臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

日暦(11月20日)

2016年07月02日 | 我が歌ども
○  夕闇の濃くなる方に消えなむと携帯電話をOFFにして出づ   鳥羽省三



○  省三とは「一日三度反省す」といふ謂ひかや我が事ならず   鳥羽省三

〇  居住まひを正して居たり歌どもが我が訪れをひたすらに待ち  鳥羽省三

〇  居住まひを正して居たり歌どもが十首揃ひて吾を待ち居たり

○  喪の家の門を出づれば月のみち逝きにし人を偲びて往かむ   鳥羽省三

○  喪の家を出づれば明かき月のみち逝きにし人を偲びて往かむ


〇  阿寒湖の水の緊張解けざれば丹頂五百羽飛び立つを得ず

〇  十二月八日佐渡山豊の誕生日『ドゥーチュイムニイ』を聴きて祝ひぬ

〇  時折りは晴るる日もあり山頭火あすは時雨れて何処を彷徨ふ

〇  折節は炉火に面向け思索しけむ我のまぼろし少年ケニヤ

〇  駅前に赤青二個のポストあり二個とも口を閉ぢて黙れり  鳥羽省三

〇  駅前の赤いポストはもの言はず手紙を書かぬ吾を蔑む

〇  駅前の青いポストは速達用料金高くて速達出さぬ

〇  駅前の赤青二個のポスト見て「鬼みたいね」と孫は言ひたり

〇  メール打ち誰も手紙を書かざれば二個のポストは道の妨げ

○ 光背を背負へる吾にあらなくもともかく生きて古希の座に在り   鳥羽省三

○ 格別に目出度きことにあらねども養殖鯛の頭など喰ふ          

○ 幾たびの大患を経し命なれ鯛の骨までせせりてぞ居る

○ 思へれば去年の今日は引越しのどさくさ中で祝ひも得せず

○ 先生は何歳になりましたかと電話くれたる教へ子の在り

○ 我が歳を問ひたる彼は四十五で問はれし我は七十になる

○ 過ぎ去りし七十年のあらかたは無為に生き来しこれからもなほ

○ 生年は紀元二千六百年没年おそらく二十一世紀

○ 逢ふ前の二十八年逢ひし後の四十二年そしてこの後

○ あはれ この梅雨空のした十キロの米を抱へて妻は帰りぬ

○  吾はいま自(し)の晩年を生き居るや三日月の影しみじみと見つ

〇  「記憶には御座いません」と口を割る鉄板焼きのマテ貝いくつ   鳥羽省三

〇  放生の鰻惜しむや赤口忌ヨメの分まで食べちゃったとさ  鳥羽省三

〇  意地張って降りますランプは点さぬが区役所前で私降ります

〇  東方の三賢人も訪れて厩に額づき祝詞を述べぬ

〇  秋三夜昨日満月明日立待今日の十六夜誰と過ごさむ

〇  生き延びてその先怖し秋の蚊は此の家の女房目の仇にす

〇  露の身の露の身ながら蕎麦召されつゆのみ残し蕎麦湯にぞする

〇  身を正し徘徊すれば影もまた自ずと正す白露なるかも 



   

  


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。