぬ
〇 時折りは晴るる日もあり山頭火あすは時雨れて何処を彷徨ふ
〇 折節は炉火に面向け思索しけむ我のまぼろし少年ケニヤ
〇 駅前に赤青二個のポストあり二個とも口を閉ぢて黙れり 鳥羽省三
〇 駅前の赤いポストはもの言はず手紙を書かぬ吾を蔑む
〇 駅前の青いポストは速達用料金高くて速達出さぬ
〇 駅前の赤青二個のポスト見て「鬼みたいね」と孫は言ひたり
〇 メール打ち誰も手紙を書かざれば二個のポストは道の妨げ
○ 光背を背負へる吾にあらなくもともかく生きて古希の座に在り 鳥羽省三
○ 格別に目出度きことにあらねども養殖鯛の頭など喰ふ
○ 幾たびの大患を経し命なれ鯛の骨までせせりてぞ居る
○ 思へれば去年の今日は引越しのどさくさ中で祝ひも得せず
○ 先生は何歳になりましたかと電話くれたる教へ子の在り
○ 我が歳を問ひたる彼は四十五で問はれし我は七十になる
○ 過ぎ去りし七十年のあらかたは無為に生き来しこれからもなほ
○ 生年は紀元二千六百年没年おそらく二十一世紀
○ 逢ふ前の二十八年逢ひし後の四十二年そしてこの後
○ あはれ この梅雨空のした十キロの米を抱へて妻は帰りぬ
○ 吾はいま自(し)の晩年を生き居るや三日月の影しみじみと見つ
〇 「記憶には御座いません」と口を割る鉄板焼きのマテ貝いくつ 鳥羽省三
〇 放生の鰻惜しむや赤口忌ヨメの分まで食べちゃったとさ 鳥羽省三
〇 意地張って降りますランプは点さぬが区役所前で私降ります
〇 東方の三賢人も訪れて厩に額づき祝詞を述べぬ
〇 秋三夜昨日満月明日立待今日の十六夜誰と過ごさむ
〇 生き延びてその先怖し秋の蚊は此の家の女房目の仇にす
〇 露の身の露の身ながら蕎麦召されつゆのみ残し蕎麦湯にぞする
〇 身を正し徘徊すれば影もまた自ずと正す白露なるかも
○ 省三とは「一日三度反省す」といふ謂ひかや我が事ならず 鳥羽省三
〇 居住まひを正して居たり歌どもが我が訪れをひたすらに待ち 鳥羽省三
〇 居住まひを正して居たり歌どもが十首揃ひて吾を待ち居たり
○ 喪の家の門を出づれば月のみち逝きにし人を偲びて往かむ 鳥羽省三
○ 喪の家を出づれば明かき月のみち逝きにし人を偲びて往かむ
〇 阿寒湖の水の緊張解けざれば丹頂五百羽飛び立つを得ず
〇 十二月八日佐渡山豊の誕生日『ドゥーチュイムニイ』を聴きて祝ひぬ
〇 時折りは晴るる日もあり山頭火あすは時雨れて何処を彷徨ふ
〇 折節は炉火に面向け思索しけむ我のまぼろし少年ケニヤ
〇 駅前に赤青二個のポストあり二個とも口を閉ぢて黙れり 鳥羽省三
〇 駅前の赤いポストはもの言はず手紙を書かぬ吾を蔑む
〇 駅前の青いポストは速達用料金高くて速達出さぬ
〇 駅前の赤青二個のポスト見て「鬼みたいね」と孫は言ひたり
〇 メール打ち誰も手紙を書かざれば二個のポストは道の妨げ
○ 光背を背負へる吾にあらなくもともかく生きて古希の座に在り 鳥羽省三
○ 格別に目出度きことにあらねども養殖鯛の頭など喰ふ
○ 幾たびの大患を経し命なれ鯛の骨までせせりてぞ居る
○ 思へれば去年の今日は引越しのどさくさ中で祝ひも得せず
○ 先生は何歳になりましたかと電話くれたる教へ子の在り
○ 我が歳を問ひたる彼は四十五で問はれし我は七十になる
○ 過ぎ去りし七十年のあらかたは無為に生き来しこれからもなほ
○ 生年は紀元二千六百年没年おそらく二十一世紀
○ 逢ふ前の二十八年逢ひし後の四十二年そしてこの後
○ あはれ この梅雨空のした十キロの米を抱へて妻は帰りぬ
○ 吾はいま自(し)の晩年を生き居るや三日月の影しみじみと見つ
〇 「記憶には御座いません」と口を割る鉄板焼きのマテ貝いくつ 鳥羽省三
〇 放生の鰻惜しむや赤口忌ヨメの分まで食べちゃったとさ 鳥羽省三
〇 意地張って降りますランプは点さぬが区役所前で私降ります
〇 東方の三賢人も訪れて厩に額づき祝詞を述べぬ
〇 秋三夜昨日満月明日立待今日の十六夜誰と過ごさむ
〇 生き延びてその先怖し秋の蚊は此の家の女房目の仇にす
〇 露の身の露の身ながら蕎麦召されつゆのみ残し蕎麦湯にぞする
〇 身を正し徘徊すれば影もまた自ずと正す白露なるかも