[佐佐木幸綱選]
(富山市・松田わこ)
〇 給食の話ではもうねえちゃんと盛り上がれないそれぞれの春
(新潟市・米倉之子)
〇 もぞもぞとおしり動かしすわる位置探るがごとし4月のクラス
(田村市・荒井正一)
〇 仮設でも蕗のてんぷらおすそ分け戻れぬ里のならわし続く
(筑紫野市・二宮正博)
〇 火葬許可出しつつ思うその内に出される側になる時が来る
(下関市・乗安勉)
〇 教え子の勤める病棟に入院し模範患者のごとくに過ごす
(福島市・井本昌夫)
〇 東電テレビ会議の記録映像あのとき我は給水の列に
(京都市・吉岡節雄)
〇 原発に頼る小さき県庁に新卒の孫は税の職得し
(神奈川県・九螺ささら)
〇 この星で青いゼリーが固まるとその度あの世に海月一匹
(堺市・稲垣啓子)
〇 ママ鼻がズルブリ言うよ自転車の後ろの吾子が話しかけます
(佐渡市・藍原秋子)
〇 新しい眼鏡で私を見るたびに「うわっ」てどういう意味です?父さん
[高野公彦選]
(三原市・岡田独甫)
〇 攻撃を受けおる友に手を貸さば当事者とならむ国家とて同じ
(山形県・佐藤幹夫)
〇 育児放棄耕作放棄介護放棄われらの放棄はたつたのひとつ
(松山市・宇和上正)
〇 例外に特例異例想定外誇りの九条蝕まれゆく
(東京都・山元泰子)
〇 グーグルの空撮で見し嘉手納基地F22の駐機に身すくむ
(大阪市・安良田梨湖)
〇 一人暮らしだけど一人になりたくて深夜一時のファミレスにいる
(鎌倉市・小嶋陽子)
〇 ちっぽけなこんな私が歌を詠む短歌は吾をどこへ運ぶか
(西条市・村上敏之)
〇 病院に死者の出口のありしこと白衣まとへる父と識りたり
(岐阜県・棚橋久子)
〇 幾年も乾きて眠るネムリユスリカ弱者か強者かさびしい命
(福岡県・住野澄子)
〇 夜の明けを猪の家族は帰るらむ罠にかかりし瓜坊おきて
(横浜市・松村千津子)
〇 馬酔木咲く垣根をひらりすりぬける猫の残像ほの白くあり
[永田和宏選]
(さいたま市・黛衛和)
〇 親からは二つ離れた吊革で中学生が景色を見ている
(三島市・渕野里子)
〇 死ぬ姉の末期の日本語聞きとれずオランダ人の義兄が泣けり
(筑紫野市・二宮正博)
〇 もう喪主になることは無い母送り散り行く桜見ながら思う
(山陽小野田市・浅上薫風)
〇 戦後すぐ理研という名の弁当箱母が買いけり今も使いぬ
(大阪市・安良田梨湖)
〇 一人暮らしだけど一人になりたくて深夜一時のファミレスにいる
(松山市・二神貴美恵)
〇 城垣をめぐる坂道ゆったりとパンダの顔の園児バス来る
(竹原市・岡元稔元)
〇 人生の大事を決める折々に妻の意見が九割しめる
(川崎市・大平真理子)
〇 少しずつ右親指が押さえゆくページ増えきて本読み終える
(塩釜市・佐藤龍二)
〇 夢摑むことも果たせず離京せし<明日のジョー>も六十五歳
(富山市・松田わこ)
〇 給食の話ではもうねえちゃんと盛り上がれないそれぞれの春
[馬場あき子選]
(富山市・松田梨子)
〇 晴れやかな気持ちできたての友達と桜の下で交わすおはよう
(水戸市・中原千絵子)
〇 わだかまり少なき少女の片恋のようにゆるりと巻く春キャベツ
(浜松市・松井恵)
〇 天平の貴人召されし蘇を食めば素にしてほのか古代の甘さ
(小城市・福地由親)
〇 連絡船花嫁の来る耶蘇の島霞む中より手を振る人よ
(摂津市・内山豊子)
〇 留守番の掃除ロボット動き出す音を聞きつつ買物に行く
(横浜市・寺口敏勝)
〇 原発の廃炉敷地の汚水槽墓標の如く見えて悲しも
(高島市・久保眞理子)
〇 兵児帯も白絣をも注釈を入れられるとは漱石知らず
(帯広市・吉森美信)
〇 小豆の餡蕎麦粉の衣の柏餅つくりし母亡く柏は茂る
(つくば市・小島陽子)
〇 じいちゃんの春の畑が始まった頭の中は野菜でいっぱい
(前橋市・荻原葉月)
〇 あらかたの竹の子の穂は食はれゐて獣の置き土産ある竹藪
(富山市・松田わこ)
〇 給食の話ではもうねえちゃんと盛り上がれないそれぞれの春
(新潟市・米倉之子)
〇 もぞもぞとおしり動かしすわる位置探るがごとし4月のクラス
(田村市・荒井正一)
〇 仮設でも蕗のてんぷらおすそ分け戻れぬ里のならわし続く
(筑紫野市・二宮正博)
〇 火葬許可出しつつ思うその内に出される側になる時が来る
(下関市・乗安勉)
〇 教え子の勤める病棟に入院し模範患者のごとくに過ごす
(福島市・井本昌夫)
〇 東電テレビ会議の記録映像あのとき我は給水の列に
(京都市・吉岡節雄)
〇 原発に頼る小さき県庁に新卒の孫は税の職得し
(神奈川県・九螺ささら)
〇 この星で青いゼリーが固まるとその度あの世に海月一匹
(堺市・稲垣啓子)
〇 ママ鼻がズルブリ言うよ自転車の後ろの吾子が話しかけます
(佐渡市・藍原秋子)
〇 新しい眼鏡で私を見るたびに「うわっ」てどういう意味です?父さん
[高野公彦選]
(三原市・岡田独甫)
〇 攻撃を受けおる友に手を貸さば当事者とならむ国家とて同じ
(山形県・佐藤幹夫)
〇 育児放棄耕作放棄介護放棄われらの放棄はたつたのひとつ
(松山市・宇和上正)
〇 例外に特例異例想定外誇りの九条蝕まれゆく
(東京都・山元泰子)
〇 グーグルの空撮で見し嘉手納基地F22の駐機に身すくむ
(大阪市・安良田梨湖)
〇 一人暮らしだけど一人になりたくて深夜一時のファミレスにいる
(鎌倉市・小嶋陽子)
〇 ちっぽけなこんな私が歌を詠む短歌は吾をどこへ運ぶか
(西条市・村上敏之)
〇 病院に死者の出口のありしこと白衣まとへる父と識りたり
(岐阜県・棚橋久子)
〇 幾年も乾きて眠るネムリユスリカ弱者か強者かさびしい命
(福岡県・住野澄子)
〇 夜の明けを猪の家族は帰るらむ罠にかかりし瓜坊おきて
(横浜市・松村千津子)
〇 馬酔木咲く垣根をひらりすりぬける猫の残像ほの白くあり
[永田和宏選]
(さいたま市・黛衛和)
〇 親からは二つ離れた吊革で中学生が景色を見ている
(三島市・渕野里子)
〇 死ぬ姉の末期の日本語聞きとれずオランダ人の義兄が泣けり
(筑紫野市・二宮正博)
〇 もう喪主になることは無い母送り散り行く桜見ながら思う
(山陽小野田市・浅上薫風)
〇 戦後すぐ理研という名の弁当箱母が買いけり今も使いぬ
(大阪市・安良田梨湖)
〇 一人暮らしだけど一人になりたくて深夜一時のファミレスにいる
(松山市・二神貴美恵)
〇 城垣をめぐる坂道ゆったりとパンダの顔の園児バス来る
(竹原市・岡元稔元)
〇 人生の大事を決める折々に妻の意見が九割しめる
(川崎市・大平真理子)
〇 少しずつ右親指が押さえゆくページ増えきて本読み終える
(塩釜市・佐藤龍二)
〇 夢摑むことも果たせず離京せし<明日のジョー>も六十五歳
(富山市・松田わこ)
〇 給食の話ではもうねえちゃんと盛り上がれないそれぞれの春
[馬場あき子選]
(富山市・松田梨子)
〇 晴れやかな気持ちできたての友達と桜の下で交わすおはよう
(水戸市・中原千絵子)
〇 わだかまり少なき少女の片恋のようにゆるりと巻く春キャベツ
(浜松市・松井恵)
〇 天平の貴人召されし蘇を食めば素にしてほのか古代の甘さ
(小城市・福地由親)
〇 連絡船花嫁の来る耶蘇の島霞む中より手を振る人よ
(摂津市・内山豊子)
〇 留守番の掃除ロボット動き出す音を聞きつつ買物に行く
(横浜市・寺口敏勝)
〇 原発の廃炉敷地の汚水槽墓標の如く見えて悲しも
(高島市・久保眞理子)
〇 兵児帯も白絣をも注釈を入れられるとは漱石知らず
(帯広市・吉森美信)
〇 小豆の餡蕎麦粉の衣の柏餅つくりし母亡く柏は茂る
(つくば市・小島陽子)
〇 じいちゃんの春の畑が始まった頭の中は野菜でいっぱい
(前橋市・荻原葉月)
〇 あらかたの竹の子の穂は食はれゐて獣の置き土産ある竹藪