フランス語教育専攻

8.さて大講堂でのシンポジウムが終わると、個別の研究発表です。

 最初わたしの行った A 教室では、中華人民共和国におけるアリアンスフランセーズの話をしたAlain Rechnerさんに続いて、日本勢トップバッターとして京大の西山教行さん登場。

 彼の発表は日本統治下の台湾において日本語教育のために採用されていたフランスの学者グーアン Francois Gouin の教育理論の紹介です。台湾の人々に日本語を教育するのに訳読方式みたいなものでは当然うまくいかず、日本語教育を日本語で行う方式を採用したのですが、それがいわゆる methode directe の先駆者でアメリカで高く評価されたグーアンの理論に基づいていたのですね(類似の考え方はたとえば有名な語学学校ベルリッツの教え方にも反映していたそうです)。

 この発表のパワーポイント資料は西山さんのサイトに載ってますからフランス語の読める方はぜひご一読ください(「年譜』の「学会発表」のところの「La politique d'assimilation...」です)。

 最後のところで発表の場を意識してかグーアンを離れて理念的な話になった気はしますが、西山さんの発表はいつもながらに力量十分でした。 (^_^)y 制限時間が短かったのが残念でした。
 内容の充実だけでなく、日本人が、台北で、フランス語でこういう発表をするということ自体に、かなり歴史的意義があったんではないかと思います。


 日本ではフランス語で大学教員というと「フツブン学者」とイコールのように見られていると思うんですが、西山さんのような「フランス語教育」にまつわるアカデミックな研究とかフランス語についての教育法を専攻する人が確実に増えて来てます。フランス語教育専攻で留学して学位を取ってくる方も増えました。

 専攻にしなくてもフランス、日本で頻繁に行われているフランス語教育の研修会、勉強会にはたくさんの先生が来られますしね。わたしがスタッフをやっている関西フランス語教育研究会もこの間第20回記念大会をやりました。

 公的学会主催以外のこういう大規模な集まりは、ドイツ語や他の言語では聞いたことありませんから、やっぱりフランス語関係者が率先して第二外国語教育の充実、日本における教育言語の多様化を主張しなければいけないかなと思います。

 それと平行して、いわゆる「フツブン学者」の従来型のあり方は、たぶんわたしの世代で終わりになるかな、と思います。
 それでも文学研究はなんらかの形で生き延びなければいけないのですが。

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
sapio (cyberbloom)
2006-05-24 13:30:19
ご無沙汰してます。

ところで、うちのブログに書き込みがあり、SAPIOの最新号に「フランスのマスコミが日本の歴史問題をどのように報道してきたか」という記事が載っているそうです。SAPIOというのが引っかかりますが、その論に準じて(なのかはわかりませんが)、石原発言に対する、フランス語関係者の無頓着さが信じられないとかお書きになってます。裁判は続いていると思うのですが、他の有名ブログでもフランス語関係者の対応は内輪向けに過ぎない、外部に対して何の説得力もないと書いてあったのを読んだことがあります。私はフツブン業界を代弁する立場では全然ないですが、だからこうやってブログをやってるんですけどね。こういう機会がなければ外の人がどう考えているのかわからないですが。フツブン学者最後の世代という話がありましたが、世代によっても立場や考え方が大きく違うのでしょうが。

すみません、前の2つはうまく投稿できませんでした。削除をお願いします。
 
 
 
Unknown (raidaisuki)
2006-05-25 09:54:30
cyberbloomさま

いまはシェイハ=リミッティの喪に服しているところなので、フランス語教育に関するエントリーは来週から再開するつもりです。



「フツブン学者」うんぬんに関しては、姑息な限定かもしれませんが、「従来型の」という言葉をつけています。これには少し複雑な思いがありました。それについてもいつか機会があればお話しします。



 わたしの思うのは、現状ではフランス語に関して誤解、曲解、またそれを政治的に利用しようとする向きなどが攻勢にでているということで、フランス語教育はいま非常に不利な立場、逆境にあると思います。

 だからこそこんなブログを作って、がんばってその擁護をしたいと思ったわけです。安易におもしろがって攻撃するのは、最終的にまったく損なことだ、と分かってもらうために。



 現実をよく知らないまま、ある種の偏見に基づいてフランス語教育攻撃をしたい向きには、よく現実を知ってもらえるように、不正確な報道に惑わされることがないように、根気よく説明努力を重ねていくしかないと思います。



 そして、フランス語が積極的にアピールできる機会、領域では、あんまり奥ゆかしい態度はとらず、日本社会の大多数の耳に届くまでめいっぱい大声を上げるべきときだとおもっています。

 やり方によっては、フランス語の「ブレイク」はありえないことではないと思っています。
 
 
 
Unknown (raidaisuki)
2006-05-25 09:58:36
追伸



すみません、cyberbloomさんの方へのコメントを確認している暇がないのですが、SAPIOを引き合いに出しているなら、



「フランス語教育の現状と持つべき方向性」のエントリー:

http://blog.goo.ne.jp/raidaisuki/e/9ca714962f865c95c79f5d6ade1ba3cd



にコメントを送って来た偏西風という人と同じ人かなと思います。

このコメントにはわたしから簡単な返事をコメントしてますので、ご一読ください。
 
 
 
全く同じ内容 (cyberbloom)
2006-05-28 13:17:23
こんにちは。

うちに来たのと全く同じ内容でした。うちに来たHNは「日本知識人へ」でした。私がエントリーで「国家の品格」批判をしたことに対して、私は著者の藤原氏を支持すると最初に書いてあって、それに関する反論は何もなく、ただフランス語関係者に対する批判(raidaisukiさんのところに来たのと同じ文面)が書いてありました。サピオを見ましたがそれらしい記事はなかったですが、前号なんでしょうか。

そのあともう一度コメントが入っていて、思いやりは日本人の美徳だ、それに対して中国人は攻撃的だと。藤原氏の論理にはあきれ果てているので、今度ちゃんと書こうと思っています。年配の大学教員が、若者という他者を前にして、自分がリスペクトされないことの苛立ちも入っているんだと思います。大学内でもあちこちでよく耳にするディスクールで、大学教員の中でもあの本を絶賛している人たちが多い。

そうですね、フランス語の再度の盛り上がり(どういう形かわかりませんが)の日のために、学生やフランスに関心のあるひとたちがアクセスしやすく、また参加しやすいネットワークとデータベースを作っておく必要がありますね。記事が溜まってきたので、うちのブログでも1日100件くらい検索エンジンからアクセスがあります。ライの記事も根強いです。raidaisukiさんのマンガの話も聞き損ねたので、またFNB用に投稿記事を書いていただけたらと思います。

それでは。
 
 
 
やっぱりフランス語は (aha)
2010-12-28 00:34:50
お互いに不完全な言語でコミュニケーションするよりも、日本語で発表してそれを通訳してもらったほうが、相手によく伝わるわけです。
それから、西山先生の研究は言語学というよりはむしろ政治学の一分野だと思います。でも、彼は政治学者とコンタクトを取っている形跡が見受けられません。今後はそれが課題となるでしょう。
 
 
 
Unknown (raidaisuki)
2010-12-29 13:27:47
ahaさま

コメントありがとうございます。

そうも言えるかもしれませんが、自分の言いたいことを自分の責任でフランス語でコミュニケートするというのも、通訳という他人を介するよりよいところはあると思います。

それに加えて現実面として、フランス語の優秀なプロ通訳というのは数が減って、調達しにくくなっているということもあります(逆に、通訳の仕事をしているわけでもないのに素晴らしいフランス語を話すという人の数は個人レベルでは増えているようにも感じられますが)。

西山さんの仕事の限界についても、未知の学問領域に立ち入るのには注意が要るので慎重にしておられるということもあるかもしれません。この先を期待いたしましょう。
 
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