田舎者の映画的生活

田舎町に住んでいるナースが
何とか文化的生活を送ろうと
悪あがきしながら見た映画の感想の数々です。

映画「昼顔」

2017年06月22日 | 映画・本
お互いに既婚者でありながら、
恋に落ちた高校教師の北野と、平凡な主婦の紗和。
やがてその不倫関係は周りの人に知られることになり、
お互いに二度と会わない、連絡もとらないという誓約書を書いて、
2人は別れることになる。
夫と離婚し、海辺の町でひっそり暮らしていた紗和は、
ある日偶然にも、講演会で町に北野がやって来ることを知る。
戸惑いながら講演会場に足を運んだ紗和。
北野は、舞台の上から紗和の姿を見かける。

この映画を見るなら、絶対にネタバレなしで見た方が楽しめるので、
これから鑑賞する方はご注意を。

元々斉藤工が好きで、テレビドラマの時は、毎週夢中になって見ていた。
テレビドラマの続編の映画化というと、
2時間ドラマのスペシャルで充分だったんじゃない?
っていうお粗末なものがけっこうあるので、
そんな作りだったらどうしようかと不安もあったけど、
映画という大きなスケールの中で味わう不倫のドロドロしたドラマは、
それなりの迫力があった気がするし、
また、紗和が暮らす海辺の町の美しさは、
大きなスクリーンだとより魅力的に見えて、なかなかだった。

物語は、終始重い緊張感のようなものに包まれていて、
見終わったあとは、疲労感たっぷり。
そしてホラー映画を見たあとのような感触。
北野の妻役の、伊藤歩の怪演と、衝撃の結末、展開がまさにホラーのようで、
テレビドラマを見てた時のような、
キュンキュンする感じはあまり味わえなかった。
そして、ツッコミどころ満載の描写、セリフに思わず失笑するところも。
詳しくは言えないけど、
紗和と北野、北野の妻がホテルに行く場面での展開では、笑いそうになった。
ラストの衝撃の展開とか、線路の場面とか、あまり多くを語れないけど、
一歩間違えれば、ギャグになりそう。

紗和を演じた上戸彩は、痩せすぎな感じが、
幸薄いキャラにはぴったりで、不思議な艶っぽさがあり、健闘。
北野役の斉藤工は、相変わらずイケてない、ちょっと残念な、
それでいて不思議な色気がある北野を絶妙に演じていた。
いい人オーラが漂っていて、仕草ひとつに人となりが見えていた。
北野の妻を演じた伊藤歩は、「スワロウテイル」で世に出た頃から見ているので、
こんな役もやるようになったんだと感慨深かったのだけど、
とにかく怖い。まさに怪演。妻の立場での抑えられない感情は、
共感できなくもない。
また、紗和が勤めるレストランのオーナー役の平山浩行が、
シブい魅力を見せてくれた。
安易に紗和といい仲になっていくわけじゃないところが現実的だし、
テレビドラマの時もそうだったけど、
このオーナーの存在と彼にまつわるエピソード、
そしてラストの展開などが、
不倫というものを完全に肯定してない形になっていて、
それはそれで納得できるものだった。

映画の中で「自分が裏切ったことがあるから、なかなか相手の事が信じられない」
というセリフがあり、とても印象的だった。
一歩間違えれば珍品になりそうな作品だけど、
リアリティもそこそこあり、何とも言えない魅力のある作品だった。
紗和と北野のラブラブな場面は、やはりグッと来ますよ。
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映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

2017年05月20日 | 映画・本
ボストンで、アパートの修繕や雪かきなど、
便利屋として働いているリー。
ある日、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーから、
兄のジョーが倒れたという連絡が入る。
元々心臓病を患っていたジョーは、
リーが駆けつけた時にはすでに亡くなっていた。
葬儀の手配や、ジョーの息子のパトリックの面倒を見るために、
しばらくぶりに故郷に滞在するリー。
そこで、忘れたくても忘れられない過去と向き合うことになる。
監督・脚本はケネス・ロナーガン。

この映画のキャッチコピーが
「癒えない傷も、忘れられない痛みも、その心ごと生きていく」という言葉で、
まさにこの作品の本質を表していると感じた。
人は誰しも傷つき、それを癒すためには誰かの温もりが必要で、
そしてちゃんと感情を表出して「泣くこと」が大事なんだと気付かされる。
傷が癒えなくても、人は生きていかなければならなくて、
誰もがその生きるという困難を、簡単に乗り越えられるわけではない。
思いがけず、ジョーの遺言で、高校生のパトリックの後見人になり、
生活を大きく変えなければならない選択を迫られたリーが、
最後に選んだ形は、彼の人生での精一杯の努力と、
彼の心の傷の大きさを感じさせるものだった。

彼をそれほどまでに傷つけた過去の出来事は、
時系列に描かれるのではなく、現在と過去が交差して物語の中で語られる。
その脚本、構成が実に巧みで(アカデミー賞の脚本賞を獲得)、
よりリーの悲しみを浮き上がらせていた。
リーが故郷と決別することになったある事件は、
物語の中盤で描かれるが、「アルビノーニのアダージョ」の曲にのせて、
メロディが徐々に熱を帯びていくかのごとく、
その悲劇が観る者の心にぐっと入りこんでいく。
決して誇張されてるわけではないのだけど、
それは本当に胸を締め付けられる辛さだ。

リーを演じたケイシー・アフレックの、
独特の抑制を効かせた演技が素晴らしい。
決して善人というわけではないけど、
兄や甥っ子を想う優しさを持ち合わせていて、
それでいて抱えている重荷を持て余すジレンマに振り回される、
複雑なキャラクターを見事に演じていた。
また、高校生のパトリックは、
よくある親を亡くした思春期の少年のそれではなく、
親が亡くなっても、学校に行き、バンドの練習をし、
二股をかけているガールフレンド達とデートする。
今時の若者を、ルーカス・ヘッジスが好演。
けれども、幼い分、自分でも意識できない悲しみをうまく消化できず、
パニックに陥る。パトリックが冷凍庫を開ける場面からのエピソードは、
彼の心の傷の大きさを垣間見る、何とも切ない場面だった。

派手ではないけど、圧倒的なリアリティと、
人々のそれぞれの優しさと、誰かを思いやる気持ちの温かさを感じさせる、
素晴らしい人間ドラマだった。
美しい、マンチェスター・バイ・ザ・シーの景色も忘れがたく、
物語にマッチしていた。
様々な出来事を経て、新たな絆を作り上げたリーとパトリック。
ラストの2人の会話のやりとりに、泣かされてしまう。
ほろ苦くも温かなラストの余韻は、何度も味わいたくなる。
上半期のベストの作品。
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映画「SING/シング」

2017年05月20日 | 映画・本
コアラのバスターは、幼い頃父親と見たステージがきっかけで、
ショービズ界に身を置くことを夢見るようになる。
父親が洗車業でコツコツと貯めたお金で、
思い出の古い劇場を買い取り、支配人となるが、
ショーはいつもヒットせず、赤字続き。
ある日、歌のコンテストのショーを思いついたバスターは、
オーディションを行うことにするが、
優勝賞金の金額の桁数が間違って書かれた募集チラシのおかげで、
たくさんの挑戦者がやってくる。

地元のシネコンでは、すでに吹替版しか上映していず、吹替で鑑賞。
マシュー・マコノヒー、スカヨハ、セス・マクファーレン、
リース・ウィザースプーンなど、
豪華キャストの声と歌を楽しみたかったので、それが聞けず残念だったけど、
吹替版もなかなかの豪華キャストで、素晴らしかったので満足。
大好きなスキマスイッチの大橋くんの歌は素敵だったし、
物語のキーとなる、内気だけど歌の上手いゾウのミーナの声と歌を担当した
MISIAがとにかく素晴らしかった。
MISIAの歌は、きっとオリジナル以上だったのではないかと思う。
映画は終始音楽に包まれていて、クラシックからスタンダードナンバー、
洋楽ロックからJ-POPまで、有名な曲のオンパレード。
私は洋楽には疎いのだけど、もし洋楽をよく知っていたら、
もっと楽しめたのではないかと思う。

作品の冒頭、自転車でバスターが街を駆け抜ける疾走感そのままに、
スピード感溢れるキャラクターそれぞれの紹介場面が秀逸。
子沢山の豚のロジータの家の様子や、コンテスト場面が凄く楽しいのだけど、
物語の方は、中盤はやや停滞気味に感じた。
主人公のバスターが、楽観的過ぎて共感しにくいのと、
何事もうまくいかずトラブルばかり起きる展開に、
ややフラストレーションを感じてしまう。
しかし、クライマックスのショーの場面が
それらを全てひっくり返すほど素晴らしくて、
そこだけでも何度も繰り返し見たくなる。

早くも続編が決定しているようだけど、
ぜひこのオリジナルキャストで鑑賞したい。
音楽好きの方にオススメの作品。
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映画「美女と野獣」

2017年05月20日 | 映画・本
冷たく無慈悲な心が原因で、
魔女に呪いをかけられて野獣になってしまった王子は、
長らく城で、同じく物に変身させられてしまった家来達と孤独に暮らしていた。
ある日、父親を助けるために城にやってきた美しい女性ベルは、
野獣と出会い最初は反発しながらも、次第に心を通わせていく。
監督はビル・コンドン。

今回は字幕版で鑑賞。
アニメ版も劇団四季のミュージカルもすでに見ているけど、
この映画での、豪華絢爛で、人間ドラマとしての誠実かつ丹念な作りに感心。
特に美術と、ベルが住む村の人達の生き生きとした生活ぶり、
描写が素晴らしかった。
イマジネーション豊かなその映像を見るだけでも価値あり。
あまりにも有名な美しく楽しい音楽の数々も堪能できた。

ラブストーリーでは、恋が始まり進んでいくその過程を描くのが醍醐味。
野獣とベルが次第に惹かれあっていくその様には、キュンとさせられた。
ベルと両親のエピソードや、
善良な村人達がガストンに煽られて城に押し寄せるあたりの描写は、
親や家族の普遍的な愛を描いていたり、
人間としての弱き面を象徴していたり、
ドラマとしてストーリーに深みをもたらしていると感じた。

ベルを演じたエマ・ワトソンは、
知的で純粋なベルにぴったりのキャスティング。
美しく、強さを感じさせてくれた。
また、ラストで物に変身させられていた家来や召使い達が、
人間に戻る場面で、その豪華なキャスト達に嬉しい驚き。
ユアン・マクレガー、スタンリー・トゥッチ、エマ・トンプソン。
イアン・マッケランだけは、最初から声でわかってしまったけど、
ビル・コンドン監督作だから、やはり出演してくれないと。
問題の野獣。声がすごく素敵で、人間に戻った時の姿は、
もっとシャープな顔立ちを想像していただけに、
予想と違ってちょっと拍子抜け。

吹き替え版も評判良いので、気になるところ。
劇場は、カップルばかりで、1人で見た私は何かいたたまれなかったけど、
デートムービーには最適な作品。
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映画「ムーンライト」

2017年04月16日 | 映画・本
少年シャロンは、マイアミで母親と2人で暮らしているが、
母親のポーラはヤク中で充分な世話をされてない。
学校ではリトルと呼ばれ、同級生からいじめられる毎日。
ある日、シャロンはいじめから逃れるために入りこんだ廃墟で、
麻薬ディーラーのファンと出会う。ファンとその恋人テレサは、
何かとシャロンの世話をしてくれ、愛情を与えてくれる。
学校では、唯一ケヴィンだけが、心を許せる友達だった。
高校生に成長したシャロンの日常は相変わらずで、
ポーラの生活はますます荒んでいた。
ある日、夜の海岸でケヴィンと出会ったシャロンは、
彼と気持ちを通わせる体験をする。
しかし、間も無く学校で、ケヴィンに裏切られる出来事が起きる。
シャロンの人生を、少年時代、思春期、成長したその後と三部構成で描き、
キャスト、監督、脚本全てが黒人である、
今年アカデミー賞の作品賞に輝いた作品。監督はバリー・ジェンキンス。

これは、今のアメリカの黒人社会の現実を切り取り、
LGBTを扱った社会派作品でもあるけど、
大げさにそれを声高に語るわけではなく、
見る者の心情にすっと入りこんでくる、詩的で美しい物語だ。
不安に揺れ動くシャロンの心をそのまま表したかのような、
ハンディカムで撮影された動きのあるカメラワークが印象的の第一部から、
孤独で不安を抱え、
自分の歩くべき道を見出せないシャロンの心情がすっと入りこんでくる。
シャロンの置かれた境遇とは、かけ離れたところにいるはずなのに、
見る者にそんな痛みを自然に感じさせることが出来るのが、
この作品の凄いところだ。その何とも言えない痛み、思いが、
徐々に熱を帯びて二部、三部へ続いていく。
高校生の時に負った心の傷と体験から、
ファンと同じ麻薬ディーラーになり、
身体を鍛え、金のアクセサリーで着飾って虚勢を張るシャロンの姿もまた、
孤独で切ない。社会の中で、自分は少数派なんだと、
幼い頃から次第に自覚しながらも、
それを他者に見せまいと必死に生きている姿が見てとれる。
幼いシャロンに、「自分の道は自分で決めろ、誰にも決めさせるな」と説く
ファンの言葉と、それを伝える海でのシーンが秀逸。
思うに、人間は誰かによって愛情でもって、
自分を愛し、大切にすることを自然と教えられるものだと思う。
しかし、シャロンはそれを知らないまま生きてきて、
ファンによって初めてそれを教わったのだと思う。
そして少数派としての自分を理解してくれたケヴィンの存在の大きさ、
それはそのまま彼の心の傷の大きさになっていく。

シャロンは、第一部から第三部まで、それぞれ違う俳優が演じているのだけど、
瞳の表情から、三者がその悲しみを同じように表現しているのが凄い。
また、この作品でオスカーを獲得したファン役の
マハーシャラ・アリが素晴らしい。
麻薬ディーラーでありながら、その善人としてのオーラと存在感。
ファンの恋人テレサを演じたジャネール・モネイの自然に溢れ出る母性と、
実の母親でありながら、麻薬に溺れ、
歪んだ母性とそれを放棄する姿を見せるポーラ役の
ナオミ・ハリスの演技も印象的だった。

ラストに残る、心が震える美しい余韻。
孤独なシャロンの魂が、癒やされることを願ってやまない。
映画を見た後、劇場のロビーに、
あるジャーナリストの書いた記事が紹介されていた。
そこに、「ムーンライト」が「色ではなく光であることに注目して欲しい。
問題は色(肌の色やセクシャリティ)にあるのではなく、
それを照らす光(社会の視線)にあるのだ」と書かれていた。
この作品で、月の光は様々なものの象徴であると感じたけど、
この記事の文が一番しっくり来る気がした。まさに救いの光。
ただ、黒人やセクシャルマイノリティーの人たちにとって、
それは太陽の光ではなく、儚げな月の光であり、厳しい現実があるのだ
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映画「結婚前夜〜マリッジブルー〜」

2017年04月16日 | 映画・本
7年交際して、最近やや倦怠期を迎えているソミとウォンチョル。
花屋を営んでいて、交際相手のヴィカが自分と
ビザ目当てで偽装結婚するのではと疑うゴノ。
クラブで出会ったデボクとできちゃった婚をすることになったイラ。
若い頃から交際と別れを経ていよいよ結婚することになったテギュとジュヨン。
結婚式を数日後に控えた4組のカップルのストーリーを
オムニバス形式で描いた作品。

軽い気持ちで見られて、かつ楽しめる物語。
4組のカップルそれぞれが、どこかで接点があって、
ランダムに出てくる各カップルのエピソードが、テンポ良く展開する。
キャラクターが個性的で、
それぞれに少しずつ共感できる部分があるのがミソ。
この作品は、アイドルグループ、
2PMのテギョンが出演しているということを、
最大の宣伝文句にしてるみたいだけど、
ソミの婚約者のウォンチョルを演じたテギョンの見せ場は、
それほど多くなく、他の男優達の方が、出番も多くインパクトも大きかった。

この作品を見たのは、ソミがひとり旅をした時に出会ったガイド、
ギョンス役のチュ・ジフン目当て。
婚約者がいながら、ソミはギョンスに惹かれていくのだが、
チュ・ジフンはそれはそれは魅力的で、
婚約者が理解してくれない自分の気持ちや夢を応援してくれる
ギョンスにソミが惹かれていくのは、納得の展開。
肩の力の抜けた、チュ・ジフンの演技が良かった。

最近はアクの強い韓国映画ばかり見てたけど、
こういったラブコメも悪くないなと思った。
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映画「哭声/コクソン」

2017年03月28日 | 映画・本
韓国のある田舎の村で、残虐な殺人事件が次々に起こる。
村の警察官のジョングは、事件の捜査にあたるが、
浮かび上がるのは不可解な事実ばかり。
やがて、村の山中に最近やってきた日本人が、
事件の容疑者ではないかとの噂を耳にする。
また、ジョングの娘のヒョジンにも異変が起こり、
ジョングは益々混乱していく。監督はナ・ホンジン。

これは殺人事件をベースにしたただのサスペンスかと思いきや、
悪魔や祈祷師による除霊やら呪いやらが出てきて、予想外の展開。
韓国にはキリスト教の人が多く、
シャーマニズムが今も生きているからこそなのだろうけど、
こんなミステリーは、日本ではなかなか作れないだろうなと感じた。
そして、人は何かを見て、触れて感じる生き物だけど、
常に疑いを持つ存在であることを、物語の核として描いている。
作品の中でキーポイントになる祈祷の場面で展開するミスリード、
(だと私は思っているのだが)
写真や褌、あるいは呪われた人達が身につけていた衣服や小物など
謎を解くために散りばめられた細かなアイテム、
そして聖書からの引用など、何が正解なのか見るものに答えを委ねる、
不可解なラストを含めてみても、とにかく見応えのあるミステリーになっていた。
元々私はホラーやスプラッタは苦手で、
事件に絡むゾンビのような人達の血と泥にまみれたその姿には、
目を背けたくなったけど、物語にはグイグイと引き込まれていった。
映画として、作品としての力がもの凄い。

キーマンになる日本人を演じた國村隼が素晴らしい。
この映画で数々の賞を獲得していたけど、その怪しさは抜群。
鹿の生肉を食い、滝に打たれ、特殊メイクもこなす熱演ぶり。
大事な役だからこそ、カタコトではない、
ちゃんとした日本語を話す本物の日本人に、この役を演じてもらって良かった。
祈祷師役を演じたファン・ジョンミンは、
作品ごとにまったく違うカラーを見せてくれる。
佇まいから、すでにオーラを感じさせる。
祈祷の場面、そのトランスぶりは間違いなく見所のひとつだ。
ジョングを演じたのはクァク・ドウォン。
「アシュラ」とは違って、平凡なおじさんが、
次第に変化していくその様をリアルに演じていた。
(妻役のチャン・ソヨンとは実生活でもカップル)
悪魔に取り憑かれた子供、
ヒョジンを演じたキム・ファニの熱演も素晴らしかった。
この先この体験がトラウマになるんじゃないかと心配になるくらい。

ネタバレですが。
物語のラストは、見る人によって色々な解釈があると思うのですが、
私も気になりネットなどで情報収集。
その中、國村隼は死者がこの世に復活した、
神とも悪魔とも言うべき存在で、祈祷師は実はその手下。(褌がキーアイテム)
チョン・ウヒが演じた女ムミョン(韓国語で無名との意味)は、
実は善の象徴で、祈祷の場面で日本人が苦しんでいたのは、彼女の力によるもの。
彼女の言う通り、ジョングが家に戻らなければ、ジョングは助かり、
家族皆が助からないということはなかった、というのが私の解釈。
果たして他の方々の見解はいかに?

クライマックス、ジョングとムミョンが対峙する場面の緊張感は素晴らしかった。
苦手なジャンルだけど、映画のパワーを感じられる傑作、充分に楽しめた。
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映画「アシュラ」

2017年03月28日 | 映画・本
アンナム市は、金と権力のためならなんでもやる、
悪徳政治家のパク・ソンべが市長を努めており、
刑事のハン・ドギョンはその手下として、裏の悪業を一手に引き受けていた。
そんな中、ふとしたことから同僚の刑事に裏の仕事を嗅ぎつけられ、
揉めた上に彼を死に追いやってしまったドギョン。
パク・ソンべの手下として動くことも難しくなり、
ソンべのもとに自分の弟分のソンモを送りこむ。
やがて検察からも追求され、
ドギョンはソンべと検察の板挟みになりながら葛藤し、
窮地に追い込まれていく。

「新しき世界」ほどの研ぎ澄まされた空気感はなく、
ドギョンの一貫性のない行動に疑問を抱いたり、
ラストのヤケクソみたいな展開にちょっと呆れてみたり、
ツッコミどころは多々あるけど、大いに楽しめたのは、
男ばかりのバイオレンスに満ちたハードボイルドな作品が好物なのと、
魅力溢れる演技力豊かな男優達の競演が見られるから。
この春見た韓国映画3作(他は、「お嬢さん」「コクソン」)の中では一番好き。
先の読めない展開、ソンべ側と検察側の対決、
パク・ソンべの突き抜けた悪者ぶりと、映画的楽しさが多数。

俳優達の中では、パク・ソンべを演じたファン・ジョンミンがやはり素晴らしい。
常に善人のような笑顔を浮かべながら、狂気じみた極悪ぶり。
存在感は抜群。
また検事のキム・チャインを演じたクァク・ドウォンの、
甘いテノールの声で相手にプレッシャーを与える迫力。
彼はドラマ「ファントム」で、
狂った牛なるニックネームを持つ刑事を好演していたのだけど、
その役を彷彿させる感じで、正義を傘にした悪人ぶりが見事。
ドギョンの弟分のソンモを演じたのは、私のお気に入りのチュ・ジフン。
ただの純粋な若者が、ソンべの手下になり、そのカリスマ性に魅了され、
次第に悪に手を染めていく。
唯一大きく変化していくキャラであるのが美味しい役。
スーツに身を包み、目つきまで変わっていくその様は色気たっぷり。
モデル出身のチュ・ジフンだからこその魅力もあった。
主役のドギョンを演じたのは、チョン・ウソン。
日本でも人気の二枚目俳優だけど、私はさほど惹かれず。
この物語では、結局検察につくのか、ソンべにつくのか、
ドギョンの一貫性のない感じと、
チョン・ウソンではこの役にはちょっと甘すぎるかなというのが、
実は一番の不満だったりする。
病気の妻とのエピソードの処理も今ひとつだった。
もしドギョンを、イ・ジョンジェが演じたらと、
思わず妄想したりもしたが、
カーアクション、ガンアクションをスタントなしで演じた頑張りと、
熱演には拍手。

俳優達の見事なアンサンブルが一番の見所。
こういったノワール作品は、日本ではなかなか見られない。
救いのないラストの展開にも、不思議な爽快感とカタルシスを感じる作品だ。
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映画「お嬢さん」

2017年03月28日 | 映画・本
1939年、日本統治下の朝鮮半島。
泥棒、スリで生計を立てている一味に育てられたスッキは、
伯爵を名乗る詐欺師から莫大な財産を相続する、
日本人の秀子というお嬢さまの屋敷に、メイドとして潜り込み、
自分とお嬢さまの結婚をとり持つ助けをして欲しいと頼まれる。
最初は、報酬とそれによって得られる自由を目的に、
伯爵の言われるままに動いていたスッキだったが、
美しく孤独な存在である秀子に惹かれていってしまう。
監督はパク・チャヌク。

パク・チャヌク作品は、復讐三部作から、
「JSA」「サイボーグでも大丈夫」「渇き」などけっこう見ていて、
映画としてはすごく面白いし引き込まれるのだけど、
後味の悪さや悪趣味な描写がイマイチ好きになれない
作品ばかりだったというのが正直な感想。
今回も、秀子の叔父である、ニセモノ日本人の上月の趣味に象徴されてる、
変態ちっくな描写にやや食傷気味になりかけたけど、
全体のトーンとしては、妖しくも美しくて、そこに身を投じる楽しさがあった。
原作は19世紀のイギリスを舞台にした物語とのことだが、
それを朝鮮半島に舞台を移したことが功を奏している。

物語は三部構成で、一部はスッキの視点で、
二部は同じ事象を秀子の視点で描いており、
真相が明らかになったあとの顛末を三部で描いている。
とにかくミステリーとして凄く秀れていて、
同じ出来事、場面を見ていても、
まったく違う感情や思いを抱かせる物語の見せ方は素晴らしい。
過激な性描写が話題になっていたけど、
スッキが秀子に、新婚初夜の夜の営みを手ほどきする場面がキーポイント。
一見ただの過激な場面になりがちだけど、
2人が本当に心を通わせる大事な場面で、
見ている人の心を震わせる美しい場面になっていた。
また、スッキが上月のコレクションの、春画や本を破り捨てる場面。
秀子にとってスッキが、真の救世主になったことを象徴した場面だと感じた。
その後の逃亡につながる、希望と解放に満ちた印象的な場面だった。

第一部は、スッキを演じたキム・テリの独壇場。
野生的な魅力、たくましさと純粋さを兼ね備えた瑞々しい演技が素晴らしい。
そして第二部からは、それまでの印象をガラリと変えて
秀子の本当の姿を美しく演じ切ったキム・ミニがとても良かった。
また、二枚目になりきれず、どこかとぼけた印象のあるハ・ジョンウは、
詐欺師役にはぴったりだった。
上月役のチョ・ジヌンは、最近注目してる俳優だけど、
もっとエキセントリックに喋りまくる彼の演技が見たかった気も。

パク・チャヌク作品としては、まずまずの後味の良さ。
劇場で見られて良かった。
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映画「この世界の片隅に」

2017年02月28日 | 映画・本
戦前の広島。海苔づくりを営む浦野家の娘すずは、
兄、妹と共に家業を手伝い日々を過ごしていた。
絵を描くのが好きで、のんびりとした性格だけど働き者のすずは、
18歳になった時、見知らぬ男性から縁談の申し出があり、
そのまますずは、呉に嫁いでいく。
戦争の影が色濃くなっていく中、
すずは見知らぬ土地で、家事や倹約生活に奮闘する。

原作は同名タイトルの漫画で、電子書籍で購入。
しかし、あまりに評判の良い映画の方を先に見たくて、
原作はまだ未読。
前半は、 ちょっと天然なすずと、
周囲の人達の、ほのぼのとしたエピソードが繰り返される。
物がない中で、色々工夫して生活するすず。
食事、裁縫など日常生活の様子が細やかに映し出され、
周りの人達と助け合いながら暮らしていく当時の日本人達の強さを感じた。
戦争の影響が強くなっていく中でも、すずは彼女らしさを失わない。
無理に肩に力を入れているわけではないが、
平常心でいることの強さを、すずの姿から感じた。
今の私にはない強さが羨ましかった。

しかし、だんだんとすずを取り巻く状況が過酷になっていき、
見ている側も、ますます物語から目を離せなくなっていく。
そして、そんなすずを変える大きな出来事が起こる。
戦争を題材にした作品にありがちな、
大袈裟な描写や音楽はないけど、
そのつらく悲しい状況とすずの姿には、胸を打たれる。

すずを演じているボイスキャストは、あまちゃんこと、のん。
すずの可愛らしさ、健気さ、純粋さを見事に声で表現。
そして戦争に対する怒りや、
大切なものを失って感じる空虚感もしっかり感じさせる。
素晴らしい声の演技だった。

感動という平凡な言葉だけでは表現出来ない、
でも心をがっつりとつかまれる作品。
人が生きるということ、生きていくことは大変だけど、
その大変さを時には笑い飛ばしながら生き抜いていく、
人の強さを描いた作品だった。間違いなく名作。
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